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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129671
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20240919BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240919BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
H01F27/29 P
H01F27/28 104
H01F27/28 152
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039020
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【弁理士】
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】今田 勝久
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真一郎
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AA08
5E043EB05
5E070AA01
5E070AB03
5E070CB13
5E070EA01
5E070EA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部電極が導電性樹脂電極層を有している場合でも、直流抵抗を低くすることが可能な電子部品を提供する。
【解決手段】積層体の内部に形成されるコイル部品1は、内部にコイル導体Cを有する素体10と、コイル導体Cと電気的に接続されている第1の外部電極21と第2の外部電極22と、を備える。コイル導体Cは、第1の端面11から露出する第1の引き出し部31と、第2の端面12から露出する第2の引き出し部32と、を有し、第1方向Xから透過して観たときに、第1の樹脂電極層21bは第1の引き出し部31の露出部と重なっておらず、第2の樹脂電極層22bは第2の引き出し部32の露出部と重なっていない。樹脂電極層は、熱硬化性樹脂等にAgなどの金属粉末及び有機溶媒を混合した導電性樹脂ペーストに積層体を斜めに浸漬させ、樹脂を硬化させることで形成され、積層体を浸漬する角度を調整し、端面における樹脂電極層の形状を操作できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にコイル導体を有する素体と、
前記コイル導体と電気的に接続されている第1の外部電極と第2の外部電極と、を備え、
前記素体は、第1方向において互いに対向する第1の端面と第2の端面と、前記第1方向に垂直な第2方向に対向する天面と底面と、前記第1方向と第2方向とに垂直な第3方向に対向する第1の側面と第2の側面とを有し、
前記コイル導体は、前記第1の端面から露出する第1の引き出し部と、
前記第2の端面から露出する第2の引き出し部と、を有し、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の少なくとも一部を覆う第1の金属電極層と、
前記第1の金属電極層の上に配置され、金属と樹脂とを含み、前記第1の端面に設けられた前記第1の金属電極層の一部を覆う第1の樹脂電極層と、
前記第1の金属電極層と前記第1の樹脂電極層とを覆う、第1の金属膜とを有し、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の少なくとも一部を覆う第2の金属電極層と、
前記第2の金属電極層の上に配置され、金属と樹脂とを含み、前記第2の端面に設けられた前記第2の金属電極層の一部を覆う第2の樹脂電極層と、
前記第2の金属電極層と前記第2の樹脂電極層とを覆う、第2の金属膜とを有し、
前記第1の金属電極層は、前記第1の端面の少なくとも一部と直接接触し、
前記第2の金属電極層は、前記第2の端面の少なくとも一部と直接接触し、
前記第1の引き出し部は、前記第1の金属電極層に直接接続し、
前記第2の引き出し部は、前記第2の金属電極層に直接接続し、
前記第1方向から透過して観たときに、前記第1の樹脂電極層は前記第1の引き出し部の露出部と重なっておらず、前記第2の樹脂電極層は前記第2の引き出し部の露出部と重なっていない、コイル部品。
【請求項2】
前記第1方向から透過して観たときに、前記第1の引き出し部の露出部と前記第1の樹脂電極層との最短距離が170μm以上である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1の金属電極層は、前記第1の端面の全面と、前記第1の端面から延伸して前記天面の一部と、前記底面の一部と、前記第1の側面の一部と、前記第2の側面の一部と、を覆い、
前記第2の金属電極層は、前記第2の端面の全面と、前記第2の端面から延伸して前記天面の一部と、前記底面の一部と、前記第1の側面の一部と、前記第2の側面の一部と、を覆う、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の樹脂電極層は、前記第1の金属電極層の前記第1の端面の一部を覆い、前記第2の樹脂電極層は、前記第2の端面の一部を覆い、
前記第1方向から透過して観たときに、前記第1の樹脂電極層のもっとも高い位置から前記底面までの距離は、前記第1の引き出し部の露出部のもっとも低い位置から前記底面までの距離よりも小さく、前記第2の樹脂電極層のもっとも高い位置から前記底面までの距離は、前記第2の引き出し部の露出部のもっとも低い位置から前記底面までの距離よりも小さい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1の樹脂電極層は、前記第1の端面の一部と前記底面の一部とを覆い、
前記第2の樹脂電極層は、前記第2の端面の一部と前記底面の一部とを覆う、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の樹脂電極層は、前記第1の端面と前記底面とから延伸して、前記第1の側面の一部と前記第2の側面の一部とを覆い、
前記第2の樹脂電極層は、前記第2の端面と前記底面とから延伸して、前記第1の側面の一部と前記第2の側面の一部とを覆う、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記天面、前記底面、前記第1の側面、前記第2の側面のうち少なくとも一面に判別マークが設けられている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記コイル導体のコイル軸は前記第1方向と平行である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記コイル導体のコイル軸は前記第2方向と平行である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記素体は複数の絶縁層が積層されてなる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1の金属膜は、前記第1の金属電極層と前記第1の樹脂電極層との両方に接触し、前記第2の金属膜は、前記第2の金属電極層と前記第2の樹脂電極層との両方に接触する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第1方向から透過して観たときに、
前記第1の金属膜は、前記第1の引き出し部の露出部と重なっており、前記第2の金属膜は、前記第2の引き出し部の露出部と重なっている、請求項1に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、素体と、前記素体内に配置されているコイルと、前記素体の表面に配置されている外部電極と、前記コイルに接続される一端と、前記外部電極に接続される他端と、を有していると共に、前記素体内に配置されている接続導体と、を備え、前記素体は、実装面である主面と、前記主面と隣り合うように位置すると共に、前記主面と交差する方向に延在している端面と、を有し、前記外部電極は、前記主面と前記端面とに形成されている下地金属層と、前記下地金属層を覆うように形成されている導電性樹脂層と、を有し、前記接続導体の前記他端は、前記端面に露出していると共に前記下地金属層に接続されており、前記端面に垂直な方向から見て、前記端面における前記接続導体の前記他端が露出している位置と、前記導電性樹脂層の前記端面上に位置する部分における最大厚みの位置と、が異なっている、積層コイル部品、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-216290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、導電性樹脂層は金属からなる金属電極層よりも抵抗率が高い。このため、コイルの引き出し部の露出部付近において、特許文献1のように樹脂電極層と重なりがあると、引き出し部の露出部付近において、直流抵抗が上昇する。
【0005】
本開示は、外部電極が導電性樹脂電極層を有している場合でも、直流抵抗を低くすることが可能なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの態様に係るコイル部品は、
内部にコイル導体を有する素体と、
前記コイル導体と電気的に接続されている第1の外部電極と第2の外部電極と、を備え、
前記素体は、第1方向において互いに対向する第1の端面と第2の端面と、前記第1方向に垂直な第2方向に対向する天面と底面と、前記第1方向と第2方向とに垂直な第3方向に対向する第1の側面と第2の側面とを有し、
前記コイル導体は、前記第1の端面から露出する第1の引き出し部と、
前記第2の端面から露出する第2の引き出し部と、を有し、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の少なくとも一部を覆う第1の金属電極層と、
前記第1の金属電極層の上に配置され、金属と樹脂とを含み、前記第1の端面に設けられた前記第1の金属電極層の一部を覆う第1の樹脂電極層と、
前記第1の金属電極層と前記第1の樹脂電極層とを覆う、第1の金属膜とを有し、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の少なくとも一部を覆う第2の金属電極層と、
前記第2の金属電極層の上に配置され、金属と樹脂とを含み、前記第1の端面に設けられた前記第2の金属電極層の一部を覆う第2の樹脂電極層と、
前記第2の金属電極層と前記第2の樹脂電極層とを覆う、第2の金属膜とを有し、
前記第1の金属電極層は、前記第1の端面の少なくとも一部と直接接触し、
前記第2の金属電極層は、前記第2の端面の少なくとも一部と直接接触し、
前記第1の引き出し部は、前記第1の金属電極層に直接接続し、
前記第2の引き出し部は、前記第2の金属電極層に直接接続し、
前記第1方向から透過して観たときに、前記第1の樹脂電極層は前記第1の引き出し部と重なっておらず、前記第2の樹脂電極層は前記第2の引き出し部と重なっていない。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るコイル部品は、外部電極が導電性樹脂電極層を有している場合でも、直流抵抗を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示のコイル部品を示す斜視図である。
図2図2は、本開示の第1実施形態のコイル部品を示す断面図である。
図3図3は、本開示のコイル部品を第1方向から透過して観た際の樹脂電極層と素体厚みとの高さ関係を説明する説明図である。
図4図4は、本開示の第1実施形態のコイル部品の変形例を示す断面図である。
図5図5は、本開示の第2実施形態のコイル部品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のコイル部品を詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。なお、ここで説明されるコイル部品の構成は、あくまでも発明の理解のための例示にすぎず、発明を限定するものではない。
【0010】
本明細書で言及する各種の数値範囲は、「より多い/より大きい」などの特段の用語が付されない限り、下限および上限の数値そのものも含むことを意図している。つまり、例えば1以上10以下といった数値範囲を例にとれば、下限値の“1”を含むと共に、上限値の“10”も含むものとして解釈され得る。また“約”、“程度”、“略”といった用語は、数パーセント、例えば±10%の変動を含み得ることを意味する。
【0011】
本開示のコイル部品は、コイル軸がコイル部品の第1方向(図1のX方向)と平行となる、いわゆる「横巻コイル」と、コイル軸がコイル部品の第1方向と垂直となる、いわゆる「縦巻コイル」を包含する。以下では、「横巻コイル」の実施形態を、本開示のコイル部品の第1実施形態として説明し、「縦巻コイル」の実施形態を、本開示のコイル部品の第2実施形態として説明する。
【0012】
(第1実施形態のコイル部品)
本開示の第1実施形態のコイル部品を説明する。第1実施形態のコイル部品は、素体10と、一対の外部電極21,22と、を備えている。素体10は、内部にコイル導体Cを有する。以下、各構成要素について図1~3を参照しながら説明する。図1は、本開示のコイル部品を示す斜視図、図2は、本開示の第1実施形態のコイル部品を示す断面図、図3は、本開示のコイル部品を第1方向から透過して観た際の樹脂電極層と素体厚みとの高さ関係を説明する説明図である。
【0013】
-素体-
図1に示すように、素体10は、第1方向において互いに対向する第1の端面11と第2の端面12と、第1方向に垂直な第2方向に対向する天面13と底面14と、第1方向と第2方向とに垂直な第3方向に対向する第1の側面15と第2の側面16とを有している。なお、素体10の長手方向を第1方向とする。本明細書におけるコイル部品及び素体では、第1方向、第2方向、第3方向を、図1におけるX方向、Y方向、Z方向とする。ここで、第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)と第3方向(Z方向)は互いに垂直である。
【0014】
図1には示されていないが、素体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、素体10の3面が交わる部分であり、稜線部は、素体10の2面が交わる部分である。
【0015】
素体10は、複数の絶縁層が積層されてなる積層体であってもよい。絶縁層としては、例えば、フェライト材料等の磁性材料、ガラスセラミック材料等の非磁性材料、又は、これらの磁性材料や非磁性材料を混合した混合材料等が挙げられる。素体10は、また金属粒子と樹脂材料のコンポジット材料の成形体であってもよい。
【0016】
-コイル導体-
コイル導体Cは、素体10内に設けられ、第1の端面11から露出する第1の引き出し部31と、第2の端面12から露出する第2の引き出し部32とを有する。なお、ここでいう「露出」とは第1の端面11または第2の端面12から第1の引き出し部31または第2の引き出し部32が露出していれば「露出」とし、第1の端面11または第2の端面12の上から外部電極に覆われている場合であっても第1の引き出し部31または第2の引き出し部32が第1の端面11または第2の端面12に対して露出していれば、本明細書でいう「露出」に含まれる。コイル導体Cは、金属材料を含む。例えば、銀または銅またはニッケルであってよく、それらの合金であってもよい。
【0017】
コイル導体Cは複数の絶縁層上に形成された複数のコイル導体層が、ビア導体によって電気的につながってなる巻回形状を有する。そして、その中心にあるコイル軸Aは、第1方向と平行となっている。コイル軸Aが第1方向Xと平行となっていることにより、コイル軸が第2方向Yと平行である場合と比較して、外部電極とコイル導体Cの間に発生する浮遊容量を抑えることができる。
【0018】
第1の引き出し部31は、素体10内に配置されている。図2に示す例において、第1の引き出し部31は、第1方向Xに伸びて第1の端面11から露出している。なお、本明細書において「第1方向Xに伸びる」との用語は、第1方向Xと平行であること、および、第1方向Xと平行ではないが、第1方向Xのベクトル成分を有していることを包含する。
【0019】
同様に、第2の引き出し部32は、素体10内に配置されている。図2に示す例において、第2の引き出し部32は、第1方向Xと反対側に伸びて第2の端面12から露出している。なお、本明細書において「第1方向Xと反対側に伸びる」との用語は、第1方向Xと平行であること、および、第1方向Xと平行ではないが、第1方向Xと反対側のベクトル成分を有していることを包含する。
【0020】
-外部電極-
第1の外部電極21は、第1の端面11の少なくとも一部を覆う第1の金属電極層21aと、第1の金属電極層21aの上に配置され、金属と樹脂とを含み、第1の金属電極層21aの一部を覆う第1の樹脂電極層21bと、第1の金属電極層21aと第1の樹脂電極層21bとを覆う、第1の金属膜21cとを有する。このとき、第1の金属電極層21a、第1の樹脂電極層21b、第1の金属膜21cは、第1の端面11から近いほうからこの順に位置する。第1の金属電極層21aは素体10に直接接触する。第1の金属膜21cは、第1の金属電極層21aを覆うように形成され、第1の金属電極層21aを完全に覆うため第1の金属膜21cの一部は素体10に直接接触していてもよい。つまり、図2において、素体10の天面13、底面14、第1の側面15および第2の側面16の一部に第1の金属膜21cが直接接触していてもよい。
【0021】
第2の外部電極22は、第2の端面12の少なくとも一部を覆う第2の金属電極層22aと、第2の金属電極層22aの上に配置され、金属と樹脂とを含み、第2の金属電極層22aの一部を覆う第2の樹脂電極層22bと、第2の金属電極層22aと第2の樹脂電極層22bとを覆う、第2の金属膜22cとを有する。このとき、第2の金属電極層22a、第2の樹脂電極層22b、第2の金属膜22cは、第2の端面12から近いほうからこの順に位置する。第2の金属電極層22aは素体10に直接接触する。第2の金属膜22cは、第2の金属電極層22aを覆うように形成され、第2の金属電極層22aを完全に覆うため第2の金属膜22cの一部は素体10に直接接触していてもよい。つまり、図2において、素体10の天面13、底面14、第1の側面15および第2の側面16の一部に第2の金属膜22cが直接接触していてもよい。
【0022】
-金属電極層-
図2に示す例では、第1の金属電極層21aは、第1の端面11の全面と第1の端面11から延伸して天面13の一部と底面14の一部と第1の側面15の一部と第2の側面16の一部とを覆っている。しかし、第1の金属電極層21aは第1の端面11の一部を覆う限り、その形状は限定されない。例えば、第1の金属電極層21aは、第1の端面11の一部を覆い、第1の端面11から延伸して底面14の一部を覆っていてもよい。さらに、第1の金属電極層21aは、第1の端面11と底面14から延伸して、さらに第1の側面15の一部と第2の側面16の一部とを覆っていてもよい。いずれの形態においても、第1の金属電極層21aの境界線は、直線であってもよく、曲線であってもよい。いずれの形態においても、第1の金属電極層21aは、第1の引き出し部31の露出部と直接接続される。
【0023】
図2に示す例では、第2の金属電極層22aは、第2の端面12の全面と第2の端面12から延伸して天面13の一部と底面14の一部と第1の側面15の一部と第2の側面16の一部とを覆っている。しかし、第2の金属電極層22aは第2の端面12の一部を覆う限り、その形状は限定されない。例えば、第2の金属電極層22aは、第2の端面12の一部を覆い、第2の端面12から延伸して底面14の一部を覆っていてもよい。さらに、第2の金属電極層22aは、第2の端面12と底面14から延伸して、さらに第1の側面15の一部と第2の側面16の一部とを覆っていてもよい。いずれの形態においても、第2の金属電極層22aの境界線は、直線であってもよく、曲線であってもよい。いずれの形態においても、第2の金属電極層22aは、第2の引き出し部32の露出部と直接接続される。
【0024】
第1の外部電極21及び第2の外部電極22の金属電極層21a,22aは、各々、金属成分を有している。さらに、ガラス成分を含んでいてもよい。第1の外部電極21及び第2の外部電極22の金属電極層21a,22aは、いずれも樹脂を含まない。第1の外部電極21及び第2の外部電極22の金属電極層21a,22aは、各々、金属とガラスの焼結体からなっていてもよい。金属成分は、例えばAgである。金属成分は、CuであってもよくAuであってもよい。導電性ペーストを素体の表面に付与して焼き付け、金属成分を焼結させることにより形成されている。導電性ペーストには、例えば、Ag、Cu等の金属粉末に、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を混合したものが用いられる。
【0025】
-樹脂電極層-
第1の樹脂電極層21bは、金属と樹脂とを含む。第1の樹脂電極層21bは、第1の端面11の一部のみを覆う形態、第1の端面11の一部と底面14の一部とを覆う形態が挙げられる。いずれの形態においても、第1の側面15と第2の側面16は、覆っていても覆っていなくてもよい。図2に示す例では、第1の樹脂電極層21bは、第1の端面11の一部と第1の端面11から延伸して底面14の一部を覆っている。いずれの形態においても、第1の樹脂電極層21bの境界線は、直線であってもよく、曲線であってもよい。また、第1の樹脂電極層21bは、第1の金属電極層21aと直接接触する。
【0026】
第1の端面11に設けられた第1の樹脂電極層21bは、特に底面14に平行な方向の応力を緩和することに長けている。底面14に設けられた第1の樹脂電極層21bは、特に底面14に垂直な方向の応力を緩和することに長けている。応力を緩和する観点からは、底面14の一部と第1の端面11の一部の両方を覆っていることが好ましい。底面14の一部と第1の端面11の一部の両方を覆っていると、第1の端面11の一部のみを覆っている場合に比べて、実装時における基板から受ける撓み応力をより緩和することができる。
【0027】
第2の樹脂電極層22bは金属と樹脂とを含む。第2の樹脂電極層22bは、第2の端面12の一部覆う形態、第2の端面12の一部と底面14の一部とを覆う形態が挙げられる。いずれの形態においても、第1の側面15と第2の側面16は、覆っていても覆っていなくてもよい。図2に示す例では、第2の樹脂電極層22bは、第2の端面12の一部と第2の端面12から延伸して底面14の一部を覆っている。いずれの形態においても、第2の樹脂電極層22bの境界線は、直線であってもよく、曲線であってもよい。また、第2の樹脂電極層22bは、第2の金属電極層22aと直接接触する。
【0028】
第2の端面12に設けられた第2の樹脂電極層22bは、特に底面14に平行な方向の応力を緩和することに長けている。底面14に設けられた第1の樹脂電極層22bは、特に底面14に垂直な方向の応力を緩和することに長けている。応力を緩和する観点からは、底面14の一部と第2の端面12の一部の両方を覆っていることが好ましい。底面14の一部と第2の端面12の一部の両方を覆っていると、第2の端面12の一部のみを覆っている場合に比べて、実装時における基板から受ける撓み応力をより緩和することができる。
【0029】
第1の樹脂電極層21b及び第2の樹脂電極層22bは導電性であり、金属成分及び樹脂成分を含んでいる。金属成分は、例えばAg、Cuである。樹脂成分は、例えば、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂である。樹脂成分は、紫外線硬化型樹脂、又は熱可塑性樹脂等の樹脂であってもよい。
【0030】
樹脂電極層21b,22bは、導電性樹脂を硬化させることにより形成されている。導電性樹脂としては、例えば、導電性粒子、熱硬化性樹脂、有機バインダ、及び有機溶剤を混合したものが用いられる。導電性粒子としては、例えば、Ag粉末、Cu粉末、又は被覆粒子などが用いられる。被覆粒子は、例えば、樹脂粒子と、樹脂粒子の表面を被覆するAg又はCu等の金属層と、を有する。
【0031】
-金属膜-
第1の金属膜21cは、第1の金属電極層21aと第1の樹脂電極層21bとを覆って配置されている。すなわち、第1の金属膜21cは、第1の金属電極層21aと第1の樹脂電極層21bとの両方に接触している。第1の金属膜21cは、めっき法により形成される。第1の金属膜21cは第1めっき層と第2めっき層の二層からなることが好ましい。第1めっき層は、Niめっき層、Cuめっき層、Pdめっき層又はAuめっき層であってもよい。第2めっき層は、第1めっき層上にSnめっきにより形成されたSnめっき層であってもよい。
【0032】
第2の金属膜22cは、第2の金属電極層22aと第2の樹脂電極層22bとを覆って配置されている。すなわち、第2の金属膜22cは、第2の金属電極層22aと第2の樹脂電極層22bとの両方に接触している。第1の金属膜21cは、めっき法により形成される。第2の金属膜22cは第1めっき層と第2めっき層の二層からなることが好ましい。第1めっき層は、Niめっき層、Cuめっき層、Pdめっき層又はAuめっき層であってもよい。第2めっき層は、第1めっき層上にSnめっきにより形成されたSnめっき層であってもよい。
【0033】
以上説明したように、コイル部品1では、外部電極が金属電極層と樹脂電極層と金属膜とを有している。
【0034】
以上のように第1の外部電極21及び第2の外部電極22が配置されているため、コイル部品1を基板上に実装する場合には、底面14が実装面となる。
【0035】
-本開示の特徴的な構成の説明-
本実施形態のコイル部品は、第1方向Xから透過して観たときに、第1の樹脂電極層21bは第1の引き出し部31の露出部と重なっておらず、第2の樹脂電極層22bは第2の引き出し部32の露出部と重なっていない。ここでいう「第1の樹脂電極層21bは第1の引き出し部31の露出部と重なっていない」とは、第1の樹脂電極層21bと第1の引き出し部31の露出部との間に、第2方向もしくは第3方向における距離があることをいう。同様に、「第2の樹脂電極層22bは第2の引き出し部32の露出部と重なっていない」とは、第2の樹脂電極層22bと第2の引き出し部32の露出部との間に、第2方向Yもしくは第3方向Zにおける距離があることをいう。
【0036】
第1の樹脂電極層21b及び第2の樹脂電極層22bは、導電性をもつが、樹脂を含むため、第1の金属電極層21a及び第2の金属電極層22aよりも、電気的抵抗率が大きい。第1の引き出し部31付近では、特に電流密度が大きい。この構成によれば、第1の引き出し部31の露出部と第1の樹脂電極層21bとの間に第2方向Yもしくは第3方向Zに距離があることによって、第1の樹脂電極層21bにおける電流密度を下げることができる。第2の引き出し部32についても同様である。電気抵抗率が第1の金属電極層21aよりも大きい第1の樹脂電極層21bにおける電流密度を下げることによって、第1の樹脂電極層21bにおける発熱を抑制することができる。同様に、第2の樹脂電極層22bのおける発熱を抑制することができる。したがって、第1の外部電極21と第2の外部電極22の信頼性を向上させることができる。
【0037】
第1の樹脂電極層21bが、第1の端面11の一部に形成されている場合、第1の樹脂電極層21bの底面からのもっとも高い位置T11からの底面14までの距離は、第1の引き出し部31の露出部の底面からのもっとも低い位置T12からの底面14までの距離よりも小さいことが好ましい。すなわち、第1の引き出し部31の露出部と第1の樹脂電極層21bは、第2方向Yにおいて距離がある。このとき、本開示のコイル部品1の底面14を実装面として、はんだによって、実装基板に実装したとき、第1の端面11の全面に樹脂電極層を形成した場合と比較して導通する電流の抵抗値を下げることができる。
【0038】
コイル部品1を実装基板にはんだによって実装したとき、引き出し部の露出部付近における電流密度が高くなる。本開示のように、第1の引き出し部31の露出部付近に第1の樹脂電極層21bの形成を意図的に抑えることで、実装時の直流抵抗を抑えることができる。詳細は後述する実施例で説明する。
【0039】
第2の樹脂電極層22bが、第2の端面12の一部に形成されている場合、第2の樹脂電極層22bのもっとも高い位置T21から底面14までの距離は、第2の引き出し部32の露出部のもっとも低い位置T22から底面14までの距離よりも小さいことが好ましい。すなわち、第2の引き出し部32の露出部と第2の樹脂電極層22bは、第2方向Yにおいて距離がある。このとき、本開示のコイル部品1の底面14を実装面として、はんだによって、実装基板に実装したとき、第2の端面12の全面に樹脂電極層を形成した場合と比較して導通する電流の抵抗値を下げることができる。
【0040】
コイル部品1を実装基板にはんだによって実装したとき、引き出し部の露出部付近における電流密度がもっとも高くなる。本開示のように、第2の引き出し部32の露出部付近に第2の樹脂電極層22bの形成を意図的に抑えることで、実装時の電気抵抗を抑えることができる。詳細は後述する実施例で説明する。
【0041】
以上のように、本開示のコイル部品1は、樹脂電極を有する外部電極を有しながらも、電気抵抗を抑えつつ、信頼性の高い外部電極を有する。
【0042】
(第1実施形態のコイル部品の変形例)
次に、第1実施形態のコイル部品の変形例について説明する。なお、本変形例のコイル部品は、第1実施形態のコイル部品に対し判別マークが設けられている点で異なる。したがって、以下の説明では、第1実施形態で説明したコイル部品と異なる点を中心に図4を参照しながら説明する。図4は、本開示の第1実施形態のコイル部品の変形例を示す断面図である。
【0043】
本変形例に係るコイル部品は、素体10の天面13、底面14、第1の側面15及び第2の側面16のうち、少なくとも一つに判別マークMが設けられている。図4では、天面13に判別マークMが設けられている。本開示のコイル部品1は、天面13と底面14とで、外部電極の形状が異なる。判別マークMを設けることにより、実装の際に、底面14を確実に実装面とすることができる。特に、実装時にカメラセンサを用いて底面14と天面13とを判別するのに活用される。
【0044】
判別マークMは、金属であってもよい。金属であると、耐熱性に優れているため、素体の焼成前にも形成することができる。より好ましくは、内部電極(つまり、コイル導体C)と同じ材料である。内部電極と同じ材料であると、製造上の効率化やコストダウンにつながりやすい。別の観点では、判別マークMは、低誘電率材料であってもよい。低誘電率材料であると、コイル導体Cと判別マークMとの浮遊容量及び外部電極と判別マークMとの浮遊容量を抑えることができる。なお、低誘電率材料とは、比誘電率が3以下の材料を意図している。
【0045】
ただし、判別マークMがなくても、底面14が実装面であることは完成品の状態であっても特定できる。例えば、X線によって内部構造を確認すれば、底面14および天面13の位置を特定できる。
【0046】
(第1実施形態のコイル部品製造方法)
【0047】
以下、本開示の第1実施形態に係る積層型コイル部品の製造方法の一例について説明する。
【0048】
まず、絶縁層となるセラミックグリーンシートを作製する。例えば、フェライト原料に、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤及び分散剤等を加えて混練し、スラリー状にする。その後、ドクターブレード法などの方法により、厚さ12μm程度の磁性体シートを得る。
【0049】
フェライト原料として、例えば、鉄、ニッケル、亜鉛及び銅の酸化物原料を混合して800℃、1時間で仮焼した後、ポールミルにより粉砕し、乾燥することにより、平均粒径が約2μmのNi-Zn-Cu系のフェライト原料(酸化物混合粉末)を得ることができる。
【0050】
なお、絶縁層となるセラミックグリーンシートの材料としては、例えば、フェライト材料等の磁性材料、ガラスセラミック材料等の非磁性材料、又は、これらの磁性材料や非磁性材料を混合した混合材料等を用いることができる。フェライト材料を用いてセラミックグリーンシートを作製する場合、高いL値(インダクタンス)を得るためには、Fe:40mol%以上49.5mol%以下、ZnO:5mol%以上35mol%以下、CuO:4mol%以上12mol%以下、残部:NiO及び微量添加剤(不可避不純物を含む)の組成のフェライト材料を用いることが好ましい。
【0051】
作製したセラミックグリーンシートに、所定のレーザー加工を施して、直径20μm以上、30μm以下程度のビアホールを形成する。ビアホールを有する特定のシート上にAgペーストを用いて、ビアホールに充填し、さらに、11μm程度の厚みを有する3/4ターン形状のコイル周回用の導体パターンをスクリーン印刷し、乾燥することでコイルシートを得る。さらに、引き出し部となるビア導体のみが形成されたコイルシートやビア導体とランド部のみが形成されたコイルシートを同様に得る。
【0052】
カット切断後に実装面と平行な方向にコイル軸を有するコイルが積層体の内部に形成されるように、コイルシートを積層する。さらに、引き出し部となるビア導体が形成されたコイルシートをコイル周回用の導体パターンが印刷された複数のコイルシートの上下に積層する。このとき判別マークMを形成する場合は、少なくとも1枚のコイルシートは、判別マーク用導体パターンが形成されたマーク付きコイルシートとする。
【0053】
積層したコイルシートを熱圧着して積層体ブロックの圧着体を得た後、ダイサーにより切断し、個片化したチップを得る。個片化したチップに対しては、回転バレルを行い、角部及び稜線部に所定の丸みを付けてもよい。
【0054】
チップに対して所定の温度、時間で脱バインダ及び焼成を施すことで、内部にコイル導体を内蔵した焼成体(積層体)を得る。
【0055】
Agペーストを所定の厚みに引き伸ばした層に積層体の端部を浸漬させ、得られた塗膜を焼き付けることで、積層体に外部電極の金属電極層を形成する。
【0056】
金属電極層の他の形成方法としては、例えば、Agペーストに筆などを浸漬し、その筆で積層体の外部電極形成箇所にAgペーストを塗布することによって設けてもよい。この形成方法では、積層体を浸漬することによって金属電極層を形成する方法と比べて比較的容易に金属電極層の形状を操作することができる。例えば、端面と底面の一部を覆うが、側面を覆わないような金属電極層を形成することができる。
【0057】
熱硬化性樹脂等に金属粉末及び有機溶媒を混合した導電性樹脂ペーストに積層体を斜めに浸漬させ、樹脂を硬化させることで、積層体に樹脂電極層を形成する。金属粉末は例えば、Agであってよい。このとき、積層体を浸漬する角度を調整することによって、端面における樹脂電極層の形状を操作することができる。
【0058】
金属電極層および樹脂電極層の上に、めっきにより、所定の厚みのNi皮膜及びSn皮膜を順次形成して、金属膜を形成する。
【0059】
以上により、本開示の第1実施形態に係る積層型コイル部品を作製することができる。
【0060】
(第2実施形態のコイル部品)
次に、第2実施形態のコイル部品について説明する。なお、第2実施形態のコイル部品は、第1実施形態のコイル部品に対し素体10の絶縁層の積層方向およびコイル導体Cのコイル軸の方向が異なる。したがって、以下の説明では、第1実施形態で説明したコイル部品と異なる点を中心に図5を参照しながら説明する。図5は、本開示の第2実施形態のコイル部品を示す断面図である。
【0061】
-素体-
素体10は複数の絶縁層が積層方向に積層されて成り、積層方向は第1方向Xと垂直である。
【0062】
-コイル導体-
コイル導体Cは複数の絶縁層上に形成された複数のコイル導体層が、ビア導体によって電気的につながってなる巻回形状を有する。コイル導体Cによるコイル軸Aは、第2方向Yと平行としてよい。また、コイル導体Cは、第2方向から透過して観たときに、矩形または円形状となっていてよい。
【0063】
コイル導体Cに備えられる第1の引き出し部31および第2の引き出し部32は、それぞれ第1の端面11および第2の端面12から露出されている。より具体的には、図5に示す例では、第1の引き出し部31は、積層方向で最上段のコイル導体層と導通しており、第2の引き出し部32は、積層方向で最下段のコイル導体層と導通している。なお、当該構成に限定されずに、第1の引き出し部31は、積層方向で最下段のコイル導体層と導通しており、第2の引き出し部32は、積層方向で最上段のコイル導体層と導通していてもよい。
【0064】
このような第2実施形態のコイル部品であれば、コイル導体Cによるコイル軸Aが第2方向Yと平行となっているため、コイル導体Cの内径を大きくすることができ、インダクタンスを高くすることができる。
【0065】
なお、コイル軸Aに関する他の実施形態として、コイル導体Cのコイル軸Aは、第3方向Zと平行であってもよい。
【実施例0066】
以下、本開示の積層型コイル部品を具体的に開示した実施例を示す。なお、本開示は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
ここでは、第1実施形態のコイル部品で説明した横巻コイルに対応するコイル部品のシミュレーションモデルを作成し、引き出し部から樹脂電極層までの距離を変化させたときのRdc上昇率について実証試験を行った。引き出し部と樹脂電極層までの距離によって、実施例1~5及び比較例1、2のシミュレーションモデルを作り分けた。なお、素体の高さは、800μmと設定した。
【0068】
実施例1~5のコイル部品及び比較例1、2のコイル部品について、ムラタソフトウェア社製の有限要素法解析ソフトウェア「Femtet」を用いて、コイル部品の実装時に、第1の端面と直接はんだ付けされる実装基板のランドから第2の端面と直接はんだ付けされる実装基板のランドまでの間に生じる直流抵抗をシミュレーションした。
【0069】
直流抵抗シミュレーションの結果を表1に示す。表1は、引き出し部から樹脂電極層までの距離とRdc上昇率との関係を示す表である。
【0070】
表1の「引き出し部から樹脂電極層までの距離(μm)」とは、第1方向から透過して観たとき、引き出し部の露出部と樹脂電極層との間の最短距離のことである。なお、本実証実験では、図2のように樹脂電極層の第2方向Yの端部は、底面と端面とをつなぐ稜線と平行になるように形成をしたが、樹脂電極層の第2方向Yの端部は、曲線形状であってもよく、折れ線形状であってもよい。例えば、引き出し部の露出部から等距離になるように、樹脂電極層の端部が楕円形であってもよい。今回は、樹脂電極層の端部が、底面と端面とをつなぐ稜線と平行であるため、引き出し部の露出部から樹脂電極層への最短距離は、引き出し部の露出部から第2方向に沿った樹脂電極層までの距離と一致した。しかし、樹脂電極層の第2方向の端部が、底面と平行でない場合はその限りではない。
【0071】
本実証実験で用いたコイル部品は、1608サイズと呼ばれる端面の第2方向Yの寸法が800μm、天面の第1方向Xの寸法が1600μmである6面体のコイル部品を用いた。なお、この寸法に外部電極の寸法は含まれない。引き出し部の露出部の第2方向の寸法は、60μmであって、底面から370μmの距離に位置する。すなわち、底面から引き出し部の露出部の下端までの距離は370μmであって、底面から引き出し部の上端までの距離は430μmである。また、樹脂電極層は、底面の一部並びに第1の端面と第2の端面に形成した。底面側の樹脂電極層は第1の端面と底面をつなぐ稜線部から400μmの長さとZ方向の素体を全面覆う長方形形状で固定した。第2の端面側からも同様に、第2の端面と底面をつなぐ稜線部から400μmの長さとZ方向の素体を全面覆う長方形形状で固定した。第1の端面及び第2の端面における樹脂電極層は、コイル部品を第1方向から透過して観たとき、素体の底面と端面とをつなぐ稜線部を0基準として、第2方向Yの寸法(樹脂電極層の高さ)を50μmから600μmまでの間で調整し、シミュレーションを行った。このとき、引き出し部の露出部及び樹脂電極層は2つの端面それぞれにあるが、どちらの端面においても樹脂電極層の高さ調整をした。樹脂電極層の高さが0μmであるとは、端面に樹脂電極層が形成されていないことを意味する。「引き出し部から樹脂電極層までの距離」とは、樹脂電極層から引き出し部の露出部までの最短距離を意味する。ここで、「引き出し部から樹脂電極層までの距離」が、0μmであるとは、引き出し部の露出部と樹脂電極層とが第1方向Xから透過して観たときに接していることを意味する。
【0072】
Snはんだによって実装基板に実装したコイル部品モデルを作り、シミュレーション実験をおこなった。このとき、はんだはSnを用いて、はんだの濡れ性が実験結果に影響のないようにはんだが端面の全面を覆うように実装をした。
【0073】
次にRdc上昇率について説明をする。Rdcの値は、コイル部品モデルを基板に実装したときに、第1の端面と直接はんだ付けされる実装基板のランドから第2の端面と直接はんだ付けされる実装基板のランドまでの平均Rdcを取得した。Rdc上昇率とは、底面も含めて、コイル部品の外部電極全体に樹脂電極層が形成されていない場合の平均Rdcに対して、樹脂電極層を形成した場合の平均Rdcの上昇率を割合として示したものである。準備した7個のコイル部品モデルに対して、Rdc上昇率を測定した結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
[表1]に示すように、第1方向から透過して観たときに引き出し部の露出部と樹脂電極層が離れているとRdc上昇率が53.8%以下となり、引き出し部の露出部と樹脂電極層が重なっている場合(比較例1および2)と比較して、Rdc上昇を抑制することができる。なお、ここでは、「引き出し部から樹脂電極層までの距離」が0μmである場合、すなわち引き出し部の露出部と樹脂電極層とが接している場合も「重なっていない」とする。引き出し部の露出部と樹脂電極層とが170μm以上離れていると、Rdc上昇率を30.0%以下に抑制することができる。
【0076】
一方で、比較例1,2より、引き出し部の露出部と樹脂電極層の重なりがあると、Rdc上昇率は55.7%以上であることがわかる。比較例1と比較例2を比較したとき、比較例2のRdc上昇率の方が大きいことから、引き出し部の露出部と樹脂電極層の重なりが大きいほどRdc上昇率は大きくなる。
【0077】
以上より、応力緩和の効果を十分に得つつ、外部電極における直流抵抗の上昇を抑えられるコイル部品が得られた。
【0078】
なお、今回開示した実施態様は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施態様のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本開示の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0079】
本開示のコイル部品は、以下の態様を包含する。
<1>内部にコイル導体を有する素体と、
前記コイル導体と電気的に接続されている第1の外部電極と第2の外部電極と、を備え、
前記素体は、第1方向において互いに対向する第1の端面と第2の端面と、前記第1方向に垂直な第2方向に対向する天面と底面と、前記第1方向と第2方向とに垂直な第3方向に対向する第1側面と第2側面とを有し、
前記コイル導体は、前記第1の端面から露出する第1の引き出し部と、
前記第2の端面から露出する第2の引き出し部と、を有し、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の少なくとも一部を覆う第1の金属電極層と、
前記第1の金属電極層の上に配置され、金属と樹脂とを含み、前記第1の端面に設けられた前記第1の金属電極層の一部を覆う第1の樹脂電極層と、
前記第1の金属電極層と前記第1の樹脂電極層とを覆う、第1の金属膜とを有し、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の少なくとも一部を覆う第2の金属電極層と、
前記第2の金属電極層の上に配置され、金属と樹脂とを含み、前記第1の端面に設けられた前記第2の金属電極層の一部を覆う第2の樹脂電極層と、
前記第2の金属電極層と前記第2の樹脂電極層とを覆う、第2の金属膜とを有し、
前記第1の金属電極層は、前記第1の端面の少なくとも一部と直接接触し、
前記第2の金属電極層は、前記第2の端面の少なくとも一部と直接接触し、
前記第1の引き出し部は、前記第1の金属電極層に直接接続し、
前記第2の引き出し部は、前記第2の金属電極層に直接接続し、
前記第1方向から透過して観たときに、前記第1の樹脂電極層は前記第1の引き出し部の露出部と重なっておらず、前記第2の樹脂電極層は前記第2の引き出し部の露出部と重なっていない、コイル部品。
<2>前記第1方向から透過して観たときに、前記第1の引き出し部と前記第1の樹脂電極層との最短距離が170μm以上である、<1>に記載のコイル部品。
<3>前記第1の金属電極層は、前記第1の端面の全面と、前記第1の端面から延伸して前記天面の一部と、前記底面の一部と、前記第1の側面の一部と、前記第2の側面の一部と、を覆い、
前記第2の金属電極層は、前記第2の端面の全面と、前記第2の端面から延伸して前記天面の一部と、前記底面の一部と、前記第1の側面の一部と、前記第2の側面の一部と、を覆う、<1>または<2>に記載のコイル部品。
<4>前記第1の樹脂電極層は、前記第1の端面の一部を覆い、前記第2の樹脂電極層は、前記第2の端面の一部を覆い、
前記第1方向から透過して観たときに、前記第1の樹脂電極層のもっとも高い位置から前記底面までの距離は、前記第1の引き出し部の露出部のもっとも低い位置から前記底面までの距離よりも小さく、前記第2の樹脂電極層のもっとも高い位置から前記底面までの距離は、前記第2の引き出し部の露出部のもっとも低い位置から前記底面までの距離よりも小さい、<1>~<3>のいずれか1つに記載のコイル部品。
<5>前記第1の樹脂電極層は、前記第1の端面の一部と前記底面の一部とを覆い、
前記第2の樹脂電極層は、前記第2の端面の一部と前記底面の一部とを覆う、<1>~<4>のいずれか1つに記載のコイル部品。
<6>前記第1の樹脂電極層は、前記第1の端面と前記第1の底面とから延伸して、前記第1の側面の一部と前記第2の側面の一部とを覆い、
前記第2の樹脂電極層は、前記第2の端面と前記第1の底面とから延伸して、前記第1の側面の一部と前記第2の側面の一部とを覆う、<1>~<5>のいずれか1つに記載のコイル部品。
<7>前記天面、前記底面、前記第1の側面、前記第2の側面のうち少なくとも一面に判別マークが設けられている、<1>~<6>のいずれか1つに記載のコイル部品。
<8>前記コイル導体のコイル軸は前記第1方向と平行である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のコイル部品。
<9>前記コイル導体のコイル軸は前記第2方向と平行である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のコイル部品。
<10>前記素体は複数の絶縁層が積層されてなる、<1>~<9>のいずれか1つに記載のコイル部品。
<11>前記第1の金属膜は、前記第1の金属電極層と前記第1の樹脂電極層との両方に接触し、前記第2の金属膜は、前記第2の金属電極層と前記第2の樹脂電極層との両方に接触する、<1>~<10>のいずれか1つに記載のコイル部品。
<12>前記第1方向から透過して観たときに、
前記第1の金属膜は、前記第1の引き出し部の露出部と重なっており、前記第2の金属膜は、前記第2の引き出し部の露出部と重なっている、<1>~<11>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0080】
1 コイル部品
10 素体
11 第1の端面
12 第2の端面
13 天面
14 底面
15 第1の側面
16 第2の側面
21 第1の外部電極
21a 第1の金属電極層
21b 第1の樹脂電極層
21c 第1の金属膜
22 第2の外部電極
22a 第2の金属電極層
22b 第2の樹脂電極層
22c 第2の金属膜
31 第1の引き出し部
32 第2の引き出し部
A コイル軸
C コイル導体
M 判別マーク
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向
T11 第1の樹脂電極層のもっとも高い位置
T12 第1の引き出し部の露出部のもっとも低い位置
T21 第2の樹脂電極層のもっとも高い位置
T22 第2の引き出し部の露出部のもっとも低い位置
図1
図2
図3
図4
図5