(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129593
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】モータドライバ回路、それを用いた位置決め装置、ハードディスク装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/034 20160101AFI20240919BHJP
【FI】
H02P25/034
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038908
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
【テーマコード(参考)】
5H540
【Fターム(参考)】
5H540AA08
5H540BA06
5H540BB06
5H540EE02
5H540EE08
5H540EE09
5H540FC02
(57)【要約】
【課題】PWM駆動方式からリニア駆動方式へ切り替える際の、出力電流の変動を抑制する。
【解決手段】モータドライバ回路200は、パルス幅変調モードとリニアモードが切り替え可能である。制御回路220は、コイルに印加すべき駆動電圧V
DRVを指示する制御信号V
CTRLを生成する。差動アンプ282は、駆動電圧V
OUTが制御信号V
CTRLに応じた目標電圧に近づくように、第1電流ソースドライバCS11、第1電流シンクドライバCS12、第2電流ソースドライバCS21および第2電流シンクドライバCS22を制御する。パルス幅変調モードからリニアモードに遷移するときに、第1電流ソースドライバCS11および第2電流ソースドライバCS21の電流供給能力が通常時より大きくなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅変調モードとリニアモードが切り替え可能なモータドライバ回路であって、
モータのコイルと接続されるハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む出力段と、
前記コイルに印加すべき駆動電圧を指示する制御信号を生成する制御回路と、
前記パルス幅変調モードにおいてアクティブとなり、前記制御信号に応じたデューティサイクルを有するパルス信号を生成し、前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタをスイッチングするパルス幅変調駆動回路と、
前記リニアモードにおいてアクティブとなり、前記駆動電圧が前記制御信号に応じた目標電圧に近づくように、前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタのゲート電圧を制御するリニア駆動回路と、
を備え、
前記リニア駆動回路は、
前記ハイサイドトランジスタのゲートに第1ソース電流をソースする第1電流ソースドライバと、
前記ハイサイドトランジスタのゲートから第1シンク電流をシンクする第1電流シンクドライバと、
前記ローサイドトランジスタのゲートに第2ソース電流をソースする第2電流ソースドライバと、
前記ローサイドトランジスタのゲートから第2シンク電流をシンクする第2電流シンクドライバと、
前記駆動電圧が前記制御信号に応じた目標電圧に近づくように、前記第1電流ソースドライバ、前記第1電流シンクドライバ、前記第2電流ソースドライバおよび前記第2電流シンクドライバを制御する差動アンプと、
を含み、前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときに、前記第1電流ソースドライバおよび前記第2電流ソースドライバの電流供給能力が通常時より大きくなる、モータドライバ回路。
【請求項2】
前記第1電流ソースドライバは、前記差動アンプが生成する差動電流の一方を第1係数倍した前記第1ソース電流を前記ハイサイドトランジスタのゲートにソースし、
前記第1電流シンクドライバは、前記差動電流の他方を第2係数倍した前記第1シンク電流を前記ハイサイドトランジスタのゲートからシンクし、
前記第2電流ソースドライバは、前記差動電流の前記他方を第3係数倍した前記第2ソース電流を前記ローサイドトランジスタのゲートにソースし、
前記第2電流シンクドライバは、前記差動電流の前記一方を第4係数倍した前記第2シンク電流を前記ローサイドトランジスタのゲートからシンクし、
前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときに、前記第1係数および前記第3係数が通常時より大きくなる、請求項1に記載のモータドライバ回路。
【請求項3】
前記第1電流ソースドライバは、前記差動電流の前記一方を折り返す第1カレントミラー回路を含み、
前記第2電流ソースドライバは、前記差動電流の前記他方を折り返す第2カレントミラー回路を含み、
前記第1カレントミラー回路および前記第2カレントミラー回路のミラー比が切り替え可能である、請求項2に記載のモータドライバ回路。
【請求項4】
前記第1電流ソースドライバは、前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときにアクティブとなり、前記ハイサイドトランジスタのゲートに、第1補助ソース電流をソースする第1定電流源を含み、
前記第2電流ソースドライバは、前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときにアクティブとなり、前記ローサイドトランジスタのゲートに、第2補助ソース電流をソースする第2定電流源を含む、請求項1に記載のモータドライバ回路。
【請求項5】
前記リニア駆動回路は、
前記ハイサイドトランジスタのゲートソース間に接続され、オン、オフが切り替え可能な第1放電回路と、
前記ローサイドトランジスタのゲートソース間に接続された第2放電回路と、
をさらに含み、
前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときに、前記第1放電回路および前記第2放電回路がオンとなる、請求項1から4のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【請求項6】
前記モータはリニアモータである、請求項1から4のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【請求項7】
前記リニアモータは、ボイスコイルモータである、請求項6に記載のモータドライバ回路。
【請求項8】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から4のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【請求項9】
リニアモータと、
前記リニアモータを駆動する請求項1から4のいずれかに記載のモータドライバ回路と、
を備える、位置決め装置。
【請求項10】
請求項9に記載の位置決め装置を備える、ハードディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータドライバ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな電子機器や産業機械に、対象物を位置決めするリニアモータ(リニアアクチュエータ)が使用される。ボイスコイルモータは、リニアモータのひとつであり、供給される駆動電流に応じて、可動子の位置を制御可能である。ボイスコイルモータの駆動回路は、ボイスコイルモータに流れる電流を、目標位置を規定する目標電流に近づくようにフィードバック制御する。
【0003】
モータの駆動方式は大きく、PWM(パルス幅変調)駆動方式と、リニア駆動方式に分けられる。PWM駆動方式は、位置決め精度では劣るが、効率で優れており、リニア駆動方式は消費電力が大きいが、位置決めの精度に優れている。モータドライバ回路には、PWM駆動方式とリニア駆動方式が切り替え可能なものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PWM駆動方式では、モータドライバ回路の出力段のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタのゲート電圧は、ハイ電圧またはロー電圧の2状態で遷移する。一方で、リニア駆動方式では、ハイサイドトランジスタやローサイドトランジスタのゲート電圧は、ハイ電圧とロー電圧の間の、中間的な電圧レベルをとる。
【0006】
PWM駆動方式からリニア駆動方式に切り替える際に、ハイサイドトランジスタやローサイドトランジスタのゲート電圧が、リニア駆動方式における最適な電圧レベルに遷移するまでの遅延が大きいと、出力電流の追従性が悪くなる。
【0007】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、PWM駆動方式からリニア駆動方式へ切り替える際の、出力電流の変動を抑制したモータドライバ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある態様のモータドライバ回路は、パルス幅変調モードとリニアモードが切り替え可能である。モータドライバ回路は、モータのコイルと接続されるハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む出力段と、コイルに印加すべき駆動電圧を指示する制御信号を生成する制御回路と、パルス幅変調モードにおいてアクティブとなり、制御信号に応じたデューティサイクルを有するパルス信号を生成し、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタをスイッチングするパルス幅変調駆動回路と、リニアモードにおいてアクティブとなり、駆動電圧が制御信号に応じた目標電圧に近づくように、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタのゲート電圧を制御するリニア駆動回路と、を備える。リニア駆動回路は、ハイサイドトランジスタのゲートに第1ソース電流をソースする第1電流ソースドライバと、ハイサイドトランジスタのゲートから第1シンク電流をシンクする第1電流シンクドライバと、ローサイドトランジスタのゲートに第2ソース電流をソースする第2電流ソースドライバと、ローサイドトランジスタのゲートから第2シンク電流をシンクする第2電流シンクドライバと、駆動電圧が制御信号に応じた目標電圧に近づくように、第1電流ソースドライバ、第1電流シンクドライバ、第2電流ソースドライバおよび第2電流シンクドライバを制御する差動アンプと、を含み、パルス幅変調モードからリニアモードに遷移するときに、第1電流ソースドライバおよび第2電流ソースドライバの電流供給能力が通常時より大きくなる。
【0009】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示のある態様によれば、PWM駆動方式からリニア駆動方式へ切り替える際の、出力電流の追従性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係るモータドライバ回路を備える位置決め装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、第1リニア駆動回路の構成例を示す回路図である。
【
図3】
図3は、差動アンプおよび第1電流ソースドライバ、第1電流シンクドライバ、第2電流ソースドライバおよび第2電流シンクドライバの構成例を示す回路図である。
【
図4】
図4は、ミラー比が切り替え可能なカレントミラー回路の構成例を示す回路図である。
【
図5】
図5は、第1放電回路および第2放電回路の構成例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、第2リニア駆動回路の構成例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、PWMモードからリニアモードに切り替わるときの動作波形図(シミュレーション結果)である。
【
図9】
図9は、変形例に係る第1電流ソースドライバおよび第2電流ソースドライバの回路図である。
【
図10】
図10は、モータドライバ回路を備えるハードディスク装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0013】
一実施形態に係るモータドライバ回路は、パルス幅変調モードとリニアモードが切り替え可能なモータドライバ回路であって、モータのコイルと接続されるハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む出力段と、コイルに印加すべき駆動電圧を指示する制御信号を生成する制御回路と、パルス幅変調モードにおいてアクティブとなり、制御信号に応じたデューティサイクルを有するパルス信号を生成し、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタをスイッチングするパルス幅変調駆動回路と、リニアモードにおいてアクティブとなり、駆動電圧が制御信号に応じた目標電圧に近づくように、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタのゲート電圧を制御するリニア駆動回路と、を備える。リニア駆動回路は、ハイサイドトランジスタのゲートに第1ソース電流をソースする第1電流ソースドライバと、ハイサイドトランジスタのゲートから第1シンク電流をシンクする第1電流シンクドライバと、ローサイドトランジスタのゲートに第2ソース電流をソースする第2電流ソースドライバと、ローサイドトランジスタのゲートから第2シンク電流をシンクする第2電流シンクドライバと、駆動電圧が制御信号に応じた目標電圧に近づくように、第1電流ソースドライバ、第1電流シンクドライバ、第2電流ソースドライバおよび第2電流シンクドライバを制御する差動アンプと、を含み、パルス幅変調モードからリニアモードに遷移するときに、第1電流ソースドライバおよび第2電流ソースドライバの電流供給能力が通常時より大きくなる。
【0014】
この態様によると、PWMモードからリニアモードに切り替える際に、第1電流ソースドライバ/第2電流ソースドライバの電流供給能力を高めることにより、直前のPWMモードにおいて、ハイサイドトランジスタ/ローサイドトランジスタのゲート電圧がローであった場合に、ゲート電圧を高速に上昇させることができる。これにより、ゲート電圧を速やかに最適な電圧レベルに収束させることができ、出力電流の変動を抑制できる。
【0015】
一実施形態において、第1電流ソースドライバは、差動アンプが生成する差動電流の一方を第1係数倍した第1ソース電流をハイサイドトランジスタのゲートにソースし、第1電流シンクドライバは、差動電流の他方を第2係数倍した第1シンク電流をハイサイドトランジスタのゲートからシンクし、第2電流ソースドライバは、差動電流の他方を第3係数倍した第2ソース電流をローサイドトランジスタのゲートにソースし、第2電流シンクドライバは、差動電流の一方を第4係数倍した第2シンク電流をローサイドトランジスタのゲートからシンクし、パルス幅変調モードからリニアモードに遷移するときに、第1係数および第3係数が通常時より大きくなってもよい。
【0016】
一実施形態において、第1電流ソースドライバは、差動電流の一方を折り返す第1カレントミラー回路を含んでもよい。第2電流ソースドライバは、差動電流の他方を折り返す第2カレントミラー回路を含んでもよい。第1カレントミラー回路および第2カレントミラー回路のミラー比が切り替え可能であってもよい。
【0017】
一実施形態において、第1電流ソースドライバは、パルス幅変調モードからリニアモードに遷移するときにアクティブとなり、ハイサイドトランジスタのゲートに、第1補助ソース電流をソースする第1定電流源を含んでもよい。第2電流ソースドライバは、パルス幅変調モードからリニアモードに遷移するときにアクティブとなり、ローサイドトランジスタのゲートに、第2補助ソース電流をソースする第2定電流源を含んでもよい。
【0018】
一実施形態において、リニア駆動回路は、ハイサイドトランジスタのゲートソース間に接続され、オン、オフが切り替え可能な第1放電回路と、ローサイドトランジスタのゲートソース間に接続された第2放電回路と、をさらに含んでもよい。パルス幅変調モードからリニアモードに遷移するときに、第1放電回路および第2放電回路がオンとなってもよい。
【0019】
この態様によると、PWMモードからリニアモードに切り替える際に、第1放電回路、第2放電回路をオンすることにより、直前のPWMモードにおいて、ハイサイドトランジスタ/ローサイドトランジスタのゲート電圧がハイであった場合に、ゲート電圧を高速に低下させることができる。これにより、ゲート電圧を速やかに最適な電圧レベルに収束させることができ、出力電流の変動を抑制できる。
【0020】
一実施形態において、モータはリニアモータであってもよい。一実施形態において、リニアモータは、ボイスコイルモータであってもよい。
【0021】
一実施形態において、モータドライバ回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0022】
一実施形態に係る位置決め装置は、リニアモータと、リニアモータを駆動する上述のいずれかのモータドライバ回路と、を備える。
【0023】
一実施形態に係るハードディスク装置は、上述の位置決め装置を備える。
【0024】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bに接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0027】
また本明細書に示される波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。
【0028】
図1は、実施形態に係るモータドライバ回路200を備える位置決め装置100のブロック図である。位置決め装置100は、リニアモータ102、上位コントローラ104およびモータドライバ回路200を備える。
【0029】
上位コントローラ104は、位置決め装置100を統合的に制御する。上位コントローラ104はリニアモータ102の目標位置を示す位置制御コードPOSを生成し、位置制御コードPOSをモータドライバ回路200に送信する。上位コントローラ104はたとえば、マイクロコントローラ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成される。
【0030】
モータドライバ回路200は、位置制御コードPOSを受け、位置制御コードPOSに応じた量の駆動電流IDRVをリニアモータ102に供給する。リニアモータ102はたとえばボイスコイルモータであり、その可動子は、リニアモータ102に流れる駆動電流IDRVに応じた量だけ変位する。
【0031】
続いてモータドライバ回路200の構成を説明する。モータドライバ回路200は、電流指令生成部210、制御回路220、出力段260A,260B、電流検出回路290を備え、ひとつの半導体基板に集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。
【0032】
モータドライバ回路200は、2つの出力端子OUTA,OUTBを有する。第1出力端子OUTAと第2出力端子OUTBの間には、リニアモータ102および電流検出用のセンス抵抗Rsが接続される。センス抵抗Rsには、駆動電流IDRVに比例した電圧降下(電流検出信号VCS)が発生する。電流検出ピンISNSおよびKSNSはセンス抵抗Rsと接続され、電流検出信号VCSが入力される。
【0033】
電流指令生成部210は、リニアモータ102に供給する駆動電流IDRVの目標値を示すアナログ指令信号VDACを生成する。たとえば電流指令生成部210は、インタフェース回路212、ロジック回路214、D/Aコンバータ216を含む。インタフェース回路212は、上位コントローラ104と接続され、制御データを受信する。インタフェース回路212はたとえばI2C(Inter IC)インタフェースであってもよいし、SPI(Serial Peripheral Interface)であってもよい。インタフェース回路212からの制御データは、リニアモータ102の可動子の目標位置を示す位置制御コードPOSを含む。ロジック回路214は、受信したコードにもとづく制御コードCODEを、D/Aコンバータ216に出力する。制御コードCODEは、上位コントローラ104から受信した位置制御コードPOSと同じであってもよいし、位置制御コードPOSを演算して得た別のコードであってもよい。D/Aコンバータ216は、ロジック回路214が生成する制御コードCODEを、アナログ指令信号VDACに変換する。
【0034】
なお電流指令生成部210の構成はこれに限定されず、外部から直接、アナログ指令信号VDACを受ける構成であってもよい。
【0035】
電流検出回路290は、リニアモータ102に流れる駆動電流IDRVを示す電流フィードバック信号VFBを生成する。たとえば、電流フィードバック信号VFBは、以下の式で表される。k、VCMREFは任意の定数である。
VFB=k×IDRV+VCMREF
【0036】
制御回路220は、電流フィードバック信号VFBとアナログ指令信号VDACを受け、制御信号VCTRLを生成する。制御信号VCTRLは、リニアモータ102の両端間に印加すべき駆動電圧VDRVの指令値である。制御回路220は、デジタル回路で構成してもよく、その場合、制御回路220は、PI(比例・積分)制御器(補償器)、D/Aコンバータ、A/Dコンバータなどの組み合わせで構成することができる。制御回路220は、アナログ回路で構成してもよく、その場合、制御回路220は、エラーアンプを含みうる。
【0037】
モータドライバ回路200は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)モードとリニアモードが切り替え可能に構成される。
【0038】
第1出力段260Aと第2出力段260Bは、BTL(Bridge-Tied Load)形式である。第1出力段260Aは、制御信号VCTRLを受け、制御信号VCTRLに応じた第1駆動電圧VOUTAを第1出力端子OUTAに発生する。第2出力段260Bは、制御信号VCTRLを受け、制御信号VCTRLに応じた第2駆動電圧VOUTBを第2出力端子OUTBに発生する。第1駆動電圧VOUTAと第2駆動電圧VOUTBは逆相であり、リニアモータ102の両端間には、制御信号VCTRLに比例した駆動電圧VDRV(=VOUTA-VOUTB)が印加される。
【0039】
第1出力段260Aは、第1ハイサイドトランジスタM1A、第1ローサイドトランジスタM2Aおよび第1プリドライバ270Aを備える。第1ハイサイドトランジスタM1Aおよび第1ローサイドトランジスタM2Aは、電源ラインと接地ラインの間に直列に接続され、プッシュプル形式のスイッチング回路を構成する。
【0040】
第1プリドライバ270Aは、第1PWM回路272Aおよび第1リニア駆動回路280Aを含む。第1PWM回路272Aは、PWMモードにおいてアクティブとなり、制御信号VCTRLに応じたデューティサイクルを有するパルス状の第1駆動電圧VOUTAが発生するように、第1ハイサイドトランジスタM1Aおよび第1ローサイドトランジスタM2Aを制御する。
【0041】
第1リニア駆動回路280Aは、リニアモードにおいてアクティブとなり、制御信号VCTRLに対して線形に変化する第1駆動電圧VOUTAが発生するように、第1ハイサイドトランジスタM1Aおよび第1ローサイドトランジスタM2Aを制御する。
【0042】
第2出力段260Bは第1出力段260Aと同様に構成される。
【0043】
図2は、第1リニア駆動回路280Aの構成例を示す回路図である。第1リニア駆動回路280Aは、第1ハイサイドトランジスタM1Aおよび第1ローサイドトランジスタM2Aとともに、非反転増幅回路を構成している。
【0044】
第1リニア駆動回路280Aは、抵抗R11,R12,R13,R14、差動アンプ282、第1電流ソースドライバCS11、第1電流シンクドライバCS12、第2電流ソースドライバCS21、第2電流シンクドライバCS22、第1放電回路284、第2放電回路286を含む。
【0045】
第1電流ソースドライバCS11は、ハイサイドトランジスタM1Aのゲートに第1ソース電流ISRC1をソースする。第1電流シンクドライバCS12は、ハイサイドトランジスタM1Aのゲートから第1シンク電流ISNK1をシンクする。
【0046】
第2電流ソースドライバCS21は、ローサイドトランジスタM2Aのゲートに第2ソース電流ISRC2をソースする。第2電流シンクドライバCS22は、ローサイドトランジスタM2Aのゲートから第2シンク電流ISNK2をシンクする。
【0047】
差動アンプ282の反転入力ノードと基準電圧ノードVCOMの間には、抵抗R11が接続される。差動アンプ282の反転入力ノードと第1出力端子AOUTの間には、抵抗R12が接続される。差動アンプ282の非反転入力端子と接地の間には、抵抗R14が接続される。差動アンプ282の非反転入力端子には、抵抗R13を介して制御信号VCTRLが入力される。第1電流ソースドライバCS11、第1電流シンクドライバCS12、第2電流ソースドライバCS21、第2電流シンクドライバCS22は、差動アンプ282が生成する差動電流Idiff1,Idiff2に応じて動作する。
【0048】
差動アンプ282によって、第1駆動電圧VOUTAが制御信号VCTRLに応じた目標電圧に近づくように、第1電流ソースドライバCS11、第1電流シンクドライバCS12、第2電流ソースドライバCS21および第2電流シンクドライバCS22を制御する。
【0049】
第1電流ソースドライバCS11および第2電流ソースドライバCS21は、電流供給能力が少なくとも2段階で切り替え可能に構成される。第1電流ソースドライバCS11および第2電流ソースドライバCS21の電流供給能力は、ロジック回路214によって制御される。ロジック回路214は、PWMモードからリニアモードに遷移するときに、所定時間(クランプ期間ともいう)の間、第1電流ソースドライバCS11および第2電流ソースドライバCS21の電流供給能力を、通常時より大きくする。たとえば所定時間は、数百ns~数μsであり、たとえば1μsとしてもよい。
【0050】
電流供給能力の制御は以下のように行うことができる。たとえば第1電流ソースドライバCS11は、差動アンプ282が生成する差動電流の一方Idiff2を第1係数K1倍した第1ソース電流ISRC1をハイサイドトランジスタM1Aのゲートにソースする。また第1電流シンクドライバCS12は、差動電流の他方Idiff1を第2係数K2倍した第1シンク電流ISNK1をハイサイドトランジスタM1Aのゲートからシンクする。
【0051】
第2電流ソースドライバCS21は、差動電流の他方Idiff1を第3係数K3倍した第2ソース電流ISRC2をローサイドトランジスタM2Aのゲートにソースする。第2電流シンクドライバCS22は、差動電流の一方Idiff2を第4係数K4倍した第2シンク電流ISNK2をローサイドトランジスタM2Aのゲートからシンクする。
【0052】
一実施例では、パルス幅変調モードからリニアモードに遷移するときに、第1係数K1および第3係数K3を通常時より大きくする。これにより、電流供給能力が増大する。
【0053】
第1放電回路284は、第1ハイサイドトランジスタM1Aのゲートソース間に接続される。第2放電回路286は、第1ローサイドトランジスタM2Aのゲートソース間に接続される。第1放電回路284および第2放電回路286は電圧クランプ回路を含み、オン状態において、ゲートソース間電圧を、所定電圧Vclpにおいてクランプする。第1放電回路284および第2放電回路286はオン、オフが切り替え可能であり、ロジック回路214によって制御される。ロジック回路214は、PWMモードからリニアモードに遷移するときに、所定時間の間、第1放電回路284および第2放電回路286をオン状態とする。所定電圧Vclpは、リニアモードにおけるゲート電圧の収束範囲の近傍に定めるとよい。
【0054】
図3は、差動アンプ282および第1電流ソースドライバCS11、第1電流シンクドライバCS12、第2電流ソースドライバCS21、第2電流シンクドライバCS22の構成例を示す回路図である。差動アンプ282は、トランジスタQ31,Q32およびテイル電流源CS31を含む。
【0055】
第1電流ソースドライバCS11は、カレントミラー回路CM1,CM2を含む。カレントミラー回路CM1は、トランジスタM34,M35を含み、差動アンプ282が生成する差動電流Idiffの一方Idiff2を折り返す。カレントミラー回路CM2は、トランジスタM37,M38を含み、カレントミラー回路CM1の出力電流を折り返し、第1ソース電流ISRC1を生成する。
【0056】
カレントミラー回路CM1,CM2のミラー比(電流増幅率)をそれぞれα1,α2とするとき、
ISRC1=K1×Idiff2
K1=α1×α2
となる。
【0057】
上述のように、電流増幅率K
1を切り替えるためには、α1、α2の少なくとも一方を可変とすればよい。
図3の例では、カレントミラー回路CM1の出力側のトランジスタM35の実効的なサイズ(ゲート幅/ゲート長W/L)が可変に構成され、これによりα1が可変となっている。そして、PWMモードからリニアモードに切り替わる際に、所定時間の間、トランジスタM35のサイズが、通常動作時に比べて大きくなる。
【0058】
第1電流シンクドライバCS12は、カレントミラー回路CM3,CM4,CM5を含む。カレントミラー回路CM3は、トランジスタM31,M33を含み、差動アンプ282が生成する差動電流Idiffの他方Idiff1を折り返す。カレントミラー回路CM4は、トランジスタM39,M40を含み、カレントミラー回路CM3の出力電流を折り返す。カレントミラー回路CM5はトランジスタM41,M42を含み、カレントミラー回路CM4の出力電流を折り返し、第1シンク電流ISNK1を生成する。
【0059】
カレントミラー回路CM3,CM4,CM5のミラー比(電流増幅率)をそれぞれα3,α4,α5とするとき、
ISNK1=K2×Idiff1
K2=α3×α4×α5
となる。
【0060】
第2電流ソースドライバCS21は、カレントミラー回路CM6,CM7を含む。カレントミラー回路CM6は、トランジスタM31,M32を含み、差動アンプ282が生成する差動電流Idiffの他方Idiff1を折り返す。カレントミラー回路CM7は、トランジスタM43,M44を含み、カレントミラー回路CM6の出力電流を折り返し、第2ソース電流ISRC2を生成する。
【0061】
カレントミラー回路CM6,CM7のミラー比(電流増幅率)をそれぞれα6,α7とするとき、
ISRC2=K3×Idiff1
K3=α6×α7
となる。
【0062】
上述のように、電流増幅率K
3を切り替えるためには、α6、α7の少なくとも一方を可変とすればよい。
図3の例では、カレントミラー回路CM6の出力側のトランジスタM32の実効的なサイズ(ゲート幅/ゲート長W/L)が可変に構成され、これによりα6が可変となっている。そして、PWMモードからリニアモードに切り替わる際に、所定時間の間、トランジスタM32のサイズが、通常動作時に比べて大きくなる。
【0063】
第2電流シンクドライバCS22は、カレントミラー回路CM8を含む。カレントミラー回路CM8は、トランジスタM34,M56を含み、差動アンプ282が生成する差動電流Idiffの一方Idiff2を折り返し、第2シンク電流ISNK2を生成する。
【0064】
カレントミラー回路CM8のミラー比(電流増幅率)をそれぞれα8とするとき、
ISNK2=K4×Idiff2
K4=α8
となる。
【0065】
スイッチSW31およびSW32は、PWMモードのときにオン、リニアモードのときにオフとなる。
【0066】
図4は、ミラー比が切り替え可能なカレントミラー回路CM1の構成例を示す回路図である。カレントミラー回路CM1の出力側のトランジスタM35は、トランジスタM35aと、トランジスタM35aと並列に接続されたスイッチSW3およびトランジスタM35bを含む。トランジスタM34,M35a、M35bのサイズ比を、1:m:nとするとき、スイッチSW3がオフのときのミラー比α1は、1:mとなり、スイッチSW3がオンのときのミラー比α1は、1:(m+n)となる。
【0067】
図5は、第1放電回路284、第2放電回路286の構成例を示す回路図である。第1放電回路284は、第1ハイサイドトランジスタM1Aのゲートソース間に直列に接続されたスイッチSW4およびダイオードD4を含む。スイッチSW4がオンすると、第1ハイサイドトランジスタM1Aのゲートに蓄えられた電荷が放電され、ゲートソース間電圧は、ダイオードD4の順方向電圧Vfで決まる電圧レベルまで低下してクランプされる。
【0068】
同様に第2放電回路286は、第1ローサイドトランジスタM2Aのゲートソース間に直列に接続されたスイッチSW5およびダイオードD5を含む。
【0069】
図5において、ダイオードD4,D5を、ゲートドレイン間が結線されたMOSFETに置換することができる。この場合、順方向電圧Vfではなく、MOSFETのゲートしきい値電圧Vthで決まる電圧でクランプすることができる。
【0070】
図6は、第2リニア駆動回路280Bの構成例を示す回路図である。第2リニア駆動回路280Bは、
図2の抵抗R11~R14に代えて、抵抗R15~R18を備えている。第2リニア駆動回路280Bは、第2ハイサイドトランジスタM1Bおよび第2ローサイドトランジスタM2Bとともに、反転増幅回路を構成している。
【0071】
以上がモータドライバ回路200の構成である。続いてその動作を説明する。
【0072】
図7は、PWMモードからリニアモードに切り替わるときの動作波形図(シミュレーション結果)である。実施形態に係るモータドライバ回路200の利点を比較技術と対比して説明する。比較技術に係るモータドライバ回路では、第1電流ソースドライバCS11、第2電流ソースドライバCS21の電流供給能力は常に一定である。
【0073】
図7の最上段には、駆動電流I
DRVが示される。(i)は、実施形態における駆動電流I
DRVを示し(ii)は、比較技術における駆動電流I
DRVを示す。
図7の中段には、実施形態における出力電圧AOUT(V
OUTA)、BOUT(V
OUTB)が示される。
図7の最下段には、比較技術における出力電圧AOUT(V
OUTA)、BOUT(V
OUTB)が示される。
【0074】
時刻t0がPWMモードからリニアモードへの切り替えのタイミングを表しており、切り替えの直前において、AOUT,BOUTは両方ともローレベルである。
【0075】
比較技術では、実施形態に比べて出力電圧VOUTA,VOUTBの立ち上がり速度が遅い。そのため、駆動電流IDRVが目標レベルに向かって緩やかに上昇する。これに対して本実施形態では、比較技術に比べて出力電圧VOUTA,VOUTBの立ち上がり速度が早くなり、その結果、駆動電流IDRVを目標レベルに速く収束させることができる。
【0076】
図8は、PWMモードからリニアモードに切り替わるときの動作波形図(シミュレーション結果)である。
図8は、
図7の波形図を拡大した図である。またHGA-AOUTは、第1ハイサイドトランジスタM1Aのゲートソース間電圧を、HGB-BOUTは、第2ハイサイドトランジスタM1Bのゲートソース間電圧を表す。LGAは、第1ローサイドトランジスタM2Aのゲートソース間電圧を、LGBは、第2ローサイドトランジスタM2Bのゲートソース間電圧を表す。
【0077】
時刻t0のモード切り替えの直前において、AOUT,BOUTは両方ともローレベルである。したがって、ローサイドトランジスタM2A,M2Bのゲートソース間電圧LGA,LGBは両方ハイレベルであり、ハイサイドトランジスタM1A,M2Aのゲートソース間電圧HGA-AOUT,HGB-BOUTは両方ローレベルである。
【0078】
ローサイドトランジスタM2A,M2Bのゲート電圧に関しては、実施形態および比較技術のいずれにおいても、放電回路284,286によって高速に低下している。ところが、比較技術では、ハイサイドトランジスタM1A,M1Bのゲート電圧の立ち上がりが遅く、これにより出力電圧AOUT,BOUTの立ち上がりが遅れる。
【0079】
これに対して本実施形態では、クランプ期間の間、第1電流ソースドライバCS11、第2電流ソースドライバCS21の電流供給能力が高くなるため、ハイサイドトランジスタM1A,M1Bのゲート電圧の立ち上がりが比較技術に比べて速くなる。これにより出力電圧AOUT,BOUTの立ち上がりが速くなり、駆動電流IDRVが目標レベルに収束するまでの時間が短縮される。
【0080】
ここで、LGA,LGB,HGA-AOUT,HGB-BOUTはいずれも、第1放電回路284、第2放電回路286によって決まる実質的に同一電圧レベルVclpに収束している。この電圧レベルVclpを、リニアモードにおけるゲートソース電圧の収束範囲の近傍に定めておくことにより、リニアモードにおけるフィードバック制御を、短時間で安定状態に収束させることが可能となる。
【0081】
続いてモータドライバ回路200の変形例を説明する。
【0082】
第1電流ソースドライバCS11、第2電流ソースドライバCS21の電流供給能力を増大させる方法は、実施形態で説明したものに限定されない。
【0083】
図9は、変形例に係る第1電流ソースドライバCS11および第2電流ソースドライバCS21の回路図である。第1電流ソースドライバCS11は、メイン電流源CS11aおよび補助電流源CS11bを含む。メイン電流源CS11aは、差動アンプ282が生成する差動電流I
diff2を、所定の電流増幅率で増幅する。補助電流源CS11bは、クランプ期間においてオンとなり、補助電流I
AUXを生成する。
【0084】
クランプ期間の間は、第1ソース電流ISRC1は補助電流IAUXの分だけ多くなる。これにより、第1ハイサイドトランジスタM1Aのゲート容量の充電速度が速まるため、ゲート電圧を短時間で上昇させることができる。
【0085】
第2電流ソースドライバCS21も第1電流ソースドライバCS11と同様に構成される。
【0086】
(用途)
図10は、モータドライバ回路200を備えるハードディスク装置900を示す図である。ハードディスク装置900は、プラッタ902、スイングアーム904、ヘッド906、スピンドルモータ910、シークモータ912、モータドライバ回路920を備える。モータドライバ回路920は、スピンドルモータ910やシークモータ912を駆動する。
【0087】
シークモータ912はボイスコイルモータである。実施形態に係るモータドライバ回路200は、モータドライバ回路920に内蔵されており、シークモータ912を駆動する。シークモータ912は、スイングアーム904を介してヘッド906を位置決めする。
【0088】
本開示において、駆動対象であるリニアモータの構成や形式は特に限定されない。たとえばスプリングリターン方式のボイスコイルモータや、その他のリニアアクチュエータの駆動にも本開示は適用可能である。あるいは駆動対象のモータは、スピンドルモータであってもよい。
【0089】
位置決め装置100の用途も、ハードディスク装置には限定されず、カメラのレンズの位置決め機構などにも適用できる。
【0090】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0091】
(項目1)
パルス幅変調モードとリニアモードが切り替え可能なモータドライバ回路であって、
モータのコイルと接続されるハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む出力段と、
前記コイルに印加すべき駆動電圧を指示する制御信号を生成する制御回路と、
前記パルス幅変調モードにおいてアクティブとなり、前記制御信号に応じたデューティサイクルを有するパルス信号を生成し、前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタをスイッチングするパルス幅変調駆動回路と、
前記リニアモードにおいてアクティブとなり、前記駆動電圧が前記制御信号に応じた目標電圧に近づくように、前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタのゲート電圧を制御するリニア駆動回路と、
を備え、
前記リニア駆動回路は、
前記ハイサイドトランジスタのゲートに第1ソース電流をソースする第1電流ソースドライバと、
前記ハイサイドトランジスタのゲートから第1シンク電流をシンクする第1電流シンクドライバと、
前記ローサイドトランジスタのゲートに第2ソース電流をソースする第2電流ソースドライバと、
前記ローサイドトランジスタのゲートから第2シンク電流をシンクする第2電流シンクドライバと、
前記駆動電圧が前記制御信号に応じた目標電圧に近づくように、前記第1電流ソースドライバ、前記第1電流シンクドライバ、前記第2電流ソースドライバおよび前記第2電流シンクドライバを制御する差動アンプと、
を含み、前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときに、前記第1電流ソースドライバおよび前記第2電流ソースドライバの電流供給能力が通常時より大きくなる、モータドライバ回路。
【0092】
(項目2)
前記第1電流ソースドライバは、前記差動アンプが生成する差動電流の一方を第1係数倍した前記第1ソース電流を前記ハイサイドトランジスタのゲートにソースし、
前記第1電流シンクドライバは、前記差動電流の他方を第2係数倍した前記第1シンク電流を前記ハイサイドトランジスタのゲートからシンクし、
前記第2電流ソースドライバは、前記差動電流の前記他方を第3係数倍した前記第2ソース電流を前記ローサイドトランジスタのゲートにソースし、
前記第2電流シンクドライバは、前記差動電流の前記一方を第4係数倍した前記第2シンク電流を前記ローサイドトランジスタのゲートからシンクし、
前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときに、前記第1係数および前記第3係数が通常時より大きくなる、項目1に記載のモータドライバ回路。
【0093】
(項目3)
前記第1電流ソースドライバは、前記差動電流の前記一方を折り返す第1カレントミラー回路を含み、
前記第2電流ソースドライバは、前記差動電流の前記他方を折り返す第2カレントミラー回路を含み、
前記第1カレントミラー回路および前記第2カレントミラー回路のミラー比が切り替え可能である、項目2に記載のモータドライバ回路。
【0094】
(項目4)
前記第1電流ソースドライバは、前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときにアクティブとなり、前記ハイサイドトランジスタのゲートに、第1補助ソース電流をソースする第1定電流源を含み、
前記第2電流ソースドライバは、前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときにアクティブとなり、前記ローサイドトランジスタのゲートに、第2補助ソース電流をソースする第2定電流源を含む、項目1に記載のモータドライバ回路。
【0095】
(項目5)
前記リニア駆動回路は、
前記ハイサイドトランジスタのゲートソース間に接続され、オン、オフが切り替え可能な第1放電回路と、
前記ローサイドトランジスタのゲートソース間に接続された第2放電回路と、
をさらに含み、
前記パルス幅変調モードから前記リニアモードに遷移するときに、前記第1放電回路および前記第2放電回路がオンとなる、項目1から4のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【0096】
(項目6)
前記モータはリニアモータである、項目1から5のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【0097】
(項目7)
前記リニアモータは、ボイスコイルモータである、項目6に記載のモータドライバ回路。
【0098】
(項目8)
ひとつの半導体基板に一体集積化される、項目1から7のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【0099】
(項目9)
リニアモータと、
前記リニアモータを駆動する項目1から8のいずれかに記載のモータドライバ回路と、
を備える、位置決め装置。
【0100】
(項目10)
項目9に記載の位置決め装置を備える、ハードディスク装置。
【符号の説明】
【0101】
100 位置決め装置
102 リニアモータ
104 上位コントローラ
200 モータドライバ回路
210 電流指令生成部
212 インタフェース回路
214 ロジック回路
216 D/Aコンバータ
220 制御回路
260A 第1出力段
260B 第2出力段
M1A 第1ハイサイドトランジスタ
M2A 第1ローサイドトランジスタ
M1B 第2ハイサイドトランジスタ
M2B 第2ローサイドトランジスタ
270A 第1プリドライバ
272A 第1PWM回路
280A 第1リニア駆動回路
282 差動アンプ
284 第1放電回路
286 第2放電回路
CS11 第1電流ソースドライバ
CS12 第1電流シンクドライバ
CS21 第2電流ソースドライバ
CS22 第2電流シンクドライバ
270B 第2プリドライバ
272B 第2PWM回路
280B 第2リニア駆動回路
290 電流センスアンプ