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特開2024-129744固体電解質、二次電池及びキャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129744
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】固体電解質、二次電池及びキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20240919BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20240919BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240919BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20240919BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20240919BHJP
   H01M 12/08 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01B1/10
H01M10/0562
H01M10/054
H01G11/56
H01M12/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039141
(22)【出願日】2023-03-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「コンポジットフィルム型分子結晶性電解質の開発と全固体電池への応用」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守谷 誠
【テーマコード(参考)】
5E078
5G301
5H029
5H032
【Fターム(参考)】
5E078AA03
5E078BA13
5E078DA11
5G301CA05
5G301CA30
5G301CD01
5H029AJ02
5H029AJ06
5H029AM11
5H029HJ02
5H029HJ11
5H032AA02
5H032AS02
5H032AS12
5H032CC16
5H032EE20
(57)【要約】
【課題】イオン伝導性に優れる固体電解質を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される分子結晶を含む固体電解質。
[Mg・・・(1)
(一般式(1)中、aは、1以上の整数を表し、bは、1以上の整数を表し、cは、1以上の整数を表し、nは、1以上の整数を表す。但し、一般式(1)において、a=2bを満たす。Xは、それぞれで独立に1価のアニオンを表し、Yは、それぞれ独立に複素環を含有する複素環式化合物を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される分子結晶を含む固体電解質。
[Mg・・・(1)
(一般式(1)中、aは、1以上の整数を表し、bは、1以上の整数を表し、cは、1以上の整数を表し、nは、1以上の整数を表す。但し、一般式(1)において、a=2bを満たす。Xは、それぞれで独立に1価のアニオンを表し、Yは、それぞれ独立に複素環を含有する複素環式化合物を表す。)
【請求項2】
Xは、それぞれ独立に、N(SOF) 、N(SOCF 、SCN、N(SO 、N(SOCFCF 、N(SOCF 、N(CN) 、BF -、PF -、又はハロゲン化物イオンである請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記複素環式化合物は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選択される少なくとも1つの原子を複素環中に含む化合物である請求項1に記載の固体電解質。
【請求項4】
Xは、N(SOCF である請求項1に記載の固体電解質。
【請求項5】
前記複素環式化合物は、複素環中に窒素原子を含む含窒素複素環式化合物である請求項1に記載の固体電解質。
【請求項6】
前記含窒素複素環式化合物は、ピリジン化合物、キノリン化合物、イソキノリン化合物、カルバゾール化合物、イミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ピラゾール化合物、インダゾール化合物、ピラジン化合物、ピリミジン化合物、ピリダジン化合物、キノキサリン化合物、キナゾリン化合物、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、プリン化合物、ベンゾチアゾール化合物及びベンゾオキサゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む請求項5に記載の固体電解質。
【請求項7】
前記含窒素複素環式化合物が、イミダゾール化合物を含み、前記イミダゾール化合物は1位の窒素原子にハロゲン原子又は炭素原子数1~20の有機基が結合したイミダゾール誘導体である請求項5に記載の固体電解質。
【請求項8】
二次電池又はキャパシタの固体電解質として用いられる請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の固体電解質を備える二次電池。
【請求項10】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の固体電解質を備えるキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質、二次電池及びキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン伝導性を有する二次電池の開発ではリチウムイオンが先行するが、リチウム資源と比較してマグネシウム資源は地表近くに豊富に存在する点、及び二価のイオンであり、充放電容量が大きくできる点から、マグネシウムイオンも候補物質となりうる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリマーゲル電解質を含むマグネシウムイオン二次電池が提案されている。特許文献1に記載のマグネシウムイオン二次電池では、電解液の液漏れ防止のために、ポリマーを電解液で膨潤させてゲル化した電解質であるポリマーゲル電解質が用いられている。
【0004】
電池の軽量化、電池構造の簡略化等の点から液体である電解液を使用せずに、固体電解質をマグネシウムイオン二次電池等に適用する試みも検討されている。固体電解質としては、セラミックス、ガラス、ポリマー等が有力候補である。例えば、特許文献2には、ポリエチレンカーボネートと電解質塩としてのマグネシウムの有機塩とをそれぞれ所定量含むポリエチレンカーボネート系固体電解質を備えるマグネシウムイオン二次電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-030959号公報
【特許文献2】特開2016-126928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2にて提案されているように、マグネシウムイオン二次電池においても電解液を使用せずに、固体電解質を電池に適用することが望まれている。しかしながら、二価のマグネシウムイオンは、一価のリチウムイオンに比べて充放電容量を大きくできる一方で、固体電解質中のアニオンとの静電相互作用が大きく、固体電解質中で拡散しにくい。そのため、リチウムイオン伝導性の固体電解質に比べてマグネシウムイオン伝導性の固体電解質は、イオン伝導性が低いという問題がある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、イオン伝導性に優れる固体電解質、並びにこれを含む二次電池及びキャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記一般式(1)で表される分子結晶を含む固体電解質。
[Mg・・・(1)
(一般式(1)中、aは、1以上の整数を表し、bは、1以上の整数を表し、cは、1以上の整数を表し、nは、1以上の整数を表す。但し、一般式(1)において、a=2bを満たす。Xは、それぞれで独立に1価のアニオンを表し、Yは、それぞれ独立に複素環を含有する複素環式化合物を表す。)
<2> Xは、それぞれ独立に、N(SOF) 、N(SOCF 、SCN、N(SO 、N(SOCFCF 、N(SOCF 、N(CN) 、BF -、PF -、又はハロゲン化物イオンである<1>に記載の固体電解質。
<3> 前記複素環式化合物は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選択される少なくとも1つの原子を複素環中に含む化合物である<1>に記載の固体電解質。
<4> Xは、N(SOCF である<1>に記載の固体電解質。
<5> 前記複素環式化合物は、複素環中に窒素原子を含む含窒素複素環式化合物である<1>に記載の固体電解質。
<6> 前記含窒素複素環式化合物は、ピリジン化合物、キノリン化合物、イソキノリン化合物、カルバゾール化合物、イミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ピラゾール化合物、インダゾール化合物、ピラジン化合物、ピリミジン化合物、ピリダジン化合物、キノキサリン化合物、キナゾリン化合物、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、プリン化合物、ベンゾチアゾール化合物及びベンゾオキサゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む<5>に記載の固体電解質。
<7> 前記含窒素複素環式化合物が、イミダゾール化合物を含み、前記イミダゾール化合物は1位の窒素原子にハロゲン原子又は炭素原子数1~20の有機基が結合したイミダゾール誘導体である<5>に記載の固体電解質。
<8> 二次電池又はキャパシタの固体電解質として用いられる<1>~<7>のいずれか1つに記載の固体電解質。
<9> <1>~<7>のいずれか1つに記載の固体電解質を備える二次電池。
<10> <1>~<7>のいずれか1つに記載の固体電解質を備えるキャパシタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一形態によれば、イオン伝導性に優れる固体電解質、並びにこれを含む二次電池及びキャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の固体電解質におけるイオン伝導度の測定結果である。
図2】実施例1の固体電解質におけるDSC測定の結果である。
図3】実施例1の固体電解質(イオン伝導度測定前の固体電解質)におけるXRD測定の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示について詳細に説明する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
【0012】
[固体電解質]
本開示の固体電解質は、下記一般式(1)で表される分子結晶を含む。
[Mg・・・(1)
(一般式(1)中、aは、1以上の整数を表し、bは、1以上の整数を表し、cは、1以上の整数を表し、nは、1以上の整数を表す。但し、一般式(1)において、a=2bを満たす。Xは、それぞれで独立に1価のアニオンを表し、Yは、それぞれ独立に複素環を含有する複素環式化合物を表す。)
【0013】
本開示の固体電解質は、イオン伝導性に優れる。さらに、本開示の固体電解質では、Yで表される配位子として複素環式化合物を用いており、分子結晶の毒性も少ない。
【0014】
さらに、本開示の固体電解質では、リチウムイオンではなくマグネシウムイオンが含まれているため、二次電池、キャパシタ等に適用した際に充放電容量を高めることができる。また、マグネシウムは、地殻存在モル比がリチウムの300倍以上であるため、本開示の固体電解質は、リチウムイオンを含む固体電解質と比較して安価で作製し得る。
【0015】
また、リチウムイオン二次電池において、高い体積容量(mAh/cm)を得るためには、リチウムを負極活物質とすることが望ましい。しかし、リチウムを負極活物質とした場合、充放電によりリチウムが樹枝状結晶(デンドライト)を形成し、デンドライトが正極と接触して内部短絡を引き起こす可能性がある。そのため、デンドライトを抑制するため、現状では体積容量の低いグラファイト(777mAh/cm)を使用している。一方、マグネシウムイオン二次電池では、マグネシウムを負極活物質としても充放電によりデンドライトを形成しないため、リチウムイオン二次電池のグラファイトに比べ、約5倍(3832mAh/cm)の体積容量を確保できる。
【0016】
本開示の固体電解質は、例えば、二次電池、キャパシタ、空気電池の固体電解質として用いられてもよく、好ましくは二次電池又はキャパシタの固体電解質として用いられてもよい。
【0017】
(分子結晶)
本開示の固体電解質は、前述の一般式(1)で表される分子結晶を含む。分子結晶は、多数の分子が分子間相互作用で規則的に配列している結晶をいう。例えば、アニオン種がカチオン種から遊離していてもよく、遊離していなくてもよい。例えば、分子結晶は、[Mg](カチオン種に相当)及び[X](カチオン種から遊離したアニオン種に相当)が分子間の相互作用で結びついて形成している結晶であってもよい。
【0018】
一般式(1)中のXは、それぞれ独立に1価のアニオンである。1価のアニオンは特に限定されず、例えば、N(SOF) 、N(SOCF 、SCN、N(SO 、N(SOCFCF 、N(SOCF 、N(CN) 、BF -、PF -、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。中でも、固体電解質のイオン伝導性により優れる点から、N(SOCF が好ましい。
【0019】
一般式(1)中のYは、複素環を含有する複素環式化合物である。複素環式化合物は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選択される少なくとも1つの原子を複素環中に含む化合物であることが好ましく、複素環中に窒素原子を含む含窒素複素環式化合物であることがより好ましい。
【0020】
含窒素複素環式化合物は、複素環中に1つ以上の窒素原子を含む化合物であればよく、例えば、複素環中に2つ以上の窒素原子を含んでいてもよく、複素環中に1つ以上の窒素原子と、1つ以上の硫黄原子及び/又は1つ以上の酸素原子とを含んでいてもよい。
例えば、含窒素複素環式化合物は、ピリジン化合物、キノリン化合物、イソキノリン化合物、カルバゾール化合物、イミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ピラゾール化合物、インダゾール化合物、ピラジン化合物、ピリミジン化合物、ピリダジン化合物、キノキサリン化合物、キナゾリン化合物、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、プリン化合物、ベンゾチアゾール化合物及びベンゾオキサゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。例えば、一般式(1)中のYは、イミダゾール化合物であることが好ましい。
【0021】
含窒素複素環式化合物の複素環を構成する窒素原子に結合する原子又は置換基(当該原子及び置換基は複素環を構成しない)としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の有機基等が挙げられる。含窒素複素環式化合物の分解抑制、固体電解質のイオン伝導度の観点から、含窒素複素環式化合物の複素環を構成する窒素原子に結合する原子又は置換基は、ハロゲン原子又は炭素原子数1~20の有機基であってもよく、炭素原子数1~10の有機基であってもよい。
例えば、含窒素複素環式化合物の分解抑制、固体電解質のイオン伝導度の観点から、イミダゾール化合物は、1位の窒素原子にハロゲン原子又は炭素原子数1~20の有機基が結合したイミダゾール誘導体であってもよく、1位の窒素原子に炭素原子数1~10の有機基が結合したイミダゾール誘導体であってもよい。同様の観点から、カルバゾール化合物は、9位の窒素原子にハロゲン原子又は炭素原子数1~20の有機基が結合したイミダゾール誘導体であってもよく、9位の窒素原子に炭素原子数1~10の有機基が結合したイミダゾール誘導体であってもよい。
【0022】
本開示において、炭素原子数1~20の有機基としては、例えば、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基、アリール基及びこれらの内の2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
イミダゾール化合物としては、以下の一般式(2)で表される化合物であってもよい。
【0024】
【化1】
【0025】
、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~20の有機基を表す。R及びRは、互いに結合して環構造を形成してもよい。
は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基又はベンジル基であってもよく、メチル基又はエチル基であってもよい。
は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基又はアミノ基であってもよく、メチル基又はエチル基であってもよい。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基又はアミノ基であってもよく、水素原子又はメチル基であってもよい。
【0026】
イミダゾール化合物としては、特に限定されず、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール又は2-エチル-4-メチルイミダゾール、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-メチルベンゾイミダゾール等が挙げられる。ベンゾイミダゾール化合物としては、特に限定されず、ベンゾイミダゾール、2-メチルベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0027】
トリアゾール化合物としては、特に限定されず、1H-トリアゾール、5-メチル-1H-トリアゾール、5-エチル-1H-トリアゾール、4,5-ジメチル-1H-トリアゾール、5-フェニル-1H-トリアゾール、4-t-ブチル-5-フェニル-1H-トリアゾール、5-ヒドロキシフェニル-1H-トリアゾール、フェニルトリアゾール、p-エトキシフェニルトリアゾール、5-ベンジル-1H-トリアゾール、1,5-ジメチルトリアゾール、4,5-ジエチル-1H-トリアゾール等が挙げられる。ベンゾトリアゾール化合物としては、特に限定されず、例えば、1H-ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0028】
ピリジン化合物としては、特に限定されず、例えば、ピリジン、及び2-メチルピリジン、2,3-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、ジ-tert-ブチル-4-メチルピリジン等が挙げられる。
【0029】
テトラゾール化合物としては、特に限定されず、例えば、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-メチル-1H-テトラゾール等が挙げられる。
【0030】
一般式(1)のYで表される配位子の数は、Mg1つあたりに対して1つ以上であればよく、1つ~10つであることが好ましい。
【0031】
一般式(1)中にて、aは、1又は2が好ましく、bは、2又は4が好ましい。一般式(1)中にて、cは、1~10が好ましい。また、nは、1以上の整数であれば特に限定されない。
【0032】
本開示の固体電解質は、一般式(1)で表される分子結晶以外の分子結晶を含んでいてもよい。イオン伝導性により優れる点から、本開示の固体電解質における一般式(1)で表される分子結晶の含有量は、分子結晶全量に対して50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
本開示の固体電解質は、分子結晶以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては特に限定されず、ゲル電解質、ポリエチレンオキシド等のポリマー電解質、マグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等の有機電解質塩、無機電解質塩、セラミック電解質、無機フィラー、バインダー、導電助剤、正極活物質、負極活物質などが挙げられる。
【0034】
本開示の固体電解質では、分子結晶の含有量は、例えば、15質量%~99質量%であることが好ましく、70質量%~95質量%であることがより好ましく、80質量%~95質量%であることがさらに好ましい。分子結晶の含有量が15質量%以上であることにより、固体電解質の柔軟性に優れる傾向にある。
【0035】
[二次電池]
本開示の二次電池は、前述の本開示の固体電解質を備える。本開示の二次電池は、固体電解質の柔軟性及びイオン伝導性に優れるため、出力特性、低温での作動特性等に優れる傾向にある。
【0036】
本開示の二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた前述の固体電解質と、を備えることが好ましい。
【0037】
正極は、正極集電体及び正極活物質を含む正極合剤層を備える。正極は、例えば、正極活物質を含む組成物を用いて正極集電体上に正極合剤層を形成することで作製できる。正極活物質を含む組成物は、正極活物質の他に有機結着剤、溶剤、導電助剤等を混合したものであってもよい。正極集電体、正極活物質、有機結着剤、溶剤、導電助剤等としては、従来公知の正極を製造する際に用いる材料を適用できる。
【0038】
負極は、負極集電体及び負極活物質を含む負極合剤層を備える。負極は、例えば、負極活物質を含む組成物を用いて負極集電体上に負極合剤層を形成することで作製できる。負極活物質を含む組成物は、負極活物質の他に有機結着剤、溶剤、導電助剤等を混合したものであってもよい。負極集電体、負極活物質、有機結着剤、溶剤、導電助剤等としては、従来公知の負極を製造する際に用いる材料を適用できる。
【0039】
[キャパシタ]
本開示のキャパシタは、前述の本開示の固体電解質を備える。本開示のキャパシタは、固体電解質の柔軟性及びイオン伝導性に優れるため、出力特性、低温での作動特性等に優れる傾向にある。
【0040】
本開示のキャパシタは、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた前述の固体電解質と、を備えることが好ましい。正極は、正極集電体及び正極活物質層を含み、負極は、負極集電体及び負極活物質層を含む。キャパシタにおける正極活物質及び負極活物質としては、例えば、活性炭等が挙げられる。
【0041】
本開示の二次電池又はキャパシタは、正極と、固体電解質と、負極とを備える構成が複数積層された直列積層構造を有していてもよい。本開示の二次電池又はキャパシタが直列積層構造を有する場合、電解液を用いた二次電池又はキャパシタを直列構造にする場合と比較して容器等を簡素化することができ、システムの質量低減及び体積低減が可能となる。
【0042】
本開示の固体電解質の用途としては、特に限定されず、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、航空機、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵電源、医療機器等が挙げられる。
【実施例0043】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
グローブボックスでMg(TFSA)(0.5510g、0.9426mmol)と1,2-ジメチルイミダゾール(Melm、0.4525g、4.7072mmol)とを秤量し、混合した。次に、オイルバスを用いて110℃で約3時間加熱した。その後、混合物を室温まで放冷し、5℃の冷蔵庫に2日間保存した。これにより、分子結晶である[Mg(Melm)][TFSA]を含む固体電解質を作製した。得られた分子結晶については、結晶構造解析により単核構造を取っていることを確認した。
【0045】
(イオン伝導度の測定)
実施例1にて得られた固体電解質を円盤状に加圧成型した測定用試料を用い、密閉式セル中において金電極を用いた交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定した。また、イオン伝導度の測定は、測定用試料を分子結晶の融点以下の温度域で昇温しながら測定した。結果を図1に示す。
【0046】
(DSC測定)
示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて実施例1にて得られた固体電解質の昇温過程での結晶状態を確認した。測定試料6.5mg、測定雰囲気:窒素、測定範囲:-120℃~150℃、昇温速度:10℃/分の条件で上記到達温度まで昇温し、昇温過程における結晶溶融ピークの有無を確認した。図2に示すように、90℃付近で結晶溶融ピークが確認され、90℃以下にて結晶状態が維持されていることが確認された。
【0047】
(イオン伝導度測定前後のXRD測定)
実施例1にて得られた固体電解質(イオン伝導度測定前の固体電解質)の結晶構造を、X線回折(XRD)測定により確認した。結果を図3に示す。図3に示すように、鋭い回折線が確認でき、得られた固体電解質は結晶性固体であることが推測される。
さらに、イオン伝導度測定後の固体電解質の結晶構造もX線回折測定により確認した。イオン伝導度測定前と同様の回折パターンが確認でき、イオン伝導度測定前後で結晶構造が大きく変化していないことが分かった、
【0048】
[比較例1]
文献“A novel inorganic solid state ion conductor for rechargeable Mg batteries”(Higashi,S.et al., Chem. Commun., 2014,50, 1320-1322)に記載の無機固体電解質であるMg(BH)(NH)を比較例1の固体電解質とした。
前述の文献では、比較例1の固体電解質について150℃でのイオン伝導度は10-6Scm-1である。
【0049】
比較例1では、イオン伝導性の発現に150℃程度の高温が必要であった。一方、図1に示すように、実施例1の固体電解質では、25℃でのイオン伝導度は約1×10-4S/cmであり、低温であってもイオン伝導性が優れていた。
また、実施例1の固体電解質は、セラミック電解質と異なり適度な柔軟性を有するため、二次電池、キャパシタ等の作製が容易である。
図1
図2
図3