(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129689
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】不純物回収装置および不純物回収方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20240919BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G01N1/28 X
G01N1/00 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039045
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】呉 佳紅
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA13
2G052AB01
2G052AD12
2G052AD32
2G052BA19
2G052CA02
2G052CA39
2G052FC05
2G052FC11
2G052FC16
2G052FC19
2G052FD10
2G052GA24
(57)【要約】
【課題】親水性の半導体基板であっても、回収液による不純物の回収を自動化することができる不純物回収装置および不純物回収方法を提供する。
【解決手段】本実施形態による不純物回収装置は、基板の表面に存在する不純物を回収する不純物回収装置である。ステージは、基板を搭載可能である。噴霧器は、基板の中心部から端部へ向かって回収液を噴霧する。回収部は、基板の端部から回収液を回収する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に存在する不純物を回収する不純物回収装置であって、
前記基板を搭載可能なステージと、
前記基板の中心部から端部へ向かって回収液を噴霧する噴霧器と、
前記基板の端部から前記回収液を回収する回収部とを備える、不純物回収装置。
【請求項2】
前記噴霧器は、前記回収液と乾燥した気体とを混合して前記基板に吹き付ける、請求項1に記載の不純物回収装置。
【請求項3】
前記噴霧器の吹き出し口は、前記基板の端部の傾斜方向とほぼ同一の傾斜方向に前記回収液と前記乾燥した気体を吹き付ける、請求項2に記載の不純物回収装置。
【請求項4】
前記回収液は、塩酸(HCl)、フッ酸(HF)、硝酸(HNO3)および過酸化水素水(H2O2)のいずれかである、請求項1に記載の不純物回収装置。
【請求項5】
前記回収部は、多孔質材料または繊維材料で構成されている、請求項1に記載の不純物回収装置。
【請求項6】
前記回収部は、前記回収液を回収する際に、前記基板から離間している、請求項1に記載の不純物回収装置。
【請求項7】
前記回収部は、前記回収液を回収する際に、前記基板の端部に接触しながら、前記基板の周方向の回転に伴い回転する、請求項1に記載の不純物回収装置。
【請求項8】
前記回収液を収容し、前記回収部を挿入することによって、前記回収部に含まれる前記不純物を前記回収液に抽出する抽出部と、
洗浄液を収容し、前記回収部を挿入することによって、前記回収部を洗浄する洗浄部と、
挿入された前記回収部に気体を吹き付けることによって、前記回収部を乾燥する乾燥部と、
前記抽出部、前記洗浄部、前記乾燥部の順番に前記回収部を移動させて挿入する駆動機構とをさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の不純物回収装置。
【請求項9】
基板を搭載可能なステージと、回収液を前記基板へ噴霧する噴霧器と、前記基板から前記回収液を回収する回収部とを備えた不純物回収装置を用いて、前記基板の表面に存在する不純物を回収する不純物回収方法であって、
前記ステージ上の前記基板の中心部から端部へ向かって前記回収液を噴霧し、
前記基板の端部から前記回収液を回収することを具備する不純物回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、不純物回収装置および不純物回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)等の不純物の定量分析では、半導体基板の表面にある不純物を回収液に溶解させて回収し、この回収液を分析することによって不純物を分析する。
【0003】
撥水性の半導体基板である場合には、回収液による不純物の回収は自動で実行することができる。しかし、親水性の半導体基板である場合には、回収液を手動で拭き取る必要があり、回収液による不純物の回収を自動化することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-300605号公報
【特許文献2】特開2008-159657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体基板、特に親水性の半導体基板に対して、回収液による不純物の回収を自動化することができる不純物回収装置および不純物回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による不純物回収装置は、基板の表面に存在する不純物を回収する不純物回収装置である。ステージは、基板を搭載可能である。噴霧器は、基板の中心部から端部へ向かって回収液を噴霧する。回収部は、基板の端部から回収液を回収する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による不純物回収装置の構成例を示す概略図。
【
図4A】不純物の回収処理中の回収部の動作例を示す概略図。
【
図4B】不純物の回収処理中の回収部の動作例を示す概略図。
【
図4C】不純物の回収処理中の回収部の動作例を示す概略図。
【
図4D】不純物の回収処理中の回収部の動作例を示す概略図。
【
図5】第1実施形態による不純物回収装置を用いた不純物回収方法の一例を示す概略図。
【
図6】第1実施形態による不純物回収装置を用いた不純物回収方法の一例を示す概略図。
【
図7A】第1実施形態による不純物回収方法の一例を示すフロー図。
【
図7B】第1実施形態による不純物回収方法の一例を示すフロー図。
【
図11】第2実施形態による回収部および噴霧器の構成例を示す図。
【
図12】第2実施形態による回収部および噴霧器の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものである。明細書と図面において、同一の要素には同一の符号を付す。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による不純物回収装置1の構成例を示す概略図である。不純物回収装置1は、例えば、ICP-MS等によって不純物の定量分析を行う前に、半導体基板Wの表面にある不純物を回収するために用いられる。不純物は、回収液に溶解させて回収液ごと回収する。ICP-MS装置等の定量分析装置において、この回収液を分析することによって不純物を定量分析する。なお、不純物回収装置1は、例えば、ICP-MS装置等の定量分析装置に組み込まれていてもよいし、定量分析装置とは別の装置として設けられていてもよい。
【0010】
不純物回収装置1は、ステージ10と、噴霧器20a、20bと、回収部30と、支持部40と、抽出・洗浄部50と、駆動部60と、コントローラ70と、カメラ80とを備えている。
【0011】
ステージ10は、半導体基板Wを搭載可能であり、半導体基板Wの中心を軸にX-Y面内で回転可能に構成されている。
【0012】
噴霧器20a、20bは、液体の回収液を霧状にして噴霧する。例えば、噴霧器20a、20bは、ネブライザとして構成されていてもよい。噴霧器20a、20bは、半導体基板Wの中心部から端部(ベベル部)へ向かって回収液を乾燥した気体(例えば、窒素(N2))とともに噴霧する。噴霧器20a、20bは、回収液と乾燥した気体とを混合して半導体基板Wの端部に吹き付ける。回収液の供給量は、乾燥した気体の供給量と比べて、十分小さい。
【0013】
噴霧器20aは、半導体基板Wの上方に配置されており、半導体基板Wの表面FS(ステージ10と接触する面を裏面RSとしたとき、その反対側の面)側から端部へ回収液および乾燥した気体を噴霧する。噴霧器20bは、半導体基板Wの下方に配置されており、半導体基板Wの裏面RS(ステージ10と接触する面)側から端部へ回収液および乾燥した気体を噴霧する。即ち、噴霧器20a、20bは、半導体基板Wの表面および裏面の両側から半導体基板Wの端部へ回収液および乾燥した気体を噴霧する。噴霧器20a、20bからのそれぞれの回収液および乾燥した気体の噴出圧力は、例えば、ほぼ等しい圧力であることが好ましい。この場合、半導体基板Wの水平状態を維持しやすくなる。噴霧器20a、20bは、そのノズルの開口を半導体基板Wの端部から外側へ向けており、回収液および乾燥した気体を半導体基板Wの端部から外側に向かって吹き付ける。それにより、回収液が半導体基板Wの端部から半導体基板Wの外側にある回収部30へ向かって流れる、あるいは飛翔するようにする。
【0014】
回収液は、例えば、塩酸(HCl)、フッ酸(HF)、硝酸(HNO3)または過酸化水素水(H2O2)のいずれかが好適に用いられる。回収液は、液体状態で回収液タンク90に収容されており、配管を介して噴霧器20a、20bへ供給される。また、ガスタンク92が乾燥した気体(例えば、窒素(N2))を回収液に供給し、噴霧器20a、20bは乾燥した気体とともに霧状の回収液を半導体基板Wの端部に吹き付ける。回収液は、半導体基板Wに噴霧された後、回収部30に吸収され保持される。
【0015】
回収部30は、半導体基板Wの端部から回収液を回収する。回収部30は、例えば、多孔質材料または繊維材料で構成されている。回収部30の素材としては、例えば、選択された回収液と反応しない素材を用いることが好ましい。回収部30には、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)スポンジ、PVAをメッシュ状にしたフィルム、柔軟性PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)シート、PVAに水溶性の気孔生成剤を添加して形成されたスポンジ等のPVF(ポリビニルホルマール)またはPU(ポリウレタン)スポンジ等の多孔質材料が用いられ得る。
【0016】
また、回収部30には、例えば、ミクロファイバー、ナノファイバー、コットン、ゴム繊維、石英ウール等の繊維部材が用いられ得る。
【0017】
また、回収部30には、例えば、SiO2またはSiNの粉末を固めて球状、棒状、または、シート状にした部材、多孔質または繊維状のゴムであってもよい。このような材質の回収部30は、半導体基板Wの端部から回収液を吸収し回収することができる。
【0018】
回収部30は、回収液を回収する際に、半導体基板Wの端部に接触しながら、半導体基板Wの周方向の回転に伴い回転する。即ち、回収部30は、駆動部60によってZ方向の軸を中心に自転する。例えば、回収部30は、半導体基板Wの回転に合わせて半導体基板Wの外周を転がるように自転する。このとき、回収部30は、半導体基板Wの外周を滑らないように転がってもよく、半導体基板Wの外周を滑りながら転がってもよい。
【0019】
支持部40は、回収部30を回転可能に支持している。支持部40は、回収部30を上下に(±Z方向に)移動させることができる。また、支持部40は、X-Y面内において、回収部30を半導体基板Wから離したり、近づけたりすることができる。さらに、支持部40は、抽出・洗浄部50に設けられた支柱を中心として、X-Y面内において、回収部30を回転移動させることができる。
【0020】
抽出・洗浄部50は、抽出部51と、洗浄部52と、水洗部53と、乾燥部54とを備える。抽出部51は、例えば、回収液と同様の溶液を収容しており、回収部30を挿入して収容可能な大きさを有する液槽である。支持部40が回収部30を移動させて抽出部51に回収部30を挿入する。抽出部51では、回収部30を回収液に浸漬し、回収部30に吸収された不純物を抽出する。抽出部51には、図示しない定量分析装置へ回収液を搬送する配管が接続されている。これにより、抽出された不純物が回収液とともに抽出部51から定量分析装置へ配管を介して搬送され、定量分析装置において不純物が定量分析される。不純物は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属汚染物質である。
【0021】
洗浄部52は、洗浄液を収容しており、回収部30を挿入して収容可能な大きさを有する液槽である。支持部40が回収部30を移動させて洗浄部52に回収部30を挿入する。洗浄部52では、回収部30を洗浄液に浸漬し、回収部30を洗浄する。これにより、回収部30に付着した汚れを洗い流す。洗浄液は、例えば、回収液と同じで、塩酸(HCl)、フッ酸(HF)、硝酸(HNO3)または過酸化水素水(H2O2)のいずれかでよい。
【0022】
水洗部53は、純水を収容しており、回収部30を挿入して収容可能な大きさを有する液槽である。支持部40が回収部30を移動させて水洗部53に回収部30を挿入する。水洗部53では、回収部30を純水に浸漬し、回収部30を水洗する。これにより、回収部30に含まれる回収液および洗浄液を純水で洗い流す。
【0023】
乾燥部54は、回収部30を挿入して収容可能な大きさを有する槽である。支持部40が回収部30を移動させて乾燥部54に回収部30を挿入する。乾燥部54では、乾燥した気体(例えば、窒素ガス)を回収部30に吹き付けて、回収部30に付着する純水を吹き飛ばす。これにより、回収部30を乾燥させる。
【0024】
このように、支持部40が回収部30を抽出部51~乾燥部54に順番に挿入することによって、回収部30は、不純物の回収に再利用され得る。例えば、乾燥させた回収部30は、支持部40によって
図1に示す位置に戻され、ステージ10上に載置された他の半導体基板Wの端部に吹き付けられた回収液を回収するために再利用される。
【0025】
駆動部60は、噴霧器20a、20b、回収部30、支持部40等を駆動させるモータ等でよい。駆動部60は、支持部40を動作させて、抽出部51、洗浄部52、水洗部53および乾燥部54の順番に回収部30を移動させて挿入する。
【0026】
コントローラ70は、駆動部60を制御するコンピュータ等でよい。コントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)およびソフトウェアで構成されていてもよく、あるいは、PLC(Programmable Logic Controller)で構成されていてもよい。
【0027】
カメラ80は、ステージ10のZ方向の上方に配置されており、ステージ10上に搭載された半導体基板Wを撮像する。カメラ80で撮像された画像は、コントローラ70に送信される。コントローラ70では、カメラ80からの画像を用いて、半導体基板Wの端部を検出する。例えば、コントローラ70は、半導体基板Wの端部の傾斜角を検出する。
【0028】
回収液タンク90は、液体状態を収容しており、配管を介して噴霧器20a、20bへ回収液を供給する。
【0029】
ガスタンク92は、乾燥した気体(例えば、窒素(N2))を収容し、配管内において回収液と混合され、噴霧器20a、20bに回収液とともに乾燥した気体を供給する。
【0030】
抽出部51~乾燥部54、回収液タンク90、ガスタンク92、は、不純物回収装置1に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0031】
図2および
図3は、回収部30および噴霧器20a、20bの構成例を示す図である。
【0032】
回収部30は、例えば、略円筒形または略円柱形を有しており、その側面において半導体基板Wの端部に接触している。回収部30は、半導体基板Wの表面に対して略平行方向から半導体基板Wの外周へ向かって半導体基板Wの端部に接触する。回収部30は、
図3に示すように、半導体基板Wの周方向の回転に伴って、半導体基板Wの外周に接触しながら回転軸A30を中心に転がる。このように、回収部30は、自転しながら、半導体基板Wの外周に沿って転がる。回収部30は、例えば、回転軸A30がZ軸と一致するように配置される。回収部30は、半導体基板Wに対して傾けて配置されていてもよい。例えば、回収部30は、回転軸A30がZ軸から傾いた状態で配置されていてもよい。回収部30は、半導体基板Wの回転から付勢を受けて回転してもよい。あるいは、回収部30は、半導体基板Wの回転と同期して駆動部60によって動力を得てもよい。尚、不純物を回収しているときには、ステージ10が半導体基板Wを回転させるので、支持部40は、回収部30の回転軸A30を移動させる必要はない。しかし、支持部40は、半導体基板Wの端部に接触させながら、半導体基板Wの外周に沿って回収部30の回転軸A30を移動させてもよい。
【0033】
回収部30は、支持部40から着脱可能に取り付けられていてもよい。これにより、回収部30が劣化した場合に、回収部30のみを交換することができる。
【0034】
噴霧器20a、20bは、例えば、半導体基板Wを挟むように、半導体基板WのZ方向の上下に配置されている。噴霧器20a、20bは、半導体基板Wの端部に向かって回収液および乾燥した気体を吹き付け、その回収液が回収部30へ向かって移動し吸収されるように、Z軸に対して傾斜している。例えば、噴霧器20a、20bは、それらの吹き出し口を互いに対向させ、吹き出し方向をZ軸方向にした状態から半導体基板Wの中心側に傾斜している。これにより、噴霧器20は、半導体基板Wの中心部から端部へ向かって回収液および乾燥した気体を噴霧し、噴霧された回収液は、半導体基板Wの端部に接触した後、回収部30へ回収される。
【0035】
Z軸に対する噴霧器20a、20bのそれぞれの傾斜角θa、θbは、Z軸に対する半導体基板Wの端部(ベベル部)の傾斜角θFS、θRSにそれぞれほぼ等しいことが好ましい。この場合、噴霧器20a、20bの吹き出し口は、半導体基板Wの端部の傾斜とほぼ同一の傾斜方向に回収液および乾燥した気体を吹き付ける。これにより、回収液および乾燥した気体が半導体基板Wの端部に充分に吹き付けられ、かつ、回収液が回収部30へ回収され易くなる。このとき、コントローラ70が駆動部60を制御し、既にコントローラ70によって検出された半導体基板Wの端部の傾斜角θFS、θRSに合わせて、噴霧器20a、20bの傾斜角θa、θbをそれぞれ調整してもよい。
【0036】
噴霧器20a、20bが、半導体基板Wの端部へ回収液および乾燥した気体を吹き付けることによって、半導体基板Wが疎水性および親水性のいずれであっても、回収液は、半導体基板Wの端部から回収部30へ回収される。噴霧器20a、20bが回収液を噴出する勢いは、回収液が半導体基板Wの不純物を溶解しつつ回収部30へ回収されるように調節される。
【0037】
不純物の回収処理中において、回収部30とステージ10との相対位置は、固定されていてもよい。この場合、回収部30は、Z方向において固定されており、回収部30の側面の一部で半導体基板Wと接触しながら回転する。
【0038】
一方、不純物の回収処理中において、回収部30は、回転軸A30の方向(Z方向)に移動しながら回転してもよい。
【0039】
噴霧器20a、20bは、両方とも回収液を噴霧してもよいが、いずれか一方は、回収液を噴霧せず、乾燥した気体のみを噴出してもよい。この場合、例えば、基板Wの片面ごとに交互に不純物を回収し、分析することができる。この場合でも、噴霧器20a、20bの一方からの乾燥した気体の噴出圧力と他方からの回収液および乾燥した気体の噴出圧力は、ほぼ等しいことが好ましい。これにより、半導体基板Wの水平状態を維持しやすくなるのに加えて、回収液が、半導体基板Wの端部から回収部30へ向かって流れ、または飛翔することができる。
【0040】
図3に示されるように、噴霧器20a、20bは、回収部30が半導体基板Wと接触している箇所に回収液および乾燥した気体を噴霧している。この場合、噴霧された回収液および乾燥した気体が、回収部30に向かって飛翔するため、回収部30以外の場所に飛翔して、不純物回収装置1の内部が汚染されることを抑制できる。
【0041】
図4A~
図4Dは、不純物の回収処理中の回収部30の動作例を示す概略図である。
図4Aに示すように、不純物の回収処理中において、回収部30は、半導体基板Wの外周を転がりながら回転軸A30の延伸方向(Z方向)に移動している。これにより、半導体基板Wと接触する回収部30の部分は、回収部30の側面においてらせん状に変化する。半導体基板Wと回収部30との接触箇所は、例えば、
図4Aのように回収部30の側面の下端から開始され、
図4B~
図4Dのように回収部30の側面の上端までらせん状に変更される。その後、半導体基板Wと回収部30との接触箇所は、回収部30の側面の上端から下端へ往復してもよい。
【0042】
回収部30のZ方向の移動速度は、半導体基板Wの端部が回収部30の側面に平均的に均等に接触するように調節する。例えば、Z方向における半導体基板Wと回収部30の側面との接触幅をTとし、半導体基板Wの半径をRとし、回収部30の回転半径をrとする。回収部30は、半導体基板Wの外周を滑らずに転がるものとする。この場合、半導体基板Wが1回転すると、回収部30は、n(n=R/r)回転する。回収部30は、自身が1回転するごとに、接触幅TだけZ方向に移動する。これにより、半導体基板Wと回収部30との接触部は、回収部30において重複すること無くらせん状にZ方向に移動する。その結果、回収部30の側面の一部分のみで不純物および回収液を吸収するのではなく、回収部30の側面全体で不純物および回収液を吸収することができる。
【0043】
回収部30のZ方向の長さは、n×Tか、それ以上であることが好ましい。これにより、半導体基板Wが1回転しても、半導体基板Wと回収部30との接触部は、回収部30において重複すること無くらせん状に移動することができる。
【0044】
尚、回収部30は、自身が1回転するごとに接触幅Tより大きくZ方向に移動してもよい。あるいは、半導体基板Wと回収部30との接触部が回収部30の側面上で重複してもよいものとすれば、回収部30は、自身が1回転するごとに接触幅Tより小さくZ方向に移動してもよい。また、
図4Eに示すように、回収部30は、半導体基板Wの接触幅Tに合わせて、側面にらせん状の溝Gを有していても良い。
図4Eは、回収部30の構成例を示す側面図である。半導体基板Wの端部は回収部30の溝Gに沿って相対的に移動するので、半導体基板Wと回収部30との接触部は、半導体基板Wの回転に伴ってらせん状に移動する。
【0045】
次に、不純物回収装置1を用いた不純物回収方法について説明する。
【0046】
図5および
図6は、第1実施形態による不純物回収装置1を用いた不純物回収方法の一例を示す概略図である。
図7Aおよび
図7Bは、第1実施形態による不純物回収方法の一例を示すフロー図である。
【0047】
まず、ステージ10上に半導体基板Wを搭載する。ここで、カメラ80で半導体基板Wを撮像し、コントローラ70が画像処理を行って半導体基板Wの端部を検知してもよい。より具体的には、コントローラ70が、半導体基板Wの端部の傾斜角θFS、θRSを検出するとともに、駆動部60を制御し、検出された半導体基板Wの端部の傾斜角θFS、θRSに合わせて、噴霧器20a、20bの傾斜角θa、θbをそれぞれ調整してもよい(S5)。
【0048】
不純物回収装置1は、
図1~
図3を参照して説明したように、半導体基板Wの端部に回収部30を接触させ、半導体基板Wおよび回収部30を回転させながら、噴霧器20a、20bから回収液および乾燥した気体を半導体基板Wの端部に噴霧する(S10)。
【0049】
回収液は、半導体基板Wの端部に吹き付けられ、半導体基板Wに存在する不純物を溶解して取り込む。その後、回収液は、半導体基板Wの端部から回収部30へ向かって流れ、あるいは飛翔する。
【0050】
回収部30は、半導体基板Wからの回収液を吸収し回収する(S20)。回収液には、半導体基板Wに存在する不純物が含まれている。回収部30が回収液を吸収した後、半導体基板Wおよび回収部30の回転動作を停止する。
【0051】
次に、
図5に示すように、支持部40が支柱を軸にX-Y面内で回転(旋回)し、回収部30を抽出・洗浄部50の抽出部51の上方に移動させる。さらに、
図6に示すように、支持部40と回収部30との間の部材がZ方向に伸びて、抽出部51の液槽内に回収部30を挿入する。回収部30は、抽出部51内において、不純物の含まれていない回収液に浸漬される。これにより、回収部30に回収された回収液およびそれに含まれる不純物が、抽出部51内の回収液に抽出される(S30)。
【0052】
支持部40と回収部30との間の部材を縮めた後、同様に、支持部40が支柱を軸にX-Y面内で回転(旋回)し、回収部30を洗浄部52の上方に移動させる。さらに、支持部40と回収部30との間の部材が伸びて、洗浄部52の液槽内に回収部30を挿入する。回収部30は、洗浄部52内において、洗浄液に浸漬される。これにより、回収部30が、洗浄部52内の洗浄液で洗浄される(S40)。なお、洗浄液への浸漬は1回でもよく、複数回であってもよい。複数回浸漬する場合には、例えば、洗浄液を浸漬の度に入れ替えてもよい。
【0053】
その後、回収部30が再利用可能かどうかを判定する処理がさらに実行される(S45)。より具体的には、
図7Bに示すように、例えば、回収部30が再利用可能な状態であるか否かが判断される(S45A)。回収部30が再利用可能な状態であると判断された場合には(S45A、Yes)、回収部30は、支持部40によってステージ10付近、すなわち、
図1に示す位置に戻される(S45C)。一方で、回収部30が再利用可能な状態にないと判断された場合には(S45A、No)、回収部30が支持部40から取り外され、新しい回収部が取り付けられ(S45B)、その後、支持部40によって新しい回収部がステージ10付近に移動される(S45C)。回収部30が再利用可能な状態であるか否か(S45A)は、例えば、洗浄部52内で回収部30を浸漬した後の洗浄液を用いて、ICP-MS等による不純物の定量分析を行うことで判定してもよい。
【0054】
支持部40と回収部30との間の部材を縮めた後、同様に、支持部40が支柱を軸にX-Y面内で回転(旋回)し、回収部30を水洗部53の上方に移動させる。さらに、支持部40と回収部30との間の部材が伸びて、水洗部53の液槽内に回収部30を挿入する。回収部30は、水洗部53内において、純水に浸漬される。これにより、回収部30が、水洗部53内の純水ですすがれる(S50)。
【0055】
支持部40と回収部30との間の部材を縮めた後、同様に、支持部40が支柱を軸にX-Y面内で回転(旋回)し、回収部30を乾燥部54の上方に移動させる。さらに、支持部40と回収部30との間の部材が伸びて、乾燥部54の槽内に回収部30を挿入する。回収部30は、乾燥部54内において、乾燥した気体(例えば、窒素ガス)に晒される。これにより、回収部30が乾燥される(S60)。
【0056】
他の半導体基板の不純物を回収する場合、半導体基板Wをステージ10から搬出して、他の半導体基板をステージ10上に搭載する。その後、支持部40は、回収部30を
図1に示す位置に戻す。これにより、回収部30は、ステップS5~S60の不純物の回収に再利用することができる。
【0057】
図8は、抽出部51に回収部30を挿入した状態を示す図である。抽出部51は、供給部から所定量の回収液を貯留する。抽出部51は、回収部30を回収液に浸漬した後、回収液を定量分析装置へ送る。定量分析装置は、所定量の回収液に含まれる不純物の元素種およびその濃度を分析する。
【0058】
図9Aは、洗浄部52に回収部30を挿入した状態を示す図である。洗浄部52は、供給部から洗浄液の供給を受け、回収部30を洗浄液で洗浄する。洗浄液は、回収部30の洗浄に使用された後、定量分析装置へ送られるか、あるいは、廃液部へ廃液される。なお、洗浄液への回収部30の浸漬は1回、あるいは、複数回であってもよく、複数回浸漬する場合には、例えば、回収部30の浸漬の度に洗浄液を入れ替えてもよい。
【0059】
例えば、洗浄液が定量分析装置へ送られる場合、
図7BのS45Aに示されるように、洗浄液は回収部30が再利用可能な状態であるか否かを判定するために用いられる。洗浄液への浸漬を複数回行う場合、例えば、最後に回収部30を浸漬した洗浄液を定量分析装置に送る。例えば、定量分析装置で洗浄液を分析した結果、所定量の洗浄液に含まれる不純物の濃度が定量下限以下であれば、回収部30は再利用可能であると判定されてもよい。つまり、洗浄液に含まれる不純物の濃度が、定量分析装置において検出できる限界以下であれば、回収部30は再利用可能であると判定されてもよい。
【0060】
図9Bは、水洗部53に回収部30を挿入した状態を示す図である。水洗部53は、供給部から純水の供給を受け、回収部30を純水ですすぐ。純水は、回収部30のすすぎに使用された後、廃液部へ廃液される。
【0061】
図10は、乾燥部54に回収部30を挿入した状態を示す図である。乾燥部54は、吸気部から乾燥ガスの供給を受け、回収部30を乾燥ガスで乾燥する。乾燥に使用されたガスは、乾燥部54から排気部へ排気される。
【0062】
このように、本実施形態による不純物回収装置1は、噴霧器20a、20bを備えており、半導体基板Wの端部に向かって回収液を吹き付ける。半導体基板Wが疎水性および親水性のいずれであっても、回収液は、半導体基板Wの端部から回収部30へ回収され得る。
【0063】
すなわち、半導体基板Wが親水性であっても、回収液を手動で拭き取る必要がなく、回収部30が自動で回収液および不純物を回収することができる。自動で回収液および不純物を回収するため、その後のICP-MS等の不純物の定量分析の精度が向上する。
【0064】
また、回収部30は半導体基板Wの外周を、回転軸A30を軸に転がりながら、回転軸A30(Z)方向に移動している。これにより、半導体基板Wと回収部30との接触部は、回収部30の側面をらせん状に移動する。その結果、回収部30の側面全体で回収液および不純物を吸収することができる。よって、回収部30の一部分のみが半導体基板Wと接触して劣化することを抑制できる。また、回収部30の側面において、回収液および不純物を吸収していない部分が半導体基板Wと接触できるため、回収部30に一度吸収された回収液および不純物が、再び半導体基板Wに付着してしまうことも抑制できる。
【0065】
(第2実施形態)
図11および
図12は、第2実施形態による回収部30および噴霧器20a、20bの構成例を示す図である。第2実施形態では、回収部30は、回収液を回収する際に、半導体基板Wから離間している。従って、回収部30は、半導体基板Wの外周に沿って、回転軸A30を軸に回転(自転)する必要がない。この場合、
図12に示すように、回収部30は、略円筒形または略円柱形である必要はなく、略角筒形または略角柱形であってもよい。このように、回収部30は、噴霧器20a、20bに対して固定位置にあり、半導体基板Wの周方向の回転に対して、回転軸A30を中心に回転(自転)しない。
【0066】
第2実施形態のその他の構成および動作は、第1実施形態と同様でよい。第2実施形態のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、回収部30が半導体基板Wから離間することで、回収部30の一部分のみが半導体基板Wと接触して劣化することや、回収部30に一度吸収された回収液および不純物が、再び半導体基板Wに付着することを抑制できる。
【0067】
尚、第2実施形態において、不純物の回収処理中に、回収部30は、Z方向に移動してもよい。この場合、回収部30は、側面のZ方向において回収液を均等に吸収することができる。また、回収部30は、第1実施形態の回収部30と同様に、回転軸A30(Z軸)を中心に回転(自転)してもよい。これにより、回収部30は、側面において回収液を均等に吸収することができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 不純物回収装置
10 ステージ
20a,20b噴霧器
30 回収部
40 支持部
50 抽出・洗浄部
51 抽出部
52 洗浄部
53 水洗部
54 乾燥部
60 駆動部
70 コントローラ
80 カメラ