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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129688
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】シーリング装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/165 20060101AFI20240919BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240919BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
E04F21/165 C
E04F21/165 K
B05C11/10
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039043
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】000135999
【氏名又は名称】株式会社ヒロテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀太郎
(72)【発明者】
【氏名】堤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】貞近 幹亮
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一也
(72)【発明者】
【氏名】冨永 誠
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA08
4F041AA17
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA23
4F041BA32
4F041BA35
4F042AA17
4F042AA28
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA07
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB19
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】目地に充填したシーリング材の凹凸が生じにくいシーリング装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るシーリング装置は、建築物の外壁に配置されているパネル間の目地にシーリング材を吐出する吐出部と、吐出部にシーリング材を供給する供給部と、吐出部によって吐出されたシーリング材が目地から溢れているか否かを検知する溢れセンサと、供給部によって吐出部に供給されるシーリング材の供給速度、又は吐出部によって吐出されるシーリング材の吐出速度を制御する制御部と、を備え、制御部は、溢れセンサによって溢れが検知されたときに、供給速度又は吐出速度を低下させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁に配置されているパネル間の目地にシーリング材を吐出する吐出部と、
前記吐出部にシーリング材を供給する供給部と、
前記吐出部によって吐出された前記シーリング材が前記目地から溢れているか否かを検知する溢れセンサと、
前記供給部によって前記吐出部に供給される前記シーリング材の供給速度、又は前記吐出部によって吐出される前記シーリング材の吐出速度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記溢れセンサによって溢れが検知されたときに、前記供給速度又は前記吐出速度を低下させる、
シーリング装置。
【請求項2】
前記目地が延長する方向において前記溢れセンサより先の位置における前記目地の幅を測定する目地幅センサを備え、
前記制御部は、前記溢れセンサによって溢れが検知されないときに、前記目地幅センサによって測定された前記目地の幅に基づいて、複数の前記供給速度又は複数の前記吐出速度のうち、前記シーリング材が前記目地から溢れない最大の供給速度又は最大の吐出速度を、前記供給速度又は前記吐出速度として設定する制御を行う、
請求項1に記載のシーリング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記目地幅センサによって前記目地の幅が測定されないときに、前記供給速度又は前記吐出速度を、最低の供給速度又は最低の吐出速度より大きい速度に設定する制御を行う、
請求項2に記載のシーリング装置。
【請求項4】
前記供給部は、前記シーリング材を貯留する容器と、貯留されている前記シーリング材に圧力をかける加圧部と、前記容器と前記吐出部とを接続し、前記シーリング材が流れる流路と、を含み、
前記制御部は、前記加圧部が前記貯留されているシーリング材にかける圧力を変化させて、前記供給速度の制御を行う、
請求項3に記載のシーリング装置。
【請求項5】
前記吐出部は、吐出口の絞り量を変更する絞り部を含み、
前記制御部は、前記絞り量を変化させて、前記吐出速度の制御を行う、
請求項3に記載のシーリング装置。
【請求項6】
前記目地が延長する方向に沿って移動する本体を備える、
請求項4又は5に記載のシーリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外壁を複数の外壁パネルによって施工した場合には、外壁パネル間に形成される目地に防水のためのシーリングが施工される。目地にシーリング材を充填する作業を自動化する技術として、例えば、特許文献1に記載されているシーリング装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたシーリング装置は、上下方向に延びるレールに沿って移動する稼働部にシーリング材を吐き出させる吐出手段を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-121889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたシーリング装置が備える吐出手段の吐出量は、予め設定されている。また、この吐出手段の吐出量を変化させることはできるものの、作業者が充填状況を確認しながら変化させる必要がある。
【0006】
このため、特許文献1に記載されたシーリング装置においては、目地幅が場所によって変化する場合には、目地幅の変化に十分対応できない。このため、特許文献1に記載されたシーリング装置では、シーリング材が目地から溢れたり、不足して凹みが生じたりして、品質が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、目地に充填したシーリング材の凹凸が生じにくいシーリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシーリング装置は、建築物の外壁に配置されているパネル間の目地にシーリング材を吐出する吐出部と、吐出部にシーリング材を供給する供給部と、吐出部によって吐出されたシーリング材が目地から溢れているか否かを検知する溢れセンサと、供給部によって吐出部に供給されるシーリング材の供給速度、又は吐出部によって吐出されるシーリング材の吐出速度を制御する制御部と、を備え、制御部は、溢れセンサによって溢れが検知されたときに、供給速度又は吐出速度を低下させる。
【0009】
本発明に係るシーリング装置は、目地が延長する方向において溢れセンサより先の位置における目地の幅を測定する目地幅センサを備え、シーリング装置の制御部は、溢れセンサによって溢れが検知されないときに、目地幅センサによって測定された目地の幅に基づいて、複数の供給速度又は複数の吐出速度のうち、シーリング材が目地から溢れない最大の供給速度又は最大の吐出速度を、供給速度又は吐出速度として設定する制御を行ってもよい。
【0010】
本発明に係るシーリング装置の制御部は、目地幅センサによって目地の幅が測定されないときに、供給速度又は吐出速度を、最低の供給速度又は最低の吐出速度より大きい速度に設定する制御を行ってもよい。
【0011】
本発明に係るシーリング装置の供給部は、シーリング材を貯留する容器と、貯留されているシーリング材に圧力をかける加圧部と、容器と吐出部とを接続し、シーリング材が流れる流路と、を含み、制御部は、加圧部が貯留されているシーリング材にかける圧力を変化させて、供給速度の制御を行ってもよい。
【0012】
本発明に係るシーリング装置の吐出部は、吐出口の絞り量を変更する絞り部を含み、制御部は、絞り量を変化させて、吐出速度の制御を行ってもよい。
【0013】
本発明に係るシーリング装置は、目地が延長する方向に沿って移動する本体を備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るシーリング装置によれば、目地からシーリング材が溢れにくいため、目地に充填したシーリング材の凹凸が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るシーリング装置の概要を示す図である。
図2】本発明に係るシーリング装置の構成を示す正面図である。
図3】本発明に係るシーリング装置の構成を示す側面図である。
図4】本発明に係るシーリング装置におけるシーリング材充填ユニットの構造を示す斜視図である。
図5】本発明に係るシーリング装置におけるシーリングガンとシーリング材均し器具の構成を示す図である。
図6】外壁パネルと目地の関係と本発明に係るシーリング装置に設けられるガイドの構成を説明する図である。
図7】本発明に係るシーリング装置におけるシーリング材充填ユニットの動作を説明する図である。
図8】本発明に係るシーリング装置を含むシーリングシステムの機能的な構成を示す図である。
図9】本発明に係るシーリング装置における本体制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10】本発明に係るシーリング装置の動作フローを示す図である。
図11】本発明に係るシーリング装置の動作フローを示す別の図である。
図12】本発明に係るシーリング装置の本体制御部が取得するデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(または数字の後にA、Bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0017】
1.シーリングシステム
図1に、本実施形態に係るシーリングシステム100の全体的な構成を示す。シーリングシステム100は、シーリング装置102と駆動装置104とを含む。図1はシーリングシステム100の構成を模式的に示し、外壁200を側面から見たときの状態に加え、外壁200を正面からみたときの状態を挿入図として示す。外壁200は複数の外壁パネルにより形成され、外壁パネルの繋ぎ目に目地202が形成されている。シーリングシステム100は、目地202(以下、特段の断りがない限り「縦目地」を指すものとする。)にシーリング材を充填する工事に用いられる。
【0018】
シーリング装置102は、シーリング材充填ユニット106、およびローラユニット108、支持体110、位置センサ112(第1位置センサ112Aおよび第2位置センサ112B)を含む。シーリング材充填ユニット106およびローラユニット108は支持体110に取り付けられる。シーリング材充填ユニット106は目地202にシーリング材を充填する機能を有する。ローラユニット108は外壁200の上をシーリング装置102がスムーズに動くようにするために設けられる。支持体110には、さらに第1位置センサ112Aおよび第2位置センサ112Bが設けられる。第1位置センサ112Aは外壁200の上端を検出し、第2位置センサ112Bは外壁200の下端を検出する機能を有する。
【0019】
駆動装置104は、ウインチ1042、滑車1046、ワイヤ1048、およびウインチ1042の動作を制御する制御部1044を含む。ウインチ1042は、ワイヤ1048を巻き上げ、または巻き下げるため用いられる。滑車1046は支柱105によって支えられ、外壁200の上部に配置される。なお、滑車1046の取り付け構造に特段の限定はなく、例えば、滑車1046はクレーンによって外壁200の上方に配置されてもよい。支持体110の上部には連結具113が設けられており、ワイヤ1048は滑車1046に掛け回されて連結具113に繋がれる。
【0020】
駆動装置104を設置する場所に特段の限定はないが、ウインチ1042は滑車1046より低い位置に配置される。例えば、ウインチ1042は地面に設置される。また、ウインチ1042は建築物の屋上に設置されてもよい。ウインチ1042の動力源としては、電動モータまたは油圧モータが用いられる。ウインチ1042によってワイヤ1048の巻き上げおよび巻き下げを行うことで、シーリング装置102を外壁200の壁面に沿って引き上げ、または引き下げる動作が行われる。なお、図1は、滑車1046として定滑車を示すが、滑車1046の構成はこれに限定されず、シーリング装置102を外壁200の壁面に沿って上下に駆動することができる構成であれば図示される構成に限定されない。例えば、滑車1046は、定滑車と動滑車が適宜組合わされていてもよい。また、ワイヤ1048の巻き上げおよび巻き下げはウインチ1042に限定されず、他のワイヤ巻き取り機構が用いられてもよい。なお、作業者がウインチ1042の動力源を操作して、ワイヤ1048の巻き上げまたは巻き下げを行うことによって、シーリング装置102を外壁200の壁面に沿って引き上げ、または引き下げてもよい。
【0021】
ウインチ1042の動作は制御部1044によって制御される。制御部1044にはインバータが組み込まれており、ウインチ1042によるワイヤの巻き上げおよび巻き下げの速度が制御される。ウインチ1042にはエンコーダが組み込まれていてもよく、それによってシーリング装置102を吊り上げる高さが制御されてもよい。また、シーリング装置102の高さは、外壁の上端を検出する第1位置センサ112Aおよび下端を検出する第2位置センサ112Bの検出信号によってウインチ1042によるワイヤ1048の巻き上げおよび巻き下げの動作が制御されてもよい。さらに、ウインチ1042の動作は、エンコーダと、第1位置センサ112Aおよび第2位置センサ112Bとによって制御されてもよい。
【0022】
シーリング工事の施工に当たり、シーリング装置102はワイヤ1048で吊られた状態で外壁200の下から上へ引き上げられ、外壁200の目地202へシーリング材を充填しながら下方へ移動する。図1の挿入図に示されるように、シーリング装置102はワイヤ1048で吊られた状態で目地202に沿って上から下へ移動する。シーリング装置102が目地202に沿って上から下へ移動する過程で、シーリング材充填ユニット106によって目地202へシーリング材が充填される。
【0023】
シーリング装置102には、シーリング材充填ユニット106にシーリング材を供給するシーリング材供給ユニット116が搭載されている。シーリング材供給ユニット116は、地上または外壁200の上部に配置され、ホースなどでシーリング材充填ユニット106にシーリング材が供給されてもよい。
【0024】
2.シーリング装置
図2および図3を参照してシーリング装置102の構成を説明する。図2はシーリング装置102の正面図(外壁側から見たときの図)を示し、図3はシーリング装置102の側面図を示す。
【0025】
2-1.全体構造
シーリング装置102は、支持体110、シーリング材充填ユニット106、ローラユニット108(第1ローラユニット108A、第2ローラユニット108B、第3ローラユニット108C、第4ローラユニット108D、第5ローラユニット108E、第6ローラユニット108F)、位置センサ112(第1位置センサ112A、第2位置センサ112B)、連結具113、吸引ユニット114(第1吸引ユニット114A、第2吸引ユニット114B、第3吸引ユニット114C、第4吸引ユニット114D)、シーリング材センサ115(溢れセンサ115A、目地幅センサ115B)、ガイド107(第1ガイド107A、第2ガイド107B、第3ガイド107C、第4ガイド107D)を含む。
【0026】
支持体110はシーリング材充填ユニット106を支持するために用いられ、例えば、フレームにより立方体に組み立てられた形状を有する。シーリング材充填ユニット106は支持体110から吊り下げられた状態に設けられる。ローラユニット108(第1ローラユニット108A、第2ローラユニット108B、第3ローラユニット108C、第4ローラユニット108D、第5ローラユニット108E、第6ローラユニット108F)、吸引ユニット114(第1吸引ユニット114A、第2吸引ユニット114B、第3吸引ユニット114C、第4吸引ユニット114D)、第1位置センサ112A、第2位置センサ112B、および連結具113は、支持体110の各所に取り付けられる。また、支持体110にはシーリング材をシーリング材充填ユニット106に供給するシーリング材供給ユニット116が設けられていている。さらに、支持体110には、シーリング材充填ユニット106やシーリング材供給ユニット116の動作を制御する制御盤118が設けられている。
【0027】
2-1-1.支持体
支持体110は、フレームを箱形に組んだ構造を有する。フレームの材質に限定はなく、アルミフレーム、スチールフレーム、カーボンフレームなど各種フレームが用いられる。なお、図2および図3は、フレームによって支持体110が形成される例を示すが、シーリング材充填ユニット106を支持しローラユニット108などを取り付ける構造を有するものであれば他の構造に置き換えられてもよい。例えば、支持体110は、フレーム構造に限定されず、箱形の筐体に置き換えられてもよい。
【0028】
支持体110の上部に連結具113が設けられる。連結具113は、支持体110とワイヤ1048とを連結するために設けられる。連結具113の構造に特段の限定はなく、シーリング装置102を吊り下げることのできる耐荷重を有するものであれば、各種の吊り金具を用いることができる。
【0029】
2-1-2.ローラユニット
支持体110にローラユニット108が設けられる。ローラユニット108は、支持体110を外壁200に対して配置したとき、外壁200に対向する位置に取り付けられる。ローラユニット108は、シーリング装置102が外壁200の表面をスムーズに移動できるように、支持体110の4箇所以上に設けられることが好ましい。例えば、ローラユニット108は、支持体110の上下左右の4箇所に設けられることが好ましい。さらに、ローラユニット108は、支持体110の中央部の左右にも設けられていてもよい。
【0030】
図2は、ローラユニット108が、支持体110の上側左右の2箇所(第1ローラユニット108A、第2ローラユニット108B)、下側左右の2箇所(第3ローラユニット108C、第4ローラユニット108D)、および中央左右の2箇所(第5ローラユニット108E、第6ローラユニット108F)に設けられる例を示す。なお、図2は一例であり、中央左右2箇所に設けられる第5ローラユニット108Eおよび第6ローラユニット108Fは省略されてもよい。ローラユニット108を支持体110の4箇所以上に設けることで、支持体110の傾き、撓み、捩れを防ぐことができ、シーリング装置102を外壁200の表面に接地しながら平行に移動させることができる。
【0031】
2-1-3.吸引ユニット
シーリング材を目地202に充填するときシーリング装置102は外壁200から反作用を受ける。また、シーリング工事が屋外で施工されるとき、シーリング装置102は風の影響を受けて不安定になるおそれがある。そこで、吸引ユニット114により支持体110が外壁200から離れないようにして、シーリング装置102の安定を保つ必要がある。
【0032】
吸引ユニット114は、支持体110が外壁200に対向する面に設けられる。吸引ユニット114は、シーリング装置102の移動によって外壁200の表面にキズを付けないように、外壁200に直接接触しないように設けられることが好ましい。例えば、吸引ユニット114は、ローラユニット108より外側に突出せず、外壁200から離隔するように支持体110に取り付けられることが好ましい。また、吸引ユニット114は、外壁200との接触面に織布なとの柔らかい部材が用いられ、シーリング装置102の移動を阻害しない程度の強さで外壁200に接触し、外壁の表面を摺動するように取り付けられていてもよい。
【0033】
外壁200が鋼板などの強磁性材で形成される場合、吸引ユニット114として磁石を用いることができる。磁石としては、永久磁石、または電磁石が用いられる。また、外壁が鉄筋コンクリートの場合でも内部に鉄筋が含まれるため、吸引ユニット114として磁石を用いてもよい。吸引ユニット114の磁力を外壁に作用させることで、シーリング装置102が外壁から離れないようにすることができる。また、吸引ユニット114は、磁力を作用させるものに代えて、真空ポンプによる吸引力を利用した吸引式のものを適用することができる。
【0034】
吸引ユニット114は、支持体110の少なくとも1箇所、好ましくは複数箇所に設けられる。図2は、吸引ユニット114が、支持体110の上側左右2箇所(第1吸引ユニット114A、第2吸引ユニット114B)、および下側左右2箇所(第3吸引ユニット114C、第4吸引ユニット1114D)に設けられる例を示す。このように、支持体110に対し左右対称に吸引ユニット114を設けることで、シーリング装置102が外壁200から離れないようにし、安定した状態を保つことができる。
【0035】
2-1-4.シーリング材充填ユニット
シーリング材充填ユニット106は、シーリング材の吐出口が目地202に倣って変位可能なように、支持体110に取り付けられる。例えば、シーリング材充填ユニット106は、揺動可能であり、左右方向への変位が可能なように、支持体110に吊り下げられた状態に設けられる。シーリング材充填ユニット106は、シーリングガン1061と第1駆動機構1063Aを含む。第1駆動機構1063Aは、シーリングガン1061を待機位置(シーリング材を吐出しない位置)と作業位置(シーリング材を吐出する位置)に制御する機能を有する。
【0036】
シーリング材充填ユニット106は、シーリング材均し器具1062と第2駆動機構1063Bが設けられていてもよい。シーリング材均し器具1062はシーリングガン1061の先端部分に設けられる。第2駆動機構1063Bはシーリング材均し器具1062を待機位置と作業位置に制御する機能を有する。
【0037】
シーリング材充填ユニット106には、シーリング材を充填するための情報を検出するためのシーリング材センサ115として、溢れセンサ115Aと目地幅センサ115Bが設けられている。溢れセンサ115Aと目地幅センサ115Bは光学式のセンサである。溢れセンサ115Aは、例えば、光をシーリング材均し器具1062の真下に向けて照射し、反射された光の強さを所定の閾値と比較することにより、シーリングガン1061から吐出されたシーリング材が目地202から溢れているか否かを検知する機能を有する。目地幅センサ115Bは、溢れセンサ115Aが照射するよりも下に光を照射し、反射された光の広がりおよび強さから、目地202の幅を検出する機能を有する。溢れセンサ115Aおよび目地幅センサ115Bは、シーリングガン1061の吐出口の垂直方向の中心線上に配置される。シーリング装置102は、シーリング材が目地202から溢れているか否か、目地202の幅等に応じてシーリングガン1061から吐出されるシーリング材の吐出量を制御する機能を備えている。このような構成を有するシーリング材充填ユニット106の詳細は後述される。
【0038】
2-1-5.ガイド
シーリング装置102が目地202に沿って移動するのを助けるように複数のガイド107(第1ガイド107A、第2ガイド107B、第3ガイド107C、第4ガイド107D)が設けられる。図2および図3は、第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bがシーリング材充填ユニット106に設けられ、第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dが支持体110に設けられる例を示す。第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bは、シーリングガン1061の吐出口の垂直方向の中心線上に配置される。第1ガイド107Aは、溢れセンサ115Aより下側、目地幅センサ115Bより上側に配置される。第2ガイド107Bは、目地幅センサ115Bより下側に配置される。第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dは、シーリング材充填ユニット106より下側であって、初期状態では第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bの垂直方向の中心線上に重なるように配置される。複数のガイド(第1ガイド107A、第2ガイド107B、第3ガイド107C、第4ガイド107D)は、シーリング装置102がシーリング材を充填するときに、先端部分が目地202に挿入されるように配置される。
【0039】
2-1-6.位置センサ
支持体110には、シーリング装置102の位置センサ112として、シーリング装置102が外壁200の上端に達したことを検知する第1位置センサ112A、および下端に達したことを検出する第2位置センサ112Bが設けられる。例えば、支持体110の上部に第1位置センサ112Aが設けられ、下部に第2位置センサ112Bが設けられる。第1位置センサ112Aは、外壁200との接触の有無を検出する接触式のセンサが用いられてもよいし、外壁200までの距離を計測する光学式のセンサが用いられてもよい。また、第2位置センサ112Bは、地面との接触の有無を検出する接触式のセンサが用いられてもよいし、地面までの距離を計測する非接触式のセンサが用いられてもよい。接触式のセンサとしては、マイクロスイッチやリレー接点を有する接点出力方式のセンサを用いることができ、非接触式センサとしては対象物までの距離を検出可能な光学センサ(例えば、レーザ変位計)や超音波センサを用いることができる。
【0040】
第1位置センサ112Aおよび第2位置センサ112Bを設けることで、シーリング装置102による作業の始点および終点を検知することができる。すなわち、第1位置センサ112Aは、外壁200の上端(作業開始点)を検出するために設けられ、第2位置センサ112Bは、外壁200の下端(作業終了点)を検出するために設けられる。
【0041】
シーリング装置102は、ローラユニット108が外壁200に接地していることにより、支持体110から外壁200までの距離が一定に保たれている。したがって、シーリング装置102が外壁200の上端に達しないときには、第1位置センサ112Aによって検出される信号は一定または所定の範囲内にある。第1位置センサ112Aは、支持体110の上側(上側の第1ローラユニット108Aおよび第2ローラユニット108Bより高い位置)に設けられているので、シーリング装置102が外壁200の上端に達した場合、第1位置センサ112Aは外壁を検出しないことになり検出信号が大きく変化する。第1位置センサ112Aから出力される信号が変化することにより、シーリング装置102が外壁200の上端に達したことを検出することができる。
【0042】
第2位置センサ112Bは、地面(または地階)への接触の有無または支持体110の取り付け位置から地面(または地階)までの距離を計測する。シーリング装置102が外壁200の上方に引き上げられた状態では、第2位置センサ112Bは地面(または地階)への接触を検出せず、または地面(または地階)までの距離が離れていることを検出する。シーリング装置102が外壁200の下端(作業の終点)にあるとき、第2位置センサ112Bは、地面(または地階)への接触を検出し、または地面(または地階)までの距離を検出する。したがって、第2位置センサ112Bが地面(または地階)を検出したこと、または地面(または地階)までの距離が規定値(または所定の範囲内)であることを判断することで、シーリング装置102が下端に達したことを検出することができる。
【0043】
2-1-7.シーリング材供給ユニット
支持体110には、シーリング材充填ユニット106にシーリング材を供給するシーリング材供給ユニット116が設けられている。シーリング材供給ユニット116は、例えば、シーリングタンク1162、シーリングタンク1162の上面を封止して内部空間を圧縮する圧縮プレート1164、および圧縮プレート1164を昇降させるサーボモータ1166を含むシーリングポンプユニットにより構成されている。シーリングタンク1162にシーリング材を充填し、サーボモータ1166によって圧縮プレート1164を降下させることで、粘性の高いシーリング材を、チューブ1168を通してシーリングガン1061に供給することができる。圧縮プレート1164を降下させる速度を変化させることで、圧縮プレート1164がシーリングタンク1162に貯留されているシーリング材にかける圧力を変化させることができる。このため、チューブ1168を通して単位時間当たりにシーリングガン1061に供給するシーリング材の供給量、すなわち供給速度を複数の段階に調整することができる。また、シーリングタンク1162は大容量化が可能であるため、シーリング装置102に多量のシーリング材を搭載することができる。このため、高層の建物であっても、目地の途中でシーリング材の供給が途切れることなく作業を行うことができ、作業効率を高めることができる。
【0044】
2-1-8.制御盤
制御盤118には、シーリング材充填ユニット106、シーリング材供給ユニット116を駆動する制御回路が収納される。制御盤118の配置は任意であり、例えば、支持体110の側面に設けられる。
【0045】
次に、支持体110に取り付けられるシーリング材充填ユニット106の詳細について説明する。
【0046】
2-2.シーリング材充填ユニット
図4は、シーリング材充填ユニット106の斜視図を示す。なお、図4を参照する説明において、前後方向とは図中に示す[A]の方向を指し、水平方向とは図中に示す[B]の方向を指し、揺動する方向を[C]の方向を指すものとする。また、図4に示す「前方」とは、シーリング装置102が壁面に向けられる方向を指し、「後方」とはその反対の方向を指し、「上方」とは、シーリング装置102を立てたときの上方を指し、「下方」とはその反対方向を指すものとする。
【0047】
シーリング材充填ユニット106は、シーリングガン1061および第1駆動機構1063Aを含む。第1駆動機構1063Aには、例えば、第1アクチュエータ1064Aおよび第1リニアガイド1065Aが含まれる。また、シーリング材充填ユニット106は、シーリング材均し器具1062および第2駆動機構1063Bを含む。第2駆動機構1063Bには、例えば、第2アクチュエータ1064Bおよび第2リニアガイド1065Bが含まれる。シーリング材充填ユニット106には、これらの要素に加え、第1駆動機構1063Aおよび第2駆動機構1063Bが取り付けられる第1支持板1066A、第2支持板1066Bなどの部品が含まれる。
【0048】
第1駆動機構1063Aは、シーリングガン1061を前後方向に変位させ、シーリングガン1061を目地に挿入する機能を有する。第1駆動機構1063Aを構成する第1アクチュエータ1064Aおよび第1リニアガイド1065Aを含み、第1支持板1066Aに固定される。第1リニアガイド1065Aはガイドレール10652Aとブロック10654Aとで構成され、ガイドレール10652Aの長手方向が図示される前後方向に配置される。ブロック10654Aは、第1アクチュエータ1064Aによってガイドレール10652Aの上をスライドする。シーリングガン1061はブロック10654Aに連結されており、第1アクチュエータ1064Aにより前後方向に変位する。なお、シーリングガン1061は第1駆動機構1063Aと第2駆動機構1063Bの間に配置されているため、図4では明示されていない。
【0049】
第2駆動機構1063Bは、シーリング材均し器具1062を前後方向に変位させ、シーリング材均し器具1062を目地に挿入する機能を有する。第2駆動機構1063Bを構成する第2アクチュエータ1064Bおよび第2リニアガイド1065Bを含み、第1支持板1066Aに固定される。第2リニアガイド1065Bはガイドレール10652Bとブロック10654Bとで構成され、ガイドレール10652Bの長手方向が図示される前後方向に配置される。ブロック10654Bは、第2アクチュエータ1064Bによってガイドレール10652Bの上をスライドする。シーリング材均し器具1062はブロック10654Bに連結されており、第2アクチュエータ1064Bによって前後方向に位置が変化するように駆動される。
【0050】
シーリング材充填ユニット106は、第1駆動機構1063Aおよび第2駆動機構1063Bが連動して、シーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062を前後方向に同時に変位させることができる。また、シーリング材充填ユニット106は、第1駆動機構1063Aおよび第2駆動機構1063Bを個別に駆動して、シーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062の一方のみの位置を変位させることも可能である。なお、図4は、シーリングガン1061とシーリング材均し器具1062とがそれぞれ個別の駆動機構によって前後の位置が制御される構成を示すが、このような構成に限定されず、両者は一つの駆動機構によって位置の制御がされてもよい。
【0051】
図5(A)は、シーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062を示す。シーリングガン1061は、本体10611、ノズル10612、および流量調整バルブ10613を含む。ノズル10612は本体10611から前方に伸びており、先端がシーリング材の吐出口10615となる。流量調整バルブ10613は絞りにより、単位時間当たりのシーリング材の吐出量、すなわち吐出速度を変化させる機能を有する。流量調整バルブ10613は電磁式または圧空式のバルブが適用可能であるが、図5(A)に示すシーリングガン1061は、流量調整バルブ10613を操作するハンドル10614が設けられ、ハンドル10614を第3アクチュエータ1064Cで操作する構成を有する。シーリングガン1061は、第1リニアガイド1065Aに取り付けるための取付部品1067に固定されている。
【0052】
シーリングガン1061の本体10611にチューブ1168が接続されている。図5(A)には示されないが、チューブ1168の他端はシーリング材供給ユニット116(図3参照)に接続されている。シーリング材は、シーリング材供給ユニット116からチューブ1168を通してシーリングガン1061に供給される。シーリング材はシーリング材供給ユニット116から連続的に供給され、ノズル10612に設けられた吐出口10615の先から連続的に吐出される。単位時間当たりのシーリング材の吐出量、すなわち吐出速度は、シーリング材供給ユニット116の供給圧、および流量調整バルブ10613の絞り量によって調整される。
【0053】
なお、シーリングガン1061の構造および形状は適宜選択可能であり、図5(A)に示す構成に限定されない。例えば、ハンドル10614は省略されてもよく、自動開閉式のバルブに置き換えられてもよい。
【0054】
シーリング材均し器具1062は、目地202に嵌合する縦長の形状を有する。シーリング材均し器具1062は、外壁に傷を付けないように、軟らかく弾性を有する材料で形成される。シーリング材均し器具1062は、例えば、ゴムスポンジ、ウレタンスポンジなどのフォーム材で形成される。図5(A)に示すように、シーリング材均し器具1062が設けられる場合、ノズル10612はその中を貫通して吐出口10615が露出するように設けられる。このような構成により、ノズル10612からシーリング材が目地202へ吐出された後、シーリング材を均して形状を整えることができる。
【0055】
図5(B)に示すように、シーリング材均し器具1062は、シーリング材206を充填するときに目地202の中にある程度の深さまで挿入される。シーリング材均し器具1062が目地に挿入される深さは、シーリング材206の厚さを考慮して適宜調整可能である。すなわち、シーリング材均し器具1062を目地202へ挿入する挿入深さD2は、目地の深さD1より浅く、シーリング材を充填するとき圧力に耐える接触幅を確保することができ、シーリング材が所定の厚さ(例えば、10mm以上)を有することのできる深さに制御される。なお、目地202にはバックアップ材204が設けられており、目地202の深さは外壁パネル201の表面からバックアップ材204までの深さとする。シーリング材均し器具1062を目地202へ挿入する挿入深さD2を調整することで、目地202に充填されたシーリング材206を均すことができ、シーリング材を外壁パネル201の側壁面に密着するように均すことができる。
【0056】
なお、図5(A)は、シーリング材均し器具1062の中にノズル10612が挿入された構造を示すが、シーリングガン1061とシーリング材均し器具1062の配置はこのような構成に限定されず、ノズル10612がシーリング材均し器具1062の下側に配置されていてもよい。
【0057】
図4に示すように、第1駆動機構1063Aおよび第2駆動機構1063Bが取り付けられる第1支持板1066Aは、一端が第2支持板1066Bに接続され、他端が回動可能とされている。第2支持板1066Bは、固定軸1102に挿通された軸受1104に接続される。軸受1104は、すべり軸受けまたは転がり軸受けで構成されており、固定軸1102を中心に回動可能とされている。したがって、第1支持板1066Aは、固定軸1102を中心として他端が回動するように設けられる。固定軸1102は、水平方向にスライドする第4リニアガイド1106のブロック111064に取り付けられる。ブロック11064はガイドレール11062の上を水平方向に移動可能とされている。このような構成により、第1支持板1066Aは、振り子のように揺動し(図4に示す[C]の方向)、さらに水平方向(図4に示す[B]の方向)にも変位することが可能となっている。シーリング材充填ユニット106は、第1支持板1066Aに取り付けられているため、支持体110の中の定位置に固定されるのではなく、揺動可能および水平方向に変位可能な状態となっている。
【0058】
シーリング材充填ユニット106は、このよう取り付け構造を有することにより、目地202の直線性に揺らぎがある場合でも、目地202に合わせて変位することができる。すなわち、シーリング装置102が外壁200の目地202に沿って降下するとき、シーリングガン1061の先端およびシーリング材均し器具1062が目地から外れることなく、目地202に沿ってスムーズに降下することが可能となる。別言すれば、シーリング装置102が外壁200の上から下へ移動するとき、支持体110の位置が水平方向(左右方向)に揺らいだとき、または目地202にうねりがあったときでも、シーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062が目地から外れないようにすることができる。
【0059】
第1支持板1066Aには目地202の幅を検出する目地幅センサ115Bが設けられる。目地幅センサ115Bとしては、例えば、レーザ変位センサが用いられる。目地幅センサ115Bにより目地の幅を検出し、その検出信号に基づいてサーボモータ1166により圧縮プレート1164を降下させる速度を制御することで、単位時間当たりにシーリングガン1061に供給されるシーリング材の供給量、すなわち供給速度を調整することができる。また、目地幅センサ115Bにより目地の幅を検出し、その検出信号に基づいて第3アクチュエータ1064Cにより流量調整バルブ(図5(A)参照)の絞り量を制御することでも、単位時間当たりにシーリングガン1061から吐出されるシーリング材の吐出量、すなわち吐出速度を調整することができる。
【0060】
2-3.ガイド
図6(A)に示すように、第1外壁パネル201A1および第1外壁パネル201A2を張ったとき目地202Aが所定の幅で形成される。この上に第2外壁パネル201B1および第2外壁パネル201B2を張ったとき目地202Bが所定の幅で形成される。目地202Aと目地202Bの幅および水平方向の位置は同じであることが理想であるが、実際の建築物では誤差が許容されている。例えば、目地の幅W1が19mmから25mmである場合、目地のずれ幅W2は0mmから3mmまで許容される場合がある。
【0061】
シーリング装置102は、外壁200の表面を目地202に沿って降下し、シーリング材充填ユニット106によって正確に目地の中にシーリング材を充填する必要がある。そこで、第1支持板1066AAの先端(回動する側)には、第1ガイド107Aが設けられていることが好ましい。第1ガイド107Aは、図6(B)に示すように、支持部材1072の先端にカムフォロワ1074が設けられた構造を有する。第1ガイド107Aは、第1支持板1066Aから前方に突出し目地202に挿入する位置に設けられる。カムフォロワ1074の直径は目地202の幅より若干小さく設定されており、目地の側面に接触しても摩擦が生じないようにされている。
【0062】
図2および図3に示すように、第1ガイド107Aは、シーリング材充填ユニット106より下側に設けられる。すなわち、シーリング装置102が外壁の上側から下側に移動するとき、第1ガイド107Aは、シーリング材充填ユニット106の移動方向の前方であって、第1支持板1066Aの回動する側の先端付近に設けられる。このような構成により、第1ガイド107Aによって第1支持板1066Aの角度および水平方向の位置を目地に沿うように調整することができ、シーリング材が正しく目地に充填されるようにすることができる。第1ガイド107Aは1つでもよいが複数のガイドが設けられてもよい。例えば、図4に示すように、第1ガイド107Aに加えて第2ガイド107Bを縦方向に並べて配置してもよい。第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bの縦方向の中心線は一致するように配置され、さらにシーリング材充填ユニット106の吐出口10615の縦方向の中心線とも一致するように配置される。このような構成により、第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bによって第1支持板1066Aの角度および水平方向の位置を目地に沿うように調整することができ、シーリング材充填ユニット106が目地から外れないように制御することができる。また、図4に示すように、第1ガイド107Aと第2ガイド107Bとの間に目地幅センサ115Bを設けることで、目地202の幅を正確に検出することができる。
【0063】
第1支持板1066Aに設けられる第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bに加え、図2および図3に示すように、支持体110に第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dが設けられていてもよい。第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dも同様に目地202に挿入されるように支持体110から突出して設けられる。第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dは、第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bより下方側に設けられる。第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bが第1支持板1066Aの先端付近に設けられるのに対し、第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dは支持体110に固定される。また、第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dは、第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bの縦方向の中心線の延長線上に設けられる。第3ガイド107Cおよび第4ガイド107Dにより、支持体110が目地の中心を通るように制御される。さらに、第1ガイド107Aおよび第2ガイド107Bが第1支持板1066Aの角度および水平方向の位置を変動させることにより、目地の直線性が揺らいでいる場合でも、シーリング材充填ユニット106の位置が目地から外れないように微調整をすることが可能となる。
【0064】
3.シーリングシステムの機能と動作
図7(A)および図7(B)は、シーリング材充填ユニット106の動作を示す。図7(A)は、シーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062が待機位置にある場合を示し、図7(B)は、シーリングガン1061の先端およびシーリング材均し器具1062が作業位置にある場合を示す。待機位置は、シーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062が支持体110に収納される位置(別言すれば、支持体110から突出しない位置)である。作業位置は、シーリングガン1061の先端およびシーリング材均し器具1062が支持体110から突出して目地202に挿入されシーリング材が充填される状態である。
【0065】
シーリング装置102が駆動装置104によって外壁200の上部へ引き上がられるとき、第1駆動機構1063Aおよび第2駆動機構1063Bによってシーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062が待機位置となるように制御される。この制御により、シーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062が外壁200の表面を擦らないようにすることができる。シーリング装置102が駆動装置104によって外壁200の上部から下部へ移動するとき、第1駆動機構1063Aおよび第2駆動機構1063Bによってシーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062が作業位置となるように制御される。この制御により、目地202にシーリング材を充填し、目地202の中で広がるように均すことができる。
【0066】
図1を参照して説明したように、シーリングシステム100は、駆動装置104によってシーリング装置102が吊り下げられ、シーリング材充填ユニット106によって目地202にシーリング材を充填する作業が行われるので、レールなどを事前に施工する必要がなく、簡便な構成でシーリング工事を行うことができる。シーリング装置102にはローラユニット108が設けられ、さらに支持体110が外壁200から離れないようにする吸引ユニット114が設けられることで、安定した状態で外壁200の表面を移動し、シーリング作業を行うことができる。シーリング装置102を駆動装置104によって外壁200の上部に引き上げるとき、および外壁200の上部から降下してシーリング充填作業を行うときに応じて、シーリングガン1061およびシーリング材均し器具1062が待機位置と作業位置の少なくとも2つの位置に制御されることにより不慮の衝突による破損を防ぐことができ、作業時にはシーリング材の充填をスムーズに行うことができる。
【0067】
3-1.シーリングシステムの機能的な構成
3-1-1.全体構成
図8は、シーリングシステム100の機能的な構成を示す。シーリングシステム100は、目地202にシーリング材を充填する機能を有するシーリング装置102と、シーリング装置102を外壁200に沿って上下させる機能を有する駆動装置104と、から構成される。
【0068】
シーリング装置102は、シーリング材充填部3106、位置検出部3112、シーリング材供給部3116、本体制御部3118を含む。シーリング材充填部3106は、シーリング材吐出部31061および第1駆動部31063Aを含み、目地202へシーリング材を充填する機能を有する。シーリング材充填部3106は、シーリング材検出部3115を含む。シーリング材検出部3115は、溢れ検出部3115Aおよび目地幅検出部3115Bを含む。位置検出部3112は、上端検出部3112Aおよび下端検出部3112Bを含む。シーリング材充填部3106は、シーリング材均し部31062および第2駆動部31063Bを含み、目地202に充填されたシーリング材を均す機能を有する。
【0069】
シーリング材吐出部31061は、吐出量調整部310613を含む。吐出量調整部310613は単位時間当たりのシーリング材の吐出量、すなわち吐出速度を制御する機能を有する。シーリング材供給部3116は、シーリング材貯留部31162と圧送部31166とを含む。シーリング材貯留部31162はシーリング材を貯留する機能を有し、圧送部31166はシーリング材貯留部31162からシーリング材を圧送する機能を有する。なお、シーリング材吐出部31061から単位時間当たりに吐出されるシーリング材の吐出量、すなわち吐出速度は、シーリング材供給部3116の圧送部31166の圧送機能によっても制御することができる。すなわち、シーリング材吐出部31061から吐出されるシーリング材の吐出速度は、吐出量調整部310613及び圧送部31166の一方又は双方の機能によって調整することができる。
【0070】
上端検出部3112Aはシーリング装置102が外壁200の上端(作業開始位置)に達したことを検出し、検出信号を本体制御部3118に出力する機能を有する。また、下端検出部3112Bはシーリング装置102が外壁200の下端(作業終了位置)に達したことを検出し、検出信号を本体制御部3118に出力する機能を有する。溢れ検出部3115Aは、シーリング材吐出部31061から吐出されたシーリング材が目地202から溢れているか否かを検出する機能を有する。目地幅検出部3115Bは、シーリング材が充填される前の目地202の幅を検出する機能を有する。
【0071】
3-1-2.本体制御部のハードウェア構成
図8に示した本体制御部3118は、第1駆動部31063Aおよび第2駆動部31063B、シーリング材供給部3116の動作を制御する機能を有する。図9は、本体制御部3118のハードウェア構成の一例を示すものである。
【0072】
本体制御部3118は、図2および図3に示した制御盤118に格納されたコンピュータの制御回路によって構成されている。本体制御部3118は、演算処理を行う中央処理ユニット(CPU)401、インターフェース402、メモリ403、補助記憶装置404およびバス405を含んで構成される。メモリ403は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)を含み、補助記憶装置404は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)を含む。本体制御部3118の補助記憶装置404には、各機器の動作を制御する制御プログラムが格納されている。シーリング装置102が起動されると、本体制御部3118の補助記憶装置404に格納されている制御プログラムがメモリ403に読み出され、CPU401によって実行され、インターフェース402を介して各機器の動作を制御する命令が出力される。本体制御部3118は、上端検出部3112A、下端検出部3112Bの検出信号に基づきシーリング装置102の位置を判断し、その状態に応じた制御命令を第1駆動部31063A、第2駆動部31063B、シーリング材供給部3116に出力する。
【0073】
図8に戻って、駆動装置104は、ワイヤ駆動部31042と制御部31044とを含む。ワイヤ駆動部31042は、ワイヤの巻き上げおよび巻き下げの動作を制御する機能を有する。制御部31044は、ワイヤ駆動部31042の動作を制御する機能を有する。また、制御部31044は、ワイヤ駆動部31042によるシーリング装置102の巻き上げ高さ、および巻き下げ高さを制御する機能を有する。制御部31044にはワイヤ駆動部31042を駆動する制御プログラムが格納されていてもよい。駆動装置104は制御プログラムにより自動運転が可能とされていてもよい。
【0074】
操作部3103は、作業者が直接的に操作する部分であり、駆動装置104の起動を制御する機能を有する。操作部3103の機能に限定はなく、作業者がシーリング装置102および駆動装置104の各種動作を制御する機能を有していてもよい。例えば、操作部3103は、緊急時に駆動装置104を本体制御部3118から切り離して、作業員の操作により操作する機能を有していてもよい。
【0075】
なお、図8に示す、シーリング材充填部3106はシーリング材充填ユニット106に対応し、シーリング材吐出部31061はシーリングガン1061に対応し、吐出量調整部310613は流量調整バルブ10613に対応する。シーリング材均し部31062はシーリング材均し器具1062に対応する。第1駆動部31063Aは第1駆動機構1063Aに対応し、第2駆動部31063Bは第2駆動機構1063Bに対応する。位置検出部3112は位置センサ112に対応し、シーリング材検出部3115はシーリング材センサ115に対応する。溢れ検出部3115Aは溢れセンサ115Aに対応し、目地幅検出部3115Bは目地幅センサ115Bに対応し、上端検出部3112Aは第1位置センサ112Aに対応し、下端検出部3112Bは第2位置センサ112Bに対応する。シーリング材供給部3116はシーリング材供給ユニット116に対応し、シーリング材貯留部31162はシーリングタンク1162に対応し、圧送部31166はサーボモータ1166に対応する。本体制御部3118は制御盤118に設けられる制御回路に対応する。ワイヤ駆動部31042はウインチ1042に対応し、制御部31044は制御部1044に対応する。
【0076】
3-2.シーリングシステムの動作
図10は、シーリングシステム100の動作フロー図を示す。シーリングシステム100は、シーリング装置102、駆動装置104、操作部3103を連動させてシーリング作業を実行する。以下においては、図10図8とを参照しながら、シーリングシステム100の動作を説明する。
【0077】
まず、シーリングシステム100を起動した後、本体制御部3118及び駆動装置104に、ワイヤの巻き上げ速度、巻き上げ高さ、ワイヤの巻き下げ速度、シーリング材の基準吐出量などの作業条件を設定する(S200)。その後、シーリング装置102を外壁200の前(縦目地の前)に配置し、各部の状態を作業者がCPUに接続されたタッチパネルで確認する。例えば、作業者が地上で、シーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062が待機位置にあるか、シーリング材貯留部31162にシーリング材が貯留されているか、下端検出部3112Bが下端を検出しているかを確認する。各部位の条件が初期状態になっていない場合は、シーリング装置102の起動前に作業者がリセット状態に調整する。
【0078】
操作部3103の起動スイッチをオンにし(S202)、入力された作業条件に基づいて制御プログラムが実行され、シーリング装置102の自動運転が開始される(S204)。
【0079】
自動運転が開始されると、シーリング装置102の本体制御部3118から駆動装置104の制御部31044へワイヤの巻き上げ命令が出力される(S206)。制御部31044はワイヤ駆動部31042へワイヤを巻き上げる命令を出力する。ワイヤ駆動部31042は設定された巻き上げ速度でワイヤを巻き上げる(S208)。これによりシーリング装置102が外壁200に沿って上方に持ち上げられる(図1参照)。そして、シーリング装置102が外壁200の上端に達したことを上端検出部3112Aが検出すると(S210)、本体制御部3118は駆動装置104の制御部31044へワイヤ駆動部31042を停止する命令を出力する(S212)。制御部31044はワイヤ駆動部31042を停止する命令をワイヤ駆動部31042へ出力する。ワイヤ駆動部31042はワイヤの巻き上げを停止する(S214)。なお、制御部31044は、駆動装置104に備えられたエンコーダによりワイヤの巻き上げ高さを判定しワイヤ駆動部31042を停止させてもよい。
【0080】
その後、シーリング装置102は、本体制御部3118から第1駆動部31063Aおよび第2駆動部11043Bを駆動する命令が出力される(S216)。具体的には、本体制御部3118から第1駆動部31063Aおよび第2駆動部31063Bに対し、シーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062が作業位置に移動する命令が出力され、その動作が実行される(図7(B)参照)。
【0081】
シーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062が作業位置に移動すると、本体制御部3118から、シーリング材供給部3116の圧送部31166をオンにする命令が出力され、シーリング材吐出部31061をオンにする(吐出量調整部310613を開く)命令が出力される(S218)。これらの命令により、シーリング材が、シーリング材供給部3116からシーリング材充填部3106へ供給され、シーリング材吐出部31061から所定の吐出量でシーリング材が目地202へ吐出される。
【0082】
シーリング材吐出部31061からシーリング材が吐出され、溢れ検出部2115Aによりシーリング材の溢れが検出されると、本体制御部3118から駆動装置104の制御部31044へワイヤ巻き下げ命令が出力される(S220)。制御部31044はワイヤ駆動部31042にワイヤの巻き下げ動作を行う信号を出力する。ワイヤ駆動部31042はワイヤ巻き下げ開始する(S222)。ワイヤ駆動部31042の動作によりシーリング装置102は下降し、その過程で縦目地のシーリング材を充填する作業が行われる(S224)。
【0083】
シーリング装置102が下降するとき、溢れ検出部3115Aによりシーリング材の溢れが検出され、目地幅検出部3115Bにより目地の幅が検出され、それらの検出信号が本体制御部3118に出力される。本体制御部3118は、詳しくは後述する演算処理により、圧送部31166に対する圧送量および吐出量調整部310613の吐出量の一方または両方を制御する信号を出力して、シーリング材吐出量の制御を行う(S226)。この吐出量の調整は、下端検出部3112Bが下端を検出するまで行われる(S228)。下端検出部3112Bが下端を検出しない場合は、シーリング材充填処理(S224)に戻り作業が続けられる。
【0084】
下端検出部3112Bが下端を検出すると(S228)、本体制御部3118はワイヤの巻き下げを停止する命令を駆動装置104の制御部31044に出力する(S230)。ワイヤ巻き下げ停止命令を受信した制御部31044はワイヤ駆動部31042を停止させる(S232)。その後、シーリング装置102は、本体制御部3118がシーリング材供給部3116およびシーリング材吐出部31061の動作を停止するように制御し(S234)、第1駆動部31063Aおよび第2駆動部31063Bにシーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062を待機位置へ移動させる命令を出力する(S236)。この命令により、第1駆動部31063Aおよび第2駆動部31063Bによって、シーリング材吐出部31061およびシーリング材均し部31062が待機位置へ移動する(図7(A)参照)。そして、自動運転モードが停止する(S238)。
【0085】
その後、別の縦目地にシーリング材を充填する場合には、シーリング装置102を移動させて同様の処理が繰り返される。
【0086】
以上のように、シーリングシステム100を構成する各要素が連携して動作することにより、建物の外壁の縦目地にシーリング材を自動で充填することができる。作業者は滑車でシーリング装置102を吊り下げて縦目地の位置に配置すればよく、それ以降は図10を参照して説明したように本体制御部3118が制御プログラムに従って各部の機能を制御して縦目地へシーリング材の充填が行われるので、作業にかかる労力が低減し、高所の作業が少なくなるので安全性を確保することができる。また、これらの機能によれば、高層建築物の外壁の目地にシーリング材を均一に充填することができるシーリング自動充填ロボットを提供することができる。
【0087】
3-3.吐出量の制御
図11は、シーリング材吐出量制御(図10のS228)の詳細な動作フロー図を示し、図12はシーリング材吐出量制御において用いられるデータの一例を示す。以下、図8、9、11、12を参照しながら、本体制御部3118がサーボモータ1166により圧縮プレート1164を降下させる速度を制御して、シーリング材の供給速度を制御する動作を説明する。
【0088】
3-3-1.溢れ検出部による溢れの検出
まず、本体制御部3118は、シーリング材吐出部31061(図8参照)が吐出したシーリング材が目地202(図7(A)、(B)参照)から溢れているか否かを示す溢れデータを溢れ検出部3115A(図8参照)から取得する。図12に示すように、溢れデータは、例えば、シーリング材が溢れていることを示す値が「1」であり、シーリング材が溢れていないことを示す値が「0」であるデータである。本体制御部3118は、溢れ検出部3115Aから取得した溢れデータの値に応じて、シーリング材が溢れているか否かを判別する(S101)。なお、溢れデータは、シーリング材が溢れているかいないかを区別できるものであれば、上述したものに限られない。
【0089】
3-3-2.シーリング材が溢れている場合の制御
例えば、本体制御部3118は、溢れデータの値が「1」であるときに、シーリング材が溢れていると判別する(S101;Y)。続いて、本体制御部3118は、シーリング材が溢れている場合にシーリング材の供給速度を低下させる信号をシーリング材供給部3116に出力する(S111)。
【0090】
本体制御部3118は、現在の単位時間あたりのシーリング材の供給速度以下の供給量をシーリング材供給部3116に指示する信号を出力する。以下、供給量は、単位時間当たりにシーリング材吐出部31061に供給されるシーリング材の体積の代わりに、単位時間当たりに供給される体積に対応する1分間当たりの圧縮プレート1164(図8参照)の降下量(単位:mm)で表されているものとする。また、シーリング材供給部3116は、「5.0」、「4.8」、「4.4」、「3.8」、「3.4」、「3.1」、「1.8」の7段階に吐出速度を変化させることができるものとする。本体制御部3118は、シーリング材が溢れている場合、例えば、上記の7つの吐出速度のうち最小の吐出速度「1.8」を選択し、選択した吐出速度1.8を指示する信号(指示吐出量データ)をシーリング材供給部3116に出力する。
【0091】
シーリング材供給部3116は、本体制御部3118から出力された信号を検知して、圧送部31166に指示されたとおりの吐出速度でシーリング材を吐出させる。以上は、吐出速度「1.8」についての説明であるが、他の吐出速度についても同様である。
【0092】
3-3-3.シーリング材が溢れていない場合の制御
本体制御部3118は、溢れデータの値が「0」であるときに、シーリング材は溢れていないと判別する(S101;N)。
【0093】
続いて、本体制御部3118は、目地の幅を示す目地幅データを目地幅検出部3115Bから取得する。目地幅データは、目地の幅を測定したか否かという情報と、目地の幅を測定した場合の測定データと、を含む。図12に示すように、目地幅データは、例えば、目地幅検出部3115Bが目地の幅を測定しなかったことを示す値が「0」であり、目地の幅を測定した場合には、測定した幅が値となるデータである。例えば、目地幅検出部3115Bが23mmという目地の幅を測定したとき、本体制御部3118は、目地幅検出部3115Bから値が「23」である目地幅データを取得する。なお、目地幅データは、目地の幅を表すことができるものであれば、上述したものに限られない。
【0094】
本体制御部3118は、取得した目地幅データの値に応じて、目地幅を測定したか否かを判別する(S102)。
【0095】
例えば、本体制御部3118は、目地幅データの値が「0」であるときに、目地幅を測定しなかったと判別する(S102;N)。続いて、本体制御部3118は、最低の供給速度又は最低の吐出速度より大きい速度に設定する(S121)。例えば、本体制御部3118は、前述した複数の吐出速度の候補のうち、最小の供給速度「1.8」または「1.8」より大きい吐出速度を指示する指示吐出量データとして、「4.4」を選択する。ここで、「4.4」という値はシーリング材が溢れない安全な供給速度の値の一例である。この値は、シーリング材の粘度、圧縮プレート1164の面積、目地202の奥行き等のパラメータに応じて、様々に変更され得る。
【0096】
本体制御部3118は、目地幅データの値が「0」でないときに、目地幅を測定したと判別し(S102;Y)、シーリング材供給部3116に、測定した目地の幅に対応する吐出速度を指示する信号を出力する(S131~S136)。
【0097】
本体制御部3118は、目地幅検出部3115Bによって測定された目地幅が大きい場合には大きい指示吐出量を選択し、目地幅検出部3115Bによって測定された目地幅が小さい場合には小さい指示吐出量を選択する。具体的には、本体制御部3118は、目地幅検出部3115Bによって測定された目地幅に基づいて、前述した複数の供給速度の候補のうち、シーリング材が溢れない最大の供給速度を選択する。例えば、本体制御部3118は、測定した目地幅が26mm以上28mm未満の場合には、指示吐出速度「5.0」を選択する(S131)。例えば、本体制御部3118は、測定した目地幅が24mm以上26mm未満の場合には、指示吐出速度「4.8」を選択する(S132)。例えば、本体制御部3118は、測定した目地幅が22mm以上24mm未満の場合には、指示吐出速度「4.4」を選択する(S133)。例えば、本体制御部3118は、測定した目地幅が20mm以上22mm未満の場合には、指示吐出速度「3.8」を選択する(S134)。例えば、本体制御部3118は、測定した目地幅が18mm以上20mm未満の場合には、指示吐出速度「3.4」を選択する(S135)。例えば、本体制御部3118は、測定した目地幅が16mm以上18mm未満の場合には、指示吐出速度「3.1」を選択する(S136)。ここで、測定した目地幅の値は一例であり、指示吐出速度との対応は、上述したものと異なっていてもよい。このような対応関係は、コンピュータシミュレーションによって予め求められる。
【0098】
以上説明した流れで、本体制御部3118は、シーリング材の供給速度を制御して、シーリング材の吐出量を制御する。なお、シーリング材の吐出量を制御する例として、サーボモータ1166により圧縮プレート1164を降下させる速度を変化させる例を示したが、シーリング材の吐出量を制御する方法はこれに限られない。例えば、本体制御部3118は、シーリング材吐出部31061の吐出量調整部310613に吐出速度を指示することによって、シーリングガン1061の流量調整バルブ10613の絞り量を変化させて、シーリング材の吐出量を制御してもよい。本体制御部3118は、シーリング材の吐出量を制御する代わりに、シーリング装置102の上昇速度を変化させてもよい。指示吐出量は、例えば、コンピュータシミュレーションによって求められる。
【0099】
指示吐出量の候補の数は上述したものに限られない。また、目地幅センサ115Bが検知した目地幅が予め決められた値の範囲外であるときに、駆動装置104は駆動を停止してもよく、シーリング装置102は充填を停止してもよい。
【0100】
本体制御部3118は、現在選択している吐出量から2段階以上大きい吐出量または2段階以上小さい吐出量を選択することとなる場合に、1段階ごとに吐出量を変化させる制御を行わない。シーリング材供給ユニット116のシーリングタンク1162とシーリングガン1061はチューブ1168で接続されているため、圧縮プレート1164の降下と吐出量の変化にはタイムラグが生じる。1段階以上を飛ばすことで、目地幅に大きな変化がある場合であっても、目地幅の変化に素早く追従することができる。このようにしても、チューブ1168内のシーリングガン1061における吐出量の変化はシーリングタンク1162内の圧力より緩やかである。このため、1段階ごとに吐出量を変化させる制御を行わないことにより、却って充填されるシーリング材の表面に明らかな段差が生じにくい。
【0101】
以上説明したように、溢れ検出部3115Aによってシーリング材の溢れが検出されると、溢れが検出されている間、本体制御部3118によってシーリング材の吐出量が抑制される。このため、シーリング装置102によれば、目地からシーリング材が溢れにくい。また、目地幅検出部3115Bによって目地の幅が測定され、本体制御部3118によって吐出量が制御される。このため、シーリング装置102によれば、目地に充填したシーリング材の凹凸が生じにくい。さらに、溢れ検出部3115Aによってシーリング材の溢れが検出されるまで、シーリング装置102は下降を開始せず、待機する。このため、シーリング装置102によれば、充填を開始する際に、目地に充填されるシーリング材の過不足が生じにくい。
【0102】
さらに、シーリング装置102によれば、目地202からシーリング材が溢れにくいため、マスキングテープを使わずにシーリング材を充填する工事をすることができる。
【符号の説明】
【0103】
100:シーリングシステム、102:シーリング装置、104:駆動装置、105:支柱、106:シーリング材充填ユニット、107:ガイド、107A:第1ガイド、107B:第2ガイド、107C:第3ガイド、107D:第4ガイド、108:ローラユニット、108A:第1ローラユニット、108B:第2ローラユニット、108C:第3ローラユニット、108D:第4ローラユニット、108E:第5ローラユニット、108F:第6ローラユニット、110:支持体、112:位置センサ、112A:第1位置センサ、112B:第2位置センサ、113:連結具、114:吸引ユニット、114A:第1吸引ユニット、114B:第2吸引ユニット、114C:第3吸引ユニット、114D:第4吸引ユニット、115:シーリング材センサ、115A:溢れセンサ、115B:目地幅センサ、116:シーリング材供給ユニット、118:制御盤、200:外壁、201:外壁パネル、201A1:第1外壁パネル、201A2:第1外壁パネル、201B1:第2外壁パネル、201B2:第2外壁パネル、202:目地、202A:目地、202B:目地、204:バックアップ材、206:シーリング材、401:中央処理ユニット(CPU)、402:インターフェース、403:メモリ、404:補助記憶装置、405:バス、1042:ウインチ、1044:制御部、1046:滑車、1048:ワイヤ、1061:シーリングガン、1062:シーリング材均し器具、1063A:第1駆動機構、1063B:第2駆動機構、1064A:第1アクチュエータ、1064B:第2アクチュエータ、1064C:第3アクチュエータ、1065A:第1リニアガイド、1065B:第2リニアガイド、1065C:第3リニアガイド、1066A:第1支持板、1066AA:第1支持板、1066B:第2支持板、1067:取付部品、1072:支持部材、1074:カムフォロワ、1082:ローラ、1082A:第1ローラ、1082B:第2ローラ、1102:固定軸、1104:軸受、1106:第4リニアガイド、1162:シーリングタンク、1164:圧縮プレート、1166:サーボモータ、1168:チューブ、3103:操作部、3106:シーリング材充填部、3112:位置検出部、3112A:上端検出部、3112B:下端検出部、3115:シーリング材検出部、3115A:溢れ検出部、3115B:目地幅検出部、3116:シーリング材供給部、3118:本体制御部、10611:本体、10612:ノズル、10613:流量調整バルブ、10614:ハンドル、10615:吐出口、10652A:ガイドレール、10652B:ガイドレール、10652C:ガイドレール、10654A:ブロック、10654B:ブロック、10654C:ブロック、11043B:第2駆動部、11062:ガイドレール、11064:ブロック、31042:ワイヤ駆動部、31044:制御部、31061:シーリング材吐出部、31062:シーリング材均し部、31063A:第1駆動部、31063B:第2駆動部、31162:シーリング材貯留部、31166:圧送部、111064:ブロック、310613:吐出量調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12