(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129579
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H02M3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038889
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】長野 昌明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智紀
(72)【発明者】
【氏名】谷野 光平
(72)【発明者】
【氏名】鶴口 祐規
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS01
5H730XC09
5H730XX03
5H730XX15
5H730XX19
5H730XX23
5H730XX35
5H730XX38
(57)【要約】
【課題】電解コンデンサの損傷を防止するとともに、ダイオードの発熱による損失を低減する。
【解決手段】フィルタ装置(2)は、電源ライン(PL)に正極端子が接続されるとともにグランド(GND)に負極端子が接続された電解コンデンサ(C1)と、電源ライン(PL)に設けられ、電解コンデンサ(C1)の正極端子に接続されるカソードを有するダイオード(D1)と、ダイオード(D1)のアノードとカソードとの間を接続する電路を開閉するリレー(RY)とを備える。リレー(RY)は、電源ライン(PL)に電圧が印加されるときにリレー(RY)を閉じ、電源ライン(PL)に電圧が印加されないときにリレー(RY)を開く。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインに正極端子が接続されるとともにグランドに負極端子が接続された電解コンデンサと、
前記電源ラインに設けられ、前記電解コンデンサの前記正極端子に接続されるカソードを有するダイオードと、
前記ダイオードのアノードと前記カソードとの間を接続する電路を開閉する開閉部と、を備え、
前記開閉部は、前記電源ラインに電圧が印加されるときに閉じ、前記電源ラインに電圧が印加されないときに開くフィルタ装置。
【請求項2】
前記電源ラインにおける前記ダイオードの前記アノード側に配置され、前記ダイオードと直列に接続される電流制限素子と、
前記電源ラインへの電圧の印加が開始されてから前記電解コンデンサの充電が完了するまでの時間後に前記開閉部を閉じるように制御する制御部と、をさらに備え、
前記開閉部は、前記ダイオードおよび前記電流制限素子から成る直列回路の両端を接続する電路を開閉する請求項1に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流に含まれる高周波成分をコンデンサにより低減するフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータなどの負荷は、パルス性の高周波ノイズを発生する。このため、当該負荷に電力を供給するスイッチング電源の出力電流に高周波成分が重畳しやすくなり、高周波成分がスイッチング電源の誤動作を誘発する。このような高周波成分を低減するため、スイッチング電源と負荷との間にコンデンサを設けることが知られている。
【0003】
負荷による高周波成分の低減とは異なるが、例えば、特許文献1には、電源ラインとグランドとの間に接続されるコンデンサを有するラインノイズフィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンデンサにより高周波成分を効果的に低減するには、コンデンサの容量を大きくすることが望ましい。しかしながら、セラミックコンデンサのような無極性のコンデンサでは容量を大きくすると大型化しやすい。それゆえ、小型で容量の大きい電解コンデンサが用いられる。ところが、電解コンデンサは、極性を有するために、スイッチング電源の出力端子が逆極性で接続されると、逆電圧が印加されることにより損傷するという問題がある。
【0006】
このような問題を回避するため、電源ラインにダイオードを設けることが行なわれている。ダイオードは、スイッチング電源の出力端子が逆極性で電解コンデンサに接続されるときに、電流が電解コンデンサに流れることを阻止する。これにより、コンデンサの損傷を防止することができる。
【0007】
しかしながら、電解コンデンサが正しく回路に接続されている場合、大電流がダイオードに流れると、ダイオードの発熱量が多くなって損失が増大するという不都合がある。
【0008】
本発明の一態様は、電解コンデンサの損傷を防止するとともに、ダイオードの発熱による損失を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフィルタ装置は、電源ラインに正極端子が接続されるとともにグランドに負極端子が接続された電解コンデンサと、前記電源ラインに設けられ、前記電解コンデンサの前記正極端子に接続されるカソードを有するダイオードと、前記ダイオードのアノードと前記カソードとの間を接続する電路を開閉する開閉部と、を備え、前記開閉部は、前記電源ラインに電圧が印加されるときに閉じ、前記電源ラインに電圧が印加されないときに開く。
【0010】
上記の構成では、電源が電解コンデンサに正しく接続されている場合、すなわち、電解コンデンサに正しく電圧が印加されている場合、開閉部が閉じる。これにより、電源ラインには、ダイオードではなく開閉部を介した電路に電流が流れる。一方、電源が電解コンデンサに逆極性で接続されている場合、すなわち、電解コンデンサに逆電圧が印加される場合、開閉部が開く。これにより、電解コンデンサに電流が流れることをダイオードにより阻止することができる。したがって、電解コンデンサの損傷を防止することができる。
【0011】
また、電解コンデンサに正しく電圧が印加される場合、開閉部により閉じられた電路を介して電流が流れる。これにより、ダイオードに電流が流れることを回避して、ダイオードの発熱量を低減することが可能になる。したがって、ダイオードによる損失を低減することができる。
【0012】
本発明の態様2に係るフィルタ装置は、上記態様1において、前記電源ラインにおける前記ダイオードの前記アノード側に配置され、前記ダイオードと直列に接続される電流制限素子と、前記電源ラインへの電圧の印加が開始されてから前記電解コンデンサの充電が完了するまでの時間後に前記開閉部を閉じるように制御する制御部と、をさらに備え、前記開閉部が、前記ダイオードおよび前記電流制限素子から成る直列回路の両端を接続する電路を開閉してもよい。
【0013】
上記の構成によれば、電圧が印加された直後に電解コンデンサに流れる突入電流を電流制限素子により制限することができる。また、開閉部は、電解コンデンサが充電された後に電路を閉じるので、突入電流がなくなった以降に電流制限素子およびダイオードに電流が流れることがなくなる。したがって、電流制限素子およびダイオードによる損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、電解コンデンサの損傷を防止するとともに、ダイオードの発熱による損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムの構成を示す回路図である。
【
図2】上記電力供給システムのフィルタ装置において電解コンデンサが逆接続された構成を示す回路図である。
【
図3】本発明の一実施形態の変形例に係る電力供給システムの構成を示す回路図である。
【
図4】
図3に示す電力供給システムのフィルタ装置において電解コンデンサが逆接続された構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0017】
〈構成例〉
図1を用いて、本実施形態に係る電力供給システム10の構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係る電力供給システム10の概略構成を示す回路図である。
【0018】
図1に示すように、電力供給システム10は、負荷3に電力を供給するシステムである。電力供給システム10は、スイッチング電源1から出力される直流電圧を、フィルタ装置2を介して負荷3に印加する。負荷3は、モータのようにパルス性の高周波ノイズを発生する。
【0019】
フィルタ装置2は、電解コンデンサC1と、ダイオードD1,D2と、抵抗R1と、リレーRYと、時定数回路4とを備えている。フィルタ装置2は、入力端子Tinおよび出力端子Toutを有している。入力端子Tinは、スイッチング電源1の出力電圧が入力される端子である。出力端子Toutは、負荷3に電圧を出力する端子である。入力端子Tinと出力端子Toutとの間には電源ラインPLが設けられている。
【0020】
電解コンデンサC1は、電源ラインPLとグランドGNDとの間に接続されている。電解コンデンサC1としては、アルミ電解コンデンサ、アルミ固体電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサなどが用いられる。通常、電解コンデンサC1は、一方の端子である正極端子が電源ラインPLに接続され、他方の端子である負極端子がグランドGNDに接続される。
【0021】
ダイオードD1は、カソードおよびアノードを有しており、電源ラインPLに設けられている。カソードは、フィルタ装置2の出力端子Toutとともに、電解コンデンサC1の正極端子に接続されている。アノードは、入力端子Tinに接続されている。
【0022】
抵抗R1は、本発明の電流制限素子の一例である。抵抗R1は、電源ラインPLにおけるダイオードD1のアノード側に配置されている。具体的には、抵抗R1は、一端が入力端子Tinに接続され、他端がダイオードD1のアノードに接続されている。このように、抵抗R1は、ダイオードD1と直列に接続されている。
【0023】
なお、電流制限素子としては、抵抗R1以外にサーミスタなどの素子を用いることができる。
【0024】
リレーRYは、本発明の開閉部の一例である。リレーRYは、ダイオードD1および抵抗R1から成る直列回路の両端を接続する電路5を開閉する。リレーRYは、接触機構SWと、コイルLとを有する。接触機構SWは、コイルLにより駆動されずに開く一方、コイルLにより駆動されて閉じる常時開接点構造を有する。コイルLは、一端がグランドに接続され、他端が導通状態にあるダイオードD2を介して時定数回路4に接続される。
【0025】
なお、開閉部としては、機械式のリレーRY以外にソリッドステートリレー、トライアックなどの素子を用いることができる。
【0026】
時定数回路4は、本発明の制御部の一例である。時定数回路4は、抵抗R2と、コンデンサC2とを有している。抵抗R2の一端は、入力端子Tinに接続され、コンデンサC2は、一端がグランドに接続されている。抵抗R1の他端とコンデンサC2の他端とはともに接続されている。
【0027】
時定数回路4は、スイッチング電源1の出力電圧が入力端子Tinに印加されてから、コイルLが接触機構SWに閉成動作させるための駆動力を生じるまでの所定時間が、抵抗R2の抵抗値とコンデンサC2の容量値とで定められる。当該所定時間は、スイッチング電源1の出力電圧の電源ラインPLへの印加が開始されてから、電解コンデンサC1の充電が完了するまでの時間に設定されている。これにより、時定数回路4は、当該時間後にリレーRYを閉じるように制御する。
【0028】
ダイオードD2は、リレーRYと時定数回路4との間に設けられている。ダイオードD2のカソードは、コイルLの他端に接続されている。ダイオードD2のアノードは、抵抗R1とコンデンサC2との接続点に接続されている。ダイオードD2は、コイルLから電源ラインPL側に電流が流れることを阻止する。
【0029】
〈動作例〉
上記のように構成されるフィルタ装置2の動作例について説明する。
図2は、電力供給システム10のフィルタ装置2において電解コンデンサC1が逆接続された構成を示す回路図である。
【0030】
電解コンデンサC1は、スイッチング電源1とフィルタ装置2との間に流れる電流に含まれる高周波成分を低減する。したがって、高周波ノイズによるスイッチング電源1の誤動作を防止することができる。
【0031】
スイッチング電源1の出力電圧が電源ラインPLへ印加され始めてから、電解コンデンサC1の充電が完了するまでの期間には、電路5がリレーRYによって開かれるので、抵抗R1およびダイオードD1から成る直列回路の両端がバイパスされない。
【0032】
図1は、スイッチング電源1の正極端子(+)が電源ラインPLに接続され、スイッチング電源1の負極端子(-)がグランドGNDに接続されている正しい接続状態を示している。この接続状態の場合、スイッチング電源1からの電流が抵抗R1およびダイオードD1を介して電解コンデンサC1へ流れ込んで、電解コンデンサC1が充電されていく。出力電圧の印加直後に電解コンデンサC1に流れ込む突入電流は、抵抗R1により制限される。
【0033】
電解コンデンサC1の充電が完了すると、電路5がリレーRYによって閉じられるので、抵抗R1およびダイオードD1から成る直列回路の両端は、リレーRYによってバイパスされる。これにより、突入電流がなくなった以降に、抵抗R1およびダイオードD1には電流が流れなくなるので、抵抗R1およびダイオードD1の発熱が大幅に低減する。したがって、抵抗R1およびダイオードD1による損失を低減することができる。
【0034】
一方、
図2は、スイッチング電源1の負極端子(-)が電源ラインPLに接続され、スイッチング電源1の正極端子(+)がグランドGNDに接続されている逆の接続状態を示している。この接続状態の場合、コイルLに電流が流れないことによりリレーRYが開くので、ダイオードD1は、電路5によってバイパスされることがなく、電解コンデンサC1に電流が流れることを阻止する。これにより、電解コンデンサC1の損傷を防止することができる。
【0035】
〈変形例〉
続いて、上述した構成例の変形例について説明する。
図3は、構成例の変形例に係る電力供給システム10の構成を示す回路図である。
図4は、変形例に係る電力供給システム10のフィルタ装置2において電解コンデンサC1が逆接続された構成を示す回路図である。
【0036】
図3に示すように、フィルタ装置2は、抵抗R1および時定数回路4を備えておらず、それ以外は
図1に示すフィルタ装置2と同じ構成である。また、本変形例のフィルタ装置2において、ダイオードD2のアノードは、電源ラインPLに接続され、リレーRYは、ダイオードD1のアノードとカソードとの間を接続する電路6を開閉する。
【0037】
図3は、スイッチング電源1の正極端子(+)が電源ラインPLに接続され、スイッチング電源1の負極端子(-)がグランドGNDに接続されている正しい接続状態を示している。この接続状態の場合、スイッチング電源1の出力電圧が電源ラインPLに印加されると、コイルLに電流が流れることによりリレーRYが閉じるので、ダイオードD1は、電路6によってバイパスされる。これにより、スイッチング電源1からの電流が電路6を介して電解コンデンサC1に電流が流れこんで、電解コンデンサC1が充電されていく。この場合、ダイオードD1に電流が流れないので、ダイオードD1による損失を低減することができる。
【0038】
一方、
図4は、スイッチング電源1の負極端子(-)が電源ラインPLに接続され、スイッチング電源1の正極端子(+)がグランドGNDに接続されている逆の接続状態を示している。この接続状態の場合、スイッチング電源1の出力電圧が電源ラインPLに印加されないので、コイルLに電流が流れないことによりリレーRYが開く。これにより、ダイオードD1は、電路6によってバイパスされることがなく、電解コンデンサC1に電流が流れることを阻止する。これにより、電解コンデンサC1の損傷を防止することができる。
【0039】
また、本変形例のフィルタ装置2は、抵抗R1を備えていないので、上述したような抵抗R1による突入電流の制限効果を得ることができない。しかしながら、ダイオードD1が大電流を流すことができれば、ダイオードD1により突入電流を制限することができる。
【0040】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
2 フィルタ装置
4 時定数回路(制御部)
5,6 電路
C1 電解コンデンサ
D1 ダイオード
GND グランド
PL 電源ライン
R1 抵抗(電流制限素子)
RY リレー(開閉部)