(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129677
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 19/02 20060101AFI20240919BHJP
B61D 19/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B61D19/02 B
B61D19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039029
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 甫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(57)【要約】
【課題】気密扉の構造において、戸柱を要しない構成としつつ、省スペース化を図ることが可能な鉄道車両を提供すること。
【解決手段】車体2の側面部を形成する側構体22と、側面部に設けられた乗降口4と、車体2の軌道方向に沿って、乗降口4を塞ぐ閉位置と、乗降口4を開放する開位置と、の間でスライド移動が可能であるとともに、閉位置で、車体2の枕木方向に沿って、乗降口4のシール部材14に密着する近接位置と、シール部材14から離間する離間位置と、の間を移動可能なドア7と、を備える鉄道車両1において、ドア7は、枕木方向に平行な方向の引込み力を発生させる引込み手段9を備えること、側構体22は、閉位置にあるドア7の引込み手段9に対向する位置に、引込み力により引き込まれる被引込み部12を備えること、被引込み部12が引込み手段9により引き込まれることで、ドア7が離間位置から近接位置に移動されること。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面部を形成する側構体と、
前記側面部に設けられた乗降口と、
前記車体の軌道方向に沿って、前記乗降口を塞ぐ閉位置と前記乗降口を開放する開位置との間でスライド移動が可能であるとともに、前記閉位置で、前記車体の枕木方向に沿って、前記乗降口の周縁部に密着する近接位置と前記周縁部から離間する離間位置との間を移動可能なドアと、
を備える鉄道車両において、
前記ドアは、前記枕木方向に平行な方向の引込み力を発生させる引込み手段を備えること、
前記側構体は、前記閉位置にある前記ドアの前記引込み手段に対向する位置に、前記引込み力により引き込まれる被引込み部を備えること、
前記被引込み部が前記引込み手段により引き込まれることで、前記ドアが前記離間位置から前記近接位置に移動されること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記引込み手段は、回転力を発生する駆動源と、前記回転力により回転されるリンク部材と、回転する前記リンク部材により前記枕木方向に沿って進退するフック部材と、を備えること、
前記被引込み部は、前記フック部材と係合可能な被係合部を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記引込み手段は、マグネットグリッパであること、
前記被引込み部は、磁性部材により形成されること、
前記ドアは、前記ドアを前記近接位置に位置決めする位置決め手段を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄道車両において、
前記位置決め手段は、前記ドアに平行な方向に操作ロッドが進退するシリンダ装置と、前記操作ロッドの進退に伴い揺動するリンク部材と、を備えること、
前記側構体は、前記リンク部材と係合可能な被係合部を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速鉄道車両では、車両の側面部に設けられる乗降口に気密扉が用いられている。これは、車両のトンネル通過時や対向列車とのすれ違い時に、車両内外に生じる気圧差により、車内の気圧が急激に変動しないようにするためである。気密扉としては、例えば、特許文献1に開示される車両用ドア装置が知られている。
【0003】
従来技術に係る気密扉の構造について、
図15-
図20を用いて説明する。
図15は、従来技術におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが閉位置にある状態を示している。
図16は、
図15のI-I断面図である。
図17は、
図15のJ-J断面図である。
図18は、従来技術におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが開位置にある状態を示している。
図19は、
図18のK-K断面図である。
図20は、
図18のL-L断面図である。なお、
図15および
図18においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
図16および
図19においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が枕木方向である。
図17および
図20においては、図中の左右方向が枕木方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
【0004】
車体100は、例えば、車体100の床部を形成する床構体101と、車体100の側面部を形成する側構体102と、車体100の屋根部を形成する屋根構体103と、車体100の前面部及び後面部を形成する不図示の妻構体と、により略6面体状に形成されている。車体100の側面部には、乗客が乗り降りするための乗降口104が設けられており、この乗降口104はドア105により開閉される。
【0005】
ドア105の開閉は、例えばエアシリンダ106により行われる。エアシリンダ106は、乗降口104の上方において、車体100の内面に取り付けられている。エアシリンダ106は、操作エアにより車体100の軌道方向に進退可能な操作ロッド1061を備えている。そして、この操作ロッド1061とドア105とが連結部材108により連結されている。操作ロッド1061とドア105が連結されることにより、操作ロッド1061の進退に伴って、ドア105が、乗降口104を塞ぐ閉位置(
図15に示す位置)と、乗降口104を開放する開位置(
図18に示す位置)との間でスライド移動されるようになっている。なお、
図15および
図18中の右側がドア105の開方向であり、
図15および
図18中の左側がドア105の閉方向である。
【0006】
エアシリンダ106には、軌道方向に延在するレール107が一体とされている。ドア105は、滑車部材109によりレール107に吊り下げられており、これにより、ドア105のスライド移動が案内される。
【0007】
また、乗降口104の軌道方向の両端には、床構体101から屋根構体103に向かって一対の戸柱110,111が立設されている。
【0008】
戸柱110は、乗降口104の閉方向側(
図15および
図18中の左側)において、床構体101からドア105の上端部まで、高さ方向に沿って延在している。戸柱110は、高さ方向の下端部が、溶接により床構体101に接合されている(溶接部W51)。また、戸柱110は、側構体102に接合させるための接合部110aを備えている。そして、接合部110aが側構体102に接合されている(溶接部W52)。接合部110aは、戸柱110の高さ方向の全長に渡って設けられているため、戸柱110は、高さ方向の全長に渡って、側構体102に接合されている。
【0009】
戸柱111は、乗降口104の開方向側(
図15および
図18中の右側)において、床構体101から屋根構体103まで、高さ方向に沿って延在している。戸柱111は、高さ方向の下端部が、溶接により床構体101に接合されている(溶接部W53)。また、戸柱111は、
図17および
図20に示すように、高さ方向の上端部に、エアシリンダ106およびレール107との干渉を避けるための湾曲部111aを備えており、この湾曲部111aの先端が、溶接により屋根構体103に接合されている(溶接部W54)。なお、戸柱111と側構体102との間には、ドア105が開方向にスライド移動する際に通るための間隙を設ける必要があるため、戸柱111は側構体102に接合されていない。
【0010】
また、戸柱110,111は、閉位置にあるドア105を、車体100の枕木方向の外方側(
図16および
図19中の上方側)に押圧し、乗降口104の周縁部に密着させる押さえ装置112を備えている。押さえ装置112は、エアシリンダ等により、ドア105を押圧するための押圧部112aを枕木方向に進退させるものであり、例えば、特許文献1に開示されるドア押え装置や、特許文献2に開示される押さえ装置が知られている。また、戸柱110,111は、それぞれ2つずつ押さえ装置112を備えており、ドア105は4点で押圧されるようになっている。
【0011】
また、以上のような、戸柱110,111に設けられた押さえ装置112により、ドア105を、乗降口104の周縁部に密着させる構成の他、特許文献3に開示される押さえ装置も知られている。特許文献3に開示される押さえ装置は、側構体の内面に設けられており、車体の軌道方向に沿って進退するロッドを備えるシリンダ装置と、ロッドの進退に伴い回転するリンク部材と、を備えている。そして、リンク部材は、回転することでドアを車体外方側へ押圧し、乗降口の周縁部に密着させる。このように、押さえ装置を側構体に設けることで、戸柱を設けずとも、ドアを乗降口の周縁部に密着させ、気密を保つことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008-174149号公報
【特許文献2】特開2006-15814号公報
【特許文献3】特開2021-147013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
例えば、鉄道車両がトンネルを通過するときや対向列車とすれ違うとき、車体100の内部と外部に圧力差が生じ、車体100に気密荷重が負荷される。これにより、車体100が膨張または収縮する。車体100が膨張するとき、床構体101と屋根構体103は相互に離れる方向に力が加わる。一方で、車体100が収縮するとき、床構体101と屋根構体103は相互に近づく方向に力が加わる。このように、床構体101と屋根構体103とに、離れる方向、または近づく方向に力が加わったとき、戸柱111が床構体101と屋根構体103に突っ張る形で接合されているため、溶接部W53および溶接部W54は戸柱111の伸縮方向の反力によって応力集中が起こる。同様に、内部と外部の圧力差が生じた際に、戸柱110,111は押さえ装置112を介してドア105に加わった圧力荷重を戸柱110,111の梁の曲げ方向で荷重を受けるため、溶接部W53および溶接部W54に応力集中が起こる。これらの応力集中は、疲労破壊の原因となるおそれがある。疲労破壊を防ぐためには、床構体101や屋根構体103、戸柱111の強度を向上させることが考えられるが、鉄道車両の製造コストや質量の増大につながるため、好ましくない。
【0014】
一方、特許文献3に開示される押さえ装置を用い、戸柱を有さない気密扉の構成とすれば、上記のような応力集中は発生しない。しかし、この場合、側構体の内面に押さえ装置が位置するため、ドアを開位置と閉位置との間でスライド移動させる際、ドアと押さえ装置とが干渉しないようにしなければならない。このため、ドアがスライド移動を行う位置を、側構体からより車体内方側に離れた位置にする必要がある。よって、スライド移動のための動線確保のために、車内スペースが侵されることになるため、客室の居住性が低下するおそれがある。
【0015】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、気密扉の構造において、戸柱を要しない構成としつつ、省スペース化を図ることが可能な鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
【0017】
(1)車体の側面部を形成する側構体と、前記側面部に設けられた乗降口と、前記車体の軌道方向に沿って、前記乗降口を塞ぐ閉位置と、前記乗降口を開放する開位置と、の間でスライド移動が可能であるとともに、前記閉位置で、前記車体の枕木方向に沿って、前記乗降口の周縁部に密着する近接位置と、前記周縁部から離間する離間位置と、の間を移動可能なドアと、を備える鉄道車両において、前記ドアは、前記枕木方向に平行な方向の引込み力を発生させる引込み手段を備えること、前記側構体は、前記閉位置にある前記ドアの前記引込み手段に対向する位置に、前記引込み力により引き込まれる被引込み部を備えること、前記被引込み部が前記引込み手段により引き込まれることで、前記ドアが前記離間位置から前記近接位置に移動されること、を特徴とする。
【0018】
(2)(1)に記載の鉄道車両において、前記引込み手段は、回転力を発生する駆動源と、前記回転力により回転されるリンク部材と、回転する前記リンク部材により前記枕木方向に沿って進退するフック部材と、を備えること、前記被引込み部は、前記フック部材と係合可能な被係合部を備えること、が好ましい。
【0019】
(3)(1)に記載の鉄道車両において、前記引込み手段は、マグネットグリッパであること、前記被引込み部は、磁性部材により形成されること、前記ドアは、前記ドアを前記近接位置に位置決めする位置決め手段を備えること、が好ましい。
【0020】
(4)(3)に記載の鉄道車両において、前記位置決め手段は、前記ドアに平行な方向に操作ロッドが進退するシリンダ装置と、前記操作ロッドの進退に伴い揺動するリンク部材と、を備えること、前記側構体は、前記リンク部材と係合可能な被係合部を備えること、が好ましい。
【0021】
上記の鉄道車両によれば、ドアが引込み手段を備えており、当該引込み手段が、側構体に設けられた被引込み部を引き込むことで、ドアが近接位置(すなわち、乗降口の周縁部に密着する位置)に移動される。よって、従来用いられていた、ドアを近接位置に押さえ込む押さえ装置、ひいては、押さえ装置を設けるための戸柱を要しない。よって、戸柱を用いた場合に問題となっていた、戸柱の溶接部の応力集中が発生するおそれがない。
【0022】
また、特許文献3に開示されるように側構体の内面に押さえ装置を位置させるものでないため、ドアがスライド移動を行う位置を、側構体に可能な限り近づけることが可能である。よって、スライド移動の動線確保のために、車内スペースが侵され、客室の居住性が低下するおそれが低減される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の鉄道車両によれば、気密扉の構造において、戸柱を要しない構成としつつ、省スペース化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態に係る鉄道車両の側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る鉄道車両のドアを、車体の内側から見た様子を表す図である。
【
図4】
図2のB-B断面図であり、ドアが離間位置から近接位置に移動する過程を説明する図である。
【
図5】
図2のB-B断面図であり、ドアが離間位置から近接位置に移動する過程を説明する図である。
【
図6】
図2のB-B断面図であり、ドアが離間位置から近接位置に移動する過程を説明する図である。
【
図7】
図2のB-B断面図であり、ドアが離間位置から近接位置に移動する過程を説明する図である。
【
図8】
図2のB-B断面図であり、ドアが離間位置から近接位置に移動する過程を説明する図である。
【
図9】
図4のE-E断面図であり、引込み手段の構成を示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る鉄道車両のドアを、車体の内側から見た様子を表す図である。
【
図11】
図10のC-C断面図であり、ドアが離間位置から近接位置に移動する過程を説明する図である。
【
図12】
図10のC-C断面図であり、ドアが離間位置から近接位置に移動する過程を説明する図である。
【
図13】
図10のD-D断面図であり、ドアが近接位置にあるときの、位置決め手段の動作を説明する図である。
【
図14】
図10のD-D断面図であり、ドアが近接位置にあるときの、位置決め手段の動作を説明する図である。
【
図15】従来技術におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが閉位置にある状態を示している。
【
図18】従来技術におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが開位置にある状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本発明に係る鉄道車両の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。なお、
図1中の左右方向が軌道方向であり、
図1中の上下方向が高さ方向である。
図2は、第1の実施形態に係る鉄道車両1のドア7を、車体2の内側から見た様子を表す図である。なお、
図2においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
図3は、
図2のA-A断面図である。なお、
図3においては、図中の左右方向が枕木方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。なお、参照する図面は、説明を分かりやすくするためにデフォルメしており、形状や寸法を正確に表すものではない。
【0026】
鉄道車両1は、軌道6上を走行する、例えば特急車両である。この鉄道車両1は、
図1に示すように、車体2と、車体2を支持する台車3とを備えている。
【0027】
車体2は、鉄道車両1の床部をなす床構体21と、床構体21の枕木方向(
図1中の奥行方向)の両端部に立設されることで、鉄道車両1の側面部を形成する一対の側構体22と、床構体21の軌道方向の両端部に立設されることで、鉄道車両1の連結部を形成する一対の切妻構体24と、切妻構体24および側構体22の上端部に配置されることで、鉄道車両1の屋根部を形成する屋根構体23と、により6面体をなすように構成される。なお、各構体21,22,23,24は、例えば、アルミ合金製のダブルスキン構造を有している。しかし、これに限定されるものでなく、アルミ溶接構造または機械締結構造を有するものとしても良い。又、素材もアルミ合金に限らす他の軽合金やステンレス鋼などであっても良い。
【0028】
また、車体2の側面部(側構体22)には、軌道方向の両端部に、乗客が乗り降りするための乗降口4,4が設けられている。さらに側面部には、乗降口4,4に挟まれて、複数の窓5が、所定の間隔に並んで設けられている。なお、
図1において図示されていない側の側面部(
図1中の裏側の側面部)も同様に乗降口4および窓5を備えている。つまり、乗降口4は1台の車体2につき、4つ設けられている。ただし、車体2に設けられる乗降口4の数および窓5の数は特に限定されるものではない。
【0029】
乗降口4はドア7により開閉される。この開閉動作は、
図2に示すように、ドア7の上方に配置される駆動装置8により行われる。駆動装置8は、例えばエアシリンダ等であり、軌道方向に沿って駆動力を発生する。そして、ドア7は、軌道方向に延在するレール(不図示)に吊り下げられた吊り戸であり、駆動装置8から駆動力を与えられると、レールに案内されて、乗降口4を塞ぐ閉位置と、乗降口4を開放する開位置と、の間でスライド移動することが可能となっている。
図2中、実線で表すドア7が閉位置にある状態を示し、二点鎖線で表すドア7が開位置にある状態を示している。つまり、ドア7は、開位置から図中の左側にスライド移動することで、閉位置に位置することができ、その逆に、閉位置から図中の右側にスライド移動することで、開位置に位置することができる。なお、開位置と閉位置の位置関係は左右逆であっても良い。
【0030】
ドア7のスライド移動は、側構体22に対して距離C11(
図4参照)だけ離れた位置で行われる。距離C11は、スライド移動の際にドア7と側構体22との間に干渉が起きない範囲で、可能な限り小さく設定される。
【0031】
さらにドア7は、枕木方向に移動可能な自由度を持っており、閉位置において、枕木方向に沿って、乗降口4の周縁部に密着する近接位置と周縁部から離間する離間位置との間を移動可能とされている。
図4-
図8は、
図2のB-B断面図であり、ドア7が離間位置から近接位置に移動する過程を説明する図である。なお、
図4は、ドア7が離間位置に位置した状態であり、
図8は、ドア7が近接位置に位置した状態である。また、
図4-
図8においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が枕木方向である。
図9は、
図4のE-E断面図であり、引込み手段9の構成を示す図である。なお、参照する図面は、説明を分かりやすくするためにデフォルメしており、形状や寸法を正確に表すものではない。
【0032】
ドア7が、離間位置から近接位置に移動すると、
図8に示すように、乗降口4は車体2の内方側の周縁部に設けられたシール部材14に密着する。これにより、車体2内部の気密が保たれるようになっている。シール部材14は、内部が中空とされたチューブ状のゴム材である。ドア7が近接位置にあるとき、シール部材14は内部に空気が送り込まれて膨張する。これにより、ドア7とシール部材14とが確実に密着される。
【0033】
ドア7の離間位置から近接位置への移動は、
図4-
図8に示すように、ドア7が備える引込み手段9と、側構体22が備える被引込み部12と、によって行われる。
【0034】
引込み手段9は、ドア7の四隅に設けられている(
図2参照)。つまり、ドア7一枚につき、4台の引込み手段9を備えている。この引込み手段9は、駆動源91(
図2参照)と、リンク部材92と、フック部材93と、を備えている。
【0035】
駆動源91は、例えば電動式のモータであり、車体2の高さ方向に延伸する回転軸91a(
図2参照)を備えている。回転軸91aには、円盤状のリンク部材92が結合されている。このリンク部材92は、駆動源91の回転力により、回転軸91aを中心に回転可能である。なお、
図4-
図8に示す例では、回転軸91aを中心に時計回りに回転するが、回転方向はこれに限定されない。
【0036】
そして、リンク部材92には、フック部材93が連結されている。フック部材93は、先端部に鉤形状に湾曲した係合部931を備えている。また、フック部材93は、係合部931と反対側の端部に、リンク部材92に回転可能に連結される連結部932を備える。さらに、フック部材93は、係合部931と連結部932の間の胴部933が、支持部材94の支持部941にスライド可能に支持されている。なお、リンク部材92と、フック部材93と、支持部材94の高さ方向(
図4-
図8中の奥行方向)における位置関係は、
図9に示す通りで、駆動源91の側から、支持部材94、リンク部材92、フック部材93の順に位置している。以上のような引込み手段9の構成により、リンク部材92が駆動源91により回転されると、
図4-
図8に示すように、フック部材93が、枕木方向に沿って進退する。
【0037】
フック部材93が最も後退した位置(後退位置)に位置するのは、側構体22の側から、支持部941、回転軸91a、連結部932の順に、枕木方向と平行な方向に一直線に並んだときである。この状態から、リンク部材92が時計回りに約180度回転する間、フック部材93の突出動作が行われる。そして、側構体22の側から、支持部941、連結部932、回転軸91aの順に、枕木方向と平行な方向に一直線に並んだとき、フック部材93が最も側構体22の側に突出した位置(突出位置)に位置する(
図6参照)。そして、最も突出した状態から、リンク部材92が更に時計回りに回転する間、フック部材93の後退動作が行われる。つまり、リンク部材92の1回転につき、フック部材93の進退が1回行われる。
【0038】
フック部材93の進退が行われる間のフック部材93の姿勢は、支持部941と連結部932の位置関係により定まる。すなわち、支持部941と連結部932とを結んだ直線上に胴部933が位置するようになっている。このため、フック部材93が後退位置から突出位置まで移動する際、フック部材93は、連結部932を基点として図中右側に傾いた姿勢を取り、フック部材93が突出位置から後退位置まで移動する際、フック部材93は、連結部932を基点として図中左側に傾いた姿勢を取る。
【0039】
なお、フック部材93が最も後退した位置に位置しているとき、係合部931は、ドア7の側構体22の側の端面から突出していないことが望ましい。突出していると、ドア7がスライド移動する際に、側構体22と干渉するおそれがあるためである。
【0040】
被引込み部12は、側構体22の、閉位置にあるドア7の引込み手段9に対向する位置に設けられている。被引込み部12は、開口部121と、被係合部123と、を備えている。開口部121は、車体2の内方側に向かって開口しており、軌道方向の幅寸法および枕木方向の奥行寸法が、フック部材93の係合部931が進入可能な程度の大きさとされている。そして、被係合部123は、高さ方向と平行な方向に軸方向を有する略円柱形状であり、その直径はフック部材93の係合部931が係合可能な程度の大きさとされている。また、被係合部123の配設される位置は、開口部121に進入したフック部材93の係合部931と係合可能な位置に適宜調整される。
【0041】
以上のような構成の引込み手段9および被引込み部12によって、ドア7は、以下のようにして離間位置から近接位置に移動される。
【0042】
例えば、鉄道車両1が駅に停車したとき、ドア7は開位置に位置され、乗降口4が開放される。この状態で乗客の乗降が行われ、乗降が完了すると、ドア閉め動作が行われる。ドア閉め動作は、ドア7の、開位置から閉位置へのスライド移動と、離間位置から近接位置への移動と、により行われる。
【0043】
まず、ドア7は、開位置から閉位置にスライド移動し、乗降口4を塞ぐ。
図4は、ドア7が開位置から閉位置へのスライド移動を完了した時点を表しており、乗降口4の周縁部(シール部材14)から離間した離間位置に位置した状態である。このときフック部材93は、後退位置、もしくは、係合部931が、ドア7の側構体22の側の端面から突出していない程度の位置に位置している。
【0044】
ドア7がスライド移動を完了すると、引込み手段9が動作を開始する。すなわち、駆動源91が動作され、リンク部材92が時計回りに回転を始める。リンク部材92が時計回りに回転を始めると、フック部材93が突出位置に向かって移動していく。連結部932は、回転軸91aの枕木方向内側の位置(フック部材93が後退位置にあるとき、図中下側)からリンク部材92の時計回りの回転によって軌道方向左側に離間すると共に側構体22側(図中上側)に移動することで係合部931が軌道方向右側に移動しつつ側構体22側に突出する。連結部932が回転軸91aの軌道方向真横を通り過ぎて更にリンク部材92が時計回りに回転すると、連結部932は、軌道方向右側に移動すると共に側構体22側(図中上側)に更に移動することで係合部931が軌道方向左側に戻りつつ側構体22側に更に突出する。この突出位置への移動が行われている間、フック部材93は、連結部932を基点として図中右側に傾いた姿勢を取っている。このため、
図5に示すように、フック部材93の係合部931は、被係合部123の図中右側を通過しながら開口部121に進入していく。
【0045】
係合部931が開口部121に進入した後、更にリンク部材92が時計回りに回転すると係合部931の先端が被係合部123の枕木方向外側を右側から左側へ通過してフック部材93が突出位置に到達すると、
図6に示すように、フック部材93の姿勢が枕木方向と平行になり、被引込み部12の被係合部123が、湾曲された係合部931の内周側に位置した状態になる。
【0046】
フック部材93が突出位置に位置した状態から、リンク部材92がさらに回転すると、フック部材93は、後退位置に向かって移動していく。この際、フック部材93は、連結部932を基点として図中左側に傾いた姿勢を取る。つまり、フック部材93は後退しながら左側に傾く。これにより、
図7に示すように、係合部931が被係合部123にかみ合う。
【0047】
係合部931が被係合部123にかみ合った状態で、フック部材93が後退位置に向かって移動していくことで、フック部材93は被引込み部12をドア7の側に引き込んでいく。被引込み部12は側構体22に一体とされて自由度がない一方で、枕木方向の自由度を持っているのはドア7の方であるため、フック部材93が被引込み部12を引き込む引込み力により、ドア7が側構体22の側へ移動していく。すなわち、ドア7が離間位置から近接位置に向かって移動していく。そして、
図8に示すように、ドア7がシール部材14に密着する近接位置に達すると、引込み手段9は動作を停止する。引込み手段9が動作を停止した時点で、ドア閉め動作が完了され、鉄道車両1は、駅から発車する。そして、鉄道車両1の走行中に、車体2の内外に圧力差が生じ、ドア7に車体2の内方側に向かう圧力荷重が加わった場合でも、引込み手段9のフック部材93が被係合部123にかみ合っていることにより、ドア7が近接位置に保持される。このため、シール部材14により、車体2内の気密が保たれる。なお、引込み手段9が動作を停止する位置は、車体2内外の圧力差に耐えられる程度にドア7がシール部材14に密着する位置であれば良く、必ずしも、フック部材93が後退位置に位置した時点で停止させなければならないわけではない。なお、鉄道車両1が駅に到着し、ドア7を開く際には、上記したドア閉め動作を逆順(駆動源91により、リンク部材92を反時計回りに回転させる)で行えば良いので、詳細な説明は省略する。
【0048】
以上説明したように、第1の実施形態に係る鉄道車両1は、車体2の側面部を形成する側構体22と、側面部に設けられた乗降口4と、車体2の軌道方向に沿って、乗降口4を塞ぐ閉位置と、乗降口4を開放する開位置と、の間でスライド移動が可能であるとともに、閉位置で、車体2の枕木方向に沿って、乗降口4の周縁部(シール部材14)に密着する近接位置と、周縁部(シール部材14)から離間する離間位置と、の間を移動可能なドア7と、を備える鉄道車両1において、ドア7は、枕木方向に平行な方向の引込み力を発生させる引込み手段9を備えること、側構体22は、閉位置にあるドア7の引込み手段9に対向する位置に、引込み力により引き込まれる被引込み部12を備えること、被引込み部12が引込み手段9により引き込まれることで、ドア7が離間位置から近接位置に移動されること、を特徴とする。
【0049】
また、上記鉄道車両1において、引込み手段9は、回転力を発生する駆動源91と、回転力により回転されるリンク部材92と、回転するリンク部材92により枕木方向に沿って進退するフック部材93と、を備えること、被引込み部12は、フック部材93と係合可能な被係合部123を備えること、が好ましい。
【0050】
上記の鉄道車両1によれば、ドア7が引込み手段9を備えており、当該引込み手段9が、側構体22に設けられた被引込み部12を引き込むことで、ドア7が近接位置(すなわち、乗降口4の周縁部(シール部材14)に密着する位置)に移動される。よって、従来用いられていた、ドアを近接位置に押さえ込む押さえ装置、ひいては、押さえ装置を設けるための戸柱を要しない。よって、戸柱を用いた場合に問題となっていた、戸柱の溶接部の応力集中が発生するおそれがない。
【0051】
また、特許文献3に開示されるように側構体の内面に押さえ装置を位置させるものでないため、ドア7がスライド移動を行う位置(側構体22に対する距離C11)を、側構体22に可能な限り近づけることが可能である。よって、スライド移動の動線確保のために、車内スペースが侵され、客室の居住性が低下するおそれが低減される。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る鉄道車両の第2の実施形態について、
図10-
図14を参照しながら第1の実施形態と異なる点のみについて説明する。
図10は、第2の実施形態に係る鉄道車両50のドア7を、車体2の内側から見た様子を表す図である。なお、
図10中、実線で表すドア7が閉位置にある状態を示し、二点鎖線で表すドア7が開位置にある状態を示している。また、
図10においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
図11-
図12は、
図10のC-C断面図であり、ドア7が離間位置から近接位置に移動する過程を説明する図である。なお、
図11は、ドア7が離間位置に位置した状態であり、
図12は、ドア7が近接位置に位置した状態である。また、
図11-
図12においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が枕木方向である。
図13-
図14は、
図10のD-D断面図であり、ドア7が近接位置にあるときの、位置決め手段17の動作を説明する図である。なお、
図13-
図14においては、図中の左右方向が枕木方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。なお、参照する図面は、説明を分かりやすくするためにデフォルメしており、形状や寸法を正確に表すものではない。
【0053】
第2の実施形態に係る鉄道車両50におけるドア7の離間位置から近接位置への移動は、ドア7が備える引込み手段としてのマグネットグリッパ15と、側構体22が備える被引込み部16と、によって行われる。
【0054】
ドア7は、引込み手段としてマグネットグリッパ15を備えている。マグネットグリッパ15は、
図10に示すように、ドア7の四隅に設けられている。つまり、ドア7一枚につき、4台のマグネットグリッパ15を備えている。マグネットグリッパ15は、側構体22に対向する面が、対象物を磁力により吸着可能な吸着面15aになっている。このマグネットグリッパ15は、一般的なマグネットグリッパであり、内蔵されている永久磁石の方向を圧縮エア等により切り替えることで、吸着面15aによる吸着のオン・オフを切り替えることが可能なものある。
【0055】
被引込み部16は、側構体22の、閉位置にあるドア7のマグネットグリッパ15に対向する位置に固定されている。そして、被引込み部16は、マグネットグリッパ15の磁力により吸着可能な磁性部材により形成されている。
【0056】
さらに、ドア7は、ドア7を近接位置に位置決めするための位置決め手段17を備えている。位置決め手段17は、ドア7一枚につき、マグネットグリッパ15と同数の4台設けられており、
図10に示すように、ドア7の上端側においては、マグネットグリッパ15の下方側に配置され、ドア7の下端側においては、マグネットグリッパ15の上方側に配置されている。
【0057】
位置決め手段17は、
図13および
図14に示すように、電動式または空圧式のシリンダ装置171と、シリンダ装置171により揺動するリンク部材172と、を備えている。
【0058】
シリンダ装置171は、操作ロッド171aを備えている。操作ロッド171aは、
図13に示す後退位置と、
図14に示す突出位置との間で、車体2の高さ方向に沿って進退する。本実施形態においては、4台の位置決め手段17の内、ドア7の上端側の2台が、車体2の下方に向かって操作ロッド171aが進退し、ドア7の下端側の2台が、車体2の上方に向かって操作ロッド171aが進退するようにされている。ただし、これはあくまで一例であり、操作ロッド171aの進退する方向は、本実施形態に限定されない。当然に、軌道方向に沿って進退するものとしても良い。
【0059】
リンク部材172は、中間リンク部材173を介して、操作ロッド171aに連結されている。リンク部材172は、シリンダ装置171の側とは反対側に開口するように、略U字状に湾曲した形状を有している。湾曲部172cを挟んだ両端の内、側構体22側の端部が、後述するロックピン18(被係合部の一例)に係合可能なフック部172aであり、他端が支持部172bに揺動可能に支持されている。そして、湾曲部172cで、中間リンク部材173を介して、操作ロッド171aに連結されている。これにより、操作ロッド171aが進退するに伴って、リンク部材172が、支持部172bを支点として、ロックピン18に係合するロック位置(
図14参照)と、ロックピン18との係合が解除される開放位置(
図13参照)との間で揺動可能となっている。
【0060】
ロックピン18は、金属製の部材であり、ベースプレート181と、ロッド182と、を備えている。ベースプレート181は、平板状に形成されており、側構体22に溶接またはねじ止めにより固定されている。ロッド182は、略U字状に形成され、両端がベースプレート181に接合されている。
【0061】
以上のような構成のマグネットグリッパ15および被引込み部16、位置決め手段17によって、ドア7は、以下のようにして離間位置から近接位置に移動される
【0062】
例えば、鉄道車両1が駅に停車したとき、ドア7は開位置に位置され、乗降口4が開放される。この状態で乗客の乗降が行われ、乗降が完了すると、ドア閉め動作が行われる。ドア閉め動作は、ドア7の、開位置から閉位置へのスライド移動と、離間位置から近接位置への移動と、により行われる。
【0063】
まず、ドア7は、開位置から閉位置にスライド移動し、乗降口4を塞ぐ。
図11は、ドア7が開位置から閉位置へのスライド移動を完了した時点を表しており、乗降口4の周縁部(シール部材14)から離間した離間位置に位置した状態である。
【0064】
ドア7がスライド移動を完了すると、マグネットグリッパ15が動作され、吸着面15aにおいて、磁力による吸着が可能な状態とされる。これにより、磁力によりマグネットグリッパ15に対向して位置している被引込み部16が吸着面15aに吸引される。被引込み部16は側構体22に一体とされて自由度がない一方で、枕木方向の自由度を持っているのはドア7の方であるため、吸着面15aが被引込み部16を吸引することにより、ドア7が側構体22の側へ移動していく。すなわち、ドア7が離間位置から近接位置に向かって移動していく。具体的には、
図12に示すように、マグネットグリッパ15の吸着面15aと、被引込み部16が当接する位置まで移動する。
【0065】
ドア7が離間位置から近接位置に向かって移動していくとき、位置決め手段17が備えるリンク部材172のフック部172aは、ロッド182の上方を通過する。そして、ドア7が近接位置に位置した時点では、
図13に示すように、ロッド182がリンク部材172の湾曲部172cの下方に位置した状態になる。なお、これは、ドア7の上端側の位置決め手段17についての説明であり、ドア7の下端側の位置決め手段17においては、
図13を上下反転した状態になる。
【0066】
そして、ドア7がシール部材14に密着する近接位置に達すると、位置決め手段17が動作を開始する。すなわち、シリンダ装置171の操作ロッド171aが、後退状態から突出状態とされる。これにより、リンク部材172が支持部172bを支点として、開放位置からロック位置まで揺動し、
図14に示すように、フック部172aがロッド182に係合される。フック部172aがロッド182に係合された時点で、ドア閉め動作が完了され、鉄道車両1は、駅から発車する。そして、鉄道車両1の走行中に、車体2の内外に圧力差が生じ、ドア7に車体2の内方側に向かう圧力荷重が加わった場合でも、リンク部材172のフック部172aがロッド182にかみ合っていることにより、ドア7が近接位置に保持される。このため、シール部材14により、車体2内の気密が保たれる。
【0067】
以上説明したように、第2の実施形態に係る鉄道車両50は、引込み手段は、マグネットグリッパ15であること、被引込み部16は、磁性部材により形成されること、ドア7は、ドア7を近接位置に位置決めする位置決め手段17を備えること、が好ましい。
【0068】
上記の鉄道車両50において、位置決め手段17は、ドア7に平行な方向(例えば、車体2の高さ方向)に操作ロッド171aが進退するシリンダ装置171と、操作ロッド171aの進退に伴い揺動するリンク部材172と、を備えること、側構体22は、揺動するリンク部材172と係合可能な被係合部(ロックピン18)を備えること、が好ましい。
【0069】
上記の鉄道車両50によれば、ドア7が引込み手段としてのマグネットグリッパ15を備えており、当該マグネットグリッパ15が、側構体22に設けられた被引込み部16を引き込むことで、ドア7が近接位置(すなわち、乗降口4の周縁部(シール部材14)に密着する位置)に移動される。よって、従来用いられていた、ドアを近接位置に押さえ込む押さえ装置、ひいては、押さえ装置を設けるための戸柱を要しない。よって、戸柱を用いた場合に問題となっていた、戸柱の溶接部の応力集中が発生するおそれがない。
【0070】
また、特許文献3に開示されるように側構体の内面に押さえ装置を位置させるものでないため、ドア7がスライド移動を行う位置(側構体22に対する距離C11)を、側構体22に可能な限り近づけることが可能である。よって、スライド移動の動線確保のために、車内スペースが侵され、客室の居住性が低下するおそれが低減される。
【0071】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、本実施形態における鉄道車両1,50は、軌道方向の両端部に連結部が形成される中間車両であるが、これに限定されるものではなく、先頭車両であっても良い。また、例えば、シール部材14は、乗降口4の周縁部に設けられるものとして説明しているが、ドア7の、乗降口4の周縁部に対向する部分に設けても良い。本実施形態では、リンク部材92を円盤状の部材として説明したが、これに限定されるものではなく、回転軸91aから離間した位置で連結部932を回動可能に軸支する部材であればよく、たとえば、矩形の部材や、両端を半円形とした板状の部材であっても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 鉄道車両
2 車体
4 乗降口
7 ドア
9 引込み手段
12 被引込み部