(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129720
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】フロントフォーク
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20240919BHJP
F16F 9/19 20060101ALI20240919BHJP
B62K 25/08 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F16F9/32 B
F16F9/19
F16F9/32 C
B62K25/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039091
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】秋本 政信
【テーマコード(参考)】
3D014
3J069
【Fターム(参考)】
3D014DD08
3D014DE02
3J069AA51
3J069CC02
3J069CC03
3J069EE08
3J069EE49
(57)【要約】
【課題】本発明は、操作部の周囲に必要なスペースを最小限にできるとともに、操作部を視認できない状態であっても、懸架ばねのイニシャル荷重を所望の大きさに容易に調整可能なフロントフォークの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、車体側チューブ1と車体側チューブ1に対して軸方向へ移動可能な車軸側チューブ2とを有するチューブ部材Tと、チューブ部材T内に収容されてチューブ部材Tを伸長方向へ付勢する懸架ばねSと、車体側チューブ1内に収容されて懸架ばねSの一端を支持するとともに周方向の回転によって段階的に軸方向に移動する環状のカム部材31を有するカム装置3と、車体側チューブ1内に周方向へ回転可能に挿入されて下端がカム部材31に連結されるとともに上端が車体側チューブ1外に突出するシャフト4と、シャフト4の下端側に設けられて車体側チューブ1外に配置される手動操作可能なダイヤル5とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと、前記車体側チューブに対して軸方向へ移動可能な車軸側チューブとを有する伸縮部材と、
前記伸縮部材内に収容されるとともに前記車体側チューブと前記車軸側チューブとを離間させる方向へ付勢する懸架ばねと、
前記車体側チューブ内に収容されて前記懸架ばねの一端を支持するとともに周方向の回転によって段階的に軸方向に移動する環状のカム部材を有するカム装置と、
前記車体側チューブ内に周方向へ回転可能に挿入されて一端側が前記カム部材に連結されるシャフトと、
前記シャフトの他端側に設けられて前記車体側チューブ外に配置される手動操作可能な操作部とを備える
ことを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
前記カム装置は、前記車体側チューブ内に不動に収容される環状のカムフォロア部材と、前記カムフォロア部材と前記懸架ばねとの間に介装される前記カム部材とを有し、
前記カム部材は、周方向に軸方向高さが異なる複数の突起を有し、
前記カムフォロア部材は、周方向に軸方向高さが異なって前記突起と嵌合可能な複数の凹部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
前記カム部材は、前記複数の突起を有して周方向に沿って配置される複数の突起群を有し、
前記カムフォロア部材は、前記複数の凹部を有して前記各突起群と軸方向でそれぞれ対向する位置に配置される前記突起群と同数の凹部群を有し、
前記複数の突起群と前記複数の凹部群のうちで一の突起群と一の凹部群は、他の突起群と他の凹部群と互いに同じ数の前記突起と前記凹部とが嵌合される
ことを特徴とする請求項2に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
前記カム装置が合成樹脂により形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項5】
前記複数の突起は前記操作部側から見て周方向の一方向で軸方向高さが段階的に低くなるように配置され、
前記複数の凹部は前記操作部側から見て周方向の前記一方向で軸方向高さが段階的に高くなるように配置され、
前記シャフトの外周又は前記車体側チューブの内周には、最も軸方向高さが高い前記突起が最も軸方向高さが高い前記凹部に嵌合した状態の前記カム部材が前記カムフォロア部材に対して最大限離間するまでの間で、前記カム部材の前記懸架ばね側端に当接して前記カム部材の前記懸架ばね側への移動を規制するストッパが設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載のフロントフォーク。
【請求項6】
前記車体側チューブ内に挿入されつつ前記車体側チューブの車体側開口を閉塞する筒状のキャップを備え、
前記シャフトは、前記キャップを軸方向の移動を規制しつつ相対回転可能に保持しており、
前記カム装置は、前記キャップの一端に相対回転不能に連結されて前記車体側チューブ内に不動に収容されるカムフォロア部材と、前記カムフォロア部材と前記懸架ばねとの間に介装される前記カム部材とを有し、
前記シャフトの外周に、前記キャップと前記カムフォロア部材と前記カム部材の内側に前記シャフトが挿通された状態で、前記カム部材の前記シャフトからの抜けを防止するストッパが設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフォークに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントフォークは、車両における車体に連結される車体側チューブと、前輪の車軸に連結されて車体側チューブに対して軸方向へ移動可能な車軸側チューブとを有する伸縮部材と、伸縮部材内に収容されるとともに車体側チューブと車軸側チューブとを離間させる方向へ付勢する懸架ばねとを備え、車両の前輪を懸架するのに利用されている。
【0003】
このようなフロントフォークの中には、伸縮部材内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに下端に取付けられたばね受を介して懸架ばねの一端を支持するロッドと、ロッドの上端外周に設けられた螺子溝に螺合された有底筒状の操作部とを備え、操作部を回転操作することで送り螺子の要領でロッドを軸方向へ移動させて懸架ばねのイニシャル荷重を調節できるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のフロントフォークの操作部は、ロッドの上端外周に設けられた螺子溝に螺合されているため、工具を使って操作部を回転操作する必要がある。ところが、フロントフォークが搭載される車両が、例えば、スクーターのようにフロントフォークの上端を全て覆うカウルを備える車両である場合には、工具で操作部を操作するスペースを確保できない場合がある。
【0006】
また、従来のフロントフォークでは、操作部をロッドの上端外周の螺子溝に螺合することで、ロッドを送り螺子の要領で軸方向へ移動させるものであるから、懸架ばねのイニシャル荷重を所望する大きさに設定するためには、作業者は操作部を何回転させたかを把握しておく必要がある。しかしながら、上述したように、フロントフォークの上端がカウル等で覆われて操作部を視認できない状態では、操作部を何回転させたかを把握しておくことが難しく、懸架ばねのイニシャル荷重を所望する大きさに調整するのは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、操作部の周囲に必要なスペースを最小限にできるとともに、操作部を視認できない状態であっても、懸架ばねのイニシャル荷重を所望する大きさに容易に調整可能なフロントフォークの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明のフロントフォークは、車体側チューブと車軸側チューブとを有する伸縮部材と、伸縮部材内に収容されるとともに車体側チューブと車軸側チューブとを離間させる方向へ付勢する懸架ばねと、車体側チューブ内に収容されて懸架ばねの一端を支持するとともに周方向の回転によって段階的に軸方向に移動する環状のカム部材を有するカム装置と、車体側チューブ内に周方向へ回転可能に挿入されて一端側がカム部材に連結されるシャフトと、シャフトの他端側に設けられて車体側チューブ外に配置される手動操作可能な操作部とを備えることを特徴とする。この構成によると、懸架ばねのイニシャル荷重を調整する手動操作可能な操作部が、フロントフォークの上部に配置されているため、操作部を操作するために必要な操作部の周囲のスペースは、手を入れられる大きさがあれば足りる。また、操作部を回転操作することでカム部材を段階的に軸方向に移動させられるようになっており、懸架ばねのイニシャル荷重を段階的に調整できるようになっているため、懸架ばねのイニシャル荷重の調整量を段数で把握できるとともに、懸架ばねのイニシャル荷重の段数が切り換わるときに、操作部を回転操作する作業者にはシャフトと操作部を通じてクリック感が伝わり、作業者は懸架ばねのイニシャル荷重の段数が切り換わったことを操作部を見ることなく知覚できる。
【0009】
また、本発明のフロントフォークでは、カム装置は、車体側チューブ内に不動に収容される環状のカムフォロア部材と、カムフォロア部材と懸架ばねとの間に介装されるカム部材とを有し、カム部材は、周方向に軸方向高さが異なる複数の突起を有し、カムフォロア部材は、周方向に軸方向高さが異なって突起と嵌合可能な複数の凹部を有してもよい。この構成によると、カム装置において、複数の突起と複数の凹部とが、それぞれ複数箇所で嵌合するため、複数の突起と複数の凹部とが、それぞれ複数箇所で嵌合するため、カム部材とカムフォロア部材の接触面積が大きくなる。よって、懸架ばねのばね力によってカム部材とカムフォロア部材に作用する圧力を低減できる。
【0010】
また、本発明のフロントフォークでは、カム部材は、複数の突起を有して周方向に沿って配置される複数の突起群を有し、カムフォロア部材は、複数の凹部を有して各突起群と軸方向でそれぞれ対向する位置に配置される突起群と同数の凹部群を有し、複数の突起群と複数の凹部群のうちで一の突起群と一の凹部群は、他の突起群と他の凹部群と互いに同じ数の突起と凹部とが嵌合されてもよい。この構成によると、突起群と凹部群の数に応じて、突起と凹部の嵌合数が増加するため、カム部材とカムフォロア部材の接触面積がより大きくなる。よって、懸架ばねのばね力によってカム部材とカムフォロア部材に作用する圧力をより低減できる。
【0011】
また、本発明のフロントフォークでは、カム装置が合成樹脂により形成されてもよい。この構成によると、カム部材を周方向に回転させたときにカム部材がカムフォロア部材に擦れても金属粉が発生しない。したがって、フロントフォーク内に収容された液体に混ざった金属粉が、車体側チューブと車軸側チューブの隙間をシールするオイルシールやダストシールを攻撃する恐れがない。
【0012】
また、本発明のフロントフォークでは、複数の突起は操作部側から見て周方向の一方向で軸方向高さが段階的に低くなるように配置され、複数の凹部は操作部側から見て周方向の前記一方向で軸方向高さが段階的に高くなるように配置され、シャフトの外周又は車体側チューブの内周には、最も軸方向高さが高い突起が最も軸方向高さが高い凹部に嵌合した状態のカム部材がカムフォロア部材に対して最大限離間するまでの間で、カム部材の懸架ばね側端に当接してカム部材の懸架ばね側への移動を規制するストッパが設けられている。この構成によると、カム部材における最も軸方向高さの高い突起の嵌合相手が、カムフォロア部材における最も軸方向高さの高い凹部から最も軸方向高さの低い凹部に切り換わることによって、大きな衝撃が生じるのを防止できる。
【0013】
また、本発明のフロントフォークは、車体側チューブ内に挿入されつつ車体側チューブの車体側開口を閉塞する筒状のキャップを備え、シャフトは、キャップを軸方向の移動を規制しつつ相対回転可能に保持しており、カム装置は、キャップの一端に相対回転不能に連結されて車体側チューブ内に不動に収容されるカムフォロア部材と、カムフォロア部材と懸架ばねとの間に介装されるカム部材とを有し、シャフトの外周に、キャップとカムフォロア部材とカム部材の内側にシャフトが挿通された状態で、カム部材のシャフトからの抜けを防止するストッパが設けられてもよい。この構成によると、シャフトの外周にキャップとカムフォロア部材とカム部材とを組付けてアッセンブリ化できる。そして、シャフトは、キャップをシャフトに対して軸方向の移動が規制された状態で相対回転可能に保持しているため、シャフトの外周にキャップとカムフォロア部材とカム部材とを組付けてアッセンブリ化してからキャップを車体側チューブの車体側開口に装着するだけで、車体側チューブの上端にアジャスタを設けることができる。よって、上記構成によれば、フロントフォークの組立が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフロントフォークによれば、操作部の周囲に必要なスペースを最小限にできるとともに、操作部を視認できない状態であっても、懸架ばねのイニシャル荷重を所望の大きさに容易に調整可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態のフロントフォークを適用した鞍乗型車両の一部を示す側面図である。
【
図2】本実施の形態のフロントフォークの正面側断面図である。
【
図3】本実施の形態のフロントフォークの上部を拡大して示す一部拡大断面図である。
【
図4】本実施の形態のフロントフォークにおけるアジャスタとキャップの分解斜視図である。
【
図5】(A)は本実施の形態のカム装置の展開図であってカム装置の一段階目の状態を示し、(B)は本実施の形態のカム装置の展開図であってカム装置の二段階目の状態を示し、(C)は本実施の形態のカム装置の展開図であってカム装置の三段階目の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施の形態のフロントフォークFについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。また、フロントフォークFが車両に取り付けられた状態での上下を、特別な説明がない限り、単に「上」「下」という。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係るフロントフォークFは、鞍乗型車両Vにおいて前輪Wを懸架する懸架装置である。鞍乗型車両とは、鞍に跨るような姿勢で乗車するタイプの車両全般のことであり、オートバイ、スクーター、自転車等が含まれる。本発明に係るフロントフォークは、如何なる鞍乗型車両に搭載されてもよい。
【0018】
本実施の形態のフロントフォークFは、
図2に示すように、車体側チューブ1と、車体側チューブ1に対して軸方向へ移動可能な車軸側チューブ2とを有する伸縮部材としてのチューブ部材Tと、チューブ部材T内に収容されるとともに車体側チューブ1と車軸側チューブ2とを離間させる方向へ付勢する懸架ばねSと、車体側チューブ1の車体側(上端)に設けられて懸架ばねSの一端(上端)を支持しつつ懸架ばねSのイニシャル荷重を調整可能なアジャスタAとを備える。
【0019】
つづいて、本実施の形態のフロントフォークFの具体的な構造について説明する。
図2に示すように、本実施の形態のフロントフォークFは正立型であり、車軸側チューブ2の上側開口から車体側チューブ1が摺動自在に挿入されている。なお、チューブ部材Tは、車体側チューブ1の下側開口から車軸側チューブ2を摺動自在に挿入する倒立型とされてもよい。さらに、
図1に示すように、車軸側チューブ2には車軸側ブラケットBWが一体に設けられており、車軸側チューブ2は、その車軸側ブラケットBWを介して前輪Wの車軸に連結される。その一方、車体側チューブ1は、図示しない車体側ブラケットを介して車体Bに連結される。
【0020】
このように、フロントフォークFは、車軸側チューブ2を前輪(車輪)W側へ、車体側チューブ1を車体B側へ向けて配置して、車体Bと前輪Wの車軸との間に介装されている。そして、鞍乗型車両Vが凹凸のある路面を走行する等して前輪Wが上下に振動すると、車体側チューブ1が車軸側チューブ2に出入りしてフロントフォークFが伸縮する。なお、
図2では、車軸側ブラケットBWの記載を省略している。
【0021】
また、車体側チューブ1の上端開口は、後述するキャップ6とアジャスタAによって塞がれている。その一方、車軸側チューブ2は、有底筒状であり、車軸側チューブ2の下側開口はその底部2aで塞がれている。さらに、車軸側チューブ2と車体側チューブ1の重複部の間は、オイルシール11とダストシール12により塞がれている。このようにしてチューブ部材T内は密閉空間とされており、そのチューブ部材T内に液体と気体が封入されている。
【0022】
さらに、車軸側チューブ2の底部2aには、シリンダ10がボルト13で連結されている。このシリンダ10は、筒状部10aと、この筒状部10aの上端から径方向外側へ張り出す環状のバルブケース部10bとを有し、下端から車軸側チューブ2の中心部に軸方向に沿うように起立して、車体側チューブ1内に挿入されている。
【0023】
チューブ部材T内は、シリンダ10の外周側に形成される筒状の液室Lと、シリンダ10の内周側に形成されるリザーバ室Rとに区画される。液室Lには作動油等の液体が充填されている。その一方、リザーバ室Rには、液室Lと同じ液体が貯留されるとともに、その液面上方にエア等の気体が封入されている。なお、リザーバ室Rの液面は、フロントフォークFの伸縮時において常にシリンダ10の上端よりも上側に位置している。
【0024】
また、車体側チューブ1の下端部には、液室Lを上側の伸側室L1と下側の圧側室L2とに区画するピストン15が設けられている。具体的には、ピストン15は、有頂筒状であって頂部(符示せず)にシリンダ10の挿通を許容する孔(符示せず)を有するケース16と、ケース16の内周側に配置されて圧側室L2から伸側室R1への液体の通過のみを許容する第二圧側チェック弁17と、ケース16の下端と当接しつつ第二圧側チェック弁17を支持する筒状のロックケース18とを有する。
【0025】
車体側チューブ1は、小径筒部1aと、小径筒部1aの下端に連なって小径筒部1aよりも内径の大きい大径筒部1bとを有しており、小径筒部1aと大径筒部1bとの境には段部1cが形成されている。そして、この段部1cにピストン15の上端(ケース16の上端)を当接させた状態で、車体側チューブ1の下端を加締めることで、ピストン15は、車体側チューブ1の下端部に取付けられている。ただし、ピストン15は、加締め以外の方法で、車体側チューブ1に固定されてもよい。
【0026】
なお、本実施の形態のピストン15の構成は一例であって、ピストン15は、液室Lを伸側室L1と圧側室L2とに区画する限りにおいて、どのように構成されてもよい。
【0027】
また、ピストン15の上側には伸び切りばね19が積層されている。そして、この伸び切りばね19は、フロントフォークFの最伸長時にピストン15とバルブケース部10bとの間で圧縮されて、最伸長時の衝撃を緩和する。なお、
図2に示す伸び切りばね19は、コイルばねであるが、コイルばね以外のばねでもよい。また、伸び切りばね19に替えて、クッションラバー等を設け、このクッションラバー等でフロントフォークFの最伸長時の衝撃を緩和してもよい。
【0028】
また、車軸側チューブ2の底部2aには、筒状のロックピース20が起立している。そして、フロントフォークFの最収縮時には、ロックケース18内にロックピース20が挿入される。すると、ロックケース18内の圧力が上昇して液圧ロックが効いて、フロントフォークFの最収縮時の衝撃が緩和される。
【0029】
また、シリンダ10の上部には、
図2に示すように、シリンダ10の内外を連通するオリフィス10c,10dが上下に並べて設けられている。各オリフィス10c,10dは、フロントフォークFに荷重がかかっていない状態で、伸側室L1と対向する位置に設けられている。
【0030】
また、シリンダ10の下部には圧側室R2とリザーバ室Rを連通する連通孔10eが設けられている。この連通孔10eは、液体が抵抗なく通過できる大きさに形成されているため、液体が連通孔10eを通って圧側室L2とリザーバ室Rとの間を自由に行き来できるようになっている。
【0031】
また、バルブケース部10bの外周には、車体側チューブ1の内周に摺接して、リザーバ室Rから伸側室L1への液体の通過のみを許容する第一圧側チェック弁14が装着されている。
【0032】
このように構成されたフロントフォークFによると、車体側チューブ1が車軸側チューブ2から退出するフロントフォークFの伸長時には、第一圧側チェック弁14が閉じてピストン15が液室L内を上方へ移動して伸側室L1を縮小するとともに圧側室L2を拡大する。
【0033】
このフロントフォークFの伸長時には、第一圧側チェック弁14が閉じて伸側室L1の液体がオリフィス10c,10dを通ってリザーバ室Rへと移動するとともに、圧側室L2の拡大体積分の液体が連通孔10eを介してリザーバ室Rから圧側室L2へ供給される。したがって、フロントフォークFの伸長時においては、伸側室L1からリザーバ室Rへと向かう液体の流れに対して、オリフィス10c,10dにより抵抗が付与される。よって、フロントフォークFの伸長時には伸側室L1の圧力が上昇し、フロントフォークFの伸長作動を妨げる伸側の減衰力が発生する。
【0034】
また、フロントフォークFがさらに伸長していくと、ピストン15の第二圧側チェック弁17が各オリフィス10c,10dの上方へ移動して、各オリフィス10c,10dの伸側室L1との連通が下側のオリフィス10dから順に遮断されていく。
【0035】
そして、フロントフォークFが最伸長して、ピストン15の第二圧側チェック弁17が上側のオリフィス10cの上側まで移動すると、伸側室L1とリザーバ室Rとの連通が完全に遮断されるため、伸側室L1は密閉されて液圧ロックが効く。そのため、本実施の形態では、フロントフォークFの最伸長時の衝撃は、前述した伸び切りばね19の弾発力と上記液圧ロックとによって緩和される。なお、フロントフォークFの最伸長時の衝撃が、上記液圧ロックによって十分に緩和できる場合には、伸び切りばね19は省略されてもよい。
【0036】
また、上述したように、本実施の形態のオリフィス10c,10dは、シリンダ10の上部に上下に並べて設けられており、フロントフォークFの伸長が進むと下側のオリフィス10dから順に遮断されるようになっている。そのため、フロントフォークFの伸長作動のストロークエンド付近では、伸側の減衰力は徐々に大きくなる。よって、フロントフォークFの伸長時に、伸側の減衰力が急激に高まって乗心地が悪化するのを抑制できる。なお、オリフィス10c,10dの数は、2つには限定されず、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【0037】
反対に、車体側チューブ1が車軸側チューブ2内へ侵入するフロントフォークFの収縮時には、車体側チューブ1が車軸側チューブ2とシリンダ10との間の液室L内へ侵入し、ピストン15がその液室L内を下方へ移動して圧側室L2を縮小するとともに伸側室L1を拡大する。
【0038】
このフロントフォークFの収縮時には、圧側室L2の液体が連通孔10eを通ってリザーバ室Rへ移動する。さらに、フロントフォークFの収縮時には、第一圧側チェック弁14が開いてリザーバ室Rの液体が伸側室L1へ供給されるとともに、第二圧側チェック弁17が開いて圧側室L2の液体が伸側室L1へ供給される。
【0039】
このようなフロントフォークFの収縮時には、圧側室L2の液体は連通孔10eを通じてほとんど抵抗なくリザーバ室Rへと移動するため、フロントフォークFの収縮作動を妨げる圧側の減衰力は発生しないか或いは極小さくなる。ただし、例えば、圧側室L2とリザーバ室Rとの間に減衰弁を設けるなどして、圧側の減衰力を発生させるようにしてもよい。
【0040】
また、本実施の形態では、フロントフォークFの収縮時には、第一圧側チェック弁14と第二圧側チェック弁17が開いて、リザーバ室Rと圧側室L2の両方から拡大する伸側室L1に液体が供給されるようになっているため、伸側室L1の液体が不足して、伸側室L1内が負圧になるのを確実に防止できる。ただし、リザーバ室R又は圧側室L2のいずれか一方からの液体の供給のみで伸側室L1の液体が不足しない場合は、第一圧側チェック弁14と第二圧側チェック弁17のいずれか他方を省略してもよい。なお、上述したフロントフォークFの内部の構造は一例であって、上述した構造には限定されない。
【0041】
戻って、バルブケース部10bの上側には、
図2に示すように、懸架ばねSが積層されており、この懸架ばねSの上端は、車体側チューブ1の上端に設けられた後述するアジャスタAによって支持されている。これにより、車体側チューブ1が車軸側チューブ2内へ侵入してフロントフォークFが収縮すると、懸架ばねSの圧縮量が大きくなり、当該圧縮に抗する懸架ばねSの弾性力が大きくなる。このように、懸架ばねSは、その圧縮量に見合った弾性力を発揮するようになっており、フロントフォークFを伸長方向へ付勢して車体Bを弾性支持するようになっている。
【0042】
本実施の形態のアジャスタAは、
図3に示すように、車体側チューブ1内に不動に収容される環状のカムフォロア部材30と、車体側チューブ1内に周方向へ回転可能であって軸方向へ移動可能に収容されるとともに懸架ばねSの上端とカムフォロア部材30との間に介装されるカム部材31と、車体側チューブ1内に周方向へ回転可能に挿入されるとともに下端(一端)がカム部材31に連結されるとともに上端(他端)がカムフォロア部材30内を通じて車体側チューブ1外に突出するシャフト4と、シャフト4の上端側に設けられて車体側チューブ1外に配置される操作部としてのダイヤル5とを備える。
【0043】
詳細には、アジャスタAは、車体側チューブ1の上端開口を閉塞する筒状のキャップ6を介して車体側チューブ1の上端に設けられている。キャップ6は、金属製であって、
図3,
図4に示すように、車体側チューブ1の内周に摺接しながら挿入される筒状のキャップ本体60と、キャップ本体60の上端に設けられて外径が車体側チューブ1の外径と略同径であって下面が車体側チューブ1の上端に当接する環状のフランジ部61とを有する。また、キャップ本体60の上端外周に形成される環状溝(符示せず)に装着された環状の外周シール62により、キャップ本体60の外周と車体側チューブ1の内周の隙間がシールされている。そして、キャップ6は、車体側チューブ1の内周に螺子結合により固定されている。ただし、キャップ6の車体側チューブ1への固定方法は、螺子結合には限定されず、例えば、キャップ本体60を車体側チューブ1の内周に挿入した状態で車体側チューブ1の上端外周を加締めて、キャップ6を車体側チューブ1に固定してもよい。なお、
図4では、キャップ本体60の外周に設けられる螺子部を省略している。
【0044】
また、シャフト4は、
図3,
図4に示すように、車体側チューブ1内に挿入された状態で車体側チューブ1外に突出する突出軸部40と、突出軸部40の下端に連なって突出軸部40よりも大径な第一取付軸部41と、第一取付軸部41の下端に連なる第二取付軸部42とを備える。
【0045】
そして、シャフト4の第一取付軸部41の上端と下端の外周にそれぞれ装着されたスナップリング43,44によってキャップ6は挟持されている。よって、シャフト4は、キャップ6を軸方向の移動を規制しつつ相対回転可能に保持している。そのため、
図2,
図3に示すように、キャップ6が車体側チューブ1に固定されると、シャフト4は、車体側チューブ1に対して周方向に回転可能に挿入された状態となる。
【0046】
また、キャップ本体60の内周に形成された環状溝(符示せず)には、環状の内周シール64が装着されており、内周シール64は、キャップ6の内側に挿通されるシャフト4の外周に摺接して、キャップ6とシャフト4の間の隙間をシールしている。
【0047】
また、シャフト4の突出軸部40には手動操作可能な操作部としてのダイヤル5が設けられており、ダイヤル5はシャフト4を周方向に回転させる際の持手として機能する。
【0048】
具体的には、ダイヤル5は、
図3,
図4に示すように、有頂筒状の嵌合部50と、嵌合部50の下端から径方向に突出する環状のフランジ部51と、フランジ部51の上端から起立して嵌合部50の周方向に間隔を空けて設けられる複数の突条部52とを備える。隣り合う突条部52,52の間隔は、指を入れられる程度の大きさに設定されているため、作業者がダイヤル5を操作する際に、指を突条部52,52間に入れることができ、作業者がダイヤル5を握りやすいようになっている。
【0049】
また、図示しないが、突出軸部40は、円柱の径方向で対向する二箇所を軸方向に切り落としてできる二面幅形状となっており、一方、嵌合部50の内周形状も突出軸部40の外周形状と符合する形状となっている。そのため、ダイヤル5の嵌合部50が突出軸部40の上端に嵌合されると、ダイヤル5は突出軸部40に対して回り止めされる。なお、突出軸部40の外周形状と嵌合部50の内周形状は、真円以外であればよく、例えば、D形状や四角状とされてもよい。
【0050】
そして、ダイヤル5の嵌合部50を突出軸部40に嵌合し、嵌合部50の頂部(符示せず)に設けた孔と突出軸部40の上部に開孔される螺子孔(符示せず)とを対向させた状態で、その螺子孔にボルト53を螺合することで、ダイヤル5はシャフト4の上端に対して相対回転が防止された状態で固定される。
【0051】
ただし、ダイヤル5のシャフト4への固定方法は、一例であって上記方法には限定されず、例えば、ダイヤル5を接着や溶接によりシャフト4に固定してもよい。なお、上述したダイヤル5の形状は一例であって、ダイヤル5の形状は上記した構成には限定されない。
【0052】
また、キャップ本体60の下端には、環状であってシャフト4の挿通と周方向回転を許容する環状のカムフォロア部材30が、相対回転不能に連結されており、カムフォロア部材30は、車体側チューブ1内に不動に収容されている。
【0053】
具体的には、
図4に示すように、キャップ本体60の下端には、キャップ本体60の径方向で対向する二箇所の外周側をそれぞれ軸方向に切り落として二面幅形状に形成された嵌合部63が設けられている。そして、カムフォロア部材30の上端には、二つの嵌合部63にそれぞれ嵌合可能な板状の一対の回り止め片33が設けられており、各回り止め片33と各嵌合部63とをそれぞれ嵌合させることで、カムフォロア部材30は、キャップ本体60に対して相対回転不能に連結される。
【0054】
また、シャフト4の下端である第二取付軸部42の外周には、環状のカム部材31が、第二取付軸部42に対して相対回転不能であって第二取付軸部42に沿って軸方向に移動可能に連結されている。そして、カム部材31の下端には、懸架ばねSの上端が当接しており、カム部材31は、懸架ばねSの上端を支持している。
【0055】
具体的には、
図4に示すように、シャフト4の第二取付軸部42は、円柱の径方向で対向する二箇所を軸方向に切り落としてできる二面幅形状となっている。また、カム部材31の内周形状は、第二取付軸部42の外周形状と符合する形状となっている。そして、カム部材31の内周に第二取付軸部42を挿通し、カム部材31を第二取付軸部42の外周に装着することで、カム部材31は、シャフト4に対して相対回転が規制されるがシャフト4に沿って軸方向に移動可能に連結される。
【0056】
ただし、カム部材31の内周形状と第二取付軸部42の外周形状は、真円以外であればよく、例えば、D形状や四角状であってもよい。また、カム部材31を第二取付軸部42に対して相対回転不能に回り止めする方法は、上記方法には限定されない。
【0057】
そして、これらのカムフォロア部材30とカム部材31は、それぞれ合成樹脂で形成されていて、懸架ばねSの上端の軸方向位置を段階的に変更可能なカム装置3を構成する。
【0058】
具体的には、カム部材31の上端には、
図5に示すように、周方向で軸方向高さが異なる複数の突起31a,31b,31cを有する突起群31A,31Bが周方向に連続して二つ設けられている。ただし、突起群31A,31Bは周方向で離間して配置されてもよい。
【0059】
各突起群31A,31Bにおける高い位置にある突起から順に番号を付けると、各突起群31A,31Bは、それぞれ、第一突起31aと、第一突起31aよりも軸方向高さが低い第二突起31bと、第二突起31bよりも軸方向高さが低い第三突起31cとを有しており、ダイヤル5側から見て第一突起31a、第二突起31b、第三突起31cの順で時計回りに配置されている。つまり、本実施の形態では、複数の突起31a,31b,31cはダイヤル5側から見て時計回りで軸方向高さが段階的に低くなるように配置されている。
【0060】
他方、カムフォロア部材30の下端には、
図5に示すように、周方向で軸方向高さが異なる複数の凹部30a,30b,30cを有する凹部群30A,30Bが周方向に連続して二つ設けられている。ただし、凹部群30A,30Bは周方向で離間して配置されてもよい。
【0061】
各凹部群30A,30Bにおける低い位置にある凹部から順に番号を付けると、各凹部群30A,30Bは、それぞれ、第一凹部30aと、第一凹部30aよりも軸方向高さが高い第二凹部30bと、第二凹部30bよりも軸方向高さが高い第三凹部30cとを有しており、第一凹部30a、第二凹部30b、第三凹部30cの順でダイヤル5側から見て時計回りに配置されている。つまり、本実施の形態では、複数の凹部30a,30b,30cはダイヤル5側から見て時計回りで軸方向高さが段階的に高くなるように配置されている。
【0062】
そして、
図5(A)に示すように、カムフォロア部材30の下端に設けられた各凹部30a,30b,30cとカム部材31の上端に設けられた各突起31a,31b,31cは互いに嵌合するようになっている。つまり、カムフォロア部材30の凹部群30A,30Bと、カム部材31の突起群31A,31Bは、互いに符合する形状となっている。なお、突起群31A,31Bと凹部群30A,30Bの数は二つには限定されず、一つであってもよいし、三つ以上あってもよい。
【0063】
つづいて、アジャスタAの操作方法について詳細に説明する。本実施の形態では、アジャスタAは、懸架ばねSのイニシャル荷重を三段階で調整できるようになっている。
【0064】
懸架ばねSのイニシャル荷重が最も小さくなるカム装置3の一段階目では、
図5(A)に示すように、カム部材31の第一突起31aがカムフォロア部材30の第一凹部30aに嵌合し、カム部材31の第二突起31bがカムフォロア部材30の第二凹部30bに嵌合し、カム部材31の第三突起31cがカムフォロア部材30の第三凹部30cに嵌合した状態となる。
【0065】
ここで、突起群31A,31Bと凹部群30A,30Bは、それぞれ、周方向に連続して配置されているため、
図5(A)に示すように、カム装置3の一段階目では、軸方向高さの最も高い第一突起31aの側面が軸方向高さの最も高い第三凹部30cを形成する突部(符示せず)の側面に当接して、ダイヤル5側から見てカム部材31の反時計回りの回転が規制される。したがって、カム装置3が一段階目の状態では、作業者がダイヤル5を逆方向(反時計回り)に回転させてしまうことが防止される。
【0066】
そして、カム部材31の第一突起31aと第二突起31bがそれぞれカムフォロア部材30の第二凹部30bと第三凹部30cに嵌合するまで、作業者がダイヤル5を時計回りに回転操作してシャフト4を介してカム部材31を時計回りに回転させると、
図5(B)に示すように、カム装置3が、一段階目から二段階目に切り換わる。
【0067】
この際、カム部材31が懸架ばねSによってカムフォロア部材30に押し付けられた状態で、第一突起31aと第二突起31bがそれぞれ第二凹部30bと第三凹部30cに嵌合することになるため、嵌合時の振動によるクリック感がシャフト4とダイヤル5を通じて作業者に伝わる。よって、作業者は、カム装置3が一段目から二段目に切り換わったことをクリック感により知覚できる。
【0068】
このようにカム装置3が二段階目になると、カムフォロア部材30の第一凹部30aと第二凹部30bの軸方向高さの差分だけ、カム部材31がシャフト4に沿って下方向(懸架ばねS側)に移動するため、懸架ばねSが圧縮されて懸架ばねSのイニシャル荷重がカム装置3の一段階目よりも大きくなる。
【0069】
つづいて、カム部材31の第一突起31aがカムフォロア部材30の第三凹部30cに嵌合するまで、作業者がダイヤル5を時計回りに回転操作してシャフト4を介してカム部材31を時計回りに回転させると、
図5(C)に示すように、カム装置3が、二段階目から三段階目に切り換わる。
【0070】
この際に、カム部材31が懸架ばねSによってカムフォロア部材30に押し付けられた状態で、第一突起31aが第三凹部30cに嵌合することになるため、嵌合時の振動によるクリック感がシャフト4とダイヤル5を通じて作業者に伝わる。よって、作業者は、カム装置3が二段目から三段目に切り換わったことをクリック感により知覚できる。
【0071】
そして、このようにカム装置3が三段階目になると、カムフォロア部材30の第二凹部30bと第三凹部30cの軸方向高さの差分だけ、カム部材31がシャフト4に沿って下方向に移動するため、懸架ばねSがさらに圧縮されて懸架ばねSのイニシャル荷重が最大となる。
【0072】
ここで、
図3,
図4に示すように、シャフト4の第二取付軸部42の下側の外周には、最も軸方向高さが高い第一突起31aが最も軸方向高さが高い第三凹部30cに嵌合した状態のカム部材31がカムフォロア部材30に対して最大限離間するまでの間で、カム部材31の懸架ばねS側端に当接してカム部材31の下方向(懸架ばねS側)への移動を規制するストッパとしてのストッパリング45が設けられている。
【0073】
ここで言う、カム部材31がカムフォロア部材30に対して最大限離間する状態とは、第一突起31aが第三凹部30cに嵌合した状態からカム部材31をさらに時計回りに回転させたときに、第一突起31aが第三凹部30cの側部に沿って移動して、第一突起31aが第三凹部30cの側部の先端部30c1に乗り上げた状態を示す。
【0074】
このように、第一突起31aが第三凹部30cに嵌合した状態のカム部材31がカムフォロア部材30に対して最大限離間するまでの間で、カム部材31の懸架ばねS側端に当接してカム部材31の下方向(懸架ばねS側)への移動がストッパリング45によって規制されると、カム部材31における最も軸方向高さの高い第一突起31aの嵌合相手が、カムフォロア部材30における最も軸方向高さの高い第三凹部30cから第三凹部30cの先端部30c1を乗り越えて最も軸方向高さの低い第一凹部30aに切り換わることによって、大きな衝撃が生じるのを防止できる。
【0075】
なお、懸架ばねSのイニシャル荷重を小さくする場合には、ダイヤル5を反時計回りに回転操作してシャフト4を反時計回りに回転させて、カム部材31を反時計回りに回転させればよい。
【0076】
このように、本実施の形態のアジャスタAでは、ダイヤル5を周方向に回転操作することで、カム部材31を周方向に回転させるとともに段階的に軸方向に移動させて、懸架ばねSのイニシャル荷重の大小を段階的に調整できる。
【0077】
また、本実施の形態では、懸架ばねSのイニシャル荷重を調整可能な段数は、三段階に設定されているが、特に限定されず、二段階以上であれば任意の段数に設定できる。その場合、カム部材31に設けられる突起31a,31b,31cとカムフォロア部材30に設けられる凹部30a,30b,30cの数を、懸架ばねSのイニシャル荷重を調整可能な段数に合わせて適宜増減させればよい。
【0078】
また、本実施の形態では、懸架ばねSのイニシャル荷重を調整する手動操作可能な操作部としてのダイヤル5が、フロントフォークFの上部に配置されている。したがって、ダイヤル5を操作するために必要なダイヤル5の周囲のスペースは手を入れられる大きさあれば足りるため、ダイヤル5の周囲に必要なスペースを最小限にできる。
【0079】
よって、例えば、本実施の形態のフロントフォークFが、
図1に示すように、フロントフォークFの上端を全て覆うカウルCを備えるスクーターに搭載されて、ダイヤル5の周囲のスペースが狭くなっていても、カウルCとダイヤル5の間に手を入れられるスペースさえあれば、作業者は、カウルCとダイヤル5の隙間に手を入れて、ダイヤル5を回転操作することで、懸架ばねSのイニシャル荷重を調整できる。
【0080】
また、本実施の形態のフロントフォークFでは、ダイヤル5を回転操作することで、カム部材31を段階的に軸方向に移動させて懸架ばねSのイニシャル荷重の大小を段階的に調整できるようになっているため、懸架ばねSのイニシャル荷重の調整量を段数で把握できる。
【0081】
さらに、懸架ばねSのイニシャル荷重の段数が切り換わるときに、ダイヤル5を回転操作する作業者にはシャフト4とダイヤル5を通じてクリック感が伝わるため、作業者は懸架ばねSのイニシャル荷重の段数が切り換わったことをダイヤル5を見ることなく知覚できる。
【0082】
したがって、フロントフォークFが、
図1に示すように、フロントフォークFの上端がカウルCによって覆われて、ダイヤル5を作業者から視認できない状態であっても、懸架ばねSのイニシャル荷重の調整量を把握しやすいため、懸架ばねSのイニシャル荷重を所望する大きさに容易に調整できる。
【0083】
なお、本実施の形態では、フロントフォークFの上端に配置される操作部がダイヤル5となっているが、操作部は、作業者が手動操作可能な限りにおいて、特に限定されず、例えば、径方向に突出するレバーを備えていてもよい。このようなレバーを設けると、シャフト4の回転中心から力点までの距離が大きくなるので小さい力でシャフト4を回すことができる。
【0084】
また、本実施の形態では、カム装置3を構成するカム部材31とカムフォロア部材30の両方が合成樹脂で形成されているが、カム部材31とカムフォロア部材30の両方又は一方が合成樹脂以外の材料、例えば金属で形成されてもよい。ただし、カム部材31とカムフォロア部材30が金属で形成される場合、カム部材31を周方向に回転させたときにカム部材31がカムフォロア部材30に擦れて金属粉が発生する。すると、カム装置3はフロントフォークF内に収容されているため、金属粉がフロントフォークF内に収容された液体に混ざって、車体側チューブ1と車軸側チューブ2の隙間をシールするオイルシール11やダストシール12を攻撃する恐れがある。
【0085】
これに対し、本実施の形態のように、カム部材31とカムフォロア部材30を合成樹脂で形成すると、カム部材31がカムフォロア部材30に擦れても金属粉が発生しないため、シールを攻撃する恐れがない。
【0086】
また、合成樹脂は金属に比べて軽量であるため、カム部材31とカムフォロア部材30を合成樹脂で形成すると、フロントフォークFを軽量化できる。また、合成樹脂は金属に比べて加工しやすいため、カム部材31とカムフォロア部材30を合成樹脂で形成すると、カム部材31とカムフォロア部材30にそれぞれ突起31a,31b,31cと凹部30a,30b,30cを設けるのが容易となる。
【0087】
また、合成樹脂は金属に比べて摩擦係数が小さいため、カム部材31とカムフォロア部材30を合成樹脂で形成すると、カム装置3の段数の切り替えに必要な力が小さくなるため、ダイヤル5の操作性が向上する。
【0088】
また、本実施の形態では、キャップ6とカムフォロア部材30を別体としているため、キャップ6を金属製とし、カムフォロア部材30を合成樹脂製とすること、つまり、キャップ6とカムフォロア部材30の材質を別にすることができる。ただし、カムフォロア部材30を金属製とするのであれば、キャップ6の下端にカムフォロア部材30が一体的に設けられてもよい。
【0089】
また、本実施の形態では、カム部材31は、シャフト4の下端である第二取付軸部42の外周に対して、相対回転不能であって第二取付軸部42に沿って軸方向に移動可能に連結されているが、キャップ6に対してシャフト4の軸方向への移動を許容するようにして、カム部材31をシャフト4の下端に不動に連結してもよい。ただし、カム部材31をシャフト4の下端に不動に連結した場合、カム部材31が周方向に回転して軸方向に移動したときに、カム部材31とともにシャフト4も軸方向に移動する。すると、シャフト4の上端が車体Bに干渉してしまう等の問題が生じる恐れがある。
【0090】
これに対し、本実施の形態では、カム部材31をシャフト4の第二取付軸部42の外周に対して、相対回転不能であって第二取付軸部42に沿って軸方向に移動可能に連結しているので、カム部材31が周方向に回転して軸方向に移動したときに、カム部材31は、第二取付軸部42上を移動する。よって、シャフト4が軸方向に移動することがないため、シャフト4の上端が車体Bに干渉してしまう等の問題が生じない。
【0091】
つづいて、アジャスタAとキャップ6を車体側チューブ1の上端に組付ける方法について詳細に説明する。まず、シャフト4の第一取付軸部41の下端外周にスナップリング44を装着してから、キャップ6の下側からキャップ6の内側に第一取付軸部41を挿入して、キャップ6を第一取付軸部41の外周に装着する。その後、シャフト4の第一取付軸部41の上端外周にスナップリング43を装着することで、キャップ6はシャフト4に軸方の移動が規制されつつ相対回転可能に保持される。
【0092】
ここで、シャフト4の第一取付軸部41は、
図3,
図4に示すように、第二取付軸部42の上端に連続する大径部分41aと、大径部分41aの上端に連続して大径部分よりも外径が小径な小径部分41bとを有している。そして、キャップ6を第一取付軸部41の外周に装着した状態で、キャップ本体60の内周に装着された内周シール64が第一取付軸部41の大径部分41aの外周に摺接するようになっている。
【0093】
そのため、本実施の形態では、前述したように、キャップ6の下側からキャップ6の内側に第一取付軸部41を挿入する際に、キャップ本体60の内周に装着された内周シール64は第一取付軸部41の小径部分41bの内周には接触しない或いは内周シール64が第一取付軸部41の小径部分41bの内周に接触しても摩擦が小さくなる。
【0094】
よって、キャップ6を第一取付軸部41に装着する際に、内周シール64が第一取付軸部41の外周に対して擦れる距離を短くできるため、内周シール64の劣化を抑制できるとともに、キャップ6の第一取付軸部41に対する組付けが容易となる。
【0095】
次に、カムフォロア部材30の上側からカムフォロア部材30の内側にシャフト4の下端を挿入していき、キャップ本体60の下端に設けられた嵌合部63に、カムフォロア部材30の上端に設けられた回り止め片33を嵌合して、カムフォロア部材30をキャップ本体60の下端に相対回転不能に連結する。
【0096】
その後、カム部材31の上側からカム部材31の内側にシャフト4の第二取付軸部42を挿入してから、第二取付軸部42の下端外周にストッパリング45を装着することで、カム部材31のシャフト4からの抜けを防止している。
【0097】
最後に、シャフト4の上端である突出軸部40にダイヤル5を固定することで、シャフト4と、ダイヤル5と、カムフォロア部材30と、カム部材31とを有するアジャスタAとキャップ6とが組付けられて、アッセンブリ化される。
【0098】
そして、このようにアジャスタAとキャップ6をアッセンブリ化しておけば、当該アッセンブリのキャップ6を車体側チューブ1の上端内周に螺合するだけで、車体側チューブ1の上端にアジャスタAを設けることができる。
【0099】
なお、上述したアジャスタAとキャップ6を車体側チューブ1の上端に組付ける方法は一例であって、上記方法には限定されない。
【0100】
前述したように、本実施の形態のフロントフォークFは、車体側チューブ1と車体側チューブ1に対して軸方向へ移動可能な車軸側チューブ2とを有する伸縮部材としてのチューブ部材Tと、チューブ部材T内に収容されるとともに車体側チューブ1と車軸側チューブ2とを離間させる方向へ付勢する懸架ばねSと、車体側チューブ1内に収容されて懸架ばねSの一端を支持するとともに周方向の回転によって段階的に軸方向に移動する環状のカム部材31を有するカム装置3と、車体側チューブ1内に周方向へ回転可能に挿入されて一端側がカム部材31に連結されるシャフト4と、シャフト4の他端側に設けられて車体側チューブ1外に配置される手動操作可能な操作部としてのダイヤル5とを備える。
【0101】
上記構成によると、懸架ばねSのイニシャル荷重を調整する手動操作可能な操作部としてのダイヤル5が、フロントフォークFの上部に配置されている。したがって、ダイヤル5を操作するために必要なダイヤル5の周囲のスペースは、手を入れられる大きさがあれば足りるため、ダイヤル5の周囲に必要なスペースを最小限にできる。
【0102】
よって、例えば、本実施の形態のフロントフォークFが、
図1に示すように、フロントフォークFの上端を全て覆うカウルCを備えるスクーターに搭載されて、ダイヤル5の周囲のスペースが狭くなっていても、カウルCとダイヤル5の間に手を入れられるスペースさえあれば、作業者は、カウルCとダイヤル5の隙間に手を入れて、ダイヤル5を回転操作することで、懸架ばねSのイニシャル荷重を調整できる。
【0103】
また、本実施の形態のフロントフォークFでは、ダイヤル5を回転操作することで、カム部材31を段階的に軸方向に移動させて懸架ばねSのイニシャル荷重の大小を段階的に調整できるようになっているため、懸架ばねSのイニシャル荷重の調整量を段数で把握できる。
【0104】
さらに、懸架ばねSのイニシャル荷重の段数が切り換わるときに、ダイヤル5を回転操作する作業者にはシャフト4とダイヤル5を通じてクリック感が伝わるため、作業者は懸架ばねSのイニシャル荷重の段数が切り換わったことをダイヤル5を見ることなく知覚できる。
【0105】
したがって、上記構成によれば、フロントフォークFが、
図1に示すように、フロントフォークFの上端がカウルCによって覆われて、ダイヤル5を作業者から視認できない状態であっても、懸架ばねSのイニシャル荷重の調整量を把握しやすいため、懸架ばねSのイニシャル荷重を所望する大きさに容易に調整できる。
【0106】
なお、本実施の形態では、フロントフォークFの上部に配置される操作部がダイヤル5となっているが、操作部は、作業者が手動操作可能な限りにおいて、特に限定されず、例えば、径方向に突出するレバーを備えていてもよい。このようなレバーを設けると、シャフト4の回転中心から力点までの距離が大きくなるので小さい力でシャフト4を回すことができる。ただし、操作部がダイヤル5であると、レバーを設ける場合に比べて、径方向の大きさをコンパクトにできるため、操作部の周囲に必要なスペースをより小さくできる。
【0107】
また、本実施の形態のフロントフォークFでは、カム装置3は、車体側チューブ1内に不動に収容される環状のカムフォロア部材30と、カムフォロア部材30と懸架ばねSとの間に介装されるカム部材31とを有し、カム部材31は周方向に軸方向高さが異なる複数の突起31a,31b,31cを有し、カムフォロア部材30は周方向に軸方向高さが異なって突起31a,31b,31cと嵌合可能な複数の凹部30a,30b,30cを有する。
【0108】
この構成によると、カム装置3において、複数の突起31a,31b,31cと複数の凹部30a,30b,30cとが、それぞれ複数箇所で嵌合するため、カム部材31とカムフォロア部材30の接触面積が大きくなる。よって、懸架ばねSのばね力によってカム部材31とカムフォロア部材30に作用する圧力を低減できる。
【0109】
また、本実施の形態のフロントフォークFでは、カム部材31は、複数の突起31a,31b,31cを有して周方向に沿って配置される複数の突起群31A,31Bを有し、カムフォロア部材30は、複数の凹部30a,30b,30cを有して各突起群31A,31Bと軸方向でそれぞれ対向する位置に配置される突起群31A,31Bと同数の凹部群30A,30Bを有し、複数の突起群31A,31Bと複数の凹部群30A,30Bのうちで一の突起群31Aと一の凹部群30Aは、他の突起群31Bと他の凹部群30Bと互いに同じ数の突起31a,31b,31cと凹部30a,30b,30cとが嵌合されている。
【0110】
この構成によると、突起群31A,31Bと凹部群30A,30Bの数に応じて、突起31a,31b,31cと凹部30a,30b,30cの嵌合数が増加するため、カム部材31とカムフォロア部材30の接触面積がより大きくなる。よって、懸架ばねSのばね力によってカム部材31とカムフォロア部材30に作用する圧力をより低減できる。ただし、突起群31A,31Bと凹部群30A,30Bの数は特に限定されず、一つであってもよい。
【0111】
なお、本実施の形態では、カム装置3は、上端に軸方向高さの異なる複数の突起31a,31b,31cを有するカム部材31と、下端に軸方向高さの異なる複数の凹部30a,30b,30cを有するカムフォロア部材30とで構成されているが、上述したカム装置3の構成は一例であって、カム部材31が周方向に回転したときにカム部材31を段階的に軸方向に移動できる限りにおいて、カム装置3の構成は限定されない。
【0112】
例えば、カム部材31の上端に複数の突起31a,31b,31cに代えて凹部30a,30b,30cと嵌合可能な突起を一つだけ設け、カム部材31を周方向に回転させて、当該突起が、カムフォロア部材30に設けられた軸方向高さの異なる複数の凹部30a,30b,30cのいずれかと嵌合すると、その凹部の軸方向高さに応じてカム部材31が段階的に軸方向に移動するようにしてもよい。或いは、カムフォロア部材30の下端に一つの突起を設け、カム部材31の上端に周方向に軸方向高さの異なる複数の凹部を設けて、カムフォロア部材30の突起がカム部材31の凹部のいずれかと嵌合すると、その凹部の軸方向高さに応じてカム部材31が段階的に軸方向に移動するようにしてもよい。
【0113】
また、本実施の形態のフロントフォークFでは、カム装置3が合成樹脂により形成されている。この構成によると、カム部材31を周方向に回転させたときにカム部材31がカムフォロア部材30に擦れても金属粉が発生しない。したがって、フロントフォークF内に収容された液体に混ざった金属粉が、車体側チューブ1と車軸側チューブ2の隙間をシールするオイルシール11やダストシール12を攻撃する恐れがない。
【0114】
また、カム装置3のカム部材31とカムフォロア部材30の両方を合成樹脂で形成すると、カム部材31とカムフォロア部材30の両方又は一方を合成樹脂以外の材料、例えば金属で形成する場合に比べて、フロントフォークFを軽量化できる。
【0115】
また、合成樹脂は金属に比べて摩擦係数が小さいため、カム部材31とカムフォロア部材30を合成樹脂で形成すると、カム装置3の段数の切り替えに必要な力が小さくなるため、ダイヤル5の操作性が向上する。
【0116】
また、合成樹脂は金属に比べて加工しやすいため、カム部材31とカムフォロア部材30の両方を合成樹脂で形成すると、カム部材31とカムフォロア部材30にそれぞれ突起31a,31b,31cと凹部30a,30b,30cを設けるのが容易となる。ただし、カム装置3を構成するカム部材31とカムフォロア部材30の両方又は一方を合成樹脂以外の材料、例えば金属で形成してもよい。
【0117】
また、本実施の形態のフロントフォークFでは、カム部材31に設けられる複数の突起31a,31b,31cは周方向の一方向であるダイヤル5側から見て時計回りで軸方向高さが段階的に低くなるように配置され、カムフォロア部材30の複数の凹部30a,30b,30cは周方向の一方向であるダイヤル5側から見て時計回りで軸方向高さが段階的に高くなるように配置され、シャフト4の外周には、最も軸方向高さが高い第一突起31aが最も軸方向高さが高い第三凹部30cに嵌合した状態のカム部材31がカムフォロア部材30に対して最大限離間するまでの間で、カム部材31の懸架ばねS側端に当接してカム部材31の懸架ばねS側への移動を規制するストッパとしてのストッパリング45が設けられている。
【0118】
この構成によると、カム部材31における最も軸方向高さの高い第一突起31aの嵌合相手が、カムフォロア部材30における最も軸方向高さの高い第三凹部30cから第三凹部30cの先端部30c1を乗り超えて最も軸方向高さの低い第一凹部30aに切り換わることによって、大きな衝撃が生じるのを防止できる。
【0119】
なお、本実施の形態では、カム部材31の懸架ばねS側への移動を規制するストッパを環状のストッパリング45としているが、当該ストッパは、カム部材31の懸架ばねS側への移動を規制できる限りにおいて特に限定されず、例えば、シャフト4の第二取付軸部42から径方向に突出する凸部であってもよい。
【0120】
また、カム部材31の懸架ばねS側への移動を規制するストッパは、シャフト4以外に設けられてもよく、例えば、車体側チューブ1の内周に設けられてもよい。
【0121】
なお、本実施の形態では、ダイヤル5を時計回りに回転操作することで、シャフト4を介してカム部材31を時計回りに回転させて、懸架ばねSのイニシャル荷重を大きくできるようになっているが、ダイヤル5を反時計回りに回転操作することで、懸架ばねSのイニシャル荷重を大きくできるようにしてもよい。その場合、カム部材31の上端に設けられる複数の突起31a,31b,31cをダイヤル5側から見て反時計回りで軸方向高さが段階的に低くなるように配置し、カムフォロア部材30の下端に設けられる複数の凹部30a,30b,30cをダイヤル5側から見て反時計回りで軸方向高さが段階的に高くなるように配置すればよい。
【0122】
また、本実施の形態では、フロントフォークFは、車体側チューブ1内に挿入されつつ車体側チューブ1の車体側開口を閉塞する筒状のキャップ6を備え、シャフト4は、キャップ6を軸方向の移動を規制しつつ相対回転可能に保持しており、カム装置3は、キャップ6の一端に相対回転不能に連結されて車体側チューブ1内に不動に収容されるカムフォロア部材30と、カムフォロア部材30と懸架ばねSとの間に介装されるカム部材31とを有し、キャップ6とカムフォロア部材30とカム部材31の内側にシャフト4が挿通された状態で、シャフト4の外周にカム部材31のシャフト4からの抜けを防止するストッパとしてのストッパリング45が設けられている。
【0123】
この構成によると、シャフト4の外周にキャップ6とカムフォロア部材30とカム部材31とを組付けてアッセンブリ化できる。そして、シャフト4は、キャップ6をシャフト4に対して軸方向の移動が規制された状態で相対回転可能に保持しているため、シャフト4の外周にキャップ6とカムフォロア部材30とカム部材31とを組付けてアッセンブリ化してからキャップ6を車体側チューブ1の車体側開口に装着するだけで、車体側チューブ1の上端にアジャスタAを設けることができる。よって、上記構成によれば、フロントフォークFの組立が容易となる。
【0124】
なお、本実施の形態では、カム部材31のシャフト4からの抜けを防止するストッパを、環状のストッパリング45としているが、当該ストッパは、カム部材31のシャフト4からの抜けを防止できる限りにおいて特に限定されず、例えば、シャフト4の第二取付軸部42から径方向に突出する凸部であってもよい。
【0125】
また、本実施の形態では、ストッパリング45が、カム部材31の懸架ばねS側への最大量以上の移動を規制するストッパと、カム部材31のシャフト4からの抜けを防止するストッパの両方の機能を兼ねているが、どちらか一方の機能しか備えていなくともよい。
【0126】
また、本実施の形態では、シャフト4は、第一取付軸部41の上端と下端の外周にそれぞれ装着されたスナップリング43,44によってキャップ6を挟持して、キャップ6を軸方向の移動を規制しつつ相対回転可能に保持しているが、シャフト4に対してキャップ6を別の手段で軸方向の移動を規制しつつ相対回転可能に保持させてもよい。
【0127】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0128】
1・・・車体側チューブ、2・・・車軸側チューブ、3・・・カム装置、4・・・シャフト、5・・・ダイヤル(操作部)、6・・・キャップ、30・・・カムフォロア部材、30A,30B・・・凹部群、30a,30b,30c・・・凹部、31・・・カム部材、31A,31B・・・突起群、31a,31b,31c・・・突起、45・・・ストッパリング(ストッパ)、S・・・懸架ばね、T・・・チューブ部材(伸縮部材)