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特開2024-129617第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法
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  • 特開-第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129617
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 25/02 20060101AFI20240919BHJP
   F25B 30/04 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F25B25/02 B
F25B30/04 510A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038942
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
(72)【発明者】
【氏名】服部 沙織
(57)【要約】
【課題】比較的低温の排熱から比較的高温の水蒸気を生成する温熱を出力できる構成において、高い動力COPを発揮する。
【解決手段】圧縮機CPは、吸収器ABへ導かれる冷媒を圧縮するものであり、運転を制御する制御装置Sが、凝縮器EX2での凝縮温度に関連する凝縮温度関連値と、吸収器ABでの吸収温度に関連する吸収温度関連値に基づいて、動力に対する吸収器ABから出力される温熱の効率である動力COPを極大化するように、圧縮機CPの吐出圧力としての高圧相当圧力を制御する高圧相当圧力制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温熱源からの供給熱により強溶液を再生させる再生器と、弱溶液に冷媒を吸収させて温熱を出力する吸収器と、前記再生器にて再生された弱溶液を前記吸収器へ圧送する溶液ポンプと、前記再生器にて吸収液から分離した冷媒を凝縮させる凝縮器と、冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記凝縮器から前記蒸発器に冷媒を圧送する冷媒ポンプと、冷媒を圧縮する圧縮機を備える第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムであって、
前記圧縮機は、前記再生器にて分離され前記吸収器へ導かれる冷媒を圧縮するものであり、
運転を制御する制御装置が、前記凝縮器での凝縮温度に関連する凝縮温度関連値と、前記吸収器での吸収温度に関連する吸収温度関連値に基づいて、動力に対する前記吸収器から出力される温熱量の比である動力COPを極大化するように、前記圧縮機の吐出圧力としての高圧相当圧力を制御する高圧相当圧力制御を実行する第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記凝縮温度関連値及び前記吸収温度関連値に加え、前記蒸発器の蒸発温度に関連する蒸発温度関連値と前記再生器の再生温度に関連する再生温度関連値との少なくとも何れか一方を用いて、前記高圧相当圧力制御を実行する請求項1に記載の第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記圧縮機は、前記再生器からの冷媒を前記凝縮器と前記蒸発器とを介して前記吸収器へ導く冷媒循環路のうち、前記蒸発器の出口と前記吸収器の入口との間に設けられている請求項1又は2に記載の第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記冷媒が水であり、前記吸収液が臭化リチウム水溶液である請求項1又は2に記載の第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記圧縮機の出口の前記高圧相当圧力に対応する高圧相当温度を、少なくとも前記凝縮温度関連値と前記吸収温度関連値から推定し、
前記高圧相当圧力制御において、前記圧縮機の出口の冷媒圧力が、前記推定された前記高圧相当温度となるように、前記圧縮機を制御する請求項1に記載の第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム。
【請求項6】
温熱源からの供給熱により強溶液を再生させる再生器と、弱溶液に冷媒を吸収させて温熱を出力する吸収器と、前記再生器にて再生された弱溶液を前記吸収器へ圧送する溶液ポンプと、前記再生器にて吸収液から分離した冷媒を凝縮させる凝縮器と、冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記凝縮器から前記蒸発器に冷媒を圧送する冷媒ポンプと、冷媒を圧縮する圧縮機を備える第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムの制御方法であって、
前記圧縮機は、前記再生器にて分離され前記吸収器へ導かれる冷媒を圧縮するものであり、
前記凝縮器での凝縮温度に関連する凝縮温度関連値と、前記吸収器での吸収温度に関連する吸収温度関連値に基づいて、動力に対する前記吸収器から出力される温熱量の比である動力COPを最大化するように、前記圧縮機の吐出圧力としての高圧相当圧力を制御する高圧相当圧力制御工程を実行する第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱源からの供給熱により強溶液を再生させる再生器と、弱溶液に冷媒を吸収させて温熱を出力する吸収器と、前記再生器にて再生された弱溶液を前記吸収器へ圧送する溶液ポンプと、前記再生器にて吸収液から分離した冷媒を凝縮させる凝縮器と、冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記凝縮器から前記蒸発器に冷媒を圧送する冷媒ポンプと、冷媒を圧縮する圧縮機を備える第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業分野では、いまだ使われていない排熱や再生可能エネルギーが多く存在していると言われている。しかし、そのうち100℃未満の温水等の排熱は温度が低いため、エネルギーとして工場内での再利用が難しいとされている。一方で、比較的高温の温熱にて作られる水蒸気の需要は大きい。
そこで、100℃未満の比較的低温の排熱から比較的高温の温熱を出力できるヒートポンプ技術として、温熱源からの供給熱により強溶液を再生させる再生器と、弱溶液に冷媒を吸収させて温熱を出力する吸収器と、前記再生器にて再生された弱溶液を前記吸収器へ圧送する溶液ポンプと、前記再生器にて吸収液から分離した冷媒を凝縮させる凝縮器と、冷媒を蒸発させる蒸発器とを有する第2種吸収ヒートポンプと、冷媒を圧縮する圧縮機を有する圧縮式ヒートポンプとを備えたハイブリッドヒートポンプシステムが提案されている(特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-99640号公報
【特許文献2】特開2011-257043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したハイブリッドヒートポンプシステムでは、比較的低温の排熱から比較的高温の水蒸気を生成できるのであるが、圧縮動力が必要となるシステムであるため、省エネルギー性の観点から、その動力に対する温熱量の比としての動力COPを高めることが重要である。
しかしながら、上記特許文献1、2に開示のハイブリッドヒートポンプシステムでは、比較的低温の排熱から比較的高温の水蒸気を生成する温熱を出力しながらも、効率的な圧縮動力を適切に設定して運転効率の最適化を図る手法については開示されていない。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的低温の排熱から比較的高温の水蒸気を生成する温熱を出力できる構成において、高い動力COPを発揮し得る第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムは、
温熱源からの供給熱により強溶液を再生させる再生器と、弱溶液に冷媒を吸収させて温熱を出力する吸収器と、前記再生器にて再生された弱溶液を前記吸収器へ圧送する溶液ポンプと、前記再生器にて吸収液から分離した冷媒を凝縮させる凝縮器と、冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記凝縮器から前記蒸発器に冷媒を圧送する冷媒ポンプと、冷媒を圧縮する圧縮機を備える第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムであって、その特徴構成は、
前記圧縮機は、前記再生器にて分離され前記吸収器へ導かれる冷媒を圧縮するものであり、
運転を制御する制御装置が、前記凝縮器での凝縮温度に関連する凝縮温度関連値と、前記吸収器での吸収温度に関連する吸収温度関連値に基づいて、動力に対する前記吸収器から出力される温熱量の比である動力COPを極大化するように、前記圧縮機の吐出圧力としての高圧相当圧力を制御する高圧相当圧力制御を実行する点にある。
【0007】
上記目的を達成するための第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムの制御方法は、
温熱源からの供給熱により強溶液を再生させる再生器と、弱溶液に冷媒を吸収させて温熱を出力する吸収器と、前記再生器にて再生された弱溶液を前記吸収器へ圧送する溶液ポンプと、前記再生器にて吸収液から分離した冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から前記蒸発器に冷媒を圧送する冷媒ポンプと、冷媒を圧縮する圧縮機を備える第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムの制御方法であって、その特徴構成は、
前記圧縮機は、前記再生器にて分離され前記吸収器へ導かれる冷媒を圧縮するものであり、
前記凝縮器での凝縮温度に関連する凝縮温度関連値と、前記吸収器での吸収温度に関連する吸収温度関連値に基づいて、動力に対する前記吸収器から出力される温熱量の比である動力COPを最大化するように、前記圧縮機の吐出圧力としての高圧相当圧力を制御する高圧相当圧力制御工程を実行する点にある。
【0008】
発明者らは、鋭意検討した結果、上述の構成を有する第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムにおいては、図2に示すように、動力COPが、凝縮器での凝縮温度に関連する凝縮温度関連値毎に、高圧相当圧力により制御可能で且つ圧縮機の出口での冷媒温度としての高圧相当温度に応じて極大値を有し、当該極大値は、図2~4に示すように、吸収器での吸収温度に関連する吸収温度関連値毎に、変化するという知見を得た。
当該知見に基づく上記特徴構成によれば、凝縮器での凝縮温度に関連する凝縮温度関連値と、吸収器での吸収温度に関連する吸収温度関連値に基づいて、圧縮機の吐出圧力としての高圧相当圧力を制御する高圧相当圧力制御を実行することで、動力に対する吸収器から出力される温熱量の比である動力COPを極大化させて、効率の高い運転を実行できる第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムを実現できる。
以上より、比較的低温の排熱から比較的高温の水蒸気を生成する温熱を出力できる構成において、高い動力COPを発揮し得る第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法を実現できる。
【0009】
第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、前記凝縮温度関連値及び前記吸収温度関連値に加え、前記蒸発器の蒸発温度に関連する蒸発温度関連値と前記再生器の再生温度に関連する再生温度関連値との少なくとも何れか一方を用いて、前記高圧相当圧力制御を実行する点にある。
【0010】
上述した構成を有する第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムは、通常、工場等の排熱であって熱量が十分であり安定した温度の排熱が、蒸発器及び再生器に導かれるため、蒸発器の蒸発温度に関連する蒸発温度関連値及び再生器の再生温度に関連する再生温度関連値は、あまり変化しない温度となっている場合があり、また両者の温度も同一、或いは一定の関係を有する場合も多く、制御のパラメータとして必ずしも入れなくても良いものである。
しかしながら、発明者らは、凝縮温度関連値及び吸収温度関連値に加えて、蒸発温度関連値及び再生温度関連値をも制御のパラメータとして加えることで、動力COPを極大化する高圧相当温度の導出精度を高くできることを、後述する計算により明らかにした。
【0011】
第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、
前記圧縮機は、前記再生器からの冷媒を前記凝縮器と前記蒸発器とを介して前記吸収器へ導く冷媒循環路のうち、前記蒸発器の出口と前記吸収器の入口との間に設けられている点にある。
【0012】
これまで説明してきた第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムにおいて、圧縮機を設ける部位は、再生器にて分離された冷媒を吸収器へ導く冷媒循環路において、種々の部位が考えられるが、上記特徴構成の如く、冷媒循環路のうち蒸発器の出口と吸収器の入口との間に設けることで、例えば、再生器の出口と凝縮器の入口の間に設けるよりも、より温度の高い温熱の生成に適している。
【0013】
第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、
前記冷媒が水であり、前記吸収液が臭化リチウム水溶液である点にある。
【0014】
上記特徴構成の如く、冷媒を水とし吸収液を臭化リチウム水溶液とすることで、これまで説明してきた第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムを良好に働かせることができる。
【0015】
第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、
前記圧縮機の出口の前記高圧相当圧力に対応する高圧相当温度を、少なくとも前記凝縮温度関連値と前記吸収温度関連値から推定し、
前記高圧相当圧力制御において、前記圧縮機の出口の冷媒温度が、前記推定された前記高圧相当温度となるように、前記圧縮機の動力を制御する点にある。
【0016】
発明者らは、高圧相当温度を、少なくとも凝縮温度関連値と吸収温度関連値から推定することで、動力COPが極大化する高圧相当温度を、比較的小さい誤差の範囲(後述する計算では誤差が最大でも2K)で推定できることを確認した。
上記特徴構成により推定された高圧相当温度に基づいた制御により、比較的高い精度で、動力COPを極大化しつつ運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステムの概略構成図である。
図2】吸収温度を130℃とする場合に、凝縮温度毎の高圧相当温度と動力COPとの関係を示すグラフ図である。
図3】吸収温度を140℃とする場合に、凝縮温度毎の高圧相当温度と動力COPとの関係を示すグラフ図である。
図4】吸収温度を120℃とする場合に、種々の凝縮温度毎の高圧相当温度と動力COPとの関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法は、比較的低温の排熱から比較的高温の水蒸気を生成する温熱を出力できる構成において、高い動力COPを発揮し得るものに関する。
以下、図面に基づいて、当該実施形態に係る第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法について説明する。
【0019】
第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム100は、図1に示すように、温熱源(図示せず)からの供給熱により強溶液を再生させる再生器RGと、弱溶液に冷媒を吸収させて温熱を出力する吸収器ABと、再生器RGにて再生された弱溶液を吸収器ABへ圧送する溶液ポンプP3と、再生器RGにて吸収液から分離した冷媒を凝縮させる凝縮器としての第2熱交換器EX2と、冷媒を蒸発させる蒸発器としての第3熱交換器EX3とを有する第2種吸収ヒートポンプと、モーターやエンジン等の原動機Eにて駆動され冷媒を圧縮する圧縮機CPと、運転を制御する制御装置Sとを備えている。
【0020】
説明を追加すると、第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム100は、吸収液又は冷媒を通流する流路として、冷媒を吸収して強溶液となると共に一部の冷媒が分離されて弱溶液となる吸収液を吸収器ABと再生器RGとの間で循環する吸収循環路C2と、再生器RGにて吸収液から分離された冷媒を吸収器ABへ導く冷媒循環路C1とを備えている。
【0021】
吸収循環路C2には、再生器RGから吸収器ABへ導かれる弱溶液と吸収器ABから再生器RGへ導かれる強溶液とを熱交換する第1熱交換器EX1が設けられると共に、第1熱交換器EX1から再生器RGへ導かれる強溶液を膨張させる第1膨張弁EV1が設けられている。
【0022】
冷媒循環路C1には、再生器RGから吸収器ABへの冷媒の流れ方向で上流側から、例えば外気と冷媒を熱交換させて冷媒を凝縮する凝縮器としての第2熱交換器EX2、冷媒を圧送する第1ポンプP1(冷媒ポンプの一例)、温熱源からの熱媒と冷媒とを熱交換することにより冷媒を蒸発させる蒸発器としての第3熱交換器EX3、冷媒を圧縮して吐出圧力としての高圧相当圧力を制御する圧縮機CPとが記載の順に設けられている。
尚、冷媒循環路C1には、第2熱交換器EX2の出口と第1ポンプP1の入口との間の冷媒を、圧縮機CPへ導く冷媒バイパス路R1が接続されており、当該冷媒バイパス路R1には、冷媒を圧送する第2ポンプP2が設けられている。冷媒バイパス路R1により圧縮機CPへ導かれる冷媒は、圧縮機CPが高温になり過ぎることを抑制する。
尚、当該明細書では、冷媒循環路C1を通流する冷媒の全量のうち、冷媒バイパス路R1を通流する冷媒の流量割合(%)を、冷媒分配率と呼ぶ。冷媒分配率は、条件にもよるが、例えば、1割程度に設定される。
【0023】
蒸発器としての第3熱交換器EX3には、例えば産業排熱を有する熱媒EWを通流する第2熱媒通流路R2により排熱が供給され、再生器RGについても、例えば産業排熱を有する熱媒EWを通流する第3熱媒通流路R3により排熱が供給される。尚、蒸発器としての第3熱交換器EX3と、再生器RGとの双方に導かれる熱媒EWは、蒸発器としての第3熱交換器EX3と、再生器RGとに対して、並列に各別の熱媒EWが導かれる構成であっても構わないし、直列に熱媒EWが導かれる構成であっても構わない。
吸収器ABには、例えば、水(又は蒸気)等の温熱媒体を通流する温熱媒体通流路R4が設けられ、当該温熱媒体が吸収器ABにて加熱昇温して熱利用部(図示せず)へ導かれる。
【0024】
尚、冷媒として水を好適に用いることができ、吸収液として臭化リチウム水溶液を好適に用いることができる。
【0025】
さて、発明者らは、これまで説明してきた第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム100にあっては、図2に示すように、圧縮機CP等の動力に対する吸収器ABから出力される温熱量の比である動力COPは、凝縮温度Tc毎に、圧縮機CPの吐出圧力としての高圧相当圧力(=吸収器ABの圧力)の制御により調整可能な圧縮機CP出口の冷媒温度としての高圧相当温度に応じて、極大値を有するという知見を得た。
【0026】
そこで、制御装置Sは、凝縮器での凝縮温度Tc(凝縮温度関連値の一例)と、吸収器ABでの吸収温度Ta(吸収温度関連値の一例)に基づいて、動力に対する吸収器ABから出力される温熱の比である動力COPを極大化するように、圧縮機CPの吐出圧力としての高圧相当圧力を制御する高圧相当圧力制御(高圧相当圧力制御工程)を実行する。ここで、凝縮温度関連値としては、凝縮温度Tcに替えて凝縮圧力であってもよい。
【0027】
更に、制御装置Sは、動力COPをより精度良く極大化するべく、凝縮温度Tc及び吸収温度Taに加え、蒸発器の蒸発温度Te(蒸発温度関連値の一例)と再生器RGの再生温度Tg(再生温度関連値の一例)との少なくとも何れか一方を用いて、高圧相当圧力制御を実行するように構成しても構わない。ここで、蒸発温度関連値は、蒸発温度Teに替えて蒸発圧力であっても構わない。
因みに、凝縮温度Tc、吸収温度Ta、再生温度Tg、蒸発温度Teは、運転中であれば既知の値である。
【0028】
因みに、図2に示すグラフ図の試算条件は、冷媒として水を、吸収液として臭化リチウム水溶液を用い、圧縮機効率を75%、第1ポンプP1と第2ポンプP2と溶液ポンプP3の効率を50%、第1熱交換器EX1の熱交換効率を75%、凝縮器での過冷却度を0Kとし、蒸発器での加熱度を0Kとし、冷媒分配率は圧縮機CP出口が概ね飽和蒸気となるように設定した。
また、目標としての吸収温度Taは130℃とし、環境温度から決定される凝縮温度Tcは20℃、30℃、40℃とし、工場等の温熱源から得られる排熱に依存する再生温度Tg・蒸発温度Teは60℃とした。
尚、後述する図3、4に示すグラフ図の試算条件についても、特に示さない限り、当該運転条件と同一であるとする。
【0029】
さて、図2に示す例では、凝縮温度Tcが20℃のときに、動力COPが極大化するよう高圧相当圧力制御を実行すると、動力COPを大凡8程度とすることができる。
【0030】
因みに、図3に示すように、吸収温度Taを140℃まで上げた場合、凝縮温度Tcが20℃のときには、動力COPの極大値を大凡6程度とすることができ、図4に示すように、吸収温度Taを120℃まで下げる場合、凝縮温度Tcが20℃のときには、動力COPの極大値を大凡12以上とすることができる。
【0031】
さて、高圧相当温度については、凝縮温度Tc、吸収温度Taを変数(パラメータ)として用いた多重回帰分析により、係数及び定数項を算出した推定式を導出し、当該推定式に基づいて高圧相当温度を導出することができる。以下に、一例として一次関数として導出した推定式として、〔数1〕を示す。
因みに、〔表1〕に示すように、多重回帰分析の基データとしての凝縮温度Tc、吸収温度Ta、高圧相当温度の組は、計算(シミュレーション)により得たものを使用した。以下では、説明の都合上、シミュレーションにより得た基データの高圧相当温度をT1、推定式により算出した高圧相当温度をT2とする。
尚、当該多重回帰分析の条件は、凝縮温度Tcは20~40℃、吸収温度Taは120~140℃としている。なお、再生温度Tgと蒸発温度Teは同じとし50~70℃としているが、この多重回帰分析では再生温度Tgと蒸発温度Teは用いていない。
【0032】
(数1)
T2=1.29×Tc+1.11×Ta-82.3
【0033】
〔表1〕に示すように、上記〔数1〕による推定式により導出した高圧相当温度T2は、基データの高圧相当温度T1に対して、±2Kの誤差で算出できていることがわかる。
【0034】
そこで、制御装置Sは、高圧相当圧力制御において、圧縮機CPの出口の冷媒圧力が、推定式〔数1〕により推定された高圧相当温度となるように、圧縮機CPを制御する。
【0035】
【表1】
【0036】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、圧縮機CPは、再生器RGから吸収器ABへ冷媒を導く冷媒循環路C1において、蒸発器としての第3熱交換器EX3と吸収器ABとの間に設けられる構成例を示した。
他の例として、圧縮機CPは、再生器の出口と蒸発器凝縮器の入口の間に設ける構成を採用しても構わない。
【0037】
(2)上記実施形態では、冷媒として水を、吸収液として臭化リチウム水溶液を用いる例を示した。他の例としては、冷媒としてアンモニア、吸収液としてアンモニア水溶液を用いても構わない。
【0038】
(3)上記実施形態では、高圧相当温度に関し、凝縮温度Tc、吸収温度Taを変数として用いた多重回帰分析により、係数及び定数項を算出した推定式を導出し、当該推定式に基づいて高圧相当温度を導出する方法を示した。
ここで、変数として、蒸発温度Te又は再生温度Tgの少なくとも何れか一方を変数に加えても構わない。
以下に、一例として、蒸発温度Teを変数として加え、導出した推定式として〔数2〕を示す。ちなみに、多重回帰分析に用いた基データ、夫々の基データに基づいて推定式により導出した高圧相当温度T2、高圧相当温度T2と基データの高圧相当温度T1との差異は、は、〔表2〕に示す通りである。
尚、当該多重回帰分析の条件は、凝縮温度Tcは20~40℃、吸収温度Taは120~140℃、再生温度Tgと蒸発温度Teは同じとし50~70℃としている。
【0039】
(数2)
T2=1.29×Tc+1.11×Ta-0.12Te-75.3
【0040】
〔表2〕に示すように、上記〔数2〕による推定式により導出した高圧相当温度T2は、基データの高圧相当温度T1に対して、±1Kの誤差で算出できており、〔数1〕に比べ精度が向上していることがわかる。
【0041】
【表2】
【0042】
(4)尚、上記別実施形態(3)において、蒸発温度Teのみならず、再生温度Tgを変数に加えても構わないし、再生温度Tgのみを変数に加えても構わない。
【0043】
(5)これまで説明してきた第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム100では、蒸発器と再生器へは、同じ低温熱源からの排熱が供給されることが多いため、一方から他方を推定する構成を採用しても構わない。
【0044】
(6)上記多重回帰分析においては、2次関数あるいは3次関数を採用しても構わないし、圧縮機CPの効率等の他の項目の影響も考慮した推定式としても構わない。また、多重回帰分析を用いた推定に替えて、種々の条件で事前に作成したマップ情報からの推定や、瞬時の計算での推定を用いても構わない。
【0045】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法は、比較的低温の排熱から比較的高温の水蒸気を生成する温熱を出力できる構成において、高い動力COPを発揮し得る第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム、及びその制御方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
100 :第2種吸収ハイブリッドヒートポンプシステム
AB :吸収器
C1 :冷媒循環路
CP :圧縮機
EX2 :第2熱交換器
EX3 :第3熱交換器
P3 :溶液ポンプ
R1 :冷媒バイパス路
RG :再生器
S :制御装置
T1 :高圧相当温度
Ta :吸収温度
Tc :凝縮温度
Te :蒸発温度
Tg :再生温度
図1
図2
図3
図4