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特開2024-129686プライマー塗布装置およびプライマー塗布システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129686
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】プライマー塗布装置およびプライマー塗布システム
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/165 20060101AFI20240919BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
E04F21/165 C
E04F21/165 D
B05C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039041
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】000135999
【氏名又は名称】株式会社ヒロテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀太郎
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
(72)【発明者】
【氏名】堤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】貞近 幹亮
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一也
(72)【発明者】
【氏名】冨永 誠
【テーマコード(参考)】
4F042
【Fターム(参考)】
4F042AA17
4F042AA28
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA25
4F042CA01
4F042CB11
4F042CB19
4F042CC07
4F042DA01
4F042DD02
4F042DD03
4F042DD09
4F042DD14
4F042DD20
4F042DD25
4F042DH09
4F042ED13
(57)【要約】
【課題】外壁の上下方向に沿って形成される目地を清掃することのできるプライマー塗布装置を提供すること。
【解決手段】プライマー塗布装置は、外壁の上下方向に沿って形成される目地にプライマー組成物を塗布するプライマー塗布装置であって、プライマー塗布装置は、目地に挿入可能な塗布部材および塗布部材にプライマー組成物を供給する第1ディスペンサを含むプライマー塗布ユニットと、目地に挿入可能なブラシ部材を含む乾式洗浄ユニットと、を含み、プライマー塗布装置の上部から下部に向かって、塗布部材、洗浄部材、およびブラシ部材が順に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁の上下方向に沿って形成される目地にプライマー組成物を塗布するプライマー塗布装置であって、
前記プライマー塗布装置は、
前記目地に挿入可能な塗布部材および前記塗布部材に前記プライマー組成物を供給する第1ディスペンサを含むプライマー塗布ユニットと、
前記目地に挿入可能なブラシ部材を含む乾式洗浄ユニットと、を含み、
前記プライマー塗布装置の上部から下部に向かって、前記塗布部材および前記ブラシ部材が順に配置されている、プライマー塗布装置。
【請求項2】
前記乾式洗浄ユニットは、さらに、前記ブラシ部材を回転させる回転駆動部を含む、請求項1に記載のプライマー塗布装置。
【請求項3】
前記回転駆動部は、前記ブラシ部材が挿入される方向を軸として、前記ブラシ部材を回転させる、請求項2に記載のプライマー塗布装置。
【請求項4】
前記回転駆動部は、前記ブラシ部材が挿入される方向と垂直な方向を軸として、前記ブラシ部材を回転させる、請求項2に記載のプライマー塗布装置。
【請求項5】
さらに、前記目地に挿入可能な洗浄部材および前記洗浄部材に洗浄液を供給する第2ディスペンサを含む湿式洗浄ユニットを含む、請求項1に記載のプライマー塗布装置。
【請求項6】
前記プライマー塗布ユニットは、前記塗布部材が前記目地に挿入され、または前記目地から離れるように、前記塗布部材を移動させる第1駆動部を含み、
前記湿式洗浄ユニットは、前記洗浄部材が前記目地に挿入され、または前記目地から離れるように、前記洗浄部材を移動させる第2駆動部を含む、請求項5に記載のプライマー塗布装置。
【請求項7】
さらに、前記塗布部材の上方に、前記目地に挿入可能なガイドを含み、
前記塗布部材および前記洗浄部材が前記目地へ挿入されるとき、前記ガイドは、前記目地から離れるように連動して動作する、請求項6に記載のプライマー塗布装置。
【請求項8】
外壁の上下方向に沿って形成される目地にプライマー組成物を塗布するプライマー塗布装置であって、
前記プライマー塗布装置は、
前記目地に挿入可能な塗布部材および前記塗布部材に前記プライマー組成物を供給する第1ディスペンサを含むプライマー塗布ユニットと、
前記目地に挿入可能であって、前記目地に対して空気を吹き出す吹出口を含む乾式洗浄ユニットと、を含み、
前記プライマー塗布装置の上部から下部に向かって、前記塗布部材および前記吹出口が順に配置されている、プライマー塗布装置。
【請求項9】
さらに、前記目地に挿入可能な洗浄部材および前記洗浄部材に洗浄液を供給する第2ディスペンサを含む湿式洗浄ユニットを含む、請求項8に記載のプライマー塗布装置。
【請求項10】
前記プライマー塗布ユニットは、前記塗布部材が前記目地に挿入され、または前記目地から離れるように、前記塗布部材を移動させる第1駆動部を含み、
前記湿式洗浄ユニットは、前記洗浄部材が前記目地に挿入され、または前記目地から離れるように、前記洗浄部材を移動させる第2駆動部を含む、請求項9に記載のプライマー塗布装置。
【請求項11】
さらに、前記塗布部材の上方に、前記目地に挿入可能なガイドを含み、
前記塗布部材および前記洗浄部材が前記目地へ挿入されるとき、前記ガイドは、前記目地から離れるように連動して動作する、請求項10に記載のプライマー塗布装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のプライマー塗布装置と、
前記プライマー塗布装置を昇降させる昇降駆動装置と、を含む、プライマー塗布システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、建築物の外壁の施工に使用するプライマー塗布装置に関する。また、本発明の一実施形態は、プライマー塗布装置を含むプライマー塗布システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外壁を複数の外壁パネルによって施工した場合には、外壁パネル間に形成される目地に防水のためのシーリングが施工される。また、シーリングの施工の際には、充填されるシーリング材の付着力を向上させるため、目地にプライマー組成物が塗布される。外壁の目地に自動でプライマー組成物を塗布し、また、シーリング材を充填するため、建築物の高さに相当する架台にプライマー組成物およびシーリング材を供給する装置を搭載し、当該装置を昇降用レールで上下に走行可能とした自動化装置が開示されている(特許文献1参照)。また、外壁に沿って上下方向に延びるレールに沿って移動する可動部にシーリング手段を設けたシーリング材充填装置が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-268973号公報
【特許文献2】特開2002-121889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外壁の上下方向に沿って形成される縦目地では、外壁パネルの加工に伴うR部および凹部、または横目地に挿入されるシーリング材の端面などによって段差が生じ、このような段差には汚れが溜まりやすかった。縦目地に汚れが残っていると、塗布されたプライマーに汚れが混入し、その後充填されるシーリング材の付着力が低下してしまう。洗浄液によって、縦目地を清掃することができるものの、上記段差に残る汚れを除去するには十分ではなかった。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、外壁の上下方向に沿って形成される目地を清掃することのできるプライマー塗布装置を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一実施形態は、プライマー塗布装置を含むプライマー塗布システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るプライマー塗布装置は、外壁の上下方向に沿って形成される目地にプライマー組成物を塗布するプライマー塗布装置であって、プライマー塗布装置は、目地に挿入可能な塗布部材および塗布部材にプライマー組成物を供給する第1ディスペンサを含むプライマー塗布ユニットと、目地に挿入可能なブラシ部材を含む乾式洗浄ユニットと、を含み、プライマー塗布装置の上部から下部に向かって、塗布部材およびブラシ部材が順に配置されている。
【0007】
乾式洗浄ユニットは、さらに、ブラシ部材を回転させる回転駆動部を含んでいてもよい。回転駆動部は、ブラシ部材が挿入される方向を軸として、ブラシ部材を回転させてもよい。回転駆動部は、ブラシ部材が挿入される方向と垂直な方向を軸として、ブラシ部材を回転させてもよい。
【0008】
プライマー塗布装置は、さらに、目地に挿入可能な洗浄部材および洗浄部材に洗浄液を供給する第2ディスペンサを含む湿式洗浄ユニットを含んでいてもよい。プライマー塗布ユニットは、塗布部材が目地に挿入され、または目地から離れるように、塗布部材を移動させる第1駆動部を含み、湿式洗浄ユニットは、洗浄部材が目地に挿入され、または目地から離れるように、洗浄部材を移動させる第2駆動部を含んでいてもよい。プライマー塗布装置は、さらに、塗布部材の上方に、目地に挿入可能なガイドを含み、塗布部材および洗浄部材が目地へ挿入されるとき、ガイドは、目地から離れるように連動して動作してもよい。
【0009】
本発明の一実施形態に係るプライマー塗布装置は、外壁の上下方向に沿って形成される目地にプライマー組成物を塗布するプライマー塗布装置であって、プライマー塗布装置は、目地に挿入可能な塗布部材および塗布部材にプライマー組成物を供給する第1ディスペンサを含むプライマー塗布ユニットと、目地に挿入可能であって、目地に対して空気を吹き出す吹出口を含む乾式洗浄ユニットと、を含み、プライマー塗布装置の上部から下部に向かって、塗布部材および吹出口が順に配置されている。
【0010】
本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムは、上記プライマー塗布装置と、プライマー塗布装置を昇降させる昇降駆動装置と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係るプライマー塗布装置またはプライマー塗布システムは、プライマー塗布装置の下降に合わせて、始めに、ブラシ部材を用いる乾式洗浄ユニットまたは吹出口から空気を吹き出す乾式洗浄ユニットによって、外壁の目地の掃き清掃を行う。これにより、目地の段差などに溜まった汚れを掃き出し、または吹き飛ばすことができる。次に、洗浄液を用いる湿式洗浄ユニットによって、外壁の目地の拭き清掃を行う。これにより、掃き出され、または吹き飛ばされた汚れを拭き取ることができる。このように、プライマー塗布装置またはプライマー塗布システムは、清掃方式の異なる複数の洗浄ユニットを備えることにより、目地の汚れを十分に除去することができる。したがって、目地の汚れを十分に除去した後にプライマー組成物を塗布することができるため、塗布されたプライマー組成物に混入される汚れが減少し、目地に充填されるシーリング材の付着力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムの全体的な構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムのプライマー塗布装置の構成を示す模式的な正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムのプライマー塗布装置の構成を示す模式的な側面図である。
図4A】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムにおいて、塗布ユニットの塗布部材の構成を示す模式的な上面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムにおいて、塗布ユニットの塗布部材の構成を示す模式的な正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムにおいて、乾式洗浄ユニットのブラシ部材の動作を説明する模式図である。
図6A】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムにおいて、第1ガイドと、塗布部材および洗浄部材との連動した動作を説明する模式図である。
図6B】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムにおいて、第1ガイドと、塗布部材および洗浄部材との連動した動作を説明する模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムの機能的な構成を示すブロック図である。
図8】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムの動作を説明するシーケンス図である。
図9A】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムにおいて、プライマー塗布装置の乾式洗浄ユニットの構成を示す模式的な正面図である。
図9B】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムにおいて、プライマー塗布装置の乾式洗浄ユニットの構成を示す模式的な側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システムにおいて、プライマー塗布装置の乾式洗浄ユニットの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(または数字の後にA、Bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0014】
[1.プライマー塗布システム10の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システム10の全体的な構成を示す模式図である。なお、図1には、外壁1000を側面から見たときの状態に加え、外壁1000を正面から見たときの状態が挿入図として示されている。外壁1000は複数の外壁パネルにより形成され、外壁パネルの繋ぎ目に目地1002が形成されている。プライマー塗布システム10は、目地1002(以下、特段の断りが無い限り、「縦目地」を指すものとする。)にプライマー組成物を塗布するプライマー塗布工程において使用される。プライマー塗布工程は、シーリング材充填工程の前処理として行われる。
【0015】
図1に示すように、プライマー塗布システム10は、プライマー塗布装置100および昇降駆動装置200を備える。昇降駆動装置200は、プライマー塗布装置100を昇降させることができる。
【0016】
詳細は後述するが、プライマー塗布装置100は、プライマー塗布ユニット110、湿式洗浄ユニット120、乾式洗浄ユニット130、ローラユニット140、支持体150、第1センサ160-1、第2センサ160-2、および連結具170を含む。プライマー塗布ユニット110、湿式洗浄ユニット120、乾式洗浄ユニット130、およびローラユニット140は、支持体150に取り付けられている。支持体150は、例えば、箱体に組まれたフレームによって構成される。プライマー塗布ユニット110は、目地1002にプライマー組成物を塗布する機能を有する。湿式洗浄ユニット120および乾式洗浄ユニット130は、目地1002を清掃する機能を有する。ローラユニット140は、外壁1000の表面上を、プライマー塗布装置100がスムーズに動くようにするために設けられる。支持体150には、さらに、第1センサ160-1および第2センサ160-2が設けられている。第1センサ160-1は外壁1000の上端を検出し、第2センサ160-2は外壁1000の下端を検出する機能を有する。
【0017】
昇降駆動装置200は、ウインチ202、制御部204、滑車206、およびワイヤ208を含む。制御部204は、ウインチ202の動作を制御する。ウインチ202は、ワイヤ208を巻上げおよび巻下げるため用いられる。滑車206は支柱210によって支えられ、外壁1000の上部に配置される。なお、滑車206の取り付け構造に特段の限定はなく、例えば、滑車206はクレーンによって吊られた状態で外壁1000の上方に配置されてもよい。支持体150の上部には連結具170が設けられており、ワイヤ208は滑車206に掛け回されて連結具170に繋がれる。
【0018】
昇降駆動装置200を設置する場所に特段の限定はないが、ウインチ202は滑車206より低い位置に配置される。例えば、ウインチ202は地面に設置される。また、ウインチ202は建築物の屋上に設置されてもよい。ウインチ202の動力源としては、電動モータまたは油圧モータが用いられる。ウインチ202によってワイヤ208の巻き上げおよび巻き下げを行うことで、プライマー塗布装置100を外壁1000に沿って引き上げ、また引き下げる動作が行われる。なお、図1は、滑車206として定滑車を示すが、滑車206の構成はこれに限定されず、プライマー塗布装置100を外壁1000の外壁に沿って上下に駆動することができる構成であれば図示される構成に限定されない。例えば、滑車206は、定滑車と動滑車が適宜組合わされていてもよい。また、ワイヤ208の巻上げおよび巻下げはウインチ202に限定されず、他のワイヤ巻き取り機構が用いられてもよい。
【0019】
ウインチ202の動作は制御部204によって制御される。制御部204にはインバータが組み込まれており 、ウインチ202によるワイヤの巻き上げおよび巻き下げの速度が制御される。ウインチ202にはエンコーダが組み込まれていてもよく、それによってプライマー塗布装置100を吊り上げる高さが制御されてもよい。また、プライマー塗布装置100の高さは、外壁の上端を検出する第1センサ160-1および下端を検出する第2センサ160-2の検出信号によってウインチ202によるワイヤ208の巻き上げおよび巻き下げの動作が制御されてもよい。さらに、ウインチ202の動作は、エンコーダと、第1センサ160-1および第2センサ160-2とによって制御されてもよい。
【0020】
プライマー塗布工程において、プライマー塗布装置100はワイヤ208で吊られた状態で外壁1000の下から上へ引き上げられ、外壁1000の目地1002を清掃し、およびプライマー組成物を塗布しながら下方へ移動する。図1の挿入図に示されるように、プライマー塗布装置100はワイヤ208で吊られた状態で目地1002に沿って上から下へ移動する。プライマー塗布装置100が目地1002に沿って上から下へ移動する過程で、始めに、乾式洗浄ユニット130および湿式洗浄ユニット120によって目地1002が清掃され、次に、プライマー塗布ユニット110によって目地1002にプライマー組成物が塗布される。プライマー塗布ユニット110、湿式洗浄ユニット120、および乾式洗浄ユニット130は、プライマー塗布装置100の移動方向(昇降方向)に直列に配置されている。すなわち、プライマー塗布装置100の上部から下部に向かって、プライマー塗布ユニット110、湿式洗浄ユニット120、および乾式洗浄ユニット130が順に配置されている。プライマー塗布システム10では、このような配置構成を有することで、目地1002の清掃およびプライマー組成物の塗布を連続的に行うことができる。また、湿式洗浄ユニット120および乾式洗浄ユニット130の異なる清掃方式の洗浄ユニットを含むことにより、目地1002の汚れを十分に除去することができる。なお、プライマー塗布装置100は、湿式洗浄ユニット120および乾式洗浄ユニット130を含むことが好ましいが、目地1002の形状または汚れの成分などによっては、湿式洗浄ユニット120および乾式洗浄ユニット130のうちの一方のみを含む構成であってもよい。
【0021】
続いて、図2および図3を参照して、プライマー塗布装置100の構成の詳細について説明する。
【0022】
[2.プライマー塗布装置100の構成]
図2および図3は、本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システム10のプライマー塗布装置100の構成を示す模式的な正面図および側面図である。以下の説明では、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0023】
図2および図3に示すように、プライマー塗布装置100は、プライマー塗布ユニット110、湿式洗浄ユニット120、乾式洗浄ユニット130、ローラユニット140(第1ローラユニット140-1、第2ローラユニット140-2、第3ローラユニット140-3、第4ローラユニット140-4)、支持体150、第1センサ160-1、第2センサ160-2、連結具170、第1ガイド180-1、第2ガイド180-2、第3ガイド180-3、および吸引ユニット182(第1吸引ユニット182-1および第2吸引ユニット182-2)を含む。また、支持体150の背面(外壁1000に対向する面と反対の面)に、制御部104が設けられている。制御部104には、プライマー塗布ユニット110、湿式洗浄ユニット120、および乾式洗浄ユニット130を駆動する制御回路が収納される。
【0024】
[2-1.支持体150]
図2および図3を参照して、支持体150の構成について説明する。支持体150は、プライマー塗布ユニット110、湿式洗浄ユニット120、乾式洗浄ユニット130、第1ガイド180-1、第2ガイド180-2、および第3ガイド180-3を指示するために用いられ、例えば、フレームにより箱体に組み立てられた形状を有する。フレームの材質に限定はなく、アルミフレーム、スチールフレーム、カーボンフレームなど各種フレームが用いられる。なお、図2および図3は、フレームによって支持体150が形成される例を示すが、支持体150は、プライマー塗布ユニット110などを支持し、ローラユニット140および吸引ユニット182などが取り付けられる構造を有するものであれば他の構造に置き換えられてもよい。例えば、支持体150は、フレーム構造に限定されず、箱体の筐体に置き換えられてもよい。
【0025】
[2-2.連結具170]
図2および図3を参照して、連結具170の構成について説明する。支持体150の上部には、連結具170が設けられる。連結具170は、支持体150とワイヤ208とを連結するために設けられる。連結具170の構造に特段の限定はなく、プライマー塗布装置100を吊り下げることのできる耐荷重を有するものであれば、各種の吊り金具を用いることができる。
【0026】
[2-3.ローラユニット140]
図2および図3を参照して、ローラユニット140を説明する。支持体150には、ローラユニット140が設けられる。ローラユニット140は、支持体150を外壁1000に対して配置したとき、外壁1000に対向する位置に取り付けられる。図2は、ローラユニット140が、支持体150の上側左右2箇所(第1ローラユニット140-1および第2ローラユニット140-2)、および下側左右2箇所(第3ローラユニット140-3および第4ローラユニット140-4)に設けられる例を示す。ローラユニット140を支持体150の4箇所以上に設けることで、支持体150の傾き、撓み、捩れを防ぐことができ、プライマー塗布装置100を外壁1000の表面に接地しながら平行に移動させることができる。なお、ローラユニット140は、プライマー塗布装置100が外壁1000の表面をスムーズに移動できるように、支持体150の4箇所に設けられるが、これに限られない。また、図2には、2連ローラのローラユニット140が示されているが、ローラユニット140の構成はこれに限られない。
【0027】
[2-4.吸引ユニット182]
図2および図3を参照して、吸引ユニット182の構成について説明する。目地1002を清掃するとき、またはプライマー組成物を目地1002に塗布するとき、プライマー塗布装置100は外壁1000から反作用を受ける場合がある。また、プライマー塗布工程が屋外で行われるとき、プライマー塗布装置100は風の影響を受けて不安定になるおそれがある。そこで、吸引ユニット182により支持体150が外壁1000から離れないようにして、プライマー塗布装置100の姿勢の安定性を保持する。
【0028】
吸引ユニット182は、支持体150が外壁1000に対向する面に設けられる。吸引ユニット182は、プライマー塗布装置100の移動によって外壁1000の表面にキズを付けないように、外壁1000に直接接触しないように設けられることが好ましい。例えば、吸引ユニット182は、ローラユニット140より外側に突出せず、外壁1000から離隔するように支持体150に取り付けられることが好ましい。また、吸引ユニット182は、外壁1000との接触面に織布なとの柔らかい部材が用いられ、プライマー塗布装置100の移動を阻害しない程度の強さで外壁1000に接触し、外壁の表面を摺動するように取り付けられていてもよい。
【0029】
外壁1000が鋼板などの強磁性材で形成される場合、吸引ユニット182として磁石を用いることができる。磁石としては、永久磁石、または電磁石が用いられる。また、外壁が鉄筋コンクリートの場合でも内部に鉄筋が含まれる場合、吸引ユニット182として磁石を用いてもよい。吸引ユニット182の磁力を外壁に作用させることで、プライマー塗布装置100が外壁1000から離れないようにすることができる。また、吸引ユニット182は、磁力を作用させるものに代えて、真空ポンプによる吸引力を利用した吸引式のものを適用することができる。
【0030】
吸引ユニット182は、支持体150の少なくとも1箇所、好ましくは複数箇所に設けられる。図2は、吸引ユニット182が、支持体150の左右2箇所(第1吸引ユニット182-1、第2吸引ユニット182-2)に設けられる例を示す。このように、支持体150に対し左右対称に吸引ユニット182を設けることで、プライマー塗布装置100が外壁1000から離れないようにし、安定した状態を保つことができる。
【0031】
[2-5.第1センサ160-1および第2センサ160-2]
図2および図3を参照して、第1センサ160-1および第2センサ160-2の構成について説明する。支持体150には、プライマー塗布装置100が外壁1000の上端に達したことを検知する第1センサ160-1、および下端に達したことを検出する第2センサ160-2が設けられる。例えば、支持体150の上部に第1センサ160-1が設けられ、下部に第2センサ160-2が設けられる。第1センサ160-1は、外壁1000との接触の有無を検出する接触式のセンサが用いられてもよいし、外壁1000までの距離を計測する光学式のセンサが用いられてもよい。また、第2センサ160-2は、地面との接触の有無を検出する接触式のセンサが用いられてもよいし、地面までの距離を計測する非接触式のセンサが用いられてもよい。接触式のセンサとしては、マイクロスイッチやリレー接点を有する接点出力方式のセンサを用いることができ、非接触式センサとしては対象物までの距離を検出可能な光学センサ(例えば、レーザ変位計)や超音波センサを用いることができる。なお、第1センサ160-1および第2センサ160-2はセンサに限定されず、例えば、センサに換えて、撮像素子を用いて外壁1000の上端または下端を検出してもよい。
【0032】
第1センサ160-1および第2センサ160-2を設けることで、プライマー塗布装置100による作業の始点および終点を検知することができる。すなわち、第1センサ160-1は、外壁1000の上端(作業開始点)を検出するために設けられ、第2センサ160-2は、外壁1000の下端(作業終了点)を検出するために設けられる。
【0033】
プライマー塗布装置100は、ローラユニット140が外壁1000に接地していることにより、支持体150から外壁1000までの距離が一定に保たれている。したがって、プライマー塗布装置100が外壁1000の上端に達しないときには、第1センサ160-1によって検出される信号は一定または所定の範囲内にある。第1センサ160-1は、支持体150の上側(上側の第1ローラユニット140-1および第2ローラユニット140-2より高い位置)に設けられているので、プライマー塗布装置100が外壁1000の上端に達した場合、第1センサ160-1は外壁を検出しないことになり検出信号が大きく変化する。第1センサ160-1から出力される信号が変化することにより、プライマー塗布装置100が外壁1000の上端に達したことを検出することができる。
【0034】
第2センサ160-2は、地面(または地階)への接触の有無または支持体150の取り付け位置から地面(または地階)までの距離を計測する。プライマー塗布装置100が外壁1000の上方に引き上げられた状態では、第2センサ160-2は地面(または地階)への接触を検出せず、または地面(または地階)までの距離が離れていることを検出する。プライマー塗布装置100が外壁1000の下端(作業の終点)にあるとき、第2センサ160-2は、地面(または地階)への接触を検出し、または地面(または地階)までの距離を検出する。したがって、第2センサ160-2が地面(または地階)を検出したこと、または地面(または地階)までの距離が規定値(または所定の範囲内)であることを判断することで、プライマー塗布装置100が下端に達したことを検出することができる。
【0035】
[2-6.プライマー塗布ユニット110]
図2および図3を参照して、プライマー塗布ユニット110の構成について説明する。プライマー塗布ユニット110は、目地1002にプライマー組成物を塗布する。プライマー塗布ユニット110は、塗布部材111、第1支持体112、第1駆動部113、第1ディスペンサ114、および第1容器115を含む。第1支持体112は、塗布部材111を支持する。第1支持体112の形状は任意であるが、塗布部材111を外壁1000の目地1002に挿入するために、棒状体または板状体が前方に突出する構造を有する。塗布部材111は、この棒状体または板状体の先端に取り付けられる。プライマー組成物の塗布は、塗布部材111を外壁1000の目地1002の側面に擦りつけるようにして作業が行われるため、第1支持体112の突出する先端部分の形状はヘラ(篦)のように平たい形状を有していてもよい。
【0036】
第1駆動部113は、塗布部材111および第1支持体112の前後の位置を変位させる。第1駆動部113は、例えば、電動シリンダ、油圧シリンダ、または空圧シリンダなどのアクチュエータで構成される。
【0037】
第1容器115はプライマー組成物を貯留し、第1ディスペンサ114は第1容器115に貯留されたプライマー組成物を塗布部材111に供給する。プライマー組成物が塗布部材111に第1ディスペンサ114によって定量的に供給されることで、目地1002に沿って均一にプライマー組成物を塗布することができる。第1ディスペンサ114および第1容器115は、支持体150の適当な位置に配置される。例えば、第1ディスペンサ114および第1容器115は、支持体150の上部に配置される。
【0038】
プライマー塗布ユニット110の下側にはトレー116が設けられていてもよい。トレー116は塗布部材111から染み出して滴下したプライマー組成物を回収する用途に用いることができる。トレー116がプライマー塗布ユニット110の下に設けられることで、湿式洗浄ユニット120がプライマー組成物で汚れないようにすることができる。
【0039】
ここで、図4Aおよび図4Bを参照して、塗布部材111の構成について説明する。
【0040】
図4Aおよび図4Bは、本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システム10において、プライマー塗布ユニット110の塗布部材111の構成を示す模式的な上面図および正面図である。塗布部材111は柔軟性を有する1つまたは複数の部材を組み合わせて構成される。図4Aおよび図4Bは、塗布部材111が、柔軟性を有する発泡樹脂材111aと布状材111bとを組み合わせて構成される例を示す。
【0041】
図4Aおよび図4Bに示すように、塗布部材111は第1支持体112の先端を覆うように設けられる。第1支持体112は金属、プラスチックなどの硬質の素材で形成されるのに対し、塗布部材111は柔軟性、吸水性を有する素材で形成される。塗布部材111は、第1支持体112の先端を覆うように発泡樹脂材111aが設けられ、その外側を覆うように布状材111bが設けられる。図示されないが、プライマー組成物は発泡樹脂材111aに供給される。プライマー組成物はアクリル系、エチレン酢酸ビニル系、ウレタン系、エポキシ系の塗料であり液状体である。発泡樹脂材111aは吸水性を有し、十分な量のプライマー組成物が供給されると、布状材111bに染み出して目地1002に塗布することができる。
【0042】
発泡樹脂材111aとしては、例えば、メラミンスポンジが用いられる。また、布状材111bとしてネル生地(フランネル生地)が用いられる。メラミンスポンジは吸水性を有し、ネル生地は適度な透水性を有するため、これらの素材で形成される塗布部材111にプライマー組成物を供給することで、目地にプライマー組成物を均一に塗布することができる。
【0043】
このように、発泡樹脂材111aを布状材111bで覆うことで、発泡樹脂材111aの摩耗を抑えることができ、丈夫な塗布部材111を形成することができる。ネル生地は、弾力性を有し、丈夫であり、表面に起毛を有するので、メラミンスポンジを保護し、刷毛の代用品として用いることができる。
【0044】
第1支持体112の先端には、円弧状のガイド111cが設けられていてもよい。円弧状のガイド111cは外部に露出されていてもよいが、発泡樹脂材111aおよび布状材111bに覆われるように設けられていてもよい。円弧状のガイド111cを用いることで、塗布部材111を目地1002に挿入する際のガイドになる。また、弧状のガイド111cを用いることで、塗布部材111を目地1002に挿入した状態で目地1002から外れないようにしてプライマー組成物を塗布することができる。
【0045】
[2-7.湿式洗浄ユニット120]
図2および図3を参照して、湿式洗浄ユニット120の構成について説明する。湿式洗浄ユニット120は、洗浄液を用いて目地1002の拭き清掃を行う。湿式洗浄ユニット120は、洗浄部材121、第2支持体122、第2駆動部123、第2ディスペンサ124、および第2容器125を含む。第2支持体122は、洗浄部材121を支持する。第2支持体122の形状は任意であるが、洗浄部材121を外壁1000の目地1002に挿入するために、棒状体または板状体が前方に突出する構造を有する。洗浄部材121は、この棒状体または板状体の先端に取り付けられる。プライマー組成物の塗布は、洗浄部材121を外壁1000の目地1002の側壁に擦りつけるようにして作業が行われるため、第2支持体122の突出する先端部分の形状はヘラ(篦)のように平たい形状を有していてもよい。
【0046】
第2駆動部123は、洗浄部材121および第2支持体122の前後の位置を変位させる。第2駆動部123は、例えば、電動シリンダ、油圧シリンダ、または空圧シリンダなどのアクチュエータで構成される。本実施形態では、第1駆動部113および第2駆動部123として2つの独立した駆動機構を示すが、プライマー塗布ユニット110および湿式洗浄ユニット120の駆動機構を共通化し、塗布部材111および洗浄部材121が同時に変位する構成を有していてもよい。
【0047】
第2容器125は洗浄液を貯留し、第2ディスペンサ124は第2容器125に貯留された洗浄液を洗浄部材121に供給する。洗浄液が洗浄部材121に第2ディスペンサ124によって定量的に供給されることで、洗浄液を用いて目地1002を拭き清掃を行うことができる。洗浄液は中性洗剤を用いることができる。目地1002の拭き清掃は、洗剤を使わずに水のみで行われてもよい。第2ディスペンサ124および第2容器125は、支持体150の適当な位置に配置される。例えば、第2ディスペンサ124および第2容器125は、支持体150の上部に配置される。
【0048】
洗浄部材121は、塗布部材111と同様の構成(図4Aおよび図4B参照)を有するため、ここでは洗浄部材121の構成の説明は省略する。
【0049】
[2-8.乾式洗浄ユニット130]
図2および図3を参照して、乾式洗浄ユニット130の構成について説明する。乾式洗浄ユニット130は、目地1002の掃き清掃を行う。乾式洗浄ユニット130は、ブラシ部材131および回転駆動部133を含む。回転駆動部133は、ブラシ部材131を回転させることができる。ブラシ部材131は、目地1002の幅などに合わせて調整することができるように、着脱可能に回転駆動部133に取り付けられることが好ましい。
【0050】
ここで、図5を参照して、乾式洗浄ユニット130のブラシ部材131の動作について説明する。
【0051】
図5は、本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システム10において、乾式洗浄ユニット130のブラシ部材131の動作を説明する模式図である。
【0052】
図5に示すように、ブラシ部材131は、目地1002に挿入されて使用される。回転駆動部133は、ブラシ部材131が目地1002に挿入される方向を軸としてブラシ部材131を回転させる。ブラシ部材131は目地1002に挿入され、目地1002の底面で円を描くように回転しながら、目地1002の側面または底面と接触し、目地1002の汚れを掃き出すことができる。ブラシ部材131のブラシ毛は、ある程度の柔軟性を有する。これにより、目地1002に段差が形成されていても、ブラシ部材131のブラシ毛が目地1002の段差に入り込み、汚れを掻き出すことが可能である。ブラシ部材131のブラシ毛の材質は、特に限定されないが、例えば、ブラシ毛として、豚毛などの動物の体毛またはナイロンなどの樹脂を用いることができる。
【0053】
ブラシ部材131のブラシ毛の形状は、特に限定されないが、軸に沿って毛束状に形成されていてもよく、軸の周りに螺旋状に形成されていてもよい。また、ブラシ部材131の回転は、一方向ではなく、二方向であってもよい。すなわち、正回転と逆回転とが繰り返し行われてもよい。
【0054】
[2-9.第1ガイド180-1、第2ガイド180-2、および第3ガイド180-3]
図2および図3を参照して、第1ガイド180-1、第2ガイド180-2、および第3ガイド180-3の構成を説明する。第1ガイド180-1、第2ガイド180-2、および第3ガイド180-3は、目地1002に挿入され、プライマー塗布装置100が目地1002に沿って下降することができるように、プライマー塗布装置100をガイドする機能を有する。第1ガイド180-1、第2ガイド180-2、および第3ガイド180-3は、目地1002に挿入される位置にカムフォロワを備え、目地1002の側面と接触しても摩擦が生じないように構成されている。正面視において、第1ガイド180-1、第2ガイド180-2、および第3ガイド180-3の各々のカムフォロワ、プライマー塗布ユニット110の塗布部材111、湿式洗浄ユニット120の洗浄部材121、および乾式洗浄ユニット130のブラシ部材131は、直線状に並んで配置されている。このような配置により、塗布部材111、洗浄部材121、およびブラシ部材131が目地1002から外れないように制御することができる。
【0055】
第1ガイド180-1は、プライマー塗布ユニット110の塗布部材111の近傍に配置される。例えば、第1ガイド180-1は、プライマー塗布ユニット110の塗布部材111の上方に配置される。第2ガイド180-2および第3ガイド180-3は、乾式洗浄ユニット130のブラシ部材131の近傍に配置される。例えば、第2ガイド180-2および第3ガイド180-3は、ブラシ部材131を挟んで上下に配置される。目地1002に挿入されたブラシ部材131が、第2ガイド180-2と第3ガイド180-3とでガイドされることにより、目地1002におけるブラシ部材131の回転動作が安定し、目地1002における掃き清掃が均一化される。
【0056】
プライマー塗布装置100に設けられるガイドの数は特に限定されない。なお、第1ガイド180-1は、塗布部材111および洗浄部材121の移動と連動して移動してもよい。
【0057】
ここで、図6Aおよび図6Bを参照して、第1ガイド180-1と、塗布部材111および洗浄部材121との連動した動作について説明する。
【0058】
図6Aおよび図6Bは、本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システム10において、第1ガイド180-1と、塗布部材111および洗浄部材121との連動した動作を説明する模式図である。図6Aは、第1ガイド180-1、塗布部材111、および洗浄部材121が待機位置(初期位置)にある場合を示し、図6Bは、第1ガイド180-1、塗布部材111、および洗浄部材121が作業位置にある場合を示す。待機位置では、塗布部材111および洗浄部材121が支持体150に収納され(換言すると、塗布部材111および洗浄部材121が支持体150から突出していない)、第1ガイド180-1が支持体150から突出し、外壁1000の目地1002に挿入することが可能となる。作業位置では、第1ガイド180-1が支持体150に収納され、塗布部材111および洗浄部材121が支持体150から突出し、外壁1000の目地1002に挿入することが可能となる。待機位置および作業位置の制御は、第1駆動部113および第2駆動部123の動作により制御される。
【0059】
このような構成によれば、塗布部材111によって目地1002にプライマー組成物が塗布されながらプライマー塗布装置100が下降しても第1ガイド180-1が目地1002の側面に接触しない。そのため、目地1002の汚染を防止することができる。
【0060】
[2-10.支持体150内における接続構成]
図2および図3を参照して、支持体150内において、支持体150に接続される接続構成について説明する。支持体150内の天井面には、水平方向(図2において紙面の左右方向)に移動可能な揺動ユニット152が設けられている。また、揺動ユニット152には、接続部材154が接続され、接続部材154を振り子のように揺動することができる。接続部材154には、プライマー塗布ユニット110の第1駆動部113、湿式洗浄ユニット120の第2駆動部123、乾式洗浄ユニット130の回転駆動部133、第1ガイド180-1、第2ガイド180-2、および第3ガイド180-3が接続されている。したがって、プライマー塗布ユニット110の塗布部材111、湿式洗浄ユニット120の洗浄部材121、乾式洗浄ユニット130のブラシ部材131、第1ガイド180-1、第2ガイド180-2、および第3ガイド180-3は、支持体150の中の定位置に固定されるのではなく、揺動可能および水平方向に変位可能な状態となっている。
【0061】
プライマー塗布装置100は、上記接続構成を有することにより、目地1002の直線性に揺らぎがある場合でも、目地1002に合わせて変位することができる。すなわち、プライマー塗布装置100が外壁1000の目地1002に沿って降下するとき、塗布部材111、洗浄部材121、およびブラシ部材131が目地1002から外れることなく、目地1002に沿ってスムーズに降下することが可能となる。換言すると、プライマー塗布装置100が外壁1000の上から下へ移動するとき、支持体150の位置が水平方向に揺らいだとき、または目地1002にうねりがあったときでも、塗布部材111、洗浄部材121、およびブラシ部材131が目地1002から外れないようにすることができる。
【0062】
[3.プライマー塗布工程の制御処理]
図7および図8を参照して、プライマー塗布システム10を用いるプライマー塗布構成の制御処理について説明する。
【0063】
図7は、本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システム10の機能的な構成を示すブロック図である。図7には、プライマー塗布システム10に含まれる、プライマー塗布装置100、昇降駆動装置200、およびプライマー塗布装置100を起動させ、または停止させる操作部300が示されている。プライマー塗布装置100および昇降駆動装置200の機械的な動作は上述したとおりであるが、プライマー塗布装置100および昇降駆動装置200は、制御部104および制御部204によって制御される。
【0064】
制御部104は、プライマー塗布システム10の総括的な制御を実行する。具体的には、制御部104は、プライマー塗布装置100の第1駆動部113、第2駆動部123、第1ディスペンサ114、第2ディスペンサ124、および回転駆動部133の駆動、ならびに昇降駆動装置200のウインチ202の駆動を制御する命令を出力する機能を有する。制御部104は、中央処理ユニット(CPU)、メモリ、インターフェースを含んで構成される。制御部104には、プライマー塗布装置100に備えられる各機器の動作を制御する制御プログラムがメモリに格納されている。プライマー塗布装置100が起動されると、制御部104に格納されている制御プログラムが実行され、各機器の動作を制御する命令が出力される。制御部104は、第1センサ160-1および第2センサ160-2の検出信号に基づきプライマー塗布装置100の状態が判断され、その状態に応じた制御命令を制御プログラムに基づいて出力する。
【0065】
制御部204は、ウインチ202の巻上げおよび巻下げの動作を制御する機能を有する。制御部204は、制御部104からの命令に基づいて、ウインチ202を制御する。また、制御部204は、プライマー塗布装置100の巻上げ高さ、および巻上げ高さを制御する機能を有する。制御部204には、ウインチ202を駆動する制御プログラムが格納されていてもよい。制御部204は、制御プログラムにより自動運転が可能とされていてもよい。
【0066】
操作部300は、作業者が直接的に操作する部分であり、プライマー塗布装置100および昇降駆動装置200の起動を制御する機能を有する。また、操作部300の機能に限定はなく、作業者がプライマー塗布装置100および昇降駆動装置200の各種動作を制御する機能を有していてもよい。例えば、操作部300は、緊急時に昇降駆動装置200の制御部204を制御部104から切り離して、作業者の操作により昇降駆動装置200を操作する機能を有していてもよい。
【0067】
図8は、本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システム10の動作を説明するシーケンス図である。図8に示すように、プライマー塗布システム10では、プライマー塗布装置100、昇降駆動装置200の制御部204、および操作部300が連動して動作し、プライマー塗布工程が実行される。以下では、図7および図8を参照しながら、プライマー塗布システム10の動作を説明する。
【0068】
まず、プライマー塗布システム10を起動した後、制御部104および制御部204に、ワイヤの巻上げ速度、巻上げ高さ、ワイヤの巻下げ速度、プライマー組成物の基準吐出量、および洗浄液の基準吐出量などの作業条件を設定する(S200)。その後、プライマー塗布装置100を外壁1000の前(縦目地の前)に配置し、各部の状態を作業者がCPUに接続されたタッチパネルで確認する。例えば、作業者が地上で、プライマー塗布ユニット110の塗布部材111および湿式洗浄ユニット120の洗浄部材121が待機位置にあるか、第1容器115にプライマー組成物が貯留されているか、第2容器125に洗浄液が貯留されているか、および第2センサ160-2が下端を検出しているか、などを確認する。各部位の条件が初期状態になっていない場合は、プライマー塗布装置100の起動前に作業者が初期状態に調整する。
【0069】
操作部300の起動スイッチをオンにし(S202)、入力された作業条件に基づいて制御プログラムが実行され、プライマー塗布装置100の自動運転が開始される(S204)。
【0070】
自動運転が開始されると、プライマー塗布装置100の制御部104から昇降駆動装置200の制御部204へワイヤ208の巻上げ命令が出力される(S206)。制御部204は、ウインチ202へワイヤ208を巻上げる命令を出力する。ウインチ202は、設定された巻上げ速度でワイヤ208を巻上げる(S208)。これにより、プライマー塗布装置100が外壁1000に沿って上方に持ち上げられる(図1参照)。そして、プライマー塗布装置100が外壁1000の上端に達したことを第1センサ160-1が検出すると(S210)、制御部104は、制御部204へウインチ202を停止する命令を出力する(S212)。制御部204は、ウインチ202を停止する命令をウインチ202へ出力する。ウインチ202は、ワイヤ208の巻上げを停止する(S214)。なお、制御部104は、制御部204に備えられたエンコーダによりワイヤ208の巻上げ高さを判定し、ウインチ202を停止する命令を生成してもよい。
【0071】
その後、プライマー塗布装置100では、制御部104から第1駆動部113および第2駆動部123を駆動する命令が出力される(S216)。具体的には、制御部104から第1駆動部113および第2駆動部123に対し、塗布部材111および洗浄部材121が作業位置に移動する命令が出力され、その動作が実行される。この動作により、塗布部材111および洗浄部材121が、目地1002に挿入される。また、塗布部材111および洗浄部材121の作業位置への移動に合わせて、第1ガイド180-1が目地1002から離れる(図6B参照)。なお、乾式洗浄ユニット130のブラシ部材131は、上記動作に依ることなく、目地1002に挿入されている。
【0072】
塗布部材111および洗浄部材121が作業位置に移動すると、制御部104から、第1ディスペンサ114、第2ディスペンサ124、および回転駆動部133をオンにする命令が出力される(S218)。これらの命令により、第1容器115に貯留されているプライマー組成物が塗布部材111に供給され、第2容器125に貯留されている洗浄液が洗浄部材121に供給され、およびブラシ部材131が回転する。
【0073】
次に、制御部104から制御部204へワイヤ巻下げ命令が出力される(S220)。制御部204は、ウインチ202にワイヤ208の巻下げ動作を行う信号を出力する。ウインチ202は、ワイヤ巻下げ動作を開始する(S222)。ウインチ202の動作により、プライマー塗布装置100は加工し、その過程で目地1002の清掃およびプライマー組成物の塗布の処理が行われる(S224)。
【0074】
第2センサ160-2が下端を検知すると(S226)、制御部104はワイヤ208の巻下げを停止する命令を制御部204に出力する(S228)。ワイヤ巻下げ停止命令を受信した制御部204は、ウインチ202を停止させる(S230)。その後、プライマー塗布装置100では、制御部104が第1ディスペンサ114、第2ディスペンサ124、および回転駆動部133の動作を停止するように制御し(S232)、第1駆動部113および第2駆動部123に塗布部材111および洗浄部材121を待機位置へ移動させる命令を出力する(S234)。この命令により、第1駆動部113および第2駆動部123によって、塗布部材111および洗浄部材121が待機位置へ移動する(図6A参照)。そして、自動運転モードが停止する(S236)。
【0075】
その後、別の目地1002にプライマー組成物を塗布する場合には、プライマー塗布装置100を移動させて同様の処理が繰り返される。
【0076】
本実施形態に係るプライマー塗布システム10では、乾式洗浄ユニット130のブラシ部材131が目地1002の汚れを掃き出し、湿式洗浄ユニット120の洗浄部材121が目地1002の汚れを拭き取り、その後、プライマー塗布ユニット110の塗布部材111が目地1002にプライマー組成物を塗布することができる。したがって、目地1002の汚れを十分に除去した後にプライマー組成物を塗布することができるため、塗布されたプライマー組成物に混入される汚れが減少し、目地1002に充填されるシーリング材の付着力を向上させることができる。また、これらの機能によれば、高層建築物の外壁の目地を清掃し、プライマー組成物を塗布することができるプライマー自動塗布ロボットを提供することもできる。
【0077】
本実施形態に係るプライマー塗布システム10は、さまざまな変形が可能である。以下では、図9A図9B、および図10を参照して、プライマー塗布システム10におけるプライマー塗布装置100の乾式洗浄ユニット130のいくつかの変形例について説明する。なお、プライマー塗布システム10における構成の変形は、これに限られるものではない。
【0078】
[変形例1]
図9Aおよび図9Bは、本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システム10において、プライマー塗布装置100の乾式洗浄ユニット130Aの構成を示す模式的な正面図および側面図である。以下では、乾式洗浄ユニット130Aの構成が、上述した乾式洗浄ユニット130の構成と同様であるとき、その構成の説明を省略する場合がある。
【0079】
図9Aおよび図9Bに示すように、乾式洗浄ユニット130Aは、ブラシ部材131Aおよび回転駆動部133Aを含む。ブラシ部材131Aは、円板プレートの外周面にブラシ毛が設けられている。回転駆動部133Aは、ブラシ部材131Aが目地1002に導入される方向と垂直な方向を軸としてブラシ部材131Aを回転する。ブラシ部材131Aは目地1002に挿入され、目地1002が延在する方向に回転しながら目地1002の側面または底面と接触し、目地1002の汚れを掃き出すことができる。
【0080】
変形例1に係る乾式洗浄ユニット130Aを含むプライマー塗布システム10においても、乾式洗浄ユニット130Aのブラシ部材131Aが目地1002の汚れを掃き出し、湿式洗浄ユニット120の洗浄部材121が目地1002の汚れを拭き取り、その後、プライマー塗布ユニット110の塗布部材111が目地1002にプライマー組成物を塗布することができる。したがって、目地1002の汚れを十分に除去した後にプライマー組成物を塗布することができるため、塗布されたプライマー組成物に混入される汚れが減少し、目地1002に充填されるシーリング材の付着力を向上させることができる。
【0081】
[変形例2]
図10は、本発明の一実施形態に係るプライマー塗布システム10において、プライマー塗布装置100の乾式洗浄ユニット130Bの構成を示す模式図である。
【0082】
図10に示すように、乾式洗浄ユニット130Bは、吹出口136Bおよびコンプレッサ137Bを含む。コンプレッサ137Bによって圧縮された空気は、吹出口136Bから吹き出される。吹出口136Bは目地1002に挿入され、目地1002に対して空気を吹き出しながら、目地1002に付着していた汚れを吹き飛ばすことができる。
【0083】
変形例2に係る乾式洗浄ユニット130Bを含むプライマー塗布システム10においても、乾式洗浄ユニット130Bの吹出口136Bから吹き出された空気が目地1002の汚れを吹き飛ばし、湿式洗浄ユニット120の洗浄部材121が目地1002の汚れを拭き取り、その後、プライマー組成物を塗布することができる。したがって、目地1002の汚れを十分に除去した後にプライマー組成物を塗布することができるため、塗布されたプライマー組成物に混入される汚れが減少し、目地1002に充填されるシーリング材の付着力を向上させることができる。
【0084】
上述した実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜構成を組み合わせて実施することができる。また、実施形態を基にして、当業者が適宜構成の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0085】
上述した実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0086】
10:プライマー塗布システム、 100:プライマー塗布装置、 104:制御部、 110:プライマー塗布ユニット、 111:塗布部材、 111a:発泡樹脂材、 111b:布状材、 111c:ガイド、 112:第1支持体、 113:第1駆動部、 114:第1ディスペンサ、 115:第1容器、 116:トレー、 120:湿式洗浄ユニット、 121:洗浄部材、 122:第2支持体、 123:第2駆動部、 124:第2ディスペンサ、 125:第2容器、 130、130A、130B:乾式洗浄ユニット、 131、131A:ブラシ部材、 133、133A:回転駆動部、 136B:吹出口、 137B:コンプレッサ、 140:ローラユニット、 140-1:第1ローラユニット、 140-2:第2ローラユニット、 140-3:第3ローラユニット、 140-4:第4ローラユニット、 150:支持体、 152:揺動ユニット、 154:接続部材、 160-1:第1センサ、 160-2:第2センサ、 170:連結具、 180-1:第1ガイド、 180-2:第2ガイド、 180-3:第3ガイド、 182:吸引ユニット、 182-1:第1吸引ユニット、 182-2:第2吸引ユニット、 200:昇降駆動装置、 202:ウインチ、 204:制御部、 206:滑車、 208:ワイヤ、 210:支柱、 300:操作部、 1000:外壁、 1002:目地
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10