(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129680
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】搬送方向変更装置
(51)【国際特許分類】
B65G 13/10 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
B65G13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039033
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久米 毅
【テーマコード(参考)】
3F033
【Fターム(参考)】
3F033BA03
3F033BB02
3F033EA06
(57)【要約】
【課題】少ない部品点数且つ簡単な構造の搬送方向変更装置を提供する。
【解決手段】搬送方向変更装置は、駆動ローラ20によってキャリアローラ10を駆動する。キャリアローラ10は一定の径を有する筒形状の筒状部11と、筒状部から離れるにつれて次第に縮小する径を有する鐘形状の鐘状部12とを備える。キャリアローラはトーションスプリング50によって駆動ローラ20に押し付けられている。駆動ローラ20はアクチュエータ24によって鉛直方向の位置を第1位置と第2位置との間で切り替え可能である。駆動ローラが第1位置にある場合、駆動ローラ20はキャリアローラ10の筒状部11と接触する。駆動ローラ20が第2位置にある場合、キャリアローラ10は駆動ローラ20から受ける力によってブラケット30の旋回軸33を中心に旋回し、駆動ローラ20はキャリアローラ10の鐘状部12と接触する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の搬送方向を変更する搬送方向変更装置において、
回転することにより前記物品を搬送するキャリアローラであって、
一定の径を有する筒形状の筒状部と、
前記筒状部から離れるにつれて次第に縮小する径を有する鐘形状の鐘状部と、を備えるキャリアローラと、
前記キャリアローラの周面に接触して前記キャリアローラを駆動する駆動ローラと、
前記キャリアローラを回転自在に支持する支持部材であって、
前記物品の搬送面に平行な面内で旋回軸を中心に旋回可能であり、
前記旋回軸は前記搬送面の平面視において前記筒状部よりも前記鐘状部の側に位置する、ように構成された支持部材と、
前記キャリアローラを前記駆動ローラに押し付けるバネ部材と、
前記駆動ローラを昇降させて前記駆動ローラの鉛直方向の位置を第1位置と前記第1位置よりも上方の第2位置との間で切り替え可能に構成された昇降装置と、を備え、
前記駆動ローラが前記第1位置にある場合、前記駆動ローラの回転中心線は前記キャリアローラの回転中心線よりも鉛直方向の下方に位置して前記駆動ローラは前記キャリアローラの前記筒状部と接触し、
前記駆動ローラが前記第2位置にある場合、前記駆動ローラの回転中心線は前記キャリアローラの回転中心線と略同じ高さに位置して前記駆動ローラは前記キャリアローラの前記鐘状部と接触する、ように構成されている
ことを特徴とする搬送方向変更装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送方向変更装置において、
前記キャリアローラは、
前記筒状部に設けられ前記駆動ローラに対する摩擦係数が高い材質で形成された第1グリップ面と、
前記鐘状部に設けられ前記駆動ローラに対する摩擦係数が高い材質で形成された第2グリップ面と、
前記第1グリップ面と前記第2グリップ面との間に設けられ前記第1グリップ面及び前記第2グリップ面よりも前記駆動ローラに対する摩擦係数が低い材質で形成されたスライド面と、を備える
ことを特徴とする搬送方向変更装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送方向変更装置において、
前記駆動ローラはモータが内蔵されたモータローラである
ことを特徴とする搬送方向変更装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の搬送方向変更装置において、
前記バネ部材は前記旋回軸に巻かれたトーションスプリングであり、前記トーションスプリングの一方の端部は前記支持部材に掛けられ、前記トーションスプリングの他方の端部は位置を固定された固定部材に掛けられ、前記駆動ローラが前記第2位置にある場合には、前記駆動ローラが前記第1位置にある場合よりも前記トーションスプリングの捩れ角度は増大する
ことを特徴とする搬送方向変更装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送方向変更装置において、
前記支持部材は、
前記キャリアローラの軸の一端を支持する第1横溝が前記駆動ローラに対向する側に形成された第1アームと、
前記キャリアローラの軸の他端を支持する第2横溝が前記駆動ローラに対向する側に形成された第2アームと、を備え、
前記キャリアローラが前記駆動ローラから離れる方向に旋回させることで、前記キャリアローラを前記第1横溝及び前記第2横溝から取り外し可能に構成されている
ことを特徴とする搬送方向変更装置。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送方向変更装置において、
前記キャリアローラの上方から被せられて前記支持部材に装着される天板をさらに備え、
前記天板は、
前記支持部材への装着時に前記キャリアローラの前記筒状部の一部が飛び出す開口部と、
前記支持部材への装着時に前記第1アームと組み合わせられて前記キャリアローラの軸の前記第1横溝からの脱離を防止する第1脚と、
前記支持部材への装着時に前記第2アームと組み合わせられて前記キャリアローラの軸の前記第2横溝からの脱離を防止する第2脚と、を備える
ことを特徴とする搬送方向変更装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の搬送方向を変更する装置に関し、特に、仕分け装置に用いて好適な搬送方向変更装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転するローラを用いて物品を搬送し、物品の搬送面に平行な面内でローラを旋回させて物品の搬送方向を変更するローラ旋回式の搬送方向変更装置が知られている。そのような搬送方向変更装置の代表的な用途は仕分け装置である。
【0003】
特許文献1には、従来の代表的なローラ旋回式の搬送方向変更装置(以下、従来技術という)が開示されている。従来技術では、モータによって駆動されるラインシャフトに仕分けローラが押し当てられ、ラインシャフトとから受ける摩擦によってローラが回転する。ローラはラインシャフトの両側に複数並んで配置されている。個々のローラはローラ支持枠によって個別に回転自在に支持されている。ローラ支持枠は軸受けによって回転自在に支持された旋回軸を有する。旋回軸の旋回中心線は左右対称の形状を有するローラの重心を通っている。各列のローラ支持枠はリンク機構によって互いに連結されている。リンク機構につながるロッドをエアシリンダによって伸縮することによって、ローラ支持枠とともにローラが一斉に旋回する。
【0004】
上記のように、特許文献1に開示された従来技術では、ローラの駆動にはモータによって駆動されるラインシャフトが用いられ、ローラの旋回にはエアシリンダによって動かされるリンク機構が用いられている。つまり、ローラの駆動と旋回は独立した機構で行われている。
【0005】
ローラの駆動と旋回を独立した機構で行うことは、従来のローラ旋回式の搬送方向変更装置では通常行われている一般的な技術である。例えば、本出願の出願時の技術レベルを知る上での参考となりうる先行技術文献としては、特許文献1の他にも特許文献2及び特許文献3を挙げることができる。特許文献2及び特許文献3のいずれに開示された従来技術でも、ローラの駆動と旋回は独立した機構で行われている。しかし、搭載される機構の数が増えれば、部品点数の増加に伴うメンテナンス性の悪化は避けられない。また、部品点数の増加の分、コストも増大することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5197269号公報
【特許文献2】特開2013-28418号公報
【特許文献3】国際公開第2019/167864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたものであり、少ない部品点数且つ簡単な構造のローラ旋回式の搬送方向変更装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る搬送方向変更装置は、回転することにより物品を搬送するキャリアローラ、キャリアローラの周面に接触してキャリアローラを駆動する駆動ローラ、キャリアローラを回転自在に支持する支持部材、キャリアローラを駆動ローラに押し付けるバネ部材、及び駆動ローラを昇降させる昇降装置を備える。
【0009】
キャリアローラは一定の径を有する筒形状の筒状部と、筒状部から離れるにつれて次第に縮小する径を有する鐘形状の鐘状部とを備える。支持部材は物品の搬送面に平行な面内で旋回軸を中心に旋回可能である。旋回軸は搬送面の平面視において筒状部よりも鐘状部の側に位置する。昇降装置は駆動ローラを昇降させて駆動ローラの鉛直方向の位置を第1位置と第1位置よりも上方の第2位置との間で切り替え可能に構成されている。本発明に係る搬送方向変更装置は、駆動ローラが第1位置にある場合、駆動ローラの回転中心線はキャリアローラの回転中心線よりも鉛直方向の下方に位置して駆動ローラはキャリアローラの筒状部と接触するように構成されている。また、本発明に係る搬送方向変更装置は、駆動ローラが第2位置にある場合、駆動ローラの回転中心線はキャリアローラの回転中心線と略同じ高さに位置して駆動ローラはキャリアローラの鐘状部と接触するように構成されている。
【0010】
以上のように構成される搬送方向変更装置によれば、昇降装置を下げて駆動ローラの位置を第1位置とすることで、キャリアローラの筒状部を駆動ローラに接触させることができる。この場合、キャリアローラの回転軸の方向は駆動ローラの回転軸の方向に一致するので、物品の搬送方向は直進方向となる。昇降装置を上げて駆動ローラの位置を第2位置とした場合、駆動ローラからキャリアローラへの押し付け力によるモーメントでキャリアローラを旋回軸の周りに旋回させ、キャリアローラの駆動ローラに接触する部位を筒状部から鐘状部へ移すことができる。この場合、キャリアローラの回転軸の方向は駆動ローラの回転軸の方向に対して傾くので、物品の搬送方向は直進方向に対して傾いた分岐方向となる。つまり、キャリアローラを駆動する駆動ローラを昇降させることで、物品の搬送方向を直進方向と分岐方向との間で切り替えることができる。また、鐘状部は筒状部よりも小径であるので、駆動ローラとの接触部が筒状部から鐘状部に切り替わることでキャリアローラの回転速度は上昇する。これにより、物品の搬送速度は直進搬送から分岐搬送への切り替えに伴い自ずと増速されることになるので、搬送方向変更装置が仕分け装置に適用された場合には、物品間のピッチが詰まることは無く高い仕分け能力が実現される。
【0011】
本発明に係る搬送方向変更装置において、キャリアローラは3つの面を備えてもよい。一つ目の面は、筒状部に設けられ駆動ローラに対する摩擦係数が高い材質で形成された第1グリップ面である。二つ目の面は、鐘状部に設けられ駆動ローラに対する摩擦係数が高い材質で形成された第2グリップ面である。そして、第3の面は、第1グリップ面と第2グリップ面との間に設けられ第1グリップ面及び第2グリップ面よりも駆動ローラに対する摩擦係数が低い材質で形成されたスライド面である。このような3つの面をキャリアローラに設けることで、直進方向への搬送時と分岐方向への搬送時において駆動ローラからキャリアローラへの確実な駆動力の伝達を可能にするとともに、搬送方向の滑らかな切り替えを実現することができる。
【0012】
本発明に係る搬送方向変更装置において、駆動ローラはモータが内蔵されたモータローラであってもよい。キャリアローラを複数列設ける場合には、駆動ローラも複数列設ける必要がある。その場合の各駆動ローラの昇降タイミングは必ずしも同一ではない。駆動ローラをモータローラとすることで、各駆動ローラを個別に任意のタイミングで昇降させることができる。もし、複数の駆動ローラをベルトやギヤ等によって機械的に連動させる場合、例えばローラを回転させるベルトに加えてプーリ等も必要となるため部品点数の増加につながってしまう。
【0013】
本発明に係る搬送方向変更装置において、バネ部材は旋回軸に巻かれたトーションスプリングでもよい。トーションスプリングの一方の端部は支持部材に掛けられ、トーションスプリングの他方の端部は位置を固定された固定部材に掛けられる。トーションスプリングは、駆動ローラが第2位置にある場合には、駆動ローラが第1位置にある場合よりも捩れ角度が増大するように取り付けられる。これによれば、支持部材がトーションスプリングから受けるバネ力によってキャリアローラを駆動ローラに押し付けることができる。
【0014】
本発明に係る搬送方向変更装置において、支持部材は第1アームと第2アームとを備えてもよい。第1アームの駆動ローラに対向する側には、キャリアローラの軸の一端を支持する第1横溝が形成されてもよい。第2アームの駆動ローラに対向する側には、キャリアローラの軸の他端を支持する第2横溝が形成されてもよい。支持部材は、キャリアローラが駆動ローラから離れる方向に支持部材を旋回させることで、キャリアローラを第1横溝及び第2横溝から取り外し可能に構成されてもよい。このような構成によれば、トーションスプリングによるバネ力に抗して支持部材を旋回させるだけで、キャリアローラを支持部材から容易に取り外すことができ、キャリアローラの交換を含むメンテナンスを容易にすることができる。また、トーションスプリングから受けるバネ力によって支持部材がキャリアローラを駆動ローラに押し付けることで、キャリアローラの支持部材からの脱離は抑えられている。
【0015】
本発明に係る搬送方向変更装置において、キャリアローラの上方から被せられて支持部材に装着される天板をさらに備えてもよい。天板は支持部材への装着時にキャリアローラの筒状部の一部が飛び出す開口部を備える。また、天板は支持部材への装着時に第1アームと組み合わせられる第1脚と、支持部材への装着時に第2アームと組み合わせられる第2脚とを備える。第1脚は第1アームと組み合わせられることでキャリアローラの軸の第1横溝からの脱離を防止するように構成されてもよい。第2脚は第2アームと組み合わせられることでキャリアローラの軸の第2横溝からの脱離を防止するように構成されてもよい。このような天板を備えることで、キャリアローラの支持部材からの脱離を防止することができる。また、天板は簡単に上方に抜き取ることができるので、天板によってキャリアローラの取り外しの容易さが阻害されることもない。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明に係る搬送方向変更装置によれば、キャリアローラを駆動する駆動ローラによってキャリアローラを旋回させ、物品の搬送方向を直進方向と分岐方向との間で切り替えることができる。このようにキャリアローラの駆動と旋回をともに駆動ローラで行えるようにしたことで、部品点数の削減によるメンテナンス性の向上とコストダウンが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】搬送方向変更装置の直進搬送時の構造を示す平面図である。
【
図2】搬送方向変更装置の分岐搬送時の構造を示す平面図である。
【
図3】ローラユニットの直進搬送時の構造を示す平面図である。
【
図4】ローラユニットの直進搬送時の構造を示す正面図である。
【
図5】ローラユニットの直進搬送時の構造を示す側面図である。
【
図6】ローラユニットの分岐搬送時の構造を示す平面図である。
【
図7】ローラユニットの分岐搬送時の構造を示す正面図である。
【
図8】ローラユニットの分岐搬送時の構造を示す側面図である。
【
図9】天板及びキャリアローラの取り付け/取り外し方法を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び
図2は本発明の実施形態に係る搬送方向変更装置の構造を示す平面図である。搬送方向変更装置2は複数のローラユニット100を備える。
図1及び
図2に示す例では、左右のフレーム6と前後のフレーム4とからなる枠内に4つのローラユニット100が搬送方向に並べて配置されている。ローラユニット100は1本の駆動ローラ20と、その両側に並べられた複数のキャリアローラ10とを備える。キャリアローラ10は搬送対象である物品に直接接触し、回転することで回転方向に物品を搬送するローラである。駆動ローラ20はキャリアローラ10に接触し、接触面間の摩擦によってキャリアローラ10を駆動するローラである。
図1及び
図2に示す例では、駆動ローラ20の両側の各列には6つのキャリアローラ10が等間隔で並べられている。
【0019】
図1は搬送方向変更装置2の直進搬送時の構造を示す平面図である。直進搬送時はキャリアローラ10の回転軸の方向は駆動ローラ20の回転軸の方向に一致させられる。これにより、物品はローラユニット100が並んでいる方向、すなわち、直進方向に搬送される。一方、
図2は搬送方向変更装置2の分岐搬送時の構造を示す平面図である。分岐搬送時はキャリアローラ10を旋回させることで、キャリアローラ10の回転軸の方向は駆動ローラ20の回転軸の方向に対して所定角度だけ傾けられる。これにより、物品はローラユニット100が並んでいる方向から外れた方向、すなわち、分岐方向に搬送される。
【0020】
以下、搬送方向変更装置2を構成するローラユニット100の構造について
図3乃至
図8を用いて説明する。ただし、キャリアローラ10はそれを支持する構造なども含めて全て同一構造であるため、ここでは駆動ローラ20の両側に対向して配置される一組のキャリアローラ10に着目して説明するものとする。
【0021】
まず、ローラユニット100の直進搬送時の構造から説明する。
図3はローラユニット100の直進搬送時の構造を示す平面図である。
図4はローラユニット100の直進搬送時の構造を示す正面図である。そして、
図5はローラユニット100の直進搬送時の構造を示す側面図である。以下の説明では、参照すべき図面について特に言及しない限り、
図3乃至
図5のどの図面を参照してもよい。ただし、直進搬送時の構造について正確に理解する上では、
図3乃至
図5の全てを適宜参照することが好ましい。
【0022】
キャリアローラ10は一定の径を有する筒形状の筒状部と、筒状部から離れるにつれて次第に縮小する径を有する鐘形状の鐘状部とからなり、全体として寸胴の胴部を有する釣鐘のような形状を有している。キャリアローラ10の周面は3つの面に分割される。一つ目の面は筒状部に相当する面11であり、その機能に基づいて第1グリップ面と名付ける。二つ目の面は鐘状部に相当する面12であり、その機能に基づいて第2グリップ面と名付ける。三つ目の面は筒状部と鐘状部との境目に相当する面13であり、その機能に基づいてスライド面と名付ける。
【0023】
キャリアローラ10の第1グリップ面11は駆動ローラ20に対する摩擦係数が高い材質、より具体的には、直進搬送時に駆動ローラ20の表面を確実にグリップできる材質で形成されている。第2グリップ面12もまた駆動ローラ20に対する摩擦係数が高い材質で形成されている。駆動ローラ20の材質が例えばステンレスやアルミ等の金属である場合、第1グリップ面11及び第2グリップ面12の材質としては例えばウレタンを用いることができる。ただし、第1グリップ面11と第2グリップ面12とは異なる材質であってもよい。
【0024】
キャリアローラ10のスライド面13は第1グリップ面11及び第2グリップ面12よりも駆動ローラ20に対する摩擦係数が低い材質、より具体的には、駆動ローラ20に対して滑りが生じる材質で形成されている。駆動ローラ20の材質が例えばステンレスやアルミ等の金属である場合、スライド面13の材質としては例えばポリアセタールを用いることができる。
【0025】
図4及び
図5に示すように、キャリアローラ10の両端には固定用の軸14、15が設けられている。軸14、15はキャリアローラ10の回転中心線61上にあり、キャリアローラ10は軸14、15に対して回転自在である。キャリアローラ10の軸14、15は支持部材であるブラケット30に取り付けられる。
【0026】
ブラケット30は第1グリップ面11側の軸14が取り付けられる第1アーム31と、第2グリップ面12側の軸15が取り付けられる第2アーム32とを備える。
図5に示すように、第1アーム31には第1横溝35が形成され、第2アーム32には第2横溝36が形成されている。第1横溝35と第2横溝36は、いずれも各アーム31、32の駆動ローラ20に対向する側に形成されている。第1横溝35には軸14が嵌め込まれ、第2横溝36には軸15が嵌め込まれる。このように軸14、15が各アーム31、32に取り付けられることで、キャリアローラ10はブラケット30に回転自在に支持される。
【0027】
ブラケット30の底部には旋回軸33が取り付けられている。旋回軸33はナットを用いてブラケット30に締結されている。
図3及び
図4に示すように、旋回軸33は回転中心線61の方向においてブラケット30の中央よりも第2アーム32の側にオフセットして設けられている。より詳しくは、ブラケット30にキャリアローラ10を装着した状態において、旋回軸33の旋回中心線60が第2グリップ面12を通る位置に旋回軸33は設けられている。また、
図3及び
図5に示すように、旋回軸33は旋回中心線60と回転中心線61とが交わることになる位置に設けられている。旋回軸33は搬送方向変更装置2の底板8に固定された固定部材としての旋回軸受け40に差し込まれ、ブラケット30は旋回軸受け40によって回転自在に支持されている。
【0028】
ブラケット30と旋回軸受け40との隙間に露出している旋回軸33にはトーションスプリング50が巻かれている。
図3及び
図4に示すように、ブラケット30の底部にはトーションスプリング50の一方の端部が掛けられるストッパ34が設けられ、旋回軸受け40の頂部にはトーションスプリング50の他方の端部が掛けられるストッパ41が設けられている。
図3に示すように、トーションスプリング50は、キャリアローラ10の第1グリップ面11が駆動ローラ20から離れる方向にブラケット30を旋回させたときに、トーションスプリング50の捩れ角度が増大するように取り付けられている。
【0029】
駆動ローラ20はモータが内蔵されたモータローラである。外部からの電力の供給を受けて、駆動ローラ20は端部の軸22(
図1及び
図2参照)に対して一方向に回転する。
図5に示すように、駆動ローラ20の端部は駆動ローラ支持ブラケット23によって支持されている。駆動ローラ支持ブラケット23はアクチュエータ24のロッド25の先端に取り付けられてアクチュエータ24によって支持されている。アクチュエータ24がロッド25を伸縮させることで、駆動ローラ支持ブラケット23とともに駆動ローラ20を昇降させることができる。すなわち、アクチュエータ24は駆動ローラ20を昇降させる昇降装置として機能する。なお、駆動ローラ支持ブラケット23には、昇降時の姿勢を維持するための図示しない昇降ガイドが取り付けられている。アクチュエータ24は例えばエアシリンダでもよいし油圧シリンダでもよいし電動シリンダでもよい。
図5に示す駆動ローラ20の位置はアクチュエータ24がロッド25を縮めたときの位置であり、これを駆動ローラ20の第1位置と呼ぶ。
【0030】
図4及び
図5に示すように、駆動ローラ20が第1位置にある場合、駆動ローラ20の回転中心線62はキャリアローラ10の回転中心線61よりも鉛直方向の下方に位置する。駆動ローラ20の第1位置は、駆動ローラ20の回転中心線62とキャリアローラ10の回転中心線61とが平行になり、駆動ローラ20の周面にキャリアローラ10の第1グリップ面11が接触するように調整されている。
【0031】
駆動ローラ20が第1位置にある場合、キャリアローラ10の第1グリップ面11は、ブラケット30を介して受けるトーションスプリング50のバネ力によって駆動ローラ20の周面に常時押し付けられる。駆動ローラ20の周面と第1グリップ面11との間の摩擦によって駆動ローラ20の回転はキャリアローラ10に伝達され、キャリアローラ10は回転中心線61を中心に回転する。
【0032】
駆動ローラ20に対するキャリアローラ10の位置及び姿勢が
図3乃至
図5に示すように調整されることで、キャリアローラ10による物品の搬送方向はローラユニット100の並びの方向と一致し、物品は直進搬送される。なお、搬送時に物品に接触するキャリアローラ10の面は第1グリップ面11であり、第1グリップ面11の頂部を結ぶ平面が物品の搬送面となる。
【0033】
次に、ローラユニット100の分岐搬送時の構造から説明する。
図6はローラユニット100の分岐搬送時の構造を示す平面図である。
図7はローラユニット100の分岐搬送時の構造を示す正面図である。そして、
図8はローラユニット100の分岐搬送時の構造を示す側面図である。以下の説明では、参照すべき図面について特に言及しない限り、
図6乃至
図8のどの図面を参照してもよい。ただし、分岐搬送時の構造について正確に理解する上では、
図6乃至
図8の全てを適宜参照することが好ましい。
【0034】
図8に示すように、分岐搬送時にはアクチュエータ24によってロッド25が伸ばされ、駆動ローラ20は第1位置よりも上方の第2位置まで上昇移動する。駆動ローラ20の周面にはトーションスプリング50のバネ力によってキャリアローラ10が押し付けられている。駆動ローラ20が上昇することで、駆動ローラ20からキャリアローラ10に作用する押し付け力、すなわち、トーションスプリング50による押付け力に対する反力が増大する。
【0035】
キャリアローラ10が旋回する旋回中心線60は駆動ローラ20とキャリアローラ10の接触点、すなわち、反力の作用点よりもブラケット30の第2アーム32の側にオフセットしている。このため、押し付け力の増大は旋回中心線60の周りに発生するモーメントを増大させて、第1グリップ面11が駆動ローラ20の周面から遠ざかる方向にキャリアローラ10を旋回させる。キャリアローラ10の旋回によって、駆動ローラ20の周面と接するキャリアローラ10の面は第1グリップ面11からスライド面13に移り、スライド面13から第2グリップ面12へと移っていく。
【0036】
キャリアローラ10が旋回する際、旋回開始から終了までの間トーションスプリング50による押付け力によってキャリアローラ10と駆動ローラ20との接触は維持される。そして、第1グリップ面11から第2グリップ面12へ駆動ローラ20との接触面が切り替わる際、駆動ローラ20との接触面は第1グリップ面11と第2グリップ面12との間に形成されたスライド面13を経由する。スライド面13は駆動ローラ20に対して滑りが発生する低摩擦の面であるので、駆動ローラ20が上昇する際及び下降する際に引っ掛かりが生じることなく接触面は滑らかに切り替えられる。旋回時の接触面の引っ掛かりはアクチュエータ24の負荷を増大させる要因となるが、スライド面13によって引っ掛かりが防止されることで、アクチュエータ24の負荷の増大も抑制される。
【0037】
そして、
図7及び
図8に示すように、駆動ローラ20が第2位置まで上昇した場合、駆動ローラ20の回転中心線62はキャリアローラ10の回転中心線61と略同じ高さに位置する。
図6及び
図8に示すように、駆動ローラ20の第2位置は、キャリアローラ10の回転中心線61が駆動ローラ20の回転中心線62に対して傾き、駆動ローラ20の周面にキャリアローラ10の第2グリップ面12が接触するように調整されている。
【0038】
駆動ローラ20が第2位置にある場合、キャリアローラ10の第2グリップ面12は、ブラケット30を介して受けるトーションスプリング50のバネ力によって駆動ローラ20の周面に常時押し付けられる。駆動ローラ20の周面と第2グリップ面12との間の摩擦によって駆動ローラ20の回転はキャリアローラ10に伝達され、キャリアローラ10は回転中心線61を中心に回転する。第2グリップ面12は第1グリップ面11よりも小径であるので、駆動ローラ20の周面との接触面が第1グリップ面11から第2グリップ面12に切り替わることでキャリアローラ10の回転速度は上昇する。
【0039】
駆動ローラ20に対するキャリアローラ10の位置及び姿勢が
図6乃至
図8に示すように調整されることで、キャリアローラ10による物品の搬送方向はローラユニット100の並びの方向に対して所定角度だけ傾き、物品は分岐搬送される。そして、物品の搬送速度は直進搬送から分岐搬送への切り替えに伴いキャリアローラ10の回転速度が上昇することで自ずと増速されることから、物品間のピッチが詰まることは無く高い仕分け能力が実現される。なお、分岐搬送時においても搬送時に物品に接触するキャリアローラ10の面は第1グリップ面11であり、第1グリップ面11の頂部を結ぶ平面が物品の搬送面となる。
【0040】
以上の説明のとおり、搬送方向変更装置2によれば、キャリアローラ10を駆動する駆動ローラ20をアクチュエータ24で昇降させることで、物品の搬送方向を直進方向と分岐方向との間で切り替えることができる。つまり、搬送方向変更装置2によれば、キャリアローラ10の駆動と旋回をともに駆動ローラ20で行うことができる。このような構造であれば、駆動と旋回が別々の機構で行われる構造に比較して部品点数が削減されるので、メンテナンス性が向上し且つコストダウンが図られる。
【0041】
なお、搬送方向の切り替えはローラユニット100毎に異なるタイミングで行われる場合がある。例えば、上流から連続して流れてきた二つの物品のうち前の物品はそのまま直進搬送し、後の物品は分岐搬送する場合、各ローラユニット100では前の物品が通過した後すぐに搬送方向の切り替えが行われる。搬送方向の切り替えはアクチュエータ24によって駆動ローラ20を昇降させることで行われる。本実施形態では駆動ローラ20をモータローラとしたことで、各駆動ローラ20を個別に任意のタイミングで昇降させることができる。ここで、もし全てのローラユニット100の駆動ローラ20がベルトやギヤ等によって機械的に連動して駆動されるのであれば、例えばローラを回転させるベルトに加えてプーリ等も必要となるため部品点数の増加につながってしまう。
【0042】
また、上述のように、キャリアローラ10は、その軸14、15をブラケット30に形成された横溝35、36に嵌め込むことでブラケット30に支持されている。そして、トーションスプリング50のバネ力によってブラケット30がキャリアローラ10を駆動ローラ20に押し付けることで、キャリアローラ10のブラケット30からの脱離は抑えられている。このような構造であれば、トーションスプリング50によるバネ力に抗してブラケット30を強制的に旋回させるだけで、キャリアローラ10をブラケット30から容易に取り外すことができる。つまり、キャリアローラ10の交換を含むメンテナンスを容易に行うことができる。
【0043】
ところで、搬送方向変更装置2には、ローラユニット100の内部への異物の落下や物品の噛み込みを防止するための天板を取り付けることができる。一つの実施形態では、天板はキャリアローラ10毎に取り付けられる。
図9は天板70及びキャリアローラ10のブラケット30に対する取り付け/取り外し方法を示す外観図である。
【0044】
天板70は直接にはブラケット30に取り付けられる。天板70は2つの脚71、脚72を備える。二つの脚71、脚72のうちの第1脚71は天板70のブラケット30への取り付け時に第1アーム31と組み合わせられる。第2脚72は天板70のブラケット30への取り付け時に第2アーム32と組み合わせられる。天板70の取り付けを可能にするため、ブラケット30の第1アーム31と第2アーム32にはそれぞれ凸部37、38が形成されている。また、天板70の第1脚71と第2脚72にはそれぞれ凹部73、74が形成されている。凸部37が凹部73に嵌合し、凸部38が凹部74に嵌合することで、天板70はブラケット30に固定される。また、凹部73、74はキャリアローラ10の軸14、15が横溝35、36から脱離することを防ぐストッパとしても機能する。
【0045】
天板70には開口部75が形成されている。天板70のブラケット30への装着時、開口部75からは物品の搬送面となる第1グリップ面11が飛び出すようになっている。
図9に示すように、取り付け時には、まず、キャリアローラ10がブラケット30に取り付けられ、次に、天板70がブラケット30に取り付けられる。これにより、キャリアローラ10のブラケット30からの脱離が防止される。取り外し時には、取り付け時とは逆に、まず、天板70がブラケット30から取り外され、次に、キャリアローラ10がブラケット30から取り外される。天板70は簡単に上方に抜き取ることができるので、天板70によってキャリアローラ10の取り外しの容易さが阻害されることはない。
【符号の説明】
【0046】
2:搬送方向変更装置
10:キャリアローラ
11:第1グリップ面
12:第2グリップ面
13:スライド面
20:駆動ローラ
23:駆動ローラ支持ブラケット
24:アクチュエータ
25:ロッド
30:ブラケット
31:第1アーム
32:第2アーム
33:旋回軸
34:ストッパ
35:第1横溝
36:第2横溝
40:旋回軸受け
41:ストッパ
50:トーションスプリング
60:旋回中心線
61:キャリアローラの回転中心線
62:駆動ローラの回転中心線
70:天板
71:第1脚
72:第2脚
75:開口部