(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129636
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】搭載構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240919BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038968
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】松竹 圭一朗
【テーマコード(参考)】
3D235
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB03
3D235BB17
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC14
3D235FF06
3D235FF07
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車室内の空間の圧迫を抑制可能であると共に、側面衝突による影響の抑制が可能な車両への電子機器の搭載構造を提供する。
【解決手段】搭載構造1は、複数の電子機器40を車両に搭載するものであり、車両は、車両の前後方向に延び、車幅方向に所定の間隔を空けて配置されたサイドメンバ5L,5Rと、サイドメンバ5L,5Rと交差する方向に配置されたクロスメンバ20F,20Rと、を有し、電子機器41、42は、クロスメンバ20Rを介して車幅方向に並べて配置され、車両に対して車幅方向の外側寄りに配置された電子機器42は、クロスメンバ20Rに支持された固定部50に保持されている。固定部50は、保持部51及び支持部55を有し、保持部51は、内側脚部52A及び外側脚部52Bを有する。外側脚部52Bは、内側脚部52Aより上下方向に長尺に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子機器を車両に搭載する搭載構造であって、
前記車両は、
当該車両の前後方向に延び、車幅方向に所定の間隔を空けて配置された一対のサイドメンバと、
前記サイドメンバと交差する方向に配置された少なくとも一つのクロスメンバと、
を有し、
複数の前記電子機器は、前記クロスメンバを介して前記車幅方向に並べて配置されており、
複数の前記電子機器のうち、前記車両に対して前記車幅方向の外側寄りに配置された少なくとも一つの前記電子機器は、前記クロスメンバに支持された固定部に保持されていること、を特徴とする搭載構造。
【請求項2】
前記固定部は、
前記クロスメンバと間隔を空けて少なくとも一つの前記電子機器を保持する保持部と、
前記保持部を支持すると共に、前記クロスメンバから、前記保持部に向けて突出する少なくとも一つの支持部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の搭載構造。
【請求項3】
前記保持部は、
保持した少なくとも一つの前記電子機器を介して前記車幅方向の両側において一対の脚部を有しており、
一対の前記脚部のうちの前記車幅方向の外側寄りに配置された外側脚部が、他方側の内側脚部よりも上下方向に長尺に形成されていること、を特徴とする請求項2に記載の搭載構造。
【請求項4】
前記固定部は、前記クロスメンバとの間に空間を有しており、
前記空間に、配線、又は冷却配管を配置可能であること、を特徴とする請求項2又は3に記載の搭載構造。
【請求項5】
前記外側脚部は、
前記内側脚部よりも曲げ強度が弱く形成されていること、を特徴とする請求項3に記載の搭載構造。
【請求項6】
前記支持部は、
前記保持部に保持された少なくとも一つの前記電子機器を介して前記車幅方向の外側寄りに配置された外側支持部と、
前記保持部に保持された少なくとも一つの前記電子機器を介して前記車幅方向の内側寄りに配置された内側支持部と、
を有しており、
前記外側支持部は、
前記内側支持部に対して前記車幅方向と交差する方向に傾斜するように配置されていること、を特徴とする請求項2又は3に記載の搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に電子機器を搭載するための搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーコントロールユニット(PCU)等の電子機器が搭載された電気自動車等の車両が知られている(例えば、特許文献1)。上述した特許文献1に記載の車両では、PCUがサイドメンバよりも上方に突出した空間部の内部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の車両は、上述した空間部の内部に複数の電子機器を上下方向に積層して配置しているため、電子機器の設置高さが高くなり、車室内の空間を圧迫する懸念がある。これに対し、上述した空間部の内部に複数の電子機器を車幅方向に並べて配置した場合、高さは抑えることができるものの、側面衝突を受けた場合、電子機器が側方から押され、他の電子機器等の部品に干渉する懸念がある。その結果、電子機器が破損し、正常に機能しない懸念がある。
【0005】
そこで、本発明は、車室内の空間の圧迫を抑制可能であると共に、側面衝突による影響の抑制が可能な車両への電子機器の搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の搭載構造は、複数の電子機器を車両に搭載する搭載構造であって、前記車両は、当該車両の前後方向に延び、車幅方向に所定の間隔を空けて配置された一対のサイドメンバと、前記サイドメンバと交差する方向に配置された少なくとも一つのクロスメンバと、を有し、複数の前記電子機器は、前記クロスメンバを介して前記車幅方向に並べて配置されており、複数の前記電子機器のうち、前記車両に対して前記車幅方向の外側寄りに配置された少なくとも一つの前記電子機器は、前記クロスメンバに支持された固定部に保持されていること、を特徴とするものである。
【0007】
上述した搭載構造は、複数の電子機器が車両における車幅方向に並べて配置されているので、車室内の空間の圧迫を抑制できる。また、上述した搭載構造では、複数の電子機器のうち、車両に対して車幅方向の外側寄りに配置された少なくとも一つの電子機器が、クロスメンバに支持された固定部に保持されている。したがって、上述した搭載構造は、車両が側面から衝突(以下、側突とも称する)を受けた際に、車幅方向に隣接する他の電子機器が、固定部に保持された電子機器と干渉して損傷することを抑制できる。ここで、電子機器は、例えば、電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)、パワーコントロールユニット(Power Control Unit:PCU)、エレクトリックサプライユニット(Electricity Supply Unit:ESU)などが挙げられる。また、固定部に保持される電子機器は、例えば、例えば充電ECUやバキュームポンプECUなどが挙げられる。
【0008】
(2)上述した本発明の搭載構造において、前記固定部は、前記クロスメンバと間隔を空けて少なくとも一つの前記電子機器を保持する保持部と、前記保持部を支持すると共に、前記クロスメンバから、前記保持部に向けて突出する少なくとも一つの支持部と、を有することを特徴とするとよい。
【0009】
上述した搭載構造は、支持部及び保持部によって少なくとも一つの電子機器がクロスメンバと間隔を空けて保持されているので、電子機器を比較的高い位置に配置することができる。そのため、上述した搭載構造によれば、電子機器の組み付けやメンテナンスの際の作業性向上が期待できる。また、上述した搭載構造によれば、保持部に保持された電子機器とクロスメンバとの間に空間が形成されるので、当該空間を利用して各種の部材を収容できる。そのため、上述した搭載構造は、電子機器の設置スペースを低減できる。また、上述した搭載構造は、保持部によって少なくとも一つの電子機器がクロスメンバと間隔を空けて保持されているので、車両が側突を受けた際に、保持部が衝撃を吸収(緩衝)することにより、車幅方向に隣接する他の電子機器の損傷を抑制できる。
【0010】
(3)本発明の搭載構造において、前記保持部は、保持した少なくとも一つの前記電子機器を介して前記車幅方向の両側において一対の脚部を有しており、一対の前記脚部のうちの前記車幅方向の外側寄りに配置された外側脚部が、他方側の内側脚部よりも上下方向に長尺に形成されていること、を特徴とするとよい。
【0011】
上述した搭載構造は、かかる構成とすることにより、車両が側突を受けた場合に外側脚部が内側脚部よりも先に変形する。そのため、上述した搭載構造は、車両が側突を受けた場合に、保持部に保持された電子機器が車幅方向の内側に倒れ込むのを抑制できる。すなわち、上述した搭載構造は、保持部に保持された電子機器が車両内側方向に押されることを抑制できる。これにより、上述した搭載構造は、車両内側に配置された電子機器(例えばESU)と、保持部に保持された電子機器(例えば充電ECU)と、が干渉することを抑制できる。
【0012】
(4)上述した本発明の搭載構造において、前記固定部は、前記クロスメンバとの間に空間を有しており、前記空間に、配線、又は冷却配管を配置可能であること、を特徴とするとよい。
【0013】
上述した搭載構造は、かかる構成とすることにより、固定部とクロスメンバとの間の空間に配線や冷却配管を配置することができる。したがって、上述した搭載構造は、空間を有効に利用できるので、電子機器の設置スペースを低減でき、車室内への圧迫を抑制できる。また、上述した搭載構造は、固定部の上部側に配線や冷却配管を通す必要がなくなるので、固定部の上部側を有効的に利用できる。
【0014】
(5)上述した本発明の搭載構造において、前記外側脚部は、前記内側脚部よりも曲げ強度が弱く形成されていること、を特徴とするとよい。
【0015】
上述した搭載構造は、かかる構成とすることにより、外側脚部を内側脚部よりも先に変形させることができる。これにより、上述した搭載構造は、側突時に、電子機器が車両内側方向に押されることを抑制できる。また、上述した搭載構造は、車両内側に配置された電子機器(例えばESU)と、保持部に保持された電子機器(例えば充電ECU)と、が干渉することを抑制できる。
【0016】
(6)上述した本発明の搭載構造において、前記支持部は、前記保持部に保持された少なくとも一つの前記電子機器を介して前記車幅方向の外側寄りに配置された外側支持部と、前記保持部に保持された少なくとも一つの前記電子機器を介して前記車幅方向の内側寄りに配置された内側支持部と、を有しており、前記外側支持部は、前記内側支持部に対して、前記車幅方向と交差する方向に傾斜するように配置されていること、を特徴とするとよい。
【0017】
上述した搭載構造は、外側支持部が、内側支持部に対して車幅方向と交差する方向に傾斜するように配置されているので、外側支持部の強度を保つことができる。したがって、上述した搭載構造は、車両が側突を受けた際に、保持部における外側脚部を外側支持部よりも先に変形させることができる。これにより、上述した搭載構造は、車幅方向に隣接する電子機器が、保持部に保持された電子機器と干渉して損傷することを抑制できる。
【0018】
(7)上述した本発明の搭載構造において、前記クロスメンバは、前記車幅方向の両端側が、それぞれブラケットを介して前記サイドメンバに支持されていること、を特徴とするとよい。
【0019】
上述した搭載構造は、クロスメンバが、ブラケットを介してサイドメンバに支持される構造としているので、ブラケットをサイドメンバに取り付けた後に、クロスメンバをブラケットに取り付けることができる。すなわち、上述した搭載構造は、クロスメンバを後から搭載できる。そのため、上述した搭載構造は、組立性を向上できる。ここで、ブラケットは、サイドメンバ及びクロスメンバに対して着脱可能なものとするとよい。
【0020】
(8)上述した本発明の搭載構造において、前記クロスメンバは、前記車幅方向の両端側が、それぞれブラケットを介して前記サイドメンバに支持されており、前記外側支持部が、前記ブラケット上に立設されると共に、前記ブラケットを介して前記クロスメンバに支持されていること、を特徴とするとよい。
【0021】
上述した搭載構造は、かかる構成とすることにより、外側支持部の組み付け性を向上させることができる。また、上述した搭載構造は、容易に外側支持部の取り付け方向等の調整を行うことができる。
【0022】
(9)上述した本発明の搭載構造において、前記保持部は、少なくとも一つの前記電子機器の上方側に懸架されていること、を特徴とするとよい。
【0023】
上述した搭載構造は、かかる構成とすることにより、保持部の下方側に電子機器を保持できる。そのため、上述した搭載構造は、保持部の上面側の空間を有効活用できる。
【0024】
(10)上述した本発明の搭載構造は、前記保持部に保持された少なくとも一つの前記電子機器が、充電ECUであり、前記保持部を介して、前記充電ECUの反対側にバキュームポンプECUが配置されており、前記バキュームポンプECUが、前記保持部に保持されていること、を特徴とするとよい。
【0025】
上述した搭載構造は、かかる構成とすることにより、充電ECUやバキュームポンプECUを効率的に配置することができる。すなわち、充電ECUやバキュームポンプECUを例えば、車体下方に配置されたバッテリーに近接して配置できる。これにより、車両の小型化が期待できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、車室内の空間の圧迫を抑制可能であると共に、側面衝突による影響の抑制が可能な車両への電子機器の搭載構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る搭載構造を採用した車両を図解的に示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る搭載構造を車両前方側から見た一部省略斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る搭載構造を車両前方側から見た一部省略正面図である。
【
図5】
図4において配線及び配管の一部を追加した一部省略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る搭載構造1の詳細を説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。また、本実施形態では、車両2が例えば、電気自動車である場合を例として説明する。
【0029】
図1に示すように、車両2は、電力により発生する回転動力を駆動輪2A,2Aに伝達して走行するものである。本実施形態では、車両2は、モータ3を走行用駆動源として搭載し、モータ3に電力供給することにより発生する回転動力を駆動輪2A,2Aに伝達して走行するものとされている。ここで、車両2には、例えば、キャブオーバー型の電気自動車やハイブリッド車両などが利用できる。
【0030】
車両2は、車体4の下部に、一対のサイドメンバ5L,5Rを備えている。サイドメンバ5L,5Rは、左右対称に構成され、車幅方向(左右方向)に互いに間隔を空けてそれぞれ前後方向に延びるように設けられている。サイドメンバ5L,5Rは、それぞれ長手方向両側に略平行に配置されているが、中間部において屈曲されており、車両前方側に向かうにつれて互いに近接するものとされている。
【0031】
サイドメンバ5L,5Rの間に形成された領域は、大別して後方側領域10、中間領域11、及び前方側領域12の3つの領域に分類することができる。後方側領域10は、車両2の後方側において、サイドメンバ5L,5Rが所定の間隔を介して略平行に配置された部分に形成された領域である。後方側領域10は、略矩形の領域とされている。
【0032】
後方側領域10から中間領域11に亘って、バッテリー6が配置されている。バッテリー6は、多数の電池セル6aを上下方向に単段であって、水平方向(本実施形態では車幅方向及び車両前後方向)に多数並べて配置したものとされている。バッテリー6は、車両後方側においてサイドメンバ5L,5Rの間に形成された略矩形状の後方側領域10から中間領域11の前端側に亘って配置されている。そのため、バッテリー6についても、電池セル6aを収容できる程度の高さ(厚み)であって、略矩形の外観形状とされている。したがって、車両2に搭載されているバッテリー6は、内部にデッドスペースを殆ど発生させることなく電池セル6aを配列したものであり、薄型でありながら高容量のものとされている。また、後方側領域10には、モータ3やトランスアクスル(図示せず)等が搭載されている。モータ3やトランスアクスルの詳細は、省略する。
【0033】
また、中間領域11は、サイドメンバ5L,5Rの中間部において両者の間に形成された領域である。中間領域11は、前方側に向かうにつれて後方側領域10におけるよりも間隔が狭まるようにサイドメンバ5L,5Rが傾斜した部分に形成されている。そのため、中間領域11は、後方側領域10とは異なり、略台形状の領域とされている。中間領域11には、後述する電子機器40が、搭載されている。また、中間領域11には、車両前方側に位置するクロスメンバ20Fと、クロスメンバ20Fと所定の間隔を空けて車両後方側に位置するクロスメンバ20Rと、が設けられている。バッテリー6は、クロスメンバ20F,20Rの下方側に配置されている。
【0034】
前方側領域12は、中間領域11よりも車両2の前方側において、サイドメンバ5R,5Lが略並行に配置された部分に形成された領域である。前方側領域12は、後方側領域10と同様に略矩形の形状とされているが、サイドメンバ5L,5Rの間隔が後方側領域10におけるよりも狭いため、後方側領域10よりも車幅方向に小さな領域とされている。
【0035】
クロスメンバ20F,20Rは、
図2に示すように、それぞれ中空の角柱として形成されている。クロスメンバ20F,20Rは、車幅方向に延びるように形成されており、サイドメンバ5L,5Rと交差する方向に架け渡されている。また、クロスメンバ20F及びクロスメンバ20Rの間には、支持枠21,21(
図3参照)が設けられている。
【0036】
クロスメンバ20F,20Rの両端側には、それぞれブラケット30が設けられている。言い換えると、クロスメンバ20F,20Rは、それぞれブラケット30を介してサイドメンバ5L,5Rに取り付けられている。
【0037】
ブラケット30は、クロスメンバ20F,20Rの両端部を上方側から覆う第一取付部31と、第一取付部31に対して下方側に屈曲された第二取付部32F,32Rと、を有している。ブラケット30は、クロスメンバ20F,20R及びサイドメンバ5L,5Rに対して着脱可能に形成されている。
【0038】
第一取付部31は、クロスメンバ20F,20Rの上面側に沿うように形成されている。第一取付部31は、クロスメンバ20F,20Rの両端部に被せた状態で、ボルト等を締結することにより、クロスメンバ20F,20Rの両端部に固定することができる。
【0039】
前方側のクロスメンバ20Fに取り付けられるブラケット30における第二取付部32Fは、L字形状に形成されており、サイドメンバ5L,5Rを載置することができる。両側の第二取付部32F,32Fは、サイドメンバ5L,5Rをそれぞれ載置した状態で、下方側からボルト等を締結することにより、サイドメンバ5L,5Rに固定することができる。これにより、サイドメンバ5L,5Rが、ブラケット30,30に支持される。このとき、クロスメンバ20Fの両端側における断面が、サイドメンバ5L,5Rと向き合うように配置される。そのため、車両2が側突を受けた際に、クロスメンバ20Fは、サイドメンバ5L,5Rが車幅方向内側に変形することを抑制することができる。
【0040】
後方側のクロスメンバ20Rに取り付けられる第二取付部32Rは、板状に形成されており、サイドメンバ5L,5Rの側面に当接することができる。両側の第二取付部32R,32Rは、サイドメンバ5L,5Rの側面に当接した状態で、側面側からボルト等を締結することにより、サイドメンバ5L,5Rに固定されている。これにより、サイドメンバ5L,5Rが、ブラケット30,30に支持される。このとき、クロスメンバ20Rの両端側における断面が、サイドメンバ5L,5Rと向き合うように配置される。そのため、車両2が側突を受けた際に、クロスメンバ20Rは、サイドメンバ5L,5Rが車幅方向内側に変形することを抑制することができる。
【0041】
図3に示すように、支持枠21,21は、クロスメンバ20F及びクロスメンバ20Rと交差する方向(車両2の前後方向)に架け渡されており、クロスメンバ20F及びクロスメンバ20Rを一体的に支持している。
【0042】
図2~
図4に示すように、搭載構造1は、上述した一対のサイドメンバ5L,5Rと、クロスメンバ20F,20Rと、を備えている。また、搭載構造1は、前記の他、クロスメンバ20F,20Rを介して車幅方向に並べて配置された複数の電子機器40と、クロスメンバ20Rに支持された固定部50等を備えている。
【0043】
搭載構造1を構成する電子機器40は、例えば、エレクトリックサプライユニット41(Electricity Supply Unit:ESU41とも称する)、電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECUとも称する)とされている。ここで、本実施形態ではECUとして、充電ECU42及びバキュームポンプECU43が搭載されている。ESU41は、車両2における充電機能や電力変換機能を担うものとされている。また、充電ECU42は、バッテリー6の充電制御を担うものとされ、バキュームポンプECU43は、ブレーキ装置等のポンプ等の制御を担うものとされている。
【0044】
ESU41は、支持枠21,21(クロスメンバ20F,20R)上に搭載されている。本実施形態では、ESU41は、車幅方向の中央寄りに配置されており、充電ECU42及びバキュームポンプECU43と隣接するように車幅方向に並べて配置されている。
【0045】
充電ECU42及びバキュームポンプECU43は、固定部50に保持されている。固定部50は、保持部51と、支持部55,55と、を備えている。
【0046】
支持部55,55は、板状部材を略コの字形状に屈曲させることにより形成されている。支持部55,55は、下方側に向けて略コの字形状に開脚している。支持部55,55は、車幅方向に所定の間隔(本実施形態では、充電ECU42の幅より少し幅広の間隔)を空けて、クロスメンバ20R上に立設されている。言い換えると、支持部55,55は、クロスメンバ20Rから後述する保持部51に向けて突出している。また、支持部55,55は、ESU41に対して、車幅方向の外側寄りに配置されている。ここで、車幅方向の内側寄り(ESU41寄り)に配置された支持部55を内側支持部55Aとも称し、車幅方向の外側寄り(サイドメンバ5L寄り)に配置された支持部55を外側支持部55Bとも称するものとする。
【0047】
内側支持部55Aは、外側支持部55Bよりも高くなるように形成されている。内側支持部55Aは、開脚側が、クロスメンバ20Rに直接的に溶接等により取り付けられている。内側支持部55Aは、開脚方向が、クロスメンバ20R(車幅方向)に沿うように配置された状態で、クロスメンバ20Rに立設されている。すなわち、内側支持部55Aにおける板状面が、クロスメンバ20Rに対して略直交する方向に配置されている。
【0048】
外側支持部55Bは、開脚側が、クロスメンバ20Rに取り付けられたブラケット30の第一取付部31上に溶接等により取り付けられている。すなわち、外側支持部55Bは、クロスメンバ20Rに対して間接的に取り付けられている。詳細は後述するが、外側支持部55Bは、開脚方向が、内側支持部55Aに対して、クロスメンバ20R(車幅方向)と交差する方向に傾斜するように配置されている。
【0049】
保持部51は、板状部材で形成され充電ECU42を保持可能な大きさに形成されている。保持部51は、充電ECU42上に懸架されており、充電ECU42を吊り下げた状態で保持するものとされている。言い換えると、保持部51は、複数の電子機器40のうち、車両2に対して車幅方向の外側寄りに配置された少なくとも一つの電子機器40(充電ECU42)を保持するものとされている。また、保持部51は、上面側でバキュームポンプECU43を保持するものとされている。すなわち、バキュームポンプECU43は、保持部51を介して、充電ECU42の反対側に配置されており、保持部51上に保持されている。したがって、上述した搭載構造1は、充電ECU42やバキュームポンプECU43を効率的に配置することができる。すなわち、充電ECU42やバキュームポンプECU43を例えば、車体下方や後方に配置されたバッテリー6に近接して配置できる。これにより、車両2の小型化が期待できる。また、保持部51は、保持した充電ECU42を介して車幅方向の両側において一対の脚部52,52を有している。なお、保持部51は、必要に応じて複数の部材で構成されていてもよい。
【0050】
本実施形態では、保持部51の車幅方向外側寄りに補機バッテリー9(
図1参照)が搭載されている。補機バッテリー9は、サイドメンバ5Rを介して保持部51の反対側に配置されている。したがって、本実施形態では、車両2が側突を受けた場合、まず、補機バッテリー9が、保持部51に向かって押し込まれる。
【0051】
脚部52,52は、保持部51の車幅方向両側に設けられている。ここで、車幅方向の内側寄り(ESU41寄り)に配置された脚部52を内側脚部52Aとも称し、車幅方向の外側寄りに配置された脚部52を外側脚部52Bとも称するものとする。内側脚部52A及び外側脚部52Bは、板状部材で形成されており、それぞれ保持部51から下方側に延びるように形成されている。
【0052】
内側脚部52Aは、下端側が内側支持部55Aの上端側に固定されている。これにより、保持部51における車幅方向の内側寄りが、クロスメンバ20R上に支持される。言い換えると、保持部51における車幅方向の内側寄りは、内側支持部55A及び内側脚部52Aを介して、クロスメンバ20R上に支持されている。すなわち、内側支持部55A及び内側脚部52Aは、間座として機能する。また、内側脚部52Aは、上下方向の長さが、充電ECU42の高さとほぼ同等になるように形成されている。
【0053】
外側脚部52Bは、内側脚部52A(充電ECU42の高さ)よりも上下方向に長尺に形成されている。外側脚部52Bは、下端側が外側支持部55Bの上端側に固定されている。これにより、保持部51における車幅方向の外側寄りが、クロスメンバ20R上に支持される。言い換えると、保持部51における車幅方向の外側寄りは、外側支持部55B及び外側脚部52Bを介して、クロスメンバ20R上に支持されている。すなわち、外側支持部55B及び外側脚部52Bは、間座として機能する。また、外側脚部52Bが内側脚部52Aよりも上下方向に長尺に形成され、外側支持部55Bが内側支持部55Aよりも上下方向に低く形成されていることにより、保持部51が略水平状態となるように支持される。これにより、車両2が側突を受けた際に、外側脚部52Bが、内側脚部52Aよりも先に変形する。そのため、上述した搭載構造1は、保持部51に保持された充電ECU42やバキュームポンプECU43が車幅方向内側に押し込まれることを抑制できる。具体的には、車両2が側突を受けた際に、充電ECU42やバキュームポンプECU43が下方側に落ち込むことにより、充電ECU42やバキュームポンプECU43が車幅方向内側に移行しない。
【0054】
また、上述したように、保持部51は、脚部52,52及び支持部55,55を介して支持されているので、保持部51(固定部50)とクロスメンバ20Rとの間に空間が形成される。本実施形態では、保持部51に保持された充電ECU42とクロスメンバ20Rとの間に空間60が形成されている。したがって、
図5に示すように、空間60を有効活用すべく、空間60に、ESU41や充電ECU42等の配線45やバッテリー6等の冷却配管8等が配置されている。
【0055】
このように、上述した搭載構造1は、空間60を有効に利用できるので、電子機器40の設置スペースを低減でき、車室内への圧迫を抑制できる。また、上述した搭載構造1は、固定部50の上部側に配線や冷却配管を通す必要がなくなるので、固定部50の上部側を有効的に利用できる。
【0056】
以上が、本発明の一実施形態に係る搭載構造1の構成であり、次に本発明の搭載構造1の作用効果について説明する。
【0057】
上述したように本発明の搭載構造1は、複数の電子機器40が車両2における車幅方向に並べて配置されているので、車室内の空間の圧迫を抑制できる。また、上述した搭載構造1では、複数の電子機器40のうち、車両2に対して車幅方向の外側寄りに配置された電子機器40(充電ECU42,バキュームポンプECU43)が、クロスメンバ20Rに支持された固定部50に保持されている。したがって、上述した搭載構造1は、車両2が側突を受けた際に、車幅方向に隣接する他の電子機器40(ESU41)が、固定部50に保持された電子機器40(充電ECU42)と干渉して損傷することを抑制できる。
【0058】
また、上述した搭載構造1は、支持部55,55及び保持部51によって電子機器40(充電ECU42,バキュームポンプECU43)がクロスメンバ20Rと間隔を空けて保持されているので、電子機器40を比較的高い位置に配置することができる。そのため、上述した搭載構造1によれば、電子機器40の組み付けやメンテナンスの際の作業性向上が期待できる。また、上述した搭載構造によれば、保持部51に保持された電子機器40とクロスメンバ20Rとの間に空間60が形成されるので、空間60を利用して各種の部材を収容できる。そのため、上述した搭載構造1は、電子機器40の設置スペースを低減できる。また、上述した搭載構造1は、保持部51によって少なくとも一つの電子機器40がクロスメンバ20Rと間隔を空けて保持されているので、車両2が側突を受けた際に、保持部51が衝撃を吸収(緩衝)することにより、車幅方向に隣接する他の電子機器40(ESU41)の損傷を抑制できる。
【0059】
また、上述した搭載構造1は、保持部51が、保持した少なくとも一つの電子機器40を介して車幅方向の両側において一対の脚部52,52を有しており、一対の脚部52,52のうちの車幅方向の外側寄りに配置された外側脚部52Bが、他方側の内側脚部52Aよりも上下方向に長尺に形成されている。
【0060】
したがって、上述した搭載構造1は、車両2が側突を受けた場合に外側脚部52Bが内側脚部52Aよりも先に変形する。そのため、上述した搭載構造1は、車両2が側突を受けた場合に、保持部51に保持された電子機器40(充電ECU42,バキュームポンプECU43)が車幅方向の内側に倒れ込むのを抑制できる。すなわち、上述した搭載構造1は、保持部51に保持された電子機器40が車両2内側方向に押されることを抑制できる。これにより、上述した搭載構造1は、車両2内側に配置された電子機器40(ESU41)と、保持部51に保持された電子機器40(充電ECU42,バキュームポンプECU43)と、が干渉することを抑制できる。
【0061】
また、上述した搭載構造1は、外側支持部55Bが、内側支持部55Aに対して車幅方向と交差する方向に傾斜するように配置されているので、外側支持部55Bの強度を保つことができる。したがって、上述した搭載構造1は、車両2が側突を受けた際に、保持部51における外側脚部52Bを外側支持部55Bよりも先に変形させることができる。これにより、上述した搭載構造1は、車幅方向に隣接する電子機器40(ESU41)が、保持部51に保持された電子機器40(充電ECU42,バキュームポンプECU43)と干渉して損傷することを抑制できる。
【0062】
また、上述した搭載構造1は、クロスメンバ20F,20Rが、ブラケット30を介してサイドメンバ5L,5Rに支持される構造としているので、ブラケット30をサイドメンバ5L,5Rに取り付けた後に、クロスメンバ20F,20Rをブラケット30に取り付けることができる。すなわち、上述した搭載構造1は、クロスメンバ20F,20Rを後から搭載できる。そのため、上述した搭載構造1は、組立性を向上できる。
【0063】
また、上述した搭載構造1では、外側支持部55Bが、ブラケット30上に立設されると共に、ブラケット30を介してクロスメンバ20Rに支持されている。したがって、上述した搭載構造1は、外側支持部55Bの組み付け性を向上させることができる。また、上述した搭載構造1は、容易に外側支持部55Bの取り付け方向等の調整を行うことができる。
【0064】
また、上述した搭載構造1では、保持部51が、少なくとも一つの電子機器40の上方側に懸架されているので、保持部51の下方側に電子機器40を保持できる。そのため、上述した搭載構造1は、保持部51の上面側の空間を有効活用できる。
【0065】
以上が、本発明の一実施形態及に係る搭載構造1の構成及び作用効果であるが、本発明の搭載構造1は、上述した実施形態には限定されず、各種の変形を行うことができる。
【0066】
本実施形態では、電子機器40として、ESU41、充電ECU42、及びバキュームポンプECU43が搭載されたものを例示したが、電子機器40には、各種のものが利用できる。例えば、電子機器40が、パワーコントロールユニット(Power Control Unit:PCUとも称する)であってもよい。また、保持部51(固定部50)に保持される電子機器40は、充電ECU42やバキュームポンプECU43だけではなく、各種の電子機器40(例えば、PCU、ESUなど)を利用できる。なお、保持部51に保持される電子機器40は、保持部51と隣接して配置される電子機器40よりも小型のものであることが望ましい。また、電子機器40を設ける個数は、上述した実施形態に限定されず、各種の個数とすることができる。また、保持部51に保持する電子機器40も、単数のものから複数のものまで、各種の個数で保持することができる。
【0067】
また、本実施形態では、車両2として電気自動車を例示したが、本発明の搭載構造1は、これには限定されず、各種の車両(ハイブリッド車、エンジン車等)に利用できる。また、車両2におけるサイドメンバ5L,5R、クロスメンバ20F,20Rの形状、大きさ、配置は、車両2の形態に応じて各種のものが利用できる。
【0068】
また、保持部51の形状や大きさは、上述した実施形態に限定されず、各種の形状や大きさに形成できる。例えば、保持部51が、2つ以上に分割形成されていてもよい。また、支持部55についても、各種の形状や大きさに形成できる。例えば、保持部51(脚部52)と支持部55が一体的に形成されていてもよい。また、保持部51による電子機器40の保持形態も、吊り下げによるものだけではなく、各種の保持形態で保持することができる。また、内側支持部55A及び外側支持部55B並びに内側脚部52A及び外側脚部52Bのそれぞれの上下方向の長さ(高さ)は、発明の目的が達成できる範囲で各種の長さ(高さ)に設定できる。
【0069】
また、本実施形態では、保持部51と内側脚部52A及び外側脚部52Bとが、分割形成されているが、保持部と内側脚部52A及び外側脚部52Bとが、一体的に形成されていてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、固定部50(保持部51)とクロスメンバ20Rとの間に空間60が形成されているが、空間60は、必要に応じて設ければよく、空間60を設けない構成とすることもできる。また、空間60を設ける場合において、空間60には、配線45や冷却配管8だけではなく、各種の部材が収容できる。
【0071】
また、本実施形態では、内側脚部52A及び外側脚部52Bの曲げ強度について特に指定していないが、例えば、外側脚部52Bは、内側脚部52Aよりも曲げ強度が弱く形成されていてもよい。
【0072】
上述した搭載構造1は、かかる構成とすることにより、外側脚部52Bを内側脚部52Aよりも先に変形させることができる。これにより、上述した搭載構造1は、側突時に、電子機器40が車両2の内側方向に押されることを抑制できる。また、上述した搭載構造1は、車両2内側に配置された電子機器40(例えばESU41)と、保持部51に保持された電子機器40(例えば充電ECU42)と、が干渉することを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態では、外側支持部55Bが、内側支持部55Aに対して車幅方向と交差する方向に傾斜するように配置されているが、外側支持部55B及び内側支持部55Aは、各種の方向に配置することができる。例えば、内側支持部55A及び外側支持部55Bが共に車幅方向に沿って同じ方向を向くように配置されていてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、クロスメンバ20F,20Rにおける車幅方向の両端側が、それぞれブラケット30を介してサイドメンバ5L,5Rに脱着可能に支持されているが、クロスメンバ20F,20Rが直接的にサイドメンバ5L,5Rに支持されていてもよい。また、サイドメンバ5L,5Rやクロスメンバ20F,20Rを設ける個数は、上述した実施形態に限定されず、車両2の形態に応じて適宜変更することができる。
【0075】
また、本実施形態では、外側支持部55Bが、ブラケット30上に立設されると共に、ブラケット30を介してクロスメンバ20Rに支持されているが、外側支持部55Bが、直接的にクロスメンバ20Rに支持されていてもよい。
【0076】
以上が、本発明に係る搭載構造の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の搭載構造は、電気自動車、ハイブリッド車、エンジン車等の各種の車両における電子機器の搭載に利用することができる。本発明の搭載構造は、キャブオーバー型の電気自動車やハイブリッド車両等の車両に好ましく利用できる。また、本発明の搭載構造は、車両への各種の電子機器(例えば、PCU、ESU、ECU等)の搭載に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 :搭載構造
2 :車両
5L:サイドメンバ
5R:サイドメンバ
8 :冷却配管
20F:クロスメンバ
20R:クロスメンバ
30 :ブラケット
31 :第一取付部
32F:第二取付部
32R:第二取付部
40 :電子機器
41 :エレクトリックサプライユニット(ESU、電子機器)
42 :充電ECU(電子機器)
43 :バキュームポンプECU(電子機器)
45 :配線
50 :固定部
51 :保持部
52 :脚部
52A:内側脚部
52B:外側脚部
55 :支持部
55A:内側支持部
55B:外側支持部
60 :空間