(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129578
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】蓄電池管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H02J7/00 H
H02J7/00 S
H02J7/00 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038888
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝義
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 正一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 聖師
(72)【発明者】
【氏名】豊永 智彦
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA07
5G503FA14
(57)【要約】
【課題】負荷への電力供給の安定化を図ることができる蓄電池管理システムを提供する。
【解決手段】蓄電池管理システム10は、蓄電池21と、系統電源から得られる交流電力である第一交流電力が入力される入力部31と、負荷70が電気的に接続される出力部33と、通常モードの動作、及び、タイマモードの動作を選択的に実行する制御部36とを備える。制御部36は、タイマモードの動作中に所定の条件が満たされたことを検出すると、動作モードをタイマモードから通常モードへ変更し、通常モードのパススルー制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
系統電源から得られる交流電力である第一交流電力が入力される入力部と、
負荷が電気的に接続される出力部と、
第一モードの動作、及び、第二モードの動作を選択的に実行する制御部とを備え、
前記第一モードは、前記入力部に入力される前記第一交流電力を前記出力部に出力する第一制御を行う動作モードであり、
前記第二モードは、1日のうちのあらかじめ設定された時間帯に前記蓄電池を放電させることで得られる交流電力である第二交流電力を前記出力部に出力する第二制御を行い、前記時間帯以外は前記第一制御を行う動作モードであり、
前記制御部は、前記第二モードの動作中に所定の条件が満たされたことを検出すると、動作モードを前記第二モードから前記第一モードへ変更し、前記第一モードの前記第一制御を行う
蓄電池管理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第二モードの前記第二制御中に前記所定の条件が満たされたことを検出すると、動作モードを前記第二モードから前記第一モードへ変更し、前記第一モードの前記第一制御を行う
請求項1に記載の蓄電池管理システム。
【請求項3】
前記所定の条件には、前記蓄電池の出力電流が第一閾値以上になることが含まれる
請求項2に記載の蓄電池管理システム。
【請求項4】
前記所定の条件には、
(1)前記蓄電池の回路の故障が検出されること、
(2)前記蓄電池を構成する直列接続された蓄電池セル間の電圧差が所定値以上になること、
(3)前記蓄電池の容量が初期容量の所定割合以下にまで低下すること、
(4)前記蓄電池の使用開始からの積算充電量、使用開始からの積算充電量、使用開始からの積算放電量、及び、使用開始からの経過日数の少なくとも1つが所定値に達すること、
(5)前記蓄電池に対する所定レベル以上の衝撃が検出されること、
の少なくとも1つが含まれる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電池管理システム。
【請求項5】
前記第一モードは、前記第一制御、及び、前記第二制御を、ユーザの操作に応じて切り替える動作モードである。
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電池管理システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第二モードの前記第二制御中に前記蓄電池の残量が所定残量以下となったことを検出すると、前記第二モードの前記第一制御を行う
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電池管理システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記第二モードの前記第二制御中に前記蓄電池の周辺温度が所定温度以下となったことを検出すると、前記第二モードの前記第一制御を行う
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電池管理システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記出力部に前記負荷が電気的に接続されていない場合、及び、前記出力部に前記負荷が電気的に接続されているが前記負荷に流れる電流が所定値以下である場合に、前記第二交流電力の前記出力部への出力を停止する無負荷検知機能を有し、
前記第一モードの動作中には、前記無負荷検知機能を有効にし、
前記第二モードの動作中には、前記無負荷検知機能を無効にする
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電池管理システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第一モードの前記第二制御中に前記蓄電池の出力電流が前記第一閾値以上となったことを検出すると、前記第一モードの前記第一制御を行う
請求項3に記載の蓄電池管理システム。
【請求項10】
前記蓄電池管理システムは、前記蓄電池を含む蓄電池パックと、前記蓄電池パックが着脱自在に接続される放電装置であって、前記入力部、前記出力部、及び、前記制御部を含む電源装置とを備え、
前記蓄電池パックは、前記蓄電池の出力電流が第二閾値以上となったことを検出すると、前記蓄電池の放電を停止する機能を有し、
前記第二閾値は前記第一閾値よりも大きい
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電池管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電池パックと充電装置とを備える蓄電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、一定期間の間、負荷への電力供給の安定化を図ることができる蓄電池管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る蓄電池管理システムは、蓄電池と、系統電源から得られる交流電力である第一交流電力が入力される入力部と、負荷が電気的に接続される出力部と、第一モードの動作、及び、第二モードの動作を選択的に実行する制御部とを備え、前記第一モードは、前記入力部に入力される前記第一交流電力を前記出力部に出力する第一制御を行う動作モードであり、前記第二モードは、1日のうちのあらかじめ設定された時間帯に前記蓄電池を放電させることで得られる交流電力である第二交流電力を前記出力部に出力する第二制御を行い、前記時間帯以外は前記第一制御を行う動作モードであり、前記制御部は、前記第二モードの動作中に所定の条件が満たされたことを検出すると、動作モードを前記第二モードから前記第一モードへ変更し、前記第一モードの前記第一制御を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明の蓄電池管理システムは、負荷への電力供給の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る蓄電池管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、複数の蓄電池セルの電気的な接続例を示す図である。
【
図3】
図3は、電力制御部の詳細構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、通常モードの動作、及び、タイマモードの動作を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る蓄電池管理システムの動作例1のフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る蓄電池管理システムの動作例2のフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る蓄電池管理システムの動作例3のフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る蓄電池管理システムの動作例4のフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例1に係る蓄電池管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、変形例2に係る蓄電池管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、常時パススルーモードの動作、及び、タイマモードの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0009】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0010】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る蓄電池管理システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る蓄電池管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示されるように、蓄電池管理システム10は、蓄電池パック20と、電源装置30と、情報端末40と、サーバ装置50とを備える。
【0012】
まず、蓄電池パック20について説明する。蓄電池パック20は、電源装置30に着脱自在に接続され、電源装置30に直流電力を供給する。蓄電池パック20は、蓄電池21と、残量計測部22と、過電流検出部23と、温度計測部24と、制御部25と、記憶部26と、セルバランス計測部27と、衝撃検出部28とを備える。蓄電池パック20は、持ち運び容易な大きさ及び重量を有する可搬式の蓄電池である。
【0013】
蓄電池21は、充電及び放電を繰り返して行うことができる二次電池である。蓄電池21は、例えば、リチウムイオン電池によって実現される。蓄電池21は、より具体的には、複数の蓄電池セルによって構成される。
図2は、複数の蓄電池セルの電気的な接続例を示す図であり、
図2の例では、並列接続された4つの蓄電池セルが、複数組、直列接続されている。
【0014】
残量計測部22は、蓄電池21の残量(SOC:State Of Charge)を計測する。残量計測部22は、例えば、クーロンカウンタ方式など電流積算方式の計測回路(集積回路)であるが、蓄電池21の端子電圧を計測する電圧計測方式などの他の方式の計測回路であってもよい。
【0015】
過電流検出部23は、CT(Current Transformer)などの電流センサを用いて蓄電池21の出力電流が過大になったこと(過電流)を検出する回路である。
【0016】
温度計測部24は、蓄電池21そのものおよび蓄電池21の周辺の温度(以下、単に蓄電池21の周辺温度、という)を計測する。温度計測部24は、例えば、サーミスタまたは熱電対などを用いた温度センサである。
【0017】
制御部25は、電源装置30の制御部36と有線または無線の通信を行い、当該通信により残量計測部22によって計測されたSOC、及び、温度計測部24によって計測された温度を制御部36へ通知する。
【0018】
また、制御部25は、蓄電池パック20の故障を検出し、蓄電池21の充放電を停止する処理を行うとともに、故障情報を制御部36へ通知する。蓄電池パック20の故障には、断線などの回路の故障、及び、セルバランス計測部27によって計測される蓄電池セルの電圧のバランスの異常(セルバランス崩れ)などが含まれる。
【0019】
また、制御部25は、蓄電池21の寿命に関する情報を管理(計測)し、制御部36へ通知する。蓄電池21の寿命に関する情報は、例えば、蓄電池パック20の満充電容量の初期容量に対する割合を示す情報、蓄電池パック20の使用開始からの積算充電量、蓄電池パック20の使用開始からの積算放電量、及び、蓄電池パック20の使用開始からの日数(年数)を示す情報などである。
【0020】
また、制御部25は、衝撃検出部28によって検出される衝撃レベルを制御部36に通知するか、または、衝撃検出部28によって検出される衝撃レベルに基づき蓄電池パック20に所定レベル以上の大きな衝撃が加わったことを制御部36へ通知する。
【0021】
また、制御部25は、過電流検出部23によって過電流が検出された場合(蓄電池21の出力電流が第2閾値以上となった場合)に、蓄電池21の放電を停止する処理を行う。制御部25は、具体的には、マイクロコンピュータまたはプロセッサによって実現される。制御部25の機能は、例えば、制御部25を構成するマイクロコンピュータまたはプロセッサが記憶部26に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0022】
記憶部26は、上記コンピュータプログラムが記憶される記憶装置である。記憶部26は、例えば、半導体メモリによって実現される。なお、記憶部26は、制御部25に内蔵されてもよい。
【0023】
セルバランス計測部27は、蓄電池21のセルバランス(
図2のV1~Vnの電圧差)を計測する。セルバランス計測部27は、例えば、セルバランスを計測する回路(例えば、専用の集積回路)によって実現される。
【0024】
衝撃検出部28は、蓄電池パック20(蓄電池21)に加わる衝撃レベルを検出する。衝撃検出部28は、加速度センサなどによって実現される。なお、蓄電池パック20への衝撃は、例えば、蓄電池パック20の落下などによって発生する。
【0025】
次に、電源装置30について説明する。電源装置30は、住宅などの施設内に設置される可搬式(ポータブル式)の電源装置(一般家庭用の電源装置)であり、系統電源60から得られる交流電力、及び、蓄電池21が出力する直流電力から得られる交流電力を選択的に負荷70に供給することができる。負荷70は、例えば、家電機器などである。電源装置30は、入力部31と、電力制御部32と、出力部33と、操作受付部34と、表示部35と、制御部36と、記憶部37と、過電流検出部38と、通信部39とを備える。
【0026】
入力部31は、コンセントに電気的に接続され、コンセントを通じて系統電源60から交流電力が入力される。入力部31は、例えば、コンセントに差し込まれるプラグによって実現される。
【0027】
電力制御部32は、蓄電池21の充電制御、蓄電池21の放電制御、及び、パススルー制御を実行するために必要な回路である。充電制御は、入力部31へ入力される交流電力(系統電源60から得られる交流電力)を用いて蓄電池21を充電する制御である。充電制御は、パススルー制御と並行して(同時に)行うこともできる。放電制御は、蓄電池21を放電することで得られる直流電力を交流電力に変換し、出力部33へ出力する制御である。
【0028】
パススルー制御は、入力部31へ入力される交流電力(系統電源60から得られる交流電力)をそのまま出力部33へ出力する制御である。
【0029】
図3は、電力制御部32の詳細構成を示すブロック図である。
図3では、電力制御部32に関連する構成要素(入力部31、出力部33、蓄電池21、及び、制御部36)も合わせて図示されている。
図3に示されるように、電力制御部32は、具体的には、充電回路32aと、DC(Direct Current)/AC(Alternating Current)変換回路32bと、切替回路32cとを有する。
【0030】
充電回路32aは、入力部31へ入力される交流電力を蓄電池21の充電に適した直流電力に変換するための回路であり、具体的には、AC/DC変換回路などによって実現される。
【0031】
DC/AC変換回路32bは、蓄電池21を放電することで得られる直流電力を交流電力に変換し、変換によって得られる交流電力を切替回路32cに出力する。
【0032】
切替回路32cは、入力部31へ入力される交流電力である第一交流電力を出力部33に出力するか、DC/AC変換回路32bが出力する交流電力である第二交流電力を出力部33に出力するかを切り替える。切替回路32cは、例えば、リレー素子によって実現されるが、パワー半導体スイッチング素子によって実現されてもよい。
【0033】
出力部33には、負荷70が電気的に接続される。電力制御部32によって出力される交流電力は出力部33を通じて負荷70へ出力される。出力部33は、例えば、コンセントによって実現される。
【0034】
操作受付部34は、ユーザが動作モードを選択するときに操作する押しボタンスイッチである。操作受付部34は、押しボタンスイッチに限定されず、タッチパネルなどであってもよい。
【0035】
表示部35は、電源装置30の現在の動作モードを表示する。表示部35は、例えば、発光色が異なる複数の発光素子によって実現され、発光色、及び、点滅の有無によって動作モードを表示する。発光素子は、例えば、LED(Light Emitting Diode)素子であるが、有機EL(Electro-Luminescence)素子であってもよい。また、表示部35は、液晶パネルまたは有機ELパネルなどの表示パネルによって実現されてもよい。
【0036】
制御部36は、操作受付部34によって受け付けられた操作に基づいて、動作モードを切り替え、現在の動作モードを表示部35に表示させる。制御部36は、具体的には、マイクロコンピュータまたはプロセッサによって実現される。制御部36の機能は、例えば、制御部36を構成するマイクロコンピュータまたはプロセッサなどのハードウェアが記憶部37に記憶されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。
【0037】
記憶部37は、上記コンピュータプログラム、及び、後述のスケジュール情報などが記憶される記憶装置である。記憶部37は、例えば、半導体メモリによって実現される。なお、記憶部37は、制御部36に内蔵されてもよい。
【0038】
過電流検出部38は、CTなどの電流センサを用いて蓄電池21の出力電流が過大になったこと(過電流)を検出する回路である。過電流検出部38は、言い換えれば、蓄電池21の出力電流が閾値以上となったことを検出する。
【0039】
通信部39は、電源装置30が情報端末40と、局所通信ネットワークを通じた無線通信(より具体的には、電波通信)を行うための無線通信回路である。この無線通信は、近距離無線通信と言い換えることができる。通信部39は、具体的には、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)またはWi-Fi(登録商標)などの通信規格にしたがって無線通信を行う。
【0040】
なお、通信部39は、広域通信ネットワークを通じた無線通信(より具体的には、電波通信)を行うための無線通信回路であってもよい。この場合の広域通信ネットワークは、移動体通信ネットワーク及びインターネットである。この場合、電源装置30は情報端末40を中継器として使用せずにサーバ装置50と通信を行うことができる。
【0041】
次に、情報端末40について説明する。情報端末40は、電源装置30とサーバ装置50とが通信を行うときの中継器として機能する情報端末であり、電源装置30のユーザまたは管理者(以下、ユーザ等とも記載される)が所持する情報端末である。後述のように、電源装置30にタイマモードの動作をさせるときには、タイマモードにおける放電制御の開始時刻、及び、終了時刻の設定が必要となるが、情報端末40は、タイマモードにおける放電制御の開始時刻、及び、終了時刻の設定に用いられる。つまり、情報端末40は、蓄電池管理システム10におけるユーザインタフェースとして機能する。
【0042】
情報端末40は、例えば、スマートフォンまたはタブレット端末などの携帯端末である。この場合、情報端末40は、汎用の携帯端末に所定のアプリケーションプログラム(以下、単にアプリとも記載される)がインストールされることによって実現される。情報端末40は、HEMS(Home Energy Manegement System)コントローラなどのEMSコントローラであってもよい。
【0043】
サーバ装置50は、一般電気事業者、または、小売電気事業者などが使用(管理)するクラウドコンピュータである。なお、サーバ装置50は、集合住宅の管理者(電気事業者から電力を一括して購入する者)などによって管理されてもよい。タイマモードにおける放電制御の開始時刻、及び、終了時刻の設定(つまり、電力ピーク時間帯の設定)は、電源装置30のユーザまたは管理者(情報端末40のユーザまたは管理者でもある)ではなく、サーバ装置50(つまり、一般電気事業者、または、小売電気事業者など)から行われる場合もある。タイマモードにおける放電制御に関するスケジュール等の指示がサーバ装置50から行われる場合には、情報端末40は単に無線ルータ等のような入力用インターフェイスを備えない通信機器であってよい。さらには、スケジュール等の指示がサーバ装置50から行われる場合には、当該指示は電源装置30の通信部39に直接送信されてもよい。
【0044】
[通常モード及びタイマモード]
電源装置30の制御部36は、通常モードの動作、及び、タイマモードの動作を選択的に実行することができる。以下、通常モードの動作、及び、タイマモードの動作について説明する。
図4は、通常モードの動作、及び、タイマモードの動作を説明するための図である。
【0045】
まず、
図4の(a)の通常モードについて説明する。通常モードは、パススルー制御、及び、蓄電池21の放電制御を、ユーザ等の操作に応じて(手動で)切り替える動作モードである。パススルー制御も放電制御もいずれも行われていないオフ状態において、操作受付部34によって短時間の押下操作が受け付けられると、パススルー制御が行われる。オフ状態では、表示部35は消灯状態であるが、通常モードのパススルー制御中は、表示部35は、例えば、緑色に点灯する。なお、通常モードのパススルー制御中には、並行して充電制御が行われてもよい。
【0046】
パススルー制御が行われているときに操作受付部34によって短時間の押下操作が受け付けられると、放電制御が行われる。通常モードの放電制御中は、表示部35は、例えば、橙色に点灯する。
【0047】
放電制御が行われているときに操作受付部34によって短時間の押下操作が受け付けられると、オフ状態に戻る。なお、動作モードの切り替え順序はこの逆であってもよい。
【0048】
次に、
図4の(b)のタイマモードについて説明する。通常モードの動作中に、操作受付部34によって長時間の押下操作(いわゆる長押し操作)が受け付けられると、制御部36は、タイマモードの動作を行う。
【0049】
タイマモードは、1日のうちのあらかじめ設定された時間帯に放電制御を行い、当該時間帯以外はパススルー制御を行う動作モードである。タイマモードの動作が維持されている限り、毎日同じ時間帯に放電制御が行われる。上述のように、タイマモードの放電制御が行われる時間帯(タイマモードにおける放電制御の開始時刻、及び、終了時刻)の設定は、情報端末40またはサーバ装置50を通じて行われる。タイマモードのパススルー制御中は、表示部35は、例えば、緑色に点滅し、タイマモードの放電制御中は、表示部35は、例えば、橙色に点滅する。
【0050】
なお、
図4の(b)に示されるように、タイマモードのパススルー制御中には、並行して充電制御が行われてもよい。充電制御の開始時刻、及び、終了時刻の設定は、情報端末40またはサーバ装置50を通じて行われる。なお、充電制御は、充電制御の終了時刻が到来する前に、満充電により終了する場合がある。
【0051】
電源装置30は、タイマモードの放電制御を電力ピーク時間帯(需要家の消費電力が増大する時間帯)に行うことで、負荷70の動作を継続しつつ、電力需要(系統電源60からの交流電力の消費)を抑制することができる。
【0052】
[動作例1]
蓄電池管理システム10が備える電源装置30としては可搬式の比較的コンパクトなものを想定していることから、電源装置30が備えるDC/AC変換回路32bは非力である。したがって、負荷70が消費電力の大きい家電機器(冷蔵庫など)である場合、放電制御中に負荷70に供給される電力が不足し、負荷70が停止してしまう可能性がある。
【0053】
そこで、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図るために、以下の動作例1のように動作する。
図5は、蓄電池管理システム10の動作例1のフローチャートである。
【0054】
ユーザ等によってタイマモードが選択されている場合、電源装置30の制御部36は、電力制御部32を制御することにより、パススルー制御を行う(S11)。制御部36は、タイマモードのパススルー制御中に、蓄電池21の各種異常を示す所定の条件が満たされたか否かを判定する(S12)。所定の条件が満たされたとは、例えば、以下の(1)~(7)の少なくとも1つが満たされたことを意味する。
【0055】
(1)蓄電池パック20の回路の故障(断線など)が検出されたこと
(2)蓄電池21のセルバランスが崩れた(一か所以上の電圧差が所定値以上である)こと
(3)蓄電池パック20の満充電容量が初期容量の所定割合(例えば60%)まで低下したこと
(4)蓄電池パック20の使用開始からの積算充電量が所定値(例えば1000kWh)に達したこと
(5)蓄電池パック20の使用開始からの積算放電量が所定値(例えば1000kWh)に達したこと
(6)蓄電池パック20の使用開始からの日数(年数)が所定日数(年数)に達したこと
(7)蓄電池パック20への所定レベル以上の衝撃が検出されたこと
【0056】
制御部36は、所定の条件が満たされたと判定すると(S12でYes)、動作モードをタイマモードから通常モードへ変更し、通常モードのパススルー制御を行う(S17)。
【0057】
制御部36は、所定の条件が満たされていないと判定すると(S12でNo)、放電制御の開始時刻が到来したか否かを判定する(S13)。制御部36は、放電制御の開始時刻が到来するまでは(S13でNo)、パススルー制御を継続しつつ(S11)、所定の条件が満たされたか否かの判定を行う(S12)。
【0058】
制御部36は、放電制御の開始時刻が到来したと判定すると(S13でYes)、タイマモードの放電制御を行う(S14)。制御部36は、電力制御部32を制御することにより、放電制御を行うことができる。
【0059】
制御部36は、タイマモードの放電制御中に、所定の条件が満たされたか否かを判定する(S15)。ここでの所定の条件が満たされたとは、例えば、上記の(1)~(7)(つまり、蓄電池21の異常を示す所定の条件)、及び、以下の(8)の少なくとも1つが満たされたことを意味する。
【0060】
(8)過電流検出部38により、蓄電池21の出力電流が閾値以上となったことが検出されたこと
【0061】
なお、(8)の閾値は、例えば、経験的または実験的に適宜定められればよい。(8)の条件が満たされるか否かの判定は、蓄電池21の放電することによる負荷70への電力供給を維持できるか否かの判定と考えることができる。
【0062】
制御部36は、所定の条件が満たされたと判定すると(S15でYes)、動作モードをタイマモードから通常モードへ変更し、通常モードのパススルー制御を行う(S17)。
【0063】
制御部36は、所定の条件が満たされていないと判定した場合には(S15でNo)、放電制御の終了時刻が到来したか否かを判定する(S16)。制御部36は、放電制御の終了時刻が到来するまでは(S16でNo)、放電制御(S14)と、所定の条件が満たされたか否かの判定(S15)とを継続する。制御部36は、放電制御の終了時刻が到来したと判定すると(S16でYes)、タイマモードのパススルー制御を行う(S11)。
【0064】
上述のように、蓄電池管理システム10においては、タイマモードの動作が維持されている限り、毎日同じ時間帯に放電制御が行われる。このため、蓄電池21の異常が検出されているにもかかわらず、放電制御による負荷70への電力供給が継続されてしまうおそれがある。また、過電流が検出されたときにタイマモードを維持したまま負荷70への電力供給を停止するような構成では、負荷70への電力供給が毎日同じ時間帯に停止してしまうおそれがある。
【0065】
これに対し、蓄電池管理システム10は、タイマモードの動作中(パススルー制御中及び放電制御中)に蓄電池21の各種異常(蓄電池21を使用しないほうがよいこと)が検出された場合に、動作モードをタイマモードから通常モードへ変更し、通常モードのパススルー制御を行う。また、蓄電池管理システム10は、タイマモードの放電制御中に出力電流が閾値以上となったこと(負荷70への電力供給の維持が難しいこと)が検出された場合にも、動作モードをタイマモードから通常モードへ変更し、通常モードのパススルー制御を行う。すなわち、蓄電池管理システム10は、タイマモードで蓄電池21の異常、または、蓄電池21の過電流が検出されると、タイマモードから離脱して通常モードに遷移する。
【0066】
これにより、蓄電池21の異常が検出されているにもかかわらず放電制御による負荷70への電力供給が継続されてしまうこと、及び、負荷70への電力供給が毎日停止してしまうことが抑制される。つまり、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図ることができる。
【0067】
なお、制御部36は、タイマモードの放電制御中に蓄電池21の出力電流が閾値以上となったことが、所定期間中にn回(1週間に3回など)検出された場合、及び、連続してn日間検出された場合などには、動作モードをタイマモードから通常モードへ変更し、通常モードのパススルー制御を行ってもよい。つまり、制御部36は、タイマモードから離脱して通常モードに遷移してもよい。
【0068】
[動作例2]
次に、負荷70への電力供給の安定化を図るための動作例2について説明する。
図6は、蓄電池管理システム10の動作例2のフローチャートである。
【0069】
ユーザ等によってタイマモードが選択されている場合、電源装置30の制御部36は、電力制御部32を制御することにより、パススルー制御を行う(S21)。制御部36は、タイマモードのパススルー制御中に、放電制御の開始時刻が到来したか否かを判定する(S22)。制御部36は、放電制御の開始時刻が到来するまでは(S22でNo)、パススルー制御を継続する(S21)。
【0070】
制御部36は、放電制御の開始時刻が到来したと判定すると(S22でYes)、タイマモードの放電制御を行う(S23)。制御部36は、電力制御部32を制御することにより、放電制御を行うことができる。
【0071】
制御部36は、タイマモードの放電制御中に、蓄電池21の残量が所定残量以下であるか否かを判定する(S24)。制御部36は、具体的には、蓄電池パック20の制御部25から通知される蓄電池21の残量に基づいて、ステップS24の判定を行う。ステップS24の判定は、蓄電池21の放電することによる負荷70への電力供給を維持できるか否かの判定と考えることができる。所定残量は、例えば、SOC50%相当の残量であるが、経験的または実験的に適宜定められればよい。
【0072】
制御部36は、蓄電池21の残量が所定残量以下である(負荷70への電力供給の維持が困難である)と判定(検出)すると(S24でYes)、タイマモードを維持したまま、タイマモードのパススルー制御を行う(S21)。
【0073】
制御部36は、蓄電池21の残量が所定残量よりも多い(負荷70への電力供給の維持が可能である)と判定した場合には(S24でNo)、放電制御の終了時刻が到来したか否かを判定する(S25)。制御部36は、放電制御の終了時刻が到来するまでは(S25でNo)、放電制御(S23)と、蓄電池21の残量が所定残量以下であるか否かの判定(S24)とを継続する。制御部36は、放電制御の終了時刻が到来したと判定すると(S25でYes)、タイマモードのパススルー制御を行う(S21)。
【0074】
このように、蓄電池管理システム10は、タイマモードの放電制御中に蓄電池21の残量が所定残量以下となったことを検出すると、タイマモードのパススルー制御を行う。蓄電池21の残量が少ない場合、負荷70の起動時に流れる電流が蓄電池21の残量が多い場合に比べて大きくなるため、負荷70への電力供給が途絶える可能性がある。
【0075】
これに対し、蓄電池管理システム10は、蓄電池21の残量が低下した場合に蓄電池21の放電による電力供給を、系統電源60からの電力供給に切り替えるため、負荷70への電力供給を継続することができる。つまり、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図ることができる。
【0076】
なお、制御部36は、タイマモードの放電制御中に蓄電池21の残量が所定残量以下となったことが、所定期間中にn回(1週間に3回など)検出された場合、及び、連続してn日間(nは2以上の自然数)検出された場合などには、動作モードをタイマモードから通常モードへ変更し、通常モードのパススルー制御を行ってもよい。つまり、制御部36は、タイマモードから離脱して通常モードに遷移してもよい。
【0077】
[動作例3]
次に、負荷70への電力供給の安定化を図るための動作例3について説明する。
図7は、電源装置30の動作例3のフローチャートである。
【0078】
ユーザによってタイマモードが選択されている場合、電源装置30の制御部36は、電力制御部32を制御することにより、パススルー制御を行う(S31)。制御部36は、タイマモードのパススルー制御中に、放電制御の開始時刻が到来したか否かを判定する(S32)。制御部36は、放電制御の開始時刻が到来するまでは(S32でNo)、パススルー制御を継続する(S31)。
【0079】
制御部36は、放電制御の開始時刻が到来したと判定すると(S32でYes)、タイマモードの放電制御を行う(S33)。制御部36は、電力制御部32を制御することにより、放電制御を行うことができる。
【0080】
制御部36は、タイマモードの放電制御中に、蓄電池21の周辺温度が所定温度以下であるか否かを判定する(S34)。制御部36は、具体的には、蓄電池パック20の制御部25から通知される蓄電池21の周辺温度に基づいて、ステップS34の判定を行う。所定温度は、0℃などであるが、経験的または実験的に適宜定められればよい。
【0081】
制御部36は、蓄電池21の周辺温度が所定温度以下であると判定(検出)すると(S34でYes)、タイマモードを維持したまま、タイマモードのパススルー制御を行う(S31)。
【0082】
制御部36は、蓄電池21の周辺温度が所定温度よりも高いと判定した場合には(S34でNo)、放電制御の終了時刻が到来したか否かを判定する(S35)。制御部36は、放電制御の終了時刻が到来するまでは(S35でNo)、放電制御(S33)と、蓄電池21の周辺温度が所定温度以下であるか否かの判定(S34)とを継続する。制御部36は、放電制御の終了時刻が到来したと判定すると(S35でYes)、タイマモードのパススルー制御を行う(S31)。
【0083】
このように、蓄電池管理システム10は、タイマモードの放電制御中に蓄電池21の周辺温度が所定温度以下となったことを検出すると、タイマモードのパススルー制御を行う。低温環境における蓄電池21の充電、及び、放電は、蓄電池21の劣化につながり、蓄電池21の劣化が進むと、タイマモードの動作のように、日々、蓄電池21を充電及び放電させる動作については継続することが困難となると考えられる。
【0084】
これに対し、蓄電池管理システム10は、蓄電池21の周辺温度が低下した場合に蓄電池21の放電を控えるため、蓄電池21の劣化を抑制し、蓄電池21の放電による負荷70への電力供給を、長期的に見た場合に継続することができる。つまり、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図ることができる。
【0085】
なお、制御部36は、タイマモードの放電制御中に蓄電池21の周辺温度が所定温度以下となったことが、所定期間中にn回(1週間に3回など)検出された場合、及び、連続してn日間検出された場合などには、動作モードをタイマモードから通常モードへ変更し、通常モードのパススルー制御を行ってもよい。つまり、制御部36は、タイマモードから離脱して通常モードに遷移してもよい。
【0086】
[動作例4]
次に、負荷70への電力供給の安定化を図るための動作例4について説明する。
図8は、蓄電池管理システム10の動作例4のフローチャートである。
【0087】
ユーザによって通常モードの放電制御が選択されている場合、電源装置30の制御部36は、電力制御部32を制御することにより、放電制御を行う(S41)。制御部36は、通常モードの放電制御中に、過電流が検出されたか否かを判定する(S42)。制御部36は、具体的には、過電流検出部38により、蓄電池21の出力電流が閾値以上となったことが検出されたか否かを判定する。閾値は、例えば、経験的または実験的に適宜定められればよい。ステップS42の判定は、蓄電池21の放電することによる負荷70への電力供給を維持できるか否かの判定と考えることができる。
【0088】
制御部36は、過電流が検出された(負荷70への電力供給の維持が困難である)と判定すると(S42でYes)、通常モードのパススルー制御を行う(S43)。制御部36は、過電流が検出されていない(負荷70への電力供給の維持が可能である)と判定した場合には(S42でNo)、通常モードの放電制御を継続する(S41)。
【0089】
このように、蓄電池管理システム10は、通常モードの放電制御中に蓄電池21の出力電流が閾値以上となったことを検出すると、通常モードのパススルー制御を行う。これにより、負荷70への電力供給が停止してしまうことが抑制される。つまり、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図ることができる。
【0090】
なお、制御部36は、通常モードの放電制御中に蓄電池21の出力電流が閾値以上となったことが、所定期間中にn回(1週間に3回など)検出された場合、及び、連続してn日間検出された場合などには、通常モードのパススルー制御を行ってもよい。
【0091】
[動作例5]
次に、負荷70への電力供給の安定化を図るための動作例5について説明する。電源装置30の制御部36は、出力部33に負荷70が電気的に接続されていない場合(負荷70に流れる電流が0の場合)、及び、出力部33に負荷70が電気的に接続されているが負荷70に流れる電流が所定値以下である場合(負荷70に流れる電流が0または非常に小さい場合)に、放電制御を停止する無負荷検知機能を有している。無負荷検知機能は、言い換えれば、出力部33に負荷70が電気的に接続されていないと推定される場合に、DC/AC変換回路32bの動作をオフする機能である。無負荷検知機能によれば、蓄電池21の残量の低下を抑制することができる。
【0092】
ここで、出力部33に接続されている負荷70が一時的に無負荷に近いような状態になる(電流が非常に小さくなる)場合、タイマモードの動作中に無負荷検知機能が作動しタイマモードの放電制御を停止してしまう可能性がある。
【0093】
そこで、電源装置30の制御部36は、通常モードの動作中には、無負荷検知機能を有効にし、タイマモードの動作中には、無負荷検知機能を無効にしてもよい。これにより、蓄電池管理システム10は、タイマモードの動作の安定化を図ることができる。
【0094】
[過電流検出の変形例]
上記実施の形態では、過電流は、電源装置30の過電流検出部38によって検出された。しかしながら、過電流は、蓄電池パック20の過電流検出部23によって検出され、制御部25から電源装置30の制御部36に通知されてもよい。過電流検出部は、蓄電池パック20及び電源装置30の少なくとも一方に設けられればよい。
【0095】
なお、過電流検出部が蓄電池パック20及び電源装置30のいずれにも設けられる場合、蓄電池パック20側の保護機能(制御部25による蓄電池21の放電の停止)が電源装置30側の保護機能(制御部36による蓄電池21の放電の停止)よりも先に働いてしまうことで、電源装置30側で意図しないエラーが発生してしまう可能性がある。
【0096】
そこで、蓄電池パック20側の保護機能よりも電源装置30側の保護機能が先に働くように過電流検出の閾値が設定されてもよい。例えば、電源装置30の制御部36が蓄電池21の出力電流が第一閾値以上となったことを要件として保護機能を働かせ、蓄電池パック20の制御部25が蓄電池21の出力電流が第二閾値以上となったことを要件として保護機能を働かせるとする。この場合、第二閾値が第一閾値よりも大きく設定されればよい。
【0097】
なお、動作例1及び動作例4の閾値は、第一閾値に読み替えられてもよいし、第二閾値に読み替えられてもよい。
【0098】
[蓄電池管理システムの機能構成の変形例]
蓄電池管理システム10においては、蓄電池管理システム10が情報端末40及びサーバ装置50と通信するための通信部(通信部39)は、電源装置30によって備えられたが、蓄電池パック20によって備えられてもよい。
図9は、このような変形例1に係る蓄電池管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【0099】
図9に示される蓄電池管理システム10aは、蓄電池パック20aと、電源装置30aと、情報端末40と、サーバ装置50とを備える。
【0100】
蓄電池パック20aは、蓄電池21と、残量計測部22と、過電流検出部23と、温度計測部24と、制御部25と、記憶部26と、セルバランス計測部27と、衝撃検出部28と、通信部29とを備える。電源装置30aは、入力部31と、電力制御部32と、出力部33と、操作受付部34と、表示部35と、制御部36と、記憶部37と、過電流検出部38とを備える。
【0101】
蓄電池パック20aが備える通信部29は、蓄電池パック20が、情報端末40と、局所通信ネットワークを通じた無線通信(より具体的には、電波通信)を行うための無線通信回路である。この無線通信は、近距離無線通信と言い換えることができる。通信部29は、具体的には、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)またはWi-Fi(登録商標)などの通信規格にしたがって無線通信を行う。
【0102】
なお、通信部29は、広域通信ネットワークを通じた無線通信(より具体的には、電波通信)を行うための無線通信回路であってもよい。この場合の広域通信ネットワークは、移動体通信ネットワーク及びインターネットである。この場合、蓄電池パック20は情報端末40を中継器として使用せずにサーバ装置50と通信を行うことができる。
【0103】
また、図示されないが、蓄電池パック20及び電源装置30のそれぞれが通信部を備えてもよい。
【0104】
また、蓄電池管理システム10においては、電源装置30に蓄電池パック20(蓄電池21)を着脱できる構成が採用され、蓄電池管理システム10aにおいては、電源装置30aに蓄電池パック20a(蓄電池21)を着脱できる構成が採用されている。しかしながら、電源装置30(または電源装置30a)に蓄電池21が内蔵される構成が採用されてもよい。
図10は、このような変形例2に係る蓄電池管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【0105】
図10に示される蓄電池管理システム10bは、電源装置30bと、情報端末40と、サーバ装置50とを備える。電源装置30bは、蓄電池21と、残量計測部22と、温度計測部24と、セルバランス計測部27と、衝撃検出部28と、入力部31と、電力制御部32と、出力部33と、操作受付部34と、表示部35と、制御部36bと、記憶部37bと、過電流検出部38と、通信部39とを備える。制御部36bは、制御部25の機能及び制御部36の機能を有し、記憶部37bは、記憶部26の機能及び記憶部37の機能を有する。このような蓄電池管理システム10bにおいては、制御部25及び制御部36の通信を省略できる利点がある。
【0106】
[動作モードの変形例1]
図4の(a)に示されるように、蓄電池管理システム10における通常モードは、パススルー制御と放電制御とをユーザの操作に応じて切り替える動作モードであったが、パススルー制御を行う(放電制御を行わない)動作モード(言い換えれば、常時パススルーモード)であってもよい。
図11は、常時パススルーモードの動作、及び、タイマモードの動作を説明するための図である。
【0107】
常時パススルーモードが選択されているときには、ユーザまたはシステム管理者から特別な指示がない限り常時パススルー制御が行われる。常時パススルーモードの動作中に、例えば、電源装置30の操作受付部34によって長時間の押下操作が受け付けられると、制御部36は、タイマモードに移行する。この場合のタイマモードにおける動作は上述したものと同様であり、タイマモードからの離脱(つまり常時パススルーモードへの遷移)を行う条件等についても上述したものと同様である。
【0108】
[動作モードの変形例2]
制御モードの変形例1について、タイマモードを動作モードの中心(標準モード)としてもよい。この場合もタイマモードから常時パススルーモードへの切り替えは、上述と同じ基準で行ってよい。常時パススルーモードからタイマモードへの切り替えは、電源装置30のシャットダウン動作、具体的には、電源装置30と系統電源60を切り離し、かつ、電源装置30と蓄電池パック20とを切り離す動作が受け付けられることで行われる。
【0109】
[効果等]
本明細書の開示内容から導き出される発明は、例えば以下のような発明である。以下、本明細書の開示内容から導き出される発明について、当該発明によって得られる効果等と合わせて説明する。
【0110】
発明1は、蓄電池21と、系統電源から得られる交流電力である第一交流電力が入力される入力部31と、負荷70が電気的に接続される出力部33と、通常モードの動作、及び、第二モードの動作を選択的に実行する制御部36とを備え、第一モードは、入力部31に入力される第一交流電力を出力部33に出力する第一制御を行う動作モードであり、第二モードは、1日のうちのあらかじめ設定された時間帯に蓄電池21を放電させることで得られる交流電力である第二交流電力を出力部33に出力する第二制御を行い、時間帯以外は第一制御を行う動作モードであり、制御部36は、第二モードの動作中に所定の条件が満たされたことを検出すると、動作モードを第二モードから第一モードへ変更し、第一モードの第一制御を行う、蓄電池管理システム10である。第一モードは、通常モードに相当し、第二モードは、タイマモードに相当する。第一制御は、パススルー制御に相当し、第二制御は、放電制御に相当する。
【0111】
このような蓄電池管理システム10は、所定の条件が満たされたときに第二制御を第一制御に切り替えることで、負荷70への電力供給が停止してしまうことを抑制することができる。また、蓄電池管理システム10は、所定の条件が満たされると第二モードを離脱して第一モードに遷移するので、負荷70への電力供給が翌日も停止してしまうことを抑制することができる。つまり、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図ることができる。
【0112】
発明2は、制御部36は、第二モードの第二制御中に所定の条件が満たされたことを検出すると、動作モードを第二モードから前記第一モードへ変更し、第一モードの第一制御を行う、発明1の蓄電池管理システム10である。
【0113】
このような蓄電池管理システム10は、所定の条件が満たされたときに第二制御を第一制御に切り替えることで、負荷70への電力供給が停止してしまうことを抑制することができる。
【0114】
発明3は、所定の条件には、蓄電池21の出力電流が第一閾値以上になることが含まれる、発明2の蓄電池管理システム10である。
【0115】
このような蓄電池管理システム10は、過電流が検出されたときに第二制御を第一制御に切り替えることで、負荷70への電力供給が停止してしまうことを抑制することができる。また、蓄電池管理システム10は、過電流が検出されると第二モードを離脱して第一モードに遷移するので、負荷70への電力供給が翌日も停止してしまうことを抑制することができる。つまり、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図ることができる。
【0116】
発明4は、所定の条件には、(1)蓄電池21の回路の故障が検出されること、蓄電池21を構成する直列接続された蓄電池セル間の電圧差が所定値以上になること、(3)蓄電池21の容量が初期容量の所定割合以下にまで低下すること、(4)蓄電池21の使用開始からの積算充電量、使用開始からの積算充電量、使用開始からの積算放電量、及び、使用開始からの経過日数の少なくとも1つが所定値に達すること、(5)蓄電池21に対する所定レベル以上の衝撃が検出されること、の少なくとも1つが含まれる、発明1~3のいずれかの蓄電池管理システム10である。
【0117】
このような蓄電池管理システム10は、蓄電池21に異常がある、または、蓄電池21の使用が推奨されない場合などに、第二モードを離脱して第一モードに遷移することができる。
【0118】
発明5は、第一モードは、第一制御、及び、第二制御を、ユーザの操作に応じて切り替える動作モードである、発明1~4のいずれかの蓄電池管理システム10である。
【0119】
このような蓄電池管理システム10は、第一モードにおいて、第一制御、及び、第二制御を、ユーザの操作に応じて切り替えることができる。
【0120】
発明6は、制御部36は、第二モードの第二制御中に蓄電池21の残量が所定残量以下となったことを検出すると、第二モードの第一制御を行う、発明1~5のいずれかの蓄電池管理システム10である。
【0121】
このような蓄電池管理システム10は、蓄電池21の残量が低下した場合に、蓄電池21の放電による電力供給を系統電源60からの電力供給に切り替えるため、負荷70への電力供給を継続することができる。つまり、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図ることができる。
【0122】
発明7は、制御部36は、第二モードの第二制御中に蓄電池21の周辺温度が所定温度以下となったことを検出すると、第二モードの第一制御を行う、発明1~6のいずれかの蓄電池管理システム10である。
【0123】
このような蓄電池管理システム10は、蓄電池21の周辺温度が低下した場合に蓄電池21の放電を控えるため、蓄電池21の劣化を抑制し、蓄電池21の放電による負荷70への電力供給を長期的に見た場合に継続することができる。つまり、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図ることができる。
【0124】
発明8は、制御部36は、出力部33に負荷が電気的に接続されていない場合、及び、出力部33に負荷70が電気的に接続されているが負荷70に流れる電流が所定値以下である場合に、第二交流電力の出力部33への出力を停止する無負荷検知機能を有し、第一モードの動作中には、無負荷検知機能を有効にし、第二モードの動作中には、無負荷検知機能を無効にする、発明1~7のいずれかの蓄電池管理システム10である。
【0125】
このような蓄電池管理システム10は、第二モードの動作中に無負荷検知機能が作動しないため、第二モードの動作の安定化を図ることができる。
【0126】
発明9は、制御部36は、第一モードの第二制御中に蓄電池21の出力電流が第一閾値以上となったことを検出すると、第一モードの第一制御を行う、発明3の蓄電池管理システム10である。
【0127】
このような蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給が停止してしまうことうを抑制することができる。つまり、蓄電池管理システム10は、負荷70への電力供給の安定化を図ることができる。
【0128】
発明10は、蓄電池管理システム10は、蓄電池21を含む蓄電池パック20と、蓄電池パック20が着脱自在に接続される電源装置30であって、入力部31、出力部33、及び、制御部36を含む電源装置30とを備え、蓄電池パック20は、蓄電池21の出力電流が第二閾値以上となったことを検出すると、蓄電池21の放電を停止する機能を有し、第二閾値は第一閾値よりも大きい、発明1~9のいずれかの蓄電池管理システム10である。
【0129】
このような蓄電池管理システム10は、蓄電池パック20側の保護機能よりも電源装置30側の保護機能が先に働くように閾値が設定されているため、電源装置30側で意図しないエラーが発生してしまうことを抑制することができる。
【0130】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0131】
例えば、上記実施の形態では、蓄電池管理システムは、複数の機器によって実現された。蓄電池管理システムが複数の機器によって実現される場合、上記実施の形態で説明された蓄電池管理システムが備える構成要素(特に、機能的な構成要素)は、蓄電池管理システムが備える複数の機器にどのように振り分けられてもよい。
【0132】
また、蓄電池管理システムは、単一の装置として実現されてもよい。例えば、蓄電池管理システムは、蓄電池管理装置に相当する単一の装置として実現されてもよいし、サーバ装置に相当する単一の装置として実現されてもよいし、情報端末に相当する単一の装置として実現されてもよい。
【0133】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0134】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0135】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0136】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0137】
例えば、本発明は、蓄電池管理システムなどのコンピュータが実行する蓄電池管理方法として実現されてもよい。本発明は、蓄電池管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0138】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0139】
10、10a、10b 蓄電池管理システム
20、20a 蓄電池パック
21 蓄電池
22 残量計測部
23、38 過電流検出部
24 温度計測部
25、36、36b 制御部
26、37、37b 記憶部
27 セルバランス計測部
28 衝撃検出部
29、39 通信部
30、30a、30b 電源装置
31 入力部
32 電力制御部
32a 充電回路
32b DC/AC変換回路
32c 切替回路
33 出力部
34 操作受付部
35 表示部
40 情報端末
50 サーバ装置
60 系統電源
70 負荷