(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129685
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】シーリング装置、シーリング材の吐出制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20240919BHJP
E04F 21/165 20060101ALI20240919BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240919BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240919BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240919BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240919BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B05C5/00 101
E04F21/165 C
E04F21/165 K
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
B05D3/00 D
B05D7/00 L
B05D7/24 301N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039039
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】000135999
【氏名又は名称】株式会社ヒロテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀太郎
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
(72)【発明者】
【氏名】堤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】貞近 幹亮
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一也
(72)【発明者】
【氏名】冨永 誠
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC94
4D075AC95
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA07
4D075DA32
4D075DC02
4D075EA05
4D075EA39
4F041AA08
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA23
4F041BA35
4F042AA16
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA25
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB10
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】外壁の目地にシーリング材を充填するための部品の破損を防止することができるシーリング装置を提供する。
【解決手段】シーリング装置は、シーリング材が内在するタンク内の第1圧力を検出する第1圧力センサと、前記タンクから、前記シーリング材を吐出する吐出部に前記シーリング材を供給する配管内の第2圧力を検出する第2圧力センサと、前記第1圧力および前記第2圧力に基づいて、前記シーリング材の吐出を制御する制御部と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーリング材が内在するタンク内の第1圧力を検出する第1圧力センサと、
前記タンクから、前記シーリング材を吐出する吐出部に前記シーリング材を供給する配管内の第2圧力を検出する第2圧力センサと、
前記第1圧力および前記第2圧力に基づいて、前記シーリング材の吐出を制御する制御部と、を含む、
シーリング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1圧力が第1閾値まで到達した後、第2圧力が第2閾値に到達した時に、前記吐出部から前記シーリング材を吐出開始可能な状態に設定する、
請求項1に記載のシーリング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2圧力が所定の範囲内にあるときに、前記シーリング材の吐出継続状態に設定する、
請求項2に記載のシーリング装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1圧力が前記第1閾値よりも高い第3閾値を超える又は前記第2圧力が前記第2閾値よりも高い第4閾値を超えるときに、前記タンクへの加圧を停止する、
請求項2に記載のシーリング装置。
【請求項5】
前記制御部は、所定の期間において前記第1圧力が前記第1閾値未満である又は前記第2圧力が前記第2閾値未満であるときに、警告情報を生成する、
請求項2に記載のシーリング装置。
【請求項6】
シーリング装置の制御部が、
シーリング材が内在するタンク内の第1圧力を取得し、
前記タンクから、前記シーリング材を吐出する吐出部に前記シーリング材を供給する配管内の第2圧力を取得し、
前記第1圧力および前記第2圧力に基づいて、前記シーリング材の吐出を制御する、
シーリング材の吐出制御方法。
【請求項7】
シーリング材が内在するタンク内の第1圧力を取得し、
前記タンクから、前記シーリング材を吐出する吐出部に前記シーリング材を供給する配管内の第2圧力を取得し、
前記第1圧力および前記第2圧力に基づいて、前記シーリング材の吐出を制御することをコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁の目地にシーリング材を充填するシーリング装置、シーリング材の吐出制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
外壁を複数の外壁パネルによって施工した場合には、外壁パネル間に形成される目地に防水のためのシーリングが施工される。人手によってシーリング材を充填する工事を施工するためには、外壁に足場を架設したり、ゴンドラを吊り下げたりする必要がある。また、目地の周りにマスキングテープを貼る作業や、充填されたシーリング材の表面をヘラで均す作業が必要となる。これに対し、外壁の目地へシーリング材を自動で充填する装置が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-268973号公報
【特許文献2】特開2002-121889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術の場合、シーリング材を自動施工する際、真空状態のタンクおよびホースには圧力がかかるため、過剰な圧力がかかるとタンクの破損やホースが破裂する恐れがある。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、外壁の目地にシーリング材を充填するための部品の破損を防止する装置および方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、シーリング材が内在するタンク内の第1圧力を検出する第1圧力センサと、前記タンクから、前記シーリング材を吐出する吐出部に前記シーリング材を供給する配管内の第2圧力を検出する第2圧力センサと、前記第1圧力および前記第2圧力に基づいて、前記シーリング材の吐出を制御する制御部と、を含む、シーリング装置が提供される。
【0007】
上記シーリング装置において、前記制御部は、前記第1圧力が第1閾値まで到達した後、第2圧力が第2閾値に到達した時に、前記吐出部から前記シーリング材を吐出開始可能な状態に設定してもよい。
【0008】
上記シーリング装置において、前記制御部は、前記第2圧力が所定の範囲内にあるときに、前記シーリング材の吐出継続状態に設定してもよい。
【0009】
上記シーリング装置において、前記制御部は、前記第1圧力が前記第1閾値よりも高い第3閾値を超える又は前記第2圧力が前記第2閾値よりも高い第4閾値を超えるときに、前記タンクへの加圧を停止してもよい。
【0010】
上記シーリング装置において、前記制御部は、前記制御部は、所定の期間において前記第1圧力が前記第1閾値未満である又は前記第2圧力が前記第2閾値未満であるときに、警告情報を生成してもよい。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、シーリング装置の制御部が、シーリング材が内在するタンク内の第1圧力を取得し、前記タンクから、前記シーリング材を吐出する吐出部に前記シーリング材を供給する配管内の第2圧力を取得し、前記第1圧力および前記第2圧に基づいて、前記シーリング材の吐出を制御する、シーリング材の吐出制御方法が提供される。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、シーリング材が内在するタンク内の第1圧力を取得し、前記タンクから、前記シーリング材を吐出する吐出部に前記シーリング材を供給する配管内の第2圧力を取得し、前記第1圧力および前記第2圧力に基づいて、前記シーリング材の吐出を制御することをコンピュータに実行させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いることにより、外壁の目地にシーリング材を充填するための部品の破損を防止する装置および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るシーリング装置の概要を示す図である。
【
図2】本発明に係るシーリング装置の構成を示す正面図である。
【
図3】本発明に係るシーリング装置の構成を示す側面図である。
【
図4】本発明に係るシーリングシステムの機能的な構成を示す図である。
【
図5】本発明に係る本体制御部の機能ブロック図である。
【
図6】本発明に係るシーリング装置の動作フローを示す図である。
【
図7】本発明に係るシーリング装置の動作フローを示す図である。
【
図8】本発明に係るシーリング装置の動作フローを示す図である。
【
図9】本発明に係るシーリング装置の動作フローを示す図である。
【
図10】本発明に係るシーリング装置の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(または数字の後にA、Bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0016】
1.シーリングシステム
図1は、本実施形態に係るシーリングシステム100の全体的な構成を示す。シーリングシステム100は、シーリング装置102と駆動装置104とを含む。
図1はシーリングシステム100の構成を模式的に示し、外壁200を側面から見たときの状態に加え、外壁200を正面からみたときの状態を挿入図として示す。外壁200は複数の外壁パネルにより形成され、外壁パネルの繋ぎ目に目地202が形成されている。シーリングシステム100は、目地202(以下、特段の断りがない限り「縦目地」を指すものとする。)にシーリング材を充填する工事に用いられる。
【0017】
シーリング装置102は、シーリング材充填ユニット106、およびローラユニット108、支持体110、センサ112(第1センサ112Aおよび第2センサ112B)を含む。シーリング材充填ユニット106およびローラユニット108は支持体110に取り付けられる。シーリング材充填ユニット106は目地202にシーリング材を充填する機能を有する。ローラユニット108は外壁200の上をシーリング装置102がスムーズに動くようにするために設けられる。支持体110には、さらに第1センサ112Aおよび第2センサ112Bが設けられる。第1センサ112Aは外壁200の上端を検出し、第2センサ112Bは外壁200の下端を検出する機能を有する。
【0018】
駆動装置104は、ウインチ1042、滑車1046、ワイヤ1048、およびウインチ1042の動作を制御する制御部1044を含む。ウインチ1042は、ワイヤ1048を巻上げおよび巻下げるため用いられる。滑車1046は支柱105によって支えられ、外壁200の上部に配置される。なお、滑車1046の取り付け構造に特段の限定はなく、例えば、滑車1046はクレーンによって吊られた状態で外壁200の上方に配置されてもよい。支持体110の上部には連結具113が設けられており、ワイヤ1048は滑車1046に掛け回されて連結具113に繋がれる。
【0019】
駆動装置104を設置する場所に特段の限定はないが、ウインチ1042は滑車1046より低い位置に配置される。例えば、ウインチ1042は地面に設置される。また、ウインチ1042は建築物の屋上に設置されてもよい。ウインチ1042の動力源としては、電動モータまたは油圧モータが用いられる。ウインチ1042によってワイヤ1048の巻き上げおよび巻き下げを行うことで、シーリング装置102を外壁200の壁面に沿って引き上げ、また引き下げる動作が行われる。なお、
図1は、滑車1046として定滑車を示すが、滑車1046の構成はこれに限定されず、シーリング装置102を外壁200の壁面に沿って上下に駆動することができる構成であれば図示される構成に限定されない。例えば、滑車1046は、定滑車と動滑車が適宜組合わされていてもよい。また、ワイヤ1048の巻上げおよび巻下げはウインチ1042に限定されず、他のワイヤ巻き取り機構が用いられてもよい。
【0020】
ウインチ1042の動作は制御部1044によって制御される。制御部1044にはインバータが組み込まれており、ウインチ1042によるワイヤの巻き上げ及び巻き下げの速度が制御される。ウインチ1042にはエンコーダが組み込まれていてもよく、それによってシーリング装置102を吊り上げる高さが制御されてもよい。また、シーリング装置102の高さは、外壁の上端を検出する第1センサ112Aおよび下端を検出する第2センサ112Bの検出信号によってウインチ1042によるワイヤ1048の巻き上げおよび巻き下げの動作が制御されてもよい。さらに、ウインチ1042の動作は、エンコーダと、第1センサ112Aおよび第2センサ112Bとによって制御されてもよい。
【0021】
シーリング工事の施工に当たり、シーリング装置102はワイヤ1048で吊られた状態で外壁200の下から上へ引き上げられ、外壁200の目地202へシーリング材を充填しながら下方へ移動する。
図1の挿入図に示されるように、シーリング装置102はワイヤ1048で吊られた状態で目地202に沿って上から下へ移動する。シーリング装置102が目地202に沿って上から下へ移動する過程で、シーリング材充填ユニット106によって目地202へシーリング材が充填される。
【0022】
図1では詳細に示されないが、シーリング装置102には、シーリング材充填ユニット106にシーリング材を供給するシーリング材供給ユニットが搭載されていてもよい。また、シーリング材供給ユニットは、地上または外壁200の上部に配置され、ホースなどでシーリング材充填ユニット106にシーリング材が供給されてもよい。
【0023】
2.シーリング装置
図2および
図3を参照してシーリング装置102の構成を説明する。
図2はシーリング装置102の正面図(外壁側から見たときの図)を示し、
図3はシーリング装置102の側面図を示す。
【0024】
2-1.全体構造
シーリング装置102は、支持体110、シーリング材充填ユニット106、ローラユニット108(第1ローラユニット108A、第2ローラユニット108B、第3ローラユニット108C、第4ローラユニット108D、第5ローラユニット108E、第6ローラユニット108F)、第1センサ112Aおよび第2センサ112B、連結具113、吸引ユニット114(第1吸引ユニット114A、第2吸引ユニット114B、第3吸引ユニット114C、第4吸引ユニット114D)、ガイド107(第1ガイド107A、第2ガイド107B、第3ガイド107C、第4ガイド107D)を含む。
【0025】
支持体110はシーリング材充填ユニット106を支持するために用いられ、例えば、フレームにより立方体に組み立てられた形状を有する。シーリング材充填ユニット106は支持体110から吊り下げられた状態に設けられる。ローラユニット108(第1ローラユニット108A、第2ローラユニット108B、第3ローラユニット108C、第4ローラユニット108D、第5ローラユニット108E、第6ローラユニット108F)、吸引ユニット114(第1吸引ユニット114A、第2吸引ユニット114B、第3吸引ユニット114C、第4吸引ユニット114D)、第1センサ112A、第2センサ112B、および連結具113は、支持体110の各所に取り付けられる。また、支持体110にはシーリング材をシーリング材充填ユニット106に供給するシーリング材供給ユニット116が設けられていてもよい。さらに、支持体110には、シーリング材充填ユニット106やシーリング材供給ユニット116の動作を制御する制御盤118が設けられてもよい。
【0026】
2-1-1.支持体
支持体110は、フレームを箱形に組んだ構造を有する。フレームの材質に限定はなく、アルミフレーム、スチールフレーム、カーボンフレームなど各種フレームが用いられる。なお、
図2および
図3は、フレームによって支持体110が形成される例を示すが、シーリング材充填ユニット106を支持しローラユニット108などを取り付ける構造を有するものであれば他の構造に置き換えられてもよい。例えば、支持体110は、フレーム構造に限定されず、箱形の筐体に置き換えられてもよい。
【0027】
支持体110の上部に連結具113が設けられる。連結具113は、支持体110とワイヤ1048とを連結するために設けられる。連結具113の構造に特段の限定はなく、シーリング装置102を吊り下げることのできる耐荷重を有するものであれば、各種の吊り金具を用いることができる。
【0028】
2-1-2.ローラユニット
支持体110にローラユニット108が設けられる。ローラユニット108は、支持体110を外壁200に対して配置したとき、外壁200に対向する位置に取り付けられる。ローラユニット108は、シーリング装置102が外壁200の表面をスムーズに移動できるように、支持体110の4箇所以上に設けられることが好ましい。例えば、ローラユニット108は、支持体110の上下左右の4箇所に設けられることが好ましい。さらに、ローラユニット108は、支持体110の中央部の左右にも設けられていてもよい。
【0029】
図2は、ローラユニット108が、支持体110の上側左右2箇所(第1ローラユニット108A、第2ローラユニット108B)、下側左右2箇所(第3ローラユニット108C、第4ローラユニット108D)、および中央左右2箇所(第5ローラユニット108E、第6ローラユニット108F)に設けられる例を示す。なお、
図2は一例であり、中央左右2箇所に設けられる第5ローラユニット108Eおよび第6ローラユニット108Fは省略されてもよい。ローラユニット108を支持体110の4箇所以上に設けることで、支持体110の傾き、撓み、捩れを防ぐことができ、シーリング装置102を外壁200の表面に接地しながら平行に移動させることができる。
【0030】
2-1-3.吸引ユニット
シーリング材を目地202に充填するときシーリング装置102は外壁200から反作用を受ける。また、シーリング工事が屋外で施工されるとき、シーリング装置102は風の影響を受けて不安定になるおそれがある。そこで、吸引ユニット114により支持体110が外壁200から離れないようにして、シーリング装置102の安定を保つ必要がある。
【0031】
吸引ユニット114は、支持体110が外壁200に対向する面に設けられる。吸引ユニット114は、シーリング装置102の移動によって外壁200の表面にキズを付けないように、外壁200に直接接触しないように設けられることが好ましい。例えば、吸引ユニット114は、ローラユニット108より外側に突出せず、外壁200から離隔するように支持体110に取り付けられることが好ましい。また、吸引ユニット114は、外壁200との接触面に織布なとの柔らかい部材が用いられ、シーリング装置102の移動を阻害しない程度の強さで外壁200に接触し、外壁の表面を摺動するように取り付けられていてもよい。
【0032】
外壁200が鋼板などの強磁性材で形成される場合、吸引ユニット114として磁石を用いることができる。磁石としては、永久磁石、または電磁石が用いられる。また、外壁が鉄筋コンクリートの場合でも内部に鉄筋が含まれる場合、吸引ユニット114として磁石を用いてもよい。吸引ユニット114の磁力を外壁に作用させることで、シーリング装置102が外壁から離れないようにすることができる。また、吸引ユニット114は、磁力を作用させるものに代えて、真空ポンプによる吸引力を利用した吸引式のものを適用することができる。
【0033】
吸引ユニット114は、支持体110の少なくとも1箇所、好ましくは複数箇所に設けられる。
図2は、吸引ユニット114が、支持体110の上側左右2箇所(第1吸引ユニット114A、第2吸引ユニット114B)、および下側左右2箇所(第3吸引ユニット114C、第4吸引ユニット1114D)に設けられる例を示す。このように、支持体110に対し左右対称に吸引ユニット114を設けることで、シーリング装置102が外壁200から離れないようにし、安定した状態を保つことができる。
【0034】
2-1-4.シーリング材充填ユニット
シーリング材充填ユニット106は、シーリング材の吐出口が目地202に倣って変位可能なように、支持体110に取り付けられる。例えば、シーリング材充填ユニット106は、揺動可能であり、左右方向への変位が可能なように、支持体110に吊り下げられた状態に設けられる。シーリング材充填ユニット106は、シーリングガン1061と第1駆動機構1063Aを含む。第1駆動機構1063Aは、シーリングガン1061を待機位置(シーリング材を吐出しない位置)と作業位置(シーリング材を吐出する位置)に制御する機能を有する。
【0035】
シーリング材充填ユニット106は、シーリング材均し器具1062と第2駆動機構1063Bが設けられていてもよい。シーリング材均し器具1062はシーリングガン1061の先端部分に設けられる。第2駆動機構1063Bはシーリング材均し器具1062を待機位置と作業位置に制御する機能を有する。
【0036】
シーリング材充填ユニット106に目地幅センサ115が設けられていてもよい。目地幅センサ115は光学式のセンサが用いられ、目地202の幅を検出する機能を有する。シーリング装置102は、目地幅センサ115で検出された目地202の幅に応じてシーリングガン1061から吐出されるシーリング材の吐出量を制御する機能が備えらえていてもよい。このような構成を有するシーリング材充填ユニット106の詳細は後述される。
【0037】
また、本実施形態において、シーリング材充填ユニット106には第2圧力センサ1069が設けられる。第2圧力センサ1069は、チューブ1168の出口部分(シーリングガン1061の根元部分)に設けられてもよい。第2圧力センサ1069は、チューブ1168の内部圧力を検出する。
【0038】
2-1-5.ガイド
シーリング装置102が目地202に沿って移動するのを助けるように複数のガイド107(第1ガイド107A、第2ガイド107B、第3ガイド107C、第4ガイド107D)が設けられる。
図2および
図3は、第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bがシーリング材充填ユニット106に設けられ、第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dが支持体110に設けられる例を示す。第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bは、シーリングガン1061の吐出口の垂直方向の中心線上に配置される。また、第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dは、シーリング材充填ユニット106より下側であって、初期状態では第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bの垂直方向の中心線上に重なるように配置される。複数のガイド(第1ガイド107A、第2ガイド107B、第3ガイド107C、第4ガイド107D)は、シーリング装置102がシーリング材を充填するときに、先端部分が目地202に挿入されるように配置される。
【0039】
2-1-6.センサ
支持体110には、シーリング装置102が外壁200の上端に達したことを検知する第1センサ112A、および下端に達したことを検出する第2センサ112Bが設けられる。例えば、支持体110の上部に第1センサ112Aが設けられ、下部に第2センサ112Bが設けられる。第1センサ112Aは、外壁200との接触の有無を検出する接触式のセンサが用いられてもよいし、外壁200までの距離を計測する光学式のセンサが用いられてもよい。また、第2センサ112Bは、地面との接触の有無を検出する接触式のセンサが用いられてもよいし、地面までの距離を計測する非接触式のセンサが用いられてもよい。接触式のセンサとしては、マイクロスイッチやリレー接点を有する接点出力方式のセンサを用いることができ、非接触式センサとしては対象物までの距離を検出可能な光学センサ(例えば、レーザ変位計)や超音波センサを用いることができる。
【0040】
第1センサ112Aおよび第2センサ112Bを設けることで、シーリング装置102による作業の始点および終点を検知することができる。すなわち、第1センサ112Aは、外壁200の上端(作業開始点)を検出するために設けられ、第2センサ112Bは、外壁200の下端(作業終了点)を検出するために設けられる。
【0041】
シーリング装置102は、ローラユニット108が外壁200に接地していることにより、支持体110から外壁200までの距離が一定に保たれている。したがって、シーリング装置102が外壁200の上端に達しないときには、第1センサ112Aによって検出される信号は一定または所定の範囲内にある。第1センサ112Aは、支持体110の上側(上側の第1ローラユニット108Aおよび第2ローラユニット108Bより高い位置)に設けられているので、シーリング装置102が外壁200の上端に達した場合、第1センサ112Aは外壁を検出しないことになり検出信号が大きく変化する。第1センサ112Aから出力される信号が変化することにより、シーリング装置102が外壁200の上端に達したことを検出することができる。
【0042】
第2センサ112Bは、地面(または地階)への接触の有無または支持体110の取り付け位置から地面(または地階)までの距離を計測する。シーリング装置102が外壁200の上方に引き上げられた状態では、第2センサ112Bは地面(または地階)への接触を検出せず、または地面(または地階)までの距離が離れていることを検出する。シーリング装置102が外壁200の下端(作業の終点)にあるとき、第2センサ112Bは、地面(または地階)への接触を検出し、または地面(または地階)までの距離を検出する。したがって、第2センサ112Bが地面(または地階)を検出したこと、または地面(または地階)までの距離が規定値(または所定の範囲内)であることを判断することで、シーリング装置102が下端に達したことを検出するこができる。
【0043】
2-1-7.シーリング材供給ユニット
支持体110には、シーリング材充填ユニット106にシーリング材を供給するシーリング材供給ユニット116が設けられてもよい。シーリング材供給ユニット116は、例えば、シーリングタンク1162(単に「タンク」ともいう)、シーリングタンク1162の上面を封止して内部空間を圧縮する圧縮プレート1164、および圧縮プレート1164を昇降させるポンプ1166を含むシーリングポンプユニットにより構成されてもよい。シーリングタンク1162にシーリング材を充填し、ポンプ1166によって圧縮プレート1164を降下さることで、粘性の高いシーリング材を、チューブ1168(配管ともいう)を通してシーリングガン1061に供給することができる。また、ポンプ1166は、圧縮プレート1164が降下する速度を調節可能であり、それによってシーリングガン1061へシーリング材を供給する量を制御することができる。シーリングタンク1162は大容量化が可能であるため、シーリング装置102に多量のシーリング材を搭載することができる。それにより、高層の建物であっても、目地の途中でシーリング材の供給が途切れることなく作業を行うことができ、作業効率を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態において、シーリング材供給ユニット116には第1圧力センサ1169が設けられる。第1圧力センサ1169は、シーリングタンク1162の上部に設けられてもよい。第1圧力センサ1169は、シーリングタンク1162の内部圧力を検出する。
【0045】
2-1-8.制御盤
制御盤118には、シーリング材充填ユニット106、シーリング材供給ユニット116を駆動する制御回路が収納される。制御盤118の配置は任意であり、例えば、支持体110の側面に設けられる。
【0046】
3.シーリングシステムの機能と動作
3-1.シーリングシステムの機能的な構成
図4は、シーリングシステム100の機能的な構成を示す。シーリングシステム100は、目地202にシーリング材を充填する機能を有するシーリング装置102と、シーリング装置102を外壁200に沿って上下させる機能を有する駆動装置104と、から構成される。
【0047】
シーリング装置102は、シーリング材充填部3106、上端検出部3112A、下端検出部3112B、シーリング材供給部3116、本体制御部3118を含む。シーリング材充填部3106は、シーリング材吐出部31061および第1駆動部31063Aを含み、目地202へシーリング材を充填する機能を有する。また、シーリング材充填部3106は、シーリング材均し部31062および第2駆動部31063Bを含み、目地202に充填されたシーリング材を均す機能を有する。さらに、シーリング材充填部3106には目地202の幅を検出する機能を有する目地幅検出部3115が備えられていてもよい。
【0048】
シーリング材吐出部31061は、吐出量調整部310613を含む。吐出量調整部310613はシーリング材の吐出量を制御する機能を有する。シーリング材供給部3116は、シーリング材貯留部31162と圧送部31166とを含む。シーリング材貯留部31162はシーリング材を貯留する機能を有し、圧送部31166はシーリング材貯留部31162からシーリング材を圧送する機能を有する。なお、シーリング材吐出部31061から吐出されるシーリング材の吐出量は、シーリング材供給部3116の圧送部31166の圧送機能によっても制御することができる。すなわち、シーリング材吐出部31061から吐出されるシーリング材の吐出量は、吐出量調整部310613及び圧送部31166の一方又は双方の機能によって調整することができる。
【0049】
上端検出部3112Aはシーリング装置102が外壁200の上端(作業開始位置)に達したことを検出し、検出信号を本体制御部3118に出力する機能を有する。また、下端検出部3112Bはシーリング装置102が外壁200の下端(作業終了位置)に達したことを検出し、検出信号を本体制御部3118に出力する機能を有する。目地幅検出部3115は、シーリング材が充填される前の目地202の幅を検出する機能を有する。
【0050】
本体制御部3118(単に制御部ともいう)は、第1駆動部31063Aおよび第2駆動部31063B、シーリング材供給部3116およびシーリング材充填部3106の動作を制御する機能を有する。本体制御部3118は、中央処理ユニット(CPU)、メモリ、記憶装置、インターフェースを含んで構成される。本体制御部3118のメモリには、各機器の動作を制御する制御プログラムがされている。シーリング装置102が起動されると、本体制御部3118のメモリに格納されている制御プログラムが実行され、各機器の動作を制御する命令が出力される。本体制御部3118は、上端検出部3112A、下端検出部3112Bの検出信号に基づきシーリング装置102の位置が判断され、その状態に応じた制御命令を第1駆動部31063A、第2駆動部31063B、シーリング材供給部3116に出力する。
【0051】
図5は、本体制御部3118の機能ブロック図である。
図5に示すように、本体制御部3118は、取得部31181、判定部31182、設定部31183、出力部31185、監視処理部31187および異常処理部31189を含む。
【0052】
取得部31181は、各検出部から各種情報を取得する。この例では、取得部31181は、上端検出部3112Aからシーリング装置102の上端の位置情報、および下端検出部3112Bからシーリング装置102の下端の位置情報を検知する。また、取得部31181は、目地幅検出部3115から目地幅値を検出する。さらに、取得部31181は、第1圧力検出部3114からシーリング材供給部3116内の圧力を検出し、第2圧力検出部3117からシーリング材充填部3106の内部圧力を取得する。
【0053】
判定部31182は、取得した各種情報が各条件に適合するかを判定する。設定部31183は、判定結果に基づき、各種条件を設定する。出力部31185は、設定された各種情報をシーリング材供給部3116、シーリング材充填部3106、および駆動装置104に出力する。
【0054】
さらに、本体制御部3118は、監視処理部31187および異常処理部31189を有する。監視処理部31187は、第1圧力検出部3114で検出された第1圧力および第2圧力検出部3117で検出された第2圧力が所定の範囲であるかを常時監視する機能を有する。異常処理部31189は、第1圧力または第2圧力が所定の範囲(閾値)を超えたときに異常と判断し、吐出の停止、警告情報の生成など異常処理を行う機能を有する。
【0055】
駆動装置104は、ワイヤ駆動部31042と制御部31044とを含む。ワイヤ駆動部31042は、ワイヤの巻き上げおよび巻き下げの動作を制御する機能を有する。制御部31044は、ワイヤ駆動部31042の動作を制御する機能を有する。また、制御部31044は、ワイヤ駆動部31042によるシーリング装置102の巻き上げ高さ、および巻き下げ高さを制御する機能を有する。制御部31044にはワイヤ駆動部31042を駆動する制御プログラムが格納されていてもよい。駆動装置104は制御プログラムにより自動運転が可能とされていてもよい。
【0056】
操作部3103は、作業者が直接的に操作する部分であり、駆動装置104の起動を制御する機能を有する。操作部3103の機能に限定はなく、作業者がシーリング装置102および駆動装置104の各種動作を制御する機能を有していてもよい。例えば、操作部3103は、緊急時に駆動装置104を本体制御部3118から切り離して、作業員の操作により操作する機能を有していてもよい。
【0057】
なお、
図4に示す、シーリング材充填部3106はシーリング材充填ユニット106に対応し、シーリング材吐出部31061はシーリングガン1061に対応し、吐出量調整部310613は流量調整バルブ10613に対応する。シーリング材均し部31062はシーリング材均し器具1062に対応する。第1駆動部31063Aは第1駆動機構1063Aに対応し、第2駆動部31063Bは第2駆動機構1063Bに対応する。目地幅検出部3115は目地幅センサ115に対応し、上端検出部3112Aは第1センサ112Aに対応し、下端検出部3112Bは第2センサ112Bに対応する。シーリング材供給部3116はシーリング材供給ユニット116に対応し、シーリング材貯留部31162はシーリングタンク1162に対応し、圧送部31166はポンプ1166に対応する。第1圧力検出部3114は、第1圧力センサ1169に対応する。第2圧力検出部3117は、第2圧力センサ1069に対応する。本体制御部3118は制御盤118に設けられる制御回路に対応する。ワイヤ駆動部31042はウインチ1042に対応し、制御部31044は制御部1044に対応する。
【0058】
3-2.シーリングシステムの動作
図6~10は、シーリングシステム100の動作フロー図を示す。
図6に示すように、シーリングシステム100は、シーリング装置102、駆動装置104、操作部3103が連動してシーリング作業が実行される。以下においては、
図6~
図10を参照しながら、シーリングシステム100の動作を説明する。
【0059】
まず、シーリングシステム100を起動した後、本体制御部3118及び駆動装置104に、ワイヤの巻き上げ速度、巻き上げ高さ、ワイヤの巻き下げ速度、シーリング材の基準吐出量などの作業条件を設定する(S200)。その後、シーリング装置102を外壁200の前(縦目地の前)に配置し、各部の状態を作業者がCPUに接続されたタッチパネルで確認する。例えば、作業者が地上で、シーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062が待機位置にあるか、シーリング材貯留部31162にシーリング材が貯留されているか、下端検出部3112Bが下端を検出しているかを確認する。各部位の条件が初期状態になっていない場合は、シーリング装置102の起動前に作業者がリセット状態に調整する。
【0060】
操作部3103の起動スイッチをオンにし(S202)、入力された作業条件に基づいて制御プログラムが実行され、シーリング装置102の自動運転が開始される(S204)。
【0061】
自動運転が開始されると、シーリング装置102の本体制御部3118から駆動装置104の制御部31044へワイヤの巻上げ命令が出力される(S206)。制御部31044はワイヤ駆動部31042へワイヤを巻上げる命令を出力する。ワイヤ駆動部31042は設定された巻上げ速度でワイヤを巻上げる(S208)これにより、シーリング装置102が外壁200に沿って上方に持ち上げられる(
図1参照)。そして、シーリング装置102が外壁200の上端に達したことを上端検出部3112Aが検出すると(S210)、本体制御部3118は駆動装置104の制御部31044へワイヤ駆動部31042を停止する命令を出力する(S212)。制御部31044はワイヤ駆動部31042を停止する命令をワイヤ駆動部31042へ出力する。ワイヤ駆動部31042はワイヤの巻上げを停止する(SS214)。なお、制御部31044は、駆動装置104に備えられたエンコーダによりワイヤの巻上げ高さを判定しワイヤ駆動部31042を停止させてもよい。
【0062】
その後、シーリング装置102は、本体制御部3118から第1駆動部31063Aおよび第2駆動部11043Bを駆動する命令が出力される(S216)。具体的には、本体制御部3118から第1駆動部31063Aおよび第2駆動部31063Bに対し、シーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062が作業位置に移動する命令が出力され、その動作が実行される。
【0063】
シーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062が作業位置に移動すると、本体制御部3118から、シーリング材供給部3116の圧送部31166をオンにする命令が出力され、シーリング材吐出部31061をオンにする(吐出量調整部310613を開く)命令が出力される(S218)。これらの命令により、シーリング材供給部3116内の圧力、およびシーリング材充填部3106内の圧力が上昇し始める。
【0064】
3-2-1.吐出前の圧力制御
ここで、シーリング材の吐出前の圧力制御処理について説明する。
図7に示すように、シーリング材供給部3116の第1圧力検出部3114は、シーリング材貯留部31162(シーリングタンク1162)内の圧力(以下、「第1圧力」という)を検出する。検出された第1圧力は、本体制御部3118に送信され、本体制御部3118によって取得される(S218101)。
【0065】
同様に、シーリング材充填部3106の第2圧力検出部3117は、シーリング材貯留部31162(シーリングタンク1162)と、シーリング材吐出部31061(シーリングガン1061内)との間のチューブ1168内の圧力(以下、「第2圧力」という)を検出する。検出された第2圧力は、本体制御部3118に送信され、本体制御部3118によって取得される(S218103)。
【0066】
次に、本体制御部3118は、第1圧力が、あらかじめ設定された下側圧力閾値(第1閾値ともいう)P1thd以上であるかを判定する(S218105)。第1圧力が下側圧力閾値p1thd未満である場合(S218105;No)、S218101の処理に戻る。
【0067】
第1圧力が下側圧力閾値p1thd以上である場合(S218105;Yes)、さらに本体制御部3118は、第2圧力が、あらかじめ設定された下側圧力閾値P2thd以上であるかを判定する(S218107)。この例では、シーリング材貯留部31162内の下側圧力閾値p1thdと、チューブ1168内の下側圧力閾値P2thdが同一であってもよい。
【0068】
チューブ1168内の圧力が、下側圧力閾値P2thd未満である場合(S218107;No)、S218103の処理に戻る。チューブ1168内の圧力が、下側圧力閾値P2thd以上である場合(S218107;Yes)、本体制御部3118は、シーリング材吐出部31061からの吐出を開始するように設定する。このとき、本体制御部3118は、圧力の監視処理を開始する(S218109)。これにより、シーリング材を自動吐出するための圧力監視制御処理が開始となる。
【0069】
3-2-2.自動吐出処理中の第1圧力制御処理
次に、自動吐出処理中の第1圧力制御処理について説明する。
図8に示すように、自動吐出開始後において、本体制御部3118は、第1圧力検出部3114(第1圧力センサ1169)で検出された第1圧力を常時取得する(S218201)。本体制御部3118は、取得した第1圧力P1が、第1圧力に対して設定された下側圧力閾値P1thd(第1閾値)以上、かつ上側圧力閾値P1thu(「第3閾値」ともいう)以下の所定の範囲内であるかを判定する(S218203)。このとき、第1圧力が所定の範囲内であり(S218203;Yes)、吐出停止要求情報を取得しない場合(S218205;No)、本体制御部3118は、シーリング材の吐出処理を継続するように設定し(S218207)、S218201の処理に戻る。吐出停止要求情報を取得した場合(S218205;Yes)、自動吐出処理は終了となる。
【0070】
一方、第1圧力P1が、所定の範囲を超え(S218203;No)、かつ上側圧力閾値P1thuを超えたとき(S218209;Yes)、本体制御部3118は、圧力増大異常と判定する。このとき、本体制御部3118は、シーリング材供給部3116に対して加圧を停止するように命令信号を送信し、シーリング材の吐出を停止させる(S218211)。
【0071】
同様に、第1圧力P1が、所定の範囲を超え(S218203;No)、かつ上側圧力閾値P1thuを超えるものではないとき(S218209;No)、本体制御部3118は、第1圧力が下側圧力閾値を下回った(圧力低下異常)と判定する。このとき、本体制御部3118は、警告情報を生成する(S218215)。警告情報は、文字情報であってもよいし、光情報であってもよいし、音情報であってもよい。警告情報を生成した後、吐出処理を終了してもよい。警告情報は、インターフェースを介して外部に出力される。なお、S218203、S218209、S218213の判断の時、判定基準に対してヒステリシス幅を設けてもよい。ヒステリシス幅は、圧力値で設定されてもよいし、時間で設定されてもよい。
【0072】
3-2-3.自動吐出処理中の第2圧力制御処理
次に、自動吐出処理中の第2圧力制御処理について説明する。第2圧力の圧力制御処理は、第1圧力の圧力制御処理と同時に行うことができる。
図9に示すように、自動吐出開始後において、本体制御部3118は、第2圧力検出部3117(第2圧力センサ1069)で検出される第2圧力を常時取得する(S218301)。本体制御部3118は、取得した第2圧力P2が、第2圧力に対して設定された下側圧力閾値P2thd(第2閾値)以上で、かつ上側圧力閾値P2thu(「第4閾値」ともいう)以下の所定の範囲内であるかを判定する(S218303)。このとき、第2圧力が所定の範囲内に存在するとき(S218303;Yes)、吐出停止要求情報を取得しない限り(S218305;No)、吐出処理を継続するように設定し(S218307)、S218301の処理に戻る。吐出停止要求情報を取得した場合(S218305;Yes)、自動吐出処理は終了となる。
【0073】
一方、第2圧力P2が、所定の範囲を超え(S218303;No)、かつ上側圧力閾値P2thuを超えたとき(S218309;Yes)、本体制御部3118は、シーリング材供給部3116に対して加圧を停止するように命令信号を送信し、シーリング材の吐出を停止させる(S218311)。
【0074】
同様に、第2圧力P2が、所定の範囲を超え(S218303;No)、かつ上側圧力閾値P2thuを超えるものではないとき(S218313;No)、本体制御部3118は、第2圧力が下側圧力閾値P2thdを下回ったと判定する。このとき、本体制御部3118は、警告情報を生成する(S218315)。警告情報を生成した後、吐出処理を終了してもよい。なお、S218303、S218309、S218313の判断の時、判定基準に対してヒステリシス幅を設けてもよい。ヒステリシス幅は、圧力値で設定されてもよいし、時間で設定されてもよい。
【0075】
続いて、
図6に戻って説明する。シーリング材吐出部31061からシーリング材が吐出されるのとほぼ同時に、本体制御部3118から駆動装置104の制御部31044へワイヤ巻下げ命令が出力される(S220)。制御部31044はワイヤ駆動部31042にワイヤを巻下げ動作を行う信号を出力する。ワイヤ駆動部31042はワイヤ巻下げ開始する(S222)。ワイヤ駆動部31042の動作によりシーリング装置102は下降し、その過程で縦目地のシーリング材を充填する作業が随時行われる(S224)。
【0076】
シーリング装置102が下降するとき、目地幅検出部3115により目地の幅が検出され、その検出信号が本体制御部3118に出力される。本体制御部3118は、演算処理により目地の幅に応じて適切な充填量が吐出されるように、圧送部31166に対する圧送量および吐出量調整部310613の吐出量の一方または両方を制御する信号を出力して、シーリング材吐出量の制御を行う(S226)。この吐出量の調整は、下端検出部3112Bが下端を検出するまで行われる(S228)。下端検出部3112Bが下端を検出しない場合は、シーリング材充填処理(S224)に戻り作業が続けられる。
【0077】
下端検出部3112Bが下端を検出すると(S228)、本体制御部3118はワイヤの巻下げを停止する命令を駆動装置104の制御部31044に出力する(S230)。ワイヤ巻下げ停止命令を受信した制御部31044はワイヤ駆動部31042を停止させる(S232)。その後、シーリング装置102は、本体制御部3118がシーリング材供給部3116およびシーリング材吐出部31061の動作を停止するように制御し(S234)、第1駆動部31063Aおよび第2駆動部31063Bにシーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062を待機位置へ移動させる命令を出力する(S236)。この命令により、第1駆動部31063Aおよび第2駆動部31063Bによって、シーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062が待機位置へ移動する(
図6(A)参照)。そして、自動運転モードが停止する(S238)。
【0078】
その後、別の縦目地にシーリング材を充填する場合には、シーリング装置102を移動させて同様の処理が繰り返される。
【0079】
上述の処理により、シーリング材が、シーリング材供給部3116からシーリング材充填部3106へ供給され、シーリング材吐出部31061から所定の吐出量でシーリング材が目地202へ吐出されるときの装置内部の圧力を所定の範囲内で制御することができる。これにより、シーリング材の吐出過程において、シーリング装置102のシーリングタンク1162およびチューブ内1168の圧力が常時監視されるため、シーリング装置102内で圧力異常が生じた場合においても、各部品の破損を防止することができる。また、これらの機能によれば、高層建築物の外壁の目地にシーリング材を充填するための部品の破損を防止することができるシーリング自動充填ロボットを提供することができる。
【0080】
(変形例1)
本発明の実施形態において、シーリング材貯留部31162内の圧力を判定した後で、チューブ1168内の圧力を判定する例を示したが、本発明はこれに限定されない。シーリング材貯留部31162内の圧力およびチューブ1168内の圧力を同時に判定してもよい。
【0081】
(変形例2)
本発明の実施形態において、シーリング材貯留部31162内の下側圧力閾値p1thdと、チューブ1168内の下側圧力閾値P2thdは、同一でなくてもよい。例えば、それぞれ異なる値(例えば、シーリング材貯留部31162内の下側圧力閾値p1thdがチューブ1168内の下側圧力閾値P2thdよりも高くなるよう)に設定されてもよい。
【0082】
(変形例3)
本発明の実施形態では、チューブ1168内の圧力およびシーリングタンク1162内の圧力を監視する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、シーリングガン1061の内部圧力を監視してもよいし、その他のシーリング装置102の圧力を検知する部分において用いられてもよい。
【0083】
(変形例4)
本発明の実施形態では、第1圧力または第2圧力が下側圧力閾値を超えたときに、警告情報を生成する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、シーリング材の粘度に応じて、第1圧力及び第2圧力を取得するタイミングを設定してもよい。
【0084】
例えば、
図10に示すように、第1圧力を取得する前に(S218201)、時間を測定してもよい(S218200)。この場合、あらかじめ設定された時間が経過するまで処理がループし(S218200;No)、所定時間経過後に(S218200;Yes)、第1圧力を取得してもよい。
図10の圧力監視処理の場合、第1圧力が一定期間において下側圧力閾値を下回ったときに(S2182111;Yes)警告情報を生成してもよい。この場合の「定期間期間において下側圧力閾値を下回った」とは、前回の判定の時に、第1圧力が下側圧力閾値P1thdを下回り、今回の判定においても第1圧力が下側圧力閾値P1thdを下回る場合をいう。そのため、今回の判定で初めて第1圧力が下側圧力閾値P1thdを下回る場合には、「一定期間第1圧力が下側圧力閾値P1thdを下回る」に該当しないため(S2182111;No)、S218200まで処理が戻る。
図10では、第1圧力の監視制御処理を示したが、第2圧力の監視制御処理も同様である。
【0085】
上述の監視制御処理を行うことにより、圧力の変化が少ない場合には、監視制御の情報処理量を減らすことができ、本体制御部3118にかかる負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0086】
100:シーリングシステム,102:シーリング装置,104:駆動装置,105:支柱,106:シーリング材充填ユニット,107:ガイド,107A:第1ガイド,107B:第2ガイド,107C:第3ガイド,107D:第4ガイド,108:ローラユニット,108A:第1ローラユニット,108B:第2ローラユニット,108C:第3ローラユニット,108D:第4ローラユニット,108E:第5ローラユニット,108F:第6ローラユニット,110:支持体,112:センサ,112A:第1センサ,112B:第2センサ,113:連結具,114:吸引ユニット,114A:第1吸引ユニット,114B:第2吸引ユニット,114C:第3吸引ユニット,114D:第4吸引ユニット,115:目地幅センサ,116:シーリング材供給ユニット,118:制御盤,200:外壁,202:目地,1042:ウインチ,1044:制御部,1046:滑車,1048:ワイヤ,1061:シーリングガン,1062:器具,1063A:第1駆動機構,1063B:第2駆動機構,1069:第2圧力センサ,1114D:第4吸引ユニット,1162:シーリングタンク,1164:圧縮プレート,1166:ポンプ,1168:チューブ,1169:第1圧力センサ,3018:本体制御部,3103:操作部,3106:シーリング材充填部,3112A:上端検出部,3112B:下端検出部,3114:第1圧力検出部,3115:目地幅検出部,3116:シーリング材供給部,3117:第2圧力検出部,3118:本体制御部,10613:流量調整バルブ,11043B:第2駆動部,31042:ワイヤ駆動部,31044:制御部,31061:シーリング材吐出部,31062:部,31063A:第1駆動部,31063B:第2駆動部,31162:シーリング材貯留部,31166:圧送部,31181:取得部,31182:判定部,31183:設定部,31185:出力部,31187:監視処理部,31189:異常処理部,310613:吐出量調整部