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特開2024-129565高分子凝集剤の溶解貯留装置及び高分子凝集剤溶液の管理方法
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  • 特開-高分子凝集剤の溶解貯留装置及び高分子凝集剤溶液の管理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129565
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】高分子凝集剤の溶解貯留装置及び高分子凝集剤溶液の管理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20240919BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B01D21/01 B
B01D21/01 C
B01D21/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038866
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷村 優也
(72)【発明者】
【氏名】森 康輔
(72)【発明者】
【氏名】矢出 乃大
(72)【発明者】
【氏名】山本 崇史
(57)【要約】
【課題】高分子凝集剤溶液の性能の経時劣化を簡便に検知可能な高分子凝集剤の溶解貯留装置を提供する。
【解決手段】高分子凝集剤を水系溶媒に溶解可能であると共に高分子凝集剤溶液を貯留可能な溶解貯留槽と、高分子凝集剤を溶解貯留槽に供給するための高分子凝集剤供給装置と、水系溶媒を溶解貯留槽に供給するための溶媒供給ラインと、溶解貯留槽内に設置される撹拌機と、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の撹拌トルクを測定するためのトルク計、及び、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を測定するための透視度計の一方又は両方と、を備える高分子凝集剤の溶解貯留装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子凝集剤を水系溶媒に溶解可能であると共に高分子凝集剤溶液を貯留可能な溶解貯留槽と、
高分子凝集剤を溶解貯留槽に供給するための高分子凝集剤供給装置と、
水系溶媒を溶解貯留槽に供給するための溶媒供給ラインと、
溶解貯留槽内に設置される撹拌機と、
溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の撹拌トルクを測定するためのトルク計、及び、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を測定するための透視度計の一方又は両方と、
を備える高分子凝集剤の溶解貯留装置。
【請求項2】
以下の(1)及び(2)の一方又は両方の指令を実行可能な制御部を備える請求項1に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
(1)前記トルク計に対して予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の撹拌トルクを測定することの指令
(2)前記透視度計に対して予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を測定することの指令
【請求項3】
前記トルク計によって異なる複数の時期に測定されたトルクを記憶可能な記憶部Aと、記憶部Aに記憶されている異なる複数の時期に測定された撹拌トルクに基づき、トルクの経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能な演算部Aと、演算部Aによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能な出力部Aとを有するトルク監視装置、及び、
前記透視度計によって異なる複数の時期に測定された透視度を記憶可能な記憶部Bと、記憶部Bに記憶されている異なる複数の時期に測定された透視度に基づき、透視度の経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能な演算部Bと、演算部Bによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能な出力部Bとを有する透視度監視装置、
の一方又は両方を備える請求項1又は2に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
【請求項4】
溶解貯留槽の出口から排出された高分子凝集剤溶液を高分子凝集剤溶液の注入点へ注入するための注入ラインと、
注入ラインの途中に設置されているポンプと、
溶媒供給ラインから第一の流路切替弁を介して分岐する第一の分岐ラインであって、溶解貯留槽の出口と前記ポンプの間で注入ラインに第二の流路切替弁を介して合流する第一の分岐ラインと、
前記ポンプと高分子凝集剤溶液の注入点の間で注入ラインから第三の流路切替弁を介して分岐する第二の分岐ラインと、
第二の分岐ラインから第四の流路切替弁を介して分岐し、溶解貯留槽へと連結されている返送ラインと、
第二の分岐ラインから第四の流路切替弁を介して分岐し、排水処理設備へと連結されている廃棄ラインと、
を備える請求項1又は2に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
【請求項5】
溶媒供給ラインからの水系溶媒が、第一の分岐ライン、注入ライン、第二の分岐ライン及び返送ラインを通って溶解貯留槽に供給されるように第一の流路切替弁、第二の流路切替弁、第三の流路切替弁及び第四の流路切替弁のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、前記ポンプを起動するフラッシングを実行することのできる制御部を有する請求項4に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
【請求項6】
溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液が、注入ライン、第二の分岐ライン及び廃棄ラインを通って排水処理設備に供給されるように第二の流路切替弁、第三の流路切替弁及び第四の流路切替弁のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、高分子凝集剤溶液の廃棄操作を実行することのできる制御部を有する請求項4に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
【請求項7】
前記トルク計によって異なる複数の時期に測定されたトルクを記憶可能な記憶部Aと、記憶部Aに記憶されている異なる複数の時期に測定された撹拌トルクに基づき、トルクの経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能な演算部Aと、演算部Aによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能な出力部Aとを有するトルク監視装置、及び、
前記透視度計によって異なる複数の時期に測定された透視度を記憶可能な記憶部Bと、記憶部Bに記憶されている異なる複数の時期に測定された透視度に基づき、透視度の経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能な演算部Bと、演算部Bによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能な出力部Bとを有する透視度監視装置、
の一方又は両方を備え、
制御部は、以下の条件1及び条件2の一方又は両方を満たすと、前記廃棄操作を自動的に実行することができる請求項6に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
条件1:トルク監視装置の演算部Aがトルクの経時変化の前記基準を超えると判断する。
条件2:透視度監視装置の演算部Bが透視度の経時変化の前記基準を超えると判断する。
【請求項8】
溶媒供給ラインからの水系溶媒が、第一の分岐ライン、注入ライン、第二の分岐ライン及び返送ラインを通って溶解貯留槽に供給されるように第一の流路切替弁、第二の流路切替弁、第三の流路切替弁及び第四の流路切替弁のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、前記ポンプを起動する、フラッシングを実行することのできる制御部を有し、
制御部は、前記廃棄操作を実行後、前記フラッシングを自動的に実行することができる請求項7に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
【請求項9】
溶媒供給ラインから第一の流路切替弁を介して分岐する洗浄ラインであって、前記透視度計に向かってその吐出口から前記水系溶媒を掛けるための洗浄ラインを備える請求項1又は2に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
【請求項10】
溶解貯留槽内に水系溶媒を溶媒供給ラインから供給する工程1と、
溶解貯留槽内に高分子凝集剤を供給する工程2と、
溶解貯留槽内の高分子凝集剤を水系溶媒に撹拌しながら溶解し、高分子凝集剤溶液を得る工程3と、
溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の撹拌トルクをトルク計で測定すること、及び、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を透視度計で測定することの一方又は両方を行う工程4と、
を含む高分子凝集剤溶液の管理方法。
【請求項11】
工程4では、以下の(1)及び(2)の一方又は両方を行う請求項10に記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
(1)予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の撹拌トルクを測定すること
(2)予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を測定すること
【請求項12】
前記トルク計によって異なる複数の時期に測定されたトルクの経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断する工程、及び、
前記透視度計によって異なる複数の時期に測定された透視度の経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断する工程、
の一方又は両方を含む請求項10又は11に記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
【請求項13】
以下の条件1及び条件2の一方又は両方を満たすと、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液を廃棄する請求項12に記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
条件1:トルクの経時変化が前記基準を超えると判断する。
条件2:透視度の経時変化が前記基準を超えると判断する。
【請求項14】
溶解貯留槽の出口から排出された高分子凝集剤溶液を高分子凝集剤溶液の注入点へ注入するための注入ラインに、溶媒供給ラインから水系溶媒を供給することで注入ラインの少なくとも一部をフラッシングする工程を含む請求項10又は11に記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
【請求項15】
溶媒供給ラインから分岐する洗浄ラインの吐出口から、前記透視度計に向かって前記水系溶媒を掛ける工程を含む請求項10又は11に記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子凝集剤の溶解貯留装置に関する。また、本発明は高分子凝集剤溶液の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
着水井を経由した水道原水を、凝集混和池(以下、「混和池」という)とフロック形成池と沈殿池とを有する凝集沈殿処理設備で凝集沈殿処理し、凝集沈殿処理水(以下、「処理水」という)を、ろ過材が充填された急速ろ過池でろ過し、その後消毒剤を添加して水道水とする浄水処理(上水処理)が知られている。このような浄水処理における凝集沈殿処理では、凝集剤を添加することにより凝集フロックを形成させ、凝集フロックを固液分離により除去することにより処理水を得る方法が広く行われている。
【0003】
凝集剤としては従来、硫酸バンドやポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機凝集剤が主流であったが、無機凝集剤は十分に大きな凝集フロックを形成することが困難であるため、凝集沈殿・ろ過工程における固液分離速度が遅いという欠点がある。このため、最近では凝集フロックの沈降性を改良するために、高分子凝集剤を活用することが検討されている。高分子凝集剤は粉末状であるため、水等の水系溶媒に溶解して使用することが一般的である。このため、高分子凝集剤の溶解貯留装置が必要となる。
【0004】
従来、高分子凝集剤の溶解貯留装置においては、短繊維を分散させた高分子凝集剤溶液を効率よく調整したり、高分子凝集剤溶液の濃度を精度良く目標濃度に調整したりするための工夫が提案されている。
【0005】
特許文献1には、高分子凝集剤が溶解され、且つ短繊維が分散される溶解・分散槽と、溶解・分散槽内の液体を撹拌する撹拌手段と、を有する高分子凝集剤水溶液の調整方法が行われる調整装置が記載されている。溶解・分散槽の上部には、水系溶媒を溶解・分散槽に注入するための溶媒注入手段、高分子凝集剤を溶解・分散槽に添加可能な添加手段、及び短繊維を溶解・分散槽に投入可能な投入手段が設けられている。
【0006】
また、特許文献1に記載される調整装置の分散槽の内部には、粘度検知手段が設置されており、高分子凝集剤の膨潤状態を把握することが記載されている。そして、分散槽内の液体の粘度が10mPa・sを超えていると判定する場合は、短繊維を投入し、液体の粘度が10mPa・s未満であると判定する場合は、分散槽の撹拌にリターンすることが記載されている。これにより、高分子凝集剤の膨潤状態において短繊維を分散させることが可能となる。
【0007】
特許文献2には、粉末の高分子凝集剤を供給し、供給される高分子凝集剤の秤量手段を備えた高分子凝集剤供給系と、水を供給し、供給水量を調整する水量調整手段を備えた水供給系と、高分子凝集剤供給系から供給される高分子凝集剤と水供給系から供給される水を導入し、高分子凝集剤水溶液を調製する溶解槽と、該溶解槽中での高分子凝集剤水溶液の濃度を測定する濃度測定装置と、該濃度測定装置による測定濃度に基づいて、測定濃度が目標値になるように、追加すべき高分子凝集剤量または/および追加すべき水量の信号を前記高分子凝集剤供給系または/および水供給系に送る制御手段とを有することを特徴とする、濃度測定装置付き高分子凝集剤溶解装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-097345号公報
【特許文献2】特開2002-136805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、調製後の高分子凝集剤溶液の性能は経時劣化する。このため、必要とされるときに所定の性能を有する高分子凝集剤溶液を供給できるように品質管理しておくことが望ましい。しかしながら、従来、高分子凝集剤溶液の性能の経時劣化を簡便に検知する方法は知られておらず、高分子凝集剤溶液の品質管理の面で改善の余地が残されている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、高分子凝集剤溶液の性能の経時劣化を簡便に検知可能な高分子凝集剤の溶解貯留装置を提供することを課題とする。また、本発明は別の一実施形態において、高分子凝集剤溶液の管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、高分子凝集剤溶液は調製後の時間の経過に伴って粘度及び透視度が経時的に変化することを見出し、これらを指標として高分子凝集剤溶液の経時劣化を簡便に検知できることを見出した。本発明は当該知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0012】
[態様1]
高分子凝集剤を水系溶媒に溶解可能であると共に高分子凝集剤溶液を貯留可能な溶解貯留槽と、
高分子凝集剤を溶解貯留槽に供給するための高分子凝集剤供給装置と、
水系溶媒を溶解貯留槽に供給するための溶媒供給ラインと、
溶解貯留槽内に設置される撹拌機と、
溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の撹拌トルクを測定するためのトルク計、及び、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を測定するための透視度計の一方又は両方と、
を備える高分子凝集剤の溶解貯留装置。
[態様2]
以下の(1)及び(2)の一方又は両方の指令を実行可能な制御部を備える態様1に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
(1)前記トルク計に対して予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の撹拌トルクを測定することの指令
(2)前記透視度計に対して予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を測定することの指令
[態様3]
前記トルク計によって異なる複数の時期に測定されたトルクを記憶可能な記憶部Aと、記憶部Aに記憶されている異なる複数の時期に測定された撹拌トルクに基づき、トルクの経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能な演算部Aと、演算部Aによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能な出力部Aとを有するトルク監視装置、及び、
前記透視度計によって異なる複数の時期に測定された透視度を記憶可能な記憶部Bと、記憶部Bに記憶されている異なる複数の時期に測定された透視度に基づき、透視度の経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能な演算部Bと、演算部Bによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能な出力部Bとを有する透視度監視装置、
の一方又は両方を備える態様1又は2に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
[態様4]
溶解貯留槽の出口から排出された高分子凝集剤溶液を高分子凝集剤溶液の注入点へ注入するための注入ラインと、
注入ラインの途中に設置されているポンプと、
溶媒供給ラインから第一の流路切替弁を介して分岐する第一の分岐ラインであって、溶解貯留槽の出口と前記ポンプの間で注入ラインに第二の流路切替弁を介して合流する第一の分岐ラインと、
前記ポンプと高分子凝集剤溶液の注入点の間で注入ラインから第三の流路切替弁を介して分岐する第二の分岐ラインと、
第二の分岐ラインから第四の流路切替弁を介して分岐し、溶解貯留槽へと連結されている返送ラインと、
第二の分岐ラインから第四の流路切替弁を介して分岐し、排水処理設備へと連結されている廃棄ラインと、
を備える態様1~3の何れかに記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
[態様5]
溶媒供給ラインからの水系溶媒が、第一の分岐ライン、注入ライン、第二の分岐ライン及び返送ラインを通って溶解貯留槽に供給されるように第一の流路切替弁、第二の流路切替弁、第三の流路切替弁及び第四の流路切替弁のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、前記ポンプを起動するフラッシングを実行することのできる制御部を有する態様4に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
[態様6]
溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液が、注入ライン、第二の分岐ライン及び廃棄ラインを通って排水処理設備に供給されるように第二の流路切替弁、第三の流路切替弁及び第四の流路切替弁のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、高分子凝集剤溶液の廃棄操作を実行することのできる制御部を有する態様4又は5に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
[態様7]
前記トルク計によって異なる複数の時期に測定されたトルクを記憶可能な記憶部Aと、記憶部Aに記憶されている異なる複数の時期に測定された撹拌トルクに基づき、トルクの経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能な演算部Aと、演算部Aによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能な出力部Aとを有するトルク監視装置、及び、
前記透視度計によって異なる複数の時期に測定された透視度を記憶可能な記憶部Bと、記憶部Bに記憶されている異なる複数の時期に測定された透視度に基づき、透視度の経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能な演算部Bと、演算部Bによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能な出力部Bとを有する透視度監視装置、
の一方又は両方を備え、
制御部は、以下の条件1及び条件2の一方又は両方を満たすと、前記廃棄操作を自動的に実行することができる態様6に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
条件1:トルク監視装置の演算部Aがトルクの経時変化の前記基準を超えると判断する。
条件2:透視度監視装置の演算部Bが透視度の経時変化の前記基準を超えると判断する。
[態様8]
溶媒供給ラインからの水系溶媒が、第一の分岐ライン、注入ライン、第二の分岐ライン及び返送ラインを通って溶解貯留槽に供給されるように第一の流路切替弁、第二の流路切替弁、第三の流路切替弁及び第四の流路切替弁のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、前記ポンプを起動する、フラッシングを実行することのできる制御部を有し、
制御部は、前記廃棄操作を実行後、前記フラッシングを自動的に実行することができる態様7に記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
[態様9]
溶媒供給ラインから第一の流路切替弁を介して分岐する洗浄ラインであって、前記透視度計に向かってその吐出口から前記水系溶媒を掛けるための洗浄ラインを備える態様1~8の何れかに記載の高分子凝集剤の溶解貯留装置。
[態様10]
溶解貯留槽内に水系溶媒を溶媒供給ラインから供給する工程1と、
溶解貯留槽内に高分子凝集剤を供給する工程2と、
溶解貯留槽内の高分子凝集剤を水系溶媒に撹拌しながら溶解し、高分子凝集剤溶液を得る工程3と、
溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の撹拌トルクをトルク計で測定すること、及び、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を透視度計で測定することの一方又は両方を行う工程4と、
を含む高分子凝集剤溶液の管理方法。
[態様11]
工程4では、以下の(1)及び(2)の一方又は両方を行う態様10に記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
(1)予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の撹拌トルクを測定すること
(2)予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を測定すること
[態様12]
前記トルク計によって異なる複数の時期に測定されたトルクの経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断する工程、及び、
前記透視度計によって異なる複数の時期に測定された透視度の経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断する工程、
の一方又は両方を含む態様10又は11に記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
[態様13]
以下の条件1及び条件2の一方又は両方を満たすと、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液を廃棄する態様12に記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
条件1:トルクの経時変化が前記基準を超えると判断する。
条件2:透視度の経時変化が前記基準を超えると判断する。
[態様14]
溶解貯留槽の出口から排出された高分子凝集剤溶液を高分子凝集剤溶液の注入点へ注入するための注入ラインに、溶媒供給ラインから水系溶媒を供給することで注入ラインの少なくとも一部をフラッシングする工程を含む態様10~13の何れかに記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
[態様15]
溶媒供給ラインから分岐する洗浄ラインの吐出口から、前記透視度計に向かって前記水系溶媒を掛ける工程を含む態様10~14の何れかに記載の高分子凝集剤溶液の管理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態に係る高分子凝集剤の溶解貯留装置及び高分子凝集剤溶液の管理方法によれば、高分子凝集剤溶液の性能の経時劣化を簡便に検知することができる。これにより、安定した品質の高分子凝集剤溶液を凝集沈殿処理設備に供給することが可能となる。当該溶解貯留装置及び管理方法は、上下水処理、各種排水処理における凝集沈殿処理に幅広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る高分子凝集剤の溶解貯留装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る高分子凝集剤溶液の管理方法のフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る高分子凝集剤溶液の管理方法のフローチャートの別例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.高分子凝集剤の溶解貯留装置>
図1には、本発明の一実施形態に係る高分子凝集剤の溶解貯留装置100が模式的に示されている。
高分子凝集剤125の溶解貯留装置100は、
高分子凝集剤125を水系溶媒に溶解可能であると共に高分子凝集剤溶液114を貯留可能な溶解貯留槽110と、
高分子凝集剤125を溶解貯留槽110に供給するための高分子凝集剤供給装置120と、
水系溶媒を溶解貯留槽110に供給するための溶媒供給ライン130と、
溶解貯留槽110内に設置される撹拌機140と、
溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の撹拌トルクを測定するためのトルク計150、及び、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の透視度を測定するための透視度計160の一方又は両方と、
を備える。
【0016】
一実施形態において、溶解貯留装置100は、溶解貯留槽110の出口112から排出された高分子凝集剤溶液114を、凝集沈殿処理設備における高分子凝集剤溶液の注入点185Aへ注入するための注入ライン181と、注入ライン181の途中に設置されているポンプ182とを備えることができる。高分子凝集剤溶液の注入点185Aは特に制限はないが、例えば、浄水処理における原水ラインの途中にある凝集沈殿処理設備に注入する場合、混和池とすることができる。原水としては、河川水、湖沼水、貯水池水、伏流水、地下水等が利用できる。また、フロック形成を促進する観点から、高分子凝集剤溶液の注入点185Aは、無機凝集剤の注入点185Bの下流に設けることが好ましい。
【0017】
高分子凝集剤は、用途に応じて適切な高分子凝集剤を選定すればよいが、例えば浄水処理における凝集沈殿処理に使用する場合、水道用高分子凝集剤が用いられる。水道用高分子凝集剤の種類は特に限定されない。例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸アンモニウムからなる群より選択される1種又は2種以上を用いることが可能であるが、特に好ましくはポリアクリル酸ナトリウムである。特開2018-153729号公報に記載の水処理剤も好適に使用できる。ポリアクリルアミド系高分子凝集剤は、ポリアクリルアミドとポリ(メタ)アクリル酸塩の共重合物で、アニオン系高分子凝集剤としての市販品が使用できる。
【0018】
高分子凝集剤供給装置120としては、粉粒体用の公知の定量フィーダ―を使用すればよく特に制限はない。図1の部分拡大図を参照すると、高分子凝集剤供給装置120は一実施形態において、高分子凝集剤貯留槽122と、秤量手段124と、供給口126と、振動付ダンパー128とを備える。高分子凝集剤貯留槽122としてはホッパー等を使用でき、高分子凝集剤125を貯留可能である。高分子凝集剤125は粉末状であるのが一般的である。高分子凝集剤貯留槽122の下方には、秤量手段124が設けられている。高分子凝集剤貯留槽122から導出される高分子凝集剤125は、秤量手段124により秤量された後、所定量の高分子凝集剤125が供給口126から溶解貯留槽110へ供給される。例えば、図示するように、高分子凝集剤125は供給口126から重力により落下させて溶解貯留槽110へ供給することができる。別法として、高分子凝集剤125は供給口126から空気圧送によって溶解貯留槽110へ供給してもよい。高分子凝集剤125を溶解貯留槽110へ供給する際、供給速度が大きすぎると未溶解分が発生しやすい。このため、高分子凝集剤125の溶解貯留槽110への供給速度を制御することが好ましい。供給速度は、例えば定量フィーダ―の流量制御機能を使用することで制御可能である。また、高分子凝集剤貯留槽122には振動付ダンパー128を設置することができる。これにより、振動付ダンパー128の振動をもって高分子凝集剤125を流動しやすくし、秤量手段124による定量測定が円滑に実行できるようになる。一実施形態において高分子凝集剤供給装置120は、後述する運転装置230により制御可能である。
【0019】
溶解貯留槽110には、水系溶媒を溶媒供給ライン130から定量供給可能である。水系溶媒の定量供給を可能とする手段としては、例えば溶媒供給ライン130に設置される流量制御弁(図示せず)、溶解貯留槽110に取り付けられるレベル計、レベルスイッチ等の水位測定装置(図示せず)が挙げられる。その他の手段を用いてもよい。水系溶媒としては、純水、水道水、工業用水、井水、浄化された処理水のろ過水等を用いることができるが、純水が好ましい。一実施形態において溶媒供給ライン130からの水系溶媒の供給は、後述する運転装置230により制御可能である。
【0020】
図示の実施形態においては、溶解貯留槽110は、一槽で構成されているが、溶解貯留槽110の機能は一槽で実現してもよいし、複数の槽で実現してもよい。例えば、高分子凝集剤を溶解するための溶解槽と、得られた高分子凝集剤溶液の貯留槽とに分けてもよい。溶解貯留槽110の容量に特段の制約はないが、一実施形態において、3時間~7日、好ましくは6時間~2日で消費する程度の貯槽量とすることで適度な大きさとすることができる。
【0021】
所定の目標濃度(凝集沈殿処理の対象となる水の濁度にも拠るが、例えば、0.01~0.2質量%)となる配合比で、所定量の高分子凝集剤と水系溶媒が溶解貯留槽110に導入されると、高分子凝集剤が水系溶媒に溶解し、高分子凝集剤溶液114が調製される。溶解貯留槽110中の水系溶媒を撹拌機140で撹拌しながら、秤量した高分子凝集剤を溶解貯留槽110中に投入することにより溶解することが好ましい。撹拌時間は高分子凝集剤が溶解するのに十分な時間を適宜設定すればよく、特段の制約はないが、例えば1~2時間程度とすることができる。撹拌機140の回転数にも特段の制約はないが、例えば、100~250rpmとすることができる。
【0022】
溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114は、ポンプ182によって溶解貯留槽110の出口112から注入ライン181を通って、高分子凝集剤溶液の注入点185Aに注入される。ポンプ182としては、定量供給可能な定量ポンプを使用することが好ましい。注入点185Aから凝集処理設備に注入された高分子凝集剤溶液は、種々の凝集沈殿処理に使用される。例えば、高分子凝集剤溶液は、浄水処理の原水ラインの途中にある混和池に注入可能である。ポンプは一つでもよいが、比較的大きな流量を供給可能なポンプと、比較的小さな流量を供給可能なポンプを並列に設けてもよい。例えば、大流量ポンプは高濁度原水を処理する際の高分子凝集剤溶液の送液に使い、小流量ポンプは低濁度原水を処理する際の高分子凝集剤溶液の送液に使うことができる。なお、廃液時には大流量ポンプで短時間で廃液するのが好ましい。また、排水処理系で高分子凝集剤溶液を使う場合には浄水処理系よりも大量に使うため、大流量ポンプを使うことが好ましい。ポンプの切り替えは三方弁等のバルブを使用すればよい。
【0023】
溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の性能は経時劣化する。性能が劣化した高分子凝集剤溶液114を高分子凝集剤溶液の注入点185Aに注入しても所期の凝集効果を得ることができないことから、高分子凝集剤溶液114の性能が劣化したことを簡便に検知できることが望ましい。高分子凝集剤溶液114は調製後の時間の経過に伴って粘度及び透視度が経時的に変化することから、高分子凝集剤溶液114の性能が劣化したことは、トルク計及び透視度計で測定するのが簡便である。
【0024】
従って、高分子凝集剤の溶解貯留装置100は一実施形態において、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の撹拌トルクを測定するためのトルク計150、及び、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の透視度を測定するための透視度計160の一方又は両方を備える。トルク計150が撹拌機140に付属されている場合にはそれを利用してもよいし、別途設けてもよい。トルク計で測定される値は、トルク値(単位:N-m等)でもよいし、トルク値に基づいて算出される粘度(単位:Pa・s等)でもよいし、トルク計を用いて算出可能であれば、その他のパラメータでもよい。従って、本発明において、トルク計には粘度計が含まれる。トルク計150及び透視度計160は各種製品が市販されているので、適宜選定して使用すればよい。トルク計150としては、例えば、磁歪式、歪ゲージ式等の回転型のトルク計150を好適に使用可能である。透視度計160としては、JIS K0102-1:2021に準拠した製品を使用することが好ましい。
【0025】
トルク計150及び/又は透視度計160による測定結果の経時変化を監視するため、高分子凝集剤125の溶解貯留装置100は、以下の(1)及び(2)の一方又は両方の指令を実行可能な制御部を備えることが好ましい。
(1)トルク計150に対して予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の撹拌トルクを測定することの指令
(2)透視度計160に対して予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の透視度を測定することの指令
【0026】
高分子凝集剤125の溶解貯留装置100には、トルク計150及び透視度計160以外にも、水温計、湿度計、密度計等の他の計測器を設置することができる。トルク計150及び透視度計160によって測定されるパラメータは、これらの他の計測器で測定される測定値と組み合わせることで算出可能なパラメータとすることも可能である。
【0027】
図1を参照すると、高分子凝集剤125の溶解貯留装置100は、溶解貯留装置の制御システム200を備えている。溶解貯留装置の制御システム200は、トルク監視装置210及び透視度監視装置220の一方又は両方を有している。また、溶解貯留装置の制御システム200は、運転装置230を有することができる。溶解貯留装置の制御システム200が有する各装置210、220、230は、それぞれ監視対象又は運転対象となる機器と無線又は有線で通信可能に接続されている。図1には、溶解貯留装置の制御システム200がトルク計150及び/又は透視度計160と通信可能に接続されている状態を例示的に点線で示している。なお、各装置210、220、230の機能はそれぞれ異なるコンピュータで実現してもよいし、一つのコンピュータで実現してもよい。
【0028】
一実施形態において、トルク監視装置210は記憶部A、制御部A、演算部A、入力部A、及び出力部Aを有する。一実施形態において、透視度監視装置220は記憶部B、制御部B、演算部B、入力部B、及び出力部Bを有する。一実施形態において、運転装置230は記憶部C、制御部C、演算部C、入力部C、及び出力部Cを有する。
【0029】
記憶部A、B、Cは、各種データ、オペレーティングシステム(OS)及び各種の演算処理を実行するためのプログラム等を記憶する装置及び回路等で構成することができ、例えば、主に半導体メモリが用いられる一次記憶装置、主にハードディスクドライブや半導体ディスクが用いられる二次記憶装置(補助記憶装置)等、公知の記憶装置を用いることができる。
【0030】
制御部A、B、Cは、入力された命令、指示及びデータや、記憶部A、B、Cに格納されたデータ等を基にプログラムに従って制御対象に対して指令を行う装置及び回路等を指す。例えば、トルク監視装置210の制御部Aはトルク計150を制御対象とすることができ、透視度監視装置220の制御部Bは透視度計160を制御対象とすることができ、運転装置230の制御部Cは、高分子凝集剤供給装置120、溶媒供給ライン130からの水系溶媒の供給、ポンプ182、各種流路切替弁131、183、184、187を制御対象とすることができる。演算部A、B、Cは、入力された命令、指示及びデータや、記憶部A、B、Cに格納されたデータ等を基にプログラムに従って所定の演算を実行する装置及び回路等を指す。制御部A、B、C及び演算部A、B、Cの各種機能は、例えば中央処理装置(CPU)等の制御・演算装置にて実現可能である。
【0031】
入力部A、B、Cは、データ又は命令を制御部A、B、C及び/又は演算部A、B、Cに与えるためのインターフェースであり、スイッチ、キーボード、テンキー、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル、リーダー(OCR)、入力画面、マイク等の音声入力インターフェース等で構成することができる。
【0032】
出力部A、B、Cは、例えば液晶、有機EL等のディスプレイやプリンターで構成することができる。
【0033】
一実施形態において、トルク監視装置210の制御部Aは、トルク計150に対して予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の撹拌トルクを測定することの指令を実行可能である。また、一実施形態において、透視度監視装置220の制御部Bは、透視度計160に対して予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の透視度を測定することの指令を実行可能である。
【0034】
予め定められた異なる複数の時期(測定スケジュール)は、経験的に見出される高分子凝集剤の性能劣化速度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、毎日、毎週又は毎月の測定日時を設定するなどして定期的に測定してもよいし、連続的に測定してもよい。とりわけ、新たに高分子凝集剤溶液114を調製する直前(例:高分子凝集剤125が供給口126から溶解貯留槽110へ供給される1~10分前)、及び/又は、高分子凝集剤溶液114を使用する直前(例:溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114を注入点185Aに注入するためにポンプ182を起動する1~10分前)に測定する事が望ましい。予め定められた異なる複数の時期は、トルク監視装置210の入力部A、及び/又は、透視度監視装置220の入力部Bを介して設定することができる。
【0035】
入力部A、入力部Bを介して設定された測定スケジュールはそれぞれトルク監視装置210の記憶部A、透視度監視装置220の記憶部Bにそれぞれ格納される。トルク監視装置210の制御部Aは記憶部Aに格納されている測定スケジュールに基づいて、撹拌トルクの測定を実行可能である。測定された撹拌トルクのデータは測定日時と関連付けてトルク監視装置210の記憶部Aに保存可能である。また、透視度監視装置220の制御部Bは記憶部Bに格納されている測定スケジュールに基づいて、透視度の測定を実行可能である。測定された透視度のデータは測定日時と関連付けて記憶部Bに保存可能である。このようなデータ保存機能は例えばデータロガーを用いて実現可能である。
【0036】
一実施形態において、トルク監視装置210の演算部Aは、記憶部Aに記憶されている異なる複数の時期に測定された撹拌トルクに基づき、撹拌トルクの経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能である。一実施形態において、トルク監視装置210の出力部Aは、演算部Aによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能である。予め定められた基準は、高分子凝集剤溶液の性能劣化と撹拌トルクの相関関係を調査し、適宜設定すればよいが、高分子凝集剤溶液は調製後の時間の経過に伴って劣化すると粘度が低下するのが一般的である。従って、例えば、高分子凝集剤溶液の調製直後に測定したときの初期の撹拌トルクに対して、撹拌トルクがX%以下に低下することを予め定められた基準とすることができる。Xは例えば、50~70の何れかの値に設定することができ、典型的には70とすることができる。なお、初期の撹拌トルクT0に対して撹拌トルクT1がX%に低下するというときは、T1/T0×100=Xであることを意味する。初期の撹拌トルクは、例えば、所定量の高分子凝集剤と水系溶媒が溶解貯留槽110に導入され、所定の撹拌時間が経過していったん撹拌が終了した直後、例えば高分子凝集剤溶液を調製するための撹拌終了後、1時間以内、好ましくは5分以内とすることができる。
【0037】
一実施形態において、透視度監視装置220の演算部Bは、記憶部Bに記憶されている異なる複数の時期に測定された透視度に基づき、透視度の経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断可能である。一実施形態において、透視度監視装置220の出力部Bは、演算部Bによる前記基準を満たすか否かの判断結果を出力可能である。予め定められた基準は、高分子凝集剤溶液の性能劣化と透視度の相関関係を調査し、適宜設定すればよいが、高分子凝集剤溶液は調製後の時間の経過に伴って劣化すると透視度が低下するのが一般的である。従って、例えば、高分子凝集剤溶液の調製直後に測定したときの初期の透視度に対して、透視度がY%以下に低下することを予め定められた基準とすることができる。Yは例えば、50~70の何れかの値に設定することができ、典型的には70とすることができる。なお、初期の透視度P0に対して透視度P1がY%に低下するというときは、P1/P0×100=Yであることを意味する。初期の透視度の測定時期は、例えば、所定量の高分子凝集剤と水系溶媒が溶解貯留槽110に導入され、所定の撹拌時間が経過していったん撹拌が終了した直後、例えば撹拌終了後、1時間以内、好ましくは5分以内とすることができる。但し、高分子凝集剤溶液の調製後は気泡を抱いている可能性があるため、気泡が測定値に与える影響を排除する場合には、撹拌終了後、5分以上経過後、好ましくは、1時間以上経過後に測定を開始するのが良い。さらに、1時間以上経過しても気泡が残留して測定値に影響する場合には、継続的に測定し1日から2日の経過を目安に透視度が最大になった点を初期の透視度(基準値)とすることが好ましい。
【0038】
一実施形態において、溶解貯留装置100は、溶媒供給ライン130から第一の流路切替弁131を介して分岐する第一の分岐ライン132であって、溶解貯留槽110の出口112とポンプ182の間で注入ライン181に第二の流路切替弁183を介して合流する第一の分岐ライン132と、
ポンプ182と高分子凝集剤溶液の注入点185Aの間で注入ライン181から第三の流路切替弁184を介して分岐する第二の分岐ライン186と、
第二の分岐ライン186から第四の流路切替弁187を介して分岐し、溶解貯留槽110へと連結されている返送ライン188と、
第二の分岐ライン186から第四の流路切替弁187を介して分岐し、排水処理設備190へと連結されている廃棄ライン189と、
を備える。
【0039】
第一の流路切替弁131、第二の流路切替弁183、第三の流路切替弁184及び第四の流路切替弁187としては、必要な流路切替機能を実現可能な電動弁、電磁弁等の電気駆動弁を使用することができる。例えば、電気駆動の三方弁及び四方弁を使用できる。
【0040】
一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液が、注入ライン181、第二の分岐ライン186及び廃棄ライン189を通って排水処理設備190に供給されるように第二の流路切替弁183、第三の流路切替弁184及び第四の流路切替弁187のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、ポンプ182を起動する、高分子凝集剤溶液114の廃棄操作を実行することができる。廃棄操作は弁の切替操作を伴うのでポンプ182が停止している状態から開始することが好ましい。従って、一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、ポンプ182が稼働している場合には、ポンプ182を停止させてから廃棄操作を実行することができる。
【0041】
一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、以下の条件1及び条件2の一方又は両方を満たすと、前記廃棄操作を自動的に実行することができる。
条件1:トルク監視装置210の演算部Aがトルクの経時変化の予め定められた基準を超えると判断する。
条件2:透視度監視装置220の演算部Bが透視度の経時変化の予め定められた基準を超えると判断する。
【0042】
条件1及び条件2の一方又は両方が満たされるということは、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液の性能が劣化している蓋然性が高い。このため、所定条件を満たすことにより自動的に廃棄操作が実行されると、高分子凝集剤溶液の品質管理が容易になる。
【0043】
その他、高分子凝集剤溶液114の廃棄操作は、例えば、入力部Cを介してオペレータが廃棄指令を出すことで、制御部Cが廃棄操作を実行するように構成することもできる。廃棄指令には、即座に廃棄操作を実行するという指令の他、予め定めた日時に廃棄操作を実行するという指令も考えられる。指令の内容は記憶部Cに適宜格納可能である。
【0044】
廃棄操作は、予め定めた時間が経過することで終了してもよい。また、廃棄操作は、レベル計、レベルスイッチ等の水位測定装置(図示せず)により溶解貯留槽110内の凝集剤溶液の高さ位置を測定し、予め定めた値まで低下することを条件として終了してもよい。廃棄操作の終了条件は他の条件を設定してもよい。
【0045】
上記の廃棄操作を実施するにあたっては、第一の流路切替弁131、第一の分岐ライン132、第二の流路切替弁183、第四の流路切替弁187、及び返送ライン188は必要ではない。従って、一実施形態において、溶解貯留装置100は廃棄操作のために、ポンプ182と高分子凝集剤溶液の注入点185Aの間で注入ライン181から第三の流路切替弁184を介して分岐し、排水処理設備190へと連結されている第二の分岐ライン186(この場合では廃棄ライン189と同義である。)を少なくとも備える。この場合、運転装置230の制御部Cは、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液が、注入ライン181及び第二の分岐ライン186を通って排水処理設備190に供給されるように第三の流路切替弁184を操作し、ポンプ182を起動する、高分子凝集剤溶液114の廃棄操作を実行することができる。廃棄操作は弁の切替操作を伴うのでポンプ182が停止している状態から開始することが好ましい。従って、一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、ポンプ182が稼働している場合には、ポンプ182を停止させてから廃棄操作を実行することができる。
【0046】
高分子凝集剤溶液の注入点185Aへの供給が必要なく、ポンプ182が停止しているときに、注入ライン181を洗浄してもよい。また、高分子凝集剤溶液の廃棄操作の後も、注入ライン181を洗浄してもよい。注入ライン181を洗浄することは、次回注入再開時に性能が劣化した高分子凝集剤溶液の配管残留液を注入ライン181に注入することがなくなり、常に水質維持が可能となるため重要である。
【0047】
従って、一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、溶媒供給ライン130からの水系溶媒が、第一の分岐ライン132、注入ライン181、第二の分岐ライン186及び返送ライン188を通って溶解貯留槽110に供給されるように第一の流路切替弁131、第二の流路切替弁183、第三の流路切替弁184及び第四の流路切替弁187のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、ポンプ182を起動するフラッシングを実行することができる。フラッシングを実行すると、水系溶媒が注入ライン181を流れるので、ポンプ182を含む注入ライン181の部分を洗浄することができる。また、返送ライン188及び廃棄ライン189へと繋がる第二の分岐ライン186を洗浄することができる。
【0048】
一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、溶媒供給ライン130からの水系溶媒が、第一の分岐ライン132、注入ライン181を通って注入点185Aに供給されるように第一の流路切替弁131、第二の流路切替弁183、及び第三の流路切替弁184のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、ポンプ182を起動するフラッシングを更に実行することができる。これにより、上記のフラッシングでは洗浄できない第三の流路切替弁184から注入点185Aまでの注入ライン181の部分を洗浄することもできる。フラッシングは弁の切替操作を伴うのでポンプ182が停止している状態から開始することが好ましい。従って、一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、ポンプ182が稼働している場合には、ポンプ182を停止させてからフラッシングを実行することができる。なお、水系溶媒が水道水等、圧力を有している場合には、この圧力を利用して(例えば第一の分岐ライン132をポンプ182の下流側に接続して)注入ライン181の配管内をフラッシング可能であるが、ポンプ182内のフラッシングを考慮すると、第一の分岐ライン132をポンプ182の上流側に接続する方法が好ましい。
【0049】
フラッシングは、高分子凝集剤溶液114の廃棄操作を実行後、自動的に実行するように構成してもよい。その他、例えば、入力部Cを介してオペレータがフラッシング指令を出すことで、制御部Cがフラッシングを実行するように構成することもできる。フラッシング指令には、即座にフラッシングを実行するという指令の他、予め定めた日時にフラッシングを実行するという指令も考えられる。指令の内容は記憶部Cに適宜格納可能である。
【0050】
フラッシングは、予め定めた時間が経過することで終了してもよい。また、フラッシングは、フラッシング対象配管の容量に対して予め定めた体積、例えば2~4倍、典型的には3倍量の水系溶媒により洗浄することを条件として終了してもよい。フラッシングの終了条件は他の条件を設定してもよい。
【0051】
フラッシングの後は、溶解貯留槽110に残留する水系溶媒を排出するため、先述した廃棄操作を再度実行してもよい。また、フラッシングの後は、溶解貯留槽110に残留する水系溶媒を次回の高分子凝集剤溶液114の調製に再利用することもできる。再利用することは省エネルギー及びコスト低減に寄与する。フラッシングに利用した水系溶媒を再利用すると高分子凝集剤溶液の品質が変化しやすいので、本発明の一実施形態に係る高分子凝集剤の溶解貯留装置及び/又は高分子凝集剤溶液の管理方法によってトルクや透視度を監視する意義が大きくなる。
【0052】
古い高分子凝集剤溶液114の廃棄操作及びフラッシングの後、溶解貯留槽110内で新たな高分子凝集剤溶液114を調製することができる。一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、溶媒供給ライン130からの水系溶媒が溶解貯留槽110内に所定量供給されるように第一の流路切替弁131及び流量制御弁(図示せず)等を制御すると共に、高分子凝集剤供給装置120を制御可能である。また、運転装置230の制御部Cは、撹拌機140を制御可能である。一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、ポンプ182が稼働状態にあるときは、ポンプ182を稼働停止させた後に高分子凝集剤溶液114の調製を行うことができる。
【0053】
例えば、入力部Cを介してオペレータが高分子凝集剤溶液114の調製指令を出すことで、制御部Cが高分子凝集剤溶液114の調製に必要な機器の制御を実行するように構成することができる。調製指令には、即座に調製を実行するという指令の他、予め定めた日時に調製を実行するという指令も考えられる。一実施形態においては、入力部Cから、高分子凝集剤125と水系溶媒のそれぞれの供給量、高分子凝集剤125を溶解貯留槽110へ供給する際の供給速度などの調製条件が入力可能となるように運転装置230を構成してもよい。指令の内容は記憶部Cに適宜格納可能である。
【0054】
一方、溶解貯留装置100を使用し続けると、透視度計160も時間の経過に伴い汚れ、透視度の測定精度が低下する。このため、透視度計160についても洗浄することが好ましい。そこで、一実施形態において、高分子凝集剤の溶解貯留装置100は、溶媒供給ライン130から第一の流路切替弁131を介して分岐する洗浄ライン133であって、透視度計160に向かってその吐出口134から水系溶媒を掛けるための洗浄ライン133を備える。このため、一実施形態において、運転装置230の制御部Cは、溶媒供給ライン130からの水系溶媒が、洗浄ライン133を通って吐出口134から流出するように第一の流路切替弁131を制御することができる。洗浄ライン133の吐出口134から、透視度計160に向かって水系溶媒を掛けることで透視度計160を洗浄することが可能である。透視度計160に向かって水系溶媒を掛ける方法は特に制限はないが、噴射する方法、掛け流す方法などを適宜選択すればよい。
【0055】
透視度計160を洗浄するタイミングについては特に制限はないが、先述した条件1及び条件2の一方又は両方が満たされ、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114を廃棄することが決定された後であることが好ましい。例えば、当該決定後、高分子凝集剤溶液114の廃棄操作前、廃棄操作中又は廃棄操作後に洗浄することができる。新たに高分子凝集剤溶液114を調製する直前(例:高分子凝集剤125が供給口126から溶解貯留槽110へ供給される1~10分前)に洗浄することもできる。その他、例えば、入力部Cを介してオペレータが透視度計160の洗浄指令を出すことで、制御部Cが透視度計160に対する洗浄操作を実行するように構成することもできる。洗浄指令には、即座に洗浄操作を実行するという指令の他、予め定めた日時に洗浄操作を実行するという指令も考えられる。指令の内容は記憶部Cに適宜格納可能である。
【0056】
透視度計160の洗浄は、予め定めた時間が経過することで終了してもよい。また、透視度計160の洗浄は、予め定めた体積、例えば1~10Lの水系溶媒を供給することを条件として終了してもよい。また、透視度計160のスイッチを入れたままにして、洗浄中の透視度計の指示値が安定するのをもって終了条件としてもよい。ここで、供給する水系溶媒の水流や衝撃等によって透視度計の指示値がふらついて指示値を確認することが難しい場合は、一時的に水系溶媒の供給を停止して指示値を読みとる工程を設けても良い。透視度計160の洗浄の終了条件は他の条件を設定してもよい。
【0057】
なお、溶解貯留装置100は、並列に二台以上設置してもよい。これにより、一つの溶解貯留装置100のメンテンナンス、フラッシング、又は高分子凝集剤溶液114の交換時等に他の溶解貯留装置100を稼働させることができるので、溶解貯留装置100を利用できない時間を減少させること又はなくすことが可能である。
【0058】
<2.高分子凝集剤溶液の管理方法>
本発明の一実施形態によれば、高分子凝集剤溶液114の管理方法が提供される。高分子凝集剤溶液114の管理方法は、本発明の一実施形態に係る溶解貯留装置100を用いなくても実施可能であり、例えば人間が行うことが可能であるが、溶解貯留装置100を用いることで好適に実施可能である。従って、以下では理解の容易化のため、図1に示す溶解貯留装置100に付与した符号を参照しながら高分子凝集剤溶液114の管理方法について説明する。
【0059】
一実施形態において、高分子凝集剤溶液114の管理方法は、
溶解貯留槽110内に水系溶媒を溶媒供給ライン130から供給する工程1と、
溶解貯留槽110内に高分子凝集剤125を供給する工程2と、
溶解貯留槽110内の高分子凝集剤125を水系溶媒に撹拌しながら溶解し、高分子凝集剤溶液114を得る工程3と、
溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の撹拌トルクをトルク計150で測定すること、及び、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の透視度を透視度計160で測定することの一方又は両方を行う工程4と、
を含む。
【0060】
トルク計150及び/又は透視度計160による測定結果の経時変化を監視するため、工程4では、以下の(1)及び(2)の一方又は両方を行うことが好ましい。
(1)予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の撹拌トルクを測定すること
(2)予め定められた異なる複数の時期に、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の透視度を測定すること
【0061】
予め定められた異なる複数の時期(測定スケジュール)は、先述した通り、経験的に見出される高分子凝集剤の性能劣化速度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、毎日、毎週又は毎月の測定日時を設定するなどして定期的に測定してもよいし、連続的に測定してもよい。
【0062】
一実施形態において、高分子凝集剤溶液114の管理方法は、
トルク計150によって異なる複数の時期に測定されたトルクの経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断する工程、及び、
透視度計160によって異なる複数の時期に測定された透視度の経時変化が予め定められた基準を満たすか否かを判断する工程、
の一方又は両方を含む。
【0063】
予め定められた基準は、高分子凝集剤溶液の性能劣化と撹拌トルクの相関関係を調査し、適宜設定すればよいが、高分子凝集剤溶液は調製後の時間の経過に伴って劣化すると粘度が低下するのが一般的である。従って、例えば、高分子凝集剤溶液の調製直後に測定したときの初期の撹拌トルクに対して、撹拌トルクが70%以下に低下することを予め定められた基準とすることができる。
【0064】
一実施形態において、高分子凝集剤溶液114の管理方法は、以下の条件1及び条件2の一方又は両方を満たすと、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114を廃棄する。
条件1:トルクの経時変化が前記基準を超えると判断する。
条件2:透視度の経時変化が前記基準を超えると判断する。
条件1及び条件2の一方又は両方が満たされるということは、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液の性能が劣化している蓋然性が高い。このため、所定条件を満たすことにより廃棄するように予め決めておくと、高分子凝集剤溶液114の品質管理が容易になる。
【0065】
一実施形態において、高分子凝集剤溶液114の管理方法は、溶解貯留槽110の出口から排出された高分子凝集剤溶液114を高分子凝集剤溶液の注入点185Aへ注入するための注入ライン181に、溶媒供給ライン130から水系溶媒を供給することで注入ラインの少なくとも一部、好ましくは全部をフラッシングする工程を含む。フラッシングすることにより注入ラインを洗浄可能である。フラッシングを実施するタイミングは特段の制限はないが、高分子凝集剤溶液の注入点185Aへの供給が不要であり、ポンプ182が停止しているとき、又は、高分子凝集剤溶液114を廃棄した後に実施することが好ましい。
【0066】
一実施形態において、高分子凝集剤溶液114の管理方法は、溶媒供給ライン130から分岐する洗浄ライン133の吐出口134から、透視度計160に向かって水系溶媒を掛ける工程を含む。洗浄ライン133の吐出口134から、透視度計160に向かって水系溶媒を掛けることで透視度計160を洗浄することが可能である。透視度計160に向かって水系溶媒を掛ける方法は特に制限はないが、噴射する方法、掛け流す方法などを適宜選択すればよい。
【0067】
透視度計160を洗浄するタイミングについては特に制限はないが、先述した条件1及び条件2の一方又は両方が満たされ、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114を廃棄することが決定された後であることが好ましい。例えば、当該決定後、高分子凝集剤溶液114の廃棄操作前、廃棄操作中又は廃棄操作後に洗浄することができる。
【0068】
図2には、本発明の一実施形態に係る高分子凝集剤溶液114の管理方法を、本発明の一実施形態に係る溶解貯留装置100を用いて行う場合のフローチャートの一例が記載されている。高分子凝集剤溶液114の調製が完了(調製のための撹拌が終了)すると、トルク監視装置210の制御部Aからの指令により、トルク計150は溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の初期の撹拌トルクを測定する(S101)。測定された撹拌トルクの値はトルク監視装置210の記憶部Aに測定日時と共に保存される。
【0069】
その後、トルク監視装置210の記憶部Aに保存されている測定スケジュールに従い、トルク監視装置210の制御部Aからの指令により、トルク計150は溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の撹拌トルクを再度測定する(S102)。再度測定された撹拌トルクは、演算部Aによって、記憶部Aに保存されている初期の撹拌トルクと比較され、撹拌トルクの経時変化が予め定められた基準(例えば廃棄の目安となる基準)を満たすか否か判断される(S103)。
【0070】
予め定められた基準を満たさない(例えば廃棄の目安となる基準には到達していない)と判断されると、測定スケジュールに従い、S102が繰り返される。一方、予め定められた基準を満たす(例えば廃棄の目安となる基準に到達した)と判断されると、運転装置230の制御部Cは、ポンプ182が稼働している場合はポンプ182を停止してから、高分子凝集剤溶液114の廃棄操作を実行する(S104)。具体的には、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液が、注入ライン181、第二の分岐ライン186及び廃棄ライン189を通って排水処理設備190に供給されるように第二の流路切替弁183、第三の流路切替弁184及び第四の流路切替弁187のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、ポンプ182を起動する。
【0071】
その後、予め定めた廃棄操作の終了条件(時間、水位等)が満たされると、運転装置230の制御部Cはポンプ182を停止することで廃棄操作を終了させる。廃棄操作の終了後、運転装置230の制御部Cは、溶媒供給ライン130からの水系溶媒が、第一の分岐ライン132、注入ライン181を通って注入点185Aに供給されるように第一の流路切替弁131、第二の流路切替弁183、及び第三の流路切替弁184のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、ポンプ182を起動するフラッシングを更に実行する(S105)。その後、予め定めたフラッシングの終了条件(時間、水系溶媒の供給量等)が満たされると、運転装置230の制御部Cはポンプ182を停止することでフラッシングを終了させる。
【0072】
図3には、本発明の一実施形態に係る高分子凝集剤溶液114の管理方法を、本発明の一実施形態に係る溶解貯留装置100を用いて行う場合のフローチャートの別例が記載されている。高分子凝集剤溶液114の調製が完了(調製のための撹拌が終了)すると、透視度監視装置220の制御部Bからの指令により、透視度計160は溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の初期の透視度を測定する(S201)。測定された透視度の値は透視度監視装置220の記憶部Bに測定日時と共に保存される。
【0073】
その後、透視度監視装置220の記憶部Bに保存されている測定スケジュールに従い、透視度監視装置220の制御部Bからの指令により、透視度計160は溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液114の透視度を再度測定する(S202)。再度測定された透視度は、演算部Bによって、記憶部Bに保存されている初期の透視度と比較され、透視度の経時変化が予め定められた基準(例えば廃棄の目安となる基準)を満たすか否か判断される(S203)。
【0074】
予め定められた基準を満たさない(例えば廃棄の目安となる基準には到達していない)と判断されると、予め定めた測定スケジュールに従い、S202が繰り返される。一方、予め定められた基準を満たす(例えば廃棄の目安となる基準に到達した)と判断されると、運転装置230の制御部Cは、ポンプ182が稼働している場合はポンプ182を停止してから、高分子凝集剤溶液114の廃棄操作を実行する(S204)。具体的には、溶解貯留槽110内の高分子凝集剤溶液が、注入ライン181、第二の分岐ライン186及び廃棄ライン189を通って排水処理設備190に供給されるように第二の流路切替弁183、第三の流路切替弁184及び第四の流路切替弁187のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、ポンプ182を起動する。
【0075】
その後、予め定めた廃棄操作の終了条件(時間、水位等)が満たされると、運転装置230の制御部Cはポンプ182を停止することで廃棄操作を終了させる。廃棄操作の終了後、運転装置230の制御部Cは、溶媒供給ライン130からの水系溶媒が、洗浄ライン133を通って吐出口134から流出するように第一の流路切替弁131を切替え、溶媒供給ライン130に設置される流量制御弁(図示せず)を操作して、洗浄ライン133の吐出口134から、透視度計160に向かって水系溶媒を掛ける透視度計160の洗浄操作を実行する(S205)。予め定めた洗浄操作の終了条件(時間、水系溶媒の供給量等)が満たされると、運転装置230の制御部Cは、流量制御弁(図示せず)を操作することで洗浄操作を終了させる。
【0076】
次いで、運転装置230の制御部Cは、溶媒供給ライン130からの水系溶媒が、第一の分岐ライン132、注入ライン181を通って注入点185Aに供給されるように第一の流路切替弁131、第二の流路切替弁183、及び第三の流路切替弁184のうち流路の切替が必要な流路切替弁を操作し、ポンプ182を起動するフラッシングを更に実行する(S206)。その後、予め定めたフラッシングの終了条件(時間、水系溶媒の供給量等)が満たされると、運転装置230の制御部Cはポンプ182を停止することでフラッシングを終了させる。
【0077】
以上、高分子凝集剤が劣化している蓋然性が高い、すなわち、所定条件(「廃棄条件」という。)を満たすことにより自動的に廃棄操作が実行される態様について記載したが、所定条件(「継ぎ足し条件」という。)を満たした場合に高分子凝集剤溶液を全量廃棄せずに、一部または全部を残したまま、新たな高分子凝集剤や水系溶媒を継ぎ足してもよい。例えば、継ぎ足し条件は、トルク及び/又は透視度の経時変化が廃棄基準には到達しないが、一定程度大きい場合とすることができる。
【0078】
一実施形態において、高分子凝集剤溶液の調製直後に測定したときの初期の撹拌トルクに対して、撹拌トルクがX%以下に低下することを廃棄条件とし、撹拌トルクがZ%以下に低下することを継ぎ足し条件とすると、90≧Z≧X+10の何れかの値にZを設定することができる。別の一実施形態において、高分子凝集剤溶液の調製直後に測定したときの初期の透視度に対して、透視度がY%以下に低下することを廃棄条件とし、透視度がW%以下に低下することを継ぎ足し条件とすると、90≧W≧Y+10の何れかの値にWを設定することができる。更に別の一実施形態において、撹拌トルクがZ%以下に低下し、且つ、透視度がW%以下に低下することを継ぎ足し条件としてもよい。
【0079】
このように、撹拌トルクをトルク計で測定すること、及び、溶解貯留槽内の高分子凝集剤溶液の透視度を透視度計で測定することの一方又は両方を行いながら、新たな高分子凝集剤を継ぎ足していくことで、廃棄操作を省略又は簡略化して高分子凝集剤溶液の性能を復活させることができる。
【0080】
残っていた古い高分子凝集剤溶液がトルク、透視度に与える影響が大きく、調製された高分子凝集剤の性能とトルク、透視度の関係が変わってしまう場合は、撹拌トルク及び/又は透視度の継ぎ足し条件を適宜変更、調整しても良い。また、継ぎ足した高分子凝集剤が溶解しにくい場合は、予め高めの濃度で高分子凝集剤を調製し、別途設けた希釈工程を経て注入点に供給するようにしておき、高分子凝集剤の劣化度合いに応じて希釈工程における希釈割合を下げたり、希釈を止めたりして調製しても良い。このようにすることで、高分子凝集剤を無駄なく使用できるとともに、高分子凝集剤の廃棄、再調製の工程を省略又は簡略化して、連続的な運用も可能となる。
【符号の説明】
【0081】
100 :溶解貯留装置
110 :溶解貯留槽
112 :出口
114 :高分子凝集剤溶液
120 :高分子凝集剤供給装置
122 :高分子凝集剤貯留槽
124 :秤量手段
125 :高分子凝集剤
126 :供給口
128 :振動付ダンパー
130 :溶媒供給ライン
131 :第一の流路切替弁
132 :第一の分岐ライン
133 :洗浄ライン
134 :吐出口
140 :撹拌機
150 :トルク計
160 :透視度計
181 :注入ライン
182 :ポンプ
183 :第二の流路切替弁
184 :第三の流路切替弁
185A :高分子凝集剤の注入点
185B :無機凝集剤の注入点
186 :第二の分岐ライン
187 :第四の流路切替弁
188 :返送ライン
189 :廃棄ライン
190 :排水処理設備
200 :溶解貯留装置の制御システム
210 :トルク監視装置
220 :透視度監視装置
230 :運転装置
図1
図2
図3