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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129708
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】多液型硬化性組成物およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20240919BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20240919BHJP
   C09D 183/02 20060101ALI20240919BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240919BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K5/5415
C09D183/02
C09D183/04
C09D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039076
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】横井 宙是
(72)【発明者】
【氏名】浜村 高広
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP101
4J002DE027
4J002EX036
4J002GF00
4J002GH01
4J038DL021
4J038DL031
4J038KA04
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA05
4J038PC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低汚染性及び光沢に優れる硬化物を得るための多液型硬化性組成物、及び該組成物を含む塗料を提供する。
【解決手段】液状組成物(I)と助剤(II)とを含む多液型硬化性組成物であって、液状組成物(I)はポリシロキサン系樹脂Aと水とを含み、助剤(II)はオルガノシリケート及び/又はその変性物Bと、アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒とを含み、ポリシロキサン系樹脂Aは、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ水中でミセルを形成しない単量体、及び(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含み、ポリシロキサン系樹脂Aの全量100重量%に対し、(i)の含有量が3重量%以上であり、かつ(i)と(ii)との合計含有量が13重量%以上である、多液型硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状組成物(I)と助剤(II)とを含む多液型硬化性組成物であって、
前記液状組成物(I)は、ポリシロキサン系樹脂(A)と水とを含み、
前記助剤(II)は、オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)と、アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒とを含み、
前記ポリシロキサン系樹脂(A)は、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含み、
前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、前記(i)の含有量が3重量%以上であり、かつ前記(i)と(ii)との合計含有量が13重量%以上である、多液型硬化性組成物。
【請求項2】
前記オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)の含有量が、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、1~10重量%である、請求項1に記載の多液型硬化性組成物。
【請求項3】
ポリシロキサン系樹脂(A)と、
オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)と、を含む、硬化性樹脂組成物であって、
前記ポリシロキサン系樹脂(A)は、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含み、
前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、前記(i)の含有量が3重量%以上であり、かつ前記(i)および(ii)の合計含有量が13重量%以上である、硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)の含有量が、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、1~10重量%である、請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1もしくは2に記載の多液型硬化性組成物、または請求項3もしくは4に記載の硬化性樹脂組成物を含む、塗料。
【請求項6】
請求項1もしくは2に記載の多液型硬化性組成物、または請求項3もしくは4に記載の硬化性樹脂組成物を塗付および硬化してなる、塗膜。
【請求項7】
下塗り層と、請求項6に記載の塗膜と、がこの順で積層してなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多液型硬化性組成物または硬化性樹脂組成物に関する。本発明はまた、前記多液型硬化性組成物または硬化性樹脂組成物を含む、塗料に関する。さらに、本発明は、前記多液型硬化性組成物または硬化性樹脂組成物硬化してなる、塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
高い耐久性を示す塗膜が得られる塗料として、ポリシロキサンを含む塗料が知られている。例えば、特許文献1には、水媒体中で安定に分散または溶解(水系化)でき、かつ、水系化した際に適度な粘度を有するポリシロキサン系樹脂の提供を目的として、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含む、ポリシロキサン系樹脂、ならびに当該ポリシロキサン系樹脂を含む樹脂組成物および水性塗料等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/202269号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術は優れたものであるが、得られる硬化物の低汚染性および光沢の観点で、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、低汚染性および光沢に優れる硬化物を得るための多液型硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリシロキサン系樹脂と、オルガノシリケートおよび/またはその変性物と、を含む硬化性樹脂組成物において、前記ポリシロキサン系樹脂に用いる親水性モノマーの内、特定の親水性モノマーを特定の量で使用することにより、低汚染性および光沢に優れる硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、液状組成物(I)と助剤(II)とを含む多液型硬化性組成物であって、前記液状組成物(I)は、ポリシロキサン系樹脂(A)と水とを含み、前記助剤(II)は、オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)と、アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒とを含み、前記ポリシロキサン系樹脂(A)は、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含み、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、前記(i)の含有量が3重量%以上であり、かつ前記(i)と(ii)との合計含有量が13重量%以上である、多液型硬化性組成物(以下、「本多液型硬化性組成物」と称する。)である。
【0008】
また、本発明の一態様は、ポリシロキサン系樹脂(A)と、オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)と、を含む、硬化性樹脂組成物であって、前記ポリシロキサン系樹脂(A)は、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含み、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、前記(i)の含有量が3重量%以上であり、かつ前記(i)および(ii)の合計含有量が13重量%以上である、硬化性樹脂組成物(以下、「本硬化性樹脂組成物」と称する。)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低汚染性および光沢に優れる硬化物を得るための多液型硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0011】
〔1.本発明の概要〕
ポリシロキサン系樹脂を含む硬化性樹脂組成物(「ポリシロキサン系樹脂組成物」とも称する。)にシリケートをブレンドすることで、硬化物の接触角を下げ、低汚染性を付与することが知られている。しかし、水を媒体とするポリシロキサン系樹脂組成物にシリケートをブレンドした場合、光沢が極端に低下するという課題があった。
【0012】
そこで、本発明者らは、硬化物の低汚染性および光沢を同時に達成し得る多液型硬化性組成物について鋭意検討を行った結果、以下の知見を得ることに成功した。
・ポリシロキサン系樹脂と、オルガノシリケートおよび/またはその変性物と、を含む硬化性樹脂組成物において、前記ポリシロキサン系樹脂に用いる親水性モノマーの内、特定の親水性モノマーを特定の量で使用することにより、低汚染性および光沢に優れる硬化物が得られる。
・得られた硬化物は、耐水性にも優れる場合が多い。
【0013】
水を媒体とするポリシロキサン系樹脂組成物を用いた硬化物の低汚染性および光沢を同時に達成し得る多液型硬化性組成物は、これまでに存在しなかったものであり、本多液硬化性組成物および本硬化性樹脂組成物は、塗料を含む種々の分野において、極めて有用である。
【0014】
〔2.多液型硬化性組成物〕
本多液型硬化性組成物は、液状組成物(I)と助剤(II)とを含む。
【0015】
〔2.1.液状組成物(I)〕
本多液型硬化性組成物における液状組成物(I)は、ポリシロキサン系樹脂(A)と水とを含む。
【0016】
(ポリシロキサン系樹脂(A))
液状組成物(I)に含まれるポリシロキサン系樹脂(以下、「本ポリシロキサン系樹脂」と称する場合もある。)は、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含む。また、前記単量体は、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、前記(i)の含有量が3重量%以上であり、かつ前記(i)と(ii)との合計含有量が13重量%以上である。
【0017】
本ポリシロキサン系樹脂は、上記のような構成を有することにより、水媒体中で安定に分散または溶解(水系化)でき、かつ、水系化した際に適度な粘度を有するポリシロキサン系樹脂を提供することができると共に、オルガノシリケートおよび/またはその変性物と混合して得られる硬化膜の光沢が極端に低下しなくなる。
【0018】
本明細書において「ポリシロキサン系樹脂」とは、主成分としてポリシロキサン構造を含む樹脂を意味する。ポリシロキサン系樹脂としては、上記定義を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(I)で示される単独の化合物での脱水縮合、または下記一般式(I)で示される複数の化合物の共縮合により得られる、ポリシロキサン構造を主成分とする樹脂等が挙げられる:
-Si-(OR4-a-b・・・(I)
(式中、Rは重合性不飽和基を有する炭素数1~10の置換アルキル基、アルケニル基、または重合性不飽和基を有しかつ任意にそれ以外の置換基を有しても良いアリール基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、aは1~3の整数であり、bは0~2の整数であり、a+bは1~3の整数である。)
また、本発明の一実施形態において、ポリシロキサン系樹脂は、上記一般式(I)で示される単独の化合物、または複数の化合物と、下記一般式(II)で示される単独の化合物、または複数の化合物と、を共縮合して得られる、ポリシロキサン構造を主成分とする樹脂であり得る:
-Si-(OR4-n・・・(II)
(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、Rが複数ある場合は同一または異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)。
【0019】
本明細書において、ポリシロキサン系樹脂の主成分であるポリシロキサン構造、すなわち、加水分解性シリル基を有する単量体を縮合してなる構成単位を、「主鎖」と称する場合があり、前記主鎖にラジカル重合により結合する、ラジカル重合性基を有する単量体からなる構成単位を、「側鎖」と称する場合がある。
【0020】
本ポリシロキサン系樹脂の側鎖は、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体からなる。本ポリシロキサン系樹脂の側鎖を構成する前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体、を含む限り特に限定されない。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記(i)の含有量は、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、3重量%以上であり、4重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。前記(i)の含有量が3重量%以上であると、後述する(ii)の含有量との組み合わせにより、オルガノシリケートおよび/またはその変性物と混合して得られる硬化膜の光沢が極端に低下しなくなるとの効果を奏する。前記(i)の含有量は高いほどよいが、硬化膜の耐水性の観点から、上限は、例えば、15重量%以下である。また、前記(i)と(ii)との合計含有量は、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、13重量%以上であり、14重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましい。前記(i)と(ii)との合計含有量が13重量%以上であると、オルガノシリケートおよび/またはその変性物と混合して得られる硬化膜の光沢が極端に低下しなくなるとの効果を奏する。前記(i)と(ii)との合計含有量の上限は、硬化膜の耐水性を発揮する観点から、20重量%以下であることが好ましい。
【0022】
本ポリシロキサン系樹脂の側鎖は、前記(i)および(ii)の単量体のみから構成されてもよく、それ以外の単量体を含んでいてもよい。本発明の一実施形態の側鎖を構成する単量体において、前記(i)および(ii)以外の単量体としては、加水分解性シリル基を有さない単量体が好ましく、任意に、加水分解性シリル基を有する単量体を含んでもよい。したがって、本ポリシロキサン系樹脂は、好ましい例示として、以下のように表現することもできる:構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体からなる側鎖を有し、前記側鎖の構成単位として、(ポリオキシアルキレン構造を有さず、)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体(i)に由来する構成単位(b)と、(ポリオキシアルキレン構造を有し、)水中でミセルを形成することが可能な単量体(ii)に由来する構成単位(c)と、を含むポリシロキサン系樹脂。なお、本明細書において、「酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体(i)」は、「酸と塩基からなる塩構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体(i)」と換言することもできる。また、本明細書において、「水中でミセルを形成することが可能な単量体(ii)」は、「水中でミセルの形成が可能な構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(ii)」と換言することもできる。
【0023】
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂は、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(iii)に由来する構成単位(a)と、酸と塩基からなる塩構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体(i)に由来する構成単位(b)と、ポリオキシアルキレン構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水中でミセルを形成することが可能な単量体(ii)に由来する構成単位(c)と、を含む。本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂は、構成単位(a)が主鎖を形成し、構成単位(b)および(c)が側鎖を形成していることが好ましい。
【0024】
また、本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂は、前記(iii)、(i)、および(ii)に加えて、主鎖の構成単位として、任意で、下記一般式(II):
-Si-(OR4-n・・・(II)
(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、Rが複数ある場合は同一または異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)
で示されるシラン化合物(iv)に由来する構成単位(d)をさらに含むことがより好ましい。
【0025】
なお、以下において、「ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(iii)に由来する構成単位(a)」を、単に「構成単位(a)」と称し、「酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体(i)に由来する構成単位(b)」または「酸と塩基からなる塩構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体(i)に由来する構成単位(b)」を、単に「構成単位(b)」と称し、「水中でミセルを形成することが可能な単量体(ii)に由来する構成単位(c)」または「ポリオキシアルキレン構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水中でミセルを形成することが可能な単量体(ii)に由来する構成単位(c)」を、単に「構成単位(c)」と称し、「一般式(II)で示されるシラン化合物(iv)に由来する構成単位(d)」を、単に「構成単位(d)」と称し、「前記(iii)、(i)および(ii)以外の、ラジカル重合性基を有する単量体(v)に由来する構成単位(e)」を、単に「構成単位(e)」と称する。また、以下において、「ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(iii)」を、単に「シラン化合物(iii)」と称し、「酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体(i)」または「酸と塩基からなる塩構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体(i)」を、単に「単量体(i)」と称し、「水中でミセルを形成することが可能な単量体(ii)」または「ポリオキシアルキレン構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水中でミセルを形成することが可能な単量体(ii)」を、単に「単量体(ii)」と称し、「一般式(II)で示されるシラン化合物(iv)」を、単に「シラン化合物(iv)」または「単量体(iv)」と称し、「前記(iii)、(i)および(ii)以外の、ラジカル重合性基を有する単量体(v)」を、単に「単量体(v)」と称する。
【0026】
(構成単位(a))
構成単位(a)は、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(iii)に由来する。
【0027】
ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(iii)は、下記一般式(I):
-Si-(OR4-a-b ・・・(I)
(式中、Rは重合性不飽和基を有する炭素数1~10の置換アルキル基、アルケニル基、または重合性不飽和基を有しかつ任意にそれ以外の置換基を有しても良いアリール基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、aは1~3の整数であり、bは0~2の整数であり、a+bは1~3の整数である。)
で表される、加水分解性シリル基を有するシラン化合物である。
【0028】
一般式(I)のRは、ラジカル重合性不飽和基を有する炭素数1~10の置換アルキル基、アルケニル基、ラジカル重合性不飽和基を有する非置換または置換アリール基である。ラジカル重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0029】
がラジカル重合性不飽和基を有するアルキル基であるシラン化合物(iii)としては、例えば、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルジメチルメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルジメチルメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルジメチルエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルジメチルメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルトリエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルジメチルエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルジメチルメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0030】
がアルケニル基であるシラン化合物(iii)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
が重合性不飽和基を有しかつ任意にそれ以外の置換基を有しても良いアリール基であるシラン化合物(iii)としては、例えば、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルメチルジメトキシシラン、p-スチリルジメチルメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルメチルジエトキシシラン、p-スチリルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、熱ラジカル重合反応性の点から、Rとしては、(メタ)アクリロイル基置換アルキル基が好ましい。
【0033】
一般式(I)のRはそれぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基である。
【0034】
一般式(I)のRにおけるアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0035】
一般式(I)のRにおけるアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0036】
一般式(I)のRは、aが1であり、bが1である場合、メチル基であることが好ましい。
【0037】
一般式(I)のRは水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0038】
シラン化合物(iii)と、他のラジカル重合性不飽和基を有さないシラン化合物(シラン化合物(iv))とを縮合させやすいという観点から、一般式(I)におけるRおよびRのアルキル基の炭素数は1~3が好ましく、最も好ましくは1である。
【0039】
本発明の一実施形態において、構成単位(a)の含有量は、例えば、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して、例えば、1重量%以上であり、好ましくは、2重量%以上である。構成単位(a)の含有量が上記範囲内であると、構成単位(b)および/または構成単位(c)と直接もしくは間接的に十分にグラフト重合ができ、その結果、水媒体中で安定に分散または溶解(水系化)できるポリシロキサン樹脂を得ることができる。また、構成単位(a)の含有量の上限は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、10重量%以下であり、好ましくは、8重量%以下であり、より好ましくは、5重量%以下である。
【0040】
(構成単位(b))
構成単位(b)は、酸と塩基からなる塩構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体(i)に由来する。
【0041】
本明細書において、「塩構造」とは、酸と塩基とを中和することにより得られる中性塩の構造を意味する。ここで、中和に供される酸は、強酸であってもよいし、弱酸であってもよい。また、中和に供される塩基は、強塩基であってもよいし、弱塩基であってもよい。
【0042】
本発明の一実施形態において、塩構造は、例えば、強酸と強塩基との中性塩の構造、強酸と弱塩基との中性塩の構造、弱酸と強塩基との中性塩の構造、または弱酸と弱塩基との中性塩の構造であり得る。より具体的な塩構造としては、例えば、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム等(強酸と強塩基との中性塩の構造)、スルホン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等(強酸と弱塩基との中性塩の構造)、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム等(弱酸と強塩基との中性塩の構造)、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等(弱酸と弱塩基との中性塩の構造)等が挙げられる。本発明の一実施形態において、塩構造は、好ましくは、スルホン酸ナトリウムである。
【0043】
本明細書において、「水に可溶な」とは、対象の単量体1gを25℃の水10gに入れた水溶液を十分に攪拌し、25℃の条件下で1週間静置し、目視にて外観を観察した場合に、当該水溶液中に、沈殿物、分散物、層の分離等が見られず、透明であることを意味する。
【0044】
なお、本明細書において、「水媒体中で安定に分散または溶解」とは、以下の方法でポリシロキサン系樹脂を含む溶液を評価したときに、「沈殿物」が生じないものを意味する:実施例に記載の方法で製造したポリシロキサン系樹脂の水溶液を25℃の条件下で1週間静置し、目視にて観察することで、水溶液外観を評価する。
【0045】
換言すれば、「水媒体中で安定に分散または溶解」とは、上記の方法でポリシロキサン系樹脂を含む溶液を評価したときに、ポリシロキサン系樹脂を含む溶液が、均一に「無色透明」、「青白透明」または「白色分散」と評価されるものを意味し、「沈殿物」が見られた場合は「水媒体中で安定に分散または溶解」には該当しない。
【0046】
単量体(i)は、酸と塩基からなる塩構造およびラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体である。単量体(i)中のラジカル重合性基は、単量体(iii)中のラジカル重合性基との間でラジカル重合を行い、ポリシロキサン主鎖に対して前記単量体(i)に由来するグラフト鎖を形成する。単量体(i)が、酸と塩基からなる塩構造を有し、水に可溶であることにより、本ポリシロキサン系樹脂は、水媒体中で安定に分散または溶解することができる。
【0047】
単量体(i)中のラジカル重合性不飽和基は、単量体(iii)とのラジカル重合に寄与し得るものであれば特に限定されない。単量体(i)中のラジカル重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基等が挙げられる。反応性の高さおよび汎用性の観点から、(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリルアミド基が好ましい。
【0048】
単量体(i)としては、酸と塩基からなる塩構造を有し、かつ、ラジカル重合性基を有する単量体であれば特に限定されないが、例えば、スルホエチルメタクリル酸ナトリウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸ナトリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸ナトリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸カリウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸カリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸カルシウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸カルシウム、スルホエチルメタクリル酸アンモニウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸アンモニウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸アンモニウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸アンモニウム等が挙げられる。
【0049】
また、単量体(i)は、市販品として入手することができる。そのような市販品としては、例えば、日本乳化剤(株)製の「アントックスMS-2N-D」、東亞合成(株)製の「ATBS-Na」、浅田化学工業(株)製の「アクリル酸ナトリウム」、「アクリル酸カリウム」等が挙げられる。
【0050】
なお、単量体が「水中でミセルの形成が可能」であるか否かについては、(構成単位(c))の項で記載の方法で測定される。
【0051】
(構成単位(c))
構成単位(c)は、ラジカル重合性基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さず、水中でミセルを形成することが可能な単量体(ii)に由来する。単量体(ii)中のラジカル重合性基は、単量体(iii)中のラジカル重合性基との間で直接もしくは間接的にラジカル重合を行い、ポリシロキサン主鎖に対して前記単量体(ii)に由来するグラフト鎖を形成する。本ポリシロキサン系樹脂は、構成単位(c)を有することにより、水系化した際にポリシロキサン系樹脂がミセルを形成することで適度な粘度を有することができ、水性塗料等に適用可能となる。
【0052】
本明細書において、「ミセル」とは、両親媒性分子が疎水性相互作用により会合して形成される集合体を意味する。ここで、両親媒性分子は、分子内に、疎水性基と、親水性基とを有する分子を意図する。したがって、「水中でミセルの形成が可能な構造」とは、分子内に、疎水性基と、親水性基とを有する構造を意図する。
【0053】
本発明の一実施形態において、単量体(ii)は、加水分解性シリル基を有さない、両親媒性分子であり得る。
【0054】
なお、「水中でミセルの形成が可能」であるか否かについては、以下の方法で判断される:水10g、酢酸ブチル2gを含む2層の液に対し、対象の単量体1gを加え、十分攪拌した後、12時間静置後に、均一な白濁が見られる場合、対象の単量体は水中でミセルの形成が可能と判断する。なお、12時間静置後に水と酢酸ブチルの透明な層が分離して見られる場合、対象の単量体は水中でミセルを形成しない(ミセルの形成が不可能)と判断する。
【0055】
本明細書において、「適度な粘度を有する」とは、ポリシロキサン系樹脂を含む溶液の粘度を測定したときに、当該溶液の粘度が、7000mPa・S以下であることを意図し、6000mPa・S以下であることが好ましく、5000mPa・S以下であることがより好ましく、4000mPa・S以下であることがさらに好ましい。なお、ポリシロキサン系樹脂を含む溶液の粘度は、国際公開第2022/202269号の実施例に記載の方法で測定される。
【0056】
単量体(ii)は、ラジカル重合性基を有し、水中でミセルを形成する構造(すなわち、分子内に、疎水性基と、親水性基とを有する構造)を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体であれば、特に限定されない。
【0057】
単量体(ii)内の疎水性基としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数3以上のアルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0058】
単量体(ii)内の親水性基としては、特に限定されないが、例えば、スルホン酸塩、カルボン酸塩、硫酸エステル塩等のアニオン性の親水性基、アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性の親水性基、ベタイン等の両性の親水性基、ポリオキシアルキレン等の非イオン性の親水性基等が挙げられる。
【0059】
本発明の一実施形態において、単量体(ii)は、汎用性の観点から、ポリオキシアルキレン構造を有することが好ましい。そのような単量体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等が挙げられる。単量体(ii)は、オキシアルキレンの繰り返し単位を1~100個有するポリオキシアルキレン構造を有することが好ましく、2~50個有するポリオキシアルキレン構造を有することがより好ましく、5~20個有するポリオキシアルキレン構造を有することが更に好ましい。
【0060】
単量体(ii)としては、上記定義に含まれるものであれば特に限定されないが、例えば、ADEKA(株)製アデカリアソープSR-05、SR-10、SR-20、SR-1025、SR-2025、SR-3025、SR-10S、NE-10、NE-20、NE-30、NE-40、SE-10、SE-20、ER-10、ER-20、ER-30、ER-40、日本乳化剤(株)製Antox-MS-60、RMA-1120、RMA-564、RMA-568、RMA-506、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RMA-1120、MPG130-MA、MPG-130MA、RMA-150M、RMA-300M、RMA-450M、RA-1020、RA-1820、第一工業製薬(株)製アクアロンKH-05、KH-10、RN-20、RN-30、RN-50、RN-2025、HS-10、HS-20、HS-1025、BC05、BC10、BC0515、BC1025、三洋化成工業(株)製エレミノールJS-2、JS-20、RS-30、花王(株)製ラテムルS-180、S-180A、PD-104、PD-420、PD-430、日本油脂(株)製ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、AE-90、AE-200、AE-350、PP-500、PP-800、PP-1000、AP-400、AP-550、AP-800、700PEP-350B、10PEP-550B、55PET-400、30PET-800、55PET-800、30PPT-800、50PPT-800、70PPT-800、PME-100、PME-200、PME-400、PME-1000、PME-4000、AME-400、50POEP-800B、50AOEP-800B、AEP、AET、APT、PLE、ALE、PSE、ASE、PKE、AKE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP-600、共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、041MA、MTG、ライトアクリレートEC-A、MTG-A、130A、DPM-A、P-200A、NP-4EA、NP-8EA、EHDG-A、新中村化学工業(株)製NK-ESTER M-20G、M-40G、M-90G、M-230G、AMP-10G、AMP-20G、AMP-60G、AM-90G、LAが挙げられる。汎用性やミセルの安定性の観点から、好ましくは、アデカリアソープSR-10である。
【0061】
本発明の一実施形態において、単量体(ii)は、酸と塩基からなる塩構造を有していてもよい。塩構造は、例えば、強酸と強塩基との中性塩の構造、強酸と弱塩基との中性塩の構造、弱酸と強塩基との中性塩の構造、または弱酸と弱塩基との中性塩の構造であり得る。より具体的な塩構造としては、例えば、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム等(強酸と強塩基との中性塩の構造)、スルホン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等(強酸と弱塩基との中性塩の構造)、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム等(弱酸と強塩基との中性塩の構造)、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等(弱酸と弱塩基との中性塩の構造)等が挙げられる。本発明の一実施形態において、塩構造は、好ましくは、スルホン酸ナトリウムまたはスルホン酸アンモニウムである。
【0062】
本発明の一実施形態において、構成単位(c)の含有量は、例えば、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して、例えば、0.5重量%以上であり、好ましくは、1重量%以上であり、より好ましくは、2重量%以上である。構成単位(c)の含有量が上記範囲内であると、ポリシロキサン系樹脂を水媒体で溶液とした際に適度な粘度を有する溶液が得られるとの効果を奏する。また、構成単位(c)の含有量の上限は、例えば、15重量%以下であり、好ましくは、10重量%以下であり、より好ましくは、8重量%以下である。構成単位(c)の含有量が上記範囲内であると、得られる硬化物の耐水性が良好となる。
【0063】
本ポリシロキサン系樹脂において、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対する、単量体(i)の含有量と、単量体(ii)の含有量との比(単量体(i)/単量体(ii))は、1/4~5/1であることが好ましく、1/4~4/1であることがより好ましく、1/3~3/1であることがさらに好ましく、1/2~2/1であることがよりさらに好ましく、1/1.5~1.5/1であることが特に好ましい。単量体(i)の含有量と、単量体(ii)の含有量との比が上記範囲内であれば、水媒体中で安定に分散または溶解でき、かつ、溶液とした際に適度な粘度を有するポリシロキサン系樹脂を提供することができる。
【0064】
(構成単位(d))
構成単位(d)は、下記一般式(II):
-Si-(OR4-n・・・(II)
で示されるシラン化合物(iv)に由来する構成単位である。シラン化合物(iv)は、下記一般式(II):
-Si-(OR4-n・・・(II)
(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、Rが複数ある場合は同一または異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)
で示される加水分解性シリル基を有するシラン化合物である。シラン化合物(iv)は、シラン化合物(iii)および/または(iv)と脱水縮合し、ポリシロキサンを形成する。シラン化合物(iv)は、ラジカル重合性不飽和基を有さず、かつ、加水分解性シリル基を有するシラン化合物であるとも言える。本明細書において、シラン化合物(iv)を、単量体(iv)と称する場合がある。構成単位(d)は、一般式(II)で表される1種のシラン化合物(iv)のみから構成されてもよく、2種以上のシラン化合物(iv)の組み合わせから構成されてもよい。
【0065】
一般式(II)のRにおけるアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0066】
一般式(II)のRにおけるアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0067】
一般式(II)のRは水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0068】
一般式(II)で示される具体的な化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリイソプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリフェニルモノメトキシシラン等が挙げられる。
【0069】
一般式(II)におけるnは0~3の整数であればよいが、特に、nが1であるトリアルコキシシラン化合物であることが好ましい。nが1である場合、架橋性の加水分解性シリル基が3つとなり、網目構造のポリマーを形成することができ、得られるポリシロキサン系樹脂の耐久性や耐候性の向上が期待できる。一般式(II)で示される、nが1である化合物の具体例としては、入手性の観点から、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0070】
シラン化合物(iv)と、シラン化合物(iii)および/または(iv)とを縮合させやすいという観点から、一般式(II)におけるRのアルキル基の炭素数は1~3が好ましく、最も好ましくは1である。
【0071】
本発明の一実施形態において、構成単位(d)の含有量は、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して、例えば、15重量%以上であり、好ましくは、25重量%以上であり、より好ましくは、35重量%以上である。構成単位(d)の含有量が15重量%以上であると、高耐候性、強靭性、低タック性等の効果を奏する。また、構成単位(d)の含有量の上限は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、例えば、80重量%以下である。
【0072】
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂が構成単位(d)を含む場合、構成単位(a)および(d)の合計の含有量は、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して、例えば、10重量%以上であり、好ましくは、20重量%以上であり、より好ましくは、40重量%以上である。構成単位(a)および(d)の合計の含有量が10重量%以上であると、本ポリシロキサン系樹脂は、耐候性、靭性、タック性等に優れるとの効果を奏する。また、構成単位(a)および(d)の合計の含有量の上限は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、例えば、90重量%以下である。
【0073】
(構成単位(e))
構成単位(e)は、上記(iii)、(i)および(ii)以外の、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体(v)に由来する。構成単位(e)が由来する単量体(v)は、単量体(iii)および/または(i)および/または(ii)とラジカル重合により直接、もしくは間接的に結合し、構成単位(a)および/または(b)および/または(c)に結合する。
【0074】
構成単位(e)が由来する単量体(v)としては、上記(iii)、(i)および(ii)以外の、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体であれば特に限定されないが、例えば、以下で示すような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体が挙げられる。
【0075】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル>
本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数1~18個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、水酸基、エポキシ基等の官能基を含まない(メタ)アルキル単量体であり得る。本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また、環状であるシクロアルキル基であってもよい。その具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体>
(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ラジカル重合性単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ラジカル重合性単量体;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の重合性の不飽和結合を2つ以上有する単量体;トリフルオロ(メタ)アクリレート、ペンタフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、β-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のふっ素含有ラジカル重合性単量体;等が挙げられる。
【0077】
本発明の一実施形態において、構成単位(e)の含有量は、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して、例えば、10重量%以上であり、好ましくは、20重量%以上であり、より好ましくは、30重量%以上である。構成単位(e)の含有量が上記範囲内であると、塗膜に弾性を付与する効果を奏する。また、構成単位(e)の含有量の上限は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、90重量%以下であり、好ましくは、80重量%以下であり、より好ましくは、70重量%以下である。
【0078】
また、本ポリシロキサン系樹脂の重量平均分子量は、例えば、1000~1000000であり、好ましくは、3000~500000であり、より好ましくは4000~100000である。また、本ポリシロキサン系樹脂における主鎖の重量平均分子量は100~500000であり、好ましくは、500~100000であり、より好ましくは1000~50000である。本ポリシロキサン系樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であれば、耐候性や耐久性と粘度が両立できる利点を有する。
【0079】
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂中の主鎖であるポリシロキサン構造(構成単位(a)、または構成単位(a)および(d))と、側鎖であるグラフト鎖(構成単位(b)、(c)、(e))との比率は、例えば、20:80~80:20であり、好ましくは、30:70~75:25であり、より好ましくは、35:65~70:30である。上記比率の上限は、貯蔵安定性の観点から、85:15以下であることが好ましい。また、上記比率の下限は、耐水性、耐候性、低タック性等の観点から、30:70以上であることが好ましい。
【0080】
なお、本ポリシロキサン系樹脂に含まれる各構成単位の比率(ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対する重量比(重量%))は、本ポリシロキサン系樹脂に含まれる各単量体の量から、脱水縮合反応等により分離する構造を除いた量に比例する。すなわち、本ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対する各構成単位の量(重量%)は、各構成単位を構成する単量体の配合量からポリシロキサン系樹脂の合成時に減量する重量を考慮した量であるともいえる。
【0081】
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、5000~500000であり、好ましくは、8000~100000であり、より好ましくは10000~80000である。なお、本ポリシロキサン系樹脂の重量平均分子量の測定は、東ソー株式会社製の高速GPC装置HLC-8320GPCを用いて行われる。
【0082】
(水)
本多液型硬化性組成物における液状組成物(I)は、水を含む。よって、液状組成物(I)は、ポリシロキサン系樹脂(A)が水に溶解または分散した、水系の組成物である。
【0083】
水の含有量は、前記ポリシロキサン系樹脂の濃度が30%以上になる量であることが好ましく、40%以上になる量であることがより好ましく、50%以上になる量であることがさらに好ましい。水の含有量が上記の範囲であると、配合時の濃度調整がしやすいという効果を奏する。また、上限については特に限定されないが、貯蔵安定性の観点から、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
【0084】
〔2.2.助剤(II)〕
本多液型硬化性組成物における助剤(II)は、オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)と、アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒とを含む。
【0085】
(オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B))
オルガノシリケートは、加水分解性珪素基を含有する化合物であり、一般式(III)として現される化合物であり、エマルションに添加することにより、得られた塗膜の耐汚染性を大幅に向上させる。すなわち、オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)は、本多液型硬化性組成物において、低汚染性に寄与する。その具体的化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン及びそれらの部分加水分解・縮合物が例示できる。中でもエチルシリケート40、エチルシリケート48が好ましい。上記化合物は1種単独でもよく、2種以上を併用しても良い。また、同一分子中に異なったアルコキシシリル基を含有するオルガノシリケートも使用可能である。例えば、メチルエチルシリケート、メチルプロピルシリケート、メチルブチルシリケート、エチルプロピルシリケート、プロピルブチルシリケートなどである。これらの置換基の比率0~100%の間で任意に変更可能である。また、これらのシリケートの部分加水分解・縮合物も使用可能であると記述したが、縮合度は1~20程度が好ましい。更に好ましい縮合度の範囲は、3~15である。
【0086】
Si-(OR)・・・(III)
(式中、Rは同じかまたは異なり炭素数1~4のアルキル基)
上記オルガノシリケート化合物ではアルコキシシリル基の官能基のアルコキシ部の炭素数は1~4の化合物を例示しているが、炭素数が少なくなるほど反応性が向上することは一般的に知られている。水性塗料へ添加した場合、炭素数が小さいオルガノシリケート、例えば、メチルシリケートを用いた場合、反応性が高く、塗料のゲル化までの時間、すなわち、ポットライフが短くなる。これに対し、炭素数が大きいブチルシリケートを用いた場合、耐汚染性付与率が低下し、ポットライフが長くなる。この耐汚染性とポットライフのバランスを考えると、アルコキシシリル基のアルキル部は炭素数が1と炭素数が2、3又は4が混在している場合、炭素数が2と炭素数が3又は4が混在していることが好ましく、平均として炭素数が1.5~2.8が好ましい。即ち、メチルシリケートとエチルシリケートの等モル混合物もしくは同一分子中にメチル基とエチル基を同数有するシリケートがアルキル部1.5と言える。
【0087】
オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)の含有量は、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して、1~10重量%であることが好ましく、2~8重量%であることがより好ましく、3~6重量%であることがさらに好ましい。1重量%以上であると、耐汚染性能が得られる。また、10重量%以下であると、適度な塗膜光沢が得られる。
【0088】
オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)の分子量は、200~1000であることが好ましい。オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)の分子量が上記範囲内であると、低汚染性を発現しやすいとの効果を奏する。また、本発明の一実施形態において、オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)は、分子量200~1000のエチルポリシリケートを含む。
【0089】
(硬化触媒)
前記助剤(II)に含まれる硬化触媒は、アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒(単に、「硬化触媒」とも称する。)である。助剤に、加水分解性シリル基の加水分解縮合反応を促進させる硬化触媒を含むことにより、本多液型硬化性組成物を塗装した際に、架橋反応が促進される。
【0090】
硬化触媒としては、特に限定されないが、例えば、有機金属化合物、酸性触媒、塩基性触媒等が挙げられる。なかでも、活性の観点から、有機錫化合物、酸性リン酸エステル、および酸性リン酸エステルとアミンとの反応物が好ましい。
【0091】
有機錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ビスイソノニル3-メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ビス2-エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジメチル錫ビス(オクチルチオグルコール酸エステル)塩、オクチル酸錫などが挙げられる。
【0092】
なかでも、水中での安定性の観点からジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ビスイソノニル3-メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ビス2-エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジブチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジオクチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジメチル錫ビス(オクチルチオグルコール酸エステル)塩などのメルカプチド系のものが好ましい。
【0093】
添加方法は、特に限定されないが、予め界面活性のある物質と混合してから添加する方法が、エマルションへの混和性、塗膜の光沢発現の観点で好ましい。
【0094】
酸性リン酸エステル化合物としては、プロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェートなどが挙げられる。これらの酸性リン酸エステル化合物と反応させるアミン化合物としては、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、アンモニアなどが挙げられる。
【0095】
添加方法は、特に限定されないが、自己乳化性あるものはそのままで添加できる。また、アミン化合物で(部分)中和はすることで、乳化性を示すものは、予め水に乳化させてから添加することが好ましい。さらに、アミノ基含有樹脂のエマルションに担持させて添加することもできる。
【0096】
硬化触媒の含有量は、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して、0.01~10重量%であることが好ましく、0.03~8重量%であることがより好ましく、0.05~5重量%であることがさらに好ましい。0.01重量%以上であると、適度な硬化活性が発揮できる。また、10重量%以下であると、塗料の可使時間が確保しやすくなる。
【0097】
(その他の成分)
本硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を奏する範囲で、当該技術分野において通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、粘着性付与剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、エポキシ樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、加水分解安定化剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、低収縮剤、シリコーン界面活性剤、水分等が挙げられる。添加剤としては、1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0098】
<充填材>
本硬化性樹脂組成物は、充填材を含んでもよい。充填材としては、特に限定されないが、例えば、フュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックの如き補強性充填材;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、バライト、無水石膏、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、マイカ、亜鉛華、鉛白、リトポン、硫化亜鉛、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末などの粉末状の充填材;石綿、ガラス繊維およびフィラメントのような繊維状充填材等が挙げられる。また、上記以外に、例えば、酸化チタン、クロム酸鉛、酸化クロム、ウルトラマリン、コバルトブルー、シアニンブルー、シアニングリーン、レーキレッド、キナクリドンレッドなどの着色顔料も用いることができる。
【0099】
本硬化性樹脂組成物における充填剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、1.0~50重量%であり、5.0~40重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
【0100】
<難燃剤>
本硬化性樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェートなどのリン系可塑剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および、熱膨張性黒鉛等が挙げられる。これら難燃剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0101】
前記ポリリン酸アンモニウムとしては、従来公知のものを広く使用することができる。これらの中でも、耐水性の観点から、樹脂により被覆し、マイクロカプセル化されたポリリン酸アンモニウム、または、表面改質されたポリリン酸アンモニウム等の表面処理されたポリリン酸アンモニウムが好ましく、表面をメラミンホルムアルデヒド樹脂で被覆されたものがさらに好ましい。
【0102】
本硬化性樹脂組成物における難燃剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.5~5.0重量%であることが好ましく、1.0~4.0重量%であることがより好ましい。
【0103】
<分散剤>
本硬化性樹脂組成物は、分散剤を含んでもよい。分散剤としては、顔料と、分散剤と、を公知の方法に従って混合分散して得られる顔料分散ペーストを配合し、使用することも可能である。分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。例えば、ANTI-TERRA(登録商標)-U、ANTI-TERRA(登録商標)-U100、ANTI-TERRA(登録商標)-204、ANTI-TERRA(登録商標)-205、DISPERBYK(登録商標)-101、DISPERBYK(登録商標)-102、DISPERBYK(登録商標)-103、DISPERBYK(登録商標)-106、DISPERBYK(登録商標)-108、DISPERBYK(登録商標)-109、DISPERBYK(登録商標)-110、DISPERBYK(登録商標)-111、DISPERBYK(登録商標)-112、DISPERBYK(登録商標)-116、DISPERBYK(登録商標)-130、DISPERBYK(登録商標)-140、DISPERBYK(登録商標)-142、DISPERBYK(登録商標)-145、DISPERBYK(登録商標)-161、DISPERBYK(登録商標)-162、DISPERBYK(登録商標)-163、DISPERBYK(登録商標)-164、DISPERBYK(登録商標)-166、DISPERBYK(登録商標)-167、DISPERBYK(登録商標)-168、DISPERBYK(登録商標)-170、DISPERBYK(登録商標)-171、DISPERBYK(登録商標)-174、DISPERBYK(登録商標)-180、DISPERBYK(登録商標)-182、DISPERBYK(登録商標)-183、DISPERBYK(登録商標)-184、DISPERBYK(登録商標)-185、DISPERBYK(登録商標)-2000、DISPERBYK(登録商標)-2001、DISPERBYK(登録商標)-2008、DISPERBYK(登録商標)-2009、DISPERBYK(登録商標)-2022、DISPERBYK(登録商標)-2025、DISPERBYK(登録商標)-2050、DISPERBYK(登録商標)-2070、DISPERBYK(登録商標)-2096、DISPERBYK(登録商標)-2150、DISPERBYK(登録商標)-2155、DISPERBYK(登録商標)-2163、DISPERBYK(登録商標)-2164、BYK(登録商標)-P104、BYK(登録商標)-P104S、BYK(登録商標)-P105、BYK(登録商標)-9076、BYK(登録商標)-9077、BYK(登録商標)-220S、ANTI-TERRA(登録商標)-250、DISPERBYK(登録商標)-187、DISPERBYK(登録商標)-190、DISPERBYK(登録商標)-191、DISPERBYK(登録商標)-192、DISPERBYK(登録商標)-193、DISPERBYK(登録商標)-194、DISPERBYK(登録商標)-198、DISPERBYK(登録商標)-2010、DISPERBYK(登録商標)-2012、DISPERBYK(登録商標)-2015、DISPERBYK(登録商標)-2090、DISPERBYK(登録商標)-2091、DISPERBYK(登録商標)-2095(いずれもビックケミー社製)、DISPARLON(登録商標)2150、DISPARLON(登録商標)KS-860、DISPARLON(登録商標)KS-873N、DISPARLON(登録商標)7004、DISPARLON(登録商標)1831、DISPARLON(登録商標)1850、DISPARLON(登録商標)1860、DISPARLON(登録商標)DA-1401、DISPARLON(登録商標)PW-36、DISPARLON(登録商標)DA-1200、DISPARLON(登録商標)DA-550、DISPARLON(登録商標)DA-703-50、DISPARLON(登録商標)DA-7301、DISPARLON(登録商標)DN-900、DISPARLON(登録商標)DA-325、DISPARLON(登録商標)DA-375、DISPARLON(登録商標)DA-234(いずれも楠本化成社製)、EFKAPOLYMER4550(EFKA社製)、ソルスパース(登録商標)27000、ソルスパース(登録商標)41000、ソルスパース(登録商標)53095(いずれもアビシア社製)等を挙げることができる。
【0104】
分散剤の数平均分子量は、1000~10万であることが好ましく、2000~5万であることが好ましく、4000~5万であることがさらに好ましい。
。分散剤の数平均分子量が1000以上であれば、十分な分散安定性を得ることができ、10万以下であれば、組成物の粘度が高くなりすぎる虞がなく、取り扱い性に優れる組成物となる。
【0105】
本硬化性樹脂組成物における分散剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.3~5.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0106】
<消泡剤>
本硬化性樹脂組成物は消泡剤を含んでもよい。消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、市販されているものを使用することができる。そのような市販の消泡剤としては、例えば、BYK(登録商標)-051、BYK(登録商標)-052、BYK(登録商標)-053、BYK(登録商標)-054、BYK(登録商標)-055、BYK(登録商標)-057、BYK(登録商標)-1752、BYK(登録商標)-1790、BYK(登録商標)-060N、BYK(登録商標)-063、BYK(登録商標)-065、BYK(登録商標)-066N、BYK(登録商標)-067A、BYK(登録商標)-077、BYK(登録商標)-088、BYK(登録商標)-141、BYK(登録商標)-354、BYK(登録商標)-392、BYK(登録商標)-011、BYK(登録商標)-012、BYK(登録商標)-017、BYK(登録商標)-018、BYK(登録商標)-019、BYK(登録商標)-020、BYK(登録商標)-021、BYK(登録商標)-022、BYK(登録商標)-023、BYK(登録商標)-024、BYK(登録商標)-025、BYK(登録商標)-028、BYK(登録商標)-038、BYK(登録商標)-044、BYK(登録商標)-093、BYK(登録商標)-094、BYK(登録商標)-1610、BYK(登録商標)-1615、BYK(登録商標)-1650、BYK(登録商標)-1730、BYK(登録商標)-1770などの消泡剤(いずれもビックケミー社製)や、DISPARLON(登録商標)OX-880EF、DISPARLON(登録商標)OX-881、DISPARLON(登録商標)OX-883、DISPARLON(登録商標)OX-883HF、DISPARLON(登録商標)OX-70、DISPARLON(登録商標)OX-77EF、DISPARLON(登録商標)OX-60、DISPARLON(登録商標)OX-710、DISPARLON(登録商標)OX-720、DISPARLON(登録商標)OX-720EF、DISPARLON(登録商標)OX-750HF、DISPARLON(登録商標)LAP-10、DISPARLON(登録商標)LAP-20、DISPARLON(登録商標)LAP-30等のアクリル系消泡剤、DISPARLON(登録商標)OX-66、DISPARLON(登録商標)OX-715等のシリコーン系アクリル系複合型消泡剤、DISPARLON(登録商標)1950、DISPARLON(登録商標)1951、DISPARLON(登録商標)1952、DISPARLON(登録商標)P-410EF、DISPARLON(登録商標)P-420、DISPARLON(登録商標)P-450、DISPARLON(登録商標)P-425、DISPARLON(登録商標)PD-7等のビニル系消泡剤、DISPARLON(登録商標)1930N、DISPARLON(登録商標)1934等のシリコーン系消泡剤(いずれも楠本化成社製)等を挙げることができる。
【0107】
本硬化性樹脂組成物における消泡剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.2~4.0重量%であることが好ましく、0.3~3.0重量%であることがより好ましい。
【0108】
<粘着性付与剤>
本硬化性樹脂組成物は、粘着性付与剤を含んでもよい。粘着性付与剤としては、特に限定されず、常温で固体、液体を問わず通常使用されるものを使用することができる。具体的には、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)等のスチレン系ブロック共重合体、および、その水素添加物、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂(例えば、カシューオイル変性フェノール樹脂、トール油変性フェノール樹脂等)、テルペンフェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂等)、水添石油樹脂、テルペン系樹脂、DCPD樹脂石油樹脂等が挙げられる。上記粘着性付与剤は1種類を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0109】
本硬化性樹脂組成物における粘着性付与剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.3~5.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0110】
<レベリング剤>
本硬化性樹脂組成物は、レベリング剤を含んでもよい。レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、市販されているものを使用することができる。そのような市販のレベリング剤としては、例えば、BYKETOL(登録商標)-OK、BYKETOL(登録商標)-SPECIAL、BYKETOL(登録商標)-AQ、BYKETOL(登録商標)-WS(いずれもビックケミー社製)、DISPARLON(登録商標)1970、DISPARLON(登録商標)230、DISPARLON(登録商標)LF-1980、DISPARLON(登録商標)LF-1982、DISPARLON(登録商標)LF-1983、DISPARLON(登録商標)LF-1984、DISPARLON(登録商標)LF-1985(いずれも楠本化成社製)等を挙げることができる。
【0111】
本硬化性樹脂組成物におけるレベリング剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.05~5.0重量%であり、0.1~4.0重量%であることが好ましく、0.2~3.0重量%であることがより好ましい。
【0112】
<チクソ性付与剤>
本硬化性樹脂組成物は、チクソ性付与剤(垂れ防止剤)を含んでもよい。垂れ防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。充填材として示した前記ヒュームドシリカもまた、チクソ性付与剤として使用できる。また、特開平11-349916号公報に記載されているような粒子径10~500μmのゴム粉末や、特開2003-155389号公報に記載されているような有機質繊維を用いると、チクソ性が高く作業性の良好な組成物が得られる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は1種類を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0113】
本硬化性樹脂組成物におけるチクソ性付与剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.2~4.0重量%であることが好ましく、0.3~3.0重量%であることがより好ましい。
【0114】
<エポキシ樹脂>
本硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含んでもよい。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA(又はF)型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、含アミノグリシジルエーテル樹脂やこれらのエポキシ樹脂に、ビスフェノールA(又はF)類、多塩基酸類等を付加反応させて得られるエポキシ化合物等、公知のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0115】
本硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、5.0~50重量%であり、7.0~40重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
【0116】
<酸化防止剤>
本硬化性樹脂組成物は、酸化防止剤(老化防止剤)を含んでもよい。組成物が酸化防止剤を含む場合、得られる硬化物の耐熱性を高めることができる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が挙げられる。中でも、ヒンダードフェノール系が好ましい。本発明の一実施形態において、酸化防止剤として、チヌビン(登録商標)622LD,チヌビン(登録商標)144,CHIMASSORB(登録商標)944LD,CHIMASSORB(登録商標)119FL(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);MARKLA-57,MARKLA-62,MARKLA-67,MARKLA-63,MARKLA-68(以上いずれも旭電化工業株式会社製);サノール(登録商標)LS-770,サノール(登録商標)LS-765,サノール(登録商標)LS-292,サノール(登録商標)LS-2626,サノール(登録商標)LS-1114,サノール(登録商標)LS-744(以上いずれも三共株式会社製)等のヒンダードアミン系光安定化剤を使用することもできる。
【0117】
本硬化性樹脂組成物における酸化防止剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0118】
<光安定化剤>
本硬化性樹脂組成物は、光安定化剤を含んでもよい。組成物が光安定化剤を含む場合、得られる硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定化剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。中でも、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。特に、3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定化剤が、組成物の貯蔵安定性を改良できるため好ましい。3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定化剤としては、より具体的には、チヌビン(登録商標)622LD,チヌビン(登録商標)144,CHIMASSORB(登録商標)119FL(以上いずれもBASF製);MARKLA-57,LA-62,LA-67,LA-63(以上いずれも株式会社アデカ製);サノール(登録商標)LS-765,LS-292,LS-2626,LS-1114,LS-744(以上いずれも三共株式会社製)などの光安定化剤が挙げられる。
【0119】
本硬化性樹脂組成物における光安定化剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0120】
<紫外線吸収剤>
本硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含んでもよい。組成物が紫外線吸収剤を含む場合、得られる硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が挙げられるが、特にベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
【0121】
本発明の一実施形態において、フェノール系、または、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ヒンダードアミン系光安定化剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を混合して使用することが特に好ましい。
【0122】
本硬化性樹脂組成物における紫外線吸収剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0123】
<シランカップリング剤>
本硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。組成物がシランカップリング剤を含む場合、接着性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン、(イソシアネートメチル)トリエトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジエトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-エチルアミノ)-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等のアミノ基含有シラン類;N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等のケチミン型シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-β-(カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等が挙げられる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。
【0124】
本硬化性樹脂組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、前記硬化性樹脂組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0125】
本硬化性樹脂組成物は、上記各成分、およびその他の成分、等に由来する水分を含む場合がある。硬化性樹脂組成物が水分を含む場合、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が損なわれる虞がある。したがって、本硬化性樹脂組成物における水分の含有量は、前記硬化性組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.3重量%以下であり、0.2重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。下限は特に限定されず、0重量%であってもよい。
【0126】
〔3.硬化性樹脂組成物〕
本発明の一実施形態において、ポリシロキサン系樹脂(A)と、オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)と、を含む、硬化性樹脂組成物であって、前記ポリシロキサン系樹脂(A)は、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含み、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、前記(i)の含有量が3重量%以上であり、かつ前記(i)および(ii)の合計含有量が13重量%以上である、硬化性樹脂組成物を提供する。本硬化性樹脂組成物は、本発明の一実施形態における特定のポリシロキサン系樹脂(A)を含むため、低汚染性および光沢に優れる硬化物が得られる。
【0127】
本実施形態において、各構成(すなわち、「ポリシロキサン系樹脂(A)」、「オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)」、「ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体」、「単量体」等)については、〔2.多液型硬化性組成物〕の項の記載が援用される。
【0128】
〔4.塗料、塗膜、積層体〕
本発明の一実施形態において、本多液型硬化性組成物、または本硬化性樹脂組成物を含む、塗料(以下、「本塗料」とも称する。)を提供する。本塗料は、上述した多液型硬化性組成物、または本硬化性樹脂組成物を含むため、低汚染性および光沢に優れる硬化物が得られる。
【0129】
本塗料は、上述した本多液型硬化性組成物、または本硬化性樹脂組成物に加え、当該技術分野(とりわけ、塗料の分野)において通常用いられる添加剤を含んでもよい。
【0130】
本発明の一実施形態において、本多液型硬化性組成物、または本硬化性樹脂組成物を塗付および硬化してなる、塗膜(以下、「本塗膜」とも称する。)を提供する。本塗膜を作製する際の硬化方法は、公知である任意の方法が使用できる。
【0131】
本塗料を塗付する方法としては特に限定されず、例えば、一般的な塗装に用いられる刷毛、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー等を用いて塗布してもよく、リバースコート法、グラビアコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、キスコート法、ワイヤーバーコート法、カーテンコート法等により塗布することもできる。
【0132】
本塗料は、基材上に直接塗布してもよいが、基材との接着性をより向上させる、等の利点があることから、あらかじめ基材上に下塗りを塗布することで下塗層を形成し、当該下塗層上に、本塗料を塗布すること、換言すると、下塗りを介して本塗料を基材上に塗布することが好ましい。
【0133】
本塗料(あるいは、下塗り)を塗布する基材としては、特に限定されず、有機系基材または無機系基材の何れであってもよい。
【0134】
本塗膜は、下塗り層上に、本塗料を塗布してなる硬化膜であることが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態において、下塗り層と、本塗膜と、がこの順で積層してなる積層体(以下、「本積層体」とも称する。)を提供する。本積層体は、基材上に、下塗り層と、本塗膜と、がこの順で積層してなる積層体であるとも言える。
【0135】
下塗り層を形成する下塗りとしては、例えば、プライマー、シーラー、フィラー等が挙げられる。
【0136】
プライマーとしては、特に限定されず、塗料分野において通常用いられる各種のプライマーを使用することができる。例えば、油性、水性、または、防錆の何れのプライマーを使用してもよい。プライマーの具体例としては、エポキシ系のプライマー、ウレタン系のプライマー、シリコン系のプライマー、ジンクリッチ系のプライマー、等が挙げられる。
【0137】
シーラーとしては、特に限定されず、塗料分野において通常用いられる各種のシーラーを使用することができる。例えば、油性、水性、または、防錆の何れのシーラーを使用してもよい。シーラーの具体例としては、エポキシ系のシーラー、ウレタン系のシーラー、シリコン系のシーラー、ジンクリッチ系のシーラー、等が挙げられる。
【0138】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0139】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>液状組成物(I)と助剤(II)とを含む多液型硬化性組成物であって、
前記液状組成物(I)は、ポリシロキサン系樹脂(A)と水とを含み、
前記助剤(II)は、オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)と、アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒とを含み、
前記ポリシロキサン系樹脂(A)は、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含み、
前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、前記(i)の含有量が3重量%以上であり、かつ前記(i)と(ii)との合計含有量が13重量%以上である、多液型硬化性組成物。
<2>前記オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)の含有量が、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、1~10重量%である、<1>に記載の多液型硬化性組成物。
<3>ポリシロキサン系樹脂(A)と、
オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)と、を含む、硬化性樹脂組成物であって、
前記ポリシロキサン系樹脂(A)は、構成単位として、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を有し、前記単量体は、(i)酸と塩基を中和して得られる構造を有し、水に可溶で、かつ、水中でミセルを形成しない単量体、および(ii)水中でミセルを形成することが可能な単量体を含み、
前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、前記(i)の含有量が3重量%以上であり、かつ前記(i)および(ii)の合計含有量が13重量%以上である、硬化性樹脂組成物。
<4>前記オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B)の含有量が、前記ポリシロキサン系樹脂(A)の全量100重量%に対し、1~10重量%である、<3>に記載の硬化性樹脂組成物。
<5><1>もしくは<2>に記載の多液型硬化性組成物、または<3>もしくは<4>に記載の硬化性樹脂組成物を含む、塗料。
<6><1>もしくは<2>に記載の多液型硬化性組成物、または<3>もしくは<4>に記載の硬化性樹脂組成物を塗付および硬化してなる、塗膜。
<7>下塗り層と、<6>に記載の塗膜と、がこの順で積層してなる積層体。
【実施例0140】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0141】
〔材料〕
実施例および比較例において、以下の材料を使用した。
【0142】
(ポリシロキサン系樹脂(A))
γー(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(略称「TSMA」):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「A-174」
アクリルアミド-tブチルスルホン酸ナトリウム(略称「ATBS-Na」):東亞合成(株)社製の「ATBS-Na」
エーテルサルフェート型アンモニウム塩(略称「SR-10」):ADEKA(株)社製の「アデカリアソープSR-10」、市販分類「反応性アニオン乳化剤」、下記式(A)で表される化合物:
【0143】
【化1】
【0144】
メチルトリメトキシシラン(略称「M-TMS」):ダウ・東レ(株)製の「Z-6033」
フェニルトリメトキシシラン(略称「Ph-TMS」):ダウ・東レ(株)製の「Z-6124」
メチルメタクリレート(略称「MMA」):三菱ガス化学株式会社製
ブチルアクリレート(略称「BA」):株式会社日本触媒製
<その他>
純水
ジブチルホスフェート:城北化学工業(株)製の「DBP」
2-プロパノール:ナカライテスク(株)製
ラジカル重合開始剤:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル):東京化成工業(株)製
(凍結防止剤)
プロピレングリコール(試薬)
(湿潤剤)
:BASFジャパン社製の「Dispex Ultra FA 4437」
(分散剤)
:Cray Valley社製の「SMA1440H Solution」
:ビックケミー・ジャパン社製の「Disperbyk-2090」
(顔料)
:石原産業社製の「PFC105」
(防腐剤)
:日本エンバイロケミカルズ社製の「スラウト99N」
(消泡剤)
消泡剤(1):MUNZING CHEMIE社製の「Agitan 295」
消泡剤(2):シリコーン系消泡剤:BYK社製の「BYK-1785」
(製膜助剤)
2,2,4-トリメチル-1.3-ペンタンジオールモノイソブチレート:JNC社製の「CS-12」
(増粘剤)
サンノプコ社製の「SNシックナー612NC」
(防カビ・防藻剤)
日本エンバイロケミカルズ社製の「モニサイドAZ」
(オルガノシリケートおよび/またはその変性物(B))
多摩化学工業社製の「シリケート40」、親水化剤
(硬化触媒)
硬化触媒(1):日東化成社製の「U-220H」
硬化触媒(2):城北化学工業(株)製の「DBP」、ジブチルホスフェート
〔合成例1〕
(共縮合物(主鎖)の作製)
攪拌機、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、TSMA 2.7重量部と、M-TMS 42.2重量部と、Ph-TMS 14.7重量部と、純水 15.4重量部と、DBP 0.017重量部と、を仕込み、反応温度105℃にて3時間撹拌しながら反応させ、共縮合物を得た。
【0145】
(グラフト共縮合物の作製(側鎖の重合))
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応器に、純水 10重量部と、2-プロパノール 15重量部と、を仕込み、窒素ガスを導入しつつ75℃に昇温した後、前記共縮合物と、ATBS-Na 3重量部と、SR-10 10重量部と、MMA 28.5重量部と、BA 28.5重量部と、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 1.2重量部と、純水 10重量部と、2-プロパノール 10重量部と、の混合溶液を、滴下ロートから5時間かけて等速滴下した。次に、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 0.12重量部と、2-プロパノール 5重量部と、の混合溶液を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、75℃で2時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより不揮発成分が90%以上になるまで脱気を行った。続いて、不揮発成分が50%になるよう水で希釈を行った。室温まで冷却し、ポリシロキサン系樹脂を得た。合成に使用した各単量体の使用量を表1に示す。なお、表1において、各成分量の単位は「重量部」である。
【0146】
【表1】
【0147】
〔合成例2~13〕
各単量体の使用量を表1に記載の量に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、ポリシロキサン系樹脂を得た。
【0148】
〔実施例1~8、比較例1~7〕
(水性塗料の作製)
実施例1~8、比較例1~7のポリシロキサン系樹脂を用いて、表2または表3に示す配合処方で各成分を配合し、水性塗料を作製した。
【0149】
〔測定および評価〕
実施例および比較例における測定および評価を、以下の方法で行った。
【0150】
(光沢)
特許第5695950号公報を参照して、光沢値を測定した。簡潔には、ミノルタ(株)製光沢計Multi-Gloss268を用いて、以下で示す方法で作製した試験片(硬化膜)の、入射角60°の光沢値を測定した。光沢値が高いほど外観に優れることを示す。
【0151】
<硬化膜の作製>
作製した水性塗料を塗装膜厚が6ミル(6mil)のアプリケーターを用いてガラスに塗装し、温度23℃、湿度50%にて、1週間養生し、塗膜(硬化膜)を作製した。
【0152】
(低汚染性)
<試験体の調製>
各実施例によって得られる水性塗料を、6ミルのアプリケーターを用いてガラス板に塗布し、23℃、50%RHにて1週間養生を行った。その後、50℃、95%RHにて24時間養生して、試験体(塗膜)を得た。
【0153】
<懸濁液の調製>
Colour Black FW 200(Orion Engineered Carbons社製)25g、純水475g、ガラスビーズ300gの混合液を1000rpmで1時間攪拌した。その後、分散液を、200メッシュ金網でろ過してガラスビーズを取り除くことで、懸濁液を得た。
【0154】
<試験方法>
以下の手順により、試験を行った。
・色差計を用い、調製した試験体の明度L*値(3点の平均値)を測定する。
・調製した懸濁液をエアスプレーで試験体表面に均一に塗布する。
・試験板を60℃乾燥機で1時間乾燥し、その後室温まで放冷する(1時間程度放置)。
・純水の流水下でガーゼ(BEMCOT M-3/旭化成工業社製)を用いて汚れが落ちなくなるまで洗浄し、その後、試験体表面の水分を拭き取り、3℃、50%RHにて1晩保管する。
・色差計を用い、試験板の明度L*値(3点の平均値)を測定する。
・明度差ΔL*(L*-L*)を算出する。
・ΔL*が-20より大きい値を「〇(合格)」、-20以下を「×(不合格)」とする。
【0155】
(耐水性)
各実施例によって得られる水性塗料を、6ミルのアプリケーターを用いてガラス板に塗布し、23℃、50%RHにて1週間養生を行った。次いで、塗布されたガラス板を23℃の水に1週間浸漬させた後、取り出した際の外観を指標として、塗膜の耐水性を評価した。
良:水膨れや溶出の形跡がなく、白化が、取り出し後15分以内に戻る。
可:水膨れや溶出の形跡がなく、白化が、取り出し後30分以内に戻る。
不可:水膨れや溶出の形跡が見られる。
【0156】
結果を表2および3に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
〔結果〕
表2より、実施例1~8の多液型硬化性組成物は、得られた硬化物の低汚染性および光沢に優れることが示された。また、実施例1~6、8の多液型硬化性組成物は、得られた硬化物の耐水性にも優れることが分かった。
【0160】
一方、表3より、比較例1~7の多液型硬化性組成物は、得られた硬化物の低汚染性および光沢の少なくとも一つが悪い結果となることが分かった。
【0161】
以上より、ポリシロキサン系樹脂と、オルガノシリケートおよび/またはその変性物と、を含む多液硬化性組成物において、前記ポリシロキサン系樹脂に用いる親水性モノマーの内、特定の親水性モノマーを特定の量で使用することにより、低汚染性および光沢に優れる硬化物が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本多液型硬化性組成物は、低汚染性および光沢に優れる硬化物を提供できるため、コーティング剤等に好適に利用することができる。