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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129611
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】円形刃用のホルダ
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/14 20060101AFI20240919BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B26D1/14 A
B26D7/26
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038935
(22)【出願日】2023-03-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】390024132
【氏名又は名称】オルファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真一
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
【Fターム(参考)】
3C021JA03
3C021JA09
3C021JA10
3C027LL01
(57)【要約】
【課題】安定的にフィルムを切断する。
【解決手段】保持機構4は、円形刃2を保持した状態において円形刃2の半径に直交する方向に延長された端面412・422を有する。これによって、円形刃2は、端面412・422から保持機構4の外部に半月状に露出して、フィルム7に接触し、フィルム7を切断することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に移動するフィルムを、回転せずに切断するための円形刃を保持するホルダであって、
前記円形刃が回転しないように保持する保持機構を備えており、
前記保持機構は、前記円形刃を保持した状態において前記円形刃の半径に直交する方向に延長された端面を有しており、これによって、前記円形刃が、前記端面から前記保持機構の外部に半月状に露出して、前記フィルムに接触できるようになっている
ことを特徴とする円形刃用ホルダ。
【請求項2】
前記端面の延長方向は、前記フィルムの移動方向と平行とされている
請求項1に記載の円形刃用ホルダ。
【請求項3】
前記保持機構による前記円形刃の保持を解放して、前記円形刃を軸周りに回転可能な状態とする解放機構と、
回転可能な状態とされた前記円形刃を間欠的に回転させるクリック機構と
をさらに備える請求項1又は2に記載の円形刃用ホルダ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の円形刃用ホルダを用いたフィルムの切断方法であって、
一方向に移動する前記フィルムの移動方向と前記端面とが平行となり、かつ、前記フィルムへの切り込み深さが所定量以上となるように前記円形刃用ホルダを配置し、
前記フィルムを、回転しない状態での前記円形刃に接触させつつ移動させることによって前記フィルムを切断する
フィルム切断方法。
【請求項5】
一方向に移動する前記フィルムは、前記保持機構の前記端面から露出する前記円形刃の突出高さの半分の位置を通過するようになっており、
かつ、前記フィルムへの前記円形刃の切り込み深さは4ミリメートル以上とされている
請求項4に記載のフィルム切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形刃用のホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のように、円形刃を用いてフィルムを切断するためのスリッタが知られている。このスリッタでは、フィルムを所定量切断するごとに円形刃を一方向に間欠的に回転させることにより、円形刃上の別の位置で切断を行う。これにより円形刃によるフィルム切断能力の維持を図っている。
【0003】
この技術では、溝付きローラで支持された状態のフィルムに円形刃の刃先を接触させることによりフィルムを切断する。この切断時には、溝付きローラの溝の中に円形刃の刃先が入り込むので、安定的な切断が可能になる。
【0004】
しかしながら、フィルムの用途や種類によっては、ローラに直接支持されていない状態(つまりローラ間で空中に浮いた状態)のフィルムを切断する必要がある。このような切断方法をこの明細書では「空中切り」と称する。この空中切りの場合、走行中におけるフィルムの振れ幅が大きいので、円形刃を用いた従来のスリッタでは安定した切断が困難である。
【0005】
このため、空中切りの用途には、矩形状のいわゆるレザー刃が用いられている。しかし、レザー刃は円形刃に比べて交換頻度が高く、このため作業効率が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-164955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明者が種々研究した結果、円形刃を半月状に露出させることにより、空中切りを安定的に行うことができるという知見を得た。
【0008】
本発明は、前記した知見に基づいてなされたものである。本発明の主な目的は、空中切りにおいても安定的にフィルムを切断することができる円形刃用ホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の項目に記載の発明として表現することができる。
【0010】
(項目1)
一方向に移動するフィルムを、回転せずに切断するための円形刃を保持するホルダであって、
前記円形刃が回転しないように保持する保持機構を備えており、
前記保持機構は、前記円形刃を保持した状態において前記円形刃の半径に直交する方向に延長された端面を有しており、これによって、前記円形刃が、前記端面から前記保持機構の外部に半月状に露出して、前記フィルムに接触できるようになっている
ことを特徴とする円形刃用ホルダ。
【0011】
(項目2)
前記端面の延長方向は、前記フィルムの移動方向と平行とされている
項目1に記載の円形刃用ホルダ。
【0012】
(項目3)
前記保持機構による前記円形刃の保持を解放して、前記円形刃を軸周りに回転可能な状態とする解放機構と、
回転可能な状態とされた前記円形刃を間欠的に回転させるクリック機構と
をさらに備える項目1又は2に記載の円形刃用ホルダ。
【0013】
(項目4)
項目1又は2に記載の円形刃用ホルダを用いたフィルムの切断方法であって、
一方向に移動する前記フィルムの移動方向と前記端面とが平行となり、かつ、前記フィルムへの切り込み深さが所定量以上となるように前記円形刃用ホルダを配置し、
前記フィルムを、回転しない状態での前記円形刃に接触させつつ移動させることによって前記フィルムを切断する
フィルム切断方法。
【0014】
(項目5)
一方向に移動する前記フィルムは、前記保持機構の前記端面から露出する前記円形刃の突出高さの半分の位置を通過するようになっており、
かつ、前記フィルムへの前記円形刃の切り込み深さは4ミリメートル以上とされている
項目4に記載のフィルム切断方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の技術によれば、円形刃を半月状に露出させてフィルムを切断することができるので、空中切りにおいても安定的にフィルムを切断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る円形刃用ホルダの分解斜視図である。
図2図1の円形刃用ホルダにおける要部の分解斜視図である。
図3図2に示す部品を組み立てた状態を示す斜視図である。
図4図1の円形刃用ホルダの初期状態における正面図である。
図5図4の円形刃用ホルダの斜視図である。
図6図4の円形刃用ホルダの上側部分のみを示す要部斜視図である。
図7】初期状態におけるフックがレールガイドに係合している状態を示す説明図である。
図8】レバーの操作を説明するための説明図である。
図9】レバーの操作によりフックが動作する状況を説明するための説明図である。
図10】レバーの操作によりフックが動作する状況を説明するための説明図である。
図11】レバーの操作を説明するための説明図である。
図12】レバー操作の終点におけるホルダの上側部分を示す説明図である。
図13】フックとレールガイドとの係合が解除された状況を説明するための説明図である。
図14図5と同様の状況を示す、一部を透過させた説明図である。
図15】レバー操作の終点における状況を説明するための、一部を透過させた説明図である。
図16】リンク機構の動作により解放機構が動作する状況を断面により説明するための、一部を透過させた説明図である。
図17図16とは異なる部分の断面を示す、一部を透過させた説明図である。
図18】クリック機構の動作を説明するための、レバーを除外した状態での説明図である。
図19】クリック機構の動作を説明するための、一部を透過させた説明図である。
図20】クリック機構の動作を説明するための、一部を透過させた説明図である。
図21】クリック機構の動作を説明するための、正面から見た説明図である。
図22】クリック機構の動作を説明するための、一部を透過させた説明図である。
図23】クリック機構の動作を説明するための、一部を透過させた説明図である。
図24】クリック機構におけるフックユニットの拡大斜視図である。
図25】クリック機構の動作を説明するための説明図である。
図26】クリック機構により円形刃が回転する様子を説明するための説明図である。
図27】ホルダが初期状態に復帰する様子を説明するための説明図である。
図28】ホルダが初期状態に復帰する様子を説明するための説明図である。
図29図28の状態からさらに進んだ状態を説明するための説明図である。
図30図29の状態からさらに進んだ状態を説明するための説明図である。
図31】ホルダが初期状態に復帰する際のフックユニットの動作を説明するための説明図である。
図32図31の状態からさらに進んだ状態を説明するための説明図である。
図33図32の状態からさらに進んだ状態を説明するための説明図である。
図34】初期状態に復帰したフックユニットを示す説明図である。
図35】クリックの動作を説明するための、一部を分解した説明図である。
図36】クリックの動作を説明するための、要部を拡大した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る円形刃用ホルダ(以下単に「ホルダ」と称することがある)1を、添付の図面を参照しながら説明する。このホルダ1は、一方向に移動するフィルム(図示せず)を、回転せずに切断するための円形刃2(後述)を保持するものである。本実施形態のホルダ1は、本体3と、保持機構4と、解放機構5と、クリック機構6とを有している(図1図3参照)。
【0018】
(円形刃)
円形刃2の中央には、保持機構4の外側保持体42の中央に嵌合された雄ねじ部に嵌合する取付孔21が形成されている。取付孔21の周囲には、三つの位置決め孔22が形成されている。位置決め孔22は、後述のブレードマウント43の外表面(図1において底面)に形成された3本のボス(図示せず)に着脱可能なように嵌合して、円形刃2とブレードマウント43との相対的な位置関係を固定している。円形刃2は、切断対象であるフィルム7(図4中一点鎖線で示す)に対して所定の切り込み深さで接触して、フィルム7を切断できるようになっている。
【0019】
(本体)
本体3は、本実施形態のホルダ1をスリット装置(図示せず)に取り付けるためのものである。本体3には、貫通孔31が形成されており、貫通孔31の内周面には傾斜溝とされた溝部32が設けられている。溝部32には、後述のクリック(逆回転防止機構)62が取り付けられる。
【0020】
また本体3は、後述の内側保持体41の端面412及び外側保持体42の端面422と面一となる端面33を有している(図1参照)。
【0021】
(保持機構)
保持機構4は、内側保持体41と外側保持体42とブレードマウント43と雄ねじ部44とを有している。保持機構4は、内側保持体41と外側保持体42との間で円形刃2を挟持することによって、円形刃2が回転しないように保持する構成となっている。
【0022】
内側保持体41は、本体3に嵌合されるボス411を有している。内側保持体41は、図示しないバネによって本体3から外側保持体42の方向に付勢されており、これによって、内側保持体41と外側保持体42との間で円形刃2を保持して固定できるようになっている。
【0023】
外側保持体42は、内側保持体41を貫通して本体3に嵌合されるボス421を有している。ボス421が本体3に嵌合された状態では、外側保持体42は、図示しないビス等の適宜な固定手段により本体3に固定されている。
【0024】
ブレードマウント43は、既に述べたように、円形刃2の位置決め孔22に嵌合するボス(図示せず)を有しており、これに円形刃2を装着できるようになっている。ブレードマウント43における、円形刃2と反対側の表面には、後述の外側昇降体52、内側昇降体51、クリックマウント61を貫通してクリック62に嵌合するボス431が設けられている。
【0025】
雄ねじ部44は、ブレードマウント43の中央部分に螺合されて、ブレードマウント43を円形刃2に固定するようになっている。
【0026】
内側保持体41と外側保持体42とで保持された状態では、円形刃2は、半月状に外部に露出するようになっており、この状態で、既に述べたように、フィルム7を切断できるようになっている(図4参照)。より具体的には、内側支持体41及び外側支持体42はそれぞれ、円形刃2を保持した状態において円形刃2の半径に直交する方向に延長された端面412及び422を有している(図1参照)。これによって、円形刃2は、これらの端面412及び422から保持機構4の外部に半月状に露出して、切断対象であるフィルム7に接触できるようになっている。これらの端面412・422は、本発明における保持機構の端面の一例に相当する。
【0027】
(解放機構)
解放機構5は、保持機構4による円形刃2の保持を一時的に解放して、円形刃2を軸回りに回転可能な状態とするものである。本実施形態の解放機構5は、内側昇降体51と外側昇降体52とリンク機構53とフック54とを有している。
【0028】
外側昇降体52の中央には、ホルダ1に装着された状態における円形刃2の軸方向に延長されたロッド521が設けられている。ロッド521の先端(図1において上端)は、リンク機構53に取り付けられており、リンク機構53の操作により上下動するようになっている(後述の図16及び図17参照)。
【0029】
リンク機構53は、内側保持体41及び外側保持体42の少なくとも一方を移動させることにより円形刃2の保持を解放するものである。具体的には、本実施形態のリンク機構53は、後述のレバー64の動作によって外側昇降体52を円形刃2から離れる方向に移動させるようになっている。その際、リンク機構53は、フック54を上昇させるようになっている。解放機構5の詳しい構成については動作説明として後述する。
【0030】
(クリック機構)
クリック機構6は、回転可能な状態とされた円形刃2を間欠的に回転させるものである。クリック機構6は、クリックマウント61と、クリック(逆回転防止機構)62と、ラッチパーツ63と、一対のレバー64と、フックユニット65と、レールガイド66と、レバーマウント67を有している。
【0031】
クリックマウント61はクリック62を保持するものである。クリックマウント61には、ラッチパーツ63をクリックマウント61に取り付けるためのボス611が設けられている(図2参照)。クリック62は、本体3の溝部32に係合して円形刃2の逆回転を防止する三つの係合爪621を有している(図2参照)。
【0032】
ラッチパーツ63は、その外周部に一定の周期で形成された溝(傾斜溝)を備えており、円形刃2を所定の角度で間欠的に回転させるものである。
【0033】
一対のレバー64は、リンク機構53を操作して解放機構5を動作させるものである。また、レバー64は、円形刃2の軸回りに一方向に回転操作されたときに、所定角度だけ円形刃2を回転させるようになっている。クリック(逆回転防止機構)62は、レバー64が一方向に回転操作された後に初期位置に復帰する際に、円形刃2の逆回転を阻止するものである。
【0034】
フックユニット65は、ラッチパーツ63に係合して、ラッチパーツ63を回転駆動するものである。
【0035】
2本のレールガイド66は、解放機構5のフック54に係合して、リンク機構53、すなわちレバー64の不意の回転を防止する凹部661をそれぞれ有している。
【0036】
レバーマウント67は、レバー64及びリンク機構53を、それぞれ所定の動作が可能なように支持するものである。またレバーマウント67は、レバーマウント67の回転に伴って回転するリブ671を有している(後述の図19参照)。リブ671は、レバーマウント67の回転によりフックユニット65に当接するようになっている。クリック機構6の詳しい構成についても動作説明として後述する。
【0037】
(ホルダの動作)
以下、図面を参照して、本実施形態のホルダの動作を詳しく説明する。
【0038】
(初期状態)
初期状態のホルダを図4図7に示す。この状態では、クリック機構6の一対のレバー64は開いた状態であり、保持機構4の内側保持体41と外側保持体42との間に円形刃2が挟まれて固定された状態となっている。また、円形刃2は、ブレードマウント43に取り付けられているので、軸回りに回転することが確実に阻止されている。この状態でフィルム7が図4中一点鎖線で示す位置を通過することによりフィルム7を切断することができる。
【0039】
本実施形態では、円形刃2を保持機構4で確実に保持しつつ、半月状に露出させた円形刃2により、フィルム7に対して空中切りを実施することができる。しかも本実施形態では、保持機構4の内外の保持体41・42に端面412・422を設けたので、円形刃2を半月状に露出させることができ、これによって、フィルム7に対する切り込み深さを従来より深いものとすることができ、これにより、空中切りにおいて厚さ方向に変位するフィルム7を確実に切断することができる。
【0040】
このように、本実施形態では、一方向に移動するフィルム7の移動方向と端面412・422とが平行となり、かつ、フィルム7への切り込み深さが所定量以上となるように円形刃用ホルダ1を配置し、フィルム7を、回転しない状態での2円形刃に接触させつつ移動させることによってフィルム7を切断することができる。
【0041】
ここで、一方向に移動するフィルム7は、端面412・422から露出する円形刃2の突出高さの半分の位置を通過するように設定されていることが好ましい。また、フィルム7への円形刃2の切り込み深さは好ましくは4ミリメートル以上、より好ましくは5ミリメートル程度である。
【0042】
初期状態では、解放機構5のフック54は、レールガイド66の凹部661に係合しており(図7参照)、この状態ではレバー64は、円形刃2の軸回りに回転できないようになっている。
【0043】
(円形刃の回転)
ついで、円形刃2を間欠的に回転させる場合の動作を以下において説明する。
【0044】
(円形刃の保持解除)
まず、一対のレバー64を指で操作して、その端部を上昇させる(図8~17参照)。図8~11はレバー64の上昇途中、図12~13はレバー64の上昇後の状態を示している。図14図15及び図16図17はそれぞれ、上昇の経過を示している。レバー64の端部の上昇は、使用者が一対のレバー64を外側から指で(例えば親指と人差し指で)つまむことにより容易に実行できる。レバー64の端部が上昇すると、リンク機構53の動作により、フック54が上昇し、フック54とレールガイド66の凹部661との係合が解除される(図12及び図13参照)。これにより、レバー64が円形刃2の軸回りに回転することへの規制が解除される。同時に、リンク機構53の動作により、解放機構5の外側昇降体52のロッド521が上昇(すなわち図1中で上方向に移動)する。この外側昇降体52の移動に伴い、内側保持体41も上昇し、内側保持体41による円形刃2の保持が解除される(図16図17参照)。これにより、円形刃2はクリック機構6により回転可能な状態となる。ここで、内側保持体41は、図示しないバネにより本体3から円形刃2の方向に押し付けられているので、このバネに抗して上昇することになる。
【0045】
(クリック動作)
ついで、端部が上昇した状態のレバー64(図15参照)を円形刃2の軸回りの方向(図18において時計回り方向)に回転させる。この動作も、使用者の指で一対のレバー64をつまんだ状態で一方向にひねることにより困難なく実行できる。すると、レバーマウント67のリブ671(図19参照)も回転する。リブ671が所定角度(適宜に設計できるが例えば10°~40°程度。より好ましくは30°~40°。本実施形態では35°)回転すると、リブ671は、フックユニット65に当接する。この状態でレバーをさらにひねって回転させると、リブ671は、フックユニット65を押し込む。フックユニット65は、ラッチパーツ63に噛み合っており、フックユニット65が押し込まれると、ラッチパーツ63が回転する。ラッチパーツ63は、クリックマウント61及びブレードマウント43を介して円形刃2と一体に回転するので、これによって円形刃2を同期して回転させることができる(図26参照)。フックユニット65の移動可能なストロークは規制されており、例えばラッチパーツ63の溝の周期で360°を割った角度(制約されないが例えば10°)だけフックユニット65が移動できるようになっている。このため、所定角度(例えば10°)だけ円形刃2が回転すると、それ以上回転することはできない。
【0046】
つまり本実施形態によれば、円形刃2の回転角度を正確に規制することができる。これにより、円形刃2の間欠的な回転時における使用者の作業負担を軽減させることができる。
【0047】
フックユニット65は、図示しないバネによってラッチパーツ63の方向に付勢されており(図24及び図25参照)、両者が確実に係合できるようになっている。
【0048】
(レバーの復帰)
フックユニット65がそれ以上移動できない状態になると、使用者は、レバー64をさらに回転させようとしてもできないため、レバー64を初期位置まで戻す作業を行う(図27参照)。これにより、解放機構5のフック54も初期位置まで戻り、レールガイド66の凹部661に収容される(図28図30参照)。また前記の通り、フックユニット65はラッチパーツ63に向けて付勢されているが、復帰時には両者は係合せず、フックユニット65は付勢力に抗してわずかに上昇しつつ、初期位置に戻る(図31図33参照)。ここで、初期位置に戻った状態では、フックユニット65とラッチパーツ63との対向面どうしの間にわずかな隙間が形成されることが好ましい(図34参照)。これによりフックユニット65は円滑に初期位置に復帰することができる。本実施形態においては、フックユニット65の初期位置への復帰を助けるようにフックユニット65を付勢するバネ(図示せず)を設けることもできる。
【0049】
(円形刃2の逆回転防止)
クリック62は、クリックマウント61及びブレードマウント43を介して、円形刃2と一緒に所定角度だけ回転し、本体3の溝部32に係合する(図35参照)。ここで溝部32における溝間の角度(つまり溝の形成周期)は、ラッチパーツ63の溝と整合させられている。
【0050】
一方、レバー64の復帰時においては、クリック62の係合爪621が溝部32に当接してクリック62の逆回転が阻止される(図36においては、図中反時計方向の回転が阻止される)。ここでクリック62は、クリックマウント61及びブレードマウント43を介して円形刃2と一体に回転する構成とされている。これによって、円形刃2の逆回転を防止することができる。
【0051】
したがって、本実施形態においては、使用者がホルダ1を一方向に回転操作するだけで円形刃2を確実に所定角度だけ間欠的に回転させることができる。これによって、円形刃2を用いた切断作業の効率を向上させることができるという利点がある。
【0052】
円形刃2を交換する場合は、保持機構4の雄ねじ部44をブレードマウント43から取り外し、ついで外側保持体42を内側保持体41から取り外す。この状態では円形刃2の一面側が完全に露出した状態になるので、円形刃2をブレードマウント43から取り外して交換することができる。交換後は逆の手順で初期状態に戻す。これにより再び切断作業を行うことができる。
【0053】
なお、前記実施形態の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。
【符号の説明】
【0054】
1 ホルダ
2 円形刃
21 取付孔
22 位置決め用の孔
3 本体
31 貫通孔
32 溝部
33 本体の端面
4 保持機構
41 内側保持体
411 内側保持体のボス
412 内側保持体の端面(保持機構の端面)
42 外側保持体
421 外側保持体のボス
422 外側保持体の端面(保持機構の端面)
43 ブレードマウント
431 ブレードマウントのボス
44 雄ねじ部
5 解放機構
51 内側昇降体
52 外側昇降体
521 ロッド
53 リンク機構
54 フック
6 クリック機構
61 クリックマウント
611 クリックマウントのボス
62 クリック(逆回転防止機構)
621 係合爪
63 ラッチパーツ
64 レバー
65 フックユニット
66 レールガイド
661 レールガイドの凹部
67 レバーマウント
671 リブ
7 フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
【手続補正書】
【提出日】2023-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に移動するフィルムを、前記フィルムが空中に浮いた状態において回転せずに切断するための円形刃を保持し、かつ、前記円形刃をスリット装置に取り付けるためのホルダであって、
前記円形刃が回転しないように保持する保持機構を備えており、
前記保持機構は、前記円形刃を保持した状態において前記円形刃の半径に直交する方向に延長して形成された端面(412,422)を有しており、前記端面は、前記フィルムの切断時において前記フィルムに最接近する端面であり、かつ前記端面は、前記フィルムの移動方向において、前記端面の先端側から後端側まで直線状に延長されており、前記端面の延長方向は、前記フィルムの移動方向と平行とされており、これによって、前記円形刃が、前記端面から前記保持機構の外部に半月状に露出して、前記フィルムに接触できるようになっており、かつ、前記端面と半月状に露出した前記円形刃の先端部との間には、前記フィルムがその厚さ方向に振れることができる空間が形成されるようになっている
ことを特徴とする円形刃用ホルダ。
【請求項2】
前記スリット装置に装着される本体をさらに備えており、
前記保持機構は前記本体に取り付けられており、
前記本体は、前記保持機構の端面(412,422)と面一となる端面(33)を有している
請求項1に記載の円形刃用ホルダ。
【請求項3】
前記保持機構による前記円形刃の保持を解放して、前記円形刃を軸周りに回転可能な状態とする解放機構と、
回転可能な状態とされた前記円形刃を間欠的に回転させるクリック機構と
をさらに備える請求項1又は2に記載の円形刃用ホルダ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の円形刃用ホルダを用いたフィルムの切断方法であって、
一方向に移動する前記フィルムの移動方向と前記端面とが平行となり、かつ、前記フィルムへの切り込み深さが所定量以上となるように前記円形刃用ホルダを配置し、
前記フィルムを、回転しない状態での前記円形刃に接触させつつ移動させることによって前記フィルムを切断する
フィルム切断方法。
【請求項5】
一方向に移動する前記フィルムは、前記保持機構の前記端面から露出する前記円形刃の突出高さの半分の位置を通過するようになっており、
かつ、前記フィルムへの前記円形刃の切り込み深さは4ミリメートル以上とされている
請求項4に記載のフィルム切断方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
このように、本実施形態では、一方向に移動するフィルム7の移動方向と端面412・422とが平行となり、かつ、フィルム7への切り込み深さが所定量以上となるように円形刃用ホルダ1を配置し、フィルム7を、回転しない状態での円形刃2に接触させつつ移動させることによってフィルム7を切断することができる。