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特開2024-129702光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129702
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/1065 20180101AFI20240919BHJP
   C03C 25/16 20060101ALI20240919BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C03C25/1065
C03C25/16
G02B6/44 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039066
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】山城 健司
【テーマコード(参考)】
2H250
4G060
【Fターム(参考)】
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB10
2H250BA03
2H250BA11
2H250BA21
2H250BA32
4G060AA01
4G060AA02
4G060AA03
4G060AD02
4G060AD23
4G060AD43
4G060AD52
(57)【要約】
【課題】 新たな方法によって光ファイバの被覆層の外径を測定し得る光ファイバの被覆層の外径測定方法等を提供する。
【解決手段】 光ファイバ裸線1Nと、一層以上の樹脂層から成り光ファイバ裸線1Nの外周面を被覆する被覆層20とを有する光ファイバの被覆層の外径測定方法は、期間tにおいて線引きされる光ファイバ裸線1Nの長さをLとし、光ファイバ裸線1Nの外径をR0とし、被覆層20における光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層となる液状樹脂の期間tにおける光ファイバ裸線1Nに塗布される重量をWpnとし、光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層の密度をρとする場合に、光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの被覆層の外径測定方法であって、
前記被覆層は、一層以上の樹脂層から成り光ファイバ裸線の外周面を被覆し、
期間tにおいて線引きされる前記光ファイバ裸線の長さをLとし、前記光ファイバ裸線の外径をR0とし、前記被覆層における前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる液状樹脂の前記期間tにおける前記光ファイバ裸線に塗布される重量をWpnとし、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の密度をρとする場合に、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定する
ことを特徴とする光ファイバの被覆層の外径測定方法。
【請求項2】
前記式(1)によって測定した前記外径Rに所定の係数を乗じて前記外径Rを補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの被覆層の外径測定方法。
【請求項3】
前記期間tにおいて、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂を供給する外部の供給部から当該液状樹脂を前記光ファイバ裸線に塗布する外部の塗布部へ流出する当該液状樹脂の重量を、前記重量Wpnとみなす
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバの被覆層の外径測定方法。
【請求項4】
光ファイバの被覆層の外径測定装置であって、
前記被覆層は、一層以上の樹脂層から成り光ファイバ裸線の外周面を被覆し、
期間tにおいて線引きされる前記光ファイバ裸線の長さをLとし、前記光ファイバ裸線の外径をR0とし、前記被覆層における前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる液状樹脂の前記期間tにおける前記光ファイバ裸線に塗布される重量をWpnとし、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の密度をρとする場合に、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定する測定部を備える
ことを特徴とする光ファイバの被覆層の外径測定装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記式(1)によって測定した前記外径Rに所定の係数を乗じて前記外径Rを補正する
ことを特徴とする請求項4に記載の光ファイバの被覆層の外径測定装置。
【請求項6】
前記測定部は、前記期間tにおいて、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂を供給する外部の供給部から当該液状樹脂を前記光ファイバ裸線に塗布する外部の塗布部へ流出する当該液状樹脂の重量を、前記重量Wpnとみなす
ことを特徴とする請求項4または5に記載の光ファイバの被覆層の外径測定装置。
【請求項7】
光ファイバ裸線と、一層以上の樹脂層から成り前記光ファイバ裸線の外周面を被覆する被覆層とを有する光ファイバの製造方法であって、
光ファイバ用母材から線引きされる前記光ファイバ裸線を冷却部によって冷却する冷却工程と、
前記冷却部によって冷却された前記光ファイバ裸線に、供給部から供給され、加温部によって加温された前記樹脂層となる液状樹脂を塗布し、塗布された前記液状樹脂を硬化させて前記被覆層を形成する被覆層形成工程と、
期間tにおいて線引きされる前記光ファイバ裸線の長さをLとし、前記光ファイバ裸線の外径をR0とし、前記被覆層における前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂の前記期間tにおける前記光ファイバ裸線に塗布される重量をWpnとし、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の密度をρとする場合に、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定する測定工程と、
前記測定工程において測定された前記外径Rに基づいて、前記冷却部の冷却温度、前記供給部の前記液状樹脂の供給、及び前記加温部の加温温度の少なくとも1つを調節する調節工程と、
を備える
ことを特徴とする光ファイバの製造方法。
【請求項8】
前記測定工程において、前記式(1)によって測定した前記外径Rに所定の係数を乗じて前記外径Rを補正する
ことを特徴とする請求項7に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項9】
前記期間tにおいて、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂の前記供給部から当該液状樹脂を前記光ファイバ裸線に塗布する塗布部へ流出する当該液状樹脂の重量を、前記重量Wpnとみなす
ことを特徴とする請求項7または8に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項10】
光ファイバ裸線と、一層以上の樹脂層から成り前記光ファイバ裸線の外周面を被覆する被覆層とを有する光ファイバの製造装置であって、
光ファイバ用母材から線引きされる前記光ファイバ裸線を冷却する冷却部と、
前記冷却部によって冷却された前記光ファイバ裸線に前記樹脂層となる液状樹脂を塗布する塗布部を含み、前記被覆層を形成する被覆層形成部と、
前記被覆層形成部に前記液状樹脂を供給する供給部と、
前記液状樹脂を加温する加温部と、
期間tにおいて線引きされる前記光ファイバ裸線の長さをLとし、前記光ファイバ裸線の外径をR0とし、前記被覆層における前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂の前記期間tにおける前記光ファイバ裸線に塗布される重量をWpnとし、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の密度をρとする場合に、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記外径Rに基づいて、前記冷却部の冷却温度を調節する前記冷却部の制御、前記供給部の前記液状樹脂の供給を調節する前記供給部の制御、及び前記加温部の加温温度を調節する前記加温部の制御の少なくとも1つを行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする光ファイバの製造装置。
【請求項11】
前記測定部は、前記式(1)によって測定した前記外径Rに所定の係数を乗じて前記外径Rを補正する
ことを特徴とする請求項10に記載の光ファイバの製造装置。
【請求項12】
前記測定部は、前記期間tにおいて、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂の前記供給部から前記塗布部へ流出する重量を、前記重量Wpnとみなす
ことを特徴とする請求項10または11に記載の光ファイバの製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ用母材から線引きされる光ファイバ裸線の外周面が樹脂から成る被覆層によって被覆される光ファイバが知られており、下記特許文献1には、このような光ファイバの製造方法が開示されている。
【0003】
下記特許文献1の光ファイバの製造方法では、光ファイバ用母材から線引きされる光ファイバ裸線の外周面に樹脂を塗布し、塗布した樹脂を硬化させて、光ファイバ裸線の外周面を被覆する被覆層を形成している。また、この製造方法では、光ファイバの外径である被覆層の外径を外径測定器によって測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-119901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、光ファイバの被覆層の外径を測定する外径測定器は、光ファイバを挟むように配置される投光部と受光部と有し、受光部に射影される光ファイバの射影像から被覆層の外径を測定する。しかし、従来とは異なる他の方法で被覆層の外径を測定したいとの要望がある。
【0006】
そこで、本発明は、新たな方法によって光ファイバの被覆層の外径を測定し得る光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1は、光ファイバの被覆層の外径測定方法であって、前記被覆層は、一層以上の樹脂層から成り光ファイバ裸線の外周面を被覆し、期間tにおいて線引きされる前記光ファイバ裸線の長さをLとし、前記光ファイバ裸線の外径をR0とし、前記被覆層における前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる液状樹脂の前記期間tにおける前記光ファイバ裸線に塗布される重量をWpnとし、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の密度をρとする場合に、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の態様2は、態様1の光ファイバの被覆層の外径測定方法において、前記式(1)によって測定した前記外径Rに所定の係数を乗じて前記外径Rを補正することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の態様3は、態様1または態様2の光ファイバの被覆層の外径測定方法において、前記期間tにおいて、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂を供給する外部の供給部から当該液状樹脂を前記光ファイバ裸線に塗布する外部の塗布部へ流出する当該液状樹脂の重量を、前記重量Wpnとみなすことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の態様4は、光ファイバの被覆層の外径測定装置であって、前記被覆層は、一層以上の樹脂層から成り光ファイバ裸線の外周面を被覆し、期間tにおいて線引きされる前記光ファイバ裸線の長さをLとし、前記光ファイバ裸線の外径をR0とし、前記被覆層における前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる液状樹脂の前記期間tにおける前記光ファイバ裸線に塗布される重量をWpnとし、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の密度をρとする場合に、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定する測定部を備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の態様5は、態様4の光ファイバの被覆層の外径測定装置において、前記測定部は、前記式(1)によって測定した前記外径Rに所定の係数を乗じて前記外径Rを補正することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の態様6は、態様4または態様5の光ファイバの被覆層の外径測定装置において、前記測定部は、前記期間tにおいて、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂を供給する外部の供給部から当該液状樹脂を前記光ファイバ裸線に塗布する外部の塗布部へ流出する当該液状樹脂の重量を、前記重量Wpnとみなすことを特徴とするものである。
【0013】
上記の態様1及び態様4によれば、射影像を用いることなく、上記の長さL、重量Wpn、及び密度ρによって、被覆層の外径を測定でき、新たな方法によって被覆層の外径を測定し得る。
【0014】
上記の態様2及び態様5によれば、上記の所定の係数を、例えば実験等によって設定することで、測定誤差を小さくし得る。
【0015】
上記の態様3及び態様6によれば、上記の重量Wpnを従来と異なる新たな方法によって測定し得、被覆層の外径の測定を容易にし得る。
【0016】
本発明の態様7は、光ファイバ裸線と、一層以上の樹脂層から成り前記光ファイバ裸線の外周面を被覆する被覆層とを有する光ファイバの製造方法であって、光ファイバ用母材から線引きされる前記光ファイバ裸線を冷却部によって冷却する冷却工程と、前記冷却部によって冷却された前記光ファイバ裸線に、供給部から供給され、加温部によって加温された前記樹脂層となる液状樹脂を塗布し、塗布された前記液状樹脂を硬化させて前記被覆層を形成する被覆層形成工程と、期間tにおいて線引きされる前記光ファイバ裸線の長さをLとし、前記光ファイバ裸線の外径をR0とし、前記被覆層における前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂の前記期間tにおける前記光ファイバ裸線に塗布される重量をWpnとし、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の密度をρとする場合に、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定する測定工程と、前記測定工程において測定された前記外径Rに基づいて、前記冷却部の冷却温度、前記供給部の前記液状樹脂の供給、及び前記加温部の加温温度の少なくとも1つを調節する調節工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の態様8は、態様7の光ファイバの製造方法において、前記測定工程において、前記式(1)によって測定した前記外径Rに所定の係数を乗じて前記外径Rを補正することを特徴とするものである。
【0018】
本発明の態様9は、態様7または態様8の光ファイバの製造方法において、前記期間tにおいて、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂の前記供給部から当該液状樹脂を前記光ファイバ裸線に塗布する塗布部へ流出する当該液状樹脂の重量を、前記重量Wpnとみなすことを特徴とするものである。
【0019】
本発明の態様10は、光ファイバ裸線と、一層以上の樹脂層から成り前記光ファイバ裸線の外周面を被覆する被覆層とを有する光ファイバの製造装置であって、光ファイバ用母材から線引きされる前記光ファイバ裸線を冷却する冷却部と、前記冷却部によって冷却された前記光ファイバ裸線に前記樹脂層となる液状樹脂を塗布する塗布部を含み、前記被覆層を形成する被覆層形成部と、前記被覆層形成部に前記液状樹脂を供給する供給部と、前記液状樹脂を加温する加温部と、期間tにおいて線引きされる前記光ファイバ裸線の長さをLとし、前記光ファイバ裸線の外径をR0とし、前記被覆層における前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂の前記期間tにおける前記光ファイバ裸線に塗布される重量をWpnとし、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の密度をρとする場合に、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定する測定部と、前記測定部によって算出された前記外径Rに基づいて、前記冷却部の冷却温度を調節する前記冷却部の制御、前記供給部の前記液状樹脂の供給を調節する前記供給部の制御、及び前記加温部の加温温度を調節する前記加温部の制御の少なくとも1つを行う制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の態様11は、態様10の光ファイバの製造装置において、前記測定部は、前記式(1)によって測定した前記外径Rに所定の係数を乗じて前記外径Rを補正することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の態様12は、態様10または態様11の光ファイバの製造装置において、前記測定部は、前記期間tにおいて、前記光ファイバ裸線側からn番目の前記樹脂層となる前記液状樹脂の前記供給部から前記塗布部へ流出する重量を、前記重量Wpnとみなすことを特徴とするものである。
【0022】
上記の態様7及び態様10によれば、上記の態様1及び態様4と同様に、射影像を用いることなく、被覆層の外径を測定でき、被覆層が複数の樹脂層から成る場合には、それぞれの樹脂層の外径を測定できる。また、例えば、上記の冷却部の冷却温度が低くなると光ファイバ裸線の温度が低くなり、当該光ファイバ裸線に塗布された液状樹脂の温度を低くし得る。このため、液状樹脂の温度が低くなると液状樹脂の粘度が高くなり、当該液状樹脂から成る樹脂層の厚さが厚くなるため、冷却部の冷却温度の調節によって樹脂層の厚さを調節し得る。また、上記の供給部の液状樹脂の供給の調節としては、例えば、供給圧力の調節が挙げられる。例えば、供給圧力を低くすることで、液状樹脂の塗布圧力を低くし得、当該液状樹脂から成る樹脂層の厚さを薄くし得る。このように、液状樹脂の供給の調節によって樹脂層の厚さを調節し得る。また、例えば、上記の加温部の加温温度が低くなると液状樹脂の温度が低くなり、当該液状樹脂の粘度が高くなる。このため、加温部の加温温度を調節することで樹脂層の厚さを調節し得る。上記の態様7及び態様10では、測定された外径Rに基づいて、冷却部の加温温度、供給部の液状樹脂の供給、及び加温部の加温温度の少なくとも1つが調節される。このため、態様7及び態様10によれば、樹脂層の厚さを所望の厚さにし得る。
【0023】
上記の態様8及び態様11によれば、上記の態様2及び態様5と同様に、上記の所定の係数を、例えば実験等によって設定することで、測定誤差を小さくし得る。
【0024】
上記の態様9及び態様12によれば、上記の態様3及び態様6と同様に、上記の重量Wpnを従来と異なる新たな方法によって測定し得、被覆層の外径の測定を容易にし得る。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、新たな方法によって光ファイバの被覆層の外径を測定し得る光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
図2図1に示す光ファイバを製造するための光ファイバ用母材の長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る光ファイバの製造装置を概略的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、本明細書では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態の光ファイバ1は、光ファイバ裸線1Nと、光ファイバ裸線1Nの外周面を被覆する被覆層20と、を主な構成として備える。本実施形態の光ファイバ裸線1Nは、コア10、及び当該コア10の外周面を囲むクラッド11から成る。当該断面におけるコア10及びクラッド11の外形は円形とされ、コア10はクラッド11の中心に配置されている。光ファイバ裸線1Nの直径は、特に制限されないが、例えば、125μmである。
【0029】
コア10の屈折率はクラッド11の屈折率よりも高くされる。本実施形態では、コア10はゲルマニウム(Ge)等の屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスからなり、クラッド11は何ら添加物の無いシリカガラスからなる。なお、コア10が何ら添加物の無いシリカガラスからなり、クラッド11がフッ素(F)等の屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスからなっていてもよい。また、コア10が屈折率を高くするドーパントが添加されたシリカガラスからなり、クラッド11が屈折率を低くするドーパントが添加されたシリカガラスからなっていてもよい。また、屈折率を高くするドーパント及び屈折率を低くするドーパントは特に制限されるものではない。
【0030】
被覆層20は、一層以上の樹脂層から成り、当該樹脂層を構成する樹脂として、例えば紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。図1に示す例では、被覆層20は、光ファイバ裸線1Nの外周面を被覆する第1樹脂層21と、当該第1樹脂層21の外周面を被覆する第2樹脂層22とから成る二層構造である。本実施形態では、第1樹脂層21及び第2樹脂層22は、互いに異なる紫外線硬化性樹脂から成る。第1樹脂層21の硬度は、第2樹脂層22の硬度より低く、このような第1樹脂層21及び第2樹脂層22から成る被覆層20によって光ファイバ裸線1Nが保護される。なお、被覆層20を構成する樹脂層の数は制限されるものではなく、1つであっても3つ以上であってもよい。また、それぞれの樹脂層の硬度も制限されるものではない。
【0031】
図2は、図1に示す光ファイバ1を製造するための光ファイバ用母材の長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。図2に示すように、光ファイバ用母材1Pは、コア10となるロッド状のコアガラス体10Pと、コアガラス体10Pの外周面を囲みクラッド11となるクラッドガラス体11Pとから構成される。本実施形態では、当該断面におけるコアガラス体10P及びクラッドガラス体11Pの外形は円形であり、コアガラス体10Pはクラッドガラス体11Pの中心に配置されている。
【0032】
図3は、本実施形態に係る光ファイバの製造装置を概略的に示す図である。図3に示すように、光ファイバの製造装置100は、紡糸炉30と、外径測定部35と、冷却部40と、被覆層形成部50と、ターンプーリ60と、引取部61と、巻取部62と、速度計63と、供給部70と、加温部80と、測定部90と、制御部COと、を主な構成として備える。
【0033】
制御部COは、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置から成る。また、制御部COは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。以下に説明するように、光ファイバの製造装置100の幾つかの構成が制御部COによって制御される。
【0034】
紡糸炉30は、ヒータ31によって光ファイバ用母材1Pを下端側から加熱する炉である。紡糸炉30は、制御部COからの制御信号により、ヒータ31の発熱量を調節して紡糸炉30の温度を調節する。
【0035】
ヒータ31によって加熱された光ファイバ用母材1Pの下端部は、溶融状態となり、その結果、当該下端部からガラス線が引き出される。この線引きされたガラス線は、紡糸炉30の下側の開口から出ると、すぐに固化して、コアガラス体10Pがコア10となり、クラッドガラス体11Pがクラッド11となり、コア10とクラッド11とから構成される光ファイバ裸線1Nとなる。
【0036】
外径測定部35は、紡糸炉30の下方に配置されており、紡糸炉30で線引きされた光ファイバ裸線1Nの外径を測定し、当該外径の値を示す信号を測定部90及び制御部COに出力する。外径測定部35として、例えば、レーザ光を出射する投光部と当該投光部から出射するレーザ光を受光する受光部とを有し、投光部と受光部とが光ファイバ裸線1Nを挟むように配置される構成が挙げられる。
【0037】
冷却部40は、外径測定部35の下方に配置され、光ファイバ裸線1Nを冷却する。冷却部40の構成として、例えば、冷却用ガスを用いて光ファイバ裸線1Nを冷却する構成が挙げられ、冷却用ガスとして、例えば、ヘリウムと窒素との混合ガス等が挙げられる。冷却部40は、制御部COからの制御信号により、光ファイバ裸線1Nを冷却する冷却温度を調節する。
【0038】
被覆層形成部50は、冷却部40の下方に配置され、光ファイバ裸線1Nに被覆層20を形成する。本実施形態では、被覆層形成部50は、塗布部51と硬化部55とを含む。塗布部51は、第1樹脂層21となる第1液状樹脂21Lが貯留される第1ポッド51aと、第1ポッド51aの下方に配置され、第2樹脂層22となる第2液状樹脂22Lが貯留される第2ポッド51bとを有する。光ファイバ裸線1Nが第1ポッド51aを通過することで、光ファイバ裸線1Nの外周面に第1液状樹脂21Lが塗布され、第1液状樹脂21Lが塗布された光ファイバ裸線1Nが第2ポッド51bを通過することで、この光ファイバ裸線1Nの外周面に第2液状樹脂22Lが塗布される。このように層状に塗布された第1液状樹脂21L及び第2液状樹脂22Lが硬化部55によって硬化され、被覆層20が形成される。こうして、光ファイバ裸線1Nが光ファイバ1となる。
【0039】
本実施形態では、第1ポッド51aの下部に第2ポッド51bの上部が接続しており、第1ポッド51aにおける光ファイバ裸線1Nの出口が第2ポッド51bにおける光ファイバ裸線1Nの入り口を兼ねる。このため、光ファイバ裸線1Nに塗布された第1液状樹脂21Lは外部に露出されない。なお、第1ポッド51aと第2ポッド51bとは離隔していてもよい。この場合、硬化部55は、第1ポッド51aと第2ポッド51bと間に配置され光ファイバ裸線1Nに塗布された第1液状樹脂21Lを硬化する第1硬化部と、第2ポッド51bの下方に配置され光ファイバ裸線1Nに塗布された第2液状樹脂22Lを硬化する第2硬化部とから構成されもよい。
【0040】
また、本実施形態では、第1液状樹脂21L及び第2液状樹脂22Lは、紫外線硬化性樹脂であり、硬化部55は、塗布された第1液状樹脂21L及び第2液状樹脂22Lに紫外線を照射する構成とされる。なお、被覆層20を構成する樹脂層が熱硬化性樹脂から構成される場合、硬化部55は塗布された樹脂層となる液状樹脂に熱を加える構成とされる。また、光ファイバ1の被覆層20が3つ以上の樹脂層から構成される場合、塗布部51は、それぞれの樹脂層となる液状樹脂が貯留される複数のポッドを備え、光ファイバ裸線1Nは、光ファイバ裸線1N側の樹脂層となる液状樹脂が貯留されるポッドから順に通過される。また、被覆層20が1つの樹脂層から構成される場合、塗布部51は、第1ポッド51aのみから構成される。
【0041】
光ファイバ1は、被覆層形成部50の下方に配置されるターンプーリ60によって方向が変換され、引取部61が回転することによって引き取られる。引取部61は制御部COからの制御信号により、光ファイバ1を引き取る速度を調節する。被覆層20によって光ファイバ裸線1Nを被覆したものが光ファイバ1であるため、この速度は、光ファイバ裸線1Nの線引き速度でもあると理解できる。引取部61を通過した光ファイバ1は、巻取部62に送られ、当該巻取部62によって巻き取られる。
【0042】
速度計63は、引取部61に設けられており、引取部61の単位時間当たりの回転数に基づいて光ファイバ1を引き取る速度を測定し、当該速度の値を示す信号を測定部90及び制御部COに出力する。速度計63として、例えば、磁気センサを用いる構成が挙げられる。
【0043】
供給部70は、被覆層形成部50の塗布部51に樹脂層となる液状樹脂を供給する。本実施形態では、供給部70は、第1供給ユニット70aと第2供給ユニット70bとを有する。第1供給ユニット70aは第1ポッド51aに第1液状樹脂21Lを供給し、第2供給ユニット70bは第2ポッド51bに第2液状樹脂22Lを供給する。本実施形態では、第1供給ユニット70a及び第2ポッド51bは、同様の構成とされる。第1供給ユニット70a及び第2ポッド51bのそれぞれは、ケース71a,71bと、ケース71a,71bに収容され可撓性を有するタンク72a,72bと、ケース71a,71bの内部の圧力を調節する加圧部73a,73bと、バッファ74a,74bと、配管75a,76a,75b,76bと、重量計77a,77bと、を主な構成として備える。
【0044】
本実施形態のタンク72a,72bは樹脂製とされるが、タンク72a,72bを構成する材料は制限されない。タンク72aには、第1液状樹脂21Lが貯留され、タンク72bには、第2液状樹脂22Lが貯留される。配管75a,75bの一端がタンク72a,72aに接続し、他端がバッファ74a,74bに接続する。また、配管76aの一端がバッファ74aに接続し、他端が第1ポッド51aに接続し、配管76bの一端がバッファ74bに接続し、他端が第2ポッド51bに接続する。
【0045】
第1供給ユニット70aの加圧部73aによってケース71aの内部が加圧されることでタンク72aが収縮し、第1液状樹脂21Lがバッファ74aを介して第1ポッド51aに供給される。また、第2供給ユニット70bの加圧部73bによってケース71bの内部が加圧されることでタンク72bが収縮し、第2液状樹脂22Lがバッファ74bを介して第2ポッド51bに供給される。本実施形態では、加圧部73a,73bは、ケース71a,71bの内部の圧力が所定の圧力となるようにする。
【0046】
また、第1供給ユニット70aは、第1ポッド51aへの第1液状樹脂21Lの供給を調節し、第2供給ユニット70bは、第2ポッド51bへの第2液状樹脂22Lの供給を調節する。本実施形態では、第1供給ユニット70aのバッファ74aが、制御部COからの制御信号により、内部の空気圧を調節することで、第1ポッド51aに供給する第1液状樹脂21Lの供給圧力を調節する。また、第2供給ユニット70bのバッファ74bが、制御部COからの制御信号により、内部の空気圧を調節することで、第2ポッド51bに供給する第2液状樹脂22Lの供給圧力を調節する。
【0047】
重量計77a,77bは、ケース71a,71b、タンク72a,72b、及び加圧部73a,73bの合計の重量を測定し、測定した重量の値を示す信号を測定部90に出力する。光ファイバ裸線1Nの線引きが進むにつれて、タンク72aに貯留される第1液状樹脂21Lは第1ポッド51aへ流出し、タンク72bに貯留される第2液状樹脂22Lは第2ポッド51bへ流出し、重量計77a,77bによって測定される重量は減少する。第1液状樹脂21Lは、第1ポッド51a以外に供給されず、第2液状樹脂22Lは、第2ポッド51b以外に供給されない。このため、第1供給ユニット70aの重量計77aで測定される重量が期間tにおいて減少した重量は、当該期間tにおいてタンク72aから第1ポッド51aへ流出する第1液状樹脂21Lの重量であり、当該期間tにおいて供給部70から塗布部51へ流出する第1液状樹脂21Lの重量である。そして、当該重量を、当該期間tにおいて光ファイバ裸線1Nに塗布される第1液状樹脂21Lの重量とみなすことができる。また、第2供給ユニット70bの重量計77bで測定される重量が期間tにおいて減少した重量は、当該期間tにおいてタンク72bから第2ポッド51bへ流出する第2液状樹脂22Lの重量であり、当該期間tにおいて供給部70から塗布部51へ流出する第2液状樹脂22Lの重量である。そして、当該重量を、当該期間tにおいて光ファイバ裸線1Nに塗布される第2液状樹脂22Lの重量とみなすことができる。
【0048】
なお、光ファイバ1の被覆層20が3つ以上の樹脂層から構成される場合、供給部70は、それぞれの樹脂層となる液状樹脂を当該液状樹脂が貯留されるポッドに供給する複数の供給ユニットを備える構成とされる。また、被覆層20が1つの樹脂層から構成される場合、供給部70は、第1供給ユニット70aのみから構成される。
【0049】
加温部80は、樹脂層となる液状樹脂を加温する。本実施形態では、加温部80は、第1加温ユニット80aと第2加温ユニット80bとを有する。第1加温ユニット80aは、第1供給ユニット70aから被覆層形成部50の第1ポッド51aに供給される第1液状樹脂21Lを加温し、第2加温ユニット80bは、第2供給ユニット70bから被覆層形成部50の第2ポッド51bに供給される第2液状樹脂22Lを加温する。本実施形態では、第1加温ユニット80aは、第1供給ユニット70aにおける配管75a,76a及び第1ポッド51aを加温することで第1液状樹脂21Lを加温する。第2加温ユニット80bは、第2供給ユニット70bにおける配管75b,76b及び第2ポッド51bを加温することで第2液状樹脂22Lを加温する。第1加温ユニット80aは、制御部COからの制御信号により、第1液状樹脂21Lを加温する加温温度を調節し、第2加温ユニット80bは、制御部COからの制御信号により、第2液状樹脂22Lを加温する加温温度を調節する。第1加温ユニット80aによって加温されて第1ポッド51aに供給される第1液状樹脂21Lの温度、及び第2加温ユニット80bによって加温されて第2ポッド51bに供給される第2液状樹脂22Lの温度は、例えば、35℃~60である。第1加温ユニット80a及び第2加温ユニット80bとして、例えば、熱源及び熱交換機を備え、熱媒体として温水を用いる構成が挙げられる。なお、光ファイバ1の被覆層20が3つ以上の樹脂層から構成される場合、加温部80は、それぞれの樹脂層となる液状樹脂を加温する複数の加温ユニットを備える構成とされる。
【0050】
測定部90は、入力される情報に基づいて所定の演算を行う。測定部90として、例えば、制御部COと同様の構成が挙げられる。具体的には、測定部90は、期間tにおいて線引きされる光ファイバ裸線1Nの長さをLとし、光ファイバ裸線1Nの外径をR0とし、被覆層20における光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層となる液状樹脂の期間tにおける光ファイバ裸線1Nに塗布される重量をWpnとし、光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層の密度をρとする場合に、光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層の外径Rを下記式(1)によって測定する。
【0051】
本実施形態では、光ファイバ裸線1N側から1番目の樹脂層は第1樹脂層21であり、2番目の樹脂層は第2樹脂層22であり、第1樹脂層21の密度ρ1及び第2樹脂層22の密度ρ2は、実験等によって予め設定されている。また、測定部90は、速度計63から入力される信号に基づいて、期間tにおいて線引きされる光ファイバ裸線1Nの平均線引き速度Vaveを算出し、当該平均線引き速度Vaveに期間tを乗じて、上記の長さLを測定する。また、測定部90は、期間tにおいて光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層となる液状樹脂の供給部70から塗布部51へ流出する重量を上記の重量Wpnとみなす。そして、測定部90は、重量計77aから入力される信号に基づいて、期間tにおいて供給部70から塗布部51へ流出する第1液状樹脂21Lの重量を測定し、測定した重量を第1液状樹脂21Lの期間tにおける光ファイバ裸線1Nに塗布される重量Wp1とする。また、測定部90は、重量計77bから入力される信号に基づいて、期間tにおいて供給部70から塗布部51へ流出する第2液状樹脂22Lの重量を測定し、測定した重量を第2液状樹脂22Lの期間tにおける光ファイバ裸線1Nに塗布される重量Wp2とする。測定部90は、このようにして測定した長さL及び重量Wp1と、予め設定される密度ρ1及び密度ρ2に基づいて、上記式(1)により、第1樹脂層21の外径R1及び第2樹脂層22の外径R2を測定し、外径R1及び外径R2の値を示す信号を制御部COに出力する。なお、期間tは制限されるものではなく、例えば1秒~10秒とされる。
【0052】
このように光ファイバの製造装置100では、測定部90が、外径測定部35、速度計63、及び重量計77a,77bから入力される信号に基づいて、上記の外径Rを上記式(1)によって測定する。このため、光ファイバの製造装置100は、光ファイバの被覆層の外径測定装置を含み、当該外径測定装置は、外径測定部35、速度計63、重量計77a,77b、及び測定部90を含む。また、塗布部51及び供給部70は、外径測定装置の外部の装置である。また、外径測定装置と引取部61とで速度計63を共有し、外径測定装置と供給部70とで重量計77a,77bを共有している。
【0053】
次に、光ファイバの製造装置100を用いて光ファイバ1を製造する方法について説明する。
【0054】
図4は、本実施形態に係る光ファイバ1の製造方法の工程を示すフローチャートである。図4に示すように、この製造方法は、線引工程P1と、冷却工程P2と、被覆層形成工程P3と、測定工程P4と、調節工程P5とを含んでいる。
【0055】
<線引工程P1>
まず、本工程を行う準備段階として、図2に示される光ファイバ用母材1Pを購入等によって準備し、光ファイバの製造装置100の紡糸炉30内に設置する。制御部COは、ヒータ31を制御して当該ヒータ31に光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱させる。光ファイバ用母材1Pの下端部は、溶融状態となり、その結果、当該下端部から光ファイバ裸線1Nが引き出される。本実施形態では、制御部COは、光ファイバ裸線1Nの外径が目標値となるように、外径測定部35で測定される光ファイバ裸線1Nの外径の値に基づいて、ヒータ31及び引取部61を制御し、紡糸炉30の温度及び光ファイバ裸線1Nの線引き速度を調節する。
【0056】
<冷却工程P2>
本工程は、光ファイバ裸線1Nを冷却する工程である。光ファイバ裸線1Nは冷却部40を通過することで冷却される。冷却部40に入る際、光ファイバ裸線1Nの温度は、例えば700℃~900℃程度であるが、冷却部40を出る際には、光ファイバ裸線1Nの温度は、例えば50℃~80℃となる。
【0057】
<被覆層形成工程P3>
本工程は、冷却部40によって冷却された光ファイバ裸線1Nに、供給部70から供給され、加温部80によって加温された樹脂層となる液状樹脂を塗布し、塗布された液状樹脂を硬化させて被覆層20を形成する工程である。本実施形態では、光ファイバ裸線1Nを塗布部51の第1ポッド51aを通過させることで、光ファイバ裸線1Nの外周面に第1液状樹脂21Lを塗布し、第1液状樹脂21Lが塗布された光ファイバ裸線1Nを第2ポッド51bを通過させることで、この光ファイバ裸線1Nの外周面に第2液状樹脂22Lを塗布する。このように層状に塗布された第1液状樹脂21L及び第2液状樹脂22Lを硬化部55によって硬化することで、被覆層20が形成される。
【0058】
<測定工程P4>
本工程は、上記式(1)によって光ファイバの被覆層20を構成する樹脂層の外径Rを測定する工程である。本実施形態では、測定部90が外径Rを測定すると共に、当該測定した外径Rの値を示す信号を制御部COに出力する。つまり、本工程では、このような光ファイバの被覆層の外径測定方法によって、被覆層20を構成する樹脂層の外径Rを測定し、当該外径Rが測定される。
【0059】
<調節工程P5>
本工程は、測定工程P4において測定された外径Rに基づいて、冷却部40の冷却温度、供給部70の液状樹脂の圧力、及び加温部80の加温温度の少なくとも1つを調節する工程である。具体的には、本工程において、制御部COは、測定部90によって測定された外径Rに基づいて、冷却部40の冷却温度を調節する冷却部40の制御、供給部70の液状樹脂の圧力を調節する供給部70の制御、及び加温部80の加温温度を調節する加温部80の制御の少なくとも1つを行う。本実施形態では、供給部70の制御は、第1供給ユニット70aにおけるバッファ74aの空気圧を調節する当該バッファ74aの制御、及び第2供給ユニット70bにおけるバッファ74bの空気圧を調節する当該バッファ74bの制御である。また、加温部80の制御は、第1加温ユニット80aの加温温度を調節する当該第1加温ユニット80aの制御、及び、第2加温ユニット80bの加温温度を調節する当該第2加温ユニット80bの制御である。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバの製造方法では、線引工程P1、冷却工程P2、被覆層形成工程P3、測定工程P4、及び調節工程P5を経て、図1に示す光ファイバ1が製造される。
【0061】
本実施形態の光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置100では、上記式(1)よって被覆層20における光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層の外径Rを上記式(1)によって測定する。このため、本実施形態の光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置100によれば、射影像を用いることなく、上記の長さL、重量Wpn、及び密度ρによって、被覆層20の外径を測定でき、被覆層20が複数の樹脂層から成る場合には、射影像を用いることなくそれぞれの樹脂層の外径を測定できる。
【0062】
本実施形態の光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置100では、期間tにおいて光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層となる液状樹脂の供給部70から塗布部51へ流出する重量を、重量Wpnとみなす。このため、本実施形態の光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置100によれば、重量Wpnを従来と異なる新たな方法によって測定し得、被覆層の外径の測定を容易にし得る。
【0063】
本実施形態の光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置100では、測定された外径Rに基づいて、冷却部40の冷却温度、供給部70の液状樹脂の供給圧力、及び加温部80の加温温度の少なくとも1つを調節する。例えば、冷却部40の冷却温度が低くなると光ファイバ裸線1Nの温度が低くなり、当該光ファイバ裸線1Nに塗布された液状樹脂の温度を低くし得る。このため、液状樹脂の温度が低くなると液状樹脂の粘度が高くなり、当該液状樹脂から成る樹脂層の厚さが厚くなるため、冷却部40の冷却温度の調節によって樹脂層の厚さを調節し得る。また、例えば、供給部70の液状樹脂の供給圧力を低くすることで、液状樹脂の塗布圧力を低くし得、当該液状樹脂から成る樹脂層の厚さを薄くし得る。このため、液状樹脂の供給圧力の調節によって樹脂層の厚さを調節し得る。また、例えば、加温部80の加温温度が低くなると液状樹脂の温度が低くなり、当該液状樹脂の粘度が高くなる。このため、加温部80の加温温度を調節することで樹脂層の厚さを調節し得る。このため、本実施形態の光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置100によれば、樹脂層の厚さを所望の厚さにし得る。なお、冷却部40の冷却温度、供給部70の液状樹脂の供給圧力、及び加温部80の加温温度のうち、冷却部40の冷却温度が最も樹脂層の厚さに影響を与えやすい傾向にある。このため、少なくとも冷却部40の冷却温度を調節することが好ましい。
【0064】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
例えば、上記実施形態では、コア10とクラッド11とを有する光ファイバ裸線1Nを例に説明したが、光ファイバ用母材1Pから線引きされる光ファイバ裸線1Nは制限されるものではない。例えば、コア10の数は複数であってもよく、光ファイバ裸線1Nはマーカーを有していてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、光ファイバ裸線1Nを保護する被覆層20を例に説明したが、光ファイバ用母材1Pの外周面を被覆する被覆層20は制限されるものではない。例えば、被覆層20が複数の樹脂層から成る場合、被覆層20のうち最も光ファイバ裸線1N側に位置する樹脂層は、屈折率がクラッド11の屈折率よりも低い外側クラッドとされてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、外径Rを上記式(1)によって測定する測定部90を例に説明した。しかし、測定部90は、上記式(1)によって測定した外径Rに所定の係数を乗じて外径Rを補正してもよい。所定の係数は、例えば実験等によって設定できる。所定の係数としては、例えば、光ファイバ1と同様の光ファイバを事前に製造し、当該光ファイバにおける外径Rをマイクロメータ等で実測した値の平均値をRnrAVEとし、当該光ファイバにおける外径Rを上記式(1)によって測定した値の平均値をRnAVEとする場合におけるRnrAVE/RnAVEが挙げられる。上記のように所定の係数を用いて外径Rを補正する構成によれば、測定誤差を小さくし得、樹脂層の厚さを所望の厚さにし易くし得る。なお、樹脂層が複数の場合、所定の係数はそれぞれの樹脂層に対して設けられてもよく、同じであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、バッファ74a,74bの空気圧を調節することで液状樹脂の供給圧力を調節する供給部70を例に説明した。しかし、供給部70は、液状樹脂の供給を調節することができればよい。また、例えば、加圧部73a,73bによるケース71a,71bの内部の加圧を調節することで液状樹脂の供給圧力を調節してもよい。また、供給部70の第1及び第2供給ユニット70a,70bは、加圧部73a,73bに替わって、液状樹脂を被覆層形成部50の塗布部51に圧送するポンプ等を備える構成とされもよい。また、第1及び第2供給ユニット70a,70bは、個別に液状樹脂の供給を調節できない構成であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、重量計77a,77bで測定される重量に基づいて、期間tにおいて光ファイバ裸線1N側からn番目の樹脂層となる液状樹脂を貯留するタンクから当該液状樹脂を塗布するポッドへ流出する当該液状樹脂の重量を測定し、測定した重量を上記の重量Wpnとする測定部90を例に説明した。しかし、重量Wpnの算出方法は制限されるものではない。例えば、第1及び第2供給ユニット70a,70bが配管76a,76bを流れる液状樹脂の流量を測定する流量計を備え、実験等によって液状樹脂の密度を予め設定している場合、当該流量計で測定される流量と液状樹脂の密度に基づいて供給部70から塗布部51へ流出する当該液状樹脂の重量を測定し、測定した重量を上記の重量Wpnとしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、光ファイバ裸線1Nの線引き速度に基づいて期間tにおいて線引きされる光ファイバ裸線1Nの平均線引き速度Vaveを測定し、当該平均線引き速度Vaveに期間tを乗じて、期間tにおいて線引きされる光ファイバ裸線1Nの長さLを測定する測定部90を例に説明した。しかし、長さLの測定方法は制限されるものではない。例えば、光ファイバの製造装置が長さLを測定する測定器を備える場合、測定部90当該測定器で測定される長さLを用いてもよい。
【0071】
また、加温部80は、樹脂層となる液状樹脂を加温できればよく、その構成は制限されるものではない。例えば、第1加温ユニット80aは第1ポッド51aを加温しなくてもよく、第2加温ユニット80bは第2ポッド51bを加温しなくてもよい。また、第1加温ユニット80a及び第2加温ユニット80bは、個別に加温温度を調節できない構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、新たな方法によって光ファイバの被覆層の外径を測定し得る光ファイバの被覆層の外径測定方法、光ファイバの被覆層の外径測定装置、光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造装置が提供され、光ファイバに関連する種々の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1・・・光ファイバ
1N・・・光ファイバ裸線
20・・・被覆層
21・・・第1樹脂層
22・・・第2樹脂層
40・・・冷却部
50・・・被覆層形成部
51・・・塗布部
55・・・硬化部
70・・・供給部
80・・・加温部
90・・・測定部
100・・・光ファイバの製造装置
CO・・・制御部
P1・・・線引工程
P2・・・冷却工程
P3・・・被覆層形成工程
P4・・・測定工程
P5・・・調節工程
図1
図2
図3
図4