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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129614
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20240919BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240919BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H02J3/14 130
H02J3/32
H02J7/34 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038939
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美和子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈佳
(72)【発明者】
【氏名】今中 政輝
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AB03
5G066AE09
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G066KA01
5G066KD01
5G066KD02
5G066KD06
5G503AA01
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】蓄電池のSOCの適正範囲とデマンドレスポンス(DR)要求値とが両立し、蓄電池の容量がより一層低減され得、自己託送の計画値同時同量制御時のインバランスを回避可能な電力制御システムを提供する。
【解決手段】電力制御システム1は、電力系統の電力を消費する負荷L、及び蓄電池Bをそれぞれ制御可能な制御部20と、DR要求値Rを受信可能な通信インターフェイス18と、を備えている。蓄電池Bは、充放電可能であり、又SOC22を出力可能である。制御部20は、蓄電池Bから得たSOC22が所定の下限を下回ると、負荷Lの消費電力を抑制して蓄電池Bに充電させる。又、制御部20は、蓄電池Bから得たSOC22が所定の上限を上回ると、負荷Lの消費電力を増加して蓄電池Bに放電させる。蓄電池Bは、DR要求値Rに基づいて定められる目標値に対する上振れ及び下振れによる負荷Lの消費電力の振動を吸収可能な容量を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷及び蓄電池をそれぞれ制御可能な制御部と、
デマンドレスポンス要求値を受信可能な通信インターフェイスと、
を備えており、
前記負荷は、電力系統からの電力を消費し、
前記蓄電池は、前記電力系統からの電力を充電可能であると共に、前記電力系統及び前記負荷の少なくとも何れかへ電力を放電可能であって、更にSOCを出力可能であり、
前記制御部は、
前記蓄電池から得た前記SOCが所定の下限を下回ると、前記負荷の消費電力を抑制して前記蓄電池に充電させ、
前記蓄電池から得た前記SOCが所定の上限を上回ると、前記負荷の消費電力を増加して前記蓄電池に放電させ、
前記蓄電池は、前記デマンドレスポンス要求値に基づいて定められる目標値に対する上振れ及び下振れによる前記負荷の消費電力の振動を吸収可能な容量を有する
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
蓄電池を制御可能な制御部と、
それぞれ複数の負荷に直接的に若しくは間接的に接続された複数のアグリゲータ、又は複数の前記負荷に対して通信可能であり、且つ上位デマンドレスポンス要求値を受信可能である通信インターフェイスと、
を備えており、
前記蓄電池は、電力系統からの電力を充電可能であると共に、前記電力系統へ電力を放電可能であって、更にSOCを出力可能であり、
前記制御部は、
各前記アグリゲータの少なくとも何れか、又は複数の前記負荷の少なくとも何れかに対して、下位デマンドレスポンス要求値を、総合して前記上位デマンドレスポンス要求値の範囲内となる状態で割り当て可能であり、
前記蓄電池から得た前記SOCが所定の下限を下回ると、各前記下位デマンドレスポンス要求値の少なくとも何れかを抑制して前記蓄電池に充電させ、
前記蓄電池から得た前記SOCが所定の上限を上回ると、各前記下位デマンドレスポンス要求値の少なくとも何れかを増加して前記蓄電池に放電させ、
前記蓄電池は、前記上位デマンドレスポンス要求値に基づいて定められる目標値に対する上振れ及び下振れによる、各前記下位デマンドレスポンス要求値の少なくとも何れかの振動を吸収可能な容量を有する
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項3】
前記負荷は、空調機である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、互いに別の管理主体に分かれて存在する複数の前記負荷を直接的に若しくは間接的に制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デマンドレスポンス(DR)に対応して負荷及び蓄電池の電力を制御可能な電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-169068号公報(特許文献1)には、従来の電力制御システムが開示されている。この電力制御システムは、電力系統の電力を消費可能な負荷と、電力系統からの充電及び電力系統への放電が可能な蓄電池と、蓄電池の制御装置とを備えている。制御装置は、電力系統の運用主体から電力系統に対する給電指示又は受電指示を受けた場合、蓄電池のSOC(State Of Charge)に応じて、蓄電池が充電又は放電する電力量及び負荷が電力消費する電力量を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-169068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電力制御システムでは、蓄電池のSOCに応じて各種の電力量が制御されるため、電力系統からの充電及び電力系統への放電を行って電力系統に対する給電指示又は受電指示に対応しつつ、蓄電池が保護される。
近時、電力需要家側でアグリゲータ(電力系統の運用主体を含む)からのDRに応じるため、負荷及び蓄電池を総合した消費電力量がDR要求値に制御されることがある。この場合、SOCのみを基準として制御されると、予測以上に負荷の消費電力が大きかった場合等において、SOCの適正範囲を維持するためにDR要求値を満たせない可能性、あるいはDR要求値を満たすためにSOCが適正範囲から逸脱する可能性が存在する。
【0005】
本発明の主な目的の一つは、SOCの適正範囲を維持するためにDR要求値を満たせない可能性、あるいはDR要求値を満たすためにSOCが適正範囲から逸脱する可能性がより低減された電力制御システムを提供することである。
又、本発明の主な目的の別の一つは、DRのために設けられる蓄電池の容量がより一層低減され得る電力制御システムを提供することである。
更に、本発明の主な目的の更に別の一つは、自己託送の計画値に対する同時同量制御時のインバランスを回避可能な電力制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書には、電力制御システムが開示される。この電力制御システムは、負荷及び蓄電池をそれぞれ制御可能な制御部を備えている。この電力制御システムは、DR要求値を受信可能な通信インターフェイスを備えていても良い。負荷は、電力系統からの電力を消費しても良い。蓄電池は、電力系統からの電力を充電可能であっても良い。蓄電池は、電力系統及び負荷の少なくとも何れかへ電力を放電可能であっても良い。蓄電池は、SOCを出力可能であっても良い。制御部は、蓄電池から得たSOCが所定の下限を下回ると、負荷の消費電力を抑制して蓄電池に充電させても良い。又、制御部は、蓄電池から得たSOCが所定の上限を上回ると、負荷の消費電力を増加して蓄電池に放電させても良い。蓄電池は、DR要求値に基づいて定められる目標値に対する上振れ及び下振れによる負荷の消費電力の振動を吸収可能な容量を有していても良い。
又、本明細書には、別の電力制御システムが開示される。この電力制御システムは、蓄電池を制御可能な制御部を備えている。この電力制御システムは、それぞれ複数の負荷に直接的に若しくは間接的に接続された複数のアグリゲータ、又は複数の負荷に対して通信可能であり、且つ上位DR要求値を受信可能な通信インターフェイスを備えていても良い。蓄電池は、電力系統からの電力を充電可能であっても良い。蓄電池は、電力系統へ電力を放電可能であっても良い。蓄電池は、SOCを出力可能であっても良い。制御部は、各アグリゲータの少なくとも何れか、又は複数の負荷の少なくとも何れかに対して、下位デマンドレスポンス要求値を、総合して上位デマンドレスポンス要求値の範囲内となる状態で割り当て可能であっても良い。更に、制御部は、蓄電池から得たSOCが所定の下限を下回ると、各下位デマンドレスポンス要求値の少なくとも何れかを抑制して蓄電池に充電させても良い。又、制御部は、蓄電池から得たSOCが所定の上限を上回ると、各下位デマンドレスポンス要求値の少なくとも何れかを増加して蓄電池に放電させても良い。蓄電池は、上位DR要求値に基づいて定められる目標値に対する上振れ及び下振れによる、各下位デマンドレスポンス要求値の少なくとも何れかの振動を吸収可能な容量を有していても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の主な効果の一つは、SOCの適正範囲を維持するためにDR要求値を満たせない可能性、あるいはDR要求値を満たすためにSOCが適正範囲から逸脱する可能性がより低減された電力制御システムが提供されることである。
又、本発明の主な効果の別の一つは、DRのために設けられる蓄電池の容量がより一層低減され得る電力制御システムが提供されることである。
更に、本発明の主な効果の更に別の一つは、自己託送の計画値に対する同時同量制御時のインバランスを回避可能な電力制御システムが提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1形態に係る電力制御システムのブロック図である。
図2図1の電力制御システムの動作例の原理が示されるグラフである。
図3図1の電力制御システムの動作例に係るフローチャートである。
図4図1の電力制御システムの実施例における蓄電池の充放電電力(kW,左縦軸)及びSOC(%,右縦軸)の経時変化が示されるグラフである。
図5図5Aは比較例における負荷消費電力の目標値及び実績値等の経時変化が示されるグラフであり、図5B図1の電力制御システムの実施例における負荷消費電力の目標値及び実績値等の経時変化が示されるグラフである。
図6】本発明の第2形態に係る電力制御システムのブロック図である。
図7】本発明の第3形態に係る電力制御システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。
尚、本発明は、下記の形態及び変更例に限定されない。
【0010】
≪第1形態≫
[構成等]
図1は、本発明の第1形態に係る電力制御システム1のブロック図である。
電力制御システム1は、コンピュータ2を備えている。
コンピュータ2は、電力需要家の管理領域内に設置されている。
コンピュータ2は、入力部10と、出力部12と、記憶部14と、電力制御インターフェイス16と、通信インターフェイス18と、制御部20と、を有する。
尚、コンピュータ2は、1台でも良いし、複数台が協調作動するものであっても良い。
【0011】
入力部10は、各種の情報を入力する部分であり、例えばキーボード、ポインティングデバイス、及びマイク(音声入力)の少なくとも何れかである。
出力部12は、各種の情報を出力する部分であり、例えばモニタ、プリンタ、スピーカ、及びランプの少なくとも何れかである。
記憶部14は、各種の情報を記憶する部分であり、例えばメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、及び光ディスクドライブの少なくとも何れかである。
尚、入力部10及び出力部12を兼ねるタッチパネルが用いられる等、コンピュータ2における各種の部分の少なくとも何れか2つが統合されても良い。又、コンピュータ2における各種の部分の少なくとも何れかが2つ以上の別の部分に分けられても良い。入力部10及び出力部12の少なくとも一方は、省略されても良い。
【0012】
電力制御インターフェイス16は、電力機器の電力を直接又は間接的に制御するために電力機器と通信する部分であり、例えば電力制御アダプタである。電力制御インターフェイス16には、構内通信網を介して、負荷L及び蓄電池Bが接続されている。
負荷Lは、電力系統の電力を主に消費する機器であり、ここでは複数の空調機である。負荷Lの現在の消費電力である負荷消費電力LPは、特定のタイミングで(例えば特定取得時間毎に)負荷Lから電力制御インターフェイス16を介してコンピュータ2に送信され、制御部20により記憶部14に記憶される。
蓄電池Bは、電力系統に対し充電又は放電を実行可能な電池である。蓄電池Bは、電力系統の電力の充電により、電力需要家の消費電力(負荷Lと蓄電池Bとを総合した電力系統(アグリゲータA)に対する消費電力)を増加させる。他方、蓄電池Bは、電力系統への電力の放電及び負荷Lを駆動する電力へ充当するための放電の少なくとも一方により、電力需要家の消費電力を減少させる。蓄電池Bは、現在のSOC22、及び現在の充電電力又は放電電力である蓄電池充放電力BPを送信可能であり、コンピュータ2(制御部20)は、電力制御インターフェイス16を介してSOC22及び蓄電池充放電力BPを所定のタイミングで(例えば所定取得時間毎に)受信し、記憶部14に記憶する。
尚、電力制御インターフェイス16は、構内通信網に代えて、あるいは構内通信網と共に、インターネットN等に接続されても良い。又、電力制御インターフェイス16及び電力機器の通信は、有線通信及び無線通信の少なくとも一方とすることができる。更に、負荷Lは、1台の空調機であっても良い。又、負荷Lは、空調機に代えて、あるいは空調機と共に、照明装置、加熱装置、冷却装置、貯湯装置、電気自動車等の機器に対する充電を行う機器充電装置、及び加工装置の少なくとも何れかとされても良い。加えて、蓄電池Bは、1つの蓄電池から構成されても良いし、複数の蓄電池から構成されても良い。又、負荷L及び蓄電池Bの少なくとも一方は、電力制御システム1の構成要素とされても良い。更に、負荷消費電力LP並びにSOC22及び蓄電池充放電力BPの少なくとも何れかは、把握された時刻TTとの組で送信しあるいは受信し、記憶されても良い。又、SOC22及び蓄電池充放電力BPは、互いに異なるタイミングで送信され、記憶されても良い。
【0013】
通信インターフェイス18は、インターネットNに対し通信する部分であり、例えば通信アダプタ、及びルータの少なくとも何れかである。
通信インターフェイス18には、インターネットNを介して、アグリゲータA(電力系統の運用主体を含む)と接続されている。
尚、通信インターフェイス18は、インターネットNに代えて、あるいはインターネットNと共に、専用線(閉域通信網)等に接続されても良い。通信インターフェイス18に係る通信は、有線通信及び無線通信の少なくとも一方とすることができる。加えて、電力制御インターフェイス16及び通信インターフェイス18は、統合されても良いし、3つ以上に分けられても良い。
【0014】
アグリゲータAは、DR契約に基づき、DR期間における電力需要家の消費電力の上限値であるDR要求値R(デマンドレスポンス要求値)を、電力需要家のコンピュータ2に対し送信する。コンピュータ2(制御部20)は、通信インターフェイス18を介してDR要求値Rを受信し、記憶部14に記憶する。
電力需要家は、DR期間中、消費電力をDR要求値Rに基づく所定態様(例えば常にDR要求値R以下とする態様)に適合させることで、アグリゲータAからインセンティブを受け得る。DR要求値Rは、DR期間中変動し、変動の都度アグリゲータAにより送信される。コンピュータ2(制御部20)は、DR要求値Rの履歴を、DR指令ファイルDFとして記憶部14に記憶する。
尚、アグリゲータAは、1機関であっても良いし、複数機関であっても良い。更に、DR要求値Rは、常に、あるいはDR期間毎に固定されていても良い。又更に、DR期間の(第1所定時間後の)開始を指令するDR開始信号、及びDR期間の(第2所定時間後の)終了を指令するDR終了信号、並びにDR要求値Rの(第3所定時間後の)変動を指令するDR変動開始信号の少なくとも何れかがアグリゲータAから送信されても良い。ここでの第1~第3所定時間の少なくとも何れか2つは、互いに同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。
【0015】
制御部20は、各種の装置及び部分を制御し、例えばCPU(中央演算装置)である。
制御部20は、記憶部14に記憶された電力制御プログラムPを実行し、電力制御の処理を行う。
【0016】
[動作例の原理等]
電力制御システム1の動作例及びその変更例が、以下説明される。
【0017】
図2は、当該動作例の原理に係るグラフである。
例えば、コンピュータ2の制御部20は、とある時刻(時間T=0秒)から400秒間ほど、負荷Lの消費電力がアグリゲータAから受信した現在のDR要求値R(10kW(キロワット))以下となるように制御している。図2において、DR要求値Rの推移であるDR要求値推移PRが、太い一点鎖線で示されている。
【0018】
そして、制御部20は、アグリゲータAから新たなDR要求値R(DR要求値Rの15kWへの変更)に係る信号をT=400ほどにおいて受信すると、負荷消費電力LPの増加が新たなDR要求値R以下において許容されることを把握する。制御部20は、負荷Lに対し、必要である場合(例えば空調機が室温を設定温度とするために現状より多くの電力を要する場合)、負荷消費電力LPの増加を、電力制御インターフェイス16を介して指令する。
尚、制御部20は、必要性の有無にかかわらず、現状許容される負荷消費電力LPの上限値等を負荷Lに送信しても良い。
【0019】
負荷Lは、負荷消費電力LPの増加を指令しても、すぐには負荷消費電力LPを増加できず、増加準備運転等の増加準備時間TDRを必要とする。
又、負荷消費電力LPは、増加準備時間TDR後に直ちに増加目標値に到達することはなく、負荷消費電力LPの推移である負荷消費電力推移PLに係る増加傾きKR(時間-電力の関係の増加傾きKR)に従って増加目標値に向かう。
増加準備時間TDRの長さ及び増加傾きKRの大きさ(応答遅れ)は、負荷Lの種類(特性)により定まる。
【0020】
制御部20は、増加準備時間TDRの間、及び負荷消費電力推移PLが新たなDR要求値Rに達するまでの間、蓄電池Bに対し充電を指令する。
その際の充電電力は、増加準備時間TDRの間においては新たなDR要求値Rから負荷消費電力LP(直前のDR要求値R)を減算した電力であり、増加準備時間TDR後負荷消費電力LPが新たなDR要求値Rに達するまでの間においては新たなDR要求値Rから負荷消費電力LPを減算した電力である。かような充電電力に係る充電電力量は、図2において、斜線ハッチング(2つ有るもののうち左側)で示される。
制御部20は、(特にDR期間中)蓄電池Bの放電の機会に比べて充電の機会がより少ない傾向にあることから、増加準備時間TDRの間、及び負荷消費電力推移PLが新たなDR要求値Rに達するまでの間のように充電可能な機会が存在する場合、積極的に蓄電池Bの充電を指令する。蓄電池Bは、制御部20の指令に従い、電力系統から電力を充電する。
蓄電池Bは、所定充電電力の充電指令に対してすぐに応答し、電力系統から所定充電電力の充電を直ちに行える、蓄電池Bは、当該所定充電電力が時間の経過に応じて変化する場合においても、当該変化に追従可能である。
尚、制御部20は、余裕確保等の観点から、斜線ハッチング(左側)で示される電力量未満の電力量において蓄電池Bの充電を指令しても良い。
【0021】
かように、蓄電池Bは、DR要求値Rの上昇に伴う負荷Lの応答遅れにより生じる余剰電力について充電される。即ち、蓄電池Bは、DR要求値推移PRに対して下振れした負荷消費電力推移PLについて、充電により吸収(調整、整形)する。
【0022】
制御部20は、必要である場合、負荷Lに対し、新たなDR要求値Rを超えた負荷消費電力LPにおける運転を指令し、負荷Lは指令に係る負荷消費電力LPにおける運転を行う。
この場合、制御部20は、総合して新たなDR要求値Rを守るため、蓄電池Bに対し、新たなDR要求値Rを超える電力の分の放電を指令する。蓄電池Bは、かような放電指令に従い、図2において格子状ハッチング(2つ有るもののうち左側)で示されるように放電する。
蓄電池Bは、所定放電電力の放電指令に対してすぐに応答し、電力系統から所定放電電力の放電を直ちに行える。蓄電池Bは、当該所定放電電力が時間の経過に応じて変化する場合においても、当該変化に追従可能である。蓄電池Bの放電に係る応答性及び放電量変化への追従性は、発電機より良好である。但し、一般に、蓄電池Bにおける放電電力量当たりのコストは、発電機より高い。
【0023】
かように、蓄電池Bは、必要に応じて負荷消費電力LPが上昇することにより一時的に生じた、DR要求値推移PRに対して上振れした負荷消費電力推移PLについて、放電により吸収(調整、整形)する。
【0024】
そして、制御部20は、減少方向に変更する更なるDR要求値Rの受信(T=1500秒程度)に基づき、負荷消費電力LPの減少を指令する。図2では、最初のDR要求値Rと更なるDR要求値Rとが同一であるところ、これらは必ずしも同一である必要はなく、更なるDR要求値Rは最初のDR要求値Rと異なっていても良い。
負荷Lは、負荷消費電力LPの減少を指令しても、すぐには負荷消費電力LPを減少できず、減少準備運転等の減少準備時間TDFを必要とする。又、負荷消費電力LPは、減少準備時間TDF後に直ちに減少目標値に到達することはなく、負荷消費電力推移PLに係る減少傾きKF(時間-電力の関係の減少傾きKF)に従って減少目標値に向かう。減少準備時間TDFの長さ及び減少傾きKFの大きさ(応答遅れ)は、負荷Lの種類(特性)により定まる。
制御部20は、減少準備時間TDFの間、及び負荷消費電力推移PLが更なるDR要求値Rに達するまでの間、負荷Lの適正な運転を保持するため、蓄電池Bに対し放電を指令する。その際の放電電力は、減少準備時間TDFの間においては負荷消費電力LP(直前のDR要求値R)から更なるDR要求値Rを減算した電力であり、減少準備時間TDF後負荷消費電力LPが更なるDR要求値Rに達するまでの間においては負荷消費電力LPから更なるDR要求値Rを減算した電力である。かような放電電力に係る放電電力量は、図2において、格子状ハッチング(2つ有るもののうち右側)で示される。蓄電池Bは、制御部20の指令に従い、電力を放電する。
【0025】
かように、蓄電池Bは、DR要求値Rの下降に伴う負荷Lの応答遅れにより生じる、DR要求値Rに対する不足電力について放電される。即ち、蓄電池Bは、DR要求値推移PRに対して上振れした負荷消費電力推移PLについて、放電により吸収(調整、整形)する。
【0026】
又、制御部20は、負荷消費電力LPが更なるDR要求値Rを一時的に下回る場合には、更なるDR要求値Rから負荷消費電力LPを減じた差に相当する充電電力における蓄電池Bの充電を指令する。かような充電電力に係る充電電力量は、図2において、斜線ハッチング(2つ有るもののうち右側)で示される。蓄電池Bは、当該指令に従い、電力系統から電力を充電する。
尚、制御部20は、余裕確保等の観点から、斜線ハッチング(右側)で示される電力量未満の電力量において蓄電池Bの充電を指令しても良い。
【0027】
かように、蓄電池Bは、負荷消費電力LPが低下することにより一時的に生じた、DR要求値推移PRに対して下振れした負荷消費電力推移PLについて、充電により吸収(調整、整形)する。
【0028】
蓄電池Bの容量は、以上の上振れ及び下振れによる負荷消費電力推移PLの振動を吸収可能な容量であれば良い。
従って、電力制御システム1における蓄電池Bの容量は、1台の負荷L(空調機)の最大値以上の負荷消費電力LPに対応可能な蓄電池Bの容量を確保する場合に比べて、十分に小さくなる。
尚、負荷消費電力推移PLの上振れ及び下振れの少なくとも一方は、DR要求値Rに基づいて定められた目標値(DR要求値R自体を除く)に対して把握されても良い。目標値は、DR要求値R自体であっても良い。
【0029】
そして、制御部20は、かようなDRと蓄電池Bとの連携制御の間、蓄電池BのSOC22を監視する。
制御部20は、SOC22が所定範囲(閾値、例えば30%以上80%以下)から出ていると、SOC22が所定範囲内になるように負荷消費電力LPを制御する。
尚、SOC22の所定範囲は、負荷Lの種類(特性)に応じて決定されても良い。又、SOC22の所定範囲の下限は、例えば20%であっても良いし、25%であっても良いし、35%であっても良いし、40%であっても良い。又、SOC22の所定範囲の上限は、例えば70%であっても良いし、75%であっても良いし、85%であっても良いし、90%であっても良い。
【0030】
制御部20は、SOC22が所定範囲の下限を下回る場合、蓄電池Bの充電を可能とするため、負荷消費電力LPが減少するように負荷Lを制御する(負荷Lの抑制)。
負荷消費電力LPの減少は、空調機の場合、例えば冷房設定温度の増加、及び暖房設定温度の減少、並びに室外機の能力抑制の実施、及び運転形式の変更(電気ガスハイブリッド空調機でガス消費量を増やす等)の少なくとも何れかにより行える。冷房設定温度の増加及び暖房設定温度の減少は、人感センサあるいは室温センサ等により、空調対象人数の少ない空調機から順に、又は冷房時に現在室温の低い部屋に設置された空調機から順に、若しくは暖房時に現在室温の高い部屋に設置された空調機から順に行われても良い。
【0031】
他方、制御部20は、SOC22が所定範囲の上限を上回る場合、蓄電池Bの放電を可能とするため、負荷消費電力LPが増加するように負荷Lを制御する(負荷Lの増加)。
負荷消費電力LPの増加は、DR要求値Rを守るための負荷消費電力LP抑制の制御の度合を低下し、あるいはその抑制の制御を一旦停止することで行える。
又、負荷消費電力LPの増加は、空調機の場合、例えば冷房設定温度の減少、及び暖房設定温度の増加、並びに室外機の能力抑制の解除、及び運転形式の変更(電気ガスハイブリッド空調機で電気消費量を増やす等)の少なくとも何れかにより行える。冷房設定温度の減少及び暖房設定温度の増加は、人感センサあるいは室温センサ等により、空調対象人数の多い空調機から順に、又は冷房時に現在室温の高い部屋に設置された空調機から順に、若しくは暖房時に現在室温の低い部屋に設置された空調機から順に行われても良い。
【0032】
[動作例のステップ等]
図3は、電力制御システム1の動作例に係るフローチャートである。
DR制御のための負荷L及び蓄電池Bの協調制御等において、制御部20は、まず、現在時刻(今回の時刻TT)を取得する(ステップS1)。
現在時刻は、コンピュータ2が具備する図示されない時計から取得される。尚、現在時刻は、通信インターフェイス18を介して接続された現在時刻サーバコンピュータから取得されても良い。
【0033】
次に、制御部20は、記憶部14における調整履歴ファイルHFを読み込む(ステップS2)。
調整履歴ファイルHFは、負荷Lに対する調整量JVの履歴が格納されたファイル(データベース)である。調整量JVは、当該現在時刻において負荷消費電力LPをDR要求値Rに照らし適正なものとするために行う負荷Lの調整の量である。調整量JVは、負荷消費電力LPについて調整する量であっても良いし、負荷Lの設定値(例えば空調機における設定温度)について調整する量であっても良い。調整量JVを負荷Lの設定値で表す場合、記憶部14において各種の設定値(例えば設定温度)と消費電力との対応関係(データベース)が記憶されても良い。かような対応関係のデータベースの項目として、更にセンサにより取得した環境値(例えば室温)が加えられても良く、あるいは環境値と設定値との差が、環境値及び設定値に代えて、あるいはこれらの値と共に設けられても良い。
調整履歴ファイルHFは、更に、時刻TT、負荷Lの指令値CV、所定時間(たとえば60秒)前の指令値CVを示す実績値AV、基準値SV、及びSOC整形量HVを含む。基準値SV及びSOC整形量HV等、各種の値は、後に更に説明される。
尚、調整履歴ファイルHFの内容は、少なくとも何れかの要素を省略する等、適宜変更されても良い。
【0034】
続いて、制御部20は、記憶部14におけるDR指令ファイルDFを読み込む(ステップS3)。
DR指令ファイルDFは、DR要求値Rの履歴(DR要求値推移PR)が格納されたファイル(データベース)である。
DR指令ファイルDFは、更に、負荷L(複数台の空調機)のうち何れの種類(の指令値CV)について電力制御の対象とするかの条件群を含む発動メニューMEを含んでいる。
尚、制御部20は、DR指令ファイルDFの読込に代えて、現在のDR要求値Rの読込を行っても良い。又、DR指令ファイルDFの内容は、少なくとも何れかの要素を省略する等、適宜変更されても良い。調整履歴ファイルHF及びDR指令ファイルDFは、統合されても良いし、3つ以上のファイルに分割されても良い。
【0035】
そして、制御部20は、電力制御を行う負荷Lの種類(例えば複数の空調機のうちの少なくとも一部)を、発動メニューMEに基づいて決定する(ステップS4)。かような決定は、負荷Lの種類毎の指令値CVの按分を適宜含む。複数種類の負荷Lに指令値CVが按分された場合、負荷Lの種類毎に以下のステップが行われても良い。
尚、ステップS4は、負荷Lの種類が単一である場合等において、省略されても良い。
【0036】
更に、制御部20は、調整履歴ファイルHFにおける現在(最新、今回)の実績値AVと基準値SVとを参照する(ステップS5)。
【0037】
そして、制御部20は、現在、制御開示時であるか、あるいはDR要求値Rが変更された時点であるかを判断する(ステップS6)。
制御部20は、Yesであれば、記憶部14における変更フラグCFを立て(例えばCF=1とし)、ステップS8に進む。
他方、制御部20は、Noであれば、そのままステップS8に進む。
【0038】
制御部20は、ステップS8において、変更フラグCFが立っているか否かを判断する。
制御部20は、変更フラグCFが立っておりYesであれば、「調整量JV=(実績値AV-目標値OV)+前回の調整量JV」の式により今回の調整量JVを算出し(ステップS9)、変更フラグCFを降ろして(例えばCF=0、ステップS10)、ステップS12に移行する。制御部20は、目標値OVに関し、「目標値OV=基準値SV-指令値CV」の式により把握し、以下のステップでも同様に把握する。
他方、制御部20は、変更フラグCFが降りておりNoであれば、「調整量JV=(実績値AV-目標値OV)/2+前回の調整量JV」の式により今回の調整量JVを算出して(ステップS11)、ステップS12に移行する。
【0039】
制御部20は、ステップS12において、記憶部14におけるSOC22を読み込む。
更に、制御部20は、SOC22が所定範囲から出ているか否かを判断する(ステップS13)。
制御部20は、所定範囲外となっておりYesであれば、今回の調整量JVにSOC整形量HVを加味し(ステップS14)、ステップS15に移行する。制御部20は、SOC22が所定範囲の下限を下回っている場合、SOC整形量HVを負の値とし、調整量JVを通常より少なくして、その分、負荷Lの消費電力を低減させて現在のDR要求値R未満とし、蓄電池Bへの充電を可能とする。一方、制御部20は、SOC22が所定範囲の上限を上回っている場合、SOC整形量HVを正の値とし、調整量JVを通常より多くして、その分、負荷Lの消費電力を増加させて現在のDR要求値Rを超えるものとし、蓄電池Bによる負荷Lのアシストのための放電を可能とする。
他方、制御部20は、所定範囲内となっておりNoであれば、ステップS15に移行する。
【0040】
制御部20は、ステップS15において、今回の調整量JVを負荷Lに送信する。負荷Lは、調整量JVに基づいたその時点での運転を行う。
更に、制御部20は、今回の調整量JV等を、今回のものとして(今回の時刻TTに対応づけて)、調整履歴ファイルHFへ書き込む(ステップS16)。
そして、制御部20は、次の調整量JV等の算出に基づく負荷Lの運転制御のため、ステップS1に戻る。
尚、制御部20は、各回の処理が済み次第ステップS1に戻っても良いし、所定タイミングで(例えば一定時間(例えば1秒間)毎の処理となるように)ステップS1に戻っても良い。
【0041】
制御部20は、かようなステップS1~S16を、DR期間中、適宜繰り返すことにより、容量の抑制された蓄電池BのSOC22を、その保護(長寿命化)のために定められた所定範囲(適正範囲)に可及的に収めることができ、又DR要求値Rに応じた状態で負荷Lを運転することができる。
【0042】
[実施例等]
試験者は、電力制御システム1の実施例、及び比較例として、冬季のとある1日における昼の12時00分(12:00)から15:00にかけて負荷L(空調機による部屋の暖房)を運転した例を試験した。
実施例では、負荷Lの運転に合わせて、蓄電池Bと組み合わせた上述の制御がなされた。比較例では、蓄電池Bと組み合わせた上述の制御がなされず、単に負荷Lの制御として目標値へのフィードバック制御がなされた状態で、負荷Lが運転された。
【0043】
図4は、実施例における蓄電池Bの充放電電力(kW,左縦軸)及びSOC22(%,右縦軸)の経時変化が示されるグラフである。図5Aは、比較例における負荷消費電力の目標値及び実績値等の経時変化が示されるグラフである。図5Bは実施例における負荷消費電力LPの目標値OV及び実績値AV等の経時変化が示されるグラフである。
図5A及び図5Bにおける成功範囲は、ここでは目標値±5kWの範囲(但し目標値の大幅な(例えば±10kW以上の)変化の前15分間においては変化の前の下限と変化の後の上限との間の範囲)としている。
【0044】
比較例では、蓄電池Bのアシストがないため、図5Aに示されるように、負荷Lの実績値(負荷消費電力)は、短時間で目標値の推移に数多く交わるように上下し、上述の成功範囲から出る事態が多く発生している。
換言すれば、比較例に係る負荷Lの実績値の推移は、短時間で上下に変動し、しわ(振動変動)を有している。
【0045】
これに対し、実施例では、上述の電力制御処理により、図4に示されるような蓄電池Bの充放電即ち蓄電池Bによる負荷消費電力LPの補填が行われ、図5Bに示されるような目標値OVに十分に追従した負荷Lの実績値AV(負荷消費電力LP)が得られている。
換言すれば、実施例に係る負荷Lの実績値AVの推移は、目標値OVに沿うような平坦な部分が多く、比較例におけるしわ(振動変動)を取ったものに相当している。
【0046】
又、実施例では、図4に示されるように、処理中に蓄電池BのSOC22が把握される。
実施例では、蓄電池Bの充電の機会が多く発生しているものの、全期間の傾向として、SOC22が漸減している。かようなSOC22の漸減は、負荷Lの種類(特性)により生じ、例えば空調機では、制御量がステップ状(段階的)となる特性、指令に対する応答遅れが一様でない特性、負荷消費電力LPが細かい振動を含んだ波形となる特性等により、目標値OVと実績値AVの乖離が他の負荷Lに比べ比較的に多く発生するために生じる。尚、同様の特性により、蓄電池BのSOC22の漸増も生じ易い。
そして、14:54頃、SOC22が所定範囲の下限(30%)を下回っている。その時点で、制御部20は、調整量JVにSOC整形量HVを加味させる運転に切り替え、負荷消費電力LPを通常運転より抑制し、その分蓄電池Bへの充電を可能とする。このようにして、14:57頃には、14kW程度の充電電力における蓄電池Bの充電がなされ、14:58頃には、SOC22が所定範囲の下限以上となり、所定範囲内に復帰している。
【0047】
[作用効果等]
以上の電力制御システム1は、負荷L及び蓄電池Bをそれぞれ制御可能な制御部20と、DR要求値Rを受信可能な通信インターフェイス18と、を備えている。負荷Lは、電力系統からの電力を消費する。蓄電池Bは、電力系統からの電力を充電可能であると共に、電力系統及び負荷Lの少なくとも何れかへ電力を放電可能であって、更にSOC22を出力可能である。制御部20は、蓄電池Bから得たSOC22が所定の下限を下回ると、負荷Lの消費電力を抑制して蓄電池Bに充電させる。又、制御部20は、蓄電池Bから得たSOC22が所定の上限を上回ると、負荷Lの消費電力を増加して蓄電池Bに放電させる。蓄電池Bは、DR要求値Rに基づいて定められる目標値OVに対する上振れ及び下振れによる負荷Lの消費電力の振動を吸収可能な容量を有する。
よって、SOC22の適正範囲を維持するためにDR要求値Rを満たせない可能性、あるいはDR要求値Rを満たすためにSOC22が適正範囲から逸脱する可能性がより低減され、DRのために設けられる蓄電池Bの容量がより一層低減され得る電力制御システム1が提供される。更に、蓄電池Bの制御により、自己託送の計画値に対する同時同量制御時のインバランスを回避可能な電力制御システム1が提供される。
【0048】
又、負荷Lは、空調機である。よって、空調機のDR制御が、SOC22の適正範囲及びDR要求値Rを両立した状態で、又蓄電池Bの容量がより一層低減された状態で行える。
【0049】
≪第2形態≫
図6は、本発明の第2形態に係る電力制御システム101のブロック図である。
図6に示されるように、アグリゲータAが、互いに別の管理主体に分かれて存在する複数の負荷Lを、更に上位のアグリゲータである親アグリゲータAAからのDR(上位DR)に応じるようにとりまとめるリソースアグリゲータである場合においても、各負荷Lに対するDR(下位DR)の振動を整形するための蓄電池容量は、上述の第1形態の場合と同様に抑制可能である。
【0050】
即ち、第2形態に係る電力制御システム101に関し、アグリゲータAは、ここではリソースアグリゲータであり、複数の電力需要家にそれぞれ属する複数の負荷Lと接続されている。
親アグリゲータAA、アグリゲータA、及び各負荷Lは、一連の電力系統に属する。
尚、複数の負荷Lのうちの一部又は全部は、第1形態の電力制御システム1を備えていても良い。更に、複数の負荷Lのうちの一部又は全部は、1つの電力需要家に属しても良い。又、アグリゲータAは、リソースアグリゲータ以外であっても良い。
【0051】
アグリゲータAは、アグリゲータサーバASと、アグリゲータ側の蓄電池ABとを有している。電力制御システム101は、アグリゲータサーバASと、アグリゲータ側の蓄電池ABとを含む。
【0052】
アグリゲータサーバASは、サーバコンピュータであり、第1形態のコンピュータ2と同様に、入力部、出力部、記憶部、電力制御インターフェイス、通信インターフェイス、及び制御部(各図示略)を有している。
アグリゲータサーバASは、その記憶部に記憶されたアグリゲータプログラム(図示略)をその制御部が実行することにより、アグリゲータAの処理を行う。
各負荷Lは、インターネットN、及び通信インターフェイスを介して、アグリゲータサーバASと接続されている。
尚、複数の負荷Lのうちの一部又は全部は、インターネットN以外を介して、アグリゲータサーバASに接続されても良い。
【0053】
アグリゲータ側の蓄電池ABは、1以上の蓄電池であり、第1形態のコンピュータ2に接続された蓄電池Bと同様に成る。一般に、アグリゲータ側の蓄電池ABの規模は、電力需要家の蓄電池Bの規模より大きい傾向にある。
アグリゲータサーバASは、その電力制御インターフェイスを介して接続されたアグリゲータ側の蓄電池ABを制御可能である。
【0054】
アグリゲータサーバASは、親アグリゲータAAからの上位のDR要求値Rに基づいて、複数の負荷Lのそれぞれに対する下位のDR要求値Rについて、総合して上位のDR要求値Rの範囲内となる状態で割り当てる。即ち、アグリゲータサーバASは、自身に属する負荷Lの一部又は全部に対する下位のDR要求値Rの合計が、親アグリゲータAAからの上位のDR要求値Rを超えない状態で、下位のDR要求値Rを割り振る。
又、アグリゲータサーバASは、第1形態のコンピュータ2と同様に、アグリゲータ側の蓄電池ABの適宜のアシストにより、下位の各DR要求値Rに対応するそれぞれの負荷消費電力LPの振動分について、即ち下位のDR要求値Rの振動分について整形する。尚、複数の負荷Lは、電力制御システム101に含まれても良い。
かような整形により、電力制御システム101において、アグリゲータ側の蓄電池ABの容量は、下位のDR要求値Rの振動変動分を吸収可能なものであれば足りる。
【0055】
電力制御システム101では、制御部20は、互いに別の管理主体に分かれて存在する複数の負荷Lを制御する。
又、電力制御システム101は、蓄電池ABを制御可能な制御部を備えている。電力制御システム101は、複数の負荷Lに対して通信可能であり、且つ上位のDR要求値Rを受信可能な通信インターフェイスを備えている。蓄電池ABは、電力系統からの電力を充電可能であり、又電力系統へ電力を放電可能であり、更にSOCを出力可能である。制御部は、複数の負荷Lの少なくとも何れかに対して、下位のDR要求値Rを、総合して上位のDR要求値Rの範囲内となる状態で割り当て可能である。更に、制御部は、蓄電池ABから得たSOCが所定の下限を下回ると、下位の各DR要求値Rの少なくとも何れかを抑制して蓄電池ABに充電させる。又、制御部は、蓄電池ABから得たSOCが所定の上限を上回ると、下位の各DR要求値Rの少なくとも何れかを増加して蓄電池ABに放電させる。蓄電池ABは、上位のDR要求値Rに基づいて定められる目標値に対する上振れ及び下振れによる、下位の各DR要求値Rの少なくとも何れかの振動を吸収可能な容量を有している。
よって、互いに別の管理主体の負荷LをとりまとめてDRを行うアグリゲータAにおいて、DR制御が、SOC22の適正範囲及びDR要求値Rを両立した状態で、又蓄電池ABの容量がより一層低減された状態で行える。
【0056】
≪第3形態≫
図7は、本発明の第3形態に係る電力制御システム201のブロック図である。
図7に示されるように、親アグリゲータAAが、互いに別の管理主体に分かれて存在する複数のアグリゲータAを、更に電力系統の上位に位置するTSO202からのDR(上位DR)に応じるようにとりまとめる場合においても、各アグリゲータAに対するDR(下位DR)の振動を整形するための蓄電池容量は、上述の第1,第2形態の場合と同様に抑制可能である。
【0057】
即ち、第3形態に係る電力制御システム201に関し、親アグリゲータAAは、ここではリソースアグリゲータであり、複数の管理主体にそれぞれ属する複数のアグリゲータAと接続されている。
又、TSO202は、送電系統運用者(Transmission System Operator)である。尚、TSO202は、配電系統運用者(Distribution System Operator;DSO)等であっても良い。又、TSO202の上位のアグリゲータ等が存在しても良い。
TSO202、親アグリゲータAA、及びアグリゲータAは、一連の電力系統に属する。アグリゲータAは、1以上の負荷Lに対し直接的に又は間接的に接続される。親アグリゲータAAは、複数の負荷Lに対し、アグリゲータAを介して間接的に接続される。TSO202は、複数の負荷Lに対し、親アグリゲータAA及びアグリゲータAを介して間接的に接続される。
尚、複数の負荷Lのうちの一部又は全部は、第1形態の電力制御システム1を備えていても良い。更に、複数の負荷Lのうちの一部又は全部は、1つの電力需要家に属しても良い。又、親アグリゲータAA及びアグリゲータAの少なくとも一方は、リソースアグリゲータ以外であっても良い。加えて、各アグリゲータAの少なくとも何れかは、第2形態の電力制御システム101を備えていても良い。更に、複数のアグリゲータAのうちの一部又は全部は、1つの管理主体に属しても良い。
【0058】
親アグリゲータAAは、親アグリゲータサーバAASと、親アグリゲータ側の蓄電池AABとを有している。電力制御システム201は、親アグリゲータサーバAASと、親アグリゲータ側の蓄電池AABとを含む。
【0059】
親アグリゲータサーバAASは、サーバコンピュータであり、第1形態のコンピュータ2と同様に、入力部、出力部、記憶部、電力制御インターフェイス、通信インターフェイス、及び制御部(各図示略)を有している。
親アグリゲータサーバAASは、その記憶部に記憶された親アグリゲータプログラム(図示略)をその制御部が実行することにより、親アグリゲータAAの処理を行う。
各アグリゲータAは、インターネットN、及び通信インターフェイスを介して、親アグリゲータサーバAASと接続されている。
尚、複数のアグリゲータAのうちの一部又は全部は、インターネットN以外を介して、親アグリゲータサーバAASに接続されても良い。
【0060】
親アグリゲータ側の蓄電池AABは、1以上の蓄電池であり、蓄電池B,ABと同様に成る。一般に、親アグリゲータ側の蓄電池AABの規模は、電力需要家の蓄電池Bの規模より大きい傾向にある。
親アグリゲータサーバAASは、その電力制御インターフェイスを介して接続された親アグリゲータ側の蓄電池AABを制御可能である。
【0061】
親アグリゲータサーバAASは、TSO202からの上位のDR要求値Rに基づいて、複数のアグリゲータAのそれぞれに対する下位のDR要求値Rについて、総合して上位のDR要求値Rの範囲内となる状態で割り当てる。即ち、親アグリゲータサーバAASは、自身に属するアグリゲータAの一部又は全部に対する下位のDR要求値Rの合計が、TSO202からの上位のDR要求値Rを超えない状態で、下位のDR要求値Rを割り振る。
又、親アグリゲータサーバAASは、第1形態のコンピュータ2と同様に、親アグリゲータ側の蓄電池AABの適宜のアシストにより、下位の各DR要求値Rに対応するそれぞれの負荷消費電力LPの合計の振動分について、即ち下位のDR要求値Rの総合的な振動分について整形する。尚、複数のアグリゲータAは、電力制御システム201に含まれても良い。
かような整形により、電力制御システム201において、親アグリゲータ側の蓄電池AABの容量は、下位のDR要求値Rの振動変動分を吸収可能なものであれば足りる。
【0062】
電力制御システム201では、制御部20は、互いに別の管理主体に分かれて存在する複数のアグリゲータAを制御する。
又、電力制御システム201は、蓄電池AABを制御可能な制御部を備えている。電力制御システム201は、それぞれ複数の負荷に直接的に若しくは間接的に接続された複数のアグリゲータAに対して通信可能であり、且つ上位のDR要求値Rを受信可能な通信インターフェイスを備えている。蓄電池AABは、電力系統からの電力を充電可能であり、又電力系統へ電力を放電可能であり、更にSOCを出力可能である。制御部は、複数のアグリゲータAの少なくとも何れかに対して、下位のDR要求値Rを、総合して上位のDR要求値Rの範囲内となる状態で割り当て可能である。更に、制御部は、蓄電池AABから得たSOCが所定の下限を下回ると、下位の各DR要求値Rの少なくとも何れかを抑制して蓄電池AABに充電させる。又、制御部は、蓄電池AABから得たSOCが所定の上限を上回ると、下位の各DR要求値Rの少なくとも何れかを増加して蓄電池AABに放電させる。蓄電池AABは、上位のDR要求値Rに基づいて定められる目標値に対する上振れ及び下振れによる、下位の各DR要求値Rの少なくとも何れかの振動を吸収可能な容量を有している。
よって、互いに別の管理主体のアグリゲータAをとりまとめてDRを行う親アグリゲータAAにおいて、DR制御が、SOC22の適正範囲及びDR要求値Rを両立した状態で、又蓄電池AABの容量がより一層低減された状態で行える。
【0063】
≪変更例≫
最後に、第1~第3形態及び上述の変更例の少なくとも何れかを更に変更した変更例が説明される。
各種コンピュータの台数及びネットワーク上の配置、電力系統並びにTSO202、親アグリゲータAA及びアグリゲータA等の構成、各種の式、並びに制御に係るステップの内容及び順序、及び制御に係る指令の内容等のうちの少なくとも何れかは、論理的に同等な他のものに変えられても良い。
第1~第3形態あるいはそれらの変更例の少なくとも何れか2つは、組み合わせられても良い。第1~第3形態の各変更例は、他の形態に適用されても良い。
【符号の説明】
【0064】
1,101,201・・電力制御システム、18・・通信インターフェイス、20・・制御部、22・・SOC、B,AB,AAB・・蓄電池、L・・負荷、R・・DR要求値(デマンドレスポンス要求値)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7