(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129585
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】カッター組立体及びヘッジトリマー
(51)【国際特許分類】
A01G 3/04 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
A01G3/04 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038896
(22)【出願日】2023-03-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年2月9日に(1)株式会社やまびこのウェブサイトhttps://smp.yamabiko-corp.co.jp/login及びhttps://smp.yamabiko-corp.co.jp/ui2/member/asset-detail/62516及び(2)デジタルパンフレット 令和5年2月9日付にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】児玉 久夫
(57)【要約】
【課題】生垣や植木の剪定作業時に、長孔に入り込んだ枝が速やかに排除されることによって、作業性が向上するカッター組立体、及びかかるカッター組立体を備えるヘッジトリマーを提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ヘッジトリマー用のカッター組立体が提供される。このカッター組立体は、互いに重ね合わされ、長手方向に沿ってスライド可能に設けられた下側カッター及び上側カッターを備える。下側カッター及び上側カッターのそれぞれは、カッター本体と、カッター本体から側方に突出する複数の刃部とを有する。少なくとも下側カッターのカッター本体には、その厚さ方向に貫通するとともに、長手方向に沿った長孔が形成される。長孔は、カッター組立体の外部に露出す。長孔の内周面の長手方向に沿った領域には、長孔に侵入した枝に接触して、長孔内から排除する機能を有する少なくとも1つの排除構造が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッジトリマー用のカッター組立体であって、
互いに重ね合わされ、長手方向に沿ってスライド可能に設けられた下側カッター及び上側カッターを備え、
前記下側カッター及び前記上側カッターのそれぞれは、カッター本体と、前記カッター本体から側方に突出する複数の刃部とを有し、
少なくとも前記下側カッターの前記カッター本体には、その厚さ方向に貫通するとともに、長手方向に沿った長孔が形成され、
前記長孔は、前記カッター組立体の外部に露出し、
前記長孔の内周面の長手方向に沿った領域には、前記長孔に侵入した枝に接触して、前記長孔内から排除する機能を有する少なくとも1つの排除構造が設けられている、カッター組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のカッター組立体において、
前記長孔の長手方向に沿った長さは、前記下側カッターと前記上側カッターとの相対的な最大移動距離を上回る、カッター組立体。
【請求項3】
請求項1に記載のカッター組立体において、
前記排除構造は、前記長孔内に突出する凸部で構成されている、カッター組立体。
【請求項4】
請求項3に記載のカッター組立体において、
前記凸部は、その突出方向が前記刃部の突出方向とほぼ平行となるように、前記長孔の内周面の前記刃部と反対側の領域に設けられている、カッター組立体。
【請求項5】
請求項3に記載のカッター組立体において、
前記凸部は、前記カッター組立体の平面視において、その形状が三角形をなしている、カッター組立体。
【請求項6】
請求項5に記載のカッター組立体において、
前記三角形は、その頂部の角度が鈍角である、カッター組立体。
【請求項7】
請求項5に記載のカッター組立体において、
前記長孔の内周面と前記三角形の頂点との長手方向に沿った最大長さは、前記下側カッターと前記上側カッターとの相対的な最大移動距離以下である、カッター組立体。
【請求項8】
請求項1に記載のカッター組立体において、
少なくとも前記下側カッターの前記カッター本体には、隣り合う前記刃部同士の間に、枝に接触して前記刃部同士の間から排除する機能を有する少なくとも1つの第2の排除構造が設けられている、カッター組立体。
【請求項9】
請求項8に記載のカッター組立体において、
前記第2の排除構造は、前記刃部の突出方向と同じ方向に突出する第2の凸部で構成されている、カッター組立体。
【請求項10】
請求項9に記載のカッター組立体において、
前記第2の凸部は、その突出方向が前記刃部の突出方向とほぼ平行である、カッター組立体。
【請求項11】
請求項8に記載のカッター組立体において、
前記カッター組立体は、前記下側カッター及び前記上側カッターのそれぞれの前記複数の刃部が前記カッター本体の一方側にのみ突出する片刃仕様であり、
前記片刃仕様のカッター組立体では、前記排除構造及び前記第2の排除構造は、少なくとも前記下側カッターに設けられている、カッター組立体。
【請求項12】
請求項8に記載のカッター組立体において、
前記カッター組立体は、前記下側カッター及び前記上側カッターのそれぞれの前記複数の刃部が前記カッター本体の両側に突出する両刃仕様であり、
前記両刃仕様のカッター組立体では、前記排除構造及び前記第2の排除構造は、少なくとも前記下側カッターに設けられている、カッター組立体。
【請求項13】
請求項1に記載のカッター組立体において、
さらに、前記下側カッターの前記上側カッターと反対側に、前記下側カッターの一部を覆うように設けられたカッターサポートを備え、
前記排除構造は、前記カッターサポートで覆われていない領域に位置する前記長孔に設けられている、カッター組立体。
【請求項14】
ヘッジトリマーであって、
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のカッター組立体と、
前記カッター組立体の前記下側カッター及び前記上側カッターを長手方向に沿って相対的にスライドさせる動力源とを備える、ヘッジトリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッター組立体及びヘッジトリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
生垣や植木の剪定用の園芸工具として、ヘッジトリマーが使用される(特許文献1参照)。この園芸用トリマは、前後方向に往復運動する上ブレードと下ブレードと(以下、単に「ブレード」とも記載する。)を有している。
一般に、ヘッジトリマーでは、軽量化を目的として、ブレードに長孔(肉抜き)が形成される。
ところが、生垣や植木の剪定の際、特に仕上げ作業を行っている際に、枝の先端が長孔に入り込むことがある。この状態で、ヘッジトリマーを左右方向にスイングすると、ブレードの長孔に留まっている枝の先端が長孔の周縁に引っ掛かり、スイング操作の抵抗となって作業性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では上記事情に鑑み、生垣や植木の剪定作業時に、長孔に入り込んだ枝が速やかに排除されることによって、作業性が向上するカッター組立体、及びかかるカッター組立体を備えるヘッジトリマーを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、ヘッジトリマー用のカッター組立体が提供される。このカッター組立体は、互いに重ね合わされ、長手方向に沿ってスライド可能に設けられた下側カッター及び上側カッターを備える。下側カッター及び上側カッターのそれぞれは、カッター本体と、カッター本体から側方に突出する複数の刃部とを有する。少なくとも下側カッターのカッター本体には、その厚さ方向に貫通するとともに、長手方向に沿った長孔が形成される。長孔は、カッター組立体の外部に露出す。長孔の内周面の長手方向に沿った領域には、長孔に侵入した枝に接触して、長孔内から排除する機能を有する少なくとも1つの排除構造が設けられている。
【0006】
このような態様によれば、長孔に入り込んだ枝が速やかに排除されることによって、作業者が引っ掛かりを感じず、生垣や植木の剪定作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のヘッジトリマーを上側から見た全体斜視図である。
【
図2】第1実施形態のヘッジトリマーを下側から見た全体斜視図である。
【
図4】第1の凸部及び第2の凸部の構成を示す図である。
【
図5】カッター移動距離と長孔の長さとの関係を説明するための図である。
【
図6】カッター移動距離と長孔の長さとの関係を説明するための図である。
【
図7】カッター移動距離と長孔の長さとの関係を説明するための図である。
【
図8】第2実施形態のカッター組立体の一部を拡大して下側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
<第1実施形態>
まず、本発明のカッター組立体及びヘッジトリマーの第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態のヘッジトリマーを上側から見た全体斜視図である。
図2は、第1実施形態のヘッジトリマーを下側から見た全体斜視図である。
図3は、
図1中のA-A線断面の拡大図である。
なお、図中に示した「上下」、「左右」及び「前後」に基いて、ヘッジトリマー及びヘッジトリマーを構成する各部材の方向を規定する。
【0009】
図1に示すヘッジトリマー1は、生垣や植木の刈り込みや剪定に用いられる手持式の小型切断作業機であり、バッテリ100を装着して電動で駆動する。
ヘッジトリマー1は、駆動操作部2と、駆動操作部2の前側に接続されたカッター組立体6とを備えている。
駆動操作部2は、本体3と、本体3の前側に設けられた前ハンドル4と、本体3の後側に設けられた後ハンドル5とを有している。前ハンドル4と後ハンドル5とを手で把持することにより、ヘッジトリマー1の操作を行うことができる。
【0010】
本体3は、本体ケース31と、本体ケース31に収容された電動モータ32とを有している。
本体ケース31は、樹脂製の箱体であり、上面が下面に対して傾斜している。本体ケース31の上面は、後側から前側に向かうに連れて下がるように傾斜している。すなわち、本体ケース31は、後部よりも前部が低く形成されている。そして、本体ケース31は、側面視でほぼ三角形に形成されている。
電動モータ(動力源)32は、駆動伝達機構(図示せず。)を介して、カッター組立体6に接続され、カッター組立体6を駆動させる。後述するように、カッター組立体6は、下側カッター61及び上側カッター62を備えており、電動モータ32は、これらを長手方向に沿って相対的にスライドさせる。
【0011】
本体ケース31の上面には、バッテリ100を取り付けるためのバッテリ取付部33が設けられている。バッテリ取付部33は、本体ケース31の上面に合わせて、後部から前部に向かうに連れて下がるように傾斜している。
バッテリ100は、前後方向に延びている直方体のケースに、複数個のリチウムイオン電池セルを収容して所定の出力を実現した一般的なバッテリである。
【0012】
図示しないが、バッテリ100の下面の後端部には、バッテリ取付部33に係合する係合部が突出している。
バッテリ取付部33にバッテリ100を取り付けるときには、バッテリ100をバッテリ取付部33に対して後方から前方に向けてスライドさせながら、バッテリ100の下部をバッテリ取付部33に嵌合させる。そして、バッテリ100の前端部がバッテリ取付部33の前端部に支持される位置まで移動させると、バッテリ100の係合部がバッテリ取付部33に係合して、バッテリ100がバッテリ取付部33に固定される。
【0013】
バッテリ取付部33に取り付けられたバッテリ100は、後側から前側に向かうに連れて下がるように傾斜し、後部よりも前部が低く配置される。
バッテリ取付部33の上面には、金属製の接続端子(図示せず。)が設けられている。接続端子は、制御基板(図示せず。)や電動モータ32に電気的に接続されている。そして、バッテリ取付部33の接続端子にバッテリ100の接続端子が電気的に接続されることにより、バッテリ100から制御基板や電動モータ32に電力が供給される。
【0014】
バッテリ取付部33からバッテリ100を取り外すときには、バッテリ100の後端部に設けられた連結用レバー34(
図2参照)を操作すると、バッテリ取付部33と係合部との係合状態が解除され、バッテリ100をバッテリ取付部33に対して後方に向けてスライドさせることが可能となる。
【0015】
本体ケース31の前側には、
図1に示すように、前ハンドル4が設けられている。前ハンドル4は、バッテリ取付部33に取り付けられたバッテリ100の前方に位置する。
前ハンドル4は、左右方向に延びている横部と、横部の左右の端部から下方に延びる縦部とを有し、これらが一体的に形成されている。そして、2つの縦部の下端部が本体ケース31の前端部に固定されている。
【0016】
本体ケース31の後側には、後ハンドル5が設けられている。後ハンドル5は、前後方向に沿った軸を中心軸として回転可能に、本体ケース31の後部に連結されている。
後ハンドル5には、左右方向に貫通した開口部が形成された把持部51が形成されている。作業者がヘッジトリマー1を持つときには、把持部51の開口部に手を差し入れて、後ハンドル5を把持する。
【0017】
後ハンドル5の把持部51の内周部には、
図1に示すように、作業者が把持した状態で、カッター組立体6を駆動させるための操作手段であるスロットルレバー52が設けられている。
また、把持部51の上側には、スロットルレバー52の変位(作動)を阻止及びそれを解除するロック解除レバー53が設けられるとともに、電源スイッチ54が設けられている。
さらに、把持部51の下側には、カッター組立体6の非駆動時に、後ハンドル5の本体3に対する回転を阻止及びそれを解除する回転ロックレバー55が設けられている。
【0018】
本体3の前側には、カッター組立体6が接続され、カッター組立体6の後側の部分は、カバー7で保護されている。
図4は、第1の凸部及び第2の凸部の構成を示す図である。
図5~
図7は、それぞれカッター移動距離と長孔の長さとの関係を説明するための図である。
カッター組立体(ヘッジトリマー用のカッター組立体)6は、下側カッター61と、上側カッター62と、下側カッターサポート63と、上側カッターサポート64とを有している。下側カッター61及び上側カッター62とは、互いに重ね合わされ、長手方向(前後方向)に沿って相対的にスライド可能に設けられている。
なお、下側カッター61の構成と上側カッター62の構成とは、実質的に同一であるため、
図4には、下側カッター61について下側から見た構成を示している。
【0019】
下側カッターサポート63は、下側カッター61の下側に設けられている。また、下側カッターサポート63は、軽量化の観点から、
図2に示すように、前側サポート63aと後側サポート63bとの2つの部分に分割して設けられている。すなわち、カッター組立体6は、下側カッター61の上側カッター62と反対側に、下側カッター61の一部を覆うように設けられた下側カッターサポート63を備えている。
一方、上側カッターサポート64は、上側カッター62の上側に設けられている。また、上側カッターサポート64は、カッター組立体6の長手方向(前後方向)に沿って延在している。
さらに、
図3に示すように、カッター組立体6は、上側カッターサポート64と上側カッター62との間に設けられた滑りシート板65を有している。
【0020】
下側カッター61及び上側カッター62のそれぞれは、カッター本体Mと、カッター本体Mから側方に突出する複数の刃部Bとを有している。本実施形態のカッター組立体6は、下側カッター61及び上側カッター62のそれぞれの複数の刃部Bがカッター本体Mの両側に突出する両刃仕様である。
下側カッター61のカッター本体Mには、その厚さ方向に貫通するとともに、長手方向に沿った長孔611が形成されている。また、上側カッター62のカッター本体Mにも、その厚さ方向に貫通するとともに、長手方向に沿った長孔621が形成されている。すなわち、両刃仕様のカッター組立体6では、長孔は、下側カッター61及び上側カッター62の双方のカッター本体Mに形成されている。なお、長孔は、少なくとも下側カッター61のカッター本体Mに形成すればよく、上側カッター62のカッター本体Mに形成しなくてもよい。
【0021】
また、
図3に示すように、上側カッターサポート64には貫通孔641が形成され、滑りシート板65には貫通孔651が形成されている。そして、所定の位置において、ボルト81がワッシャ83、長孔611、長孔621、貫通孔651及び貫通孔641に挿通され、その端部にナット82が螺合されている。これにより、カッター組立体6が組み立てられている。
さらに、所定の位置のボルト81は、ワッシャ83と滑りシート板65との間に配置されたスペーサ66に挿通されている。これにより、ボルト81の過度な締め付けを防止して、下側カッター61と上側カッター62との円滑なスライドを確保している。
【0022】
長孔611及び長孔621は、カッター組立体6の外部に露出している。この場合、生垣や植木を剪定する際に、枝の先端が長孔611及び長孔621に入り込むことがある。この状態で、カッター組立体6を左右方向(
図1及び
図4中、作業方向)にスイングすると、枝の先端が下側カッター61及び上側カッター62の長孔611及び長孔621の周縁に引っ掛かり、スイング操作の抵抗となって作業性が低下する。
そこで、本発明では、長孔611、621の内周面の長手方向に沿った領域に、長孔611、621に侵入した枝に接触して、長孔611、621内から排除する機能を有する少なくとも1つの第1の排除構造を設けるようにした。これにより、入り込んだ枝の先端が下側カッター61及び上側カッター62の長孔611及び長孔621の周縁に留まることを抑制することが可能であり、さらに第1の凸部を設けていないカッター組立体6に比べて、入り込んだ枝の先端を早くに排除することが可能となり、ヘッジトリマー1でのスイング操作の抵抗となって作業性が損なわれることを回避することができる。
【0023】
本実施形態の排除構造は、長孔611、621内に突出する第1の凸部PI1、PI2で構成されている。かかる第1の凸部PI1、PI2によれば、簡単な構成で、長孔611、621に侵入した枝に確実に接触させることができ、枝の排除構造としての機能を確実に発揮させることができる。なお、第1の凸部PI1、PI2を区別して示す必要がない場合、「第1の凸部PI」として説明する。
ここで、長孔611、621に枝が引っ掛かる機構、及びその枝を排除し得る機構について、
図5~
図7を用いて説明する。
【0024】
まず、
図5に示すように、長孔611、621の長手方向の長さが、下側カッター61及び上側カッター62の相対的な最大移動距離以下の場合、長孔611、621に入り込んだ枝は、長孔611、621の端面に接触して、長孔611、621から押し出されて排除される。
これに対して、
図6に示すように、長孔611、621の長手方向の長さが、下側カッター61及び上側カッター62の相対的な最大移動距離を上回る場合、長孔611、621に入り込んだ枝は、長孔611、621の端面に接触しないので、
図6中の斜線で示す領域に留まる。この状況において、ヘッジトリマー1を左右方向にスイング操作すると、枝の先端が下側カッター61及び上側カッター62の長孔611及び長孔621の周縁に引っ掛かり、スイング操作の抵抗となって作業性が低下する。
【0025】
そこで、長孔611、621の長手方向の長さが、下側カッター61及び上側カッター62の相対的な最大移動距離を上回る場合、長孔611、621内に突出する第1の凸部PIを設けることにより、長孔611、621に入り込んだ枝は、長孔611、621の端面又は第1の凸部PIに接触して、長孔611、621から排除される(押し出される)。換言すれば、長孔611、621の長手方向に沿った長さは、下側カッター61と上側カッター62との相対的な最大移動距離を上回る場合に、長孔611、621内に突出する第1の凸部PIを設けることが好ましい。
【0026】
図4に示すように、第1の凸部PI1は、その突出方向が刃部B1の突出方向とほぼ平行となるように、長孔611、621の内周面の刃部B1と反対側の領域(刃部B2と同じ側の領域)に設けられ、第1の凸部PI2は、その突出方向が刃部B2の突出方向とほぼ平行となるように、長孔611、621の内周面の刃部B2と反対側の領域(刃部B1と同じ側の領域)に設けられている。このような配置で第1の凸部PIを設けることにより、長孔611、621に入り込んだ枝をより円滑かつ確実に排除し易くなる。
また、第1の凸部PIは、カッター組立体6の平面視において、その形状(平面視形状)が三角形をなしている。第1の凸部PIの平面視形状が三角形であれば、第1の凸部PIの傾斜面に沿って枝を移動させ易くなり、枝の先端の引っ掛かりを感じ難い。
【0027】
さらに、三角形は、その頂部の角度(
図4中、θ)が鈍角であることが好ましい。この場合、第1の凸部PIの傾斜面に沿って枝をより移動させ易くなり、長孔611、621からの枝の排除効果をより高めることができる。
【0028】
また、
図7に示すように、長孔611、621の内周面(長手方向の端面)と三角形の頂点との長手方向に沿った最大長さPLは、下側カッター61と上側カッター62との相対的な最大移動距離D以下であることが好ましい。これにより、長孔611、621に入り込んだ枝に、第1の凸部PIをより確実に接触させることができる。
【0029】
上述したように、下側カッターサポート63は、カッター組立体6の軽量化を目的とした、前側サポート63aと後側サポート63bとの2つの部分に分割して設けられている。したがって、下側カッター61及び上側カッター62は、下側カッターサポート63で覆われていない領域を有する。かかる領域に存在する長孔611、621には、枝がより入り込み易いため、第1の凸部PI(排除構造)を設けることが特に有効である。すなわち、第1の凸部PI(排除構造)は、下側カッターサポート63で覆われていない領域に位置する長孔611、621に設けられていることが好ましい。
【0030】
図4に示すように、各刃部B(B1、B2)は、その平面視形状が高さの高い台形をなしている。そして、各刃部Bのカッター本体Mとの境界部は、丸みを帯びた形状をなしている。かかる構成により、下側カッター61及び上側カッター62が前後方向にスライドし、それらの刃部B同士で剪定(切断)対象物(例えば、枝等)を挟持した際に、剪定対象物を切断しつつ、カッター組立体6の側方に押し出して排除し易くなっている。
また、カッター本体Mには、隣り合う刃部B(B1、B2)同士の間に、枝に接触して刃部B(B1、B2)同士の間から排除する機能を有する少なくとも1つの第2の排除構造が設けられている。これにより、剪定対象物をカッター組立体6の左右方向により円滑に排除し易くなっている。
【0031】
本実施形態の第2の排除構造は、刃部B1の突出方向と同じ方向に突出する第2の凸部PO1、又は刃部B2の突出方向と同じ方向に突出する第2の凸部PO2で構成されている。かかる第2の凸部PO1、PO2によれば、枝の排除構造としての機能を確実に発揮させることができる。なお、第2の凸部PO1、PO2を区別して示す必要がない場合、「第2の凸部PO」として説明する。
また、第2の凸部PO1は、その突出方向が刃部B1の突出方向とほぼ平行であり、第2の凸部PO2は、その突出方向が刃部B2の突出方向とほぼ平行であるように配置されている。このような配置で第2の凸部PO1、PO2を設けることにより、隣り合う刃部B(B1、B2)同士の間の剪定対象物をカッター組立体6の左右方向により円滑かつ確実に排除し易くなる。
なお、第2の凸部POの平面視形状、構成等は、第1の凸部PIの平面視形状、構成等と異なっていてもよいが、本実施形態では、ほぼ等しく設計されている。
【0032】
以上のようなカッター組立体6において、第1の凸部PI1、PI2は、長孔611、621の長手方向に沿った長さに応じて、長孔611、621の内周面の長手方向に沿った領域に複数個設けるようにしてもよい。第2の凸部PO1、PO2は、隣り合う刃部B1、B2同士の間の距離に応じて、カッター本体Mの長手方向に沿って複数個設けるようにしてもよい。これらの場合、隣り合う第1の凸部PI1、PI2同士の間の領域及び隣り合う第2の凸部PO1、PO2同士の間の領域は、それぞれ凹部又は溝を構成していると捉えることもできる。すなわち、第1の排除構造及び第2の排除構造は、それぞれ凹部又は溝で構成することもできる。
また、第1の排除構造(第1の凸部PI1、PI2)及び第2の排除構造(第2の凸部PO1、PO2)も、下側カッター61及び上側カッター62の双方に設けられているが、これらは、下側カッター61にのみ設けるようにしてもよい。この場合も、上記と同様の作用及び効果が得られる。すなわち、第1の排除構造(第1の凸部PI1、PI2)及び第2の排除構造(第2の凸部PO1、PO2)は、少なくとも下側カッター61に設けるようにすればよい。
【0033】
<第2実施形態>
次に、本発明のカッター組立体及びヘッジトリマーの第2実施形態について説明する。
以下、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態のカッター組立体6は、片刃仕様であること以外は、上記第1実施形態のカッター組立体6と同様である。
図8は、第2実施形態のカッター組立体の一部を拡大して下側から見た斜視図である。
【0034】
図8に示すように、第2実施形態のカッター組立体6は、下側カッター61及び上側カッター62のそれぞれの複数の刃部B1がカッター本体Mの一方側にのみ突出している。
片刃仕様のカッター組立体6では、第1の排除構造及び第2の排除構造は、下側カッター61にのみ設けられている。
具体的には、第1の排除構造は、長孔611内に突出する第1の凸部PI1で構成され、この第1の凸部PI1は、その突出方向が刃部B1の突出方向とほぼ平行となるように、長孔611の内周面の刃部B1と反対側の領域に設けられている。
また、第2の排除構造は、刃部B1の突出方向と同じ方向に突出する第2の凸部PO1で構成されている。
【0035】
このような第2実施形態のカッター組立体6及びヘッジトリマー1においても、上記第1実施形態のカッター組立体6及びヘッジトリマー1と同様の作用及び効果が発揮される。
なお、第1の排除構造及び第2の排除構造は、上記第1実施形態と同様に、下側カッター61及び上側カッター62の双方に設けるようにしてもよい。すなわち、第1の排除構造及び第2の排除構造は、少なくとも下側カッター61に設けるようにすればよい。
【0036】
以上のようなカッター組立体6及びヘッジトリマー1では、カッターに設けた長孔に、長孔に侵入した枝に接触して、長孔内から排除する機能を有する少なくとも1つの第1の排除構造を設けたので、枝の剪定作業時に枝が長孔内に留まることを抑制することができる。このため、カッター組立体6を作業方向にスイングしても、枝が引っ掛かることによる抵抗を感じ難く、作業性の低下を防止することができる。
なお、ヘッジトリマー1の動力源には、電動モータ32に代えて、エンジンを採用してもよい。
また、第1の排除構造及び第2の排除構造は、それぞれ硬質な凸部による構成に限らず、板バネ(弾性変形可能な凸部)で構成することもできる。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0037】
(1)ヘッジトリマー用のカッター組立体であって、互いに重ね合わされ、長手方向に沿ってスライド可能に設けられた下側カッター及び上側カッターを備え、前記下側カッター及び前記上側カッターのそれぞれは、カッター本体と、前記カッター本体から側方に突出する複数の刃部とを有し、少なくとも前記下側カッターの前記カッター本体には、その厚さ方向に貫通するとともに、長手方向に沿った長孔が形成され、前記長孔は、前記カッター組立体の外部に露出し、前記長孔の内周面の長手方向に沿った領域には、前記長孔に侵入した枝に接触して、前記長孔内から排除する機能を有する少なくとも1つの排除構造が設けられている、カッター組立体。
【0038】
(2)上記(1)に記載のカッター組立体において、前記長孔の長手方向に沿った長さは、前記下側カッターと前記上側カッターとの相対的な最大移動距離を上回る、カッター組立体。
【0039】
(3)上記(1)又は(2)に記載のカッター組立体において、前記排除構造は、前記長孔内に突出する凸部で構成されている、カッター組立体。
【0040】
(4)上記(3)に記載のカッター組立体において、前記凸部は、その突出方向が前記刃部の突出方向とほぼ平行となるように、前記長孔の内周面の前記刃部と反対側の領域に設けられている、カッター組立体。
【0041】
(5)上記(3)又は(4)に記載のカッター組立体において、前記凸部は、前記カッター組立体の平面視において、その形状が三角形をなしている、カッター組立体。
【0042】
(6)上記(5)に記載のカッター組立体において、前記三角形は、その頂部の角度が鈍角である、カッター組立体。
【0043】
(7)上記(5)又は(6)に記載のカッター組立体において、前記長孔の内周面と前記三角形の頂点との長手方向に沿った最大長さは、前記下側カッターと前記上側カッターとの相対的な最大移動距離以下である、カッター組立体。
【0044】
(8)上記(1)ないし(7)のいずれか1つに記載のカッター組立体において、少なくとも前記下側カッターの前記カッター本体には、隣り合う前記刃部同士の間に、枝に接触して前記刃部同士の間から排除する機能を有する少なくとも1つの第2の排除構造が設けられている、カッター組立体。
【0045】
(9)上記(8)に記載のカッター組立体において、前記第2の排除構造は、前記刃部の突出方向と同じ方向に突出する第2の凸部で構成されている、カッター組立体。
【0046】
(10)上記(9)に記載のカッター組立体において、前記第2の凸部は、その突出方向が前記刃部の突出方向とほぼ平行である、カッター組立体。
【0047】
(11)上記(8)ないし(10)のいずれか1つに記載のカッター組立体において、前記カッター組立体は、前記下側カッター及び前記上側カッターのそれぞれの前記複数の刃部が前記カッター本体の一方側にのみ突出する片刃仕様であり、前記片刃仕様のカッター組立体では、前記排除構造及び前記第2の排除構造は、少なくとも前記下側カッターに設けられている、カッター組立体。
【0048】
(12)上記(8)ないし(10)のいずれか1つに記載のカッター組立体において、前記カッター組立体は、前記下側カッター及び前記上側カッターのそれぞれの前記複数の刃部が前記カッター本体の両側に突出する両刃仕様であり、前記両刃仕様のカッター組立体では、前記排除構造及び前記第2の排除構造は、少なくとも前記下側カッターに設けられている、カッター組立体。
【0049】
(13)上記(1)ないし(12)のいずれか1つに記載のカッター組立体において、さらに、前記下側カッターの前記上側カッターと反対側に、前記下側カッターの一部を覆うように設けられたカッターサポートを備え、前記排除構造は、前記カッターサポートで覆われていない領域に位置する前記長孔に設けられている、カッター組立体。
【0050】
(14)ヘッジトリマーであって、上記(1)ないし(13)のいずれか1つに記載のカッター組立体と、前記カッター組立体の前記下側カッター及び前記上側カッターを長手方向に沿って相対的にスライドさせる動力源とを備える、ヘッジトリマー。
もちろん、この限りではない。
【0051】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 :ヘッジトリマー
2 :駆動操作部
3 :本体
31 :本体ケース
32 :電動モータ
33 :バッテリ取付部
34 :連結用レバー
4 :前ハンドル
5 :後ハンドル
51 :把持部
52 :スロットルレバー
53 :ロック解除レバー
54 :電源スイッチ
55 :回転ロックレバー
6 :カッター組立体
61 :下側カッター
611 :長孔
62 :上側カッター
621 :長孔
63 :下側カッターサポート
63a :前側サポート
63b :後側サポート
64 :上側カッターサポート
641 :貫通孔
65 :滑りシート板
651 :貫通孔
66 :スペーサ
7 :カバー
81 :ボルト
82 :ナット
83 :ワッシャ
100 :バッテリ
B :刃部
B1 :刃部
B2 :刃部
M :カッター本体
PI :第1の凸部
PI1 :第1の凸部
PI2 :第1の凸部
PO :第2の凸部
PO1 :第2の凸部
PO2 :第2の凸部
PL :最大長さ
D :最大移動距離
θ :角度