(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129721
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】冷蔵倉庫構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20240919BHJP
E04B 5/32 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
E04B5/43 G
E04B5/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039103
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】西本 憲司
(72)【発明者】
【氏名】小平 一浩
(57)【要約】
【課題】室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋と第二部屋との間の断熱性能を確保しつつ、梁下寸法をより短くできる冷蔵倉庫構造を提供する。
【解決手段】第一部屋RAと第二部屋RBとを仕切る間仕切り壁2の下方に位置する第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bとの仕切り位置に段差部4cを設け、第一部屋RAのスラブ4aに対して窪んでいる第二部屋RBのスラブ4bの窪み部に壁断熱材2aの下端部と床断熱材9と押さえ材10とを配置する。段差部4cに設ける第一合成梁3aは、スラブ4aの下面に第一鉄骨梁7aの上面を当接させ、第一鉄骨梁7aの上面に設けたスタッド8をスラブ4aに埋設する。第二部屋RB内に設ける第二合成梁3bは、スラブ4bに第二鉄骨梁7bの上部を埋設し、第二鉄骨梁7bの上部に設けたスタッド8をスラブ4bに埋設する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋と第二部屋とを仕切る間仕切り壁と、鉄筋コンクリートで形成されたスラブに鉄骨梁が一体化された合成梁とを有する冷蔵倉庫構造において、
前記スラブは、前記間仕切り壁の下方に位置する前記第一部屋のスラブと前記第二部屋のスラブとの仕切り位置に段差部を有し、その段差部は前記第二部屋のスラブの上面が前記第一部屋のスラブの上面よりも低く、前記第二部屋のスラブの下面が前記第一部屋のスラブの下面よりも低く設定されていて、
前記第二部屋は、前記第一部屋のスラブに対して下方に窪んでいる前記第二部屋のスラブの窪み部に前記間仕切り壁を構成する壁断熱材の下端部と前記第二部屋のスラブを断熱する床断熱材とが配置され、前記床断熱材の上に押さえ材が配置されていて、
前記段差部に設けられていて前記第一部屋のスラブと第一鉄骨梁とが一体化された第一合成梁は、前記第一部屋のスラブの下面に前記第一鉄骨梁の上面が当接し、前記第一鉄骨梁の上面から上方に突出しているスタッドが前記第一部屋のスラブに埋設されていて、
前記第二部屋のスラブと第二鉄骨梁とが一体化された第二合成梁は、前記第二部屋のスラブに前記第二鉄骨梁の上部が埋設されていて、前記第二鉄骨梁の上部から突出しているスタッドが前記第二部屋のスラブに埋設されていることを特徴とする冷蔵倉庫構造。
【請求項2】
前記第二鉄骨梁がH形鋼であり、そのH形鋼の延在方向に対して交差する方向に延在する前記第二部屋のスラブを構成する鉄筋が、前記H形鋼のフランジの側端よりもウェブ側まで延在していて、そのウェブに対向する鉄筋の先端部がフック状に折り返されている請求項1に記載の冷蔵倉庫構造。
【請求項3】
前記第二部屋のスラブの下面と、前記第二鉄骨梁の下部と、前記第一部屋のスラブの下面と、前記第一鉄骨梁とが断熱材で被覆されている請求項1または2に記載の冷蔵倉庫構造。
【請求項4】
前記第二合成梁は、前記第二部屋のスラブの上面よりも上方に前記第二鉄骨梁の上端が突出していて、前記第二鉄骨梁の上端が前記床断熱材に埋設されている請求項1または2に記載の冷蔵倉庫構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵倉庫構造に関し、さらに詳しくは、室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋と第二部屋との間の断熱性能を確保しつつ、梁下寸法をより短くできる冷蔵倉庫構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリートで形成されたスラブに鉄骨梁が一体化された合成梁を有する床構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この合成梁を有する床構造は、鉄骨梁を採用することで、梁を鉄筋コンクリートで形成する構造に比して、施工現場でのコンクリートの打設量を少なくできるというメリットがある。この床構造を冷蔵倉庫に採用する場合には、室内の設定温度に差を設ける常温室と冷蔵室との間や、室内の設定温度に差を設ける冷蔵室どうしの間の断熱性能を確保するために断熱構造にする必要がある。
【0003】
特許文献1で提案されている床構造を断熱構造にすると、
図6に例示するように、第一部屋RAのスラブ4の上面のレベルLa1と第二部屋RBのスラブ4の上面のレベルLb1が同じ高さとなり、第一部屋RAのスラブ4の下面のレベルLa2と第二部屋RBのスラブ4の下面のレベルLb2が同じ高さとなる。そして、隣り合う第一部屋RAと第二部屋RBとを仕切る間仕切り壁2の下方に位置する合成梁3は、間仕切り壁2の下方に位置するスラブ4の下面(デッキ5の下面)に鉄骨梁7の上面が当接し、その鉄骨梁7の上面から上方に突出したスタッド8がスラブ4に埋設された状態となる。そして、第二部屋RBのスラブ4の上に間仕切り壁2を構成する壁断熱材2aと床断熱材9が配置され、床断熱材9の上に押さえ材10(例えば、押さえコンクリート)が配置された状態となる。
図7に例示するように、第二部屋RB内に設けられる合成梁3も同様に、第二部屋RBのスラブ4の下面に鉄骨梁7の上面が当接し、その鉄骨梁7の上面から上方に突出したスタッド8が第二部屋RBのスラブ4に埋設された状態となる。
【0004】
このように、特許文献1で提案されている床構造を断熱構造にしただけでは、
図6および
図7に例示するように、第二部屋RBの床面のレベルLb5が断熱性能を確保するための床断熱材9と押さえ材10の厚さの分、第一部屋RAのスラブ4の上面のレベルLa1よりも高くなる。また、スラブ4の下方に鉄骨梁7が接合された状態になるので、冷蔵倉庫の階高を設定する際に基準とする最長となる梁下寸法(梁の下端から床面までの高さ)は、第二部屋RB内に設ける合成梁3における梁下寸法となる。そして、その最長となる梁下寸法は、鉄骨梁7の梁せい、スラブ4の厚さ、床断熱材9の厚さ、および押さえ材10の厚さを足した長さとなるため比較的長くなる。冷蔵倉庫の建設コストを低く抑えるには、最長となる梁下寸法を短くして、それぞれの階の階高をできるだけ低く設定することが重要である。そのため、冷蔵倉庫構造として、室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋と第二部屋との間の断熱性能を確保しつつ、梁下寸法をより短くするには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋と第二部屋との間の断熱性能を確保しつつ、梁下寸法をより短くできる冷蔵倉庫構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の冷蔵倉庫構造は、室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋と第二部屋とを仕切る間仕切り壁と、鉄筋コンクリートで形成されたスラブに鉄骨梁が一体化された合成梁とを有する冷蔵倉庫構造において、前記スラブは、前記間仕切り壁の下方に位置する前記第一部屋のスラブと前記第二部屋のスラブとの仕切り位置に段差部を有し、その段差部は前記第二部屋のスラブの上面が前記第一部屋のスラブの上面よりも低く、前記第二部屋のスラブの下面が前記第一部屋のスラブの下面よりも低く設定されていて、前記第二部屋は、前記第一部屋のスラブに対して下方に窪んでいる前記第二部屋のスラブの窪み部に前記間仕切り壁を構成する壁断熱材の下端部と前記第二部屋のスラブを断熱する床断熱材とが配置され、前記床断熱材の上に押さえ材が配置されていて、前記段差部に設けられていて前記第一部屋のスラブと第一鉄骨梁とが一体化された第一合成梁は、前記第一部屋のスラブの下面に前記第一鉄骨梁の上面が当接し、前記第一鉄骨梁の上面から上方に突出しているスタッドが前記第一部屋のスラブに埋設されていて、前記第二部屋のスラブと第二鉄骨梁とが一体化された第二合成梁は、前記第二部屋のスラブに前記第二鉄骨梁の上部が埋設されていて、前記第二鉄骨梁の上部から突出しているスタッドが前記第二部屋のスラブに埋設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋と第二部屋とを仕切る間仕切り壁の下方に位置する第一部屋のスラブと第二部屋のスラブとの仕切り位置に段差部を設けている。そして、第二部屋では、第一部屋のスラブに対して下方に窪んでいる第二部屋のスラブの窪み部に間仕切り壁を構成する壁断熱材の下端部と第二部屋のスラブを断熱する床断熱材とを配置している。これにより、隣り合う第一部屋と第二部屋との間の断熱性能を確保しつつ、第一部屋の床面に対して第二部屋の床面が高くなることを抑制できる。また、段差部に設けられていて第一部屋のスラブと第一鉄骨梁とが一体化された第一合成梁を、第一部屋のスラブの下面に第一鉄骨梁の上面が当接し、第一鉄骨梁の上面から上方に突出したスタッドが第一部屋のスラブに埋設された状態にしている。さらには、第二部屋のスラブと第二鉄骨梁とが一体化された第二合成梁を、第二部屋のスラブに第二鉄骨梁の上部が埋設されていて、第二鉄骨梁の上部から突出したスタッドが第二部屋のスラブに埋設された状態にしている。第一合成梁と第二合成梁をそれぞれ前述した構成にすることで、第一部屋の床面(スラブの上面)から第一部屋のスラブと一体化した第一鉄骨梁の下面までの梁下寸法と、第二部屋の床面(押さえ材の上面)から第二部屋のスラブと一体化した第二鉄骨梁の下面までの梁下寸法を、それぞれ短くすることができる。それ故、室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋と第二部屋との間の断熱性能を確保しつつ、梁下寸法をより短くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態の冷蔵倉庫構造を備えた冷蔵倉庫の一部の躯体を平面視で模式的に例示する説明図である。
【
図2】
図1のA―A断面矢視図であり、第一部屋のスラブと第一鉄骨梁とが一体化された第一合成梁を断面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1のB―B断面矢視図であり、第二部屋のスラブと第二鉄骨梁とが一体化された第二合成梁を断面視で例示する説明図である。
【
図4】本発明に係る別の実施形態の冷蔵倉庫構造における第一部屋のスラブと第一鉄骨梁とが一体化された第一合成梁を断面視で例示する説明図である。
【
図5】本発明に係る別の実施形態の冷蔵倉庫構造における第二部屋のスラブと第二鉄骨梁とが一体化された第二合成梁を断面視で例示する説明図である。
【
図6】第一部屋のスラブと鉄骨梁とが一体化された従来の合成梁を断面視で例示する説明図である。
【
図7】第二部屋のスラブと鉄骨梁とが一体化された従来の合成梁を断面視で例示する説明図である。
【
図8】第一部屋のスラブと鉄骨梁とが一体化された参考形態の合成梁を断面視で例示する説明図である。
【
図9】第二部屋のスラブと鉄骨梁とが一体化された参考形態の合成梁を断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の冷蔵倉庫構造を図に示した実施形態に基づいて説明する。なお、図面は、冷蔵倉庫構造の構成を分かり易く示すために部分的に誇張しており、実際の寸法の比率と一致していない部分もある。
【0011】
図1および
図2に例示するように、本発明の冷蔵倉庫構造1は、室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋RAと第二部屋RBとを仕切る間仕切り壁2と、鉄筋コンクリートで形成されたスラブ4に鉄骨梁7が一体化された合成梁3とを有する。
図1は、冷蔵倉庫構造1を備えた冷蔵倉庫の一部の躯体を平面視で例示している。冷蔵倉庫の躯体は、互いに間隔をあけて立設された複数本の柱12と、柱12どうしの間に架設された鉄骨梁7とを有して構成されている。柱12の構造は特に限定されず、鉄骨構造であってもよいし、鉄筋コンクリート構造や鉄骨鉄筋コンクリート構造であってもよい。
【0012】
図1の斜線部で示している範囲は第一部屋RAであり、その他の範囲は第二部屋RBである。冷蔵倉庫は、冷蔵食品や畜産物、水産物などを低温で貯蔵することを目的とした倉庫である。第一部屋RAと第二部屋RBは冷蔵倉庫内に設けられる室内の設定温度に差がある部屋どうしであり、第一部屋RAと第二部屋RBとの間に設けられる室内の設定温度の差は例えば、10℃以上、より温度差が大きい場合には15℃以上、さらに温度差が大きい場合には20℃以上である。具体的には、第一部屋RAまたは第二部屋RBのいずれか一方が常温室であり、第一部屋RAまたは第二部屋RBのいずれか他方が冷蔵室である場合や、第一部屋RAまたは第二部屋RBのいずれか一方が、室内の設定温度が相対的に高い冷蔵室(例えば、設定温度が-25℃程度)であり、第一部屋RAまたは第二部屋RBのいずれか他方が、室内の設定温度が相対的に低い冷蔵室(例えば、設定温度が-40℃程度)である場合などが例示できる。冷蔵室の室内の設定温度は例えば、-60℃~―5℃に設定される。常温室は荷捌きを行う部屋や、事務所、管理室等として使用される部屋であり、室内の設定温度は例えば、10℃~25℃程度に設定される。
【0013】
図2は、
図1のA―A断面矢視図である。
図2に例示するように、隣り合う第一部屋RAと第二部屋RBは壁断熱材2aを有する間仕切り壁2で仕切られている。図中では、間仕切り壁2の具体的な構造は省略している。間仕切り壁2の構造は、第二部屋RB側に壁断熱材2aを有する構造であれば特に限定されず、様々な構成にすることができる。例えば、壁断熱材2aよりも第二部屋RB側に間仕切り壁2を構成する壁パネルなどを配置した構成にすることもできる。壁断熱材2aとしては、繊維系の断熱材や、発泡プラスチック系の断熱材を例示できる。壁断熱材2aの材質や厚さ寸法は、間仕切り壁2の構造や間仕切り壁2に要求される断熱性能に応じて適宜決定できる。
【0014】
図2に例示するように、本発明では、第一部屋RAと第二部屋RBとを仕切る間仕切り壁2に沿って架設されていて、第一部屋RAのスラブ4(4a)と一体化される鉄骨梁7を第一鉄骨梁7aとする。そして、第一部屋RAと第二部屋RBとの仕切り位置に設けられていて、第一部屋RAのスラブ4aと第一鉄骨梁7aとが一体化された合成梁3を第一合成梁3aとする。
【0015】
図3は、
図1のB―B断面矢視図である。
図3に例示するように、本発明では、第二部屋RB内に配置されていて、第一鉄骨梁7aと直交した方向に延在し、第二部屋RBのスラブ4(4b)と一体化される鉄骨梁7を第二鉄骨梁7bとする。そして、第二部屋RBのスラブ4bと第二鉄骨梁7bとが一体化された合成梁3を第二合成梁3bとする。
【0016】
図2に例示するように、本発明の冷蔵倉庫構造1におけるスラブ4は、鉄筋6とコンクリートで構成された鉄筋コンクリートで形成されていて、間仕切り壁2の下方に位置する第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bとの仕切り位置に段差部4cを有している。この段差部4cは第二部屋RBのスラブ4bの上面のレベルLb1が第一部屋RAのスラブ4aの上面のレベルLa1よりも低く、第二部屋RBのスラブ4bの下面のレベルLb2が第一部屋RAのスラブ4aの下面のレベルLa2よりも低く設定されている。本発明では、このスラブ4における間仕切り壁2の下方に位置する範囲を段差部4cとしている。
【0017】
この実施形態では、第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bをそれぞれ、平板状のデッキ5と鉄筋コンクリートとを有する構成にしている。スラブ4a、4bを構成するデッキ5は、フラットデッキであってもよいし、デッキプレートであってもよい。スラブ4a、4bを構成するデッキ5の形状は平板状に限定されず、例えば、波形状のデッキ5などを用いることもできる。なお、デッキ5は必須の構成ではなく、例えば、デッキ5を有さないスラブ4にすることもできる。以下では、第一部屋RAのスラブ4aを構成するデッキ5を第一デッキ5aとし、第二部屋RBのスラブ4bを構成するデッキ5を第二デッキ5bとする。
【0018】
第一部屋RAのスラブ4aの厚さ寸法と第二部屋RBのスラブ4bの厚さ寸法は、それぞれのスラブ4a、4bに要求される耐力に応じて適宜決定できる。スラブ4a、4bの厚さ寸法は、例えば、100mm~300mm程度である。第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bは同じ厚さ寸法に設定するとよい。この実施形態では、第一部屋RAのスラブ4aの厚さ寸法と第二部屋RBのスラブ4bの厚さ寸法を同じ180mmに設定している。なお、第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bを異なる厚さ寸法に設定することもできる。スラブ4(4a、4b)を構成する鉄筋6の本数や配筋構造は
図2に例示している実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。
【0019】
第二部屋RBは、第一部屋RAのスラブ4aに対して下方に窪んでいる第二部屋RBのスラブ4bの窪み部に、間仕切り壁2を構成する壁断熱材2aの下端部と第二部屋RBのスラブ4bを断熱する床断熱材9とが配置されている。この実施形態では、床断熱材9の上に壁断熱材2aの下端部を配置している。床断熱材9の上には押さえ材10が配置されている。床断熱材9としては、繊維系の断熱材や、発泡プラスチック系の断熱材を例示できる。押さえ材10は、例えば、押さえコンクリートで構成される。押さえ材10は鉄筋を設けた構成にすることもできるし、鉄筋を設けない構成にすることもできる。床断熱材9や押さえ材10の材質や厚さ寸法は、要求される断熱性能に応じて適宜決定できる。床断熱材9の厚さ寸法は例えば、50mm~200mm程度である。押さえ材10の厚さ寸法は例えば、50mm~200mm程度である。この実施形態では、床断熱材9の厚さ寸法を100mmに設定し、押さえ材10の厚さ寸法を100mmに設定している。
【0020】
図2に例示するように、第一鉄骨梁7aは、第一部屋RAと第二部屋RBとを仕切る間仕切り壁2の厚さ方向の中央の下方に配置されている。この実施形態では、第一鉄骨梁7aをH形鋼で構成している。第一鉄骨梁7aは例えば、角型鋼や溝形鋼などの他の鋼材で構成することもできる。第一鉄骨梁7aのサイズは要求される耐力に応じて適宜決定できる。第一鉄骨梁7aの梁せいは、例えば、500mm~1200mm程度である。この実施形態では、第一鉄骨梁7aの梁せいを800mmに設定している。
【0021】
スラブ4の段差部4cに設けられていて第一部屋RAのスラブ4aと第一鉄骨梁7aとが一体化された第一合成梁3aは、第一部屋RAのスラブ4aの下面(第一デッキ5aの下面)に第一鉄骨梁7aの上面が当接している。そして、第一鉄骨梁7aの上面から上方に突出しているスタッド8が第一部屋RAのスラブ4aに埋設されている。第一鉄骨梁7aの上面とスタッド8の下端は接合されている。
【0022】
この第一部屋RAのスラブ4aに埋設されるスタッド8の長手方向の長さは、第一部屋RAのスラブ4aの厚さ寸法よりも短く設定される。この第一鉄骨梁7aに設けるスタッド8の長手方向の長さは、例えば、50mm~200mm程度である。この実施形態では、第一鉄骨梁7aの幅方向の中央の一箇所にスタッド8を設けているが、第一鉄骨梁7aの幅方向の複数箇所にスタッド8を設けることもできる。第一鉄骨梁7aには長手方向(
図2の奥行方向)に間隔をあけて複数のスタッド8が配設されていて、それぞれのスタッド8が第一部屋RAのスラブ4aに埋設されている。
【0023】
この実施形態では、第一鉄骨梁7aの上面(H形鋼の上側のフランジの上面)に設けられているスタッド8の手前まで、第一部屋RAのスラブ4aを構成する第一デッキ5aが延在している。第一鉄骨梁7aの上面に第一デッキ5aの端部が例えば、20mm~50mm程度重なる構成にするとよい。
【0024】
例えば、第一鉄骨梁7aの上面のスタッド8を設ける位置よりも第二部屋RB側まで第一デッキ5aを延在させて配置する構成にすることもできる。この場合には、スタッド8を第一鉄筋梁7aの上面に接合する前に、第一鉄骨梁7aの上面のスタッド8を設ける位置よりも第二部屋RB側まで第一デッキ5aを延在させて配置する。その後、第一デッキ5aのスタッド8を貫通させる位置に溶接棒で第一デッキ5aを溶かして貫通穴を形成し、その貫通穴にスタッド8を挿通させてスタッド8の下端部を第一鉄筋梁7aの上面に溶接で接合する。その後、第一デッキ5aに形成した貫通穴とスタッド8との間のすき間を溶接で塞ぐ。
【0025】
第一鉄骨梁7aの高さ方向の中途の側面にはデッキ受け具13が接合されていて、そのデッキ受け具13上に第二部屋RBのスラブ4bを構成する第二デッキ5bの端部が載置されている。この実施形態では、第一鉄骨梁7aを構成するH形鋼のウェブの第二部屋RB側の側面にデッキ受け具13が接合されている。この実施形態では、第二デッキ5bが第一鉄骨梁7aの側面(H形鋼のウェブの側面)まで延在している。なお、第二デッキ5bは端部がデッキ受け具13上に載置されていればよく、第二デッキ5bは、第一鉄骨梁7aの側面まで延在していなくてもよい。
【0026】
第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bは、鉄筋コンクリートによって一体化されている。第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bとの継ぎ目部分である段差部4cの鉄筋コンクリートには、第一部屋RAのスラブ4aから第二部屋RBのスラブ4bまで延在するZ字状に屈曲した鉄筋6が配筋されている。第一鉄骨梁7aを構成するH形鋼の上側のフランジの第二部屋RB側は、鉄筋コンクリートに埋設された状態になっている。なお、第一部屋RAのスラブ4a、第二部屋RBのスラブ4b、および段差部4cには、第一鉄骨梁7aの長手方向(
図2の奥行方向)に延在する鉄筋6も配筋されているが、それらの鉄筋6は
図2では省略している。
【0027】
第一部屋RAのスラブ4aの上面のレベルLa1と第二部屋RBのスラブ4bの上面のレベルLb1の高低差は、第二部屋RBに設ける床断熱材9の厚さ寸法と押さえ材10の厚さ寸法に応じて適宜設定できるが、例えば、100mm以上400mm以下の範囲内に設定する。第一部屋RAのスラブ4aの上面のレベルLa1と第二部屋RBのスラブ4bの上面のレベルLb1との高低差は、第二部屋RBに設ける床断熱材9の厚さと押さえ材10の厚さを足した合計厚さと同じ寸法にすることが好ましい。この実施形態では、第一部屋RAのスラブ4aの上面のレベルLaと第二部屋RBのスラブ4bの上面のレベルLb1の高低差を、床断熱材9の厚さ(100mm)と押さえ材10の厚さ(100mm)を足した合計厚さと同じ200mmに設定している。即ち、第一部屋RAのスラブ4aに対して窪んだ第二部屋RBのスラブ4bの窪み部に断熱材9と押さえ材10を配置することで、第一部屋RAのスラブ4aの上面のレベルLa1と第二部屋RBの床面(押さえ材10の上面)のレベルLb5を同じ高さに設定している。
【0028】
第一部屋RAのスラブ4aの下面のレベルLa2と第二部屋RBのスラブ4bの下面のレベルLb2の高低差は適宜設定できるが、例えば、100mm以上400mm以下の範囲内で設定する。第一部屋RAのスラブ4aの下面のレベルLa2と第二部屋RBのスラブ4bの下面のレベルLb2との高低差H1は、第一部屋RAのスラブ4aの上面のレベルLa1と第二部屋RBのスラブ4bの上面のレベルLb1との高低差と同じ寸法に設定するとよい。この実施形態では、第一部屋RAのスラブ4aの下面のレベルLa2と第二部屋RBのスラブ4bの下面のレベルLb2との高低差H1を、第一部屋RAのスラブ4aの上面のレベルLa1と第二部屋RBのスラブ4bの上面のレベルLb1との高低差と同じ200mmに設定している。
【0029】
図3に例示するように、第二部屋RBのスラブ4bと第二鉄骨梁7bとが一体化された第二合成梁3bは、第二部屋RBのスラブ4bに第二鉄骨梁7bの上部が埋設されていて、第二鉄骨梁7bの上部から突出しているスタッド8が第二部屋RBのスラブ4bに埋設されている。ここでいう第二鉄骨梁7bの上部は、具体的には第二鉄骨梁7bの高さ方向の中心よりも上方の部位を示している。この実施形態では、第二部屋RBのスラブ4bの上面よりも上方に第二鉄骨梁7bの上端が突出していて、その突出した第二鉄骨梁7bの上端が床断熱材9に埋設されている。床断熱材9の下部には第二鉄骨梁7bの上端が嵌る溝部が設けられている。
【0030】
この実施形態では、第一部屋RAのスラブ4aの厚さ(180mm)と、床断熱材9および押さえ材10の合計厚さ(200mm)との差の分(20mm)、第二鉄骨梁7bの上端を第二部屋RBのスラブ4bの上面よりも上方に突出させた配置にしている。そして、第二部屋RBのスラブ4bの上面のレベルLb1よりも第二鉄骨梁7bの上面のレベルLb3を、第一部屋RAのスラブ4aの厚さと、床断熱材9および押さえ材10の合計厚さとの差の分、高い位置に設定することで、第一鉄骨梁7aの上面のレベルLa3と第二鉄骨梁7bの上面のレベルLb3とを同じ高さに設定している。言い換えると、第一鉄骨梁7aの上面のレベルLa3と第二部屋RBのスラブ4bの下面のレベルLb2との高低差H1と、第二鉄骨梁7bの上面のレベルLb3と第二部屋RBのスラブ4bの下面のレベルLb2との高低差H2とが同じ寸法になるように、第二鉄骨梁7bを配置している。
【0031】
この実施形態では、第二鉄骨梁7bをH形鋼で構成しているが、第二鉄骨梁7bは例えば、角型鋼や溝形鋼などの他の鋼材で構成することもできる。第二鉄骨梁7bのサイズは要求される耐力に応じて適宜決定できる。第二鉄骨梁7bの梁せいは、例えば、500mm~1200mm程度である。この実施形態では、第二鉄骨梁7bの梁せいを800mmとし、第一鉄骨梁7aと第二鉄骨梁7bを同じ梁せいに設定している。即ち、この実施形態では、第一鉄骨梁7aの上面のレベルLa3と第二鉄骨梁7bの上面のレベルLb3を同じ高さに設定し、第一鉄骨梁7aの下面のレベルLa4と第二鉄骨梁7bの下面のレベルLb4も同じ高さに設定している。
【0032】
第二鉄骨梁7bの高さ方向の中途の側面にデッキ受け具13が接合されていて、そのデッキ受け具13上に第二部屋RBのスラブ4bを構成する第二デッキ5bが載置されている。この実施形態では、第二鉄骨梁7bを構成するH形鋼のウェブの両側の側面にそれぞれデッキ受け具13が接合されている。そして、第一部屋RA側のデッキ受け具13に第一部屋RAのスラブ4aと一体化されている第二部屋RBのスラブ4b(第二デッキ5b)が載置されていて、反対側のデッキ受け具13に別の第二部屋RBのスラブ4bが載置されている。
【0033】
この実施形態では、第二鉄骨梁7bの上部の側面から側方に突出しているスタッド8が第二部屋RBのスラブ4bに埋設されている。より具体的には、第二鉄骨梁7bを構成するH形鋼のウェブの上部の側面に、側方に延在するスタッド8が接合されている。例えば、第二鉄骨梁7bを構成するH形鋼の上側のフランジの下面に、下方に延在するスタッド8を接合した構成にすることもできる。この第二鉄骨梁7bに設けるスタッド8の長手方向の長さは、例えば、50mm~200mm程度である。この実施形態では、第二鉄骨梁7bの両側に一箇所ずつスタッド8を設けているが、第二鉄骨梁7bの両側の複数箇所にスタッド8を設けることもできる。第二鉄骨梁7bの長手方向(
図3の奥行方向)に間隔をあけて複数のスタッド8が配設されている。第二鉄骨梁7bの上部から突出しているスタッド8がそれぞれの第二部屋RBのスラブ4bに埋設されていることで、第二鉄骨梁7bの両側に配置されたそれぞれの第二部屋RBのスラブ4bと第二鉄骨梁7bとが一体化された状態になっている。
【0034】
この実施形態では、第二鉄骨梁7bを構成するH形鋼の延在方向に対して交差する方向に延在する第二部屋RBのスラブ4bを構成する鉄筋6が、第二鉄骨梁7bを構成するH形鋼のフランジの側端よりもウェブ側まで延在していて、そのウェブに対向する鉄筋6の先端部がフック状に折り返されている。この実施形態では、鉄筋6の先端部を下側にフック状に折り返しているが、鉄筋6の先端部を他の方向に折り返した構成にすることもできる。なお、第二部屋RBのスラブ4bには、第二鉄骨梁7bの長手方向(
図3の奥行方向)に延在する鉄筋6も配筋されているが、それらの鉄筋6は
図3では省略している。
【0035】
図2および
図3に例示するように、第二部屋RBのスラブ4bの下面、第二鉄骨梁7bの下部、第一部屋RAのスラブ4aの下面、および第一鉄骨梁7aは、断熱材11で被覆されている。この実施形態では、前述したそれぞれの部位に断熱素材を吹き付けることで、断熱材11を形成している。断熱材11としては、繊維系の断熱材や、発泡プラスチック系の断熱材を例示できる。断熱材11の材質や厚さは、要求される断熱性能に応じて適宜決定できる。断熱材11は、吹き付け断熱に限らず、例えば、前述したそれぞれの部位に断熱材11を貼設することもできる。また、例えば、工場などでそれぞれの部材に断熱材11を予め付設しておくこともできる。
【0036】
以下に、上述した冷蔵倉庫構造1を構築する手順の一例を説明する。
【0037】
図2および
図3に例示するように、冷蔵倉庫を構成する柱12に対して、第一鉄骨梁7aと第二鉄骨梁7bをそれぞれ架設する。この実施形態では、同じ梁せいの第一鉄骨梁7aと第二鉄骨梁7bを同じ高さに配設している。第一鉄骨梁7aと第二鉄骨梁7にそれぞれデッキ受け具13を接合する。第一鉄骨梁7aと第二鉄骨梁7bにそれぞれスタッド8を接合する。第一鉄骨梁7aの上面上に第一部屋RAのスラブ4aを構成する第一デッキ5aを敷設する。第一鉄骨梁7aに設けたデッキ受け具13と第二鉄骨梁7bに設けたデッキ受け具13の上に第二部屋RBのスラブ4bを構成する第二デッキ5bを敷設する。そして、段差部4cを形成する型枠を設置する。
【0038】
デッキ受け具13は、鉄骨梁7a、7bを柱12に接合した後に設置することもできるし、鉄骨梁7a、7bを柱12に接合する前に予め付設しておくこともできる。スタッド8は、鉄骨梁7a、7bを柱12に接合した後に鉄骨梁7a、7bに接合することもできるし、それぞれのデッキ5a、5bを設置した後に鉄骨梁7a、7bに接合することもできる。鉄骨梁7a、7bを柱12に接合する前に鉄骨梁7a、7bに予めスタッド8を付設しておくこともできる。
【0039】
次いで、第一デッキ5aの上に第一部屋RAのスラブ4aを構成する鉄筋6を配筋し、第二デッキ5bの上に第二部屋RBのスラブ4bを構成する鉄筋6を配筋する。また、第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bとの継ぎ目部分となる段差部4cを構成する鉄筋6を配筋する。第二鉄骨梁7bの側面(H形鋼のウェブの側面)に対向する鉄筋6の先端部はフック状に折り返した形状にする。鉄筋6の先端部は工場などで予めフック状に形成しておくこともできるし、施工現場で鉄筋6の先端部を曲げてフック状に形成することもできる。
【0040】
次いで、第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bを形成するコンクリートを打設する。そして、第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bを形成するコンクリートが硬化した後に型枠を取り外す。次いで、第一部屋RAと第二部屋RBとを仕切る間仕切り壁2を立設する。この際、第一部屋RAのスラブ4aに対して下方に窪んでいる第二部屋RBのスラブ4bの窪み部に間仕切り壁2を構成する壁断熱材2aの下端部と第二部屋RBのスラブ4bを断熱する床断熱材9を配置する。そして、床断熱材9の上に押さえ材10を配置する。この実施形態では、床断熱材9の上に押さえ材10として押さえコンクリートを打設して硬化させる。
【0041】
第二部屋RBのスラブ4bの下面、第二鉄骨梁7bの下部、第一部屋RAのスラブ4aの下面、および第一鉄骨梁7aをそれぞれ断熱材11で被覆する。この実施形態では、前述したそれぞれの部位に断熱素材を吹き付けることで、断熱材11を形成する。断熱材11を形成する作業は、第一デッキ5aと第二デッキ5bを敷設した後であれば、随時実施することができる。以上の作業により、1階分の施工が完了する。各階ごとに前述した施工を繰り返すことで、冷蔵倉庫を構築する。
【0042】
以上のように、本発明によれば、室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋RAと第二部屋RBとを仕切る間仕切り壁2の下方に位置する第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bとの仕切り位置に段差部4cを設けている。そして、第二部屋RBでは、第一部屋RAのスラブ4aに対して下方に窪んでいる第二部屋RBのスラブ4bの窪み部に間仕切り壁2を構成する壁断熱材2aの下端部と第二部屋RBのスラブ4bを断熱する床断熱材9とを配置している。これにより、隣り合う第一部屋RAと第二部屋RBとの間の断熱性能を確保しつつ、第一部屋RAの床面に対して第二部屋RBの床面が高くなることを抑制できる。
【0043】
また、段差部4cに設けられていて第一部屋RAのスラブ4aと第一鉄骨梁7aとが一体化された第一合成梁3aを、第一部屋RAのスラブ4bの下面に第一鉄骨梁7aの上面が当接し、第一鉄骨梁7aの上面から上方に突出したスタッド8が第一部屋RAのスラブ4aに埋設された構成にしている。さらには、第二部屋RBのスラブ4bと第二鉄骨梁7bとが一体化された第二合成梁3bを、第二部屋RBのスラブ4bに第二鉄骨梁7bの上部が埋設されていて、第二鉄骨梁7bの上部から突出したスタッド8が第二部屋RBのスラブ4bに埋設された構成にしている。
【0044】
第一合成梁3aと第二合成梁3bをそれぞれ前述した構成にすることで、第一部屋RAの床面(スラブ4aの上面)から第一部屋RAのスラブ4aと一体化した第一鉄骨梁7aの下面までの梁下寸法と、第二部屋RBの床面(押さえ材10の上面)から第二部屋RBのスラブ4bと一体化した第二鉄骨梁7bの下面までの梁下寸法を、それぞれ短くすることができる。それ故、室内の設定温度に差を設ける隣り合う第一部屋RAと第二部屋RBとの間の断熱性能を確保しつつ、梁下寸法をより短くすることが可能になる。梁下寸法をより短くできることで、階高をより低く設定することが可能になり、冷蔵倉庫の建設コストの削減を図ることができる。
【0045】
より詳しく説明すると、例えば、
図8および
図9に例示する本発明とは異なる参考形態のように、第一部屋RAのスラブ4aと第二部屋RBのスラブ4bとの仕切り位置に段差部4cを設けた場合にも、従来のように、第二部屋RBのスラブ4bに一体化させる第二鉄骨梁7bを、第二鉄骨梁7bの上面が第二部屋RBのスラブ4bの下面に当接するように配置した場合には、第二部屋RB内に設ける第二合成梁3bの梁下寸法は、第二鉄骨梁7bの梁せい、第二部屋RBのスラブ4bの厚さ、床断熱材9の厚さ、および押さえ材10の厚さを足した長さとなる。そのため、スラブ4に段差部4cを設けるだけでは、第二部屋RB内に設ける第二合成梁3bの梁下寸法は比較的長くなり、冷蔵倉庫の階高を設定する際に基準とする最長となる梁下寸法を短くすることはできない。それに対して本発明では、スラブ4に段差部4cを設けるとともに、第二部屋RBのスラブ4bに第二鉄骨梁7bの上部を埋設させていることで、第二部屋RB内に設ける第二合成梁3bの梁下寸法をより短くすることが可能になる。
【0046】
また、
図8および
図9に例示する参考形態のように、従来のように、第二鉄骨梁7bを、第二鉄骨梁7bの上面が第二部屋RBのスラブ4bの下面に当接するように配置すると、第二鉄骨梁7bの下面のレベルLb4と第一鉄骨梁7aの下面のレベルLa4を合わせる場合に、第一鉄骨梁7aの上にCT形鋼20などの梁せいを継ぎ足す部材を付設する、或いは、第一鉄骨梁7a自体のサイズを第二鉄骨梁7bよりも大きくする必要がある。それに対して本発明では、スラブ4に段差部4cを設けるとともに、第二部屋RBのスラブ4bに第二鉄骨梁7bの上部を埋設させていることで、第一鉄骨梁7aの上にCT形鋼20などの梁せいを継ぎ足す部材を付設する必要性や、第一鉄骨梁7a自体のサイズを第二鉄骨梁7bよりも大きくする必要性がなくなる。それ故、本発明の冷蔵倉庫構造1は、柱梁仕口内の取合い(納まり)や鉄骨梁7a、7bどうしの取合いも比較的簡易になるというメリットもある。
【0047】
図1~
図3に例示する実施形態では、第二鉄骨梁7bがH形鋼であり、そのH形鋼の延在方向に対して交差する方向に延在する第二部屋RBのスラブ4bを構成する鉄筋6が、H形鋼のフランジの側端よりもウェブ側まで延在していて、そのウェブに対向する鉄筋6の先端部がフック状に折り返されている構成にしている。このような構成にすると、第二鉄骨梁7bと、第二鉄骨梁7bの側面に対向する鉄筋6との取合いを簡易にできる。鉄筋6の先端部をフック状に折り返していることで、第二部屋RBのスラブ4bを構成する鉄筋6とコンクリートとの一体性を高めるにも有利になる。
【0048】
第二部屋RBのスラブ4bの下面と、第二鉄骨梁7bの下部と、第一部屋RAのスラブ4aの下面と、第一鉄骨梁7aとが断熱材11で被覆されている構成にすると、第一部屋RAと第二部屋RBのそれぞれの断熱性を高めるには有利になる。第一部屋RAと第二部屋RBのそれぞれの断熱性を高めることで、冷蔵倉庫の省エネルギー性能を向上させるにも有利になる。また、前述したそれぞれの部位を断熱材11で被覆せずに露出した状態にすると、第一部屋RAと第二部屋RBの室内温度の差の影響でスラブ4の下面や鉄骨梁7に結露が発生する恐れがあるが、前述したそれぞれの部位を断熱材11で被覆することで、結露が発生するリスクを大幅に低減できる。
【0049】
図1~
図3に例示する実施形態のように、第二部屋RB内に設ける第二合成梁3bを、第二部屋RBのスラブ4bの上面よりも上方に第二鉄骨梁7bの上端が突出していて、第二鉄骨梁7bの上端が床断熱材9に埋設されている構成にすると、第二合成梁3bの梁下寸法を短くするにはより有利になる。なお、本発明では、少なくとも第二部屋RBのスラブ4bに第二鉄骨梁7bの上部が埋設されていればよく、例えば、第二鉄骨梁7bの上端を第二部屋RBのスラブ4bの上面と同じ高さに配置することもできる。例えば、第二鉄骨梁7bの上端を第二部屋RBのスラブ4bの中途位置に配置することもできる。
【0050】
図4および
図5に本発明の冷蔵倉庫構造1の別の実施形態を例示する。
【0051】
図4および
図5に例示するように、この実施形態では、第一鉄骨梁7aと第二鉄骨梁7bを角型鋼で構成している。また、第一デッキ5aと第二デッキ5bを波形状のデッキで構成している。また、壁断熱材2aよりも第二部屋RB側に間仕切り壁2を構成する壁パネル2bを配置している。その他の構成は
図1~
図3に例示する実施形態と同じである。
【0052】
図4に例示するように、この実施形態では、第一鉄骨梁7aを構成する角型鋼の上面にスタッド8を接合していて、角型鋼の側面にデッキ受け具13を接合している。また、
図5に例示するように、第二鉄骨梁7bを構成する角型鋼の側面にスタッド8を接合し、角型鋼の側面にデッキ受け具13を接合している。
【0053】
この実施形態のように、第一鉄骨梁7aと第二鉄骨梁7bを角型鋼などのH形鋼以外の鋼材で構成した場合や、第一デッキ5aと第二デッキ5bを波形状のデッキで構成した場合にも
図1~
図3で例示した実施形態の冷蔵倉庫構造1と同様の効果を奏することができる。この実施形態のように、第一デッキ5aや第二デッキ5bを波形状のデッキで構成すると、第一デッキ5aや第二デッキ5bを平板状のデッキで構成する場合よりも、第一部屋RAのスラブ4aや第二部屋RBのスラブ4bを構成する配筋を少なくできるので、作業工数を減らすには有利になる。
【0054】
本発明では、例えば、第一デッキ5aや第二デッキ5bとして鉄筋トラス付きのデッキを用いることもできる。この場合には、鉄筋トラス付きの第一デッキ5aに予め設けられているトラス状に組まれた鉄筋6を、第一部屋RAのスラブ4aを構成する鉄筋6として利用する。同様に、鉄筋トラス付きの第二デッキ5bに予め設けられているトラス状に組まれた鉄筋6を、第二部屋RBのスラブ4bを構成する鉄筋6として利用する。第一デッキ5aや第二デッキ5bを鉄筋トラス付きのデッキで構成すると、施工現場での鉄筋6の配筋作業に要する時間を削減するには有利になり、施工時間や作業者の労力を低減するには有利になる。
【符号の説明】
【0055】
1 冷蔵倉庫構造
2 間仕切り壁
2a 壁断熱材
2b 壁パネル
3 合成梁
3a 第一合成梁
3b 第二合成梁
4 スラブ
4a 第一部屋のスラブ
4b 第二部屋のスラブ
4c 段差部
5 デッキ
5a 第一デッキ
5b 第二デッキ
6 鉄筋
7 鉄骨梁
7a 第一鉄骨梁
7b 第二鉄骨梁
8 スタッド
9 床断熱材
10 押さえ材
11 断熱材
12 柱
13 デッキ受け具
20 CT形鋼
RA 第一部屋
RB 第二部屋
La1 第一部屋のスラブの上面のレベル
La2 第一部屋のスラブの下面のレベル
La3 第一部屋のスラブに一体化された第一鉄骨梁の上面のレベル
La4 第一部屋のスラブに一体化された第一鉄骨梁の下面のレベル
Lb1 第二部屋のスラブの上面のレベル
Lb2 第二部屋のスラブの下面のレベル
Lb3 第二部屋のスラブに一体化された第二鉄骨梁の上面のレベル
Lb4 第二部屋のスラブに一体化された第二鉄骨梁の下面のレベル
Lb5 第二部屋の床面のレベル