(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129651
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】磁性チップ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シート
(51)【国際特許分類】
B32B 7/025 20190101AFI20240919BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240919BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20240919BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20240919BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240919BHJP
【FI】
B32B7/025
B32B27/00 Z
H01F7/02 B
B68G7/05 Z
B68G7/05 C
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038987
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505084044
【氏名又は名称】株式会社型技術事務所モート
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】石黒 秀之
(72)【発明者】
【氏名】原 憲一
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岩沢 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 太
(72)【発明者】
【氏名】岩沢 良
【テーマコード(参考)】
3B087
4F100
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE10
4F100AB01B
4F100AB10B
4F100AB33B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK06A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07J
4F100AK12A
4F100AK12J
4F100AK42B
4F100AK68A
4F100AK68B
4F100AL09A
4F100AN00B
4F100BA02
4F100CA20A
4F100DG10A
4F100DG12B
4F100DG15B
4F100DJ01B
4F100EH171
4F100EH17A
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JB16A
4F100JG06
4F100JG06A
4F100JG06H
4F100YY00
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】生産性に優れる磁性チップ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シートを提供する。
【解決手段】発泡成形用布状物4の製造に用いられる、磁性を示す磁性チップ10であって、磁性チップ10は、発泡成形用布6側に配置する接合層1と、接合層1上に形成された保護層2とを備える。接合層1はホットメルト樹脂層であり、保護層2は、紙、金属箔、樹脂層、不織布、織布、ゴムシート、発泡シートおよびこれらの複合体から選択される少なくとも一層であり、保護層2が樹脂層の場合には、接合層1の環球法軟化点<前記保護層の環球法軟化点とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形用布状物の製造に用いられる、磁性を示す磁性チップであって、
発泡成形用布側に配置する接合層と、前記接合層上に形成された保護層とを備え、
前記接合層は、ホットメルト樹脂層であり、
前記保護層は、紙、金属箔、樹脂層、不織布、織布、ゴムシート、発泡シートおよびこれらの複合体から選択される少なくとも一層であり、
前記保護層が樹脂層の場合には、前記接合層の環球法軟化点<前記保護層の環球法軟化点である、磁性チップ。
【請求項2】
前記接合層の環球法軟化点が60℃以上、100℃以下である請求項1に記載の磁性チップ。
【請求項3】
前記保護層が樹脂層であり、当該樹脂層の環球法軟化点が100℃越えである請求項1に記載の磁性チップ。
【請求項4】
飽和磁化密度が、10~400ミリemu/cm2である請求項1記載の磁性チップ。
【請求項5】
発泡成形用布の表面の一部に、請求項1~4のいずれかに記載の磁性チップの少なくとも一部が含侵され固定されてなる発泡成形用布状物。
【請求項6】
発泡成形用布と、請求項1~4のいずれかに記載の磁性チップの前記接合層とが対向するように前記磁性チップを前記発泡成形用布上に配置する工程と、
加熱手段により、前記発泡成形用布に前記磁性チップを固定する固着工程とを備える発泡成形用布状物の製造方法。
【請求項7】
発泡成形用布の表面の一部に、加熱手段を用いて磁性チップを浸み込ませて、請求項5に記載の発泡成形用布状物を得る工程aと、
成形型の型面に、前記発泡成形用布状物を磁力によって仮固定する工程bと、
工程b後、前記成形型に発泡樹脂を投入して発泡させて得られる発泡成形体と、前記発泡成形用布状物とを一体化して発泡成形体複合物を得る工程cと、
工程c後、前記発泡成形体複合物を前記成形型から取り出す工程dと、を備える発泡成形体複合物の製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載の発泡成形用布状物を備える車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁性チップに関する。また、発泡成形用布状物およびその製造方法に関する。更に、発泡成形体複合物の製造方法および車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、フレームにスプリングが収容され、その上にクッション材が設けられている。このクッション材は、発泡ウレタンなどの発泡成形体、および発泡成形用布状物を有する。この発泡成形用布状物は、寒冷紗または不織布などが用いられ、発泡成形体の劣化防止、浸出防止およびスプリングとの接触による異音発生防止などのために、スプリングと当接する側に配置される。
【0003】
このようなクッション材は、立体成形した発泡成形用布状物を金型に仮固定し、その後、金型内に発泡樹脂を注入して発泡成形体を形成し、この発泡成形体と発泡成形用布状物を一体化する工程等を経て製造される。発泡成形用布状物の立体成形は、従来、裁断・縫製工程により行われてきたが、発泡成形用布状物の原反を成形型にセッティングし、加熱により立体的に加工成形する方法が知られている(特許文献1,2)。
【0004】
この立体成形した発泡成形用布状物を金型に効率よく仮固定させる方法として、金型内に永久磁石を埋設させ、所定の位置にホットメルト磁性物を固定した発泡成形用布状物を磁力によって仮固定する方法が提案されている(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-281768号公報
【特許文献2】特開2009-220445号公報
【特許文献3】特開2015-048544号公報
【特許文献4】特開2018-3199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発泡成形用布状物を磁力により金型に仮固定する方法によれば、発泡成形用布状物の位置ズレおよび剥離を効果的に防止できるという利点がある。しかしながら、市場では、更に生産性に優れる発泡成形用布状物が求められている。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、生産性に優れる磁性チップ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の磁性チップ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シートを提供する。
[1]: 発泡成形用布状物の製造に用いられる、磁性を示す磁性チップであって、
発泡成形用布側に配置する接合層と、前記接合層上に形成された保護層とを備え、
前記接合層は、ホットメルト樹脂層であり、
前記保護層は、紙、金属箔、樹脂層、不織布、織布、ゴムシート、発泡シートおよびこれらの複合体から選択される少なくとも一層であり、
前記保護層が樹脂層の場合には、前記接合層の環球法軟化点<前記保護層の環球法軟化点である、発泡成形用布状物用の磁性チップ。
[2]: 前記接合層の環球法軟化点が60℃以上、100℃以下である[1]に記載の磁性チップ。
[3]: 前記保護層が樹脂層であり、当該樹脂層の環球法軟化点が100℃越えである[1]または[2]に記載の磁性チップ。
[4]: 飽和磁化密度が、10~400ミリemu/cm2である[1]~[3]のいずれかに記載の磁性チップ。
[5]: 発泡成形用布の表面の一部に、[1]~[4]のいずれかに記載の磁性チップの少なくとも一部が含侵され固定されてなる発泡成形用布状物。
[6]: 発泡成形用布と、[1]~[4]のいずれかに記載の磁性チップの前記接合層とが対向するように前記磁性チップを前記発泡成形用布上に配置する工程と、
加熱手段により、前記発泡成形用布に前記磁性チップを固定する固着工程とを備える発泡成形用布状物の製造方法。
[7]: 発泡成形用布の表面の一部に、加熱手段を用いて磁性チップを浸み込ませて、請求項5に記載の発泡成形用布状物を得る工程aと、
成形型の型面に、前記発泡成形用布状物を磁力によって仮固定する工程bと、
工程b後、前記成形型に発泡樹脂を投入して発泡させて得られる発泡成形体と、前記発泡成形用布状物とを一体化して発泡成形体複合物を得る工程cと、
工程c後、前記発泡成形体複合物を前記成形型から取り出す工程dと、を備える発泡成形体複合物の製造方法。
[8]: [5]に記載の発泡成形用布状物を備える車両用シート。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、生産性に優れる磁性チップ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シートを提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る磁性チップの一例を示す模式的断面図。
【
図2】実施形態に係る発泡成形用布状物の一例を示す部分拡大断面図。
【
図3】実施形態に係る発泡成形用布状物の一例を示す模式的斜視図。
【
図4】変形例に係る磁性チップの一例を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示について詳細に説明する。なお、本開示の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本開示の範疇に含まれることは言うまでもない。本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含む。本明細書において「フィルム」、「シート」および「テープ」は同義であり、厚みや形状によって区別されない。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0012】
本明細書において、「環球法軟化点」は、JIS K 6863に準拠して測定される温度を意味する。更に、「発泡成形体」とは、所定の樹脂から構成される発泡体をいう。発泡形状は特に限定されないが、球状気泡、略球状気泡、涙型気泡等が例示できる。各気泡が部分的に連結していてもよい。「発泡成形用布状物」とは、前記発泡成形体と一体化して発泡成形体複合物を得るための布状物をいう。「発泡成形用布」とは、発泡成形用布状物を製造するために用いる布をいい、「発泡成形体複合物」は少なくとも発泡成形体と発泡成形用布状物を一体化して得られたものをいう。「熱可塑性樹脂」とは、加熱により溶融成形可能な特性を有する樹脂をいう。また、「ホットメルト」とは、常温で固体あるいは粘稠な状態にあり、加熱により溶融して軟化、流動状態あるいは液状となる性質をいう。また、「メルトフローレイト」(以下、MFRともいう)は、溶融状態にある樹脂の流動性を示す尺度の一つであり、JIS K7210に準拠して190℃、21.168Nの条件で測定した値である。
【0013】
1.磁性チップ
本開示の磁性チップ(以下、本磁性チップともいう)は、種々の用途に適用できる。本磁性チップは被着体に含浸、塗工、積層する用途等として利用できる。特に、後述する発泡成形体複合物の製造に用いるための発泡成形用布状物の製造用途に好適である。発泡成形体複合物は、例えば、車両用などのシートの部材として好適である。
【0014】
図1に、本実施形態の発泡成形用布状物用の磁性チップの一例を示す模式的断面図を示す。同図に示すように、磁性チップ10は、接合層1と、接合層1上に形成された保護層2とを備える。接合層および保護層は、それぞれ独立に単層でも、2層以上からなる複層であってもよい。本磁性チップは、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において接合層および保護層以外の層を有していてもよい。
【0015】
本磁性チップは磁力を示すチップをいい、磁石と引き合う磁性を有する。但し、磁力を要する用途の使用後は、酸化等により磁性を示さないものとなっていてもよい。本磁性チップの飽和磁化密度は、要求性能に応じて適宜設計すればよい。後述する発泡成形用布状物の製造において、皺、たるみ、ずれなどを防止できる磁力を有していればよい。例えば、10~400ミリemu/cm2程度である。この範囲とすることにより、磁石への密着性と、成形型への追従性の両立を図ることができる。飽和磁化密度は、例えば、磁性粉末の種類および含有率により調整できる。
【0016】
本磁性チップは、少なくともいずれかの層が磁性を示す。接合層を磁性層とする態様、保護層を磁性層とする態様、接合層および保護層ではない第三層を磁性層とする態様およびこれらを任意に組み合わせた態様がある。これらの中でも、接合層のホットメルト磁性層に磁性粉末(C)を含有させる態様が接合層又は保護層を薄膜にできる観点で好適である。
【0017】
接合層1は、ホットメルト樹脂層であり、常温では固体であるが加熱により軟化あるいは液状化して、流動可能となる性質を有している。
保護層2は、紙、金属箔、樹脂層、不織布、織布、ゴムシート、発泡シートおよびこれらの複合体から選択される少なくとも一層である。保護層2が樹脂層の場合には、「接合層1の環球法軟化点<保護層2の環球法軟化点」を満たす。ここでいう「保護層の環球法軟化点」は、軟化点が観測されない(軟化点が高くて測定できない)場合を含む。なお、保護層が複層の場合において、その一層が樹脂層の場合も同様である。
【0018】
本磁性チップの形状は特に限定されない。予め所望の任意の形状(例えば、矩形状、円形状、ドーナツ状)に裁断されたものであってもよいし、シート状あるいはテープ状のものを使用前あるいは使用時に所望の形状に切断して用いてもよい。
【0019】
本磁性チップの厚みは用途に応じて適宜設計できる。例えば、100~1100μm程度である。追随性が要求される場合には200~600μmが好ましい。本磁性チップは使用前まで、又は製造後等の任意のタイミングまで離型層が積層されていてもよい。
【0020】
従来、発泡成形用布状物の製造工程において、磁性チップの発泡成形用布への含浸性を良好に保ちながら、発泡成形複合物製造時の金型などへの磁性チップの付着の防止を両立することが難しく、生産性に課題があった。本開示の磁性チップによれば、発泡成形用布側にホットメルト樹脂層からなる接合層を有するので、熱、超音波処理、電磁誘導加熱などにより容易に不織布などの発泡成形用布に含浸させることができる。また、紙、金属箔、および「接合層の環球法軟化点<保護層の環球法軟化点」の条件を満たす樹脂層、不織布、織布、ゴムシート、発泡シートおよびこれらの複合体から選択される少なくとも一層からなる保護層を有するので、生産性を大幅に高めることができる。以下、各層について詳述する。
【0021】
1-1.接合層
接合層1は、熱可塑性樹脂(A)(以下、成分(A)ともいう)をバインダーとするホットメルト樹脂層である。
【0022】
接合層の環球法軟化点は60~100℃の範囲が好ましい。60℃以上とすることにより磁性チップの取り扱い性が容易になる。また、100℃以下とすることにより、不織布への浸み込み性(含浸性)が良好になる。
【0023】
接合層1の厚みは特に限定されない。強度および柔軟性を考慮して適宜設計すればよい。例えば50~1000μm程度である。
【0024】
接合層の190℃、21.168NでのMFRは、0.1~1000g/10分が好ましい。前記範囲とすることにより発泡成形用布状物への含浸性を効果的に高められる。また、後述する発泡成形用布状物の製造において生産性を格段に高められる。MFRのより好適な範囲は1~500g/10分で、さらに好ましくは3~400g/10分ある。接合層のMFRは、用いる樹脂の種類により調整できる。
【0025】
熱可塑性樹脂(A)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、セロハン、スチレン系エラストマー(スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(以下SBSと略記することもある)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー(以下SEBSと略記することもある)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロックコポリマー(以下SEPSと略記することもある)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(以下SISと略記することもある)、スチレン-ブチレン・ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(以下SBBSと略記することもある)等が例示できる。熱可塑性樹脂(A)は一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0026】
接着性および付着性の観点からは、熱可塑性樹脂(A)はエチレン-酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましい。エチレン-酢酸ビニル共重合体は、エチレン単量体と、酢酸ビニル単量体との共重合により得られる共重合体である。ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。エチレン-酢酸ビニル共重合体は、本開示の特性を損なわない範囲において、エチレン単量体および酢酸ビニル単量体以外のその他の単量体を含んでいてもよい。
【0027】
接合層を熱可塑性樹脂(A)のみにより構成してもよいが、磁性粉末(C)(以下、成分(C)ともいう)を含有する磁性層としてもよい。また、耐熱性を高め、流動性を高めるために、ワックス(B)(以下、成分(B)ともいう)および/又はプロセスオイル(D)(以下、成分(Dともいう)を添加してもよい。
【0028】
磁性粉末(C)は、磁石と引き合う磁性を有する粉末であり、好ましくは、鉄、ケイ素鉄、パーマロイ、ソフトフェライト、センダスト、パーメンジュール、電磁ステンレス、アモルファス、ナノ結晶などの軟磁性体を示す粉末状の磁性体が挙げられる。磁性チップにおいて必要とされる磁力に応じて磁性粉末(C)の種類、含有量等を適宜設計すればよい。
【0029】
磁性粉末(C)の平均粒径は用途により設計可能である。例えば1~500μmである。この範囲とすることにより、磁性粉末(C)の分散性を良好に保ちつつ、不織布に染みこませたときに磁性粉末(C)の沈降速度を適切に保ち、均質性・含浸性を高められる。磁性粉末(C)の平均粒径のより好ましい範囲は15~100μmである。
【0030】
ワックス(B)の具体例として、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、もしくはこれらのワックスの酸化物が挙げられる。また、エチレン-アクリル酸共重合体ワックス、エチレン-メタクリル酸共重合体ワックスも例示できる。ワックス(B)は単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。特に好ましくは、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスである。
【0031】
プロセスオイル(D)は、ゴム、熱可塑性エラストマー等の可塑剤として一般的に使用されるオイル、いわゆる石油精製等において生産されるプロセスオイルであり、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどが挙げられる。プロセスオイル(D)は、主にスチレンブロック共重合体と用いられることが多く、スチレンブロック共重合体の軟化剤として用いられる。
【0032】
ワックス(B)の好適例として、分子量300~10,000のJISK7210に準拠したMFRが測定できないほどの低粘度体が挙げられる。ワックス(B)の動粘度(JIS K2283)は30mm2/s以下が好ましく、20mm2/s以下がより好ましく、10mm2/s以下が更に好ましい。
【0033】
ワックス(B)の融点は、例えば70~160℃であり、接合層の軟化点を最適にする観点からは、融点が80~150℃が好ましく、より好ましくは90~140℃であり、更に好ましくは100~130℃である。融点はDSC法で測定される温度である。
【0034】
接合層において成分(C)を含む場合、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計100質量%中に、成分(A)を20~80質量%、成分(B)を0~8質量%、成分(C)を15~80質量%、成分(D)を0~5%含有させることができる。成分(A)を20~80質量%とすることにより、加工性(成形性)を良好に保ちつつ、磁石への密着性を良好に保つことができる。成分(B)を8質量%以下とすることにより、型追従性を良好に保つことができる。成分(B)のより好適な範囲は2~8質量%であり、更に好適な範囲は3~7質量%である。成分(C)を15~80質量%とすることにより磁石への密着性を良好に保つことができる。成分(D)を0~5質量%とすることによりスチレンエラストマーを軟化させ、発泡成形用布への含侵性を高められる。
【0035】
接合層には、種々の目的、例えば、磁性粉末(C)を添加する場合にはその分散性・流動性を高める目的、あるいは接合層の含浸性を高める目的に応じて、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において他の添加剤を混合できる。他の添加剤としては、鉱物油軟化剤、ガラスフィラー、シリカ繊維、流動パラフィンが例示できる。
【0036】
1-2.保護層
保護層2は、紙、金属箔、樹脂層、不織布、織布、ゴムシート、発泡シートが例示できる。また、これらを任意に組み合わせた複合体も好適である。保護層は、単層でも、同一種または異種の2層以上が積層された複層でもよい。保護層は、接合層のように、常温では固体であるが加熱により軟化あるいは液状化して、流動可能となる性質を有していてもよいし、加熱しても固体状態を保つフィルム等でもよい。
【0037】
前記紙としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が例示できる。
前記金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔等が例示できる。
【0038】
前記樹脂層は、熱可塑性樹脂および/又は硬化性樹脂を主成分とする層である。熱可塑性樹脂(A)のMFRは、例えば0.1g/10分以上、1000g/10分以下である。好ましくは、1g/10分以上、500g/10分以下、更に好ましくは、3g/10分以上、400g/10分以下である。MFRはJISK7210に準拠して測定される、190℃、21.168N荷重での10分間の流出量(g/10分)である。
【0039】
前記硬化性樹脂は、熱、光等により硬化性を示す樹脂であり、硬化反応を促進することにより、樹脂同士または樹脂と硬化性化合物が架橋し得る樹脂である。生産性の観点からは熱硬化性樹脂が好ましい。硬化性樹脂は公知の熱硬化性樹脂を使用できる。好適な例としてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂が挙げられる。
【0040】
不織布としては、マニラ麻を含む不織布等の耐熱性を有する天然繊維による不織布、ポリプロピレン樹脂不織布、ポリエチレン樹脂不織布、エステル系樹脂不織布等の合成樹脂不織布が例示できる。
織布としては、繊維状物質の単独または混紡等による織物が例示できる。繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維が例示できる。
ゴムシートとしては、天然ゴムシート、ブチルゴムシートが例示できる。
発泡体シートとしては、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリアクリルシート、発泡ポリオレフィンシートが例示できる。
また、これらを任意に組み合わせた複合体であってもよい。更に、これらを任意に組み合わせた複層としてもよい。
【0041】
保護層が樹脂層の場合には、前述したように「接合層の環球法軟化点<保護層の環球法軟化点」とする。保護層を接合層の環球法軟化点よりも高く設定することにより、後述する発泡成形用布状物の製造工程において、金型等への樹脂層の付着の抑制と、発泡成形用布への優れた含浸性の両立を図ることができる。
【0042】
水蒸気加熱などの製造プロセスの設計自由度を高める観点からは、保護層が樹脂層の場合、この樹脂層の環球法軟化点は100℃越えであることが好ましい。前記温度は110℃以上がより好ましく、120℃以上が更に好ましい。環球法軟化点の上限値は特に限定されないが、柔軟性および追随性が必要とされる用途の場合には140℃以下が好適である。軟化点は、用いる樹脂の種類、分子量などにより容易に調整できる。
【0043】
保護層を磁性層としてもよい。磁性層とする方法として、磁性粉末(C)を保護層に混練させる方法が簡便である。耐熱性を高める観点、磁性粉末(C)の均質性を高める観点から、ワックス(B)および/又はプロセスオイル(D)を含有していてもよい。磁性粉末(C)、ワックス(B)およびプロセスオイル(D)の好適な種類、平均粒径等は接合層で述べた通りである。
【0044】
保護層において成分(C)を含む場合、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計100質量%中に、成分(A)を20~80質量%、成分(B)を0~8質量%、成分(C)を15~80質量%、成分(D)を0~5%含有させることができる。成分(A)を20~80質量%とすることにより、加工性(成形性)を良好に保ちつつ、磁石への密着性を良好に保つことができる。成分(B)を8質量%以下とすることにより、型追従性を良好に保つことができる。成分(B)のより好適な範囲は2~8質量%であり、更に好適な範囲は3~7質量%である。成分(C)を15~80質量%とすることにより磁石への密着性を良好に保つことができる。成分(D)を0~5質量%とすることによりスチレンエラストマーを軟化させ、保護層の柔軟性および追随性を高められる。
【0045】
保護層が樹脂層の場合、この樹脂層100質量%において、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計の含有率は60~100質量%であることが好ましい。この範囲とすることにより、接着性をより効果的に引き出すことができる。より好適な範囲は70~100質量%であり、更に好適な範囲は80~100質量%である。
【0046】
保護層の厚みは特に限定されない。強度および柔軟性を考慮して適宜設計すればよい。例えば10~1000μm程度である。
【0047】
2.磁性チップの製造方法
本磁性チップの接合層のホットメルト樹脂組成物は、原料を混合分散することにより得られる。成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する場合、例えば、撹拌機を備えた溶融釜で熱可塑性樹脂、必要に応じてワックス(B)を溶融したものに磁性粉末(C)を混合分散することにより調製できる。成分(B)に代えて、又は併用して成分(D)を用いる場合も同様に調製できる。また、配合成分を押出機で混合分散させ、溶融した混合物を押出機の先端のノズルから押出すことにより製造してもよい。配合成分を混合後、所望の形状(例えば、顆粒状、ペレット状、シート状、網状、布状、ブロック状)に成形したものを用いてもよい。シートは、例えば、離型シート上に接合層のホットメルト樹脂組成物を塗工して所定の塗布厚を有する接合層を形成する工程等を経て得ることができる。接合層の塗工は加熱して軟化あるいは液状化させ、コーターを用いて層状に形成する方法が例示できる。コーターとして、ブレードコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビヤコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイコーターなどが挙げられる。粘度を調整するために、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤を用いた場合には、温風乾燥炉にて有機溶剤を除去する。磁性チップを形成後、離型シートを剥離してもよいし、使用直前まで離型シートを積層させておいてもよい。
【0048】
本磁性チップの保護層の樹脂組成物は、接合層のホットメルト樹脂組成物と同様の方法を含む、公知の方法により製造できる。保護層は市販品をそのまま用いてもよい。
【0049】
例えば、保護層として紙を用いる場合、接合層のホットメルト樹脂組成物のシートと、保護層(紙、金属箔、樹脂層、不織布等)を接合することにより磁性チップを得てもよい。接合するために、易接着層を用いてもよいし、ラミネートしてもよい。また、保護層上に直接、ホットメルト樹脂組成物を塗工してもよい。また、保護層の組成物と接合層の組成物を溶融押出により接合してもよい。
【0050】
本磁性チップは、少なくとも接合層が熱、超音波、電磁誘導加熱などの加熱手段によって溶融、流動化するので、加熱手段により各種被着体に容易に含浸させることができる。不織布などの被着体の目標の位置に、所望の形状の磁性体を容易に固定できる。
【0051】
3.発泡成形用布状物
本開示の発泡成形用布状物(以下、本布状物ともいう)は、発泡成形用布の表面の一部に、磁性チップの一部が含浸せしめられ、固定されてなるものである。発泡成形用布状物の布は特に限定されないが、コスト、軽量性を考慮すると不織布が好適である。
図2に、磁性チップの一部が染みこんで固定されてなる本布状物の状態を説明するための模式的部分拡大図を示す。同図に示すように、発泡成形用布状物4は、磁性チップが不織布6の表面の一部に染みこみ、磁性チップ層11として固定化されてなる。浸み込み、固定化されているとは、磁性チップ10の少なくとも接合層1が加熱溶融されて軟化した状態で、不織布6の特定箇所の表面に軟化した磁性チップが浸透した後、風乾又は冷却されて、固形状態となり、固定化された状態をいう。磁性チップ層11は、
図2に示すように、不織布の厚み方向の一部にまで浸透する態様の他、不織布の最下部まで含浸されていてもよい。また、本磁性チップ層が不織布の表面から凸状に形成されていてもよいし(
図2参照)、本磁性チップ層11の表面と不織布6の表面が実質的に一致していてもよい。
【0052】
不織布の種類は限定されないが、有機繊維が好適に用いられる。不織布を構成する繊維の種類、太さは特に制限されない。例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維;ポリエチレン、ポリプロピレン(ホモ、ランダムなどコポリマーであってもよい)などのポリオレフィン繊維;ポリアミド繊維;などを単独で、又は複数の種類の有機繊維を組み合わせて用いることができる。好ましくは、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、融点が110~160℃の低融点ポリエステル繊維が例示できる。また、ポリエステル/ポリエチレン、ポリエステル/低融点ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエチレンのバイコンポーネント繊維を用いてもよい。また、構成する有機繊維の繊維径は5~30μm、繊維(太さ)は1~33dtex程度が好ましい。不織布は、単層品に限らず、それらを積層した複層品であってもよい。不織布の厚さは、例えば、0.5~10mm程度である。
【0053】
4.発泡成形用布状物の製造方法
本開示の発泡成形用布状物の好適な製造方法について以下に説明する。但し、以下の製造方法に限定されず、種々の方法で製造できる。
【0054】
発泡成形用布(例えば不織布)と、本磁性チップの接合層とが対向するように磁性チップを配置する。次いで、熱、超音波処理、電磁誘導加熱などにより、発泡成形用布に本磁性チップを固定する固着工程と、本磁性チップを固定した本布状物を成形型にセットし、加熱により立体的に加工成形する工程を有する。このときの加熱温度は、例えば95℃以上120℃以下程度である。以下、発泡成形用布として不織布を例に取り説明する。
【0055】
固着工程は、不織布の原反をセットし、その上に本磁性チップを配置し、超音波加熱などの加熱手段により本磁性チップの少なくとも接合層を溶融し、不織布に磁性チップの一部を浸み込ませ、冷却する工程等により行われる。離型層を介して磁性チップを超音波やアイロンなどの加熱手段により、少なくとも接合層を溶融して、不織布に磁性チップの一部を染みこませ、冷却後に離型シートを剥離してもよい。
【0056】
図3に、立体成形した後の本布状物の模式的斜視図を示す。本布状物4によれば、不織布6上に本磁性チップ層11が固定されているので、発泡成形するための金型内への仮固定を容易に行うことができる。立体成形した本布状物のセットおよび取り出しを容易にする観点からは、金型内の磁石を電磁石とし、磁力をオン・オフ切り替え可能にすることが好ましい。
【0057】
本磁性チップは、
図4に示すように、離型層3上に所定の間隔で磁性チップ10(例えば、保護層2、接合層1の順に積層した磁性チップ)を形成してもよい。
図4の例においては、不織布上に接合層1を載置し、離型層3上から加熱プレスし、不織布に磁性チップを接合した後に離型層を剥離する方法が例示できる。この方法によれば、所望の形状の磁性チップ10を容易に不織布に固着せしめることが可能である。
【0058】
本磁性チップは、保護層が紙、金属箔、樹脂層、不織布、織布、ゴムシート、発泡シートおよびこれらの複合体から選択されるものであるため、接合層が金型に付着したり、不織布からの染み出し、広がったりすることを効果的に防止できる。このため、生産性を顕著に高められる。また、不織布の原反を立体成形する前に所望の位置に磁性チップを固定化した発泡成形用布状物を製造してから、立体成形した不織布を製造できるので、立体成形した不織布に磁性チップをスタンプ方式などで固定する方式よりも生産性を顕著に高められる。
【0059】
本布状物によれば、原布の不織布に本磁性チップを固定化させてから、立体加工成形するときの温度範囲の設計自由度を高めることができる。また、不織布の立体成形の成形型において、例えば水蒸気加熱を行っても、磁性チップの保護層が軟化しにくいので、成形型の汚染を防止できる。これらの結果、生産性を格段に高められる。なお、上記方法に代えて、不織布の原反を立体成形してから、立体成形した不織布に磁性チップをスタンプ方式などで固定してもよい。
【0060】
本磁性チップの保護層もホットメルト樹脂層とした場合、磁性チップを長手方向に延在されたテープ状とし、前述の固着工程と、本磁性チップの不織布への固定部と、磁性チップの非固定部とを切り離す分断工程とを交互に行う方式を採用してもよい。この方法によれば、本磁性チップの長手方向を固定部単位で分断しながら、不織布の所望の位置に本磁性チップを効率的に固定できる。
【0061】
6.発泡成形体複合物
本発泡成形体複合物は、本布状物と発泡成形体とが一体成形された構成を有する。発泡成形体は、発泡樹脂を成形することにより得られる。発泡樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示できる。この中でも、柔らかくて伸縮性に富んだ軟質のウレタン樹脂が好適である。
【0062】
7.発泡成形体複合物の製造方法
本開示の発泡成形体複合物の製造方法の好適な一例を以下に説明する。但し、本発泡成形体複合物は以下の方法に限定されるものではない。
まず、不織布の表面の一部に、加熱手段を用いて磁性チップを浸み込ませて発泡成形用布状物を得る(工程a)。次いで、成形型の型面に、前記発泡成形用布状物を磁力によって仮固定する(工程b)。磁力は、例えば、金型内に磁石を設置できる。電磁石により磁力がオン・オフ自在に構成されていてもよい。
【0063】
工程b後、前記成形型に発泡樹脂を投入して、発泡させて得られる発泡成形体と、前記発泡成形用布状物とを一体化して発泡成形体複合物を得る(工程c)。発泡樹脂は例えばウレタン樹脂を用いることができる。そして、工程c後、発泡成形体複合物を成形型から取り出す(工程d)。これらの工程を経て発泡成形体複合物を製造できる。
【0064】
8.車両用シート
本開示の車両用シートは、本布状物を有する。発泡成形体複合物を備えるとも言い換えることができる。車両用シートは、例えば、フレームにスプリングが収容され、その上に、発泡ウレタンなどの発泡成形体と発泡成形用布状物が一体化された発泡成形体複合物を備えるクッション材が設けられている。
【実施例0065】
以下、本開示の具体的な実施例に基づいて説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0066】
磁性チップに用いた原料を以下に示す。
<樹脂>
ウルトラセン13B53D(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:42質量%、MFR:70g/10分(190℃×21.168N))
ウルトラセン722(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:質量28%、MFR:400g/10分(190℃×21.168N))
ウルトラセン720(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:28質量%、MFR:150g/10分(190℃×21.168N))
ウルトラセン710(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:28質量%、MFR:18g/10分(190℃×21.168N))
ウルトラセン681(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:20質量%、MFR:350g/10分(190℃×21.168N))
ウルトラセン633(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:20質量%、MFR:20g/10分(190℃×21.168N))
ウルトラセン631(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:20質量%、MFR:1.5g/10分(190℃×21.168N))
ウルトラセン625(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:15質量%、MFR:14g/10分(190℃×21.168N))
ウルトラセン541(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:10質量%、MFR:9g/10分(190℃×21.168N))
ウルトラセン526(東ソー社製、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:7質量%、MFR:25g/10分(190℃×21.168N))
ペトロセン209(東ソー社製、LDPE、MFR:45g/10分(190℃×21.168N))
プライムポリマーJ226ED(プライムポリマー社製、ランダムプロピレン共重合体)
エンゲージ8401(ダウ・ケミカル社製、ポリオレフィンエラストマー、MFR:30(190℃×21.168N))
クレイトンG1657(クレイトン社製、SEBS、スチレン/ゴム重量比=13/87)
<ワックス>
サソールH1(南アフリカ・サソール社製フィッシャートロプッシュワックス、分子量:814、融点:110℃)
ハイワックスNL800(三井化学社製 低分子量ポリエチレン、分子量:5900、融点:103℃)
ビスコール660-P(三洋化成工業社製、ポリプロピレンワックス、分子量:8,000、融点:136℃)
<オイル>
ダイアナプロセスPW-90(出光興産社製、パラフィン系プロセスオイル)
<磁性粉末>
JIP300A-120(JFEスチール社製、磁性体粉末)
70KA(神戸製鋼社製、磁性体粉末)
<酸化防止剤>
IRGANOX1010(BASF社製、酸化防止剤)
【0067】
[接合層A-1~A-10、A-13、14の作製]
接合層(ホットメルト樹脂層)を下記の方法により製造した。即ち、表1に示す配合比で、成分(A)、必要に応じて成分(B)、成分(C)をヘンシェルミキサーに投入し、5分間プリブレンドした。次いで、プレブレンド物を押し出し機のホッパーに投入し、スクリューフィーダを用いて押し出し機に供給した。そして、押し出し機(アイ・ケー・ジー社製の同方向回転二軸押し出し機PMT32-40.5)を用いて、スクリュー回転速度:50rpm、供給速度:5kg/hrの条件で押し出し工程を行い、PETフィルム/離型処理層(シリコーン処理)の離型処理層上にTダイにより接合層を得た。なお、バレル温度は成分(A)のMFRおよび成分(B)の添加量に応じて調整した。バレル温度(供給口)は、表1に記載した。
【0068】
[接合層A-11の作製]
PW-90およびサソールH1を撹拌機に投入し、140℃に加熱することによりサソールH1を溶解させた。攪拌下、クレイトンG1657を添加して溶融させた。その後、ホットメルト塗工機(由利ロール機械社製GPD300E)を用いて、離型紙上に塗工することにより接合層A-11を得た。
【0069】
[接合層A-12の作製]
接合層A-11で得られたホットメルト樹脂をバンバリーミキサーで成分(C)と混練した後、押し出し機に移してストランド状にペレタイザーでカットすることにより鉄粉入りホットメルト樹脂組成物を得た。本組成物を、ホットメルト塗工機(由利ロール機械社製GPD300E)を用いて、離型紙上に塗工することにより接合層A-12を得た。
【0070】
[保護層の作製]
保護層B-1およびB-2として表2に示すフィルムを用いた。両フィルムの軟化点は150℃以上であることを確認した。
B-1:PETフィルム(東レ社製ルミラー S10 厚み:20μm(コロナ処理を行った))、厚さ:20μm
B-2:OPPフィルム(東レ社製トレフィン #40-2500μm(コロナ処理を行った))、厚さ:40μm
B-10として片アート紙(坪量:73g/m2)を用いた。塗工面はアート面側とした。
B-11としてアルミ箔(東洋アルミニウム社製 A1N30(軟質材、厚み:20μm)を用いた。
B-3~9は、下記の方法によりホットメルト樹脂層を作製した。即ち、表2に示す配合比で、成分(A)、必要に応じて成分(B)、成分(C)をヘンシェルミキサーに投入し、5分間プリブレンドした。をヘンシェルミキサーで5分間プリブレンドした。次いで、プリブレンド物を押し出し機のホッパーに投入し、スクリューフィーダを用いて押し出し機に供給した。そして、押し出し機(アイ・ケー・ジー社製の同方向回転二軸押し出し機PMT32-40.5)を用いて、スクリュー回転速度:50rpm、供給速度:5kg/hrの条件で押し出し工程を行い、PETフィルム/離型処理層(シリコーン処理)の離型処理層上にTダイにより保護層を得た。なお、バレル温度は成分(A)のMFRおよび成分(B)の添加量に応じて調整した。バレル温度(供給口80℃)は、表2に記載した。
【0071】
[磁性チップの作製]
上記で得られた接合層および保護層を接合層/保護層/離型紙の順に重ね、加熱したヒートシール機を用いて、磁性シートを作製した(ヒートシール機に設定した加熱温度および時間は表3に記載した。圧力は、0.1MPa)。その後、カッターを用いて所定の大きさに切断し、各実施例および比較例に係る磁性チップを得た(表3)。
【0072】
<環球法軟化点>
各実施例および比較例の接合層であるホットメルト樹脂層および保護層に用いられる樹脂層の軟化点は、JIS K-6863ホットメルト接着剤の軟化点試験方法に従って求めた。溶媒はグリセリンを使用した。測定中150℃で球は環から流れ落ちなかった場合「150<」と記載した。保護層が紙又は金属箔の場合150℃で軟化しないと判断し、「150<」と記載した。
【0073】
<厚みの測定>
接合層および保護層の厚みは、J&T測定器 デジタルシックスネスゲージデジタル厚さ測定器(ノギス電子社製)により測定した。
【0074】
<MFR>
各実施例および比較例の樹脂のMFRは、JIS K7210に準拠して190℃、21.168Nの条件で測定した。
【0075】
<飽和磁化密度>
磁性チップの1平方センチメートル当たりの飽和磁化密度測定は、振動試料型磁力計(VSM)BHV-50(理研電子(株)社製)により行った。
【0076】
[発泡成形用布状物の作製]
不織布として、三井化学社製タフネル(ポリエステル短繊維(繊度2.2dtex)70質量%と、ポリエチレンとポリプロピレンのバイコンポーネント短繊維(繊度2.2d tex)30質量%との混合した繊維を原料とし、カード法で作られた目付140g/m2の単層構成の乾式不織布)を用いた。
【0077】
上記の立体加工前の不織布(5cm×10cm)に、表3で示したサイズの各実施例・比較例の磁性チップを載置し、超音波シール機(ソノテック社製、超音波発信機 SH-3510(500W仕様)、超音波振動子 SF-8500RR(22KHZ使用))で1秒加熱することにより、各実施例および比較例に係る発泡成形用布状物を得た。
【0078】
<浸み込み性評価>
上記不織布上に、13mm×200mmの矩形状の磁性チップを載置し、15mm×15mmの領域を超音波シール機(超音波発信機 SH-3510(ソノテック社製、500W仕様、22KHZ使用)および超音波振動子 SF-8500RR(ソノテック社製))で1秒加熱して、磁性チップを有機繊維の不織布に浸み込ませた。せん断強度を測定するために、磁性チップ上にガムテープ(ニチバン社製布テープNo.120N 幅:50mm)を10mm幅に裁断し磁性テープと10mm×10mmの面積を貼付することにより補強して、不織布と磁性テープ(カムテープで補強されている部分)を引張試験機でせん断強度を測定した。磁性チップの不織布への浸み込み性について、以下の基準で評価した。2~5を合格、1を不合格とした。
5:不織布が材破、又はせん断強度が20N以上である。
4:不織布が材破せず、せん断強度が10N以上20N未満である。
3:不織布が材破せず、せん断強度が5N以上10N未満である。
2:不織布が材破せず、せん断強度が1N以上5N未満である。
1:不織布に染みこんでいない、またはせん断強度が1N未満である。
【0079】
<発泡成形用布状物の磁石への吸着性>
各実施例および比較例に係る13mm角の磁性チップを浸み込ませた発泡成形用布状物に重りを付けて、磁性チップの保護層側に質量2.5g、直径10mmの永久磁石(2800ガウス)を用いて持ち上げることによって、磁性チップの磁石への吸着性を以下の基準で評価した。2~5を合格とし、1は不合格とした。
5:20gの重りを付けても落下しない。
4:上記5を満たさない。15gの重りを付けても落下しない。
3:上記5、4を満たさない。10gの重りを付けて落下しない。
2:上記5~3を満たさない。5g重りを付けても落下しない。
1:上記5~2を満たさない。5、10,15,20いずれの重りを付けても落下する。
【0080】
なお、比較例4は、溶融性試験で磁性チップが不織布に浸み込まず、発泡成形用布状物の作製できなかった。以後、発泡成形用布状物の作製できない場合、表中に‘-’と記載する。
【0081】
<付着性評価>
有機繊維の不織布に磁性チップを浸み込ませた発泡成形用布状物を用意した。次いで、直径1cmの丸い磁石(ニッケルメッキのネオジウム磁石:DAISO社製)が埋め込まれ、且つ表面に露出したポリカーボネートシート(以下、「PC」ともいう)からなる成形型に発泡成形用布状物をセットした。そして、水蒸気加熱により発泡成形用布状物を立体成形した。成形された発泡成形用布状物を10秒間放置・冷却した。その後、発泡成形用布状物を取り出した。そして、各実施例および比較例に係る磁性チップの成分がPCおよび磁石に付着するか否かを以下の基準で評価した。なお、磁石の表面温度は100℃、PCの表面温度は90℃であった。2~5を合格とし、1は不合格とした。
5:まったく付着しない。
4:PCおよび磁石の少なくとも一方に点状に磁性チップの成分が付着した。
3:PCおよび磁石の少なくとも一方に1割未満の面積で磁性チップの成分が付着した。
2:PCおよび磁石の少なくとも一方に1割以上3割未満の面積で磁性チップの成分が付着した。
1:PCおよび磁石の少なくとも一方に3割以上の面積で磁性チップの成分が付着した。
なお、比較例4は、溶融性試験・切離し性試験で磁性チップが不織布に浸み込まなかったため、磁性チップが固着された発泡成形用布状物の作製ができなかった。
【0082】
<型追従性>
屈曲部をもつ、成形型であるPC上に、10mm×20mmの磁性チップが固定された不織布をセットし、水蒸気加熱により不織布を成形した。前記PCの屈曲部として、曲げ角度が157.5°、135°、112.5および90°の4種の領域で試験を行った。磁性チップを含む発泡成形用布状物の、前記屈曲部を含むPC上への追従性について以下の基準で評価した。2~5を合格とし、1は不合格とした。
5:曲げ角度157.5°、135°、112.5°および90°のPCに追従し、目視において浮きが認められない。
4: 曲げ角度157.5°、135°および112.5°のPC追従し、目視において浮きは確認されないが、90°のPCに浮きが認められる。
3: 曲げ角度157.5°および135°のPCの角度に追従し、目視において浮きがないが、112.5°および90°のPCに浮きが認められる。
2: 曲げ角度157.5°のPCの角度に追従し、目視において浮きは確認されないが、135°、112.5°および90°のPCに浮きが認められる。
1:曲げ角度157.5°のPCにおいて浮きが認められた。
なお、比較例4は、溶融性試験・切離し性試験で磁性チップが不織布に浸み込まなかったため磁性チップが含浸した発泡成形用布状物を作製できなかった。
【表1】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】