(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129610
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】エレベーター通信回線の電波測定装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038931
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 匡史
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA26
3F304CA18
3F304EA05
3F304ED06
3F304ED16
(57)【要約】
【課題】降路内に設置する通信回線モジュールの配置を決定するうえで有利な技術を提供する。
【解決手段】エレベーター通信回線の電波測定装置は、エレベーターの昇降路を移動するかごの上に配置されて使用される。電波測定装置は、かご位置を取得するかご位置情報取得部と、昇降路情報を取得する昇降路情報取得部と、エレベーターの通信回線モジュールが外部と通信する際に利用する通信回線の電波強度を取得する電波強度取得部と、制御部と、を備える。制御部は、昇降路情報を取得し、かごが移動している間の複数時点のそれぞれにおいてかご位置に電波強度を対応付けた電波強度情報を生成し、昇降路情報及び電波強度情報に基づいて、昇降路に設置する通信回線モジュールの1又は複数の設置位置候補を選定し、そして、選定された1又は複数の設置位置候補を出力する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの昇降路を移動するかごの上に配置されて使用されるエレベーター通信回線の電波測定装置であって、
前記かご上の鉛直方向のかご位置を取得するかご位置情報取得部と、
前記昇降路の情報を示す昇降路情報を取得する昇降路情報取得部と、
前記エレベーターの通信回線モジュールが外部と通信する際に利用する通信回線の電波強度を取得する電波強度取得部と、
前記かご位置情報取得部、前記昇降路情報取得部、及び前記電波強度取得部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記昇降路情報を取得する昇降路情報取得処理と、
前記かごが移動している間の複数時点のそれぞれにおいて、前記かご位置に前記電波強度を対応付けた電波強度情報を生成する電波強度情報生成処理と、
前記昇降路情報及び前記電波強度情報に基づいて、前記昇降路に設置する前記通信回線モジュールの1又は複数の設置位置候補を選定する選定処理と、
前記選定処理において選定された前記1又は複数の設置位置候補を出力する出力処理と、
を実行するように構成されるエレベーター通信回線の電波測定装置。
【請求項2】
前記昇降路情報は、前記昇降路内における制御盤の鉛直方向の位置を示す制御盤位置を含み、
前記選定処理において、前記制御部は、前記制御盤位置と前記電波強度に基づいて、1又は複数の設置位置候補の優先順位を設定し、
前記出力処理において、前記制御部は、前記1又は複数の設置位置候補に前記優先順位を付加して出力する
ように構成される請求項1に記載のエレベーター通信回線の電波測定装置。
【請求項3】
前記選定処理において、前記制御部は、前記電波強度に対して、対応する前記かご位置と前記制御盤位置との距離に応じた重み付け処理を行い、重み付け処理後の電波強度に基づいて、前記1又は複数の設置位置候補の優先順位を設定する
ように構成される請求項2に記載のエレベーター通信回線の電波測定装置。
【請求項4】
前記昇降路情報は、前記昇降路内における前記通信回線モジュールの設置不可エリアの情報を含み、
前記選定処理において、前記制御部は、前記設置不可エリアに含まれる前記かご位置を、1又は複数の設置位置候補から除外する
ように構成される請求項1から請求項3の何れか1項に記載のエレベーター通信回線の電波測定装置。
【請求項5】
表示装置を更に備え、
前記出力処理において、前記制御部は、前記表示装置に前記1又は複数の設置位置候補を表示する
ように構成される請求項1から請求項3の何れか1項に記載のエレベーター通信回線の電波測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーター通信回線の電波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレベーターの昇降路内に設置する無線通信装置の最良の配置の決定を支援する技術が開示されている。この技術では、無線通信装置を乗りかごの天井の上に仮配置し、乗りかごを最下階から最上階まで走行させる。各階の位置を決定する毎に、その時点の無線通信装置における電波強度を取得する。そして、電波強度が最も強い状態が、最良の電波環境と判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベーターの昇降路にはレール、梁、機器類及び配線等が設置されている。このため、通信回線モジュールは昇降路内のどこにでも取り付け可能とは限らない。特許文献1の技術のように、単に電波強度のみを考慮して通信回線モジュールの配置を決定すると、実際に取り付けることができない等の不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、昇降路内に設置する通信回線モジュールの配置を決定するうえで有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、エレベーターの昇降路を移動するかごの上に配置されて使用されるエレベーター通信回線の電波測定装置であって、かご上の鉛直方向のかご位置を取得するかご位置情報取得部と、昇降路の情報を示す昇降路情報を取得する昇降路情報取得部と、エレベーターの通信回線モジュールが外部と通信する際に利用する通信回線の電波強度を取得する電波強度取得部と、かご位置情報取得部、昇降路情報取得部、及び電波強度取得部の動作を制御する制御部と、を備える。制御部は、昇降路情報を取得する昇降路情報取得処理と、かごが移動している間の複数時点のそれぞれにおいて、かご位置に電波強度を対応付けた電波強度情報を生成する電波強度情報生成処理と、昇降路情報及び電波強度情報に基づいて、昇降路に設置する通信回線モジュールの1又は複数の設置位置候補を選定する選定処理と、選定処理において選定された1又は複数の設置位置候補を出力する出力処理と、を実行するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電波測定装置によれば、昇降路情報を考慮した上で、昇降路内に設置する通信回線モジュールの1又は複数の設置位置候補を選定することができる。これにより、作業員は、通信回線モジュールの配置を決定するうえで有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態に係る電波測定装置が利用されるエレベーターの構成図である。
【
図2】電波測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】制御装置のプロセッサがプログラムを実行することによって実現される機能を示す機能ブロック図である。
【
図4】電波強度情報生成処理によって生成された電波強度情報の一例を示す図である。
【
図5】出力処理において表示される設置位置候補情報の一例を示す図である。
【
図6】制御装置によって実行される設置位置候補選定処理のルーチンを示すフローチャートである。
【
図7】制御装置のハードウェア資源の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
実施の形態.
1.電波測定装置が利用されるエレベーターの構成
図1は、本開示の実施の形態に係る電波測定装置が利用されるエレベーターの構成図である。エレベーター1は、建物2に設けられる。建物2は、複数の階床を備えている。エレベーター1において、昇降路3は、建物2の複数の階床の各々を上下方向に貫く。
【0011】
エレベーター1は、制御盤4と、巻上機5と、主ロープ6と、かご7と、釣合い錘8と、通信回線モジュール9と、を備えている。巻上機5は、モーターと、シーブと、を備えている。巻上機5のモーターは、駆動力を発生させる装置である。巻上機5のシーブは、モーターが発生させた駆動力によって回転する装置である。主ロープ6は、巻上機5のシーブに巻きかけられる。主ロープ6は、巻上機5のシーブの回転に追従して移動する部材である。主ロープ6の一端は、例えばかご7に設けられる。主ロープ6の他端は、例えば釣合い錘8に設けられる。
【0012】
かご7は、主ロープ6の移動に追従して昇降路3の内部を上下方向に走行することで、建物2の複数の階床の間で利用者などを輸送する装置である。釣合い錘8は、昇降路3に設けられる。釣合い錘8は、主ロープ6を通じて巻上機5のシーブの両側にかかる荷重の釣合いをかご7との間で取る装置である。制御盤4は、エレベーター1の動作を制御する装置である。制御盤4によって制御されるエレベーター1の動作は、例えば扉の開閉、登録される呼びの管理、および呼びに応答するかご7の走行などを含む。また、制御盤4には、昇降路3内に設置された通信回線モジュール9が有線ケーブルを介して接続されている。通信回線モジュール9は、エレベーター通信回線Nを通じてエレベーター1が設けられた建物2の外部の遠隔監視センターの管理サーバ等と通信を行う。
【0013】
ここで、エレベーター1の遠隔監視に利用されるエレベーター通信回線Nは、携帯電話回線を使用している。このため、通信回線モジュール9を設置する際には、昇降路3内において、一定以上の電波強度が確保できる位置を選定する必要がある。このような通信回線モジュール9の設置位置選定作業は、例えば、エレベーターの新設時、モダニゼーション時、或いは既設のエレベーターにおいて通信状態に問題がある場合等に必要となる。
【0014】
通信回線モジュール9の設置位置選定作業は、例えば、作業員が上下方向に移動するかご7の上で電波強度を測定し、最適高さを選定する方法が考えられる。しかしながら、作業員がかご7の上でエレベーター1を操作しながら電波強度の測定値を確認することは、安全上及び作業効率上の観点から課題がある。本実施の形態の電波測定装置10は、このような通信回線モジュール9の設置位置選定作業において、作業の効率化を図るために有利な装置である。以下、図面も参照しながら、本実施の形態の電波測定装置10の構成について詳細に説明する。
【0015】
2.実施の形態の電波測定装置の構成
図2は、電波測定装置の構成を示すブロック図である。電波測定装置10は、通信回線モジュール9の設置位置選定作業において、かご7の上に配置して利用する装置である。電波測定装置10は、例えば、エレベーター1のメンテナンスに利用するメンテナンスPC(Personal Computer)である。電波測定装置10は、通信装置12と、表示装置14と、制御装置20と、を備える。
【0016】
通信装置12は、携帯電話の通信回線を用いてデータの送受信を行うための装置である。通信装置12は、SIM(Subscriber Identity Module)カードスロットを備えている。SIMカードスロットにSIMカードを挿入することにより、特定キャリアの通信回線を用いた通信が可能となる。本実施の形態の通信装置12には、エレベーター1の通信回線モジュール9が外部の管理サーバ等と通信する際に利用するエレベーター通信回線Nに対応するSIMカードが挿入されている。
【0017】
電波測定装置10がメンテナンスPCである場合、通信装置12は、メンテナンスPCに内蔵されていてもよいし、外付けの付属装置として構成されていてもよい。通信装置12は、受信した電波の電波強度(dBm)を検出する機能を備えている。つまり、通信装置12は、エレベーター1の通信回線モジュール9が外部と通信する際に利用するエレベーター通信回線Nの電波強度を検出することができる。検出した電波強度は、制御装置20に送られる。
【0018】
表示装置14は、制御装置20から送られた情報を受信して表示するためのディスプレイである。電波測定装置10がメンテナンスPCである場合、表示装置14は、メンテナンスPCのディスプレイとして構成されていてもよい。或いは、表示装置14は、メンテナンスPCとは異なる他の機器のディスプレイとして構成されていてもよい。このような他の機器としては、例えば、作業員が所持する携帯端末、PC等が例示される。
【0019】
制御装置20は、昇降路3内における通信回線モジュール9の設置位置候補を選定する処理を行うための装置である。制御装置20は、1つのコンピュータ、又は、通信ネットワークで接続された複数のコンピュータの集合体である。制御装置20は、少なくとも1つのプロセッサ22とプロセッサ22に結合された少なくとも1つのメモリ24とを備えている。メモリ24には、プロセッサ22で実行可能な少なくとも1つのプログラム240とそれに関連する種々のデータ242とが記憶されている。
【0020】
プロセッサ22がプログラム240を実行することにより、プロセッサ22による各種処理が実現される。
図3は、制御装置のプロセッサがプログラムを実行することによって実現される機能を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、プロセッサ22は、機能ブロックとしてのかご位置情報取得部221と、昇降路情報取得部222と、電波強度取得部223と、制御部224と、を備える。以下、
図1及び
図2も参照しながら、プロセッサ22の機能について説明する。
【0021】
3.プロセッサ22の機能
3-1.かご位置情報取得部221
かご位置情報取得部221は、制御盤4からかご位置情報を取得するための機能ブロックである。かご位置情報は、昇降路3内を移動するかご7上の鉛直方向のかご位置を示す情報である。電波測定装置10は、制御盤4と無線LAN等の通信回線を介して接続されている。かご位置情報取得部221は、制御盤4からかご位置情報を常時取得し、メモリ24のデータ242の領域に格納する。
【0022】
3-2.昇降路情報取得部222
昇降路情報取得部222は、昇降路情報を取得するための機能ブロックである。昇降路情報は、昇降路3内に設置されている機器類の位置情報として、少なくとも制御盤4の鉛直方向の位置を示す制御盤位置の情報を含む。また、昇降路情報は、昇降路3内において通信回線モジュール9を設置することができない設置不可エリアの情報を含んでいてもよい。電波測定装置10は、例えば制御盤4から無線LAN等の通信回線を介して昇降路情報を取得する。或いは、電波測定装置10は、エレベーター1を管理する外部のサーバ等から通信ネットワークを介して昇降路情報を取得してもよい。取得した昇降路情報はメモリ24のデータ242の領域に格納される。
【0023】
3-3.電波強度取得部223
電波強度取得部223は、規定のタイミングで通信装置12から電波強度を取得するための機能ブロックである。取得した電波強度はメモリ24のデータ242の領域に格納される。
【0024】
3-4.制御部224
制御部224は、通信回線モジュール9の設置位置候補を選定する設置位置候補選定処理を行う際に、かご位置情報取得部221、昇降路情報取得部222、及び電波強度取得部223の動作を制御するための機能ブロックである。具体的には、制御部224は、昇降路情報取得部222の動作を制御して昇降路情報を取得する。この処理は、以下「昇降路情報取得処理」と呼ばれる。
【0025】
また、制御部224は、かご位置情報取得部221及び電波強度取得部223の動作を制御して、かご7を最下階から最上階へと移動させる間の複数時点のかご位置において電波強度を取得し、それぞれのかご位置に電波強度を対応づけた電波強度情報を生成する。この処理は、以下「電波強度情報生成処理」と呼ばれる。生成した電波強度情報は、メモリ24のデータ242の領域に格納される。
【0026】
図4は、電波強度情報生成処理によって生成された電波強度情報の一例を示す図である。
図4に示す例では、50mm刻みのかご位置において、取得した電波強度がそれぞれ対応付けられている。なお、電波強度を取得するかご位置の間隔及び数に限定はない。
【0027】
制御部224は、昇降路情報と電波強度情報に基づいて、昇降路3に設置する通信回線モジュール9の1又は複数の設置位置候補を選定した設置位置候補情報を生成する。この処理は、以下「選定処理」と呼ばれる。選定処理では、基本的に電波強度が強いほど優先されるように1又は複数の設置位置候補の優先順位を設定することが好ましい。ただし、通信回線モジュール9は制御盤4と有線で接続する必要があるため、これらの間の距離は短いほど好ましい。そこで、選定処理において、制御部224は、電波強度に対してかご位置と制御盤4との距離に応じた重み付け処理を行い、重み付け処理後の電波強度が強いほど優先されるように1又は複数の設置位置候補の優先順位を設定する。かご位置と制御盤4との距離は、昇降路情報に含まれる制御盤4の位置情報と、電波強度情報に含まれるかご位置から算出することができる。なお、重み付け処理は、かご位置と制御盤4との距離が近いほど優先順位が優先される方向に重み付けされるのであれば、その手法に限定はない。生成された設置位置候補情報は、メモリ24のデータ242の領域に格納される。
【0028】
制御部224は、選定処理によって生成された設置位置候補情報を出力する。この処理は、以下「出力処理」と呼ばれる。出力処理において、制御部224は、設置位置候補情報を表示装置14に表示する。
図5は、出力処理において表示される設置位置候補情報の一例を示す図である。この図の例では、かご位置、及びそれに対応する電波強度と制御盤からの距離の項目が、優先順位の高いかご位置から順に並べられている。表示項目は、少なくともかご位置が含まれていれば、他の項目の有無に限定はない。表示装置14に表示された設置位置候補情報は、作業員が通信回線モジュール9を設置する最適位置を選定する際に利用される。
【0029】
3.電波測定装置の具体的な使用例
次に、電波測定装置10を利用して通信回線モジュール9の設置位置候補を選定する設置位置候補選定作業の具体例について説明する。
【0030】
3-1.準備工程
準備工程では、作業員は、電波測定装置10としてのメンテナンスPCをかご7の上に配置する。そして、作業員は、乗場からの操作によってエレベーター1を試験モードで運転させる。ここでの試験モードは、例えばエレベーター1を最下階から最上階まで規定の速度で運転させるモードである。規定の速度は、通信装置12が電波強度を検出可能な速度として予め設定された速度である。
【0031】
3-2.測定工程
図6は、制御装置によって実行される設置位置候補選定処理のルーチンを示すフローチャートである。制御装置20は、エレベーター1が試験モードで運転を開始したことを受けて、
図6に示すルーチンを実行する。
【0032】
図6に示すルーチンのステップS100では、昇降路情報取得部222において昇降路情報を取得する昇降路情報取得処理が実行される。取得された昇降路情報は、メモリ24のデータ242の領域に一時的に格納される。ステップS100の処理が完了すると、処理はステップS102に進む。
【0033】
ステップS102からステップS110では、電波強度情報生成処理が実行される。典型的には、ステップS102では、かご位置情報取得部221においてかご位置情報が取得される。次のステップS104では、制御部224において、かご7のかご位置が測定位置に到達したかどうかが判定される。ここでの測定位置は、電波強度取得部223において電波強度を測定するかご位置として、予め定められた位置である。測定位置は、例えば昇降路の最下階から最上階までの間において50mm刻みで設定されている。ステップS104の判定の結果、判定の成立が認められない場合、処理は再びステップS102に戻る。一方、判定の成立が認められた場合、処理はステップS106に進む。
【0034】
ステップS106では、電波強度取得部223において電波強度が取得される。次のステップS108では、ステップS106において取得された電波強度を測定時のかご位置に対応付けた電波強度情報が生成され、メモリ24のデータ242の領域に格納される。ステップS108の処理が完了すると、処理はステップS110に進む。
【0035】
ステップS110では、全測定位置において測定が完了したかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、処理はステップS102に戻り、再びかご位置情報が取得される。このように、ステップS102からステップS110の処理が繰り返し実行されることにより、全測定位置においての測定が実行される。
【0036】
ステップS110において、判定の成立が認められた場合、処理はステップS112に進む。ステップS112では、制御部224において、設置位置候補の選定処理が実行される。選定処理において、制御部224は、昇降路情報と電波強度情報を用いて、通信回線モジュール9の設置位置候補を選定し、設置位置候補情報を生成する。
【0037】
選定処理の一例として、制御部224は、かご位置と制御盤4との距離を考慮して、かご位置の優先順位を選定する。典型的には、制御部224は、電波強度に対してかご位置と制御盤4との距離に応じた重み付け処理を行う。重み付け処理では、制御部224は、例えばかご位置と制御盤4との距離が近いほど大きな値として演算される重み付け係数を電波強度に乗算し、重み付け処理後の電波強度が大きいものから順に優先順位を付加する。或いは、制御部224は、かご位置と制御盤4との距離が規定の判定距離よりも遠いかご位置の電波強度は除外した上で、電波強度が大きいものから順に優先順位を付加する。
【0038】
選定処理の他の例として、昇降路情報が昇降路3内において通信回線モジュール9を設置することができない設置不可エリアの情報を含む場合、制御部224は、設置不可エリアを考慮して、かご位置の優先順位を選定する。典型的には、制御部224は、設置不可エリアに含まれるかご位置の電波強度は除外した上で、電波強度が大きいものから順に優先順位を付加する。
【0039】
ステップS112の選定処理が完了すると、処理はステップS114に進む。ステップS114では、ステップS112の選定処理において生成された設置位置候補情報を表示装置14に表示する。
【0040】
3-3.参照工程
作業員は、表示装置14に表示された設置位置候補情報を参照し、通信回線モジュール9の設置位置を決定する。
【0041】
以上説明した電波測定装置10によれば、通信回線モジュール9の最適な設置場所を作業員に提示することができる。これにより、作業員が昇降路3内における通信回線モジュール9の設置位置を決定するうえで有利になる。
【0042】
4.変形例
本実施の形態の電波測定装置10は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0043】
4-1.制御装置20
図7は、制御装置のハードウェア資源の変形例を示す図である。
図7に示す例では、制御装置20は、例えばプロセッサ22、メモリ24、及び専用ハードウェア26を含む処理回路28を備えている。
図7は、制御装置20が有する機能の一部を専用ハードウェア26によって実現する例を示している。制御装置20が有する機能の全部を専用ハードウェア26によって実現しても良い。専用ハードウェア26として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【0044】
5.その他
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、本開示は上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0045】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0046】
(付記1)
エレベーターの昇降路を移動するかごの上に配置されて使用されるエレベーター通信回線の電波測定装置であって、
前記かご上の鉛直方向のかご位置を取得するかご位置情報取得部と、
前記昇降路の情報を示す昇降路情報を取得する昇降路情報取得部と、
前記エレベーターの通信回線モジュールが外部と通信する際に利用する通信回線の電波強度を取得する電波強度取得部と、
前記かご位置情報取得部、前記昇降路情報取得部、及び前記電波強度取得部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記昇降路情報を取得する昇降路情報取得処理と、
前記かごが移動している間の複数時点のそれぞれにおいて、前記かご位置に前記電波強度を対応付けた電波強度情報を生成する電波強度情報生成処理と、
前記昇降路情報及び前記電波強度情報に基づいて、前記昇降路に設置する前記通信回線モジュールの1又は複数の設置位置候補を選定する選定処理と、
前記選定処理において選定された前記1又は複数の設置位置候補を出力する出力処理と、
を実行するように構成されるエレベーター通信回線の電波測定装置。
(付記2)
前記昇降路情報は、前記昇降路内における制御盤の鉛直方向の位置を示す制御盤位置を含み、
前記選定処理において、前記制御部は、前記制御盤位置と前記電波強度に基づいて、1又は複数の設置位置候補の優先順位を設定し、
前記出力処理において、前記制御部は、前記1又は複数の設置位置候補に前記優先順位を付加して出力する
ように構成される付記1に記載のエレベーター通信回線の電波測定装置。
(付記3)
前記選定処理において、前記制御部は、前記電波強度に対して、対応する前記かご位置と前記制御盤位置との距離に応じた重み付け処理を行い、重み付け処理後の電波強度に基づいて、前記1又は複数の設置位置候補の優先順位を設定する
ように構成される付記2に記載のエレベーター通信回線の電波測定装置。
(付記4)
前記昇降路情報は、前記昇降路内における前記通信回線モジュールの設置不可エリアの情報を含み、
前記選定処理において、前記制御部は、前記設置不可エリアに含まれる前記かご位置を、1又は複数の設置位置候補から除外する
ように構成される付記1から付記3の何れか1項に記載のエレベーター通信回線の電波測定装置。
(付記5)
表示装置を更に備え、
前記出力処理において、前記制御部は、前記表示装置に前記1又は複数の設置位置候補を表示する
ように構成される付記1から付記4の何れか1項に記載のエレベーター通信回線の電波測定装置。
【符号の説明】
【0047】
1 エレベーター、2 建物、 3 昇降路、 4 制御盤、 5 巻上機、 6 主ロープ、 8 釣合い錘、 9 通信回線モジュール、 10 電波測定装置、 12 通信装置、 14 表示装置、 20 制御装置、 22 プロセッサ、 24 メモリ、 221 かご位置情報取得部、 222 昇降路情報取得部、 223 電波強度取得部、 224 制御部、 240 プログラム、 242 データ