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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129575
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240919BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240919BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038883
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】米谷 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕志
(72)【発明者】
【氏名】羽田 崇人
(72)【発明者】
【氏名】持永 康太
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA42
3D344AA03
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】迷光の発生を抑制できるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ヘッドアップディスプレイ装置100は、上部に開口部111が形成された筐体110と、開口部を塞ぐ透光性のカバー部120と、筐体内に収容された表示素子130と、表示素子から発せられた表示光の光路上に配置された第一光学素子140と、第一光学素子を通過した表示光の光路上であって、第一光学素子の前方に配置され、当該表示光を開口部に向けて反射する第二光学素子150とを備えている。カバー部は、当該カバー部の前端部121から後端部122に向かう方向で下降する曲面部123及び、下方に向けて凸となる形状を有している。第一光学素子は、表示光を収斂させる作用を有している。表示素子のうち第一光学素子との距離が近い第一端部131から発せられた表示光の中で、第一光学素子の上端部141を通過した光L3は第二光学素子の上端よりも下方に向かう。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部が形成された筐体と、
前記開口部を塞ぐ透光性のカバー部と、
前記筐体内に収容された表示素子と、
前記表示素子から発せられた表示光の光路上に配置された第一光学素子と、
前記第一光学素子を通過した前記表示光の光路上であって、前記第一光学素子の前方に配置され、当該表示光を開口部に向けて反射する第二光学素子とを備え、
前記カバー部は、当該カバー部の前端部から後端部に向かう方向で下降する曲面部及び、下方に向けて凸となる形状を有し、
前記第一光学素子は、前記表示光を収斂させる作用を有し、
前記表示素子のうち前記第一光学素子との距離が近い一端部から発せられた表示光の中で、前記第一光学素子の上端部を通過した上端部通過光は、前記第二光学素子の上端よりも下方に向かう、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記表示素子の中心から前記第一光学素子の中心までの距離Dと、前記第一光学素子の焦点距離fvとの関係は、D>|fv|を満たす、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記表示素子の前記一端部から発せられた表示光の中で、前記第一光学素子の下端部を通過した下端部通過光は、上向きのベクトルを有しながら、前記第二光学素子に向かう、
請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記カバー部の後端部は、前記カバー部の前端部よりも下方に位置する、
請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記第一光学素子は、凹面鏡である、
請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記第一光学素子は、凸レンズである、
請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記表示素子の少なくとも一部は、前記第二光学素子の下端よりも上方に位置する、
請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表示光を発する表示器と、表示器を収容するケースであって、表示光がケース外部に位置する投影部に投影されるように、表示光をケース外部へと射出する開口を有するケースと、開口を塞ぐ開口カバーと、を備えたヘッドアップディスプレイ装置が開示されている。このようなヘッドアップディスプレイ装置では、開口カバーが、開口により隔てられた両側のうち表示光の入射側へ凹むように放物線に沿って湾曲している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-98923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したヘッドアップディスプレイ装置では、開口カバーを起因として迷光が発生するおそれがある。これは、低背化を進めたヘッドアップディスプレイ装置で顕著となりうる。
【0005】
そこで、本開示の目的は、迷光の発生を抑制できるヘッドアップディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るヘッドアップディスプレイ装置は、上部に開口部が形成された筐体と、前記開口部を塞ぐ透光性のカバー部と、前記筐体内に収容された表示素子と、前記表示素子から発せられた表示光の光路上に配置された第一光学素子と、前記第一光学素子を通過した前記表示光の光路上であって、前記第一光学素子の前方に配置され、当該表示光を開口部に向けて反射する第二光学素子とを備え、前記カバー部は、当該カバー部の前端部から後端部に向かう方向で下降する曲面部及び、下方に向けて凸となる形状を有し、前記第一光学素子は、前記表示光を収斂させる作用を有し、前記表示素子のうち前記第一光学素子との距離が近い一端部から発せられた表示光の中で、前記第一光学素子の上端部を通過した上端部通過光は、前記第二光学素子の上端よりも下方に向かう。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、迷光の発生を抑制可能なヘッドアップディスプレイ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の使用例を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置により表示される画像の表示領域を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す模式断面図である。
図4図4は、実施の形態に係る表示素子の第一端部から発せられた光のうちの一部の光の光路を示す説明図である。
図5図5は、比較例に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す模式断面図である。
図6図6は、変形例1に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す模式断面図である。
図7図7は、変形例1に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す模式断面図である。
図8図8は、変形例1に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一態様に係るヘッドアップディスプレイ装置は、上部に開口部が形成された筐体と、前記開口部を塞ぐ透光性のカバー部と、前記筐体内に収容された表示素子と、前記表示素子から発せられた表示光の光路上に配置された第一光学素子と、前記第一光学素子を通過した前記表示光の光路上であって、前記第一光学素子の前方に配置され、当該表示光を開口部に向けて反射する第二光学素子とを備え、前記カバー部は、当該カバー部の前端部から後端部に向かう方向で下降する曲面部及び下方に向けて凸となる形状を有し、前記第一光学素子は、前記表示光を収斂させる作用を有し、前記表示素子のうち前記第一光学素子との距離が近い一端部から発せられた表示光の中で、前記第一光学素子の上端部を通過した光は、前記第二光学素子の上端よりも下方に向かう。
【0010】
ここで、表示素子のうち第一光学素子との距離が近い一端部から発せられた表示光の中で、第一光学素子の上端部を通過した上端部通過光は、第二光学素子から外れてカバー部で反射し迷光となりやすい。このため、本態様では、カバー部が、前端部から後端部にかけて下降し、下方に向けて凸となる形状を有しているので、カバー部の前端部を上端部通過光から避けた位置に配置することができる。カバー部がこのような形状であると、第一光学素子を通過した表示光が、カバー部で反射しうるが、第一光学素子は、表示光を収斂させる作用を有しているので、その収斂によって表示光をカバー部から回避させることも可能である。さらに、表示素子、第一光学素子及び第二光学素子は、上端部通過光が第二光学素子の上端よりも下方に向かうように配置されているので、上端部通過光が第二光学素子から外れにくくなっている。これらのことにより、上端部通過光を起因とした迷光の発生を抑制することができる。
【0011】
また、前記表示素子の中心から前記第一光学素子の中心までの距離Dと、前記第一光学素子の焦点距離fvとの関係は、D>|fv|を満たしてもよい。
【0012】
これによれば、距離Dと、第一光学素子の焦点距離fvとが上記関係を満たしているので、第一光学素子が収斂した表示光を確実に交差させることができる。
【0013】
また、前記表示素子の前記一端部から発せられた表示光の中で、前記第一光学素子の下端部を通過した下端部通過光は、上向きのベクトルを有しながら、前記第二光学素子に向かってもよい。
【0014】
これによれば、下端部通過光が上向きのベクトルを有しながら第二光学素子に向かうので、表示光が消費するスペースを削減することができる。この削減されたスペースに表示素子を配置することができ、低背化を向上させることができる。
【0015】
また、前記カバー部の後端部は、前記カバー部の前端部よりも下方に位置してもよい。
【0016】
これによれば、カバー部の後端部が、カバー部の前端部よりも下方に位置しているので、ヘッドアップディスプレイ装置の後部での低背化を向上させることができる。
【0017】
また、前記第一光学素子は、凹面鏡であってもよい。
【0018】
これによれば、第一光学素子として凹面鏡を採用したヘッドアップディスプレイ装置であっても、低背化を向上させることができる。
【0019】
また、前記第一光学素子は、凸レンズであってもよい。
【0020】
これによれば、第一光学素子として凸レンズを採用したヘッドアップディスプレイ装置であっても、低背化を向上させることができる。
【0021】
また、前記表示素子の少なくとも一部は、前記第二光学素子の下端よりも上方に位置してもよい。
【0022】
これによれば、表示素子の一部と、第二光学素子の下端とが重畳するので、ヘッドアップディスプレイ装置の低背化を向上させることができる。
【0023】
(実施の形態)
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0024】
本実施の形態では、鉛直方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する方向であって車両の進行方向をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向(車両の左右方向)をY軸方向とする。Z軸マイナス方向は下方であり、Z軸プラス方向は上方である。X軸マイナス方向は車両の進行方向(前方)であり、X軸プラス方向は後方である。Y軸マイナス方向は、前方を向いた場合に左方であり、Y軸プラス方向は前方を向いた場合に右方である。このように、本開示においては、ヘッドアップディスプレイ装置を車両に搭載した際の車両の向きを基準として各方向が定義されている。
【0025】
[1.ヘッドアップディスプレイ装置の使用例]
まず、図1及び図2を参照しながら、本実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置100の使用例及び概略構成について説明する。図1は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置100の使用例を示す図である。図2は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置100により表示される画像の表示領域を示す図である。
【0026】
本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ装置100は、車載用のヘッドアップディスプレイ(HUD)として構成され、車両300のダッシュボード301の上面付近に取り付けられる。
【0027】
このヘッドアップディスプレイ装置100は、表示媒体であるウインドシールド(フロントガラス)302の領域D1に光を投射する。投射された光はウインドシールド302に反射される。この反射光は、ヘッドアップディスプレイ装置100のユーザである運転席に座る運転者の目に向かう。運転者は、目に入ったその反射光を、ウインドシールド302越しに見える実際にある物を背景に、ウインドシールド302の反対側(車外側)に見える虚像I1として捉える。本実施の形態においてはこの一連の状況を、ヘッドアップディスプレイ装置100はウインドシールド302を用いて虚像I1を表示する、と表現する。
【0028】
図2は、本実施の形態におけるヘッドアップディスプレイ装置100によって光が投射される領域であるD1の一例を示す図である。
【0029】
図2に示すように、ダッシュボード301に取り付けられたヘッドアップディスプレイ装置100は例えば、光をウインドシールド302の運転席側下寄りに位置する領域D1(図中破線で囲まれた領域)に投射する。これにより、運転席に座る運転者から見てウインドシールド302の反対側(車外側)に見える虚像I1(図1参照)が表示される。
【0030】
[2.ヘッドアップディスプレイ装置の構成]
次に、図3を用いて、ヘッドアップディスプレイ装置100の構成について説明する。図3は、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置100を示す模式断面図である。
【0031】
図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、筐体110と、カバー部120と、表示素子130と、第一光学素子140と、第二光学素子150とを備えている。
【0032】
筐体110は、遮光性の樹脂または金属から形成された箱状体である。具体的には、筐体110は、Y軸方向に長い略直方体状を有しており、その上部に開口部111が形成されている。筐体110において前壁112の上端は、後壁113の上端よりも高い位置に配置されていて、その前壁112の上端と後壁113の上端との間が開口部111となっている。開口部111は、カバー部120によって塞がれている。筐体110及びカバー部120の内部空間には、表示素子130、第一光学素子140及び第二光学素子150が収容されている。
【0033】
カバー部120は、例えば透光性の樹脂またはガラスから形成された曲板体である。具体的には、カバー部120は、前端部121が前壁112の上端に接合されていて、後端部122が後壁113の上端に接合されている。カバー部120は、全体として下方に向けて凸となる形状を有している。カバー部120は、当該カバー部120の前端部121から後端部122に向かう方向(X軸プラス方向)で下降する曲面部123を有している。カバー部120の後端部122は、前端部121よりも下方に位置している。ここでカバー部120の最下点P1は、カバー部120のX軸方向の中心よりもX軸プラス方向に配置されている。
【0034】
表示素子130は、例えば、液晶パネルであり、図示しない光源からの光が照射されると、虚像となる表示光を第一光学素子140に照射する。表示素子130は有機ELパネルであってもよい。表示素子130は、平面視矩形状に形成されており、水平面(XY面)に対して傾く姿勢で配置されている。具体的には、表示素子130は、各長辺がY軸方向に沿っており、一方の長辺が他方の長辺よりも上方となる姿勢で配置されている。本実施の形態では、表示素子130における後方の長辺は、前方の長辺よりも下方に配置されている。以降、表示素子130における後方の長辺を含む端部を第一端部131と称し、表示素子130における前方の長辺を含む端部を第二端部132と称する場合がある。第一端部131は、第二端部132よりも表示素子130までの距離が近い一端部の一例である。表示素子130において表示光を出射する表示面は、第一光学素子140に対向している。
【0035】
第一光学素子140は、表示素子130から発せられた表示光の光路上に配置されており、表示光を収斂させる作用を有する光学部材である。具体的には、第一光学素子140は平面視矩形状に形成された凹面鏡である。第一光学素子140は、鉛直面(YZ面)に対して傾く姿勢で配置されている。具体的には、第一光学素子140は、各長辺がY軸方向に沿っており、一方の長辺が他方の長辺よりも上方となる姿勢で配置されている。本実施の形態では、第一光学素子140における上方の長辺は、下方の長辺よりも前方に配置されている。以降、第一光学素子140における上方の長辺を含む端部を上端部141と称し、第一光学素子140における下方の長辺を含む端部を下端部142と称する場合がある。第一光学素子140の反射面は、表示素子130及び第二光学素子150に対向している。つまり、第一光学素子140は、凹面鏡の鏡面である反射面が筐体110の内方を向き、凸面が筐体110の外方を向いている。
【0036】
ここで、図3に示すようにY軸方向視において、表示素子130の中心から第一光学素子140の中心までの距離Dと、第一光学素子140の焦点距離fvとの関係が、D>|fv|を満たすように、表示素子130及び第一光学素子140が配置されている。また、Y軸方向視において、第一光学素子140の中心から第二光学素子150の中心までの距離Eと、第一光学素子140の焦点距離fvとの関係が、E>|fv|を満たすように、第一光学素子140及び第二光学素子150が配置されている。
【0037】
第二光学素子150は、第一光学素子140を通過した表示光の光路上に配置されていて、第一光学素子140で反射された表示光を、開口部111に向けて反射する光学部材である。具体的には、第二光学素子150は、平面視矩形状に形成された凹面鏡である。第二光学素子150は、第一光学素子140の前方で、鉛直面(YZ面)に対して傾く姿勢で配置されている。具体的には、第二光学素子150は、各長辺がY軸方向に沿っており、一方の長辺が他方の長辺よりも上方となる姿勢で配置されている。本実施の形態では、第二光学素子150における上方の長辺は、下方の長辺よりも前方に配置されている。以降、第二光学素子150における上方の長辺を含む端部を上端部151と称し、第二光学素子150における下方の長辺を含む端部を下端部152と称する場合がある。第二光学素子150の反射面は、第二光学素子150及びカバー部120に対向している。つまり、第二光学素子150は、凹面鏡の鏡面である反射面が筐体110の内方を向き、凸面が筐体110の外方を向いている。
【0038】
[3.ヘッドアップディスプレイ装置の作用]
次に、表示素子130から発せられた表示光の光路について説明する。図3に示すように、表示素子130のうち、第一端部131から発せられる大半の光L1は、第一光学素子140の下端部142で反射されることで、当該下端部142を通過する。つまり、光L1は、第一光学素子140の下端部142を通過する下端部通過光である。光L1は、下端部142で反射されることで、上向きのベクトルを有しながら、第二光学素子150の上端部151に向かう。これは、第一光学素子140の収斂作用によるものである。その後、光L1は、第二光学素子150の上端部151で反射されて、カバー部120を透過しウインドシールド302に向かう。
【0039】
一方、表示素子130のうち、第二端部132から発せられる大半の光L2は、第一光学素子140の上端部141で反射されることで、当該上端部141を通過する。光L2は、上端部141で反射されて下向きのベクトルを有しながら、第二光学素子150の下端部152に向かう。これは、第一光学素子140の収斂作用によるものである。つまり、第一光学素子140と第二光学素子150との間では、光L1と光L2とは交差することになる。その後、光L2は、第二光学素子150の下端部152で反射されて、カバー部120を透過しウインドシールド302に向かう。
【0040】
ところで、表示素子130の第一端部131及び第二端部132からは、迷光となりうる光も発せられている。表示素子130の第一端部131から発せられた光のうちの一部の光L3が迷光となる可能性が高いので、ここでは、当該光L3を例示してその光路を説明する。
【0041】
図4は、実施の形態に係る表示素子130の第一端部131から発せられた光のうちの一部の光L3の光路を示す説明図である。図4は、図3に対応する図である。図4に示すように、表示素子130の第一端部131から発せられた光のうちの一部の光L3は、第一光学素子140の上端部141に向かい、当該上端部141で反射されることで、当該上端部141を通過する。つまり、光L3は、第一光学素子140の上端部141を通過する上部通過光である。その後、光L3は、第一光学素子140の収斂作用によって、第二光学素子150の上端よりも下方に向かう。これにより、光L3は、カバー部120を避けて、第二光学素子150まで至る。つまり、光L3は、第二光学素子150に到達する前にカバー部120で反射されない。
【0042】
次に、比較例として、収斂作用を有さない第一光学素子140zを採用した場合について説明する。図5は、比較例に係るヘッドアップディスプレイ装置100Zを示す模式断面図である。比較例では、第一光学素子140zが平面鏡である点を除いて、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置100と同様である。
【0043】
図5に示すように、表示素子130のうち、第一端部131から発せられる大半の光L4は、第一光学素子140zの下端部142zで反射されることで、第二光学素子150の下端部152に向かう。その後、光L4は、第二光学素子150の下端部152で反射されて、カバー部120を透過しウインドシールド302に向かう。
【0044】
一方、表示素子130のうち、第二端部132から発せられる大半の光L5は、第一光学素子140zの上端部141zで反射されることで、第二光学素子150の上端部151に向かう。その後、光L5は、第二光学素子150の上端部151で反射されて、カバー部120を透過しウインドシールド302に向かう。
【0045】
ここで、表示素子130の第一端部131から発せられた光のうちの一部の光L6は、第一光学素子140の上端部141に向かい、当該上端部141で反射される。第一光学素子140は平面鏡であるため、光L6は、カバー部120に向かって反射される。この反射により、迷光が発生してしまう。このように、比較例では迷光が発生してしまうが、本実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置100では、迷光の発生が抑制されていることがわかる。
【0046】
[4.効果など]
以上のように実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置100は、上部に開口部111が形成された筐体110と、開口部111を塞ぐ透光性のカバー部120と、筐体110内に収容された表示素子130と、表示素子130から発せられた表示光の光路上に配置された第一光学素子140と、第一光学素子140を通過した表示光の光路上であって、第一光学素子140の前方に配置され、当該表示光を開口部111に向けて反射する第二光学素子150とを備えている。カバー部120は、当該カバー部120の前端部121から後端部122に向かう方向で下降する曲面部123及び、下方に向けて凸となる形状を有している。第一光学素子140は、表示光を収斂させる作用を有している。表示素子130のうち第一光学素子140との距離が近い第一端部131から発せられた表示光の中で、第一光学素子140の上端部141を通過した光L3は、第二光学素子150の上端よりも下方に向かう。
【0047】
このように、カバー部120が、前端部121から後端部122に向かう方向で下降する曲面部123及び、下方に向けて凸となる形状を有しているので、カバー部120の前端部を上端部通過光(光L3)から避けた位置に配置することができる。カバー部120がこのような形状であると、第一光学素子140を通過した表示光が、カバー部120で反射しうるが、第一光学素子140は、表示光を収斂させる作用を有しているので、その収斂によって表示光の一部である光L3をカバー部120から回避させることも可能である。さらに、表示素子130、第一光学素子140及び第二光学素子150は、上端部通過光(光L3)が第二光学素子150の上端よりも下方に向かうように配置されているので、上端部通過光(光L3)が第二光学素子150から外れにくくなっている。これらのことにより、上端部通過光(光L3)を起因とした迷光の発生を抑制することができる。
【0048】
表示素子130の中心から第一光学素子140の中心までの距離Dと、第一光学素子140の焦点距離fvとの関係は、D>|fv|を満たしている。
【0049】
これによれば、距離Dと、第一光学素子140の焦点距離fvとが上記関係を満たしているので、第一光学素子140が収斂した表示光を確実に交差させることができる。特に、本実施の形態では、、第一光学素子140の中心から第二光学素子150の中心までの距離Eと、第一光学素子140の焦点距離fvとの関係がE>|fv|を満たしているので、第一光学素子140が収斂した表示光をより確実に交差させることができる。
【0050】
表示素子130の第一端部131から発せられた表示光の中で、第一光学素子140の下端部142を通過した下端部通過光(光L1)は、上向きのベクトルを有しながら、第二光学素子150に向かう。
【0051】
これによれば、下端部通過光(光L1)が上向きのベクトルを有しながら第二光学素子150に向かうので、表示光が消費するスペースを削減することができる。この削減されたスペースに表示素子130を配置することができ、低背化を向上させることができる。
【0052】
カバー部120の後端部は、カバー部120の前端部よりも下方に位置しているので、ヘッドアップディスプレイ装置100の後部での低背化を向上させることができる。
【0053】
第一光学素子140が凹面鏡であるので、第一光学素子140として凹面鏡を採用したヘッドアップディスプレイ装置100であっても、低背化を向上させることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、表示素子130は、当該表示素子130から第一光学素子140に向かう主光線が、表示素子130の法線方向に対して傾斜する姿勢となっている。このような姿勢であるため、カバー部120を介して太陽光が入射したとしても、その太陽光が光学系内に戻りにくくなる。つまり、太陽光を起因とした迷光を抑制できる。
【0055】
[5.その他]
以上、本開示に係るヘッドアップディスプレイ装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。以降の説明において、上記実施の形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0056】
図6は、変形例1に係るヘッドアップディスプレイ装置100Aを示す模式断面図である。図6は、図4に対応する図である。図6に示すように、変形例1に係るヘッドアップディスプレイ装置100Aは、表示素子130aの傾斜方向が、上記実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置100の表示素子130と逆方向となっている。具体的には、表示素子130aの第一端部131aは、第二端部132aよりも上方に配置されている。この場合においても第一端部131aの方が第二端部132aよりも表示素子130までの距離が近い。つまり、表示素子130aの第一端部131aから発せられた光のうちの一部の光L7は、第一光学素子140の上端部141に向かい、当該上端部141で反射されることで、当該上端部141を通過する。つまり、光L7は、第一光学素子140の上端部141を通過する上部通過光である。その後、光L7は、第一光学素子140の収斂作用によって、第二光学素子150の上端よりも下方に向かう。これにより、光L7は、カバー部120を避けて、第二光学素子150まで至るので、迷光を抑制できる。
【0057】
図7は、変形例2に係るヘッドアップディスプレイ装置100Bを示す模式断面図である。図7は、図4に対応する図である。図7に示すように、変形例2に係るヘッドアップディスプレイ装置100Bは、第一光学素子140bとして凸レンズを採用している。
【0058】
具体的に説明すると、筐体110内には、後方から前方にかけて、表示素子130b、第一光学素子140b及び第二光学素子150がこの順で配列されている。表示素子130bは、第一端部131bが第二端部132bよりも後方かつ下方となる姿勢で配置されている。表示素子130bにおいて表示光を出射する表示面は、第一光学素子140bに対向している。凸レンズである第一光学素子140bは、上端部141bが下端部142bよりも前方かつ上方となる姿勢で配置されている。第一光学素子140bが凸レンズであるので、表示素子130bが発した表示光を収斂させることができる。
【0059】
この場合においても、、表示素子130bの第一端部131bから発せられた光のうちの一部の光L8は、第一光学素子140bの上端部141bに向かい、当該上端部141bを透過することで、当該上端部141bを通過する。つまり、光L8は、第一光学素子140bの上端部141bを通過する上部通過光である。その後、光L8は、第一光学素子140bの収斂作用によって、第二光学素子150の上端よりも下方に向かう。これにより、光L8は、カバー部120を避けて、第二光学素子150まで至るので、迷光を抑制できる。
【0060】
このように、第一光学素子140bとして凸レンズを採用したヘッドアップディスプレイ装置100Bであっても、迷光を抑制しつつ、低背化を向上させることができる。この場合、表示素子130b、第一光学素子140b及び第二光学素子150がX軸方向に並んで配置されているので、Z軸方向でのこれらの消費スペースを削減できる。このため、より低背化を図ることが可能である。
【0061】
図8は、変形例3に係るヘッドアップディスプレイ装置100Cを示す模式断面図である。図8は、図4に対応する図である。図8に示すように、変形例3に係るヘッドアップディスプレイ装置100Cでは、表示素子130cの第二端部132cが、第二光学素子150の下端よりも上方に位置するように、表示素子130cが配置されている。この場合、表示素子130cは、表示光の光路から退避して配置されている。このように、表示素子130cの第二端部132cと、第二光学素子150の下端とが重畳するので、ヘッドアップディスプレイ装置100Cの低背化を向上させることができる。
【0062】
[付記]
以上の実施の形態等の記載により、下記の技術が開示される。
【0063】
(技術1)
上部に開口部が形成された筐体と、
前記開口部を塞ぐ透光性のカバー部と、
前記筐体内に収容された表示素子と、
前記表示素子から発せられた表示光の光路上に配置された第一光学素子と、
前記第一光学素子を通過した前記表示光の光路上であって、前記第一光学素子の前方に配置され、当該表示光を開口部に向けて反射する第二光学素子とを備え、
前記カバー部は、当該カバー部の前端部から後端部に向かう方向で下降する曲面部及び、下方に向けて凸となる形状を有し、
前記第一光学素子は、前記表示光を収斂させる作用を有し、
前記表示素子のうち前記第一光学素子との距離が近い一端部から発せられた表示光の中で、前記第一光学素子の上端部を通過した上端部通過光は、前記第二光学素子の上端よりも下方に向かう、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【0064】
(技術2)
前記表示素子の中心から前記第一光学素子の中心までの距離Dと、前記第一光学素子の焦点距離fvとの関係は、D>|fv|を満たす、
技術1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【0065】
(技術3)
前記表示素子の前記一端部から発せられた表示光の中で、前記第一光学素子の下端部を通過した下端部通過光は、上向きのベクトルを有しながら、前記第二光学素子に向かう、
技術1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【0066】
(技術4)
前記カバー部の後端部は、前記カバー部の前端部よりも下方に位置する、
技術1~3のいずれかひとつのヘッドアップディスプレイ装置。
【0067】
(技術5)
前記第一光学素子は、凹面鏡である、
技術1~4のいずれかひとつのヘッドアップディスプレイ装置。
【0068】
(技術6)
前記第一光学素子は、凸レンズである、
技術1~4のいずれかひとつのヘッドアップディスプレイ装置。
【0069】
(技術7)
前記表示素子の少なくとも一部は、前記第二光学素子の下端よりも上方に位置する、
技術1~6のいずれかひとつのヘッドアップディスプレイ装置。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置として有用である。
【符号の説明】
【0071】
100、100A、100B、100C、100Z ヘッドアップディスプレイ装置
110 筐体
111 開口部
112 前壁
113 後壁
120 カバー部
121 前端部
122 後端部
123 曲面部
130、130a、130b、130c 表示素子
131、131a、131b 第一端部
132、132a、132b、132c 第二端部
140、140b、140z 第一光学素子
141、141b、141z 上端部
142、142b、142z 下端部
150 第二光学素子
151 上端部
152 下端部
300 車両
301 ダッシュボード
302 ウインドシールド
D、E 距離
D1 領域
fv 焦点距離
I1 虚像
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8 光
P1 最下点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8