(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129594
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】コンパレータ回路、電圧検査回路
(51)【国際特許分類】
H03K 5/08 20060101AFI20240919BHJP
G01R 19/165 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H03K5/08 E
H03K5/08 W
G01R19/165 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038909
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 保
【テーマコード(参考)】
2G035
5J039
【Fターム(参考)】
2G035AC01
2G035AC17
2G035AD10
2G035AD23
2G035AD56
5J039DA12
5J039DB04
5J039KK18
5J039MM03
(57)【要約】
【課題】サブmVオーダーのオーバードライブ電圧で動作可能なコンパレータ回路を提供する。
【解決手段】コンパレータ回路100は、増幅器110および第1電圧コンパレータ120を備える。増幅器110は、オートゼロオペアンプを含み、入力電圧V
INと所定の第1電圧V
1の差を増幅する。第1電圧コンパレータ120は、増幅器110の出力電圧V
AMPを、所定の第2電圧V
2と比較する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートゼロオペアンプを含み、入力電圧と所定の第1電圧の差を増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力電圧を、所定の第2電圧と比較する第1電圧コンパレータと、
を備える、コンパレータ回路。
【請求項2】
前記増幅器の出力電圧を所定の第3電圧と比較する第2電圧コンパレータをさらに備え、ウィンドウコンパレータとして動作する、請求項1に記載のコンパレータ回路。
【請求項3】
前記第1電圧コンパレータおよび前記第2電圧コンパレータはオープンコレクタまたはオープンドレインの出力段を有し、
前記第1電圧コンパレータおよび前記第2電圧コンパレータの出力は、共通の抵抗によってプルアップされている、請求項2に記載のコンパレータ回路。
【請求項4】
前記増幅器は減算回路である、請求項1から3のいずれかに記載のコンパレータ回路。
【請求項5】
請求項2または3に記載のコンパレータ回路と、
前記入力電圧の期待値に応じた電圧レベルを有する前記第1電圧を生成する可変電圧源と、
を備える、電圧検査回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンパレータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路において、ある入力電圧を基準となるしきい値電圧と比較するために、電圧コンパレータが利用される。電圧コンパレータは一般に、差動アンプを利用して利用される。
【0003】
電圧コンパレータの重要な特性のひとつとして、出力遅延時間がある。
図1は、電圧コンパレータの入出力特性を説明する波形図である。
【0004】
電圧コンパレータの出力信号V
OUTは、入力電圧V
INがしきい値電圧V
THとクロスしたことをトリガーとして変化し始める。出力信号V
OUTは、ある有限の傾き(スルーレート)で変化する。クロスした後の入力電圧V
INが、しきい値電圧V
THに対してどれだけ離れているかを、オーバードライブ電圧V
ODと呼ぶ。電圧コンパレータの出力信号V
OUTのスルーレートは、オーバードライブ電圧V
ODが高いほど高くなり、オーバードライブ電圧V
ODが小さいほど低くなる。
図1には、オーバードライブ電圧V
ODが大きいときの波形を実線(i)で、オーバードライブ電圧V
ODが小さいときの波形を実線(ii)で示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電圧コンパレータは、十分に速い応答速度を得るためには、mVオーダーのオーバードライブ電圧が必要であった。したがって、たとえば、2個のコンパレータ回路を組み合わせて、ウィンドウコンパレータを構成したい場合、1個のコンパレータ回路のオーバードライブ電圧がmVであるとすると、ウィンドウ幅はmVオーダーよりも大きくなってしまう。
【0007】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、小さいオーバードライブ電圧で動作可能なコンパレータ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある態様のコンパレータ回路は、オートゼロオペアンプを含み、入力電圧と所定の第1電圧の差を増幅する増幅器と、増幅器の出力電圧を、所定の第2電圧と比較する第1電圧コンパレータと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示のある態様によれば、サブmVオーダーのオーバードライブ電圧で動作可能なコンパレータ回路の提供にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、電圧コンパレータの入出力特性を説明する波形図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るコンパレータ回路のブロック図である。
【
図4】
図4は、一実施例に係るコンパレータ回路の回路図である。
【
図5】
図5は、一実施例に係るコンパレータ回路の回路図である。
【
図6】
図6は、比較技術に係るウィンドウコンパレータの回路図である。
【
図7】
図7は、
図5のコンパレータ回路の具体例の回路図である。
【
図8】
図8は、コンパレータ回路を備える電圧検査回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0013】
一実施形態に係るコンパレータ回路は、オートゼロオペアンプを含み、入力電圧と所定の第1電圧の差を増幅する増幅器と、増幅器の出力電圧を、所定の第2電圧と比較する第1電圧コンパレータと、を備える。
【0014】
コンパレータ回路全体として見たときのしきい値電圧をVTHとすると、入力電圧VINとしきい値電圧VTHの差が、コンパレータ回路全体のオーバードライブ電圧VOD(TOTAL)となる。オーバードライブ電圧VOD(TOTAL)が小さい場合であっても、入力電圧VINとしきい値電圧VTHの差は、ゲインgで増幅されるため、後段の第1電圧コンパレータにおけるオーバードライブ電圧VOD(COMP)は非常に大きくなる。これにより後段の電圧コンパレータは高速に動作できる。したがって、コンパレータ回路は、しきい値電圧VTHと近い入力電圧VTHを高速に比較することが可能となる。
【0015】
一実施形態において、コンパレータ回路は、増幅器の出力電圧を所定の第3電圧と比較する第2電圧コンパレータをさらに備え、ウィンドウコンパレータとして動作してもよい。これにより、極めて狭いウィンドウ幅を実現できる。
【0016】
一実施形態において、第1電圧コンパレータおよび第2電圧コンパレータはオープンコレクタまたはオープンドレインの出力段を有してもよい。第1電圧コンパレータおよび第2電圧コンパレータの出力は、共通の抵抗によってプルアップされていてもよい。
【0017】
一実施形態において、増幅器は減算回路であってもよい。
【0018】
一実施形態に係る電圧検査回路は、ウィンドウコンパレータとして動作可能な上述のコンパレータ回路と、入力電圧の期待値に応じた電圧レベルを有する第1電圧を生成する可変電圧源と、を備えてもよい。
【0019】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0021】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
また、「信号A(電圧、電流)が信号B(電圧、電流)に応じている」とは、信号Aが信号Bと相関を有することを意味し、具体的には、(i)信号Aが信号Bである場合、(ii)信号Aが信号Bに比例する場合、(iii)信号Aが信号Bをレベルシフトして得られる場合、(iv)信号Aが信号Bを増幅して得られる場合、(v)信号Aが信号Bを反転して得られる場合、(vi)あるいはそれらの任意の組み合わせ、等を意味する。「応じて」の範囲は、信号A、Bの種類、用途に応じて定まることが当業者には理解される。
【0023】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0024】
図2は、実施形態に係るコンパレータ回路100のブロック図である。コンパレータ回路100は、前段の増幅器110と、後段の第1電圧コンパレータ120と、を備える。
【0025】
コンパレータ回路100は、入力電圧VINを、しきい値電圧VTHと比較し、比較結果を示す出力信号VOUTを生成する。
【0026】
増幅器110は、入力電圧VINと第1電圧V1の差を増幅する。増幅器110は、オートゼロオペアンプ(オートゼロアンプ、ゼロドリフトアンプとも称される)を利用して構成され、オペアンプのオフセット電圧の影響が非常に小さい。増幅器110は、オフセットフリーで、入力信号VINと第1電圧V1の差分を増幅する。増幅後の増幅器110の出力電圧をVAMPとする。
【0027】
第1電圧コンパレータ120は、増幅器110の出力電圧VAMPを、第2電圧V2と比較し、それらの大小関係を示す出力信号VOUTを生成する。第1電圧コンパレータ120は、一般的な差動アンプで構成することができる。
【0028】
以上がコンパレータ回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0029】
前段の増幅器110は、オートゼロオペアンプを利用して構成されるため、極めて小さいオフセット電圧で入力電圧VINと第1電圧V1との差を増幅できる。一般化すると、増幅器の出力電圧VAMPは、
VAMP=g×(VIN-V1)+VCOM …(1)
で表される。gは増幅器110のゲインであり、VCOMは増幅器110の基準電圧である。ゲインgは、たとえば10倍以上、好ましくは100倍以上とすることができ、1000倍以上としてもよい。
【0030】
後段の第1電圧コンパレータ120によって、増幅器110の出力電圧VAMPと第2電圧V2が比較される。コンパレータ回路100では、VIN=VTHのときに、VAMP=V2が成り立つ。したがって式(2)を得る。
V2=g×(VTH-V1)+VCOM …(2)
したがって、しきい値電圧VTHは、式(3)で表される。
VTH=(V2-VCOM)/g+V1 …(3)
【0031】
後段の電圧コンパレータ120を、設計仕様を満たす速度で動作させるために要求される最小のオーバードライブ電圧(本明細書でこれを最小オーバードライブ電圧という)をVOD(MIN)とする。この最小オーバードライブ電圧VOD(MIN)を与える増幅電圧VAMP(MIN)は、
VAMP(MIN)=V2+VOD(MIN) …(4)
である。
【0032】
式(4)の増幅電圧VAMP(MIN)を与える入力電圧VIN(MIN)は、式(1)から計算することができる。
VIN(MIN)=(VAMP(MIN)-VCOM)/g+V1 …(5)
【0033】
式(5)に式(4)を代入すると、式(6)を得る。
VIN(MIN)=(V2+VOD(MIN)-VCOM)/g+V1 …(6)
【0034】
式(6)の入力電圧VIN(MIN)と、式(3)のしきい値電圧VTHの差分が、コンパレータ回路100全体としての最小オーバードライブ電圧VOD_TOTAL(MIN)となる。
VOD_TOTAL(MIN)=VIN(MIN)-VTH
=(V2+VOD(MIN)-VCOM)/g+V1-{(V2-VCOM)/g+V1
=VOD(MIN)/g …(7)
【0035】
すなわち、コンパレータ回路100全体の最小オーバードライブVOD_TOTAL(MIN)は、第1電圧コンパレータ120の単体の最小オーバードライブ電圧VOD(MIN)をゲインgで割った値となる。したがって、たとえば第1電圧コンパレータ120として、最小オーバードライブ電圧がmVオーダーのものを採用したとしても、入力電圧VINのオーバードライブ電圧VOD_TOTAL(MIN)、すなわちコンパレータ回路100全体の実効的なオーバードライブ電圧は、サブmVオーダーとなり、極めて小さいオーバードライブ電圧で、高速な電圧比較が可能となる。
【0036】
図3は、
図2のコンパレータ回路100の動作波形図である。
図3の上段は、入力信号V
INとしきい値電圧V
THを示す。
図3の中段は、増幅後の信号V
AMPと第2電圧V
2を示す。
図3の下段は、出力信号V
OUTを示す。
【0037】
第1電圧コンパレータ120におけるオーバードライブ電圧VOD2(=VAMP-V2)は、しきい値電圧VTHに対する入力電圧VINのオーバードライブ電圧VOD1(=VIN-VTH)のg倍の大きさを持つ。
【0038】
コンパレータ回路100の利点は、比較技術との対比により明確となる。比較技術では、前段の増幅器110を省略し、後段の第1電圧コンパレータ120に、入力信号V
IN’が直接供給される。比較技術の動作波形は、
図3に破線(ii)で示される。比較技術では、第1電圧コンパレータ120におけるオーバードライブ電圧V
OD1が小さいため、出力信号V
OUTの遷移は破線(ii)で示す様に遅くなる。
【0039】
これに対して本実施形態では、第1電圧コンパレータ120におけるオーバードライブ電圧VOD2が大きいため、出力信号VOUTは高速に遷移する。したがって、コンパレータ回路100は、非常に小さいオーバードライブ電圧VOD1で、高速に動作することができる。
【0040】
本開示は、
図2のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本開示の範囲を狭めるためではなく、本開示や本発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0041】
図4は、一実施例に係るコンパレータ回路100Aの回路図である。増幅器110Aは、減算回路であり、オペアンプ112、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3、第4抵抗R4を備える。オペアンプ112は、オートゼロオペアンプである。R1=R3、R2=R4が成り立つとき、この増幅器110Aの出力電圧V
AMPは式(8)で表される。
V
AMP=(V
1-V
IN)×R2/R1+V
COM …(8)
式(1)と式(8)を比べると、g=-R2/R1である。V
COMは0Vであってもよいし、非ゼロの任意の電圧であってもよい。
【0042】
V2=VCOMとした場合、コンパレータ回路100Aのしきい値電圧VTHは、式(3)にV2=VCOMを代入することにより計算することができ、式(9)で表される。
VTH=V1 …(9)
【0043】
図5は、一実施例に係るコンパレータ回路100Bの回路図である。コンパレータ回路100Bはウィンドウコンパレータであり、入力電圧V
INが、V
Lを下限、V
Hを上限とする電圧ウィンドウに含まれているか否かを判定する。
【0044】
コンパレータ回路100Bは、増幅器110B、第1電圧コンパレータ120および第2電圧コンパレータ130を備える。増幅器110Bの構成は、
図4の増幅器110Aと同様であり、減算回路で構成される。
【0045】
第1電圧コンパレータ120は、増幅電圧VAMPを第2電圧V2と比較し、比較結果を示す第1出力信号VOUT1を生成する。第2電圧コンパレータ130は、増幅電圧VAMPを第3電圧V3と比較し、比較結果を示す第2出力信号VOUT2を生成する。
【0046】
第1電圧コンパレータ120によって、入力電圧VINは、式(10)で示す上側しきい値電圧VHと比較される。
VH=(V2-VCOM)/g+V1 …(3)
第2電圧コンパレータ130によって、入力電圧VINは、式(11)で示す下側しきい値電圧VLと比較される。
VL=(V3-VCOM)/g+V1 …(3)
【0047】
たとえば、第2電圧V2および第3電圧V3は、以下の関係を満たすように定めることができる。
V2=VCOM+ΔV
V3=VCOM-ΔV
この場合、
VH=V1+ΔV/g
VL=V1-ΔV/g
となる。
【0048】
コンパレータ回路100Bはロジック回路140をさらに備えてもよい。ロジック回路140は、2つの出力信号VOUT1,VOUT2を受け、入力信号VINがウィンドウに含まれているときにハイ・ローの一方である第1レベル、含まれていないときにハイ・ローの他方である第2レベルとなる比較信号COMPを出力する。
【0049】
コンパレータ回路100Bの利点は、比較技術との対比によって明確となる。
図6は、比較技術に係るウィンドウコンパレータ200Rの回路図である。ウィンドウコンパレータ200Rは、電圧コンパレータ202および204を備える。電圧コンパレータ202および204の最小オーバードライブ電圧がV
OD(MIN)であるとする。この場合、ウインドウ幅ΔV=V
H-V
Lは、最小オーバードライブ電圧V
OD(MIN)によって制約を受ける。
ΔV≧V
OD(MIN)
なぜなら、ΔV<V
OD(MIN)とすると、入力電圧V
INがウィンドウ外からウィンドウ内に遷移したときに、V
INとしきい値電圧V
H(またはV
L)の差分が、最小オーバードライブ電圧V
OD(MIN)より小さくなるからである。
【0050】
したがって比較技術では、最小オーバードライブ電圧VOD(MIN)がmVオーダーである場合、コンパレータ回路100Bのウィンドウ幅は、mVオーダーとなる。
【0051】
これに対して、
図5の実施例では、V
INのV
Hに対するオーバードライブ電圧、あるいはV
INのV
Lに対するオーバードライブ電圧がサブmVオーダー(μVオーダー)であったとしても、後段の第1電圧コンパレータ120、第2電圧コンパレータ130でのオーバードライブ電圧V
AMP-V
2、V
AMP-V
3は、最小オーバードライブ電圧V
OD(MIN)よりも大きくなる。したがって、サブmVのウィンドウ幅を有するウィンドウコンパレータを構成することができる。
【0052】
なお、
図5のコンパレータ回路100Bにおいて、第2電圧V
2および第3電圧V
3は、以下の関係を満たすように定めてもよい。
V
2=V
COM
V
3=V
COM-ΔV
この場合、
V
H=V
1
V
L=-ΔV/g+V
1
となる。
【0053】
あるいは、第2電圧V2および第3電圧V3は、以下の関係を満たすように定めてもよい。
V2=VCOM+ΔV
V3=VCOM
この場合、
VH=ΔV/g+V1
VL=V1
となる。
【0054】
図7は、
図5のコンパレータ回路100Bの具体例の回路図である。第1電圧コンパレータ120および第2電圧コンパレータ130は、オープンコレクタ(オープンドレイン)の出力形式を有する。ロジック回路140は、第1電圧コンパレータ120および第2電圧コンパレータ130それぞれの出力をプルアップする抵抗R11を含む。抵抗R11および第1電圧コンパレータ120、第2電圧コンパレータ130の出力トランジスタQ11,Q12は、OR回路を構成する。
【0055】
続いてコンパレータ回路100の用途を説明する。
【0056】
図8は、コンパレータ回路100Bを備える電圧検査回路300の回路図である。電圧検査回路300は、入力電圧V
INが、その期待電圧レベルに含まれるか否かを判定する。電圧検査回路300は、上述のコンパレータ回路100Bと、可変電圧源310を備える。可変電圧源310は、入力電圧V
INの期待値レベルに応じた第1電圧V
1を生成する。この構成によれば、電圧検査回路300は、入力電圧V
INが期待値レベルにもとづく電圧範囲に含まれているかを判定できる。電圧検査回路300を利用して検査することで、入力電圧V
INの絶対値を保証することが可能となる。
【0057】
たとえば電圧検査回路300は、D/Aコンバータを検査することができる。すなわち、D/Aコンバータの入力コードをスイープさせながら、それに追従して、可変電圧源310の出力電圧V1をスイープさせる。これにより、D/Aコンバータを高速に検査することができる。
【0058】
コンパレータ回路100の用途は特に限定されず、広く電圧比較の用途に利用できる。
【0059】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【0060】
(付記)
本明細書に開示される技術は、一側面において以下のように把握される。
【0061】
(項目1)
オートゼロオペアンプを含み、入力電圧と所定の第1電圧の差を増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力電圧を、所定の第2電圧と比較する第1電圧コンパレータと、
を備える、コンパレータ回路。
【0062】
(項目2)
前記増幅器の出力電圧を所定の第3電圧と比較する第2電圧コンパレータをさらに備え、ウィンドウコンパレータとして動作する、項目1に記載のコンパレータ回路。
【0063】
(項目3)
前記第1電圧コンパレータおよび前記第2電圧コンパレータはオープンコレクタまたはオープンドレインの出力段を有し、
前記第1電圧コンパレータおよび前記第2電圧コンパレータの出力は、共通の抵抗によってプルアップされている、項目2に記載のコンパレータ回路。
【0064】
(項目4)
前記増幅器は減算回路である、項目1から3のいずれかに記載のコンパレータ回路。
【0065】
(項目5)
項目2または3に記載のコンパレータ回路と、
前記入力電圧の期待値に応じた電圧レベルを有する前記第1電圧を生成する可変電圧源と、
を備える、電圧検査回路。
【符号の説明】
【0066】
100 コンパレータ回路
110 増幅器
112 オペアンプ
R1 第1抵抗
R2 第2抵抗
R3 第3抵抗
R4 第4抵抗
120 第1電圧コンパレータ
130 第2電圧コンパレータ
300 電圧検査回路
310 可変電圧源