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特開2024-129710金型装置、成形体の製造装置および成形品の製造方法
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  • 特開-金型装置、成形体の製造装置および成形品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129710
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】金型装置、成形体の製造装置および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20240919BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20240919BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C33/02
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039078
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 元教
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AF01
4F202AK04
4F202AR06
4F202CA09
4F202CB01
4F202CD22
4F202CD23
4F202CK12
4F202CK42
4F202CK81
4F202CK83
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN21
4F202CN27
4F202CR07
4F204AA13A
4F204AK04
4F204AR06
4F204FA01
4F204FB01
4F204FF01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
(57)【要約】
【課題】ベースプレート部に対して複数の入子部が装着された金型本体に対して、各入子部を効率的に加熱する。
【解決手段】金型装置(10)において、ベースプレート部(13)は、入子部(12)毎に区切る区画部(14)を有し、区画部(14)は、入子部(12)の非成形面(12b)を壁面として有し、区画部(14)の隔壁(13a)は、入子部(12)の非成形面(12b)側から加熱する加熱部(2)が入子部(12)毎に区画されて収容されるように設計されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形面を構成する複数の入子部と、各入子部を保持する保持部を有するベースプレート部と、を有し、1つのベースプレート部に対して複数の入子部が保持された、プレス成形用の金型本体を備え、
前記ベースプレート部は、入子部毎に区切る区画部を有し、
前記区画部は、前記入子部における成形面と反対側の非成形面を壁面として有し、
前記区画部の隔壁は、入子部の非成形面側から加熱する加熱部が入子部毎に区画されて収容されるように設計されている、金型装置。
【請求項2】
前記入子部の収容空間を構成する前記隔壁の内壁面は、鏡面処理または金メッキ処理が施されている、請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記入子部は、前記非成形面に形成された突起部を備え、
前記突起部の先端は、前記ベースプレート部の前記非成形面側の端部と、略同一面である、請求項1または2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記プレス成形における前記金型本体のプレス方向を第1方向とし、前記第1方向に対して垂直な方向を第2方向としたとき、
前記入子部は、前記第2方向において前記ベースプレート部と接触していない非接触部を有し、
前記非接触部は、前記入子部の加熱時の熱膨張により、前記第2方向において前記ベースプレート部と接触するように構成されている、請求項1または2に記載の金型装置。
【請求項5】
前記入子部の非成形面は、黒色メッキ処理が施されている、請求項1または2に記載の金型装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の金型装置を予熱する予熱装置を備えた、成形品の製造装置であって、
前記予熱装置は、
前記入子部の非成形面側から加熱する複数の加熱部と、
前記複数の加熱部を収容する収容空間が入子部毎に区画して形成された収容部と、を備える、成形品の製造装置。
【請求項7】
前記プレス成形における前記金型本体のプレス方向を第1方向とし、前記第1方向に対して垂直な方向を第2方向としたとき、
前記予熱部は、前記第1方向において、前記入子部に対して前記加熱部を離反または接近可能に移動させる移動機構を備える、請求項6に記載の成形品の製造装置。
【請求項8】
熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を加熱して溶融樹脂組成物とする加熱工程と、
前記溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより、金型装置に備えられた金型本体へ前記溶融樹脂組成物を供給する樹脂供給工程と、
前記金型本体を閉じて、流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする熱プレス工程と、
前記金型本体を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする冷却プレス工程と、
前記金型本体を型開きしてプレス成形品を離型する離型工程と
前記樹脂供給工程の前段階において、前記金型本体を備えた金型装置を予熱する予熱工程と、を含み、
前記金型本体は、成形面を構成する複数の入子部と、各入子部を保持する保持部を有するベースプレート部と、を有し、1つのベースプレート部に対して複数の入子部が保持されており、
前記ベースプレート部は、入子部毎に区切る区画部を有し、
前記区画部は、前記入子部における成形面と反対側の非成形面を壁面として有し、
前記区画部の隔壁は、入子部の非成形面側から加熱する加熱部が入子部毎に区画されて収容されるように設計されており、
前記予熱工程は、前記区画部により区画された入子部に対応して配された加熱部を用いて、入子部毎に加熱する工程を含む、成形品の製造方法。
【請求項9】
前記金型本体のプレス方向を第1方向とし、前記第1方向に対して垂直な方向を第2方向としたとき、
前記入子部は、前記第2方向において前記ベースプレート部と接触していない非接触部を有し、
前記予熱工程は、加熱による前記入子部の熱膨張により、前記第2方向において前記入子部の前記非接触部を前記ベースプレート部に接触させることによって、前記入子部の位置合わせを行う位置合わせ工程を含む、請求項8に記載の成形品の製造方法。
【請求項10】
前記位置合わせ工程では、前記入子部を120℃~160℃に加熱する、請求項9に記載の成形品の製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂がポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、請求項8~10の何れか1項に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型装置、成形体の製造装置および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を加熱して溶融樹脂組成物とし、当該溶融樹脂組成物を金型装置の金型本体間に注入して、金型本体を閉じてプレス成形し、冷却して成形品を得る技術が知られている。ここでいう金型本体とは、プレス成形にて溶融樹脂組成物が注入される一対の金型を意味する。
【0003】
そして、一連のプレス成形工程において、金型装置の金型本体を加熱する技術が知られている。例えば特許文献1には、プラスチック成形品に微細なパターン(構造)を精度よく転写する技術において、当該転写に用いるスタンパを加熱することが開示されている。具体的には、特許文献1の成形装置は、加熱装置、スタンパ、冷却部材、第1の金型、および第2の金型を備えている。前記加熱装置は、光源を用いて赤外線輻射加熱を行う。そして、前記スタンパは、前記光源から照射された赤外線によって輻射加熱される。前記冷却部材は、輻射加熱された前記スタンパと接触して該スタンパを冷却する。前記第1の金型は、前記スタンパ及び/又は前記冷却部材を移動可能に保持し、前記スタンパと前記冷却部材とを接触させたり離したりすることを可能とする構造を有している。また、前記第2の金型は、前記スタンパの賦形面の構造が転写される熱可塑性樹脂を保持する。そして、このような構成において、特許文献1の成形装置は、前記スタンパが、少なくとも、前記冷却部材と離れた状態で輻射加熱される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2013/008410号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、金型装置の金型本体が、入子部としてスタンパを保持する第1の金型と、第2の金型とから構成されている。入子部としてのスタンパは、第1の金型に対して1つ装着される。第1の金型は、1つの入子部を保持するベースプレート部といえる。そして、特許文献1の成形装置は、スタンパの賦形面と反対側の面から加熱する加熱ヒータを収容する空間が確保されており、1つのスタンパ(入子部)のみを効率的に加熱できる構成である。
【0006】
特許文献1の成形装置には、ベースプレート部に対して複数の入子部が装着された金型本体に対して、各入子部を効率的に加熱する点で、改善の余地がある。
【0007】
本発明の一態様は、ベースプレート部に対して複数の入子部が装着された金型本体に対して、各入子部を効率的に加熱できる金型装置、成形体の製造装置および成形品の製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る金型装置は、成形面を構成する複数の入子部と、各入子部を保持する保持部を有するベースプレート部と、を有し、1つのベースプレート部に対して複数の入子部が保持された、プレス成形用の金型本体を備え、前記ベースプレート部は、入子部毎に区切る区画部を有し、前記区画部は、前記入子部における成形面と反対側の非成形面を壁面として有し、前記区画部の隔壁は、入子部の非成形面側から加熱する加熱部が入子部毎に区画されて収容されるように設計されている、ことを特徴としている。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を加熱して溶融樹脂組成物とする加熱工程と、前記溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより、金型装置に備えられた金型本体へ前記溶融樹脂組成物を供給する樹脂供給工程と、前記金型本体を閉じて、流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする熱プレス工程と、前記金型本体を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする冷却プレス工程と、前記金型本体を型開きしてプレス成形品を離型する離型工程と前記樹脂供給工程の前段階において、前記金型本体を備えた金型装置を予熱する予熱工程と、を含み、前記金型本体は、成形面を構成する複数の入子部と、各入子部を保持する保持部を有するベースプレート部と、を有し、1つのベースプレート部に対して複数の入子部が保持されており、前記ベースプレート部は、入子部毎に区切る区画部を有し、前記区画部は、前記入子部における成形面と反対側の非成形面を壁面として有し、前記区画部の隔壁は、入子部の非成形面側から加熱する加熱部が入子部毎に区画されて収容されるように設計されており、前記予熱工程は、前記区画部により区画された入子部に対応して配された加熱部を用いて、入子部毎に加熱する工程を含む、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、ベースプレート部に対して複数の入子部が装着された金型本体に対して、各入子部を効率的に加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る成形品の製造装置の概略構成を示すフロー図である。
図2】金型予熱装置内での本発明の実施形態に係る金型装置および加熱ユニットの概略構成を示す断面斜視図である。
図3図2に示すB部を拡大した拡大断面図である。
図4図2に示す金型装置に備えられた入子部の概略構成を示す斜視図である。
図5図2において、金型装置および加熱ユニットを分けた状態を示す断面斜視図である。
図6】熱プレス成形時における金型本体の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0013】
〔技術思想〕
ベースプレート部に対して複数の入子部が装着された金型本体に対して、1つの加熱ヒータを用いて全ての入子部を加熱する(以下、この加熱を金型の全体加熱と称する場合がある)場合、被加熱物(全ての入子部+ベースプレート部)の熱容量が大きくなる。このため、金型の全体加熱では、金型加熱にかかる時間およびユーティリティ費が増大してしまい、各入子部を効率的に加熱できない。
【0014】
そこで、本発明者らは、ベースプレート部に対して複数の入子部が装着された金型本体に対して、各入子部を効率的に加熱できる成形技術を鋭意検討した結果、金型装置を温度上昇必要な箇所だけ部分加熱可能な構成に設計することによって、被加熱物の熱容量を削減できるという知見を見出した。本実施形態に係る金型装置は、この知見に基づくものであり、金型本体において温度上昇必要な箇所だけ部分加熱可能な構成となっている。それゆえ、本実施形態に係る金型装置によれば、金型加熱にかかる時間およびユーティリティ費を大幅に削減でき、各入子部を効率的に加熱できる。
【0015】
(成形品の製造装置)
図1は、本実施形態に係る成形品の製造装置100の概略構成を示すフロー図である。図1に示すように、製造装置100は、プレス成形品の製造装置であって、溶融樹脂生成装置20と、供給装置30と、熱プレス装置40と、冷却プレス装置50と、離型装置60と、金型予熱装置70と、トリミング装置80と、を備えている。
【0016】
本実施形態に係る金型装置に備えられた金型本体11は、供給装置30と、熱プレス装置40と、冷却プレス装置50と、離型装置60と、金型予熱装置70と、の間を循環する。図1には、製造装置100の各種装置間を循環する金型装置10の金型本体11の状態も示している((I)~(V)の状態)。
【0017】
溶融樹脂生成装置20は、熱可塑性樹脂組成物を加熱して溶融樹脂組成物を生成する。溶融樹脂生成装置20は、熱可塑性樹脂組成物の原料を投入するための原料投入部を備えている。そして、溶融樹脂生成装置20は、当該原料投入部から投入された原料を溶融混練する溶融混練装置を備えている。溶融混練装置としては、特に限定されず、押出機、ニーダー、バンバリミキサー、およびロール等が挙げられる。生産性と利便性優れることから、溶融混練装置としては、押出機が好ましく、2軸押出機がさらに好ましい。
【0018】
また、溶融樹脂生成装置20は、必要に応じて、原料を混合する混合装置を備えていてもよい。混合装置としては、特に限定されず、リボンブレンダー、フラッシュブレンダー、タンブラーミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。
【0019】
供給装置30は、溶融樹脂生成装置20にて生成された溶融樹脂組成物Paを吐出する吐出部を有する。吐出部の構成としては、溶融樹脂組成物Paを吐出可能な構成であれば、特に限定されず、従来公知の構成を採用することができる。プレス成形体の生産性の向上の観点では、吐出部は、溶融樹脂組成物Paを定量的に吐出可能な構成であることが好ましい。このような吐出部の構成としては、例えば、ギアポンプを備えた構成、自動開閉ノズルを備えた構成などが挙げられる。吐出部の具体例は、プランジャー式吐出機、プリプランジャー式吐出機、スクリュー式吐出機である。供給装置30は、吐出部を介して、金型本体11へ流動性の溶融樹脂組成物Paを供給する。
【0020】
金型本体11は、下金型11Aと上金型11Bとからなっている。製造装置100では、供給装置30は、溶融樹脂組成物Paを下金型11Aへ吐出するようになっている。所定量の溶融樹脂組成物Paが供給された下金型11Aは、上金型11Bと仮接合される。仮接合状態とは、下金型11Aと上金型11Bとがガイドピン等により位置が固定されているが、下金型11Aと上金型11Bとの間に10~20mmの隙間がある状態をいう。図1の(II)では、当該仮接合の状態を模式的に示している。そして、下金型11Aおよび上金型11Bは、仮接合した状態で熱プレス装置40へ搬送される。なお、下金型11Aおよび上金型11Bは、成形品の生産スピード等に応じて、仮接合した状態で、熱プレス装置40の前段にて待機され得る。
【0021】
熱プレス装置40において、金型本体11は、溶融樹脂組成物Paが供給された下金型11Aと上金型11Bとが仮接合した状態となっている(図1に示す(II)の状態)。熱プレス装置40は、下金型11Aおよび上金型11B同士をプレスするためのプレス板を有する。このプレス板にはヒータが搭載されていても良い。熱プレス装置40では、プレス板を移動させることによって、下金型11Aと上金型11Bとが完全に接合される。このように、熱プレス装置40にて、金型本体11内の溶融樹脂組成物Paは、上下に熱プレス成形される。溶融樹脂組成物Paの熱プレス成形後、金型本体11は、熱プレス装置40から取り外される。そして、金型本体11は、冷却プレス装置50へ搬送される。冷却プレス装置50では、金型本体11は、下金型11Aと上金型11Bとが完全に接合した状態となっている(図1に示す(III)の状態)。図1の(III)では、当該完全に接合した状態を、仮接合の状態と区別するために模式的に示している。
【0022】
冷却プレス装置50では、金型本体11は、所定温度に冷却されるとともに、プレスが掛けられる。これにより、金型本体11内の溶融樹脂組成物Paは、プレス成形されるとともに冷却され、プレス成形体Pbとなる。その後、金型本体11内のプレス成形体Pbは、離型装置60へ搬送される。
【0023】
離型装置60は、搬送ハンド61を備えている。離型装置60では、まず、金型本体11は、型開きされ、下金型11Aおよびプレス成形体Pbと、上金型11Bとに分離される。金型本体11の型開きにより、プレス成形体Pbは、下金型11A側に保持されることになる。搬送ハンド61は、プレス成形体Pbに吸着し、下金型11Aからプレス成形体Pbを下金型11Aから離型する(図1に示す(VI)の状態)。下金型11Aから離型したプレス成形体Pbは、搬送ハンド61により、トリミング装置80へ搬送される。トリミング装置80にて、プレス成形体Pbは、端材がトリミングされ、プレス成形品となる。
【0024】
また、離型装置60では、プレス成形体Pbが離型した下金型11Aおよび上金型11Bは、金型予熱装置70にて予備加熱され、供給装置30へ搬送される。下金型11Aおよび上金型11Bは、(V)の状態のように別々に分離された状態で予備加熱されてもよいし、互いに接合した状態で予備加熱されてもよい。金型予熱の熱効率の観点では、下金型11Aおよび上金型11Bが接合した状態で予備加熱されることが好ましい。なお、下金型11Aおよび上金型11Bは、成形品の生産スピード等に応じて、供給装置30の前段にて待機され得る。
【0025】
(金型装置10)
金型装置10の金型本体11において、下金型11Aおよび上金型11Bはそれぞれ、入子部と、当該入子部を保持するベースプレート部と、を備えている。下金型11Aおよび上金型11B共に、成形品を成形するための成形面(溶融樹脂組成物が充填される面)は、入子部に形成されている。また、金型本体11は、上述した金型予熱装置にて予熱される。図2は、金型予熱装置内での金型装置10および加熱ユニット1の概略構成を示す断面斜視図である。なお、図面を簡便にする観点から、図2では、上金型11Bを省略している。また、図2に示す金型装置10は、金型予熱装置内にて予熱中の状態を示す。
【0026】
図3は、図2に示すB部を拡大した拡大断面図である。図4は、入子部12の概略構成を示す斜視図である。図5は、図2において、金型装置10および加熱ユニット1を分けた状態を示す断面斜視図である。また、図1等において、プレス成形における金型のプレス方向をX方向とし、当該X方向に対して垂直な方向をY方向とする。X方向は、プレス成形において、一対の金型同士が近接する方向であるといえる。また、下金型11Aにおいて、加熱ユニット1側を「非成形面12b側」とし、その反対側を「成形面12a側」とする。
【0027】
図2図5に示すように、下金型11Aは、複数の入子部12と、ベースプレート部13と、を備えている。入子部12は、成形品を成形するための成形面12aを構成する。ベースプレート部13は、各入子部12を保持する保持部13cを有する。
【0028】
下金型11Aは、1つのベースプレート部13に対して複数の入子部12が保持された構成となっている。ベースプレート部13は、入子部12毎に区切る区画部14を有している。区画部14は、入子部12における成形面12aと反対側の非成形面12bを壁面として有する。すなわち、区画部14には、入子部12それぞれに対して、当該入子部12を保持する保持空間がある。そして、当該保持空間を構成する壁面の1つが非成形面12bである。また、区画部14は、それぞれの入子部12の保持空間を区切る隔壁13aを有する。隔壁13aに区切られた複数の空間それぞれに1つの入子部12が保持される。
【0029】
金型予熱装置では、下金型11Aは、加熱ユニット1により加熱される。加熱ユニット1は、複数の加熱部2と、加熱部2を収容する収容部3と、移動機構5と、を備えている。
【0030】
複数の加熱部2は、入子部12の非成形面12b側から加熱する。加熱部2は、入子部12を加熱できれば、従来公知のヒータを採用することができる。好適には、加熱部2は、IRヒータである。
【0031】
収容部3は、複数の加熱部2を収容する収容空間が入子部12毎に区画して形成されている。収容部3は、加熱部2毎に区切る区画部4を有している。区画部4には、加熱部2それぞれに対して、当該加熱部2を収容する空間がある。区画部4は、それぞれの加熱部2の収容空間を区切る隔壁3aを有する。隔壁3aに区切られた複数の空間それぞれに1つの加熱部2が収容されている。
【0032】
ここで、下金型11Aおよび加熱ユニット1において、1つの入子部12に対して1つの加熱部2が配置されるようになっている。このため、区画部14の隔壁13aは、入子部12の非成形面12b側から加熱する加熱部2が入子部12毎に区画されて収容されるように設計されている。
【0033】
X方向から見て、区画部14の隔壁13aは、区画部4の隔壁3aと重複するように構成されている。このため、下金型11Aが加熱ユニット1に載置されたとき、1つの入子部12および1つの加熱部2は、同一空間内に収容されるようになる。当該空間を構成する壁の一部は、入子部12の非成形面12b、隔壁13a、および隔壁3aである。
【0034】
本実施形態に係る金型装置10によれば、このように区画部14の隔壁13aは、入子部12の非成形面12b側から加熱する加熱部2が入子部12毎に区画されて収容されるように設計されているので、金型本体11において温度上昇必要な箇所(入子部12)だけ部分加熱が可能である。それゆえ、本実施形態に係る金型装置10によれば、金型本体11の加熱にかかる時間およびユーティリティ費を大幅に削減でき、各入子部12を効率的に加熱できる。
【0035】
また、本実施形態に係る成形品の製造装置は、上述の金型装置10を予熱する金型予熱装置を備えた構成である。そして、金型予熱装置の加熱ユニット1は、入子部12の非成形面12b側から加熱する複数の加熱部2と、複数の加熱部2を収容する収容空間が形成された収容部3と、を備えている。これにより、金型本体11の加熱にかかる時間およびユーティリティ費を大幅に削減でき、各入子部12を効率的に加熱できる。
【0036】
また、金型予熱装置の加熱ユニット1において、移動機構5は、X方向において、入子部12に対して加熱部2を離反または接近可能に移動させる機構である。移動機構5により、金型本体を予熱するときに合わせて加熱部2を入子部12に接近させることができ、より効率的に金型本体を部分加熱できる。なお、当該移動機構5は、X方向において加熱部2を移動させることが可能な構成であれば、従来公知の構成を採用することができる。
【0037】
また、入子部12は、非接触部12cを有する。非接触部12cは、入子部12の上縁部からベースプレート部13へ突出するよう設けられた突出部である。X方向から見て、非接触部12cは、入子部12の軸線を対称軸として、点対称に配置されている。金型本体11の非加熱時には、非接触部12cは、Y方向において、ベースプレート部13と接触していない。すなわち、金型本体11の非加熱時において、非接触部12cとベースプレート部13とは、Y方向において離間している。一方、金型本体11の加熱時には、非接触部12cは、入子部12の加熱時の熱膨張により、ベースプレート部13と接触するように構成されている。
【0038】
入子部12は、加熱時の熱膨張により非接触部12cがベースプレート部13と接触したとき、上金型の入子部の軸と一致する位置に配される。それゆえ、金型装置10によれば、金型予熱時に、入子部を熱膨張させることによって、非接触部12cにより、下金型11Aの入子部12と上金型の入子部との軸合わせすることができる。
【0039】
なお、金型本体11の加熱時、入子部12の上縁部において、非接触部12c以外の部分は、ベースプレート部13と接触していない。一方、金型本体11の加熱時および非加熱時の両方において、ベースプレート部13の保持部13cは、入子部12と接触している。それゆえ、金型本体11の加熱時において、入子部12とベースプレート部13との接触部分は、非接触部12cおよび保持部13の箇所である。すなわち、金型本体11の加熱時において、入子部12の上縁部の非接触部12c以外の部分とベースプレート部13とは、Y方向において離間している。そして、入子部12の上端部よりも下側の部分は、保持部13との接触部分を除き、Y方向において離間している。このように入子部12の大部分において、ベースプレート部13との離間部分があることにより、入子部12の周囲の大部分に空気層が形成される。そして、当該空気層が断熱層となることにより、加熱時の入子部12内の熱がベースプレート部13へ伝わりにくくなる。
【0040】
また、入子部12の収容空間を構成する隔壁13aの内壁面は、鏡面処理または金メッキ処理が施されていることが好ましい。これにより、例えば加熱部2がIRヒータである場合、加熱部2から放射される赤外線が隔壁13aの内壁面にて反射し、入子部12へ到達しやすくなる。その結果、入子部12に赤外線が集中し、入子部12の加熱効率が向上する。
【0041】
また、入子部12の非成形面12bは、黒色メッキ処理が施されていることが好ましい。これにより、例えば加熱部2がIRヒータである場合、加熱部2から放射される赤外線が入子部12の非成形面12bに吸収されやすくなる。その結果、入子部12の加熱効率が向上する。
【0042】
また、加熱ユニット1において、加熱部2の収容空間を構成する、隔壁3aおよび底面部の内面は、金メッキ処理が施されていることが好ましい。これにより、例えば加熱部2がIRヒータである場合、隔壁3aおよび底面部の内面にて加熱部2から放射される赤外線が反射し、入子部12へ到達しやすくなる。その結果、入子部12に赤外線が集中し、入子部12の加熱効率が向上する。
【0043】
ここで、入子部12は、非成形面12bに形成された突起部15を備えている。そして、図5に示すように、突起部15の先端15aは、ベースプレート部13の非成形面12b側の端部13bと略同一面である。すなわち、先端15aと端部13bとは、略同一に位置する水平面x1上に位置している。ここでいう「略同一」とは、「同一」に加え、測定限界内で「同一」を含むことを意図する。「略同一」は、X方向において、先端15aの位置が端部13bの位置±0.1mmであることを意味する。
【0044】
突起部15の先端15aがベースプレート部13の端部13bと略同一面であることによって、熱プレス成形時に入子部12が変形するのを防止することができる。以下、図6を参照して、その効果について、詳述する。図6は、熱プレス成形時における金型本体11の概略構成を示す断面図である。
【0045】
図6に示すように、熱プレス時において、下金型11Aの下端部は、プレス板42によって支持されている。上金型11Bは、プレス板41によって支持されている。そして、熱プレス工程では、プレス板41とプレス板42とが互いに近接するように移動することにより、下金型11Aおよび上金型11Bが接合し熱プレスされる。そして、この熱プレスにより、下金型11Aおよび上金型11B内に充填された溶融樹脂組成物Paは、プレス成形される。
【0046】
上金型11Bは、入子部12Bと、入子部12Bを保持するベースプレート部13Bと、を備えている。そして、下金型11Aと同様に、入子部12Bは、非成形面に形成された突起部15Bを備えている。突起部15Bの先端15Baは、ベースプレート部13Bの非成形面側の端部13Baと略同一面である。
【0047】
本実施形態において、金型本体は、入子部とベースプレート部とを備え、非成形面側のベースプレート部の部分に、入子部を収容する空間が設けられた構成となっている。このため、熱プレス時に、入子部に負荷が掛かり、入子部は変形するおそれがある。
【0048】
下金型11Aの構成によれば、入子部12の非成形面12bに突起部15が形成されている。そして、突起部15の先端15aは、ベースプレート部13の非成形面12b側の端部13bと略同一面である。このため、プレス板42がベースプレート部13の端部13bに当接したとき、入子部12の突起部15の先端15aもプレス板42に当接する。このため、プレス板42によるプレスに対し、下金型11Aは、ベースプレート部13の端部13bおよび入子部12の先端15aの両方により支持される。それゆえ、当該支持により、熱プレス工程では、入子部12の変形が防止される。なお、上金型11Bについても、先端15Baおよび端部13Baの作用により、下金型11Aと同様の、入子部12Bの変形防止効果を奏する。
【0049】
なお、金型装置10により成形されるプレス成形体は、上側に底部を有し、下側が開放した有底円筒状の蓋であり、下端部の周囲につばが形成されている。下金型11Aにおいて、入子部12の成形部分は、上記プレス成形体における、底部および当該底部に連結する側壁部の内面に相当する。なお、図示していないが、上金型11Bの成形部分は、プレス成形体の外面に相当する。このように、下金型11Aおよび上金型からなる一対の金型の成形面は、曲面及び/又は凹凸面を含むことが好ましい。
【0050】
(成形品の製造方法)
本実施形態に係る成形品の製造方法は、加熱工程と、樹脂供給工程と、熱プレス工程と、冷却プレス工程と、離型工程と、予熱工程と、を含む。上記加熱工程では、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を加熱して溶融樹脂組成物とする。上記樹脂供給工程では、熱可塑性樹脂を含む溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより、金型装置に備えられた金型本体へ前記溶融樹脂組成物を供給する。上記熱プレス工程では、前記金型本体を閉じて、流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする。上記冷却プレス工程では、前記金型本体を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする。上記離型工程では、前記金型本体を型開きしてプレス成形品を離型する。そして、上記予熱工程では、前記樹脂供給工程の前段階において、前記金型本体を備えた金型装置を予熱する。
【0051】
本実施形態に係る成形品の製造方法において使用される上記金型本体は、成形面を構成する複数の入子部と、各入子部を保持する保持部を有するベースプレート部と、を有し、1つのベースプレート部に対して複数の入子部が保持されている。また、前記ベースプレート部は、入子部毎に区切る区画部を有している。また、前記区画部は、前記入子部における成形面と反対側の非成形面を壁面として有し、前記区画部の隔壁は、入子部の非成形面側から加熱する加熱部が入子部毎に区画されて収容されるように設計されている。そして、本実施形態に係る成形品の製造方法では、前記予熱工程は、前記区画部により区画された入子部に対応して配された加熱部を用いて、入子部毎に加熱する工程を含むことを特徴としている。
【0052】
本実施形態に係る成形品の製造方法によれば、上述した本実施形態に係る金型装置と同様の効果を奏する。
【0053】
本実施形態に係る成形品の製造方法は、上記特徴を有していれば特に限定されないが、例えば、図1に示す製造装置100および図2図6に示す金型装置を用いた方法が挙げられる。以下、一例として、図1に示す製造装置100および図2図6に示す金型装置を用いた成形品の製造方法について、説明する。
【0054】
上記加熱工程では、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を加熱して溶融樹脂組成物とする。上記樹脂組成物の加熱方法は、熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物を形成できる方法であれば、従来公知の方法を採用することができる。好ましくは、上記加熱方法は、樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程を含む。当該溶融混練工程には、例えば図1に示す溶融樹脂生成装置20が使用される。
【0055】
溶融混練工程の態様としては、溶融混練された樹脂組成物を得ることができる限り、特に限定されない。溶融混練工程の具体例としては、例えば以下(a1)および(a2)の方法が挙げられる:
(a1)混合装置などによる混合またはブレンドによって、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を調製する。その後、当該樹脂組成物を溶融混練装置に供給し、溶融混練する方法;
(a2)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給し、溶融混練装置内で樹脂組成物を調製する(完成させる)とともに、当該樹脂組成物を溶融混練する方法。
【0056】
前記(a1)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を混合またはブレンド(ドライブレンド)する順序は特に限定されない。前記(a2)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給する順序は特に限定されない。
【0057】
前記(a1)の方法において、混合装置としては、特に限定されず、リボンブレンダー、フラッシュブレンダー、タンブラーミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。
【0058】
前記(a1)および(a2)の方法において、溶融混練装置としては、特に限定されず、押出機、ニーダー、バンバリミキサー、およびロール等が挙げられる。生産性と利便性優れることから、溶融混練装置としては、押出機が好ましく、2軸押出機がさらに好ましい。
【0059】
溶融混練工程において、樹脂組成物を溶融混練するときの温度は、熱可塑性樹脂の物性(融点、重量平均分子量等)および使用する添加剤の種類等によるため一概には規定できない。樹脂組成物を溶融混練するときの温度に関して、例えば、熱可塑性樹脂がポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂(以下、「P3HA系樹脂」と称する場合がある。)である場合、吐出部から吐出される溶融混練された樹脂組成物の温度(以下、組成物温度と称する場合がある。)を140℃~180℃とすることが好ましく、145℃~170℃とすることがより好ましく、150℃~165℃とすることがさらに好ましい。組成物温度が140℃未満である場合、P3HA系樹脂の未溶融物が発生してしまう場合がある。一方、組成物温度が180℃以上である場合、P3HA系樹脂が熱分解してしまう場合がある。
【0060】
また、上記樹脂供給工程では、上記溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより下金型11Aおよび上金型11Bからなる一対の金型間に供給する。上記樹脂供給工程では、上記溶融樹脂組成物を溶融状態のまま吐出部から一対の金型へ吐出する。
【0061】
上記溶融樹脂組成物の金型間への供給方法は、吐出部から吐出された溶融樹脂組成物を一対の金型間に供給できれば、特に限定されない。一対の金型間に確実に溶融樹脂組成物を供給できる観点から、まず、吐出部から下金型11Aへ溶融樹脂組成物を吐出し、下金型11Aに所定量の溶融樹脂組成物を供給した後、当該下金型11Aに上金型11Bを載置することにより、一対の金型間に溶融樹脂組成物を供給することが好ましい。
【0062】
また、上記樹脂供給工程において、吐出部の構成としては、溶融樹脂組成物を吐出可能な構成であれば、特に限定されず、従来公知の構成を採用することができる。プレス成形体の生産性の向上の観点では、吐出部は、上記で例示したものが挙げられる。
【0063】
また、上記熱プレス成形工程では、前記一対の金型を閉じて流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする。上記樹脂供給工程では、上記溶融樹脂組成物は溶融状態のまま上記一対の金型間に供給されるので、上記熱プレス成形工程にて前記一対の金型を閉じても、上記溶融樹脂組成物は一対の金型内の空間を流動可能である。
【0064】
上記樹脂供給工程にて溶融状態の上記溶融樹脂組成物を一対の金型間に供給した後、上記熱プレス成形工程では、当該一対の金型に対して、熱プレス装置40を用いて熱プレスを行う。特に、熱可塑性樹脂としてP3HA系樹脂を用いる場合、熱プレス工程において、一対の金型の温度は、60℃~180℃であり、120℃~160℃であることが好ましい。当該温度範囲で加熱した一対の金型により熱プレスを行ったとき、溶融樹脂組成物は、粘弾性が低く、エア供給路に浸透しやすくなる特性を有する。このような特性を有する溶融樹脂組成物に対して、本実施形態に係る成形品の製造方法を適用することは、エア供給路の樹脂詰まりを防止する観点で特に有効である。
【0065】
熱プレス装置40による一対の金型のプレス圧力は、特に限定されないが、50KN~300KNであることが好ましく、100KN~200KNであることがより好ましい。上記プレス圧力が上記数値範囲内に設定されていることにより、厚みの均一なプレス成形体が得られやすいという利点がある。
【0066】
また、熱プレス装置40による一対の金型のプレス時間は、特に限定されないが、5秒~60秒であることが好ましく、10秒~30秒であることがより好ましい。上記プレス時間が上記数値範囲内に設定されていることにより、厚みの均一なプレス成形体が得られやすいという利点がある。
【0067】
上記熱プレス工程が完了した後、冷却プレス工程にて、冷却プレス装置50を用いて、前記一対の金型を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする。冷却プレスする際のプレス圧力は、特に限定されないが、10KN~100KNであることが好ましく、30KN~50KNであることがより好ましい。上記プレス圧力が上記数値範囲内に設定されていることにより、厚みの均一なプレス成形体がという利点がある。
【0068】
また、冷却プレスする際のプレス時間は、特に限定されないが、60秒~600秒であることが好ましく、120秒~300秒であることがより好ましい。上記プレス時間が上記数値範囲内に設定されていることにより、P3HA系樹脂の固化が十分に進み、プレス成形体の取り出しが容易になるという利点がある。
【0069】
また、冷却プレス時の金型本体11の冷却温度は、特に限定されないが、10℃~60℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。金型本体11の冷却温度が上記数値範囲内に設定されていることにより、P3HA系樹脂の固化が十分に進み、プレス成形体の取り出しが容易になるという利点がある。
【0070】
冷却プレス工程後、離型工程にて、一対の金型を型開きして、前記一対の金型からプレス成形品を離型することによって、プレス成形品を得ることができる。
【0071】
なお、一対の金型間に供給された溶融樹脂組成物を流動可能とするために、上記予熱工程では、前記樹脂供給工程の前段階において、金型予熱装置70により、前記金型本体を備えた金型装置を予熱する。
【0072】
また、入子部12が、図1等に示す非接触部12cを有している場合、上記予熱工程は、位置合わせ工程を含むことが好ましい。当該位置合わせ工程では、加熱による入子部12の熱膨張により、Y方向において入子部12の非接触部12cをベースプレート部13に接触させることによって、入子部12の位置合わせを行う。当該位置合わせは、具体的には、下金型11Aの入子部12と上金型の入子部との軸合わせである。
【0073】
上記位置合わせ工程では、入子部12を、好ましくは120℃~160℃、より好ましくは140℃~150℃に加熱する。入子部12の加熱温度を上記数値範囲内とすることにより、入子部を熱膨張させることができるとともに、上記溶融樹脂組成物の組成物温度を維持できる。
【0074】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態に係る成形品の製造方法において使用される樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。当該熱可塑性樹脂は、特に限定されない。好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル、ブタジエン、ポリスチレン、アクリル系ポリマー等の汎用樹脂のほか、例えば、P3HA系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂が挙げられる。本製造方法において、熱可塑性樹脂は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0075】
特に、本実施形態に係る成形品の製造方法において使用される熱可塑性樹脂は、P3HA系樹脂であることが好ましい。本明細書において、「P3HA系樹脂」とは、一般式:〔-CHR-CH-CO-O-〕で示される3-ヒドロキシアルカン酸繰り返し単位(式中、Rは、C2n+1で表されるアルキル基で、nは、1以上15以下の整数である。)を繰り返し単位として含む、ポリヒドロキシアルカノエートである。
【0076】
より具体的には、P3HA系樹脂としては、3-ヒドロキシブチレート(3HB)単位を含むのが好ましい。3HB単位を含むP3HA系樹脂としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)等が挙げられる。P3HA系樹脂としては、1種のみ含んでいても良く、2種以上含んでも良い。
【0077】
P3HA系樹脂としては、微生物により産生されるP3HA系樹脂(微生物産生P3HA系樹脂)が好ましい。微生物産生P3HA系樹脂は、通常、D体(R体)のポリヒドロキシアルカノエートモノマー単位のみから構成される。微生物産生P3HA系樹脂の中でも、工業的生産が容易である点から、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB3HV3HH、P3HB4HBが好ましく、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBがより好ましい。
【0078】
P3HA系樹脂は、例えば、国際公開第2010/013483号公報に記載された方法によっても製造され得る。P3HA系樹脂の市販品としては、例えば、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマー PHBH(登録商標)」等が挙げられる。
【0079】
また、前記P3HA系樹脂は、3HB単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を少なくとも1種含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂における3-ヒドロキシブチレート単位が、全繰り返し単位(100モル%)中、65.0~99.0モル%であり、好ましくは68.0~98.5モル%であり、より好ましくは70.0~98.5モル%であり、さらに好ましくは、70.0~98.0モル%であるのが好ましい。
【0080】
3HB繰り返し単位の組成比が90.0モル%以上であることにより、P3HA系樹脂の剛性がより向上し、また、結晶化速度が速くなり、バリが低減される、生産性向上する傾向がある。一方、3HB繰り返し単位の組成比が99.0モル%以下であることにより、融点が熱分解温度を下回るため、安定かつ連続生産が可能となる。なお、P3HA系樹脂のモノマー組成比は、ガスクロマトグラフィー等によって測定することができる(例えば、国際公開第2014/020838号参照)。
【0081】
P3HA系樹脂の分子量は、目的とする用途で実質的に十分な物性を示すものであればよく、特に限定されない。P3HA系樹脂の重量平均分子量の範囲は、10万~100万が好ましく、より好ましくは15万~70万、さらに好ましくは20万~50万、特に好ましくは25万~45万である。重量平均分子量が10万以上であると、適度な機械的強度が得られる。また、分子量が100万以下であると溶融粘度の上昇を抑制することができ、成形性に優れる。
【0082】
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31,400、197,000、668,000、1,920,000のポリスチレンを使用して作成する。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0083】
また、前記樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、熱可塑性樹脂と共に使用可能な添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカなどの無機充填剤、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては1種のみが含まれていてもよいし。2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0084】
本実施形態によれば、プレス成形の原料としてP3HA系樹脂を用いた場合、廃棄による海洋汚染を抑制することができ、これにより、例えば、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」や目標14「持続可能な開発のために、海・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0086】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>成形面を構成する複数の入子部と、各入子部を保持する保持部を有するベースプレート部と、を有し、1つのベースプレート部に対して複数の入子部が保持された、プレス成形用の金型本体を備え、
前記ベースプレート部は、入子部毎に区切る区画部を有し、
前記区画部は、前記入子部における成形面と反対側の非成形面を壁面として有し、
前記区画部の隔壁は、入子部の非成形面側から加熱する加熱部が入子部毎に区画されて収容されるように設計されている、金型装置。
<2>前記入子部の収容空間を構成する前記隔壁の内壁面は、鏡面処理または金メッキ処理が施されている、<1>の金型装置。
<3>前記入子部は、前記非成形面に形成された突起部を備え、
前記突起部の先端は、前記ベースプレート部の前記非成形面側の端部と、略同一面である、<1>または<2>の金型装置。
<4>前記プレス成形における前記金型本体のプレス方向を第1方向とし、前記第1方向に対して垂直な方向を第2方向としたとき、
前記入子部は、前記第2方向において前記ベースプレート部と接触していない非接触部を有し、
前記非接触部は、前記入子部の加熱時の熱膨張により、前記第2方向において前記ベースプレート部と接触するように構成されている、<1>~<3>の何れかの金型装置。
<5>前記入子部の非成形面は、黒色メッキ処理が施されている、<1>~<4>の何れかの金型装置。
<6><1>~<5>の何れかの金型装置を予熱する予熱装置を備えた、成形品の製造装置であって、
前記予熱装置は、
前記入子部の非成形面側から加熱する複数の加熱部と、
前記複数の加熱部を収容する収容空間が入子部毎に区画して形成された収容部と、を備える、成形品の製造装置。
<7>前記プレス成形における前記金型本体のプレス方向を第1方向とし、前記第1方向に対して垂直な方向を第2方向としたとき、
前記予熱部は、前記第1方向において、前記入子部に対して前記加熱部を離反または接近可能に移動させる移動機構を備える、<6>の成形品の製造装置。
<8>熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を加熱して溶融樹脂組成物とする加熱工程と、
前記溶融樹脂組成物を吐出部から吐出することにより、金型装置に備えられた金型本体へ前記溶融樹脂組成物を供給する樹脂供給工程と、
前記金型本体を閉じて、流動可能な前記溶融樹脂組成物を熱プレスする熱プレス工程と、
前記金型本体を閉じたまま、流動可能な前記溶融樹脂組成物を冷却プレスする冷却プレス工程と、
前記金型本体を型開きしてプレス成形品を離型する離型工程と
前記樹脂供給工程の前段階において、前記金型本体を備えた金型装置を予熱する予熱工程と、を含み、
前記金型本体は、成形面を構成する複数の入子部と、各入子部を保持する保持部を有するベースプレート部と、を有し、1つのベースプレート部に対して複数の入子部が保持されており、
前記ベースプレート部は、入子部毎に区切る区画部を有し、
前記区画部は、前記入子部における成形面と反対側の非成形面を壁面として有し、
前記区画部の隔壁は、入子部の非成形面側から加熱する加熱部が入子部毎に区画されて収容されるように設計されており、
前記予熱工程は、前記区画部により区画された入子部に対応して配された加熱部を用いて、入子部毎に加熱する工程を含む、成形品の製造方法。
<9>前記金型本体のプレス方向を第1方向とし、前記第1方向に対して垂直な方向を第2方向としたとき、
前記入子部は、前記第2方向において前記ベースプレート部と接触していない非接触部を有し、
前記予熱工程は、加熱による前記入子部の熱膨張により、前記第2方向において前記入子部の前記非接触部を前記ベースプレート部に接触させることによって、前記入子部の位置合わせを行う位置合わせ工程を含む、<8>の成形品の製造方法。
<10>前記位置合わせ工程では、前記入子部を120℃~160℃に加熱する、<9>の成形品の製造方法。
<11>前記熱可塑性樹脂がポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、<8>~<10>の何れかの成形品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、P3HA系樹脂を用いたプレス成形体の製造の分野、その他の分野に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 加熱ユニット
2 加熱部
3 収容部
13a 隔壁
14 区画部
5 移動機構
10 金型装置
11 金型本体
11A 下金型
11B 上金型
12、12B 入子部
12a 成形面
12b 非成形面
12c 非接触部
13、13B ベースプレート部
13b、13Ba 端部
13c 保持部
15、15B 突起部
15a、15Ba 先端
100 製造装置
Pa 溶融樹脂組成物
Pb プレス成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6