(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129598
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】記憶素子、記憶装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20240919BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20240919BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038915
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA20
4M119CC01
4M119DD17
4M119DD24
4M119DD26
4M119GG01
4M119JJ03
4M119JJ04
4M119KK18
5F092AA20
5F092AB07
5F092AC11
5F092AD04
5F092AD23
5F092AD24
5F092BB23
5F092BB36
5F092BB43
5F092BC04
5F092CA02
5F092CA03
(57)【要約】
【課題】外部磁場からの影響を効果的に抑制しつつ、製造コストや容積の増加を抑えることができる記憶素子を提供する。
【解決手段】磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、記憶素子を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、記憶素子。
【請求項2】
前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、前記第2の磁性層の面積は、前記第1の磁性層に比して広い、請求項1に記載の記憶素子。
【請求項3】
前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、前記記憶層と、前記分離層と前記第1の磁性層と、前記反平行結合層とは、略円形又は略矩形の形状を持つ、請求項1に記載の記憶素子。
【請求項4】
前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、前記第2の磁性層は、略円形又は略矩形の形状を持つ、請求項3に記載の記憶素子。
【請求項5】
前記積層構造においては、
前記記憶層上に前記分離層が設けられ、
前記分離層上に前記第1の磁性層が設けられ、
前記第1の磁性層上に前記反平行結合層が設けられ、
前記反平行結合層上に、前記第2の磁性層が設けられている、
請求項1に記載の記憶素子。
【請求項6】
前記第2の磁性層は、前記積層構造の積層方向に沿って下に突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記反平行結合層と接している、
請求項5に記載の記憶素子。
【請求項7】
前記記憶層、前記分離層、前記第1の磁性層、及び、前記反平行結合層の、前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面の面積は、前記記憶層から前記反平行結合層に向かって、小さくなっている、請求項5に記載の記憶素子。
【請求項8】
前記積層構造においては、
前記第2の磁性層上に前記反平行結合層が設けられ、
前記反平行結合層上に前記第1の磁性層が設けられ、
前記第1の磁性層上に前記分離層が設けられ、
前記分離層上に、前記記憶層が設けられている、
請求項1に記載の記憶素子。
【請求項9】
前記第2の磁性層は、前記積層構造の積層方向に沿って上に突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記反平行結合層と接している、
請求項8に記載の記憶素子。
【請求項10】
前記反平行結合層、前記第1の磁性層、前記分離層、及び、前記記憶層の、前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面の面積は、前記記憶層から前記反平行結合層に向かって、小さくなっている、請求項8に記載の記憶素子。
【請求項11】
前記第1及び第2の磁性層は、CoPt、CoNi、CoFeB、CoFe、及び、NiFeからなる群から選択される少なくとも1つの強磁性体を含む、請求項1に記載の記憶素子。
【請求項12】
前記第1及び第2の磁性層は、1nm以上、10nm未満の膜厚を有する、請求項1に記載の記憶素子。
【請求項13】
前記反平行結合層は、Ru、Ir、及び、Osからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1に記載の記憶素子。
【請求項14】
前記反平行結合層は、3オングストローム以上、15オングストローム未満の膜厚を有する、請求項1に記載の記憶素子。
【請求項15】
前記分離層は、Cu、Ta、TaN、Ru、Zr、Ir、Cr、W、Mo、Pt、Pd、Al、Si、及び、CoFeBからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の記憶素子。
【請求項16】
前記分離層は、1nm以上、10nm未満の膜厚を有する、請求項1に記載の記憶素子。
【請求項17】
前記積層構造は、
前記記憶層に対して、前記分離層の反対側に設けられ、磁化方向が固定された参照層と、
前記参照層と前記記憶層との間に挟持された絶縁体層と、
をさらに有する、
請求項1に記載の記憶素子。
【請求項18】
アレイ状に2次元配置された複数の記憶素子を備える記憶装置であって、
前記各記憶素子は、
磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、
記憶装置。
【請求項19】
隣り合う前記複数の記憶素子の前記第2の磁性層は、互いに接続して、一体の層として設けられている、
請求項18に記載の記憶装置。
【請求項20】
アレイ状に2次元配置された複数の記憶素子を備える記憶装置が搭載された電子機器であって、
前記各記憶素子は、
磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、記憶素子、記憶装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量サーバからモバイル端末に至るまで、各種情報機器の飛躍的な発展に伴い、これを構成するメモリやロジックなどの素子においても高集積化、高速化、低消費電力化等、さらなる高性能化が追求されている。特に不揮発性半導体メモリの進歩は著しく、例えば、大容量ファイルメモリとしてのフラッシュメモリは、ハードディスクドライブを駆逐する勢いで普及が進んでいる。一方、コードストレージ用途さらにはワーキングメモリへの適用を睨み、現在一般に用いられているNORフラッシュメモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等を置き換えるべくMRAM(Magnetic Random Access Memory)等の様々なタイプの半導体メモリの開発が進められている。なお、これらのうちの一部は既に実用化されている。
【0003】
MRAMは、MRAMの有する磁気記憶素子の磁性体の磁化状態を変化させることにより、電気抵抗が変化することを利用して、情報の記憶を行う。従って、磁化状態の変化によって決定される上記磁気記憶素子の抵抗状態、詳細には、磁気記憶素子の電気抵抗の大小を判別することにより、記憶された情報を読み出すことができる。
【0004】
そして、MRAMにおいては、上述したように磁気記憶素子の磁化状態によって情報を記憶することから、外部磁場の影響によって、記憶の安定性等が低下することがある。そこで、このような外部磁場からの影響を抑えるために、下記特許文献1においては、MRAM全体を覆うように、透磁率の高い磁性体から構成される磁気シールドを設けている。また、例えば、下記特許文献2においては、MRAMチップを挟み込むように、チップの上下に、磁気シールドを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-53450号公報
【特許文献2】特開2014-112691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MRAM全体を覆うように、もしくは、チップの上下に、磁気シールドを設ける場合には、磁気シールドを構成する磁性体の膜厚を厚くする必要もあり、MRAMの製造コストの増加や、MRAMのパッケージの容積の増加を抑えることが難しくなる。
【0007】
そこで、本開示では、外部磁場からの影響を効果的に抑制しつつ、製造コストや容積の増加を抑えることができる、記憶素子、記憶装置及び電子機器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、記憶素子が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、アレイ状に2次元配置された複数の記憶素子を備える記憶装置であって、前記各記憶素子は、磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、記憶装置が提供される。
【0010】
さらに、本開示によれば、アレイ状に2次元配置された複数の記憶素子を備える記憶装置が搭載された電子機器であって、前記各記憶素子は、磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】MTJ素子の積層構造の概略を示す説明図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係るMTJ素子の一例を示す断面図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係るMTJ素子の一例を示す断面図及び平面図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係るMTJ素子の動作を説明する説明図である。
【
図5】本開示の第1の実施形態に係るMTJ素子のシミュレーション結果を説明する説明図(その1)である。
【
図6】本開示の第1の実施形態に係るMTJ素子のシミュレーション結果を説明する説明図(その2)である。
【
図7】本開示の第1の実施形態の変形例1に係るMTJ素子を示す断面図である。
【
図8】本開示の第1の実施形態の変形例2に係るMTJ素子を示す断面図及び平面図である。
【
図9】本開示の第2の実施形態に係るMTJ素子の一例を示す断面図である。
【
図10】本開示の第3の実施形態に係るMTJ素子の一例を示す断面図である。
【
図11】本開示の第4の実施形態に係るMTJ素子の一例を示す断面図及び平面図である。
【
図12】本開示の第5の実施形態に係るMTJ素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図13】本開示の第5の実施形態に係るMTJ素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図14】本開示の第5の実施形態に係るMTJ素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図15】本開示の第5の実施形態に係るMTJ素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図16】本開示の第5の実施形態に係るMTJ素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図17】本開示の第5の実施形態に係るMTJ素子の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図18】本開示の第6の実施形態に係る記憶装置の概略構成の例を示す説明図である。
【
図19】本開示の第6の実施形態に係るメモリセルアレイの概略構成の例を示す図である。
【
図20】本開示に係る技術が適用され得る撮像装置の積層構造の一例を示す説明図である。
【
図21】本開示に係る技術が適用され得るカメラの概略的な機能構成の一例を示す説明図である。
【
図22】本開示に係る技術が適用され得るスマートフォンの概略的な機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図23】本開示の技術が適用される移動装置制御システムの一例である車両制御システムの構成例を示すブロック図である。車両制御システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本明細書及び図面において、実質的に同一又は類似の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合がある。ただし、実質的に同一又は類似の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0013】
また、以下の説明で参照される図面は、本開示の一実施形態の説明とその理解を促すための図面であり、わかりやすくするために、図中に示される形状や寸法、比などは実際と異なる場合がある。さらに、図中に示される撮像装置は、以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0014】
以下の説明における具体的な長さや形状についての記載は、数学的に定義される数値と同一の値や幾何学的に定義される形状だけを意味するものではない。詳細には、以下の説明における具体的な長さや形状についての記載は、記憶素子、記憶装置、及びこれらの製造工程、及び、その使用・動作において許容される程度の違い(誤差・ひずみ)がある場合やその形状に類似する形状をも含むものとする。
【0015】
また、以下の回路(電気的な接続)の説明においては、特段の断りがない限りは、「電気的に接続」とは、複数の要素の間を電気(信号)が導通するように接続することを意味する。加えて、以下の説明における「電気的に接続」には、複数の要素を直接的に、且つ、電気的に接続する場合だけでなく、他の要素を介して間接的に、且つ、電気的に接続する場合も含むものとする。
【0016】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1. 本開示の実施形態を創作するに至る背景
1.1 MTJ素子
1.2 背景
2. 第1の実施形態
2.1 構成
2.2 動作
3.3 シミュレーション結果
3.4 変形例1
3.5 変形例2
3. 第2の実施形態
4. 第3の実施形態
5. 第4の実施形態
6. 第5の実施形態
7. 第6の実施形態
8. まとめ
9. 適用例
9.1 カメラへの適用例
9.2 スマートフォンへの適用例
9.3 移動装置制御システムへの適用例
10. 補足
【0017】
<<1. 本開示の実施形態を創作するに至る背景>>
まずは、本開示の実施形態を説明する前に、本発明者が本開示の実施形態を創作するに至る背景について説明する。
【0018】
<1.1 MTJ素子>
まずは、
図1を参照して、MRAM(記憶装置)の磁気記憶素子であるMTJ素子100の基本構造について説明する。
図1は、MTJ素子100の積層構造の概略を示す説明図である。
【0019】
先に説明したように、MRAMは、MTJ素子100の磁性体の磁化状態を変化させることにより、電気抵抗が変化することを利用して、情報の記憶を行う。詳細には、磁化状態の変化によって決定される上記MTJ素子100の抵抗状態、詳細には、MTJ素子100の電気抵抗の大小を判別することにより、記憶された情報を読み出すことができる。すなわち、MTJ素子100は、1つの情報(1/0)を記憶する磁気記憶素子であるといえる。
【0020】
そして、MTJ素子100の上下には、互いに直交するアドレス用の配線(すなわち、ワード線及びビット線)(図示省略)が設けられ、MTJ素子100は、これら配線の交点付近にてワード線及びビット線と接続される。なお、複数のMTJ素子100の配列の詳細については後述する。
【0021】
図1に示すように、MTJ素子100は、例えば、下地層(図示省略)の上に、所定の方向に磁気モーメントが固定された固定層102と、非磁性層104と、磁気モーメントの向きが可変である記憶層106と、キャップ層(図示省略)とが順次積層されている構造を持つ。なお、MTJ素子100は、
図1に示す順に積層されていることに限定されるものではなく、例えば、下地層の上に記憶層106が積層され、記憶層106の上に非磁性層104が積層され、非磁性層104の上に固定層102が順次積層されていてもよい。
【0022】
詳細には、固定層102は、強磁性体材料を含む磁性体によって形成され、高い保磁力によって、磁気モーメントの方向(磁化方向)が固定されている。非磁性層104は、酸化マグネシウム(MgO)等の各種の非磁性体等から形成され、固定層102と記憶層106との間に設けられる。記憶層106は、強磁性体材料を含む磁性体によって形成され、記憶する情報に対応して磁気モーメントの方向(磁化方向)を変化(反転)させることができる。さらに、下地層及びキャップ層は、電極、結晶配向性の制御膜、保護膜等として機能することができる。
【0023】
MTJ素子100においては、MTJ素子100に電圧を印加して、記憶層106の磁気モーメントの方向を変化させることにより、固定層102の磁気モーメントの方向との違いにより、MTJ素子100全体の抵抗値が変化する。詳細には、固定層102と記憶層106との磁気モーメントの方向が同じである場合には、MTJ素子100に抵抗値が低くなり、固定層102と記憶層106との磁気モーメントの方向が異なる場合には、MTJ素子100に抵抗値が高くなる。そして、MTJ素子100は、このような磁気モーメントの変化による抵抗値の変化を利用して、情報の記憶を行うことできる。
【0024】
また、MTJ素子100は、上部電極(図示省略)と下部電極(図示省略)とによって挟まれており、これら電極を介してワード線、ビット線、信号線(図示省略)、及び、選択トランジスタ(図示省略)等と電気的に接続される。詳細には、MTJ素子100の固定層102は、下部電極及び選択トランジスタを介してワード線及び信号線と電気的に接続され、MTJ素子100の記憶層106は、上部電極を介してビット線と電気的に接続される。これにより、選択トランジスタによって選択されたMTJ素子100において、信号線及びビット線を介して、MTJ素子100の下部電極と上部電極との間に電圧が印加され、当該MTJ素子100の記憶層106に対する情報の書き込み、及び、読み出しが行われることとなる。
【0025】
<1.2 背景>
次に、本発明者が本開示の実施形態を創作するに至る背景について説明する。MRAM(記憶装置)においては、上述したようなMTJ素子100によって情報を記憶していることから、外部磁場によって、記憶の安定性等が低下することがある。詳細には、MTJ素子100の記憶層106を構成する磁性体は、外部磁場の影響を受けて、その磁性モーメントの方向が、変化してしまうことがある。従って、記憶層106の磁気モーメントの方向が、記憶した情報に対応する磁気モーメントの方向からずれてしまうといった現象が生じることから、MRAMの記憶保持力の低下が発生する。また、外部磁場によって、記憶させようとする情報に対応するように記憶層106の磁気モーメントの方向を変化させることが難しくなり、MRAMの記憶電圧の増加等が発生する。
【0026】
そこで、このような外部磁場からの影響を抑えるために、従来技術においては、透磁率の高い磁性体から構成される磁気シールドを設けている。例えば、上記特許文献1においては、MRAM全体を覆うように、磁気シールドを設けている。また、例えば、上記特許文献2においては、MTJ素子100が設けられているチップを挟み込むように、チップの上下に、磁気シールドを設けている。
【0027】
しかしながら、MRAM全体を覆うように、もしくは、チップの上下に、磁気シールドを設ける場合には、磁気シールドを構成する磁性体の膜厚を厚くする必要もあり、MRAMの製造コストの増加や、MRAMのパッケージの容積の増加を抑えることが難しくなる。また、例えば、MRAMのチップとイメージセンサのチップとを積層させる場合、イメージセンサの受光面側には、光を透過する必要があるため、磁性体シールドを設置することができない。従って、このような場合、受光面以外の位置にのみ磁気シールドを配置することとなるため、磁気シールドによる外部磁場の遮蔽効果が大幅に低下してしまうこととなる。
【0028】
そこで、本発明者は、このような状況を鑑みて、鋭意検討を行い、外部磁場の影響を抑制するための層をMTJ素子100に設けることを着想し、本開示の実施形態を創作するに至った。本発明者が創作した本開示の実施形態によれば、外部磁場からの影響を抑制しつつ、MRAMの製造コストや容積の増加を抑えることができる。さらに、本開示の実施形態は、磁気シールドで全体を覆うことがないことから、受光面を覆うことができないイメージセンサのチップとの積層構造へ適用することができる。以下、本開示の実施形態の詳細を順次説明する。
【0029】
<<2. 第1の実施形態>>
<2.1 構成>
まずは、
図2及び
図3を参照して、本開示の第1の実施形態に係るMTJ素子100の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るMTJ素子100の一例を示す断面図であり、
図3は、本実施形態に係るMTJ素子100の一例を示す断面図及び平面図である。なお、
図2においては、外部磁場が印加されていない状態での、MTJ素子100の各層の磁気モーメントの方向の一例を矢印で示している。
【0030】
図2に示すように、本実施形態に係るMTJ素子100は、例えば、記憶層106の上に、分離層200と、磁性層(第1の磁性層)202と、反平行結合層204と、磁性層(第2の磁性層)206とが順次積層されている構造を持つ。言い換えると、本実施形態に係るMTJ素子100は、記憶層106上に分離層200が設けられ、分離層200上に磁性層202が設けられ、磁性層202上に反平行結合層204が設けられ、反平行結合層204上に、磁性層206が設けられている積層構造を持つ。なお、本開示の実施形態においては、後述するように、MTJ素子100は、記憶層106と、分離層200と、磁性層202と、反平行結合層204と、磁性層206とが順次積層されている構造を持っていればよく、その積層方向の上下は特に限定されるものではない。すなわち、本開示の実施形態においては、MTJ素子100は、
図2に示す順に各層が積層されていることに限定されるものではない。
【0031】
また、
図2においては、わかりやすくするために、記憶層106のみが記載されている。しかしながら、実際には、記憶層106の下方に非磁性層(絶縁体層)104が積層され、さらに非磁性層104の下方に固定層(参照層)102が積層されているものとする。言い換えると、固定層102は、記憶層106に対して、分離層200の反対側に設けられており、非磁性層104は、記憶層106と固定層102とに矜持されている。もしくは、
図2においては、記憶層106のみが記載されているが、実際には、分離層200の下方に固定層102が積層され、固定層102の下方に非磁性層104が積層され、非磁性層104の下方に記憶層106が積層されていてもよい。言い換えると、固定層102は、記憶層106に対して、分離層200側に設けられており、非磁性層104は、記憶層106と固定層102とに矜持されている。
【0032】
すなわち、
図2における記憶層106は、
図2の下側から固定層102と非磁性層104と記憶層106とが順次積層した積層構造、もしくは、
図2の下側から記憶層106と非磁性層104と固定層102とが順次積層した積層構造を表していることとなる。そして、
図2においても、上述したように、固定層102は、強磁性体材料を含む磁性体によって形成され、高い保磁力等によって、磁気モーメントの方向が固定されている。非磁性層104は、酸化マグネシウム等の各種の非磁性体等から形成されている。さらに、記憶層106は、強磁性体材料を含む磁性体によって形成され、記憶する情報に対応して磁気モーメントの方向を変化させることができる。
【0033】
また、
図2には示されていないものの、記憶層106は、下地層(図示省略)の上に設けられていてもよく、さらに、記憶層106上にキャップ層(図示省略)が設けられていてもよい。下地層及びキャップ層は、電極、結晶配向性の制御膜、保護膜等として機能することができる。さらに、
図2に示すような積層構造を持つMTJ素子100は、上部電極(図示省略)と下部電極(図示省略と)(一対の電極)によって挟まれている。
【0034】
さらに、MTJ素子100の各層を説明すると、まず、分離層200は、記憶層106に対する分離層200上の各層の磁気モーメントによる影響を抑制する機能を有する。詳細には、分離層200は、導電性を持つ非磁性体から形成される。分離層200は、例えば、銅(Cu)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、ルテニウム(Ru)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミウム(Al)、シリコン(Si)、及び、コバルト鉄ボロン(CoFeB)等からなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。さらに、分離層200は、1nm以上、10nm未満の膜厚を有する。
【0035】
磁性層202は、後述する反平行結合層204により、磁性層206と反対方向の磁性モーメントの方向になるように磁気結合されている。さらに、磁性層202は、自身の磁化モーメントにより、外部磁場の磁気モーメントの少なくとも一部を打ち消すことができ、記憶層106に対する外部磁場の磁気モーメントからの影響を抑制する機能を有する。なお、磁性層202の動作の詳細については、後述する。
【0036】
詳細には、磁性層202は、MTJ素子100の積層構造に含まれる各層の反磁場を超えない強度の垂直磁気異方性を有し、強磁性体から形成される。磁性層202は、例えば、コバルト白金(CoPt)、コバルトニッケル(CoNi)、CoFeB、コバルト鉄(CoFe)、及び、ニッケル鉄(NiFe)等からなる群から選択される少なくとも1つの強磁性体を含むことができる。また、磁性層202は、1nm以上の膜厚を有し、3nm以下の膜厚を有することが好ましい。
【0037】
また、反平行結合層204は、反平行結合層を挟む、磁性体から一対の層の磁気モーメントの方向を、互いに反対方向にすることができる。詳細には、反平行結合層204は、磁性層202を、磁性層206と反対方向の磁性モーメントの方向を持つように、磁性層206と磁気結合する機能を有する。反平行結合層204は、Ru、Ir、及び、オスミウム(Os)等からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことができる。反平行結合層204は、3オングストローム以上、15オングストローム未満の膜厚を有する。
【0038】
また、磁性層206は、外部磁場の影響を受けて、自身の磁気モーメントの方向を、外部磁場の磁気モーメントの方向と同じ方向になろうとする機能を持つ。磁性層206は、MTJ素子100の積層構造に含まれる各層の反磁場を超えない強度の垂直磁気異方性を有し、強磁性体から形成される。磁性層206は、例えば、CoPt、CoNi、CoFeB、CoFe、及び、NiFe等からなる群から選択される少なくとも1つの強磁性体を含むことができる。さらに、磁性層206は、3nm以上の膜厚を有し、6nm以下の膜厚を有することが好ましい。また、磁性層206の膜厚は、磁性層202の膜厚と同一、又は、磁性層202の膜厚に比して厚いことが好ましい。そして、磁性層206は、導電性を有する材料で形成することにより、上述した上部電極として機能させるようにしてもよい。
【0039】
そして、磁性層206は、外部磁場の影響を受けて、自身の磁気モーメントの方向を、外部磁場の磁気モーメントの方向と同じ方向になろうとする。さらに、上述した磁性層202は、反平行結合層204により磁性層206と反対方向の磁性モーメントの方向になるように磁気結合されていることから、自身の磁気モーメントの方向を、磁性層206の磁気モーメントの方向と反対方向になろうとする。そして、記憶層106に近い磁性層202の磁化モーメントにより、外部磁場の磁気モーメントの少なくとも一部が打ち消されるため、記憶層106においては、外部磁場の磁気モーメントからの影響が抑制されることとなる。なお、MTJ素子100の各層の動作の詳細については、後述する。
【0040】
また、例えば、
図3の下段に示す断面図に示すように、磁性層206による影響が直接的に記憶層106へ及ぶことを抑制するために、上記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、磁性層206の面積は、磁性層202に比して広いことが好ましい。すなわち、本実施形態においては、MTJ素子100をその上方から見たときに、磁性層206が、磁性層202及び記憶層106の全体を覆い隠すようになっていることが好ましい。さらに、具体的には、本実施形態においては、例えば、上記切断面において、磁性層206の面積は、磁性層202の面積の9倍以上であることが好ましい。
【0041】
本実施形態においては、磁性層206の面積を磁性層202に比して広くすることにより、磁性層206の端部を、記憶層106に対してより遠くに配置させることができる。その結果、本実施形態においては、磁性層206からの漏洩磁性が記憶層106へ及ぶことを抑制することができ、磁性層202からの影響を効率的に記憶層106へ及ぼすことができる。
【0042】
また、例えば、
図3の上段に示す上面図に示すように、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、記憶層106と分離層200と磁性層202と反平行結合層204とからなる積層は、略円形の形状を持つことが好ましい。さらに、例えば、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、磁性層206は、略円形の形状を持つ。なお、ここで、略円形とは、円形又は楕円を含むものとする。
【0043】
<2.2 動作>
次に、
図4を参照して、本実施形態に係るMTJ素子100の動作について説明する。
図4は、本実施形態に係るMTJ素子100の動作を説明する説明図である。なお、
図4においては、外部磁場500が印加された状態での、MTJ素子100の各層の磁気モーメントの方向の一例を矢印で示している。また、外部磁場500は、
図4中、下から上方向の磁気モーメントを持つものとする。
【0044】
外部磁場500が印加されると、外部磁場500の影響により、磁性層206は、自身の磁気モーメントの方向を、外部磁場500の磁気モーメントの方向と同じ方向になろうとする。すなわち、磁性層206の磁気モーメントの方向は、
図2に示す状態から
図4に示す状態へと変化する。
【0045】
次に、磁性層202は、反平行結合層204により、磁性層206と反対方向の磁性モーメントの方向になるように磁気結合されていることから、自身の磁気モーメントの方向を、磁性層206の磁気モーメントの方向と反対方向に変化させようとする。すなわち、磁性層202の磁気モーメントの方向は、
図2に示す状態から
図4に示す状態へと変化する。
【0046】
そして、磁性層202の磁化モーメントにより、外部磁場500の磁気モーメントの少なくとも一部が打ち消される(相殺)ため、記憶層106においては、外部磁場500の磁気モーメントからの影響を抑制されることとなる。
【0047】
<2.3 シミュレーション結果>
次に、
図5及び
図6を参照して、本実施形態に係るMTJ素子100のシミュレーション結果について説明する。
図5及び
図6は、本実施形態に係るMTJ素子100のシミュレーション結果を説明する説明図である。
【0048】
図5に示す物性(各層の膜厚、直径及び磁気特性)を持つ、
図3に示される本実施形態に係るMTJ素子100に、±1000(Oe:エルステッド)の外部磁場500を印可したときに、記憶層106が感じる磁場強度のシミュレーションを行った。その結果を
図6に示す。なお、
図6においては、正の符号を持つ外部磁場500は、
図3中、下から上方向の磁気モーメントを持ち、負の符号を持つ外部磁場500は、
図3中、上から下方向の磁気モーメントを持つ。また、比較例は、本実施形態に係る外部磁場500の影響を抑制することが可能な層(分離層200、磁性層202、反平行結合層204及び磁性層206)が設けられていないMTJ素子を意味する。
【0049】
図6によると、外部磁場500が±500(Oe)の範囲においては、記憶層106が感じる磁場強度は、最大でも110(Oe)以内であり、比較例と比べて記憶層106への外部磁場500からの影響が抑制されていることが分かった。また、±500(Oe)を超える外部磁場500が印加された場合であっても、比較例に比べて、相対的に記憶層106が感じる磁場強度が抑制されていることが分かった。
【0050】
以上のように、本実施形態においては、MTJ素子100は、例えば、記憶層106の上に、分離層200と、磁性層202と、反平行結合層204と、磁性層206とが順次積層されている構造を持つ。本実施形態においては、このような構成を持つことから、外部磁場500が印加された際には、記憶層106においては、外部磁場500の磁気モーメントからの影響を抑制されることとなる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、外部磁場500の影響を抑制するための層をMTJ素子100に設けていることから、MTJ素子100の作製時に外部磁場500の影響を抑制する層を同時に形成することができることから、MRAMの製造コストの増加を抑えることができる。また、本実施形態においては、チップ全体を覆う磁気シールドに比べて、MRAMの小型化が可能である。そして、本実施形態は、チップ全体を磁気シールドで覆うことがないことから、受光面を覆うことができないイメージセンサのチップとの積層構造へも適用することができる。
【0052】
すなわち、本実施形態によれば、外部磁場からの影響を効果的に抑制しつつ、MRAMの製造コストや容積の増加を抑えることができる。
【0053】
<3.4 変形例1>
次に、
図7を参照して、本実施形態の変形例1に係るMTJ素子100の構成について説明する。
図7は、本実施形態の変形例1に係るMTJ素子100を示す断面図である。
【0054】
本実施形態においては、記憶層106、分離層200、磁性層202、及び、反平行結合層204は、同じ面積であることに限定されるものではなく、異なる面積であってもよい。例えば、
図7のAに示すように、記憶層106、分離層200、磁性層202、及び、反平行結合層204の、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面の面積は、記憶層106から反平行結合層204に向かって、小さくなっていてもよい。
【0055】
また、例えば、
図7のBに示すように、記憶層106、分離層200、磁性層202、及び、反平行結合層204の、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面の面積は、記憶層106から反平行結合層204に向かって、大きくなっていてもよい。
【0056】
すなわち、本変形例においては、MTJ素子100は、テーパ上の積層構造を有してもよい。
【0057】
<3.5 変形例2>
次に、
図8を参照して、本実施形態の変形例2に係るMTJ素子100の構成について説明する。
図8は、本実施形態の変形例2に係るMTJ素子100を示す断面図及び平面図である。
【0058】
本実施形態においては、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、記憶層106、分離層200、磁性層202、反平行結合層204、及び、磁性層206は、略円形の形状を持つことに限定されるものではなく、略矩形の形状であってもよい。ここで、略矩形とは、四角形、又は、四角形の4隅が丸くなった形状等のような、矩形に近似できる形状を含むものとする。
【0059】
例えば、
図8に示すように、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、記憶層106、分離層200、磁性層202、反平行結合層204、及び、磁性層206は、略矩形の形状を持つ。
【0060】
また、本実施形態においては、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、記憶層106、分離層200、磁性層202及び反平行結合層204は、略円形の形状を持ち、一方、磁性層206は、略矩形の形状を持っていてもよい。この詳細については、後述する。
【0061】
<<3. 第2の実施形態>>
次に、
図9を参照して、本開示の第2の実施形態に係るMTJ素子100aの構成について説明する。
図9は、本実施形態に係るMTJ素子100aの一例を示す断面図である。
【0062】
本開示の実施形態においては、MTJ素子100は、分離層200と、磁性層(第1の磁性層)202と、反平行結合層204と、磁性層(第2の磁性層)206とが順次積層されている構造を持っていればよい。すなわち、本開示の実施形態においては、MTJ素子100は、記憶層106上に分離層200が設けられ、分離層200上に磁性層202が設けられ、磁性層202上に反平行結合層204が設けられ、反平行結合層204上に、磁性層206が設けられている積層構造を持つことに限定されるものではなく、逆の順に積層されていてもよい。
【0063】
詳細には、本開示の第2の実施形態に係るMTJ素子100aおいては、
図9に示すように、磁性層206上に反平行結合層204が設けられ、反平行結合層204上に磁性層202が設けられ、磁性層202上に分離層200が設けられ、分離層200上に、記憶層106が設けられている。
【0064】
また、本実施形態においても、磁性層206による影響が直接的に記憶層106へ及ぶことを抑制するために、上記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、磁性層206の面積は、磁性層202に比して広いことが好ましい。
【0065】
なお、
図9においては、わかりやすくするために、記憶層106のみが記載されているが、
図9における記憶層106は、
図9の下側から記憶層106と非磁性層104と固定層102とが順次積層した積層構造を表している。
【0066】
また、本実施形態においては、反平行結合層204、磁性層202、分離層200、及び、記憶層106は、同じ面積であることに限定されるものではなく、異なる面積であってもよい。例えば、反平行結合層204、磁性層202、分離層200、及び、記憶層106の、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面の面積は、反平行結合層204から記憶層106に向かって、小さくなっていてもよい。もしくは、本実施形態においても、反平行結合層204、磁性層202、分離層200、及び、記憶層106の、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面の面積は、反平行結合層204から記憶層106に向かって、大きくなっていてもよい。
【0067】
以上のように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、外部磁場からの影響を効果的に抑制しつつ、MRAMの製造コストや容積の増加を抑えることができる。
【0068】
<<4. 第3の実施形態>>
次に、
図10を参照して、本開示の第3の実施形態に係るMTJ素子100の構成について説明する。
図10は、本実施形態に係るMTJ素子100の一例を示す断面図である。
【0069】
本実施形態においては、
図10に示すように、磁性層206は、積層構造の積層方向に沿って下に突出する突出部206aを有し、突出部206aは、反平行結合層204と接していてもよい。
【0070】
また、MTJ素子100が、第2の実施形態のような積層順で各層が積層されている場合には、磁性層206は、積層構造の積層方向に沿って上に突出する突出部206aを有し、突出部206aは、反平行結合層204と接していてもよい。
【0071】
本実施形態においては、磁性層206が、反平行結合層204と接する突出部206aを有することにより、磁性層206の端部を、記憶層106に対してより遠くに配置させることができる。その結果、本実施形態においても、磁性層206からの漏洩磁性が記憶層106へ及ぶことを抑制することができ、磁性層202からの影響を効率的に記憶層106へ及ぼすことができる。
【0072】
以上のように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、外部磁場からの影響を効果的に抑制しつつ、MRAMの製造コストや容積の増加を抑えることができる。
【0073】
<<5. 第4の実施形態>>
次に、
図11を参照して、本開示の第4の実施形態に係るMTJ素子100の構成について説明する。
図11は、本実施形態に係るMTJ素子100の一例を示す断面図及び平面図である。
【0074】
本開示の実施形態においては、複数のMTJ素子100は、1つの磁性層206と上部電極(図示省略)とを共有してもよい。例えば、
図11に示すように、隣り合う複数のMTJ素子100の磁性層206は、互いに接続して、一体の層として設けられていてもよい。なお、
図11においては、2つのMTJ素子100が記載されているものの、本実施形態はこれに限定されるものではなく、2つ以上の複数のMTJ素子100が1つの磁性層206を共有していればよい。そして、本実施形態においても、磁性層206は、導電性を有する材料で形成することにより、上述した上部電極として機能させるようにしてもよい。
【0075】
また、本実施形態においては、積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、記憶層106、分離層200、磁性層202及び反平行結合層204は、略円形の形状を持ち、磁性層206は、略矩形の形状を持っていてもよい。
【0076】
なお、本変形例においては、
図11に示すように、複数のMTJ素子100を隣り合うように配置することに限定されるものではなく、複数のMTJ素子100を、MTJ素子100自身の積層方向に沿って、積層してもよい。
【0077】
以上のように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、外部磁場からの影響を効果的に抑制しつつ、MRAMの製造コストや容積の増加を抑えることができる。
【0078】
<<6. 第5の実施形態>>
次に、
図12から
図17を参照して、本開示の第5の実施形態に係るMTJ素子100の製造方法について説明する。
図12から
図17は、本実施形態に係るMTJ素子100の製造方法を示す断面図である。
【0079】
まずは、
図12に示すように、記憶層106、分離層200、磁性層202、反平行結合層204、及び、磁性層206を順次成膜する。次に、
図13に示すように、磁性層206上に、MTJ素子100に対応するようにパターニングされたマスク300を形成する。
【0080】
次に、
図14に示すように、マスク300のパターンに従って、記憶層106、分離層200、磁性層202、反平行結合層204、及び、磁性層206の積層を、イオンミリング等を用いてエッチングする。さらに、
図15に示すように、記憶層106、分離層200、磁性層202、反平行結合層204、磁性層206、及び、マスク300からなる積層を覆い、且つ、積層間を埋め込むように、絶縁膜302を成膜する。
【0081】
次に、
図16に示すように、マスク300を除去し、磁性層206の上面を露出するように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて平坦化を行う。さらに、
図17に示すように、磁性層206上にさらに磁性層206を成膜する。
【0082】
以上のように、本実施形態に係るMTJ素子100は、一般的な半導体装置の製造に用いられる、方法、装置、及び条件を用いることで製造することが可能である。
【0083】
なお、上述の方法としては、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法及びALD(Atomic Layer Deposition)法等を挙げることができる。PVD法としては、真空蒸着法、EB(電子ビーム)蒸着法、各種スパッタリング法(マグネトロンスパッタリング法、RF(Radio Frequency)-DC(Direct Current)結合形バイアススパッタリング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、高周波スパッタリング法等)、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、分子線エピタキシー法(MBE(Molecular Beam Epitaxy)法)、レーザー転写法を挙げることができる。また、CVD法としては、プラズマCVD法、熱CVD法、有機金属(MO)CVD法、光CVD法を挙げることができる。さらに、他の方法としては、電解メッキ法や無電解メッキ法、スピンコート法;浸漬法;キャスト法;マイクロコンタクトプリント法;ドロップキャスト法;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法といった各種印刷法;スタンプ法;スプレー法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法といった各種コーティング法を挙げることができる。さらに、パターニング法としては、シャドーマスク、レーザー転写、フォトリソグラフィー等の化学的エッチング、紫外線やレーザー等による物理的エッチング等を挙げることができる。加えて、平坦化技術としては、CMP法、レーザー平坦化法、リフロー法等を挙げることができる。
【0084】
<<7. 第6の実施形態>>
図18は、本開示の第6の実施形態に係る記憶装置10の概略構成の例を示す説明図である。
図18に示すように、記憶装置10は、メモリセルアレイ2と、検出回路7と、選択回路8とを含む。
【0085】
メモリセルアレイ2は、複数のメモリセル3を含む。複数のメモリセル3は、X軸方向及びY軸方向にアレイ状に2次元配置される。1つのメモリセル3は、1つのMTJ素子100を含む。この意味において、メモリセルアレイ2は、複数のMTJ素子100を含むメモリ素子アレイであるといえる。
【0086】
図19は、本開示の第6の実施形態に係るメモリセルアレイ2の概略構成の例を示す図である。メモリセルアレイ2は、MTJ素子100の他に、半導体基体60と、配線とを含む。配線としては、ビット線BL、ワード線WL及びセンス線SLを例として挙げることができる。また、半導体基体60は、例えばシリコン基板等の半導体基板である。
【0087】
複数のビット線BL、複数のワード線WL及び複数のセンス線SLが存在し、それらは、メモリセルアレイ2すなわち複数のMTJ素子100から、選択回路8(
図18 参照)まで延在する。ビット線BL及びワード線WLは、互いに交差する2種類のアドレス配線である。センス線SLは、ビット線BLに対応して設けられる。この例では、ビット線BLはX軸方向に延在し、ワード線WLはY軸方向に延在する。
【0088】
MTJ素子100は、半導体基体60上(この例ではZ軸正方向側)に配置される。各MTJ素子100は、ビット線BLとワード線WLとの交点に対応つけるように(例えば交点付近に)配置される。MTJ素子100の一方の端子は、ビット線BLに接続される。例えばMTJ素子100の図示しない上部電極が、ビット線BLに電気的に接続される。MTJ素子100の他方の端子は、後述する選択トランジスタ40に接続される。例えばMTJ素子100の図示しない下部電極が、選択トランジスタ40に接続される。
【0089】
また、半導体基体60は、複数の選択トランジスタ40と、素子分離領域50とを含む。素子分離領域50は、電気的に分離された領域である。選択トランジスタ40は、素子分離領域50によって分離された領域に形成される。複数の選択トランジスタ40のそれぞれは、例えば1つのMTJ素子100に対応し、そのMTJ素子100を選択するように設けられる。
【0090】
図19において破線で囲まれて示されるように、1つのメモリセル3は、対応するMTJ素子100及び選択トランジスタ40を含む。
図19には、メモリセルアレイ2に含まれる複数のメモリセル3のうち、4つのメモリセル3に対応する部分が模式的に示される。1つのメモリセル3において、MTJ素子100及び選択トランジスタ40は、対応するビット線BLとセンス線SLとの間に接続される。
【0091】
例示される選択トランジスタ40は、FET(Field Effect Transistor)であり、ソース領域41と、ドレイン領域42と、ゲート領域とを含む。ゲート領域に対して設けられるゲート電極は、ワード線WLに接続される。
図19に示される例では、ワード線WLがゲート電極を含む。ソース領域41には、センス線SLが接続される。ドレイン領域42には、MTJ素子100の他方の端子が接続される。なお、この例では、ソース領域41は、隣接する選択トランジスタ40のソース領域41と共通に形成される。
【0092】
MTJ素子100は、Z軸方向において、選択トランジスタ40のドレイン領域42と、ビット線BLとの間に接続される。接続は、例えばコンタクト層(ビア等)等を介して確立される。
【0093】
ビット線BL、ワード線WL及びセンス線SLは、MTJ素子100に電圧を印可して所望の電流を流すことができるように、選択回路8(
図18 参照)に接続される。情報の書き込み時には、所望のメモリセルに対応するビット線BL及びセンス線SLを介して、MTJ素子100に電流を流すための電圧が印可される。所望のメモリセルに対応するワード線WLすなわち選択トランジスタ40のゲート電極に電圧が印可され、選択トランジスタ40がオン(導通状態)になることで、MTJ素子100に電流が流れる。MTJ素子100に電流が流れ、情報が書き込まれる(記憶される)。また、情報の読み出し時には、所望のメモリセルに対応するワード線WLすなわち選択トランジスタ40のゲート電極に電圧が印可され、ビット線BLとセンス線SLとの間を流れる電流、すなわちMTJ素子100を流れる電流が検出される。電流の検出は、電気抵抗の大きさの検出を意味し、この検出によって情報が読み出されることとなる。
【0094】
<<8. まとめ>>
以上のように、本開示の実施形態によれば、外部磁場からの影響を効果的に抑制しつつ、MRAMの製造コストや容積の増加を抑えることができる。詳細には、本実施形態においては、MTJ素子100は、例えば、記憶層106の上に、分離層200と、磁性層202と、反平行結合層204と、磁性層206とが順次積層されている構造を持つ。本実施形態においては、このような構成を持つことから、外部磁場500が印加された際には、記憶層106においては、外部磁場500の磁気モーメントからの影響を抑制されることとなる。
【0095】
さらに、本実施形態によれば、外部磁場500の影響を抑制するための層をMTJ素子100に設けていることから、MTJ素子100の作製時に外部磁場500の影響を抑制する層を同時に形成することができることから、MRAMの製造コストの増加を抑えることができる。また、本実施形態においては、チップ全体を覆う磁気シールドに比べて、MRAMの小型化が可能である。そして、本実施形態は、チップ全体を磁気シールドで覆うことがないことから、受光面を覆うことができないイメージセンサのチップとの積層構造へも適用することができる。
【0096】
<<9. 適用例>>
<9.1 カメラへの適用例>
本開示に係る技術(本技術)は、さらに様々な製品へ適用することができる。例えば、本開示に係る技術は、カメラ等に適用されてもよい。そこで、
図20及び
図21を参照して、本技術を適用した電子機器としての、カメラ700の構成例について説明する。
図20は、本開示に係る技術が適用され得る撮像装置80の積層構造の一例を示す説明図である。
図21は、本開示に係る技術が適用され得るカメラ700の概略的な機能構成の一例を示す説明図である。
【0097】
図20に示すように、本開示に係る技術が適用され得る撮像装置80は、3つのチップ87、88、89の積層から構成されてもよく、もしくは、3つのウェハの積層から構成されていてもよい。詳細には、チップ87は、イメージセンサの画素アレイ部を搭載し、チップ88は、画素アレイ部を制御するロジック回路部を搭載し、チップ88は、本開示に係る技術が適用され得るメモリを搭載する。このような積層構造に、本開示に係る技術を適用することにより、外部磁場からメモリを遮蔽されつつ、画素アレイ部の光受光面を確保することができる。
【0098】
図21に示すように、カメラ700は、撮像装置80、光学レンズ710、シャッタ機構712、駆動回路ユニット714、及び、信号処理回路ユニット716を有する。光学レンズ710は、被写体からの像光(入射光)を撮像装置80の画素アレイ部の受光面上に結像させる。これにより、撮像装置80の撮像素子内に、一定期間、信号電荷が蓄積される。シャッタ機構712は、開閉することにより、撮像装置80への光照射期間及び遮光期間を制御する。駆動回路ユニット714は、撮像装置80の信号の転送動作やシャッタ機構712のシャッタ動作等を制御する駆動信号をこれらに供給する。すなわち、撮像装置80は、駆動回路ユニット714から供給される駆動信号(タイミング信号)に基づいて信号転送を行うこととなる。信号処理回路ユニット716は、各種の信号処理を行う。例えば、信号処理回路ユニット716は、信号処理を行った映像信号を例えば表示部(図示省略)に出力したりする。
【0099】
以上、カメラ700の構成例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。かかる構成は、実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更され得る。
【0100】
<9.2 スマートフォンへの適用例>
例えば、本開示に係る技術は、スマートフォン等に適用されてもよい。そこで、
図22を参照して、本技術を適用した電子機器としての、スマートフォン900の構成例について説明する。
図22は、本開示に係る技術が適用され得るスマートフォン900の概略的な機能構成の一例を示すブロック図である。
【0101】
図22に示すように、スマートフォン900は、CPU(Central Processing Unit)901、ROM(Read Only Memory)902、及びRAM(Random Access Memory)903を含む。また、スマートフォン900は、ストレージ装置904、通信モジュール905、及びセンサモジュール907を含む。さらに、スマートフォン900は、撮像装置908、表示装置910、スピーカ911、マイクロフォン912、入力装置913、及びバス914を含む。また、スマートフォン900は、CPU901に代えて、又はこれとともに、DSP(Digital Signal Processor)等の処理回路を有してもよい。
【0102】
CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能し、ROM902、RAM903、又はストレージ装置904等に記録された各種プログラムに従って、スマートフォン900内の動作全般又はその一部を制御する。ROM902は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータなどを記憶する。RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。CPU901、ROM902、及びRAM903は、バス914により相互に接続されている。また、ストレージ装置904は、スマートフォン900の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置904は、本開示に係る技術が適用され得る。このストレージ装置904は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種のデータ等を格納する。
【0103】
通信モジュール905は、例えば、通信ネットワーク906に接続するための通信デバイスなどで構成された通信インタフェースである。通信モジュール905は、例えば、有線又は無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、WUSB(Wireless USB)用の通信カード等であり得る。また、通信モジュール905は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。通信モジュール905は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)等の所定のプロトコルを用いて信号等を送受信する。また、通信モジュール905に接続される通信ネットワーク906は、有線又は無線によって接続されたネットワークであり、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信又は衛星通信等である。
【0104】
センサモジュール907は、例えば、モーションセンサ(例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ等)、生体情報センサ(例えば、脈拍センサ、血圧センサ、指紋センサ等)、又は位置センサ(例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等)等の各種のセンサを含む。
【0105】
撮像装置908は、スマートフォン900の表面に設けられ、スマートフォン900の裏側又は表側に位置する対象物等を撮像することができる。詳細には、撮像装置908は、上述のカメラ700と同様に、本開示に係る技術が適用され得る。さらに、撮像装置908は、撮像レンズ、ズームレンズ、及びフォーカスレンズ等により構成される光学系機構(図示省略)及び、上記光学系機構の動作を制御する駆動系機構(図示省略)をさらに有することができる。そして、上記撮像装置908は、対象物からの入射光を光学像として集光し、結像された光学像を撮像素子単位で光電変換し、変換により得られた信号を撮像信号として読み出し、画像処理することにより撮像画像を取得することができる。
【0106】
表示装置910は、スマートフォン900の表面に設けられ、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置であることができる。表示装置910は、操作画面や、上述した撮像装置908が取得した撮像画像などを表示することができる。
【0107】
スピーカ911は、例えば、通話音声や、上述した表示装置910が表示する映像コンテンツに付随する音声等を、ユーザに向けて出力することができる。
【0108】
マイクロフォン912は、例えば、ユーザの通話音声、スマートフォン900の機能を起動するコマンドを含む音声や、スマートフォン900の周囲環境の音声を集音することができる。
【0109】
入力装置913は、例えば、ボタン、キーボード、タッチパネル、マウス等、ユーザによって操作される装置である。入力装置913は、ユーザが入力した情報に基づいて入力信号を生成してCPU901に出力する入力制御回路を含む。ユーザは、この入力装置913を操作することによって、スマートフォン900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0110】
以上、スマートフォン900の構成例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。かかる構成は、実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更され得る。
【0111】
<9.3 移動装置制御システムへの適用例>
例えば、本開示に係る技術は、移動装置制御システム等に適用されてもよい。そこで、
図23を参照して、本開示で提案した技術が適用され得る移動装置制御システムの一例について説明する。
図23は、本開示の技術が適用される移動装置制御システムの一例である車両制御システム11の構成例を示すブロック図である。
【0112】
車両制御システム11は、車両91に設けられ、車両91の走行支援及び自動運転に関わる処理を行う。
【0113】
車両制御システム11は、車両制御ECU(Electronic Control Unit)21、通信部22、地図情報蓄積部23、位置情報取得部24、外部認識センサ25、車内センサ26、車両センサ27、記憶部28、走行支援・自動運転制御部29、DMS(Driver Monitoring System)30、HMI(Human Machine Interface)31、及び、車両制御部32を有する。
【0114】
車両制御ECU21、通信部22、地図情報蓄積部23、位置情報取得部24、外部認識センサ25、車内センサ26、車両センサ27、記憶部28、走行支援・自動運転制御部29、ドライバモニタリングシステム(DMS)30、ヒューマンマシーンインタフェース(HMI)31、及び、車両制御部32は、通信ネットワーク641を介して相互に通信可能に接続されている。通信ネットワーク641は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)、FlexRay(登録商標)、イーサネット(登録商標)といったデジタル双方向通信の規格に準拠した車載通信ネットワークやバス等により構成される。通信ネットワーク641は、伝送されるデータの種類によって使い分けられてもよい。例えば、車両制御に関するデータに対してCANが適用され、大容量データに対してイーサネットが適用されるようにしてもよい。なお、車両制御システム11の各部は、通信ネットワーク641を介さずに、例えば、近距離無線通信(NFC(Near Field Communication))やBluetooth(登録商標)といった比較的近距離での通信を想定した無線通信を用いて直接的に接続されてもよい。
【0115】
なお、以下、車両制御システム11の各部が、通信ネットワーク641を介して通信を行う場合、通信ネットワーク641の記載を省略するものとする。例えば、車両制御ECU21と通信部22が通信ネットワーク641を介して通信を行う場合、単に車両制御ECU21と通信部22とが通信を行うと記載する。
【0116】
車両制御ECU21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)といった各種のプロセッサにより構成される。車両制御ECU21は、車両制御システム11全体又は一部の機能の制御を行うことができる。
【0117】
通信部22は、車内及び車外の様々な機器、他の車両、サーバ、基地局等と通信を行い、各種のデータの送受信を行うことができる。このとき、通信部22は、複数の通信方式を用いて通信を行ってもよい。
【0118】
ここで、通信部22が実行可能な車外との通信について概略的に説明する。通信部22は、例えば、5G(第5世代移動通信システム)、LTE(Long Term Evolution)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)等の無線通信方式により、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク上に存在するサーバ(以下、外部のサーバと呼ぶ)等と通信を行うことができる。通信部22が通信を行う外部ネットワークは、例えば、インターネット、クラウドネットワーク、又は、事業者固有のネットワーク等である。通信部22が外部ネットワークに対して行う通信方式は、所定以上の通信速度、且つ、所定以上の距離間でデジタル双方向通信が可能な無線通信方式であれば、特に限定されるものではない。
【0119】
また、例えば、通信部22は、P2P(Peer To Peer)技術を用いて、自車の近傍に存在する端末と通信を行うことができる。自車の近傍に存在する端末は、例えば、歩行者や自転車等の比較的低速で移動する移動体が装着する端末、店舗等に位置が固定されて設置される端末、又は、MTC(Machine Type Communication)端末を挙げることができる。さらに、通信部22は、V2X通信を行うこともできる。V2X通信とは、例えば、他の車両との間の車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路側器等との間の路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、家との間(Vehicle to Home)の通信、及び、歩行者が所持する端末等との間の歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信等の、自車と他との通信のことをいう。
【0120】
通信部22は、例えば、車両制御システム11の動作を制御するソフトウエアを更新するためのプログラムを外部から受信することができる(Over The Air)。さらに、通信部22は、地図情報、交通情報、車両91の周囲の情報等を外部から受信することができる。また、例えば、通信部22は、車両91に関する情報や、車両91の周囲の情報等を外部に送信することができる。通信部22が外部に送信する車両91に関する情報としては、例えば、車両91の状態を示すデータ、認識部73による認識結果等を挙げることができる。さらに、例えば、通信部22は、eコール等の車両緊急通報システムに対応した通信を行うこともできる。
【0121】
例えば、通信部22は、電波ビーコン、光ビーコン、FM多重放送等の道路交通情報通信システム(VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標))により送信される電磁波を受信することもできる。
【0122】
さらに、通信部22が実行可能な車内との通信について、概略的に説明する。通信部22は、例えば無線通信を用いて、車内の各機器と通信を行うことができる。通信部22は、例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC、WUSB(Wireless USB)といった、無線通信により所定以上の通信速度でデジタル双方向通信が可能な通信方式により、車内の機器と無線通信を行うことができる。これに限らず、通信部22は、有線通信を用いて車内の各機器と通信を行うこともできる。例えば、通信部22は、図示しない接続端子に接続されるケーブルを介した有線通信により、車内の各機器と通信を行うことができる。通信部22は、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)、MHL(Mobile High-definition Link)といった、有線通信により所定以上の通信速度でデジタル双方向通信が可能な通信方式により、車内の各機器と通信を行うことができる。
【0123】
ここで、車内の機器とは、例えば、車内において通信ネットワーク941に接続されていない機器を指す。車内の機器としては、例えば、運転者等の搭乗者が所持するモバイル機器やウェアラブル機器、車内に持ち込まれ一時的に設置される情報機器等が想定される。
【0124】
地図情報蓄積部23は、外部から取得した地図及び車両91で作成した地図の一方又は両方を蓄積することができる。例えば、地図情報蓄積部23は、3次元の高精度地図、高精度地図より精度が低く、広いエリアをカバーするグローバルマップ等を蓄積する。
【0125】
高精度地図は、例えば、ダイナミックマップ、ポイントクラウドマップ、ベクターマップ等である。ダイナミックマップは、例えば、動的情報、準動的情報、準静的情報、静的情報の4層からなる地図であり、外部のサーバ等から車両91に提供される。ポイントクラウドマップは、ポイントクラウド(点群データ)により構成される地図である。ベクターマップは、例えば、車線や信号機の位置といった交通情報等をポイントクラウドマップに対応付け、ADAS(Advanced Driver Assistance System)やAD(Autonomous Driving)に適合させた地図である。
【0126】
ポイントクラウドマップ及びベクターマップは、例えば、外部のサーバ等から提供されてもよいし、カメラ51、レーダ52、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)53等によるセンシング結果に基づいて、後述するローカルマップとのマッチングを行うための地図として車両91で作成され、地図情報蓄積部23に蓄積されてもよい。また、外部のサーバ等から高精度地図が提供される場合、通信容量を削減するため、車両91がこれから走行する計画経路に関する、例えば数百メートル四方の地図データが外部のサーバ等から取得される。
【0127】
位置情報取得部24は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からGNSS信号を受信し、車両91の位置情報を取得することができる。取得した位置情報は、走行支援・自動運転制御部29に供給される。なお、位置情報取得部24は、GNSS信号を用いた方式に限定されず、例えば、ビーコンを用いて位置情報を取得してもよい。
【0128】
外部認識センサ25は、車両91の外部の状況の認識に用いられる各種のセンサを有し、各センサからのセンサデータを車両制御システム11の各部に供給することができる。外部認識センサ25が有するセンサの種類や数は、特に限定されるものではない。
【0129】
例えば、外部認識センサ25は、カメラ51、レーダ52、LiDAR53、及び、超音波センサ54を有する。これに限らず、外部認識センサ25は、カメラ51、レーダ52、LiDAR53、及び、超音波センサ54のうち1種類以上のセンサを有する構成であってもよい。カメラ51、レーダ52、LiDAR53、及び、超音波センサ54の数は、現実的に車両91に設置可能な数であれば特に限定されない。また、外部認識センサ25が備えるセンサの種類は、この例に限定されず、外部認識センサ25は、他の種類のセンサを有してもよい。外部認識センサ25が有する各センサのセンシング領域の例については、後述する。
【0130】
なお、カメラ51の撮影方式は、特に限定されない。例えば、測距が可能な撮影方式であるToF(Time of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラといった各種の撮影方式のカメラを、必要に応じてカメラ51に適用することができる。さらに、カメラ51は、測距に関わらずに、単に撮影画像を取得するためのものであってもよい。また、カメラ51に、上述した撮像装置80を適用し得る。
【0131】
また、例えば、外部認識センサ25は、車両91に対する環境を検出するための環境センサを有することができる。環境センサは、天候、気象、明るさ等の環境を検出するためのセンサであって、例えば、雨滴センサ、霧センサ、日照センサ、雪センサ、照度センサ等の各種センサを含むことができる。
【0132】
さらに、例えば、外部認識センサ25は、車両91の周囲の音や音源の位置の検出等に用いられるマイクロフォンを有する。
【0133】
車内センサ26は、車内の情報を検出するための各種のセンサを有し、各センサからのセンサデータを車両制御システム11の各部に供給することができる。車内センサ26が備える各種センサの種類や数は、現実的に車両91に設置可能な種類や数であれば特に限定されない。
【0134】
例えば、車内センサ26は、カメラ、レーダ、着座センサ、ステアリングホイールセンサ、マイクロフォン、生体センサのうち1種類以上のセンサを有することができる。車内センサ26が備えるカメラとしては、例えば、ToFカメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラといった、測距可能な各種の撮影方式のカメラを用いることができる。これに限らず、車内センサ26が備えるカメラは、測距に関わらずに、単に撮影画像を取得するためのものであってもよい。車内センサ26が備えるカメラにも、開示の実施形態を含む撮像装置80を適用し得る。また、車内センサ26が備える生体センサは、例えば、シートやステアリングホイール等に設けられ、運転者等の搭乗者の各種の生体情報を検出する。
【0135】
車両センサ27は、車両91の状態を検出するための各種のセンサを有し、各センサからのセンサデータを車両制御システム11の各部に供給することができる。車両センサ27が備える各種センサの種類や数は、現実的に車両91に設置可能な種類や数であれば特に限定されない。
【0136】
例えば、車両センサ27は、速度センサ、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、及び、それらを統合した慣性計測装置(IMU(Inertial Measurement Unit))を有することができる。例えば、車両センサ27は、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ、ヨーレートセンサ、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ、及び、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサを有する。例えば、車両センサ27は、エンジンやモータの回転数を検出する回転センサ、タイヤの空気圧を検出する空気圧センサ、タイヤのスリップ率を検出するスリップ率センサ、及び、車輪の回転速度を検出する車輪速センサを有する。例えば、車両センサ27は、バッテリの残量及び温度を検出するバッテリセンサ、並びに、外部からの衝撃を検出する衝撃センサを有する。
【0137】
記憶部28は、不揮発性の記憶媒体及び揮発性の記憶媒体のうち少なくとも一方を含み、データやプログラムを記憶することができる。記憶部28には、本開示の技術を適用し得る。記憶部28は、車両制御システム11の各部が用いる各種プログラムやデータを記憶する。例えば、記憶部28は、EDR(Event Data Recorder)やDSSAD(Data Storage System for Automated Driving)を有し、事故等のイベントの前後の車両91の情報や車内センサ26によって取得された情報を記憶する。
【0138】
走行支援・自動運転制御部29は、車両91の走行支援及び自動運転の制御を行うことができる。例えば、走行支援・自動運転制御部29は、分析部61、行動計画部62、及び、動作制御部63を有する。
【0139】
分析部61は、車両91及び周囲の状況の分析処理を行うことができる。分析部61は、自己位置推定部71、センサフュージョン部72、及び、認識部73を有する。
【0140】
自己位置推定部71は、外部認識センサ25からのセンサデータ、及び、地図情報蓄積部23に蓄積されている高精度地図に基づいて、車両91の自己位置を推定することができる。例えば、自己位置推定部71は、外部認識センサ25からのセンサデータに基づいてローカルマップを生成し、ローカルマップと高精度地図とのマッチングを行うことにより、車両91の自己位置を推定する。車両91の位置は、例えば、後輪対車軸の中心を基準とすることができる。
【0141】
ローカルマップは、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いて作成される3次元の高精度地図、占有格子地図(Occupancy Grid Map)等である。3次元の高精度地図は、例えば、上述したポイントクラウドマップ等である。占有格子地図は、車両91の周囲の3次元又は2次元の空間を所定の大きさのグリッド(格子)に分割し、グリッド単位で物体の占有状態を示す地図である。物体の占有状態は、例えば、物体の有無や存在確率により示される。ローカルマップは、例えば、認識部73による車両91の外部の状況の検出処理及び認識処理にも用いられる。
【0142】
なお、自己位置推定部71は、位置情報取得部24により取得される位置情報、及び、車両センサ27からのセンサデータに基づいて、車両91の自己位置を推定してもよい。
【0143】
センサフュージョン部72は、複数の異なる種類のセンサデータ(例えば、カメラ51から供給される画像データ、及び、レーダ52から供給されるセンサデータ)を組み合わせて、新たな情報を得るセンサフュージョン処理を行うことができる。異なる種類のセンサデータを組合せる方法としては、統合、融合、連合等を挙げることができる。
【0144】
認識部73は、車両91の外部の状況の検出を行う検出処理、及び、車両91の外部の状況の認識を行う認識処理を実行することができる。
【0145】
例えば、認識部73は、外部認識センサ25からの情報、自己位置推定部71からの情報、センサフュージョン部72からの情報等に基づいて、車両91の外部の状況の検出処理及び認識処理を行う。
【0146】
具体的には、例えば、認識部73は、車両91の周囲の物体の検出処理及び認識処理等を行う。物体の検出処理とは、例えば、物体の有無、大きさ、形、位置、動き等を検出する処理である。物体の認識処理とは、例えば、物体の種類等の属性を認識したり、特定の物体を識別したりする処理である。ただし、検出処理と認識処理とは、必ずしも明確に分かれるものではなく、重複することがある。
【0147】
例えば、認識部73は、レーダ52又はLiDAR53等によるセンサデータに基づくポイントクラウドを点群の塊毎に分類するクラスタリングを行うことにより、車両91の周囲の物体を検出する。これにより、車両91の周囲の物体の有無、大きさ、形状、位置が検出される。
【0148】
例えば、認識部73は、クラスタリングにより分類された点群の塊の動きを追従するトラッキングを行うことにより、車両91の周囲の物体の動きを検出する。これにより、車両91の周囲の物体の速度及び進行方向(移動ベクトル)が検出される。
【0149】
例えば、認識部73は、カメラ51から供給される画像データに基づいて、車両、人、自転車、障害物、構造物、道路、信号機、交通標識、道路標示等を検出又は認識する。また、認識部73は、セマンティックセグメンテーション等の認識処理を行うことにより、車両91の周囲の物体の種類を認識してもよい。
【0150】
例えば、認識部73は、地図情報蓄積部23に蓄積されている地図、自己位置推定部71による自己位置の推定結果、及び、認識部73による車両91の周囲の物体の認識結果に基づいて、車両91の周囲の交通ルールの認識処理を行うことができる。認識部73は、この処理により、信号機の位置及び状態、交通標識及び道路標示の内容、交通規制の内容、並びに、走行可能な車線等を認識することができる。
【0151】
例えば、認識部73は、車両91の周囲の環境の認識処理を行うことができる。認識部73が認識対象とする周囲の環境としては、天候、気温、湿度、明るさ、及び、路面の状態等が想定される。
【0152】
行動計画部62は、車両91の行動計画を作成する。例えば、行動計画部62は、経路計画、経路追従の処理を行うことにより、行動計画を作成することができる。
【0153】
なお、経路計画(Global path planning)とは、スタートからゴールまでの大まかな経路を計画する処理である。この経路計画には、軌道計画と言われ、計画した経路において、車両91の運動特性を考慮して、車両91の近傍で安全かつ滑らかに進行することが可能な軌道生成(Local path planning)を行う処理も含まれる。
【0154】
経路追従とは、経路計画により計画された経路を計画された時間内で安全かつ正確に走行するための動作を計画する処理である。行動計画部62は、例えば、この経路追従の処理の結果に基づき、車両91の目標速度と目標角速度を計算することができる。
【0155】
動作制御部63は、行動計画部62により作成された行動計画を実現するために、車両91の動作を制御することができる。
【0156】
例えば、動作制御部63は、後述する車両制御部32に含まれる、ステアリング制御部81、ブレーキ制御部82、及び、駆動制御部83を制御して、軌道計画により計算された軌道を車両91が進行するように、加減速制御及び方向制御を行う。例えば、動作制御部63は、衝突回避又は衝撃緩和、追従走行、車速維持走行、自車の衝突警告、自車のレーン逸脱警告等のADASの機能実現を目的とした協調制御を行う。例えば、動作制御部63は、運転者の操作によらずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行う。
【0157】
DMS30は、車内センサ26からのセンサデータ、及び、後述するHMI31に入力される入力データ等に基づいて、運転者の認証処理、及び、運転者の状態の認識処理等を行うことができる。認識対象となる運転者の状態としては、例えば、体調、覚醒度、集中度、疲労度、視線方向、酩酊度、運転操作、姿勢等が想定される。
【0158】
なお、DMS30が、運転者以外の搭乗者の認証処理、及び、当該搭乗者の状態の認識処理を行うようにしてもよい。また、例えば、DMS30が、車内センサ26からのセンサデータに基づいて、車内の状況の認識処理を行うようにしてもよい。認識対象となる車内の状況としては、例えば、気温、湿度、明るさ、臭い等が想定される。
【0159】
HMI31は、各種のデータや指示等の入力と、各種のデータの運転者等への提示を行うことができる。
【0160】
HMI31によるデータの入力について、概略的に説明する。HMI31は、人がデータを入力するための入力デバイスを有する。HMI31は、入力デバイスにより入力されたデータや指示等に基づいて入力信号を生成し、車両制御システム11の各部に供給する。HMI31は、入力デバイスとして、例えばタッチパネル、ボタン、スイッチ、及び、レバーといった操作子を有する。これに限らず、HMI31は、音声やジェスチャ等により手動操作以外の方法で情報を入力可能な入力デバイスをさらに有してもよい。さらに、HMI31は、例えば、赤外線又は電波を利用したリモートコントロール装置や、車両制御システム11の操作に対応したモバイル機器又はウェアラブル機器等の外部接続機器を入力デバイスとして用いてもよい。
【0161】
HMI31によるデータの提示について、概略的に説明する。HMI31は、搭乗者又は車外に対する視覚情報、聴覚情報、及び、触覚情報の生成を行う。また、HMI31は、生成された各情報の出力、出力内容、出力タイミング及び出力方法等を制御する出力制御を行う。HMI31は、視覚情報として、例えば、操作画面、車両91の状態表示、警告表示、車両91の周囲の状況を示すモニタ画像等の画像や光により示される情報を生成及び出力する。また、HMI31は、聴覚情報として、例えば、音声ガイダンス、警告音、警告メッセージ等の音により示される情報を生成及び出力する。さらに、HMI31は、触覚情報として、例えば、力、振動、動き等により搭乗者の触覚に与えられる情報を生成及び出力する。
【0162】
HMI31が視覚情報を出力する出力デバイスとしては、例えば、自身が画像を表示することで視覚情報を提示する表示装置や、画像を投影することで視覚情報を提示するプロジェクタ装置を適用することができる。なお、表示装置は、通常のディスプレイを有する表示装置以外にも、例えば、ヘッドアップディスプレイ、透過型ディスプレイ、AR(Augmented Reality)機能を備えるウエアラブルデバイスといった、搭乗者の視界内に視覚情報を表示する装置であってもよい。また、HMI31は、車両91に設けられるナビゲーション装置、インストルメントパネル、CMS(Camera Monitoring System)、電子ミラー、ランプ等が有する表示デバイスを、視覚情報を出力する出力デバイスとして用いることも可能である。
【0163】
HMI31が聴覚情報を出力する出力デバイスとしては、例えば、オーディオスピーカ、ヘッドホン、イヤホンを適用することができる。
【0164】
HMI31が触覚情報を出力する出力デバイスとしては、例えば、ハプティクス技術を用いたハプティクス素子を適用することができる。ハプティクス素子は、例えば、ステアリングホイール、シートといった、車両91の搭乗者が接触する部分に設けられる。
【0165】
車両制御部32は、車両91の各部の制御を行うことができる。車両制御部32は、ステアリング制御部81、ブレーキ制御部82、駆動制御部83、ボディ系制御部84、ライト制御部85、及び、ホーン制御部86を有する。
【0166】
ステアリング制御部81は、車両91のステアリングシステムの状態の検出及び制御等を行うことができる。ステアリングシステムは、例えば、ステアリングホイール等を含むステアリング機構、電動パワーステアリング等を有する。ステアリング制御部81は、例えば、ステアリングシステムの制御を行うステアリングECU、ステアリングシステムの駆動を行うアクチュエータ等を有する。
【0167】
ブレーキ制御部82は、車両91のブレーキシステムの状態の検出及び制御等を行うことができる。ブレーキシステムは、例えば、ブレーキペダル等を含むブレーキ機構、ABS(Antilock Brake System)、回生ブレーキ機構等を有する。ブレーキ制御部82は、例えば、ブレーキシステムの制御を行うブレーキECU、ブレーキシステムの駆動を行うアクチュエータ等を有する。
【0168】
駆動制御部83は、車両91の駆動システムの状態の検出及び制御等を行うことができる。駆動システムは、例えば、アクセルペダル、内燃機関又は駆動用モータ等の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構等を有する。駆動制御部83は、例えば、駆動システムの制御を行う駆動ECU、駆動システムの駆動を行うアクチュエータ等を有する。
【0169】
ボディ系制御部84は、車両91のボディ系システムの状態の検出及び制御等を行うことができる。ボディ系システムは、例えば、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウインドウ装置、パワーシート、空調装置、エアバッグ、シートベルト、シフトレバー等を有する。ボディ系制御部84は、例えば、ボディ系システムの制御を行うボディ系ECU、ボディ系システムの駆動を行うアクチュエータ等を有する。
【0170】
ライト制御部85は、車両91の各種のライトの状態の検出及び制御等を行うことができる。制御対象となるライトとしては、例えば、ヘッドライト、バックライト、フォグライト、ターンシグナル、ブレーキライト、プロジェクション、バンパーの表示等が想定される。ライト制御部85は、ライトの制御を行うライトECU、ライトの駆動を行うアクチュエータ等を有する。
【0171】
ホーン制御部86は、車両91のカーホーンの状態の検出及び制御等を行うことができる。ホーン制御部86は、例えば、カーホーンの制御を行うホーンECU、カーホーンの駆動を行うアクチュエータ等を有する。
【0172】
図24は、
図23の外部認識センサ25のカメラ51、レーダ52、LiDAR53、及び、超音波センサ54等によるセンシング領域の例を示す図である。なお、
図24において、車両91を上面から見た様子が模式的に示され、左端側が車両91の前端(フロント)側であり、右端側が車両91の後端(リア)側となっている。
【0173】
センシング領域1101F及びセンシング領域1101Bは、超音波センサ54のセンシング領域の例を示している。センシング領域1101Fは、複数の超音波センサ54によって車両91の前端周辺をカバーしている。センシング領域1101Bは、複数の超音波センサ54によって車両91の後端周辺をカバーしている。
【0174】
センシング領域1101F及びセンシング領域1101Bにおけるセンシング結果は、例えば、車両91の駐車支援等に用いられる。
【0175】
センシング領域1102F乃至センシング領域1102Bは、短距離又は中距離用のレーダ52のセンシング領域の例を示している。センシング領域1102Fは、車両91の前方において、センシング領域1101Fより遠い位置までカバーしている。センシング領域1102Bは、車両91の後方において、センシング領域1101Bより遠い位置までカバーしている。センシング領域1102Lは、車両91の左側面の後方の周辺をカバーしている。センシング領域1102Rは、車両91の右側面の後方の周辺をカバーしている。
【0176】
センシング領域1102Fにおけるセンシング結果は、例えば、車両91の前方に存在する車両や歩行者等の検出等に用いられる。センシング領域1102Bにおけるセンシング結果は、例えば、車両91の後方の衝突防止機能等に用いられる。センシング領域1102L及びセンシング領域1102Rにおけるセンシング結果は、例えば、車両91の側方の死角における物体の検出等に用いられる。
【0177】
センシング領域1103F乃至センシング領域1103Bは、カメラ51によるセンシング領域の例を示している。センシング領域1103Fは、車両91の前方において、センシング領域1102Fより遠い位置までカバーしている。センシング領域1103Bは、車両91の後方において、センシング領域1102Bより遠い位置までカバーしている。センシング領域1103Lは、車両91の左側面の周辺をカバーしている。センシング領域1103Rは、車両91の右側面の周辺をカバーしている。
【0178】
センシング領域1103Fにおけるセンシング結果は、例えば、信号機や交通標識の認識、車線逸脱防止支援システム、自動ヘッドライト制御システムに用いることができる。センシング領域1103Bにおけるセンシング結果は、例えば、駐車支援、及び、サラウンドビューシステムに用いることができる。センシング領域1103L及びセンシング領域1103Rにおけるセンシング結果は、例えば、サラウンドビューシステムに用いることができる。
【0179】
センシング領域1120は、LiDAR53のセンシング領域の例を示している。センシング領域1120は、車両91の前方において、センシング領域1103Fより遠い位置までカバーしている。一方、センシング領域1120は、センシング領域1103Fより左右方向の範囲が狭くなっている。
【0180】
センシング領域1120におけるセンシング結果は、例えば、周辺車両等の物体検出に用いられる。
【0181】
センシング領域1105は、長距離用のレーダ52のセンシング領域の例を示している。センシング領域1105は、車両91の前方において、センシング領域1120より遠い位置までカバーしている。一方、センシング領域1105は、センシング領域1120より左右方向の範囲が狭くなっている。
【0182】
センシング領域1105におけるセンシング結果は、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control)、緊急ブレーキ、衝突回避等に用いられる。
【0183】
なお、外部認識センサ25が含むカメラ51、レーダ52、LiDAR53、及び、超音波センサ54の各センサのセンシング領域は、
図24以外に各種の構成をとってもよい。具体的には、超音波センサ54が車両91の側方もセンシングするようにしてもよいし、LiDAR53が車両91の後方をセンシングするようにしてもよい。また、各センサの設置位置は、上述した各例に限定されない。また、各センサの数は、1つでもよいし、複数であってもよい。
【0184】
<<10. 補足>>
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0185】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0186】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、記憶素子。
(2)
前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、前記第2の磁性層の面積は、前記第1の磁性層に比して広い、上記(1)に記載の記憶素子。
(3)
前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、前記記憶層と、前記分離層と前記第1の磁性層と、前記反平行結合層とは、略円形又は略矩形の形状を持つ、上記(1)又は(2)に記載の記憶素子。
(4)
前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面において、前記第2の磁性層は、略円形又は略矩形の形状を持つ、上記(3)に記載の記憶素子。
(5)
前記積層構造においては、
前記記憶層上に前記分離層が設けられ、
前記分離層上に前記第1の磁性層が設けられ、
前記第1の磁性層上に前記反平行結合層が設けられ、
前記反平行結合層上に、前記第2の磁性層が設けられている、
上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(6)
前記第2の磁性層は、前記積層構造の積層方向に沿って下に突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記反平行結合層と接している、
上記(5)に記載の記憶素子。
(7)
前記記憶層、前記分離層、前記第1の磁性層、及び、前記反平行結合層の、前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面の面積は、前記記憶層から前記反平行結合層に向かって、小さくなっている、上記(5)に記載の記憶素子。
(8)
前記積層構造においては、
前記第2の磁性層上に前記反平行結合層が設けられ、
前記反平行結合層上に前記第1の磁性層が設けられ、
前記第1の磁性層上に前記分離層が設けられ、
前記分離層上に、前記記憶層が設けられている、
上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(9)
前記第2の磁性層は、前記積層構造の積層方向に沿って上に突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記反平行結合層と接している、
上記(8)に記載の記憶素子。
(10)
前記反平行結合層、前記第1の磁性層、前記分離層、及び、前記記憶層の、前記積層構造の積層方向に対して垂直な平面による切断面の面積は、前記記憶層から前記反平行結合層に向かって、小さくなっている、上記(8)に記載の記憶素子。
(11)
前記第1及び第2の磁性層は、CoPt、CoNi、CoFeB、CoFe、及び、NiFeからなる群から選択される少なくとも1つの強磁性体を含む、上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(12)
前記第1及び第2の磁性層は、1nm以上、10nm未満の膜厚を有する、上記(1)~(11)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(13)
前記反平行結合層は、Ru、Ir、及び、Osからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、上記(1)~(12)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(14)
前記反平行結合層は、3オングストローム以上、15オングストローム未満の膜厚を有する、上記(1)~(13)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(15)
前記分離層は、Cu、Ta、TaN、Ru、Zr、Ir、Cr、W、Mo、Pt、Pd、Al、Si、及び、CoFeBからなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記(1)~(14)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(16)
前記分離層は、1nm以上、10nm未満の膜厚を有する、上記(1)~(15)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(17)
前記積層構造は、
前記記憶層に対して、前記分離層の反対側に設けられ、磁化方向が固定された参照層と、
前記参照層と前記記憶層との間に挟持された絶縁体層と、
をさらに有する、
上記(1)~(16)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(18)
前記積層構造を挟持する一対の電極をさらに備える、
上記(1)~(17)のいずれか1つに記載の記憶素子。
(19)
前記一対の電極の一方は、前記第2の磁性層からなる、
上記(18)に記載の記憶素子。
(20)
アレイ状に2次元配置された複数の記憶素子を備える記憶装置であって、
前記各記憶素子は、
磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、
記憶装置。
(21)
隣り合う前記複数の記憶素子の前記第2の磁性層は、互いに接続して、一体の層として設けられている、
上記(20)に記載の記憶装置。
(22)
アレイ状に2次元配置された複数の記憶素子を備える記憶装置が搭載された電子機器であって、
前記各記憶素子は、
磁化方向が反転可能な記憶層と、分離層と、第1の磁性層と、反平行結合層と、第2の磁性層とがこの順で積層された積層構造を含む、
電子機器。
【符号の説明】
【0187】
2 メモリセルアレイ
3 メモリセル
7 検出回路
8 選択回路
10 記憶装置
11 車両制御システム
21 車両制御ECU
22 通信部
23 地図情報蓄積部
24 位置情報取得部
25 外部認識センサ
26 車内センサ
27 車両センサ
28 記憶部
29 走行支援・自動運転制御部
30 DMS
31 HMI
32 車両制御部
40 選択トランジスタ
41 ソース領域
42 ドレイン領域
50 素子分離領域
51 カメラ
52 レーダ
53 LiDAR
54 超音波センサ
60 半導体基体
61 分析部
62 行動計画部
63 動作制御部
71 自己位置推定部
72 センサフュージョン部
73 認識部
80、908 撮像装置
81 ステアリング制御部
82 ブレーキ制御部
83 駆動制御部
84 ボディ系制御部
85 ライト制御部
86 ホーン制御部
87、88、89 チップ
91 車両
100、100a MTJ素子
102 固定層
104 非磁性層
106 記憶層
200 分離層
202、206 磁性層
204 反平行結合層
206a 突出部
300 マスク
302 絶縁膜
500 外部磁場
641、906、941 通信ネットワーク
700 カメラ
710 光学レンズ
712 シャッタ機構
714 駆動回路ユニット
716 信号処理回路ユニット
900 スマートフォン
901 CPU
902 ROM
903 RAM
904 ストレージ装置
905 通信モジュール
907 センサモジュール
910 表示装置
911 スピーカ
912 マイクロフォン
913 入力装置
914 バス
1101B、1101F、1102B、1102F、1102L、1102R、1103B、1103F、1103L、1103R、1105、1120 センシング領域