(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129562
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】単列円すいころ軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 19/36 20060101AFI20240919BHJP
F16C 33/60 20060101ALI20240919BHJP
F16C 33/54 20060101ALI20240919BHJP
F16C 35/06 20060101ALI20240919BHJP
F16C 23/06 20060101ALI20240919BHJP
F03D 80/70 20160101ALI20240919BHJP
【FI】
F16C19/36
F16C33/60
F16C33/54 A
F16C35/06 Z
F16C23/06
F03D80/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038859
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】堀 径生
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖之
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 祐基
【テーマコード(参考)】
3H178
3J012
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB79
3H178CC25
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3H178DD50Z
3J012AB02
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3J117AA02
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3J701AA16
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3J701BA45
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3J701BA56
3J701BA64
3J701FA46
3J701FA48
3J701GA24
(57)【要約】
【課題】軸受を円滑に交換し軸受交換コストを低減すると共に、軸受交換後の信頼性を確保し得る単列円すいころ軸受を提供する。
【解決手段】単列円すいころ軸受1は、内外輪2,3と、これら内外輪2,3間に介在される複数の円すいころ4と、これら円すいころ4を保持する保持器5とを備える。内外輪2,3は、それぞれ円周方向に複数分割され互いに連結された内外輪分割体2A,3Aを含む。保持器5は、円周方向に複数のセグメント8に分割されたセグメント保持器である。セグメント保持器は、4個以上で且つ偶数個のセグメント8を有する。内輪2の幅方向両端部における外周部には、円周方向に隣接する内輪分割体2Aを連結するための連結用リングがそれぞれ設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外輪と、これら内外輪間に介在される複数の円すいころと、これら円すいころを保持する保持器とを備えた単列円すいころ軸受であって、
前記内外輪は、それぞれ円周方向に複数分割され互いに連結された軌道輪分割体を含み、
前記保持器は、円周方向に複数のセグメントに分割されたセグメント保持器である単列円すいころ軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の単列円すいころ軸受において、前記セグメント保持器は、4個以上で且つ偶数個のセグメントを有する単列円すいころ軸受。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の単列円すいころ軸受において、前記セグメント保持器は、炭素繊維またはガラス繊維を含む樹脂製である単列円すいころ軸受。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の単列円すいころ軸受において、前記内輪の幅方向両端部における外周部には、円周方向に隣接する内輪分割体を連結するための連結用リングがそれぞれ設けられている単列円すいころ軸受。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の単列円すいころ軸受において、前記内外輪は円周方向に二分割される内外輪分割体を含み、半周分の内外輪分割体と、これら内外輪分割体間に介在される半周分の前記円すいころと、これら円すいころを保持する半周分の前記セグメントと、を含む半周分の軸受ユニットを2個備える単列円すいころ軸受。
【請求項6】
請求項5に記載の単列円すいころ軸受において、半周分の前記軸受ユニットには、半周分の前記内外輪分割体、半周分の前記円すいころ、および半周分の前記セグメントを分離不能に保持するための治具が着脱自在に設けられる単列円すいころ軸受。
【請求項7】
請求項6に記載の単列円すいころ軸受において、前記内輪に嵌合される軸と、前記半周分の前記軸受ユニットとを固定するための固定具が設けられる単列円すいころ軸受。
【請求項8】
請求項6に記載の単列円すいころ軸受において、前記内外輪分割体には、前記治具を取り付けるための取付孔が設けられている単列円すいころ軸受。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の単列円すいころ軸受において、風力発電装置の主軸受に使用される単列円すいころ軸受。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の単列円すいころ軸受において、外径が1m以上の単列円すいころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単列円すいころ軸受に関し、例えば、風力発電装置の主軸受用または産業機械用の特に外径1m以上の大型円すいころ軸受に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置のロータ支持に使用される主軸受は、外径1m以上の超大型サイズが使用される。近年、風力発電装置の大型化に伴い、主軸受も大型化する。このことから、2個の軸受間の作用点距離を伸ばすことでコンパクト化が可能となる単列円すいころ軸受の背面組み合わせが使用されることが多い。
【0003】
仮に主軸受に異常が発生した場合、軸、ハウジングの周辺部品を含めたユニットを、クレーン車を使用しユニット毎交換する。洋上に設置された風力発電装置においては、大型クレーン船を用いた大掛かりな工事となるため、多額のコストを要する。そのため、ナセル内で、軸受のみを交換することが望まれる。
軸受を現場で交換するニーズは過去から一般産業機械においてもあり、軸受を2つ割りにする先行技術が存在する(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2017/007922号
【特許文献2】国際公開2022/105956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、風力発電装置のナセル内で予め径方向に分割された軸受に交換する際に、適切な治具を使用しなければ、軸受の交換作業が円滑に進まず、最悪の場合、軸受を交換できない可能性がある。
対象となる軸受は大型軸受であることから、分割された保持器を組立時に連結して一体型とする場合、保持器の連結部に過大な応力が作用し、前記連結部に異常が発生する恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、軸受を円滑に交換し軸受交換コストを低減すると共に、軸受交換後の信頼性を確保し得る単列円すいころ軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の単列円すいころ軸受は、内外輪と、これら内外輪間に介在される複数の円すいころと、これら円すいころを保持する保持器とを備えた単列円すいころ軸受であって、
前記内外輪は、それぞれ円周方向に複数分割され互いに連結された軌道輪分割体を含み、
前記保持器は、円周方向に複数のセグメントに分割されたセグメント保持器である。
この明細書において、単列円すいころ軸受を、単に、軸受と称す場合がある。
【0008】
この構成によると、内外輪および保持器が円周方向に複数分割された構造にすることで、所望の装置から単列円すいころ軸受のみを円滑に交換し得る。この場合、装置の軸、ハウジング等の周辺部品をそのまま再利用することが可能となり、大型クレーン等を用いて装置からユニット毎交換する従来構造等よりも、軸受交換コストを低減し得る。保持器は、複数のセグメントに分割されたセグメント保持器であるため、軸受の運転時にそれらセグメントを締結することなく使用する。このため、従来構造のように保持器の連結部等に過大な応力が発生することなく軸受交換後の信頼性を確保し得る。
【0009】
前記セグメント保持器は、4個以上で且つ偶数個のセグメントを有してもよい。この場合、内外輪が円周方向に二分割される半周分の軸受ユニットに、半周分のセグメントを余すことなく収めることができる。これにより、軸受交換作業をさらに円滑に行うことが可能となる。
【0010】
前記セグメントは、炭素繊維またはガラス繊維を含む樹脂製であってもよい。炭素繊維またはガラス繊維は繊維状であるため、炭素繊維またはガラス繊維を含まない樹脂製のセグメントよりも効率的に熱膨張係数を低下させることができる。したがって、膨張時にセグメント同士の周方向隙間が零になることを確実に防止し得る。
【0011】
前記内輪の幅方向両端部における外周部には、円周方向に隣接する内輪分割体を連結するための連結用リングがそれぞれ設けられていてもよい。この場合、連結用リングにより各内輪分割体を軸に支持し容易に連結することが可能となる。逆に内輪の外周部から連結用リングを離脱することで、各内輪分割体を軸から容易に離脱することが可能となる。
【0012】
前記内外輪は円周方向に二分割される内外輪分割体を含み、半周分の内外輪分割体と、これら内外輪分割体間に介在される半周分の前記円すいころと、これら円すいころを保持する半周分の前記セグメントと、を含む半周分の軸受ユニットを2個備えてもよい。この場合、半周分の軸受ユニット単位で交換作業を行うことができ、軸受交換作業を円滑に且つ確実に行うことが可能となる。
【0013】
半周分の前記軸受ユニットには、半周分の前記内外輪分割体、半周分の前記円すいころ、および半周分の前記セグメントを分離不能に保持するための治具が着脱自在に設けられてもよい。この場合、半周分の軸受ユニットを交換する際、円すいころ、セグメントが不所望に離脱することを防止でき、交換作業を簡単化することができる。これにより軸受交換コストをさらに低減し得る。
【0014】
前記内輪に嵌合される軸と、前記半周分の前記軸受ユニットとを固定するための固定具が設けられてもよい。この場合、半周分の軸受ユニットを固定具により軸に固定した状態で、軸受ユニット等を軸心回りに所定角度回転させ、残りの半周分の軸受ユニットを容易に組立てることができる。
【0015】
前記内外輪分割体には、前記治具を取り付けるための取付孔が設けられてもよい。この場合、半周分の軸受ユニットにおける内外輪分割体に対し、治具を着脱自在に設けることができる。
【0016】
風力発電装置の主軸受に使用される単列円すいころ軸受であってもよい。この場合、風力発電装置の例えばナセル内において、軸受を円滑に交換し得るため、大型クレーン等を用いる従来構造よりも軸受交換コストを低減することができる。軸受交換後の信頼性を確保し得るため、従来構造よりも軸受交換の期間を延ばすことも可能となる。
外径が1m以上の単列円すいころ軸受であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の単列円すいころ軸受は、内外輪がそれぞれ円周方向に複数分割され互いに連結された軌道輪分割体を含み、保持器は、円周方向に複数のセグメントに分割されたセグメント保持器である。このため、軸受を円滑に交換し軸受交換コストを低減すると共に、軸受交換後の信頼性を確保し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る単列円すいころ軸受の半周分の軸受ユニットを部分的に示す斜視図である。
【
図2】同単列円すいころ軸受の保持器セグメントの斜視図である。
【
図3】半周分の軸受ユニットおよび軸を部分的に示す斜視図である。
【
図5】二分割された内外輪分割体に治具を装着した状態を示す斜視図である。
【
図6】半周分の軸受ユニットと軸とを固定する固定具等を示す斜視図である。
【
図7】同単列円すいころ軸受を風力発電装置の主軸受として用いた風力発電装置の断面図である。
【
図8】同単列円すいころ軸受の組み合わせ例を示す縦断面図である。
【
図9】同単列円すいころ軸受の他の組み合わせ例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係る単列円すいころ軸受を
図1ないし
図6と共に説明する。この単列円すいころ軸受は、例えば、風力発電装置の主軸用または産業機械用の特に外径が1m以上の大型の円すいころ軸受に適用される。
【0020】
<単列円すいころ軸受の概略構成>
図1のように、単列円すいころ軸受1は、内外輪2,3と、これら内外輪2,3間に介在される複数の円すいころ4と、これら円すいころ4を保持する保持器5とを備える。内輪2の外周面にテーパ状の軌道面が設けられ、外輪3の内周面にテーパ状の軌道面が設けられている。内外輪2,3は、それぞれ円周方向に複数分割され互いに連結された、後述する内外輪分割体2A,3Aである軌道輪分割体を含む。
【0021】
内輪2の外周面のうち、軌道面の小径側部分に隣接する部分には小鍔部6が設けられ、軌道面の大径側部分に隣接する部分には大鍔部7が設けられている。複数の円すいころ4は、内外輪2,3の軌道面間に転動自在に配置され、各円すいころ4の外周面にテーパ状の転動面が形成されている。内外輪2,3および円すいころ4は、例えば、軸受鋼または浸炭鋼等から成る。
【0022】
<保持器>
保持器5は、複数の円すいころ4を円周方向一定間隔おきに保持する。保持器5は、円周方向に複数のセグメント8に分割されたセグメント保持器である。セグメント保持器は、4個以上で且つ偶数個のセグメント8を有する。保持器5は、複数のセグメント8が環状に配列されるころ案内形式である。
【0023】
図2のように、各セグメント8は、樹脂製であり、例えば、同一の金型等により射出成形される。前記樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(略称:PEEK)とすることが好ましい。PEEK自体の熱による線膨張係数は、4.7×10
-5/℃程度であり、他の樹脂素材と比較して熱による線膨張係数が低いため、充填材を含ませて熱による線膨張係数を低下させることが容易になる。前記充填材は、炭素繊維またはガラス繊維を含むことが好ましい。これら炭素繊維またはガラス繊維を含む充填材は、繊維状であるため、効率的に熱による線膨張係数、すなわち熱膨張係数を低下させることができる。
【0024】
各セグメント8は、定められた数(この例では3個)の円すいころを保持するポケット9を有する。各セグメント8は、軸方向に延びる複数(この例では4つ)の柱部10と、周方向に延びて複数の柱部10をそれぞれ連結する一対の連結部11,12とを備える。複数の柱部10と一対の連結部11,12とで隣り合う柱部10間に円すいころ4(
図1)を保持するポケット9が形成される。一対の連結部11,12はそれぞれ円弧形状である。
【0025】
一対の連結部11,12のうち、円すいころの小端面側に配置される一方の連結部11は、他方の連結部12よりも小径側に位置する小径側弧状部である。他方の連結部12は、小径側弧状部11よりも大径側に位置する大径側弧状部である。小径側弧状部である一方の連結部11はこの曲線半径が、大径側弧状部である他方の連結部12の曲率半径よりも小さい。
【0026】
各柱部10には、円すいころ4(
図1)をポケット9内に挿入可能な案内爪10aが設けられている。案内爪10aは、ポケット9に挿入した円すいころ4(
図1)が内径側または外径側へ抜け出すことを防止する。各案内爪10aの案内面は、断面円弧状で、円すいころ4(
図1)の転動面に略沿う形状である。これら案内爪10aの向きによりセグメント8はころ案内もしくはレース案内となる。
【0027】
図1のように、セグメント8は、周方向に順次連ねられて無間隙に配置される。先ず、最初のセグメント8が配置され、先に配置されたセグメント8の周方向一端面と次のセグメント8の周方向一端面とが互いに当接するように順次配置される。但し、周方向に互いに隣接するセグメント同士は非連結である。また
図3に示す半周分の軸受ユニットBU(後述する)同士を
図4のように締結した状態において、最初のセグメント8(
図2)と最後のセグメント8(
図2)との間には、定められた周方向隙間が形成される。
【0028】
<軸受ユニットについて>
図1のように、内外輪2,3は円周方向に二分割される内外輪分割体2A,3Aを含む。
図4のように、単列円すいころ軸受1は、半周分の軸受ユニットBUを2個備える。
図1のように、半周分の軸受ユニットBUは、半周分の内外輪分割体2A,3Aと、これら内外輪分割体2A,3A間に介在される半周分の円すいころ4と、これら円すいころ4を保持する半周分のセグメント8と、を含む。内外輪分割体2A,3Aの分割面である繋ぎ目は、いわゆるエッジ応力を低減するため、軸方向に平行ではなく、軸方向に対して定められた角度を有する。さらに内外輪分割体2A,3Aの前記繋ぎ目に、径方向に逃がし加工を施すことでエッジ応力を緩和し得る。前記定められた角度は、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な角度に定められる。
【0029】
<連結用リング>
図3のように、内輪2の幅方向両端部における外周部には、連結用リング13がそれぞれ設けられている。連結用リング13は、円周方向に隣接する内輪分割体2Aを連結するためのものである。半周分の軸受ユニットBUの状態において、連結用リング13は半円状に二分割された連結用リング分割体13Aである。2個の連結用リング分割体13Aを後述するボルトにより締結することで全周にわたる連結用リング13が構成される。内輪分割体2Aを軸26の外周面に保持するため、前記連結用リング13が必要となる。内輪2の幅方向両端部における連結用リング13のうち、小鍔部側に位置する連結用リング13は、大鍔部側に位置する連結用リング13よりも小径に形成されている。外輪3は図示外のハウジングに倣うため、外輪分割体3Aを連結するための締結用リングは不要である。
【0030】
内輪2の外周部には、連結用リング13の軸方向位置を規制する環状段差が設けられている。
図1のように、内輪2の軸方向一端側に位置する外周部は、大鍔部7の外周面を成す大径の外周部と、この大径の外周部に環状段差14を介して繋がる小径の外周部とを含む。前記小径の外周部は、前記大径の外周部に対し小径で且つ同心状に形成されている。
図3のように、前記小径の外周部に沿って連結用リング13の内周面が支持され、且つ、連結用リング13の軸方向内側面が
図1に示す環状段差14に当接する。
【0031】
図1に示す内輪2の軸方向他端側に位置する外周部は、小鍔部6の略外周面を成す大径の外周部と、この大径の外周部に環状段差15を介して繋がる小径の外周部とを含む。前記小径の外周部は、前記大径の外周部に対し小径で且つ同心状に形成されている。
図3のように、前記小径の外周部に沿って連結用リング13の内周面が支持され、且つ、連結用リング13の軸方向内側面が
図1の環状段差15に当接する。
【0032】
図4のように、連結用リング分割体13Aの周方向両端部には、連結用リング分割体13A同士を互いにボルト締結するための締結孔16が設けられている。連結用リング分割体13Aの周方向両端部付近には、締結孔16に挿通されたボルトを連結用リング13における円周方向に略沿って支持する逃がし溝17が形成されている。
【0033】
<治具>
図5のように、半周分の軸受ユニットBUには、治具18が着脱自在に設けられる。治具18は、半周分の内外輪分割体2A,3A、半周分の円すいころ4、および半周分のセグメント8を分離不能に保持するための矩形の薄板状のプレートである。具体的には、軸受ユニットBUにおいて、二分割された内外輪分割体2A,3Aの周方向両端の分割面に、プレートである治具18がそれぞれ装着されている。これにより、半周分の内外輪分割体2A,3Aと、それら内外輪分割体2A,3Aの間に挟み込んだ半周分の円すいころ4と、半周分のセグメント8とを一体的に保持する。
図1のように、内外輪分割体2A,3Aの各分割面には、治具18(
図5)をボルト等により取り付けるための雌ねじから成る取付孔19がそれぞれ設けられている。
図5の治具18は、軸受の組立途中に離脱させ軸受運転時に使用しない。
【0034】
<固定具>
図6のように、内輪2に嵌合される軸26と、半周分の軸受ユニットBUとを固定するための固定具20が設けられる。固定具20は、内輪大端側端面における円周方向の一部に固定される立板部と、この立板部の内径側端に繋がり軸26のフランジ外周部26aに固定される基端部とで、断面略L字形状に形成される。この固定具20は、ボルト等により軸26および軸受ユニットBUに対してそれぞれ着脱自在に構成される。固定具20は、原則、軸受の組立途中に離脱させ軸受運転時に使用しない。但し、軸26および軸受ユニットBUに固定具20を固定した状態で軸受を運転することも可能である。
【0035】
<作用効果>
以上説明した
図1に示す単列円すいころ軸受1によると、内外輪2,3および保持器5が円周方向に複数分割された構造にすることで、所望の装置から単列円すいころ軸受1のみを円滑に交換し得る。この場合、装置の軸、ハウジング等の周辺部品をそのまま再利用することが可能となり、大型クレーン等を用いて装置からユニット毎交換する従来構造等よりも、軸受交換コストを低減し得る。保持器5は、複数のセグメント8に分割されたセグメント保持器であるため、軸受1の運転時にそれらセグメント8を締結することなく使用する。このため、従来構造のように保持器の連結部等に過大な応力が発生することなく軸受交換後の信頼性を確保し得る。
【0036】
セグメント保持器5は、4個以上で且つ偶数個のセグメント8を有する。このため、内外輪2,3が円周方向に二分割される半周分の軸受ユニットBUに、半周分のセグメント8を余すことなく収めることができる。これにより、軸受交換作業をさらに円滑に行うことが可能となる。
セグメント8は、炭素繊維またはガラス繊維を含む樹脂製であるため、炭素繊維またはガラス繊維を含まない樹脂製のセグメントよりも効率的に熱膨張係数を低下させることができる。したがって、膨張時にセグメント同士の周方向隙間が零になることを確実に防止し得る。
【0037】
内輪2の幅方向両端部における外周部には、円周方向に隣接する内輪分割体2Aを連結するための
図3の連結用リング13がそれぞれ設けられている。このため、連結用リング13により各内輪分割体2Aを軸26に支持し容易に連結することが可能となる。逆に内輪2の外周部から連結用リング13を離脱することで、各内輪分割体2Aを軸26から容易に離脱することが可能となる。
内外輪2,3は円周方向に二分割される内外輪分割体2A,3Aを含み、単列円すいころ軸受1は、半周分の内外輪分割体2A,3Aと、これら内外輪分割体2A,3A間に介在される半周分の前記円すいころ4と、これら円すいころ4を保持する半周分のセグメント8と、を含む半周分の軸受ユニットBUを2個備える。このため、半周分の軸受ユニット単位で交換作業を行うことができ、軸受交換作業を円滑に且つ確実に行うことが可能となる。
【0038】
図6のように、内輪2に嵌合される軸26と、半周分の軸受ユニットBUとを固定するための固定具20が設けられる。このため、半周分の軸受ユニットBUを固定具20により軸26に固定した状態で、軸受ユニットBU等を軸心回りに所定角度回転させ、残りの半周分の軸受ユニットBUを容易に組立てることができる。
図3のように、内外輪分割体2A,3Aには、
図6の治具18を取り付けるための取付孔19が設けられている。このため、半周分の軸受ユニットBUにおける内外輪分割体2A,3Aに対し、治具18を着脱自在に設けることができる。
【0039】
<風力発電装置への適用例>
図7のように、単列円すいころ軸受1は、風力発電装置の主軸受に使用される。支持台21上に旋回軸受22を介してナセル23のケーシング23aが水平旋回自在に設置されている。ケーシング23a内には、軸受ハウジング24に設置された単列円すいころ軸受1を介して主軸26が回転自在に設置されている。主軸26のケーシング23a外に突出した部分に、旋回翼となるブレード27が取り付けられている。主軸26の他端は、増速機28に接続され、増速機28の出力軸が発電機29のロータ軸に結合されている。
【0040】
風力発電装置主軸用軸受である単列円すいころ軸受1は、
図8のように、背面組み合わせで所定間隔を隔てて設置される。このように一軸上に2個の単列円すいころ軸受1,1を組み合わせて使用することで、径方向荷重と軸方向荷重を受けることができる。2個の単列円すいころ軸受1,1を背面組み合わせとすることで、正面組み合わせ等よりもモーメントの負荷能力が高くなる。風車の稼働中つまり軸受回転中に、内外輪2,3の軌道面と円すいころ4の滑りが生じないように、軸受1,1に適切な予圧を付与して使用される。
【0041】
図9のように、2個の単列円すいころ軸受1,1を正面組み合わせで使用してもよい。この場合、背面組み合わせとするよりもモーメントの負荷能力が低いものの許容傾き角を大きくすることができる。
図2の保持器のセグメント8のポケット数、案内爪10aの向き等は、適宜変更可能である。
樹脂製のセグメント8は、金型等により成形されるが、機械加工または3Dプリンタにより成形することも可能である。
3分割以上の軸受ユニットから単列円すいころ軸受を構成することも可能である。
保持器は、複数のセグメントが環状に配列される軌道輪案内形式であってもよい。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1…単列円すいころ軸受、2…内輪、2A…内輪分割体(軌道輪分割体)、3…外輪、3A…外輪分割体(軌道輪分割体)、4…円すいころ、5…保持器、8…セグメント、13…連結用リング、18…治具、19…取付孔、20…固定具、BU…軸受ユニット