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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129665
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】水素製造システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/042 20210101AFI20240919BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240919BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20240919BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240919BHJP
   C25B 15/029 20210101ALI20240919BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B15/00 303
C25B15/02
C25B15/029
C01B3/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039013
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】土屋 直実
(72)【発明者】
【氏名】長田 憲和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康博
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC06
4K021CA09
4K021CA12
4K021CA13
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】水素製造システムを流れる気体のエネルギーを効率よく利用する。
【解決手段】水素製造システム1は、水蒸気発生部10と、水素製造部15と、回収部20と、圧力調整部25と、を備えている。水素製造部15には、水蒸気発生部10で発生した水蒸気を含む気体が供給される。水素製造部15は、水蒸気から水素を製造し、当該水素を残余の水蒸気とともに排出する。回収部20は、水素製造部15から排出された気体を収容する第1収容部21と、圧力調整部25によって内部の圧力が調整される第2収容部22と、第1収容部21及び第2収容部22の間に配置された水素透過層23と、を含む。第2収容部22は、第1収容部21から水素透過層23を透過した水素を収容する。水素製造システム1は、第1収容部21から排出された気体が水素製造部15に供給されるよう構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を発生させる水蒸気発生部と、
前記水蒸気発生部で発生した水蒸気を含む気体が供給され、前記水蒸気から水素を製造し、当該水素を残余の水蒸気とともに排出する水素製造部と、
前記水素製造部から排出された気体から水素を回収する回収部と、
圧力調整部と、を備えた水素製造システムであって、
前記回収部は、前記水素製造部から排出された気体を収容する第1収容部と、前記圧力調整部によって内部の圧力が調整される第2収容部と、前記第1収容部及び前記第2収容部の間に配置された水素透過層と、を含み、
前記第2収容部は、前記第1収容部から前記水素透過層を透過した水素を収容し、
前記水素製造システムは、前記第1収容部から排出された気体が前記水素製造部に供給されるよう構成されている、水素製造システム。
【請求項2】
前記水素透過層は、ニオブ、ニオブ合金、バナジウム、バナジウム合金、タンタル、タンタル合金、パラジウム又はパラジウム合金からなる、請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項3】
前記水素製造部は、前記水蒸気を電源から供給される電力を用いて電気分解することにより水素を製造し、
前記水蒸気発生部で発生する水蒸気の量が、前記水素製造部に供給される電力に基づいて決定される、請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項4】
前記水素製造部は、前記水蒸気を電源から供給される電力を用いて電気分解することにより水素を製造し、
前記圧力調整部は、前記水素製造部に供給される電力に基づいて前記第2収容部の圧力を調整する、請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項5】
前記水素製造部は、水素を製造する通常運転モード及び水素を製造しない待機運転モードで運転可能であり、
前記水素製造部が前記通常運転モードで運転されている場合、前記圧力調整部は、前記第2収容部の水素分圧が前記第1収容部の水素分圧よりも低くなるように前記第2収容部の圧力を調整し、これにより前記第1収容部から前記第2収容部へ水素が回収され、
前記水素製造部が前記待機運転モードで運転されている場合、前記圧力調整部は、前記第2収容部の水素分圧が前記第1収容部の水素分圧よりも高くなるように前記第2収容部の圧力を調整し、これにより前記第2収容部から前記第1収容部へ水素が供給される、請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項6】
前記水素製造部は、前記水蒸気を電源から供給される電力を用いて電気分解することにより水素を製造し、
前記圧力調整部は、前記第1収容部から排出される気体の水素濃度が前記水素製造部に供給される電力に応じた濃度になるように、前記第2収容部の圧力を調整する、請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項7】
前記水素製造システムは、前記水素製造部に供給される気体の水素濃度を調整する濃度調整部と、第2圧力調整部と、をさらに備え、
前記濃度調整部は、水蒸気発生部で発生した水蒸気及び前記第1収容部から排出された気体を収容し、収容した気体を前記水素製造部に供給する第3収容部と、前記第2圧力調整部によって内部の圧力が調整される第4収容部と、前記第3収容部及び前記第4収容部の間に配置された第2水素透過層と、を含み、
前記水素製造部は、前記水蒸気を電源から供給される電力を用いて電気分解することにより水素を製造し、
前記第2圧力調整部は、前記水素製造部に供給される電力に応じて前記第4収容部の圧力を調整する、請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項8】
前記第2水素透過層は、ニオブ、ニオブ合金、バナジウム、バナジウム合金、タンタル、タンタル合金、パラジウム又はパラジウム合金からなる、請求項7に記載の水素製造システム。
【請求項9】
前記濃度調整部に供給される気体の水素濃度が水素製造部に供給される電力に基づいて決定される所定の値よりも高い場合、前記第2圧力調整部は、前記第4収容部の水素分圧が前記第3収容部の水素分圧よりも低くなるように前記第4収容部の圧力を調整し、これにより前記第3収容部から前記第4収容部へ水素が回収され、
前記濃度調整部に供給される気体の水素濃度が水素製造部に供給される電力に基づいて決定される所定の値よりも低い場合、前記第2圧力調整部は、前記第4収容部の水素分圧が前記第3収容部の水素分圧よりも高くなるように前記第4収容部の圧力を調整し、これにより前記第4収容部から前記第3収容部へ水素が供給される、請求項7に記載の水素製造システム。
【請求項10】
前記水素製造部に供給される気体と前記水素製造部から排出される気体との間の熱交換を行う熱交換器をさらに備えた、請求項1に記載の水素製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、水素製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素をエネルギー媒体とした水素エネルギー社会の実現に向けて、水素製造方法が注目されている。例えば、高温の水蒸気を電気分解することによって水素ガスを製造する方法(高温水蒸気電解)や、炭化水素と水蒸気を混合し、触媒反応によって水素ガスを製造する方法(水蒸気改質)、水蒸気と二酸化炭素ガスの混合ガスを電気分解することによって水素を製造する方法(溶融炭酸塩型電解)などがある。
【0003】
一方で、これらの方法で製造された水素ガスは、原料として用いられた成分(例えば高温水蒸気電解の場合は水蒸気)を含んでいる。このため、得られた水素ガスをエネルギー媒体として使用する前に、水素ガスを精製して、高純度の水素にする必要がある。
【0004】
水素を精製する方法としては、製造した水素を冷却し、気液分離と組み合わせる方法、熱スイング型吸着(TSA)や圧力スイング型吸着(PSA)による方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-001117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、気液分離と組み合わせる方法では、精製した水素に他のガス成分が含まれる場合には、精製した水素をさらに精製する必要がある。TSAでは、吸着材に吸着させた水素を脱離するために、供給する水素を含むガス温度よりも高温にするため、熱エネルギーが必要となる。PSAでは、高温のガスを導入する場合には吸着材の吸着容量が低下するため、一度冷却する必要があり、水素製造システムのエネルギー損失が大きくなる。そのため、原料となる水蒸気を高純度の水素を回収するために加熱または冷却することは、システム全体のエネルギー効率を損なうことになる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、水素製造システムを流れる気体のエネルギーを効率よく利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態による水素製造システムは、
前記水蒸気発生部で発生した水蒸気を含む気体が供給され、前記水蒸気から水素を製造し、当該水素を残余の水蒸気とともに排出する水素製造部と、
前記水素製造部から排出された気体から水素を回収する回収部と、
圧力調整部と、を備え、
前記回収部は、前記水素製造部から排出された気体を収容する第1収容部と、前記圧力調整部によって内部の圧力が調整される第2収容部と、前記第1収容部及び前記第2収容部の間に配置された水素透過層と、を含み、
前記第2収容部は、前記第1収容部から前記水素透過層を透過した水素を収容し、
前記水素製造システムは、前記第1収容部から排出された気体が前記水素製造部に供給されるよう構成されている。
【発明の効果】
【0009】
実施の形態による水素製造システムによれば、水素製造システムを流れる気体のエネルギーを効率よく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施の形態による水素製造システムの構成を示す図である。
図2図2は、変形例による水素製造システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して一実施の形態について説明する。図1は本実施の形態による水素製造システム1の全体構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示す水素製造システム1は、水蒸気を含むガスから水素を製造するシステムである。水素製造システム1は、水蒸気発生部10と、水素製造部15と、回収部20と、圧力調整部25と、を備える。図示された例では、水素製造システム1は、制御部30と、混合部35と、タンク40と、熱交換器45と、をさらに備える。
【0013】
水蒸気発生部10は、水を加熱して水蒸気を発生させる。この水蒸気は、水素の原料として用いられる。図示された例では、水蒸気発生部10は、配管aを介して水供給源11に接続されている。水蒸気発生部10は、水供給源11から供給された水を図示しない熱源(例えばヒータ等)を用いて加熱して、水蒸気を発生させる。水蒸気発生部10で発生した水蒸気は、水素製造部15に供給される。図示された例では、水蒸気は、配管bを通じて混合部35に供給された後、水素製造部15に供給される。
【0014】
混合部35は、配管cを通じて回収部20に接続される。混合部35は、回収部20から排出された気体を収容する。混合部35において、回収部20からの気体と水蒸気発生部10からの水蒸気とが混合される。また、混合部35は、配管dを通じて水素製造部15に接続される。混合部35は、混合部35に収容された気体を、原料ガスとして水素製造部15に供給する。ここで、水素製造部15に供給する原料ガスの温度は、水素製造部15の温度近傍であることが好ましく、具体的には水素製造部15の温度に対して-100℃から+100℃の範囲にあることが好ましい。
【0015】
図示された例では、混合部35は、配管eを通じて水素供給源36に接続されている。水素供給源36は、水素製造システム1の始動時に、混合部35に水素を含む気体を供給する。
【0016】
水素製造部15は、混合部35から供給された原料ガスから水素ガスを製造する。水素製造部15は、配管fを通じて回収部20に接続されている。水素製造部15は、製造した水素ガスを、配管fを通じて回収部20に供給する。
【0017】
水素製造部15は反応部16を有する。反応部16は、化学反応により水蒸気から水素を製造する。なお、水素製造部15では、水素製造部15に供給された水蒸気の全てが水素の製造に利用されなくてよい。言い換えると、水素製造部15に供給された水蒸気の一部は、水素製造部15において未反応であってよい。したがって、水素製造部15で製造される水素ガスは、反応部16で製造された水素及び未反応の水蒸気を含んでよい。言い換えると、水素ガスは、水素と残余の水蒸気を含んでよい。
【0018】
なお、水素製造部15は、水蒸気を原料として水素を製造する装置であれば特に限定されない。水素製造部15は、高温水蒸気電解装置であってよい。この場合、反応部16は、水蒸気を電気分解することによって水素を製造する。また、水素製造部15は、水蒸気改質装置であってよい。この場合、反応部16は、炭化水素と水蒸気を混合し、触媒反応によって水素ガスを製造する。また、水素製造部15は、溶融炭酸塩型電解装置であってよい。この場合、反応部16は、水蒸気と二酸化炭素の混合ガスを電気分解することによって水素ガスを製造する。
【0019】
反応部16が水蒸気を電気分解することによって水素を製造するものである場合、反応部16は電源17から供給される電力(以下、「電解電力」とも称する。)を用いて水蒸気を電気分解する。この場合、反応部16で製造される水素の量は、水素製造部15に供給される水蒸気の量及び電解電力に依存する。水素製造部15に供給される電解電力は、例えば、水素製造システム1の水素製造量の目標値に基づいて決定される。
【0020】
水素製造部15から排出される水素ガスの温度は、反応部16の構成にもよるが、例えば400℃以上900℃以下である。水素製造部15は、水素を製造する通常運転モードと、水素を製造しない待機運転モードで運転可能である。
【0021】
回収部20は、水素製造部15から供給された水素ガスから、水素を回収する。回収部20は、水素透過層23で仕切られた空間を有する。水素透過層23の一側の空間が第1収容部21をなす。水素透過層23の他側の空間が第2収容部22をなす。言い換えると、回収部20は、第1収容部21と、第2収容部22と、第1収容部21及び第2収容部22の間に配置された水素透過層23と、を有する。
【0022】
第1収容部21は、配管fに接続されている。第1収容部21は、水素製造部15から排出された水素ガスを収容する。上述したように、水素ガスは、水素と水蒸気を含む。第1収容部21の温度は、水素ガス中の水蒸気が凝結しないよう、150℃以上に維持されることが好ましく、200℃以上に維持されることがさらに好ましい。第1収容部21の温度は、500℃以下であってよい。第1収容部21は、配管cを通じて混合部35にも接続されている。第1収容部21に収容された気体は、配管cを通じて混合部35に排出される。上述したように、混合部35に収容された気体は、水素製造部15に供給される。したがって、本実施の形態の水素製造システム1は、第1収容部21に収容された気体が水素製造部15に供給されるように、構成されている。これにより、水素製造部15から排出された気体のエネルギーを、効率よく利用することができる。
【0023】
なお、後述の説明から理解されるように、第1収容部21から混合部35に供給される気体は、回収部20で回収されなかった水素及び水蒸気を含む残余ガスである。あるいは、第1収容部21から混合部35に供給される気体は、水素製造部15から第1収容部21に供給された気体と、第2収容部22から供給された水素と、を含んでいる。
【0024】
水素透過層23は、水素を透過させるよう構成されている。水素透過層23は、水素と他の気体を含む混合気体から選択的に水素のみを透過させるよう構成されていてよい。水素透過層23は、第1収容部21に収容された気体のうち水素のみを透過させて、第2収容部22に移動させることができる。水素透過層23は、第2収容部22に収容された気体のうち水素のみを透過させて第1収容部21に移動させることもできる。水素透過層23は、原理的に水素のみを透過させる金属製水素透過膜が好ましい。この場合、水素透過層23は、例えば、ニオブ(Nb)やバナジウム(V)、タンタル(Ta)などの5A族金属若しくはそれらの合金、パラジウム(Pd)又はパラジウム合金からなってよい。
【0025】
第2収容部22は、高純度の水素を収容する。第2収容部22は、第1収容部21から水素透過層23を透過した水素を収容する。図示された例では、第2収容部22は、配管gを介してタンク40に接続されている。第2収容部22に収容された水素は、配管gを通じてタンク40に収容される。また、第2収容部22は、配管g又は図示しない他の配管を通じてタンク40から水素の供給を受けることもできる。
【0026】
圧力調整部25は、第2収容部22とタンク40とを接続する配管gに設けられている。圧力調整部25は、第2収容部22の内部の圧力を制御することで、第1収容部21の内部の圧力と第2収容部22の内部の圧力との差を制御する。図示された例では、圧力調整部25は、制御部30による制御に従って、第2収容部22の圧力を制御する。圧力調整部25は、減圧器であってよい。
【0027】
制御部30は、水素製造部15の運転モードに関する情報を受け取って、当該情報に基づいて圧力調整部25を制御する。当該情報は、水素製造部15に供給される電解電力に関する情報であってよい。制御部30は、第1収容部21に収容された気体の水素分圧と第2収容部22に収容された気体の水素分圧との差を調整するために、圧力調整部25を制御する。
【0028】
例えば、第1収容部21の水素分圧よりも第2収容部22の水素分圧が低い場合、第1収容部21内の水素が、水素透過層23を透過して第2収容部22に移動する。水素製造部15が通常運転モードで運転されている場合、第1収容部21から第2収容部22に水素を回収することが求められるので、制御部30は、第1収容部21の水素分圧よりも第2収容部22の水素分圧が低くなるように第2収容部22の圧力が調整されるよう、圧力調整部25を制御する。
【0029】
また、例えば、第1収容部21の水素分圧よりも第2収容部22の水素分圧が高い場合、第2収容部22内の水素が、水素透過層23を透過して第1収容部21に移動する。ここで、第2収容部22から第1収容部21に水素が供給される場合、第1収容部21から混合部35に排出される水素の量も増大する。言い換えると、混合部35に収容される気体の水素濃度を上昇させることができ、水素製造部15に供給される気体の水素濃度を上昇させることができる。水素製造部15が待機運転モードで運転される場合、水素製造部15の劣化を抑制するため、水素製造部15に供給される気体の水素濃度を高くすることが求められる。したがって、第2収容部22から第1収容部21に水素を供給することが求められるので、制御部30は、第1収容部21の水素分圧よりも第2収容部22の水素分圧が高くなるように第2収容部22の圧力が調整されるよう、圧力調整部25を制御する。
【0030】
なお、第1収容部21及び第2収容部22の水素分圧の調整方法については、後で詳述する。
【0031】
図示された例では、制御部30は、さらに、水素製造部15が通常運転モードで運転される間、水素製造部15に供給される電解電力に関する情報を受け取って、当該情報に基づいて圧力調整部25を制御する。制御部30は、第1収容部21から排出される気体の水素濃度を上記電解電力に応じた値にするために、圧力調整部25を制御する。これにより、混合部35に収容される気体の水素濃度を上記電解電力に応じた値にすることができ、水素製造部15に供給される気体の水素濃度を上記電解電力に応じた値にすることができる。これにより、水素製造部15が通常運転モードで運転される間の水素製造部15の劣化を抑制することができる。第1収容部21から排出される気体の水素濃度は、第1収容部21の水素分圧と第2収容部22の水素分圧との差を調整することで調整される。
【0032】
また、図示された例では、制御部30は、さらに、水蒸気発生部10で発生する水蒸気の量を、水素製造部15に供給される電解電力に関する情報に基づいて制御する。上述したように、反応部16で製造される水素の量は、水素製造部15に供給される水蒸気の量及び電解電力に依存する。上記電解電力に対して水素製造部15に供給される水蒸気の量が過剰であれば、水蒸気発生部10は過剰の水蒸気を発生させるために過剰のエネルギーを消費したことになる。また、上記電解電力に対して水素製造部15に供給される水蒸気の量が少なければ、水素製造部15がいわゆる「燃料枯れ」を起こし、故障する虞がある。したがって、水蒸気発生部10で発生する水蒸気の量を上記電解電力に基づいて制御することにより、水蒸気発生部10で消費されるエネルギーの量を抑制することができ、また、水素製造部15の故障を抑制することができる。例えば、制御部30は、水供給源11から水蒸気発生部10に供給される水の量を制御することにより、水蒸気発生部10で発生する水蒸気の量を制御する。
【0033】
熱交換器45は、水素製造部15に供給される原料ガスと水素製造部15から排出される水素ガスとの間の熱交換を行う。これにより、水素ガスの熱を原料ガスの加熱に用いることができる。また、水素ガスの温度を下げることができ、第1収容部21に収容するのに望ましい温度に近づけることができる。すなわち、水素ガスの熱を有効利用することができる。図示された例では、熱交換器45には配管d及びfの一部が形成されており、配管d及びf内を流れる気体の間で熱交換が行われる。
【0034】
次に、第1収容部21及び第2収容部22の水素分圧の調整方法について説明する。まず、第1収容部21及び第2収容部22の水素分圧を求める方法について説明する。
【0035】
第1収容部21の水素分圧を求める方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法を採用することができる。すなわち、上記水素分圧は、第1収容部21に流入する気体及び第1収容部21から流出する気体の圧力及び水素濃度に基づいて算出されてよい。この場合、水素製造部15と第1収容部21とを接続する配管f、及び第1収容部21と混合部35を接続する配管cに圧力測定器及び水素濃度計を設ければよい。第1収容部21に流入する気体の圧力及び水素濃度は、水素製造部15で製造される水素の量を理論的に求め、これに基づいて算出されてもよい。
【0036】
第2収容部22の水素分圧を求める方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法を採用することができる。すなわち、第2収容部22は水素のみを含む気体(あるいは水素を高濃度で含む気体)を収容しているので、第2収容部22の水素分圧は、第2収容部22の圧力に基づいて算出されてよい。この場合、配管gのうち第2収容部22と圧力調整部25とを接続する部分に圧力測定器を設け、当該圧力測定器によって測定された圧力に基づいて第2収容部22の水素分圧を求めてよい。
【0037】
次に、目標とする水素分圧の差を求める方法について説明する。まず、水素製造部15の運転モード又は水素製造部15に供給される電解電力に基づいて、水素製造部15に供給される気体の水素濃度の目標値(以下、「供給水素濃度目標値」とも称する。)を求める。供給水素濃度目標値に基づいて、第1収容部21から排出される気体の水素濃度の目標値(以下、「排出水素濃度目標値」とも称する。)を求める。得られた排出水素濃度目標値に基づいて、単位時間当たりに第1収容部21から第2収容部22に回収すべき水素の量(以下、「水素回収速度」とも称する。)、又は、単位時間当たりに第2収容部22から第1収容部21に供給すべき水素の量(以下、「水素供給速度」とも称する。)を求める。水素回収速度及び水素供給速度は、水素透過層23の水素透過速度に応じた速度である。水素透過層23の水素透過速度は、水素透過層23の水素透過流速と水素透過層23の有効面積との積に等しい。
【0038】
水素透過層23が金属製水素透過膜である場合、水素透過層23の一方の側から他方の側への水素透過流速J(mol・m-2・sec-1)は、次の式によって推定されてよい。
【数1】
ここで、
R:気体定数(J・mol-1・K-1
B:水素拡散の易動度
T:水素透過層の使用環境温度(K)
L:水素透過層の厚さ(m)
c:水素透過層内の溶解水素濃度(mol・m-3
P:水素透過層の水素分圧(Pa)
:標準大気圧(Pa)
c1:水素透過層の水素分圧がP1(Pa)のときの水素透過層内の溶解水素濃度(mol・m-3
c2:水素透過層の水素分圧がP2(Pa)のときの水素透過層内の溶解水素濃度(mol・m-3
【0039】
上記式中、水素透過層23が適用された回収部20において変化するのは、水素透過層23の使用環境温度(回収部20内の温度)と、第1収容部21及び第2収容部22の水素分圧である。また、水素透過層23の使用環境温度は、圧力調整部25が第2収容部22の水素分圧を調整しようとする時点での使用環境温度である。したがって、水素透過層23の水素透過速度の目標値(すなわち、上述した水素回収速度又は水素供給速度)が決定されれば、上記式から水素透過層23の水素分圧の目標値を決定することができる。さらに、水素透過層23の水素分圧の目標値に基づいて、第1収容部21及び第2収容部22の水素分圧の差の目標値(以下、「分圧差目標値」とも称する。)を求めることができる。そして、この分圧差目標値と第1収容部21の水素分圧とに基づいて、第2収容部22の水素分圧の目標値(以下、「分圧目標値」とも称する。)を求めることができる。そして、制御部30が上記分圧目標値に基づいて圧力調整部25を制御し、当該分圧目標値になるように第2収容部22の圧力が調整されることで、第1収容部21及び第2収容部22の水素分圧の差を、上記分圧差目標値に調整することができる。この結果、第1収容部21から第2収容部22への水素回収速度、または、第2収容部22から第1収容部21への水素供給速度を、第1収容部21から排出される気体の水素濃度の目標値に応じた速度(したがって、水素製造部15の運転モード又は水素製造部15に供給される電解電力に応じた速度)にすることができる。
【0040】
なお、第1収容部21から排出される気体の水素濃度を水素製造部15の運転モード又は水素製造部15に供給される電解電力に応じた濃度にするため、さらに水蒸気発生部10で発生する水蒸気の量が調整されてもよい。この場合、水蒸気発生部10で発生する水蒸気の量は、上記分圧差目標値に基づいて制御されてよい。
【0041】
次に、水素製造システム1の制御方法について説明する。まず、水素製造部15の運転モードが通常運転モードである場合について、説明する。
【0042】
水素製造部15が通常運転モードで運転される場合、水素製造システム1の始動時において、まず、水供給源11から水蒸気発生部10に水が供給される。水供給源11から水蒸気発生部10に供給される水の量は、水素製造部15に供給される電解電力に基づいて決定される。そして、水蒸気発生部10で水供給源11からの水が加熱され、水蒸気が発生する。この水蒸気は、配管bを通じて混合部35に供給される。また、水素供給源36から混合部35に水素を含む気体が供給される。水素供給源36から混合部35への水素の供給は、水素製造システム1の始動時のみでよい。水蒸気発生部10からの水蒸気と水素供給源36からの水素とは、混合部35において混合され、原料ガスとして配管dを通じて水素製造部15に供給される。なお、水素供給源36から混合部35に供給される水素の量は、水素製造部15に供給される電解電力に基づいて決定されてよい。これにより、混合部35から水素製造部15に供給される原料ガスの水素濃度が上記電解電力に応じた水素濃度になり、水素製造部15の劣化を抑制することができる。
【0043】
混合部35から水素製造部15に水蒸気を含む原料ガスが供給されると、反応部16で水蒸気が電気分解され、水素が製造される。反応部16で製造された水素は、水素製造部で電気分解されなかった未反応の水蒸気と混合し、水素ガスとして配管fを通じて回収部20に供給される。
【0044】
回収部20に供給された水素ガスは、第1収容部21に収容される。このとき、第2収容部22の圧力が、制御部30及び圧力調整部25によって制御される。第2収容部22の圧力は、第1収容部21及び第2収容部22の水素分圧の差が、第1収容部21から第2収容部22への水素回収速度の目標値に基づく圧力差になるように、調整される。そして、第1収容部21から第2収容部22に、上記圧力差に応じた速度で水素が回収される。また、第1収容部21から混合部35に、上記圧力差に応じた水素濃度の気体が排出され、水蒸気発生部10からの水蒸気と混合される。ここで、上述したように、上記水素回収速度の目標値は、水素製造部15に供給される電解電力に基づいて決定される。したがって、第1収容部21から混合部35に、上記圧力差に応じた水素濃度の気体が排出される。これにより、混合部35に収容される気体の水素濃度が、上記電解電圧に応じた水素濃度になる。
【0045】
その後、混合部35に収容された気体は、水素製造部15に供給され、水素の製造と回収が継続される。
【0046】
次に、水素製造部15の運転モードが通常運転モードから待機運転モードに切り替えられ、水素製造部15が待機運転モードで運転される場合について、説明する。
【0047】
この場合、水蒸気発生部10の運転は停止されてよい。これにより、水素製造部15が待機運転モードで運転されている間に水蒸気発生部10で消費されるエネルギーを、削減することができる。また、回収部20の第2収容部22の水素分圧が第1収容部21の水素分圧よりも高くなるよう、第2収容部22の圧力が、制御部30及び圧力調整部25によって調整される。これにより、第2収容部22から第1収容部21に水素透過層23を介して水素が供給され、第1収容部21内の気体の水素濃度が(したがって、第1収容部21から混合部35に排出される気体の水素濃度が)、上昇する。この結果、混合部35から水素製造部15に供給される気体の水素濃度を上昇させて、水素製造部15の劣化を抑制することができる。
【0048】
水素製造部15から回収部20に供給される気体の水素濃度が所定の水素濃度に達したら、制御部30及び圧力調整部25は、第2収容部22の水素分圧が第1収容部21の水素分圧と等しくなるよう、第2収容部22の圧力を調整してよい。これにより、第1収容部21と第2収容部22との間の水素の移動が停止され、水素製造部15に供給される気体の水素濃度が一定に保たれる。
【0049】
<変形例>
なお、上述した実施形態では、回収部20において(言い換えると、回収部20から排出される気体が水蒸気発生部10からの水蒸気と混合される前に)、水素製造部15に供給される気体の水素濃度が調整されるが、これに限られない。回収部20から排出された気体が水蒸気発生部10からの水蒸気と混合された後に、水素製造部15に供給される気体の水素濃度が調整されてもよい。
【0050】
図2に示す水素製造システム1では、混合部35と水素製造部15との間に濃度調整部50が設けられ、濃度調整部50において水素製造部15に供給される気体の水素濃度が調整される。この場合、濃度調整部50は、図1に示す回収部20と同様に構成されてよい。すなわち、濃度調整部50は、第2水素透過層53で仕切られた空間を有する。第2水素透過層53の一側の空間が混合部35からの気体が収容される第3収容部51をなす。第2水素透過層53の他側の空間が、第3収容部51から回収された高純度の水素が収容される第4収容部52をなす。第4収容部52の圧力は、制御部30及び第2圧力調整部55によって調整される。
【0051】
第3収容部51は、配管d1を介して混合部35に接続されている。また、第3収容部51は、配管d2を介して水素製造部15に接続されている。第3収容部51は、混合部35から供給された気体を収容する。
【0052】
第2水素透過層53は、水素を透過させるよう構成されている。第2水素透過層53は、水素と他の気体を含む混合気体から選択的に水素のみを透過させるよう構成されていてよい。第2水素透過層53は、第3収容部51に収容された気体のうち水素のみを透過させて、第4収容部52に移動させることができる。第2水素透過層53は、第4収容部52に収容された気体のうち水素のみを透過させて第3収容部51に移動させることもできる。第2水素透過層53は、原理的に水素のみを透過させる金属製水素透過膜が好ましい。この場合、水素透過層23は、例えば、ニオブ(Nb)やバナジウム(V)、タンタル(Ta)などの5A族金属若しくはそれらの合金、パラジウム(Pd)又はパラジウム合金からなってよい。
【0053】
第4収容部52は、配管iを介してタンク40に接続されている。第4収容部52の水素は、配管iを通じてタンク40に収容される。また、第4収容部52は、配管iまたは図示しない配管を通じて、タンク40から水素の供給を受けることもできる。
【0054】
第2圧力調整部55は、第4収容部52とタンク40とを接続する配管iに設けられている。第2圧力調整部55は、第4収容部52の内部の圧力を制御することで、第3収容部51の内部の圧力と第4収容部52の内部の圧力との差を制御する。図示された例では、第2圧力調整部55は、制御部30による制御に従って、第4収容部52の圧力を制御する。第2圧力調整部55は、減圧器であってよい。
【0055】
制御部30は、水素製造部15の運転モード及び/または水素製造部15に供給される電解電力に関する情報を受け取って、当該情報に基づいて第2圧力調整部55を制御する。制御部30は、第3収容部51に収容された気体の水素分圧と第4収容部52に収容された気体の水素分圧との差を調整するために、第2圧力調整部55を制御する。
【0056】
具体的には、第3収容部51に収容される気体の水素濃度が、水素製造部15に供給される気体の水素濃度の目標値になるよう、第3収容部51に収容された気体の水素分圧と第4収容部52に収容された気体の水素分圧との差が調整される。ここで、水素製造部15に供給される気体の水素濃度の目標値は、水素製造部15の運転モード及び/または水素製造部15に供給される電解電力に応じて決定される。これにより、水素製造部15の劣化を抑制することができる。
【0057】
なお、第3収容部51及び第4収容部52の水素分圧の調整方法については、上述した第1収容部21及び第2収容部22の水素分圧の調整方法と同様であってよい。
【0058】
また、図2に示す例では、回収部20の第2収容部22の圧力を調整する圧力調整部25は、水素製造部15の運転モード及び/または水素製造部15に供給される電解電力に基づいて制御されなくてもよい。
【0059】
次に、図2に示す水素製造システム1の制御方法について説明する。まず、水素製造部15の運転モードが通常運転モードである場合について、説明する。
【0060】
水素製造部15が通常運転モードで運転される場合、水素製造システム1の始動時において、まず、水供給源11から水蒸気発生部10に水が供給される。そして、水蒸気発生部10で水供給源11からの水が加熱され、水蒸気が発生する。この水蒸気は、配管bを通じて混合部35に供給され、次いで配管d1を通じて濃度調整部50に供給される。混合部35から濃度調整部50に供給された気体は、第3収容部51に収容される。このとき、第4収容部52の圧力が、制御部30及び第2圧力調整部55によって制御される。第4収容部52の圧力は、第3収容部51及び第4収容部52の水素分圧の差が、水素製造部15に供給する気体(原料ガス)の水素濃度の目標値に基づく圧力差になるように、調整される。そして、第3収容部51から第4収容部52に、上記圧力差に応じた速度で水素が回収される。または、第4収容部52から第3収容部51に、上記圧力差に応じた速度で水素が供給される。そして、水素濃度が調整された気体が、第3収容部51から水素製造部15に配管d2を通じて供給される。ここで、第3収容部51及び第4収容部52の水素分圧の差は、水素製造部15に供給される電解電力に応じて決定される。したがって、第3収容部51から水素製造部15に供給される気体(原料ガス)の水素濃度は、上記電解電圧に応じた水素濃度である。
【0061】
濃度調整部50から水素製造部15に水蒸気を含む原料ガスが供給されると、反応部16で水蒸気が電気分解され、水素が製造される。反応部16で製造された水素は、水素製造部15で電気分解されなかった未反応の水蒸気と混合し、水素ガスとして配管fを通じて回収部20に供給される。
【0062】
回収部20に供給された水素ガスは、第1収容部21に収容される。このとき、第2収容部22の圧力が、圧力調整部25によって制御されている。第2収容部22の圧力は、第1収容部21から第2収容部22に水素が回収されるように、調整されている。第1収容部21の残余の気体は、配管cを通じて混合部35に排出され、水蒸気発生部10からの水蒸気と混合する。混合された気体は、配管d1を通じて濃度調整部50に供給され、水素の製造と回収が継続される。
【0063】
次に、水素製造部15の運転モードが通常運転モードから待機運転モードに切り替えられ、水素製造部15が待機運転モードで運転される場合について、説明する。
【0064】
この場合、水蒸気発生部10の運転は停止されてよい。これにより、水素製造部15が待機運転モードで運転されている間に水蒸気発生部10で消費されるエネルギーを、削減することができる。また、濃度調整部50の第4収容部52の水素分圧が第3収容部51の水素分圧よりも高くなるよう、第4収容部52の圧力が制御部30及び第2圧力調整部55によって調整される。これにより、第4収容部52から第3収容部51に第2水素透過層53を介して水素が供給され、水素製造部15に供給される気体の水素濃度を上昇させることができる。これにより、水素製造部15の劣化を抑制することができる。
【0065】
混合部35から濃度調整部50に供給される気体の水素濃度が所定の水素濃度に達したら、制御部30及び第2圧力調整部55は、第4収容部52の水素分圧が第3収容部51の水素分圧と等しくなるよう、第4収容部52の圧力を調整してよい。これにより、第3収容部51と第4収容部52との間の水素の移動が停止され、水素製造部15に供給される気体の水素濃度が一定に保たれる。
【0066】
以上のように、本実施の形態による水素製造システム1は、水蒸気発生部10と、水素製造部15と、回収部20と、圧力調整部25と、を備えている。水蒸気発生部10は、水蒸気を発生させる。水素製造部15には、水蒸気発生部10で発生した水蒸気を含む気体が供給される。水素製造部15は、水蒸気から水素を製造し、当該水素を残余の水蒸気とともに排出する。回収部20は、水素製造部15から排出された気体から水素を回収する。回収部20は、水素製造部15から排出された気体を収容する第1収容部21と、圧力調整部25によって内部の圧力が調整される第2収容部22と、第1収容部21及び第2収容部22の間に配置された水素透過層23と、を含む。第2収容部22は、第1収容部21から水素透過層23を透過した水素を収容する。水素製造システム1は、第1収容部21から排出された気体が水素製造部15に供給されるよう構成されている。
【0067】
このような水素製造システム1によれば、水素製造部15から排出された気体から水素を回収するために当該気体を冷却したり、水素を吸着させる吸着材を加熱する必要がない。また、水素製造部15から回収部20に排出された高温の気体を再び水素製造部15に戻すことができるため、当該気体の熱エネルギーを有効利用することができる。この結果、水素製造システム1を流れる気体のエネルギーを効率よく利用することができる。
【0068】
また、本実施の形態による水素製造システム1において、水素透過層23は、ニオブ、ニオブ合金、バナジウム、バナジウム合金、タンタル、タンタル合金、パラジウム又はパラジウム合金からなる。この場合、水素製造部15から排出された気体から水素のみを選択的に回収することができる。また、必要に応じて、第2収容部22から第1収容部21へ向けて水素を透過させることができる。したがって、第1収容部21から排出される気体の水素濃度の調整が容易である。
【0069】
また、本実施の形態による水素製造システム1において、水素製造部15は、水蒸気を電源から供給される電力を用いて電気分解することにより水素を製造する。また、水蒸気発生部10で発生する水蒸気の量が、水素製造部15に供給される電力に基づいて決定される。この場合、上記電力に対して水素製造部15に供給される水蒸気の量が過剰になることが抑制される。したがって、水蒸気発生部10で過剰の水蒸気を発生させるために過剰のエネルギーが消費される虞を、抑制することができる。また、この場合、上記電力に対して水素製造部15に供給される水蒸気の量が少なくて水素製造部15がいわゆる「燃料枯れ」を起こす、という虞が抑制される。
【0070】
また、本実施の形態による水素製造システム1において、圧力調整部25は、水素製造部15に供給される電力に基づいて第2収容部22の圧力を調整する。この場合、水素製造部15に供給される気体の水素濃度を、上記電力に基づいて調整することができる。これにより、水素製造部15の劣化を抑制することができる。
【0071】
また、本実施の形態による水素製造システム1において、水素製造部15は、水素を製造する通常運転モード及び水素を製造しない待機運転モードで運転可能である。水素製造部15が通常運転モードで運転されている場合、圧力調整部25は、第2収容部22の水素分圧が第1収容部21の水素分圧よりも低くなるように第2収容部22の圧力を調整し、これにより第1収容部21から第2収容部22へ水素が回収される。また、水素製造部15が待機運転モードで運転されている場合、圧力調整部25は、第2収容部22の水素分圧が第1収容部21の水素分圧よりも高くなるように第2収容部22の圧力を調整し、これにより第2収容部22から第1収容部21へ水素が供給される。これにより、回収部20は、水素製造部15が通常運転モードで運転されている場合は水素を回収することができ、水素製造部15が待機運転モードで運転されている場合は水素製造部15に供給される気体の水素濃度を高めることができる。
【0072】
また、本実施の形態による水素製造システム1において、圧力調整部25は、第1収容部21から排出される気体の水素濃度が水素製造部15に供給される電力に応じた濃度になるように、第2収容部22の圧力を調整する。この場合、水素製造部15に供給される気体の水素濃度を水素製造部15に供給される電力に応じた濃度にすることができ、水素製造部15の劣化を抑制することができる。
【0073】
また、本実施の形態による水素製造システム1は、水素製造部15に供給される気体の水素濃度を調整する濃度調整部50と、第2圧力調整部55と、をさらに備える。濃度調整部50は、水蒸気発生部10で発生した水蒸気及び第1収容部21から排出された気体を収容し、収容した気体を水素製造部15に供給する第3収容部51と、第2圧力調整部55によって内部の圧力が調整される第4収容部52と、第3収容部51及び第4収容部52の間に配置された第2水素透過層53と、を含む。第2圧力調整部55は、水素製造部15に供給される電力に応じて第4収容部52の圧力を調整する。この場合、水素製造部15に供給される気体の水素濃度を、上記電力に基づいて調整することができる。これにより、水素製造部15の劣化を抑制することができる。
【0074】
また、本実施の形態による水素製造システム1において、第2水素透過層53は、ニオブ、ニオブ合金、バナジウム、バナジウム合金、タンタル、タンタル合金、パラジウム又はパラジウム合金からなる。この場合、第3収容部51に収容された気体から水素のみを選択的に回収することができる。また、必要に応じて、第4収容部52から第3収容部51へ向けて水素を透過させることができる。したがって、第3収容部51から排出される気体の水素濃度の調整が容易である。
【0075】
また、本実施の形態による水素製造システム1において、濃度調整部50に供給される気体の水素濃度が水素製造部15に供給される電力に基づいて決定される所定の値よりも高い場合、第2圧力調整部55は、第4収容部52の水素分圧が第3収容部51の水素分圧よりも低くなるように第4収容部52の圧力を調整し、これにより第3収容部51から第4収容部52へ水素が回収される。また、濃度調整部50に供給される気体の水素濃度が水素製造部15に供給される電力に基づいて決定される所定の値よりも低い場合、第2圧力調整部55は、第4収容部52の水素分圧が第3収容部51の水素分圧よりも高くなるように第4収容部52の圧力を調整し、これにより第4収容部52から第3収容部51へ水素が供給される。この場合、水素製造部15に供給される気体の水素濃度を、上記電力に基づいて調整することができる。これにより、水素製造部15の劣化を抑制することができる。
【0076】
また、本実施の形態による水素製造システム1は、水素製造部15に供給される気体と水素製造部15から排出される気体との間の熱交換を行う熱交換器45をさらに備えている。この場合、水素製造システム1を流れる気体のエネルギーをさらに効率よく利用することができる。
【0077】
本発明の実施形態といくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内でこれらの実施形態および変形例を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1:水素製造システム、10:水蒸気発生部、15:水素製造部、20:回収部、21:第1収容部、22:第2収容部、23:水素透過層、30:制御部、35:混合部、40:タンク、45:熱交換器、50:濃度調整部、51:第3収容部、52:第4収容部、53:第2水素透過層、55:第2圧力調整部
図1
図2