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特開2024-12963自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012963
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240124BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240124BHJP
【FI】
A01B69/00 303K
G05D1/02 H
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114828
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰史
(72)【発明者】
【氏名】石川 航平
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄司
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB14
2B043DA17
2B043DC01
2B043EA32
2B043EB05
2B043EC02
2B043EC14
2B043EC16
2B043ED02
2B043ED12
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
(57)【要約】
【課題】後進旋回経路を含む旋回経路において作業車両を適切に旋回走行させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供する。
【解決手段】走行処理部111は、目標経路に含まれる、コンバイン1に所定の作業を行なわせる複数の作業経路と、前記複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従ってコンバイン1を走行させる。対処処理部113は、コンバイン1が後進旋回中に前記旋回経路に含まれる後進旋回経路から位置ずれした場合に、コンバイン1を前記旋回経路に続く作業経路に進入させる対処処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定される目標経路に従って作業車両を自動走行させる自動走行方法であって、
前記目標経路に含まれる、前記作業車両に所定の作業を行なわせる複数の作業経路と、前記複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従って前記作業車両を走行させることと、
前記作業車両が後進旋回中に前記旋回経路に含まれる後進旋回経路から位置ずれした場合に、前記作業車両を前記旋回経路に続く第1作業経路に進入させる対処処理を実行することと、
を実行する自動走行方法。
【請求項2】
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合に、前記旋回経路とは異なる経路であって前記第1作業経路に接続する対処経路を設定し、前記作業車両を前記対処経路に従って走行させる、
請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項3】
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合であって、前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して所定角度以内になった場合に、前記作業車両を停止させて前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項4】
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合であって、前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して平行になった場合に、前記作業車両を停止させて前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項5】
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合であって、前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して所定角度以内になった場合に、前記作業車両を前記第1作業経路に平行に所定距離だけ後進走行させた後に前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項6】
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合であって、前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して所定角度以内になった時点の前記作業車両の位置から前記旋回経路の終了位置までの距離が所定距離以上の場合に、前記作業車両を前記終了位置まで後進走行させた後に前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項7】
前記作業車両を前記終了位置において前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して平行になった後に前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
請求項6に記載の自動走行方法。
【請求項8】
前記作業車両を前記所定距離だけ後進走行させる場合に、前記作業車両の車速を、前記後進旋回経路に対して予め設定された設定車速よりも遅い速度に設定する、
請求項6又は7に記載の自動走行方法。
【請求項9】
予め設定される目標経路に従って作業車両を自動走行させる自動走行システムであって、
前記目標経路に含まれる、前記作業車両に所定の作業を行なわせる複数の作業経路と、前記複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従って前記作業車両を走行させる走行処理部と、
前記作業車両が後進旋回中に前記旋回経路に含まれる後進旋回経路から位置ずれした場合に、前記作業車両を前記旋回経路に続く第1作業経路に進入させる対処処理を実行する対処処理部と、
を備える自動走行システム。
【請求項10】
予め設定される目標経路に従って作業車両を自動走行させる自動走行プログラムであって、
前記目標経路に含まれる、前記作業車両に所定の作業を行なわせる複数の作業経路と、前記複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従って前記作業車両を走行させることと、
前記作業車両が後進旋回中に前記旋回経路に含まれる後進旋回経路から位置ずれした場合に、前記作業車両を前記旋回経路に続く第1作業経路に進入させる対処処理を実行することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場において、予め設定された目標経路に従って自動走行する作業車両が知られている。例えば、前記作業車両は、圃場において、目標経路に従って作業開始位置から作業終了位置まで、外周側から内周側に向かって渦巻状に自動走行しながら刈取作業(「回り刈り」)を行う(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6937681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車両が回り刈りを行う場合、作業車両は作業経路を作業した後、90度旋回(方向転換)して次の作業経路に進入する。作業車両が90度旋回する場合、旋回経路に含まれる後進旋回経路において作業車両が左右方向に位置ずれし易くなる。旋回経路において作業車両に位置ずれが生じると、次の作業経路への進入位置がずれてしまい刈り残しが発生してしまう。
【0005】
本発明の目的は、後進旋回経路を含む旋回経路において作業車両を適切に旋回走行させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動走行方法は、予め設定される目標経路に従って作業車両を自動走行させる方法である。前記自動走行方法は、前記目標経路に含まれる、前記作業車両に所定の作業を行なわせる複数の作業経路と、前記複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従って前記作業車両を走行させることと、前記作業車両が後進旋回中に前記旋回経路に含まれる後進旋回経路から位置ずれした場合に、前記作業車両を前記旋回経路に続く第1作業経路に進入させる対処処理を実行することと、を実行する。
【0007】
本発明に係る自動走行システムは、予め設定される目標経路に従って作業車両を自動走行させるシステムである。前記自動走行システムは、走行処理部と対処処理部とを備える。前記走行処理部は、前記目標経路に含まれる、前記作業車両に所定の作業を行なわせる複数の作業経路と、前記複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従って前記作業車両を走行させる。前記対処処理部は、前記作業車両が後進旋回中に前記旋回経路に含まれる後進旋回経路から位置ずれした場合に、前記作業車両を前記旋回経路に続く第1作業経路に進入させる対処処理を実行する。
【0008】
本発明に係る自動走行プログラムは、予め設定される目標経路に従って作業車両を自動走行させるプログラムである。前記自動走行プログラムは、前記目標経路に含まれる、前記作業車両に所定の作業を行なわせる複数の作業経路と、前記複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従って前記作業車両を走行させることと、前記作業車両が後進旋回中に前記旋回経路に含まれる後進旋回経路から位置ずれした場合に、前記作業車両を前記旋回経路に続く第1作業経路に進入させる対処処理を実行することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、後進旋回経路を含む旋回経路において作業車両を適切に旋回走行させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るコンバインの構成を示す外観図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る圃場に設定される目標経路の一例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る目標経路に含まれる旋回経路の一例を示す図である。
図5A図5Aは、従来のコンバインの旋回走行の走行方法の一例を示す図である。
図5B図5Bは、従来のコンバインの旋回走行の走行方法の一例を示す図である。
図6A図6Aは、従来のコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
図6B図6Bは、従来のコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
図7A図7Aは、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の一例を示す図である。
図7B図7Bは、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の一例を示す図である。
図8A図8Aは、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
図8B図8Bは、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
図12A図12Aは、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
図12B図12Bは、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
図13A図13Aは、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
図13B図13Bは、本発明の実施形態に係るコンバインの旋回走行の走行方法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
本発明の作業車両の一例として、コンバイン1を挙げて説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係る自動走行システム10は、コンバイン1と操作端末3とを含んでいる。コンバイン1及び操作端末3は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、コンバイン1及び操作端末3は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
コンバイン1は、圃場において刈取等の農作業を行う作業車両である。コンバイン1は、走行しながら作業を行うとともに、コンバイン1に搭載されたGNSSアンテナのGNSS情報、すなわちコンバイン1の自車位置を計測点データとして操作端末3に送信する。
【0014】
また、コンバイン1は、予め設定された目標経路に従って自動走行を行う自動走行車両として構成される。また、コンバイン1は、操作端末3から各種の設定情報を受信して、設定情報に従って自動走行を行う。
【0015】
操作端末3は、コンバイン1を遠隔操作可能な携帯端末であって、例えば、タブレット端末、ノート型のパーソナルコンピュータ、スマートフォン等で構成される。なお、操作端末3と同様の操作装置がコンバイン1に搭載されていてもよい。
【0016】
作業者(オペレータ)は、操作端末3において、各種の設定項目について設定操作を行うことが可能である。また、操作端末3は、自動走行中のコンバイン1の作業状況、走行状況などの情報を表示させる。作業者は、操作端末3において作業状況、走行状況を把握することが可能である。
【0017】
図3には、圃場Fに対して生成された目標経路の一例を示している。例えば、コンバイン1は、圃場F内において、目標経路に従って作業開始位置Sから作業終了位置Gまで、外周側から内周側へ向かって渦巻状に走行しながら刈取作業(「回り刈り」)を行う。具体的には、コンバイン1は、圃場Fの外周側の外周領域Faでは、圃場端(外周)に沿って走行しながら刈取作業を行う。また、圃場Fの内周側の内周領域Fbでは、コンバイン1は、図3の上下方向において直進走行しながら刈取作業を行い、左右方向において刈取作業を行わずに旋回走行及び直進走行を行って作業経路間を移動する。
【0018】
ここで、コンバイン1は作業経路から次の作業経路に移行する場合に旋回経路を自動走行する。図4には、旋回経路の一例を示している。例えば図4に示すように、作業領域A1内の作業経路r11と作業経路r16とを接続する旋回経路には、作業経路r11に接続する前進方向の直進経路r12と、後進方向の旋回経路r13(後進旋回経路)と、後進方向の直進経路r14(後進直進経路)と、作業経路r16に接続する前進方向の直進経路r15とが含まれる。前記旋回経路は、前記目標経路に含まれる経路であって、予め設定される。図4に示す目標経路において、コンバイン1は、作業経路r11を作業及び走行すると、直進経路r12を直進走行し、後進開始位置p1で停止する。その後、コンバイン1は、後進方向に切り替えて、後進旋回経路r13を後進走行(後進旋回)し、続く直進経路r14を後進走行(後進直進)し、後進終了位置p2で停止する。その後、コンバイン1は、前進方向に切り替えて、直進経路r15を直進走行して作業経路r16に進入する。
【0019】
上記のようにコンバイン1が後進旋回により方向転換する場合、旋回経路に含まれる後進旋回経路r13においてコンバイン1が左右方向に位置ずれし易くなる。従来の技術では、図5及び図6に示すように、後進旋回経路r13においてコンバイン1に位置ずれが生じた場合に、次の作業経路r16への進入位置がずれてしまい刈り残しが発生する問題が生じる。
【0020】
例えば図5Aに示すように、コンバイン1が後進旋回経路r13よりも旋回半径が大きい方向に位置ずれして大回りすると(図5Aの走行経路r21)、停止位置においてコンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して斜め方向に向いてしまう。このため、コンバイン1はその後に前進方向に切り替えて作業経路r16に移動しようとすると、図5Bに示すように、経路r22に沿って走行することにより刈り残し領域B1が発生してしまう。なお、コンバイン1は、目標経路から位置ずれした場合に、後進終了位置p2に基づいて制動距離に応じた位置で停止する。
【0021】
また、例えば図6Aに示すように、コンバイン1が後進旋回経路r13よりも旋回半径が小さい方向に位置ずれして小回りすると(図6Aの走行経路r31)、停止位置においてコンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して斜め方向に向いてしまう。このため、コンバイン1はその後に前進方向に切り替えて作業経路r16に移動しようとすると、図6Bに示すように、経路r32に沿って走行することにより刈り残し領域B2が発生してしまう。
【0022】
これに対して、本実施形態に係る自動走行システム10は、以下に示すように、後進旋回経路を含む旋回経路においてコンバイン1を適切に旋回走行させることが可能な構成を備える。以下、コンバイン1及び操作端末3のそれぞれについて、上記構成を実現するための具体的構成について説明する。
【0023】
[操作端末3]
図1に示すように、操作端末3は、操作制御部31、記憶部32、操作表示部33、及び通信部34などを備える情報処理装置である。操作端末3は、例えばタブレット端末で構成される。
【0024】
通信部34は、操作端末3を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数のコンバイン1などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0025】
操作表示部33は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。作業者は、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種の設定情報を登録する操作を行うことが可能である。また、作業者は、前記操作部を操作してコンバイン1に対する自動走行指示を行うことが可能である。さらに、作業者は、コンバイン1から離れた場所において、操作端末3に表示される走行軌跡により、圃場F内を自動走行するコンバイン1の走行状態を把握することが可能である。
【0026】
記憶部32は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部32には、操作制御部31に所定の制御処理を実行させるための制御プログラムが記憶されている。例えば、前記制御プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、操作端末3が備える所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部32に記憶される。なお、前記制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末3にダウンロードされて記憶部32に記憶されてもよい。また、記憶部32は、コンバイン1から送信される作業情報を記憶してもよい。
【0027】
また、記憶部32には、コンバイン1を自動走行させるための専用アプリケーションがインストールされている。操作制御部31は、前記専用アプリケーションを起動させて、コンバイン1に関する各種設定情報の設定処理、コンバイン1に対する自動走行指示などを行う。
【0028】
操作制御部31は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリーとして使用される。そして、操作制御部31は、前記ROM又は記憶部32に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末3を制御する。
【0029】
図1に示すように、操作制御部31は、設定処理部311、出力処理部312などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部31は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0030】
設定処理部311は、コンバイン1が自動走行を行うための各種の設定情報を設定する。具体的には、設定処理部311は、圃場に関する圃場情報を設定する。前記圃場情報は、例えば、圃場最外周の形状、大きさ、及び位置情報(座標など)、圃場最外周を構成する計測点データ、圃場で作業を行う圃場内作業領域の形状、大きさ、及び位置情報(座標など)などを含む。また、前記圃場情報は、圃場の住所、圃場情報の登録名及び登録日、圃場内作業領域の登録名及び登録日などを含む。設定処理部311は、作業者による圃場情報の登録操作を受け付けて圃場情報を設定する。
【0031】
また、設定処理部311は、作業経路及び旋回経路を含む目標経路を作成する。例えば、作業者は、設定画面(不図示)において、経路パターン、旋回タイプなどを選択する。前記経路パターンには、複数の行程を往復する「往復刈り」と、圃場内作業領域の内周に沿った行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す「回り刈り」とが含まれ、作業者はいずれかの経路パターンを選択する。また、作業者は、前記設定画面において、往復刈り及び回り刈りの作業で旋回する際の旋回半径を補正することが可能である。
【0032】
また、設定処理部311は、前記圃場情報、前記経路パターン、前記旋回タイプ、前記旋回半径などの情報に基づいて作業経路を作成する。設定処理部311は、作成した作業経路を圃場に対応付けて登録する。
【0033】
また、設定処理部311は、コンバイン1の走行速度(車速)を設定する。例えば、作業者は、前記設定画面において、作業時及び非作業時の直進車速、旋回車速、後進車速を設定することが可能である。
【0034】
設定処理部311は、上述の情報に加えて、コンバイン1の種類(最大刈取条数)、車幅、車両長さなど周知の情報を設定する。
【0035】
出力処理部312は、設定処理部311により設定された各種の設定情報をコンバイン1に出力する。また、出力処理部312は、作業者の操作に基づいて、作業開始指示及び作業終了指示をコンバイン1に出力する。
【0036】
操作制御部31が作業者から前記作業開始指示操作を受け付けると、出力処理部312は前記作業開始指示をコンバイン1に出力する。これにより、コンバイン1の制御装置11は、操作端末3から前記作業開始指示を取得する。制御装置11は、前記作業開始指示を取得すると、コンバイン1の作業及び走行を開始させる。また、操作制御部31が作業者から前記作業停止指示操作を受け付けると、出力処理部312は前記作業停止指示をコンバイン1に出力する。これにより、コンバイン1の制御装置11は、操作端末3から前記作業停止指示を取得する。制御装置11は、前記作業停止指示を取得すると、コンバイン1の作業及び走行を停止させる。
【0037】
なお、操作端末3は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末3は、操作制御部31によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0038】
[コンバイン1]
図2には、コンバイン1を側方から見た外観図を示している。図1及び図2に示すように、コンバイン1は、脱穀部4、選別部5、排藁処理部6、動力部8、操縦部9、制御装置11、記憶部12、測位ユニット13、走行部14、刈取部15、貯留部16、通信部17などを備える。コンバイン1は、いわゆる自脱型コンバインで構成される。コンバイン1は、走行部14によって走行しつつ、刈取部15によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部16に貯える。コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部6によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部14、刈取部15、貯留部16、脱穀部4、選別部5、及び排藁処理部6を駆動する。
【0039】
走行部14は、機体フレーム29の下方に設けられており、左右一対のクローラ式走行装置2と、トランスミッション(不図示)とを備える。走行部14は、動力部8のエンジン27から伝達される動力(例えば回転動力)によって、クローラ式走行装置2のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置2に伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0040】
刈取部15は、走行部14の前方に設けられ、刈取可能条数以内の条列の刈取作業を行う。刈取部15は、デバイダ28と、引起装置20と、切断装置23と、搬送装置7とを備える。デバイダ28は、圃場の穀稈を一条毎に分草して、刈取可能条数以内の所定条数分の穀稈を引起装置20へ案内する。引起装置20は、デバイダ28によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置23は、引起装置20によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置7は、切断装置23によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。
【0041】
脱穀部4は、刈取部15の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェーン18と、扱胴19とを備える。フィードチェーン18は、刈取部15の搬送装置7から搬送された穀稈を脱穀のために搬送し、更に脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部6へ搬送する。扱胴19は、フィードチェーン18によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0042】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、揺動選別装置21と、送風選別装置22と、穀粒搬送装置(不図示)と、藁屑排出装置(不図示)とを備える。揺動選別装置21は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。送風選別装置22は、揺動選別装置21によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置21及び送風選別装置22によって選別された穀粒を貯留部16へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置21及び送風選別装置22によって選別された藁屑等を機外へ排出する。
【0043】
貯留部16は、脱穀部4の右側方に設けられる。貯留部16は、貯留タンク(グレンタンク)24と、排出装置25とを備える。貯留タンク24は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置25は、オーガ等で構成され、圃場F内の所定の排出位置において、貯留タンク24に貯留されている穀粒を搬送車に排出する。
【0044】
排藁処理部6は、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部6は、排藁搬送装置(不図示)と、排藁切断装置(不図示)とを備える。排藁搬送装置は、脱穀部4のフィードチェーン18から搬送された排藁を排藁切断装置へ搬送する。排藁切断装置は、排藁搬送装置によって搬送された排藁を切断して機外へ排出する。
【0045】
動力部8は、走行部14の上方、かつ、貯留部16の前方に設けられる。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン27を備える。動力部8は、エンジン27が発生させた回転動力を、走行部14、刈取部15、貯留部16、脱穀部4、選別部5、及び排藁処理部6に伝達する。
【0046】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられる。操縦部9は、作業者が座る座席である運転席の周囲に、コンバイン1の走行を操縦するための操作具として、コンバイン1の機体の旋回を指示するためのハンドル、コンバイン1の前後進の速度変更を指示するための主変速レバー及び副変速レバー等を備える。コンバイン1の手動走行は、操縦部9のハンドル、主変速レバー、及び副変速レバーの操作を受け付けた走行部14によって実行される。また、操縦部9は、刈取部15による刈取作業、脱穀部4による脱穀作業、貯留部16の排出装置25による排出作業等を操作するための機構を備える。
【0047】
測位ユニット13は、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の自車位置を取得する。例えば、測位ユニット13は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位ユニット13の位置情報、すなわちコンバイン1の自車位置(計測点データ)を取得する。
【0048】
通信部17(図1参照)は、コンバイン1を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末3などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0049】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、制御装置11に後述の自動走行処理(図9参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介してコンバイン1にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末3から取得する各種設定情報が記憶される。
【0050】
制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリーとして使用される。そして、制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することによりコンバイン1を制御する。
【0051】
具体的には、図1に示すように、制御装置11は、走行処理部111、取得処理部112、対処処理部113などの各種の処理部を含む。なお、制御装置11は、前記CPUで前記自動走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記自動走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0052】
走行処理部111は、圃場Fに対して設定された目標経路に従ってコンバイン1を自動走行させる。具体的には、走行処理部111は、目標経路に含まれる、コンバイン1に所定の作業(刈取作業)を行なわせる複数の作業経路と、複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従ってコンバイン1を走行させる。例えば、走行処理部111は、圃場Fに対して設定される各種設定情報を操作端末3から取得する。また、走行処理部111は、刈取作業において、測位ユニット13からコンバイン1の自車位置を取得し、自車位置と目標経路に含まれる作業経路とに基づいて、コンバイン1が作業経路に沿って自動走行及び刈取作業を行うように動力部8、走行部14、及び刈取部15を制御する。
【0053】
例えば図4に示すように、走行処理部111は、コンバイン1を、作業経路r11に従って自動走行及び刈取作業させた後、次の作業経路r16に移行させるために、旋回経路を自動走行させる。具体的には、走行処理部111は、コンバイン1が作業経路r11の作業終了位置に到達すると刈取作業を停止させて直進経路r12を直進走行させる。次に走行処理部111は、コンバイン1が後進開始位置p1に到達すると停止させ、走行方向を後進方向に切り替える。走行処理部111は、コンバイン1を、後進旋回経路r13に従って後進旋回させる。
【0054】
ここで、取得処理部112は、コンバイン1が後進開始位置p1から後進旋回する場合に目標経路(後進旋回経路r13)からの位置ずれ量を取得する。例えば図7Aに示すように、コンバイン1が後進旋回中にコンバイン1の実際の走行経路r21が後進旋回経路r13から位置ずれしている場合に、取得処理部112は、走行経路r21と後進旋回経路r13との位置ずれ量を取得する。なお、取得処理部112は、測位ユニット13の測位情報と目標経路の位置情報(座標情報)とに基づいて前記位置ずれ量を算出することができる。
【0055】
対処処理部113は、コンバイン1が後進旋回中に後進旋回経路r13から位置ずれした場合に、コンバイン1を旋回経路に続く作業経路r16に進入させる対処処理を実行する。具体的には、対処処理部113は、取得処理部112により取得される前記位置ずれ量が閾値以上になった場合に前記対処処理を実行する。また、対処処理部113は、前記位置ずれ量が前記閾値以上になった場合に、後進旋回経路r13とは異なる経路であって作業経路r16に接続する対処経路を設定し、コンバイン1を前記対処経路に従って自動走行させる。
【0056】
例えば、対処処理部113は、前記位置ずれ量が前記閾値以上になった場合であって、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して平行(又は略平行)になった場合に、コンバイン1を停止させて作業経路r16に向けて前進走行させる。例えば図7Bに示すように、対処処理部113は、前記位置ずれ量が前記閾値以上になった場合であって、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して平行になった位置p21でコンバイン1を停止させ、作業経路r16に接続する対処経路r211を設定して、コンバイン1を対処経路r211に従って作業経路r16に向けて前進走行させる。コンバイン1を対処経路r211に従って自動走行させることにより、コンバイン1を緩やかな旋回走行によりスムーズに作業経路r16に進入させることができる。これにより、刈り残し領域B1(図5B参照)の発生を防ぐことができる。
【0057】
図7Aでは、コンバイン1が後進旋回経路r13よりも旋回半径が大きい方向に位置ずれした例を示しているが、コンバイン1が後進旋回経路r13よりも旋回半径が小さい方向に位置ずれした場合(図8A参照)も同様である。図8Aに示すように、コンバイン1が後進旋回経路r13に従って自動走行する場合において、コンバイン1の実際の走行経路r31が後進旋回経路r13から位置ずれしている場合に、取得処理部112は、走行経路r31と後進旋回経路r13との位置ずれ量を取得する。また図8Bに示すように、対処処理部113は、前記位置ずれ量が前記閾値以上になった場合であって、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して平行になった位置p31でコンバイン1を停止させ、作業経路r16に接続する対処経路r311を設定して、コンバイン1を対処経路r311に従って作業経路r16に向けて前進走行させる。コンバイン1を対処経路r311を自動走行させることにより、コンバイン1を緩やかな旋回走行によりスムーズに作業経路r16に進入させることができる。これにより、刈り残し領域B2(図6B参照)の発生を防ぐことができる。
【0058】
このように、対処処理部113は、コンバイン1が後進旋回中に目標経路(後進旋回経路r13)から位置ずれした場合には、コンバイン1を後進終了位置p2まで後進走行させることなく、途中で停止させて作業経路r16に向けて前進走行に切り替える対処処理を実行する。また、対処処理部113は、コンバイン1が作業経路r16にスムーズに進入可能な車両方位になる位置(平行位置)で停止させて前進走行に切り替える対処処理を実行する。
【0059】
なお、前記閾値は、コンバイン1が目標経路からの位置ずれにより緊急停止処理を実行する上限値よりも小さい値に設定される。また、前記閾値は、コンバイン1の車速に応じた値に設定されてもよい。例えば、前記閾値は、コンバイン1の車速が速いほど小さい値に設定され、コンバイン1の車速が遅いほど大きい値に設定されてもよい。
【0060】
また、前記閾値は、コンバイン1が後進旋回経路r13よりも旋回半径が大きい方向に位置ずれする場合(大回りの場合)(図7参照)と、コンバイン1が後進旋回経路r13よりも旋回半径が小さい方向に位置ずれする場合(小回りの場合)(図8参照)とで異なる値に設定されてもよい。例えば、コンバイン1は、刈取作業により貯留タンク24の貯留量が多くなると車体重量が増加し旋回走行時に大回りし易くなり、また走行安定性が低下し易くなる。そこで、制御装置11は、コンバイン1が大回り方向に位置ずれする場合(図7参照)の前記閾値を、コンバイン1が小回り方向に位置ずれする場合(図8参照)の前記閾値よりも小さい値に設定してもよい。このように、制御装置11は、大回り方向に位置ずれする場合に早めに前記対処処理を実行する構成としてもよい。なお、制御装置11は、貯留タンク24の貯留量が多いほど前記閾値を小さい値に設定するなど、貯留量に基づいて前記閾値を段階的に切り替えてもよい。
【0061】
[自動走行処理]
以下、図9を参照しつつ、自動走行システム10が実行する前記自動走行処理の一例について説明する。
【0062】
なお、本発明は、前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する自動走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記自動走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは制御装置11が前記自動走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該自動走行処理における各ステップを分散して実行する自動走行方法も他の実施形態として考えられる。
【0063】
ステップS1において、制御装置11は、作業開始指示を取得したか否かを判定する。制御装置11は、操作端末3から前記作業開始指示を取得すると(S1:Yes)、処理をステップS2に移行させる。制御装置11は、前記作業開始指示を取得するまで待機する(S1:No)。
【0064】
ステップS2において、制御装置11は、自動走行処理を実行する。具体的には、制御装置11は、操作端末3から取得する設定情報に含まれる目標経路に従って、コンバイン1を自動走行させる。例えば、制御装置11は、圃場F(図3参照)において、コンバイン1を目標経路に従って自動走行させながら作業(刈取作業)を実行させる。なお、制御装置11は、コンバイン1に搭乗する作業者による主変速レバーの操作を受け付け可能であってもよい。この場合、制御装置11は、作業者の操作に応じて、自動走行するコンバイン1の車速を変更する。
【0065】
次にステップS3において、制御装置11は、コンバイン1が後進旋回経路r13の開始位置(後進開始位置p1)(図4参照)に到達したか否かを判定する。制御装置11は、コンバイン1が後進開始位置p1に到達したと判定すると(S3:Yes)、処理をステップS4に移行させる。一方、制御装置11は、コンバイン1が後進開始位置p1に到達していないと判定すると(S3:No)、処理をステップS9に移行させる。
【0066】
ステップS4において、制御装置11は、コンバイン1に後進旋回経路r13(図4参照)に沿った後進走行を開始させる。
【0067】
次にステップS5において、制御装置11は、コンバイン1が後進旋回する場合に目標経路からの位置ずれ量を取得し、前記位置ずれ量が閾値以上であるか否かを判定する。
【0068】
例えば図7Aに示すように、コンバイン1が目標経路である後進旋回経路r13に従って自動走行する場合において、コンバイン1の実際の走行経路r21が後進旋回経路r13から位置ずれしている場合に、制御装置11は、走行経路r21と後進旋回経路r13との位置ずれ量を取得する。また図8Aに示すように、コンバイン1が目標経路である後進旋回経路r13に従って自動走行する場合において、コンバイン1の実際の走行経路r31が後進旋回経路r13から位置ずれしている場合に、取得処理部112は、走行経路r31と後進旋回経路r13との位置ずれ量を取得する。
【0069】
制御装置11は、前記位置ずれ量が前記閾値以上であると判定すると(S5:Yes)、処理をステップS6に移行させる。一方、制御装置11は、前記位置ずれ量が前記閾値未満であると判定すると(S5:No)、処理をステップS51に移行させる。
【0070】
ステップS51では、制御装置11は、コンバイン1の自動走行処理を継続する。すなわち、図4に示すように、制御装置11は、コンバイン1を、直進経路r12、後進旋回経路r13、直進経路r14、直進経路r15に従って旋回走行させて、次の作業経路r16に移行させる。制御装置11は、ステップS51の後、処理をステップS9に移行させる。
【0071】
これに対して、ステップS6では、制御装置11は、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して平行(又は略平行)であるか否かを判定する。制御装置11は、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して平行であると判定すると(S6:Yes)、処理をステップS7に移行させる。一方、制御装置11は、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して平行になるまで待機する(S6:No)。コンバイン1は、車両方位が作業経路r16に対して平行になるまで後進旋回を継続する。
【0072】
ステップS7において、制御装置11は、後進走行中のコンバイン1を停止させる。例えば図7Bに示すように、制御装置11は、コンバイン1を後進終了位置p2とは異なる位置であって車両方位が作業経路r16に対して平行になる位置p21で停止させる。また例えば図8Bに示すように、制御装置11は、コンバイン1を後進終了位置p2とは異なる位置であって車両方位が作業経路r16に対して平行になる位置p31で停止させる。
【0073】
次にステップS8において、制御装置11は、コンバイン1を前進走行に切り替える。例えば図7Bに示すように、制御装置11は、位置p21においてコンバイン1の走行方向を前進方向に切り替えて、作業経路r16に接続する対処経路r211を設定して、コンバイン1を対処経路r211に従って作業経路r16に向けて前進走行させる。また例えば図8Bに示すように、制御装置11は、位置p31においてコンバイン1の走行方向を前進方向に切り替えて、作業経路r16に接続する対処経路r311を設定して、コンバイン1を対処経路r311に従って作業経路r16に向けて前進走行させる。
【0074】
これにより、コンバイン1は、対処経路r211を走行して作業経路r16に進入し、作業経路r16に従って走行及び刈取作業を行う。
【0075】
次にステップS9において、制御装置11は、コンバイン1が作業終了位置G(図3参照)に到達したか否かを判定する。制御装置11は、コンバイン1が作業終了位置Gに到達したと判定すると(S9:Yes)、前記自動走行処理を終了する。制御装置11は、コンバイン1が作業終了位置Gに到達していないと判定すると(S9:No)、処理をステップS2に移行させる。制御装置11は、作業終了位置Gに到達するまで、上述の処理を繰り返し実行する(S9:No)。以上のようにして、自動走行システム10は、前記自動走行処理を実行する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム10は、予め設定される目標経路に従ってコンバイン1を自動走行させる。また、自動走行システム10は、目標経路に含まれる、コンバイン1に所定の作業を行なわせる複数の作業経路と、複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従ってコンバイン1を走行させる。また、自動走行システム10は、コンバイン1が後進旋回中に前記旋回経路に含まれる後進旋回経路から位置ずれした場合に、コンバイン1を前記旋回経路に続く作業経路に進入させる対処処理を実行する。
【0077】
上記構成によれば、コンバイン1が一の作業経路から次の作業経路に移行する際の旋回経路において、コンバイン1が予め設定された目標経路から位置ずれした場合に、コンバイン1を目標経路に依らず、次の作業経路に進入し易い経路(対処経路)を走行させることができる。これにより、コンバイン1が目標経路から位置ずれした場合であっても、次の作業経路にスムーズに移行させることができる。例えば、自動走行システム10は、コンバイン1が後進旋回経路r13から位置ずれした場合に、コンバイン1の車両方位が次の作業経路r16と平行になった時点で停止させて、作業経路r16に向けて前進走行に切り替える。これにより、コンバイン1を急峻な旋回走行ではなく緩やかな旋回走行により作業経路r16に進入させることができるため、刈り残し領域B1、B2(図5B及び図6B参照)の発生を防ぐことができる。すなわち、後進旋回経路を含む旋回経路においてコンバイン1を適切に旋回走行させることが可能となる。
【0078】
[他の実施形態]
本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
【0079】
他の実施形態として、図10及び図11に示すように、制御装置11は、コンバイン1の車両方位と作業経路r16とのなす角度d1が所定角度以内になった場合に、コンバイン1を停止させて作業経路r16に向けて前進走行させてもよい。すなわち、制御装置11は、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して平行になる前の位置p23(図10参照)又は平行になった後の位置p33(図11参照)でコンバイン1を停止させて作業経路r16に向けて前進走行させてもよい。これにより、コンバイン1をより緩やかな旋回走行(対処経路r223(図10参照)及び対処経路r323(図11参照))によりスムーズに作業経路r16に進入させることができる。
【0080】
なお、図10及び図11において、制御装置11は、コンバイン1の車両方位が作業経路r16の開始位置よりも直進経路r15側を向く位置で停止させることが望ましい。これにより、図10及び図11に示すように、作業経路r16の開始位置までの対処経路r223、r323を、緩やかな旋回経路に設定することができる。すなわち、制御装置11は、走行経路r21、r31の旋回半径、対処経路r223、r323の旋回半径に基づいて、位置p23、p33を設定してもよい。
【0081】
このように、本発明では、制御装置11は、コンバイン1が後進旋回中に後進旋回経路r13から位置ずれした場合であって、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して所定角度以内になった場合に、コンバイン1を停止させて作業経路r16に向けて前進走行させてもよい。なお、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して略平行になるときの角度d1は略0度に相当する(図7及び図8参照)。
【0082】
他の実施形態として、制御装置11は、コンバイン1が目標経路から位置ずれして停止させた後に所定距離だけ後進走行させてもよい。具体的には、制御装置11は、前記位置ずれ量が前記閾値以上になった場合であって、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して所定角度以内になった場合に、コンバイン1を作業経路r16に平行に所定距離だけ後進走行させた後に作業経路r16に向けて前進走行させてもよい。例えば図7Bにおいて、コンバイン1が停止した位置p21から作業経路r16の開始位置までの距離が短いと、対処経路r211に旋回半径の小さい旋回経路が設定される場合がある。この場合、コンバイン1の走行安定性が低下したり圃場Fが荒されたりする問題が生じる。
【0083】
そこで、制御装置11は、図12Aに示すように、コンバイン1を停止させた位置p21から作業経路r16に平行に所定距離だけ離れた位置p22まで直進経路r221を後進走行させる。そして、図12Bに示すように、制御装置11は、位置p22から作業経路r16に接続する対処経路r222を設定して、コンバイン1を対処経路r222に従って作業経路r16に向けて前進走行させる。これにより、コンバイン1をより緩やかな旋回経路に沿って作業経路r16まで走行させることができる。
【0084】
コンバイン1が後進旋回経路r13よりも小回りして位置ずれした場合も同様である。具体的には、制御装置11は、図13Aに示すように、コンバイン1を停止させた位置p31から作業経路r16に平行に所定距離だけ離れた位置p32まで直進経路r321を後進走行させる。そして、図13Bに示すように、制御装置11は、位置p32から作業経路r16に接続する対処経路r322を設定して、コンバイン1を対処経路r322に従って作業経路r16に向けて前進走行させる。これにより、コンバイン1をより緩やかな旋回経路に沿って作業経路r16まで走行させることができる。
【0085】
なお、制御装置11は、前記所定距離を、後進終了位置p2を通り作業経路r16の延長線に垂直な直線上の位置までの距離に設定してもよい。また、制御装置11は、対処経路r222、r322に含まれる旋回経路の旋回半径が所定半径以上となるように、前記所定距離を設定してもよい。
【0086】
また、上記構成において、制御装置11は、コンバイン1を停止させた位置p21、p31から作業経路r16の開始位置までの距離が所定距離未満である場合に、コンバイン1を位置p21、p31から後進走行させる構成としてもよい。
【0087】
他の実施形態として、制御装置11は、コンバイン1を停止させた位置p21、p31からコンバイン1を後進終了位置p2まで後進走行させた後に作業経路r16に向けて前進走行させてもよい。具体的には、制御装置11は、前記位置ずれ量が前記閾値以上になった場合であって、コンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して所定角度以内になった時点のコンバイン1の位置から後進終了位置p2までの距離が所定距離以上の場合に、コンバイン1を後進終了位置p2まで後進走行させた後に作業経路r16に向けて前進走行させてもよい。
【0088】
例えば図12Aにおいて、コンバイン1を停止させた位置p21から後進終了位置p2までの距離が所定距離以上の場合に、制御装置11は、コンバイン1を後進終了位置p2に向けて後進走行(直進及び旋回)させる。そして、制御装置11は、コンバイン1が後進終了位置p2に到達すると停止させて直進走行に切り替えて、直進経路r15を直進走行させて作業経路r16に進入させる。同様に、図13Aにおいて、コンバイン1を停止させた位置p31から後進終了位置p2までの距離が所定距離以上の場合に、制御装置11は、コンバイン1を後進終了位置p2に向けて後進走行(直進及び旋回)させる。そして、制御装置11は、コンバイン1が後進終了位置p2に到達すると停止させて直進走行に切り替えて、直進経路r15を直進走行させて作業経路r16に進入させる。なお、制御装置11は、前記所定距離を、後進終了位置p2においてコンバイン1の車両方位が作業経路r16に平行になる距離に設定する。
【0089】
すなわち、制御装置11は、コンバイン1を後進終了位置p2においてコンバイン1の車両方位が作業経路r16に対して平行になった後に作業経路r16に向けて前進走行させてもよい。これにより、目標経路から位置ずれしたコンバイン1を後進終了位置p2において目標経路に復帰させることができる。
【0090】
また、制御装置11は、コンバイン1を位置p21、p31から後進走行させる場合に、コンバイン1の車速を、後進旋回経路r13及び直進経路r14に対して予め設定された設定車速(後進旋回車速、後進直進車速)よりも遅い速度に設定してもよい。これにより、目標経路から位置ずれしたコンバイン1の走行安定性を向上させることができる。なお、制御装置11は、コンバイン1が目標経路から位置ずれした状態で走行する全ての経路において、設定車速(前進車速及び後進車速)よりも遅い速度に設定してもよい。
【0091】
上述の各実施形態では、コンバイン1が作業経路r11から作業経路r16に90度旋回(方向転換)する場合を例に挙げたが、本発明の旋回経路はこれに限定されず、コンバイン1が180度旋回する場合も同様に適用することができる。例えば、180度旋回する旋回経路に含まれる後進旋回経路において、コンバイン1の位置ずれが生じた場合に、制御装置11は、前記対処処理を実行することができる。すなわち、本発明は、コンバイン1が作業経路間を移動する際の旋回走行に後進旋回を含むケースに適用することができる。
【0092】
なお、本発明の対処処理には、コンバイン1を作業経路r16に進入させるために、前記目標経路から位置ずれした位置において、コンバイン1を信地旋回又は超信地旋回させる処理が含まれてもよい。
【0093】
また上述の各実施形態では、作業車両の一例としてコンバイン1を挙げたが、本発明の作業車両は、コンバイン1に限定されず、トラクタ、田植機、建設機械など様々な作業車両であってもよい。また、本発明の作業車両は、作業経路を手動走行(手動操舵)し、旋回経路を自動走行(自動操舵)する作業車両であってもよい。
【0094】
[発明の付記]
以下、上述の各実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0095】
<付記1>
予め設定される目標経路に従って作業車両を自動走行させる自動走行方法であって、
前記目標経路に含まれる、前記作業車両に所定の作業を行なわせる複数の作業経路と、前記複数の作業経路間を接続する旋回経路とに従って前記作業車両を走行させることと、
前記作業車両が後進旋回中に前記旋回経路に含まれる後進旋回経路から位置ずれした場合に、前記作業車両を前記旋回経路に続く第1作業経路に進入させる対処処理を実行することと、
を実行する自動走行方法。
【0096】
<付記2>
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合に、前記旋回経路とは異なる経路であって前記第1作業経路に接続する対処経路を設定し、前記作業車両を前記対処経路に従って走行させる、
付記1に記載の自動走行方法。
【0097】
<付記3>
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合であって、前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して所定角度以内になった場合に、前記作業車両を停止させて前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
付記1又は2に記載の自動走行方法。
【0098】
<付記4>
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合であって、前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して平行になった場合に、前記作業車両を停止させて前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
付記1~3のいずれかに記載の自動走行方法。
【0099】
<付記5>
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合であって、前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して所定角度以内になった場合に、前記作業車両を前記第1作業経路に平行に所定距離だけ後進走行させた後に前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
付記1~4のいずれかに記載の自動走行方法。
【0100】
<付記6>
前記位置ずれの位置ずれ量が閾値以上になった場合であって、前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して所定角度以内になった時点の前記作業車両の位置から前記旋回経路の終了位置までの距離が所定距離以上の場合に、前記作業車両を前記終了位置まで後進走行させた後に前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
付記1~5のいずれかに記載の自動走行方法。
【0101】
<付記7>
前記作業車両を前記終了位置において前記作業車両の車両方位が前記第1作業経路に対して平行になった後に前記第1作業経路に向けて前進走行させる、
付記6に記載の自動走行方法。
【0102】
<付記8>
前記作業車両を前記所定距離だけ後進走行させる場合に、前記作業車両の車速を、前記後進旋回経路に対して予め設定された設定車速よりも遅い速度に設定する、
付記6又は7に記載の自動走行方法。
【符号の説明】
【0103】
1 :コンバイン(作業車両)
3 :操作端末
10 :自動走行システム
11 :制御装置
31 :操作制御部
111 :走行処理部
112 :取得処理部
113 :対処処理部
311 :設定処理部
312 :出力処理部
F :圃場
r11 :作業経路
r12 :直進経路
r13 :後進旋回経路
r14 :直進経路
r15 :直進経路
r16 :作業経路(第1作業経路)
r21 :走行経路
r211 :対処経路
r221 :直進経路
r222 :対処経路
r223 :対処経路
r31 :走行経路
r311 :対処経路
r321 :直進経路
r322 :対処経路
r323 :対処経路
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B