(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129756
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】消防用ホース
(51)【国際特許分類】
A62C 33/00 20060101AFI20240919BHJP
F16L 11/12 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A62C33/00 C
F16L11/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039164
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】391008320
【氏名又は名称】株式会社初田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森川 茂計
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 和寛
【テーマコード(参考)】
2E189
3H111
【Fターム(参考)】
2E189LA01
3H111DA21
3H111DB04
(57)【要約】
【課題】 屋内への凡その進入距離を把握することができ、消防用ホースを用いて地上からの階上の高さの把握することもできる消防用ホースを提供する。
【解決手段】 消防用ホース1は、ホース本体2と、ホース本体2の一端に取り付けられた雄継手3と、ホース本体2の他端に取り付けられた雌継手4と、を備え、ホース本体2は、ホース本体2を長さ方向に沿って均等状に分けて互いに識別可能な複数の識別表示領域5a~5dを有する。識別表示領域5a~5dは、雄継手3側から雌継手4側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に次第に移り変わるように配色される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体と、
前記ホース本体の一端に取り付けられた雄継手と、
前記ホース本体の他端に取り付けられた雌継手と、を備え、
前記ホース本体は、前記ホース本体を長さ方向に沿って均等状に分けて互いに識別可能な複数の識別表示領域を有する、
消防用ホース。
【請求項2】
前記ホース本体が異なる色彩によって長さ方向に沿って均等状に色分けされることにより、前記複数の識別表示領域が構成されている、請求項1に記載の消防用ホース。
【請求項3】
前記複数の識別表示領域が、有彩色による塗潰し、縦縞模様、横縞模様、及び網目模様の何れか1以上を含む、請求項1に記載の消防用ホース。
【請求項4】
前記複数の識別表示領域は、前記雄継手側から前記雌継手側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に次第に移り変わるように配色されている、請求項1に記載の消防用ホース。
【請求項5】
前記ホース本体の長さが20~22メートルであり、前記識別表示領域の数が、4、5、8、又は10である、請求項4に記載の消防用ホース。
【請求項6】
ホース本体と、
前記ホース本体の一端に取り付けられた雄継手と、
前記ホース本体の他端に取り付けられた雌継手と、を備え、
前記ホース本体は、前記ホース本体を長さ方向に沿って間隔をおいて均等状に分配配置された4以上の識別表示部を有し、
前記4以上の識別表示部は、前記雄継手側から前記雌継手側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に次第に移り変わるように互いに異なる配色が施されている、
消防用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消防隊員に対する誘導機能を付加するために、ホース本体の外周面に複数の方向表示をホース長手方向に沿って間隔をおいて配置され、前記方向表示の各々は、ホース長手方向に隣り合う第一表示部及び第二表示部から構成され、前記第一表示部は第一色を有し、前記第二表示部は第二の色を有する消防用ホースが知られている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火災発生時、昔の住宅は屋根や壁が抜け落ち屋外からの放水で対処できたが、高気密高断熱住宅が普及してきた昨今、屋内へ進入し消火活動を余儀なくされる現場が増えている。命綱として消防用ホースと検索ロープ等を使用しても、濃煙(暗闇)の中でそれらを容易に視認することは困難である。更には、消防活動で両手が塞がれている状態や面体(空気呼吸器)による視野の制限等もあり、進入・退避時、屋内に限らず夜間の屋外においても消防隊員は常に、障害物に消防用ホースや検索ロープが絡まる事による展張・撤収作業の労力増大、搬送障害(消防用ホースの踏み付け、つまづき)等のリスクを負う事になる。
【0005】
上記従来の誘導機能付き消防用ホースは、退避方向は識別可能であるが、退避位置までどの程度の距離があるのか分からず、屋内のどのあたりの位置に居るのかが分からない。
【0006】
消防隊員は、屋内において消火活動を行っている際、例えば、屋内に要救助者が居る場合に救援を呼ぶ際に要救助者の居場所を知らせるために外部と通信するが、夜間に電源が消失した屋内に煙が立ち込めていてライトを照らしても近距離しか見えないような場合、屋内のどのあたりの位置かが分からないと、迅速な救助活動が行えない。
【0007】
また、消防隊員は、屋内での消火活動時に、空気呼吸器の酸素ボンベを背負って屋内に進入して消火活動にあたるが、酸素ボンベに時間制限があるため、凡その進入距離を、移動した距離で推測しながら進入することで自らの行動範囲を推測するが、その推測を誤ると事故につながるおそれがある。
【0008】
また、例えば、ビル火災の消防現場において、階上の室内の火災を消火する際に、送水ポンプ圧の設定のために階上の部屋の高さを測定する必要があるが、上記従来の消防用ホースでは測定することができない。
【0009】
また、例えば、屋内火災現場内に救助に向かう消防隊員は、火災が発生している屋内へ進入して進んでいく際に火元にどれぐらい近づいているのか、また屋内から退出する際に、どれぐらい火元から離れているのかが判ると、救助する隊員の安全を確保した救助活動を行い易いが、従来の消防用ホースではそれが困難である。
【0010】
本発明は、誘導機能に加えて、屋内への凡その進入距離や、地上からの凡その高さを把握できる消防用ホースを提供することを主たる目的とし、併せて、火元にどれぐらい近づいているか或いは遠ざかっているかを把握可能な消防用ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一実施態様に係る消防用ホースは、ホース本体と、前記ホース本体の一端に取り付けられた雄継手と、前記ホース本体の他端に取り付けられた雌継手と、を備え、前記ホース本体は、前記ホース本体を長さ方向に沿って均等状に分ける互いに識別可能な複数の識別表示領域を有する。
【0012】
前記複数の識別表示領域は、前記ホース本体が異なる色彩によって長さ方向に沿って均等状に色分けされることにより、構成され得る。
【0013】
前記複数の識別表示領域は、有彩色による塗潰し、網目模様、縦縞模様、及び、横縞模様の1又は2以上を含み得る。
【0014】
前記識別表示領域は、前記雄継手側から前記雌継手側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に次第に移り変わるように配色され得る。
【0015】
前記ホース本体の長さが20~22メートルであり、前記識別表示領域の数が、4、5、8、又は10とし得る。
【0016】
本発明の他の実施態様に係る消防用ホースは、ホース本体と、前記ホース本体の一端に取り付けられた雄継手と、前記ホース本体の他端に取り付けられた雌継手と、を備え、前記ホース本体は、前記ホース本体を長さ方向に沿って間隔をおいて均等状に分配配置される4以上の識別表示部を有し、前記4以上の識別表示部は、前記雄継手側から前記雌継手側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に次第に移り変わるように配色が施されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る消防用ホースによれば、ホース本体をホース長さ方向に亘り均等状に分ける複数の識別可能な識別表示領域を設けることにより、其々の識別表示領域の長さから、消防用ホースの端からの凡その距離を把握することができるので、消防隊員が消火活動時に建屋内に進入した際の凡その進入距離を把握することができ、また、消防用ホースを用いて地上からの凡その高さを把握することもできる。
【0018】
また、ホース本体の長さ方向に均等状に分配して設けた識別表示部を、前記雄継手側から前記雌継手側に向かって色相環の時計回りに暖色から寒色に4色以上の色に移り変わるように配色して、其々の識別表示部を互いに識別可能とすることにより、其々の識別表示部の間隔から、消防隊員が消火活動時に建屋内に進入した際の凡その進入距離を把握することができ、また、消防用ホースを用いて地上からの凡その高さを把握することもできる。
【0019】
また、前記識別表示領域又は前記識別表示部を、前記雄継手側から前記雌継手側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に次第に移り変わるように配色することにより、火元にどれぐらい近づいているか或いは火元からどれぐらい遠ざかっているかを、感覚的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る消防用ホースの第1実施形態を示す平面図である。
【
図2】PCCS色相図の輪郭をグレースケールで表示した図である。
【
図3】本発明に係る消防用ホースを用いた消防活動の概略説明図である。
【
図4】本発明に係る消防用ホースの第2実施形態を示す平面図である。
【
図5】本発明に係る消防用ホースの第3実施形態を示す平面図である。
【
図6】本発明に係る消防用ホースの第4実施形態を示す平面図である。
【
図7】本発明に係る消防用ホースの第5実施形態を示す平面図である。
【
図8】本発明に係る消防用ホースの第6実施形態を示す平面図である。
【
図9】本発明に係る消防用ホースの第7実施形態を示す平面図である。
【
図10】本発明に係る消防用ホースの第8実施形態を示す平面図である。
【
図11】本発明に係る消防用ホースの第9実施形態を示す平面図である。
【
図12】本発明に係る消防用ホースの第10実施形態を示す平面図である。
【
図13】本発明に係る消防用ホースの第11実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る消防用ホースの実施形態について、以下に
図1~
図13を参照しつつ説明する。なお、全実施形態を通じて同一又は類似の構成要素には同符号を付している。
【0022】
図1は、本発明に係る消防用ホースの第1実施形態を示している。
図1を参照して、消防用ホース1は、ホース本体2と、ホース本体2の一端に取り付けられた雄継手3と、ホース本体2の他端に取り付けられた雌継手4と、を備える。
【0023】
ホース本体2は、ホース本体2を長さ方向に沿って均等状に分けられた互いに識別可能な複数の識別表示領域5a、5b、5c、5dを備えている。第1実施形態の識別表示領域5a、5b、5c、5dは、ホース本体2を異なる色彩によって長さ方向に沿って均等状に色分けすることにより、構成されている。例えば、識別表示領域5aが赤、識別表示部5bが黄色、識別表示部5cが緑、識別表示部5dが青であり、識別表示領域5a~5dの其々が異なる色彩の塗潰しによる配色が施されている。無彩色は暗所で識別しにくいため、塗潰しによる色分け模様には、有彩色が好適に用いられる。
【0024】
消防用ホースは、表示長さ20メートルの平ホースが一般的に使用される。表示長さとは、消防用ホース1のホース本体2に表示される長さであり、表示することが義務付けられている。表示長さは、+10%の誤差が認められているため、表示長さ20メートルのホース本体2の長さは20~22メートルである。消防用ホース1のホース本体2の内径(呼称)は、一般には、65mm、50mm、或いは40mmが採用される。なお、図示された消防用ホース1は、他の実施形態も含め、全体構成を把握し易くするため、ホース本体2、雄継手2、及び雌継手4の寸法比率を誇張して図示されており、実際の製品の寸法比率とは異なる。
図1には、一方の面が現れているが、反対側の面も同様に現われる。
【0025】
図1に示す例において、ホース本体2の長さが約20メートルの場合、4色の識別表示領域5a、5b、5c、5dがホース長さ方向に均等状に色分けされており、識別表示領域5a、5b、5c、5dの其々の長さA~Dは約5メートルとなっている。
【0026】
ホース本体2は、合成繊維製の経糸と緯糸を円筒状に織成したホースジャケットの内面に、ゴム製又は合成樹脂製のライニング(図示せず。)が施されている。雄継手3及び雌継手4は、町野式と呼ばれる差込式結合継手が用いられているが、他の形式、例えばネジ式の結合継手とすることもできる。
【0027】
ホースジャケットを構成する経糸と緯糸のうち、緯糸は殆ど経糸によって隠れ、ホースジャケットの表面には経糸が主に露出する。従って、4色に均等状に分けて着色されている着色糸をホースジャケットの経糸に用いることにより、
図1に示すような4色に均等状に色分けされた識別表示領域5a~5dを有する消防用ホース1を製作することができる。ホースジャケットの緯糸は、基本的には無着色糸(白)が用いられるが、着色糸を用いることもできる。
【0028】
ホース本体2への外面塗装により着色する従来のカラーホース(色付きホース)に比べ、着色糸(先染めの糸)を用いたホース本体2は、硬くならずホワイト(無着色)のホースと同じ使い勝手を実現でき、経年劣化によるホースのごわつきや折れ癖、色落ちがほとんどなく、数年後も鮮やかな色合いが持続する等の優れた特性を有する。また、着色糸は、着色する領域の長さや色を自由に容易に設定できる。更に、着色糸を使用するにあたって新たな設備投資も不要であり、既存の製造装置(円形織機)及び従来の製法で消防用ホースを製造することができる。
【0029】
識別表示領域5a、5b、5c、5dは、雄継手3の側から雌継手4の側に向かって、色相環の時計回り方向に暖色から寒色へ次第に移り変わるように配色されている。暖色とは赤、橙、黄などのように暖かそうな色であり、寒色とは青緑、青、青紫などの冷たさを感じさせる色であり、暖色と寒色のどちらにも属さない黄緑、緑、紫などは中間色である。
【0030】
図2を参照して、PCCS(Practical Color Co-ordinate System:日本色研配色体系)の色相環(本来の色相環は有彩色で表示されるが、
図2はグレースケールで表示されている。)では、時計回り方向に、1: pR(purplish red 紫みの赤/ルビーレッド、ローズレッド)、2: R(red 赤/ポピーレッド、カーマイン)、3:yR(yellowish red 黄みの赤/バーミリオン、スカーレット)、4: rO(reddish Orange 赤/ポピーレッド、カーマイン), 5: O(Orange だいだい/オレンジ), 6: yO(Yellowish Orange 黄みの橙/マリーゴールド), 7: rY(reddish Yellow 赤みの黄), 8: Y(yellow 黄), 9: gY(greenish Yellow 緑みの黄/レモンイエロー), 10: YG(Yellow green 黄緑/リーフグリーン), 11: yG(yellowish green 黄みの緑), 12: G(green みどり/エメラルドグリーン), 13: bG(bluish green青みの緑/ビリジアン), 14: BG(blue green 青緑/ピーコックグリーン), 15: BG(blue green 青緑), 16: gB(greenish blu 緑みの青/シアン), 17: B(blue 青/セルリアンブルー), 18:B(blue 青/コバルトブルー), 19: pB(Purplish blue 紫みの青/ウイスタリア), 20: V(violet 青紫), 21: bP(bluish Purple青みの紫), 22: P(Purple紫), 23: rP(reddish purple赤みの紫), 24: RP(red purple赤紫)の24色に分けられている。このうち、1~8が暖色、13~19が寒色、9~12及び20~24は中間色である。PCCS色相環の時計回り方向に暖色から寒色へ移り変わるように配色するには、時計回りに1(pR)から19(pB)の複数の色を選択して配色する。なお、PCCS色相環の反時計回り方向に暖色から寒色へ移り変わると、中間色が紫系の濃い色であり、暗所で判別しにくくなる場合があるため好ましくない。
【0031】
色相環は、可視光のスペクトル帯を環状にしたものであり、PCCS色相環の他にもオストワルド色相環などもある。可視光の波長は800nm~400nmであり、赤が620~800nm、橙が590~620nm、黄が565~590nm、緑が495~565nm、青440~495nm、藍(青紫)が430~440nm、紫が400~430nmであるから、色相環で時計回りに暖色から寒色の色は波長800nm~430nm(赤~藍)に相当する。
【0032】
図1に示すホース本体2は、雄継手3の側から雌継手4の側に向かって、識別表示領域5aが暖色の赤、識別表示領域5bが暖色の黄、識別表示領域5cが中間色の緑、識別表示領域5dが寒色の青であり、赤、黄、緑、青に色分けされた着色糸が経糸に用いられる。
【0033】
例えば、
図3に示すように、火災が発生している建屋H内での消火活動は、建屋H内で消防用ホース1のノズルNからの放水を操作する隊員P1と、隊員P1を後方で補助しつつ状況を無線連絡する隊員P2と、建屋Hの進入口付近で消防用ホース1の送り作業を行う隊員P3と、隊員P2,P3と無線連絡を取り合い消火・救助活動を指揮する指揮官P4等とが連携して行う。
図3では、一本の消防用ホースが図示されているが、実際の火災現場では、多くの消防用ホースや消防隊員が入り乱れている。
【0034】
上記第1実施形態の消防用ホース1によれば、識別表示領域5a~5dが、5メートル毎に均等状に色分けされているため、建屋Hの進入口付近の隊員P3は、識別表示領域5a~5dの色がホース長さ方向にどの順序で配色されているかを記憶していれば、識別表示領域5a~5dを構成する色分け模様を見ることにより、隊員P1が建屋H内へ進入した凡その距離が判り、その情報を建屋H内の隊員P1、P2や建屋外の指揮官P4と共有することができる。また、有彩色で配色された識別表示部5a~5dは、煙が立ち込めた視界の悪い場所であっても、ライトを照らして近づいて見れば、その色を判別でき、配色をたどっていけば、凡その進入距離を把握できる。凡その進入距離が判れば、例えば建屋Hの入口から凡そ何メートルの位置であるか等が判り、建屋H内における要救助者P5の凡その位置情報を外部の隊員P3や指揮官P4に知らせることができ、上記したように多数本の消防用ホースが建屋H内に入り乱れていても、救助隊員による迅速な救助活動に寄与する。
【0035】
また、例えば、火災が発生している建屋H内で隊員P1、P2が動けなくなり、他の救助隊員が建屋内に進入する際、識別表示領域5a~5dが暖色から寒色へ徐々に変化するように配色されていれば、消防用ホース1をたどって進入することにより、徐々に火元に近づいていることを把握することができるため、救助作業時に炎に巻き込まれるような二次災害を防いで、安全な救助作業が可能となる。
【0036】
また、識別表示領域5a~5dの色分けの配色の順序を知っていれば、退路方向も分かる。消防用ホースの先端に取り付けられる放水ノズルNが雄継手3に装着されるため、ホース本体2の色分けが、雄継手3側から雌継手4側へ暖色から寒色に徐々に移り変わるように配色されていれば、暖色側が火元側で、寒色側が水源側であることが直感的に判り、退路方向が判りやすい。また、消防用ホース1内を流れる水の向きも判る。
【0037】
また、どの消防署の分署やどの消防団の分団のものかを、識別表示領域5a~5dの色分けの配色によって識別できるようにすることもできるので、複数の分団や分署が消火現場にいても、消防用ホースの撤収を迅速に行える。
【0038】
また、例えば、ビル火災の消防現場において、階上の室内の火災を消火する際、消防用ホースが接続される送水ポンプのポンプ圧を設定するため、消火すべき階上の部屋の高さを測定する必要があるが、梯車等で消防用ホースの先を消火すべき階上の部屋まで持ち上げれば、均等状に色分けされた識別表示領域5a~5dにより、其々の識別表示領域5a~5dの長さが判るので、地上からの凡その高さが判り、ポンプ圧の設定を行える。
【0039】
上記第1実施形態では、識別表示領域を、ホース長さ方向に4つに均等状に区分された4領域により識別するようにしているが、4領域に限らず、他の複数の領域数の識別表示領域を設けることができる。ただし、上記したように一般的に使用される消防用ホースは、ホース本体2の長さが20~22メートルであり、その場合、識別表示領域の数が20以上になると、識別表示領域の長さが短くなり過ぎて、凡その進入距離を即座に判別しにくくなるため識別表示領域の数は、20未満、より好ましくは10以下とすることが望ましい。また、ホース本体2の長さが20~22メートルの場合は、識別表示領域の数が4未満であると、一つの識別表示領域の長さが長くなり過ぎて、凡その進入距離を即座に判別しにくくなるため、識別表示領域の数を4領域以上とすることが好ましい。ホース本体2の長さが約10メートルであれば、識別表示領域の数を2つまたは3つにすることも可能である。なお、複数の識別表示領域を暖色から寒色へ徐々に移行させるには、識別表示領域を3領域以上とする。
【0040】
ホース本体2の表示長さが20メートルの消防用ホースの場合、識別表示領域の数は、4,5,8又は10とすることがより好ましい。識別表示領域の数が4であれば一つの識別表示領域の長さが5メートルとなり、識別表示領域の数が5であれば一つの識別表示領域の長さが4メートルとなり、識別表示領域の数が8であれば一つの識別表示領域の長さが2.5メートルとなり、識別表示領域の数が10であれば一つの識別表示領域の長さが2メートルとなって、加減算が容易であるためホース端部からの距離が把握し易い。
【0041】
図4は、本発明に係る消防用ホースの第2実施形態を示している。第2実施形態の消防用ホース1Aは、ホース本体2の全長に亘って、所定色のライン6を配設した点が上記第1実施形態と相違し、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。ライン6は、ホース本体2の耳部、腹部等に配設される。
【0042】
ライン6の色は、其々の消防局或いは消防団の指定色とすることができる。そうすることにより、ライン6の色で、どの消防署のものであるか、どの消防団のものであるか、あるいは、どの分署又は分団のものであるかを識別することができる。ライン6の色は、識別表示部5a、5b、5c、5dと異なる色が好ましいが、いずれかの識別表示部と同色でもよい。ライン6の幅は、例えば0.5~3.5cmとすることができる。
【0043】
次に、本発明に係る消防用ホースの第3実施形態について
図5を参照して説明する。第3実施形態の消防用ホース1Bは、ホース本体2を長さ方向に沿って均等状に4区分された識別表示領域5a、5b、5c、5dが、其々、異なる配色の横縞模様(ボーダー柄)で構成されることにより、互いに識別可能となっている。
【0044】
識別表示領域5a、5b、5c、5dを構成する横縞模様は、有彩色と有彩色による横縞模様、或いは、有彩色と無着色(白)とによる横縞模様で構成することができる。識別表示領域5a、5b、5c、5dは、雄継手3の側から雌継手4の側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に移り変わるように配色することができる。例えば、識別表示領域5aは赤と無着色(白)の横縞模様、識別表示領域5bは黄の無着色(白)の横縞模様、識別表示領域5dは緑の無着色(白)の横縞模様、識別表示領域5eは青と無着色(白)の横縞模様とすることができる。なお、
図5には、一方の面が現れているが、反対側の面も同様に現われる。
【0045】
第3実施形態の横縞模様を備えるホース本体2も、長さ方向に所望の色の着色(染色)で配色された着色糸を経糸に用いて織成することにより製作することができる。第3実施形態の識別表示領域の数も、好ましくは20未満、より好ましくは10以下で構成される。
【0046】
次に、本発明に係る消防用ホースの第4実施形態について、
図6を参照して説明する。
図6(a)は、
図6(b)の裏側の平面図である。第4実施形態の消防用ホース1Cは、ホース本体2を長さ方向に沿って均等状に4区分に分けた識別表示領域5a、5b、5c、5dが、其々、異なる配色の縦縞模様(ストライプ柄)で構成されることにより、互いに識別可能となっている。
【0047】
図6に示す第4実施形態において、識別表示領域5a、5b、5c、5dを、雄継手3の側から雌継手4の側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に次第に移り変わるように配色することができる。例えば、識別表示領域5aは赤と無着色(白)の縦縞模様、識別表示領域5bは黄と無着色(白)の縦縞模様、識別表示領域5dは緑と無着色(白)縦縞模様、識別表示領域5eは青と無着色(白)の縦縞模様とすることができる。識別表示領域5a、5b、5c、5dの其々の縦縞は、ホースの長さ方向に沿って一列に並ぶ縦縞によって構成されている。
【0048】
第4実施形態の縦縞模様を備える消防用ホース1Cは、無着色糸(白)の経糸を用いずに、着色糸の経糸のみで縦縞模様を構成することもできるが、好ましくは、所望の色で色分けされた着色糸の経糸群と安価な無着色(白)の経糸群とを交互に配置して織り込むことにより製作することができる。緯糸には、無着色(白)の緯糸が好適に用いられるが、着色糸を用いることもできる。第4実施形態の識別表示領域の数も、20未満、より好ましくは10以下とされる。
【0049】
次に、本発明に係る消防用ホースの第5実施形態について、
図7を参照して説明する。
【0050】
図7は、本発明に係る第5実施形態の消防用ホース1Dを示している。消防用ホース1Dは、第1実施形態の識別表示領域と、第3実施形態の識別表示領域とを組み合わせた態様である。即ち、第3実施形態の消防用ホース1Bの識別表示領域5a、5b、5c、5dは、其々、異なる色で塗潰された識別表示領域5a、5cと、異なる配色の横縞模様の識別表示領域5b、5dとで構成されることにより、互いに識別可能となっており、ホース本体2を長さ方向に沿って均等状に4区分されている。例えば、識別表示領域5aの全体が赤色で配色され、識別表示領域5cの全体が青色で配色され、識別表示領域5bが赤と白の横縞模様とされ、識別表示領域5dが青と白の横縞模様とされる。
【0051】
次に、本発明に係る消防用ホースの第6実施形態について
図8を参照して説明する。第6実施形態の消防用ホース1Eは、有彩色で塗潰された識別表示領域5aと、有彩色の縦縞が設けられた識別表示領域5bと、長さ方向の約半分5c1が有彩色の塗潰しで残りの約半分5c2が縦縞の識別表示領域5cと、長さ方向の約半分5d1が有彩色の塗潰しで残りの約半分5d2が縦縞の識別表示領域5dとが、ホース本体2の長さ方向に均等状に4区分されている。識別表示領域5cと識別表示領域5dとは、互いに異なる彩色が施されて識別可能とされる。識別表示領域5a~5dは、好ましくは、雄継手3側から雌継手4側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に次第に移り変わるように配色される。なお、暖色から寒色へ次第に移り変わる態様には、赤、赤、黄、青のように部分的に同じ配色の領域が隣り合う態様も含まれる。例えば、識別表示領域5a、5bが赤色、識別表示領域5cが黄色(縦縞部分は黄色5c2と白色8)、識別表示領域5dが青色(縦縞部分は青色5d2と白色8)とすることができる。第6実施形態の消防用ホース1Eも、上記実施形態と同様に、所定の色分けがされた着色糸を経糸に用いて製作することができるし、或いは、着色糸を用いずに、無着色(白)の経糸と緯糸で織成したホースジャケットに外装塗装することによっても製作することもできる。
【0052】
次に、本発明に係る消防用ホースの第7実施形態について
図9を参照して説明する。
図9(a)は、
図9(b)の反対側の平面図である。第7実施形態の消防用ホース1Fは、同じ配色の縦縞模様を備える識別表示領域5a~5dがホース本体2の長さ方向に均等状に分けられており、縦縞の太さ及び又は周方向の配置を変えることにより互いに識別可能となっている。具体的には、識別表示領域5aと識別標識5bとは、同じ太さの縦縞を有しているが、ホース本体2の周方向に配置が互いにずれている。また、識別表示領域5cと識別標識5dとは、同じ太さの縦縞を有しているが、ホース本体2の周方向に配置が互いにずれている。識別表示領域5a、5bの縦縞は、識別表示領域5c、5dの縦縞より細い縦縞となっている。
【0053】
次に、本発明に係る消防用ホースの第8実施形態について、
図10を参照して説明する。第8実施形態の消防用ホース1Gは、ホース本体2を長さ方向に沿って均等状に分ける識別表示領域5a、5b、5c、5dを備えている。消防用ホース1Gの識別表示領域5a~5dは、有彩色で塗潰された識別領域5aと、太さの異なる横縞模様が施された識別表示領域5b~5dとにより、互いに識別可能に構成されている。横縞模様は、有彩色と無着色(白)とで構成することもできるし、異なる有彩色で横縞模様を構成することもできる。識別表示部5a~5dは、同一色の横縞模様とすることもできるし、雄継手3側から雌継手4側に向けて暖色から寒色に徐々に変化するように配色することもできる。
【0054】
次に、本発明に係る消防用ホースの第9実施形態について、
図11を参照して説明する。第9実施形態の消防用ホース1Hは、ホース本体2を長さ方向に沿って均等状に分ける識別表示領域が、有彩色での塗潰しによる識別表示領域5a、網目模様の識別表示領域5b、横縞模様の識別表示領域5c、縦縞模様の識別表示領域5dとされ、互いに識別可能に構成されている。網目模様は、例えば、ホースジャケットの無着色(白)の領域にプリントすることにより設けることができる。
【0055】
次に、本発明に係る消防用ホースの第10実施形態について、
図12を参照して説明する。上記第1~第9実施形態は、ホース本体2を長さ方向に均等状に分ける識別表示領域の例を示したが、第10実施形態の消防用ホース1Iは、ホース本体2を長さ方向に沿って間隔をおいて均等状に分配配置された識別表示部5a~5iをホース本体2に有する。識別表示部5a~5iは、雄継手3側から雌継手4側に向かって、色相環の時計回りに暖色から寒色に次第に移り変わるように互いに異なる配色が施されて、互いに識別可能とされている。例えば、識別表示部5a~5iは、9個あり、それぞれに異なる色が施され、例えば、赤、橙、黄みの橙、黄、黄緑、緑、青緑、緑みの青、青とされる。
【0056】
識別表示部5a~5iが暖色から寒色に徐々に移り変わるため、例えば、火災が発生している建屋に進入した救助隊員は、ホース本体2をたどって進む際に、その色の移り変わりを見ることで、火元にどれぐらい近づいているか或いは火元からどれぐらい遠ざかっているかを、色のイメージで感覚的に把握することができる。
【0057】
識別表示部5a~5iは、好ましくは、退避方向の方向性を示す形状を有し、図示例では矢印形状の図柄模様を有している。退避方向の方向性を示す形状が明示されることにより、より正確に退避方向を知ることができる。識別表示部5a~5iは、例えば、ホース本体2に貼着されたシート体で形成することができる。ホース本体2を構成するホースジャケットは、一般には無着色の経糸と緯糸とで織成されるが、識別表示部5a~5iと異なる色の着色糸を経糸及び又は緯糸に用いることもできる。
【0058】
識別表示部5a~5iを構成するシート体は、再帰反射性、蓄光性、又は蛍光性を備えることにより、暗所で視認できるようにすることができる。識別表示部5a~5iは、ホース本体2の一方の側面のみが図示されているが、反対側の側面にも同様に設けることもできる。
【0059】
識別表示部5a~5iは、模様を構成する矢印形状は同一であるが、其々異なる色彩と結合することにより、互いに識別可能であり、また、均等状に間隔をあけて配置することにより、ホース本体2の端部からの凡その離間度合を把握することができる。例えば、
図10に示す例では、ホース本体が約20メートルで、長さA~Jが其々約2メートルである。救助にあたる消防隊員は、識別表示部5a~5iの配色の順序を記憶しておくことにより、屋内の暗所であってもライトを照らして近づければ色の種類を識別できるため、その色を識別できれば、凡その進入距離を把握することが可能となる。また、消防用ホースを用いて地上からの階上の高さの把握も可能となる。
【0060】
次に、本発明に係る消防用ホースの第11実施形態について
図13を参照し説明する。第11実施形態の消防用ホース1Jは、第10実施形態の変更態様であり、識別表示部5a~5iの形状がいわゆる若葉マーク形状であって、消防用ホース1の雌継手4の側の端部からの距離(メートル)を示す数字(2,4,6・・・18)が表示されている。若葉マーク形状は、退避方向の方向性を示している。第11実施形態の識別表示部5a~5iの色彩その他の構成は上記第10実施形態と同様である。距離を示す数字が表示されていることで、建屋への進入距離をより正確に知ることができる。数字が剥げてきたり汚れて見えにくくなっても、識別表示部5a~5iの其々に異なる色彩が施されていることで、配色の順序を記憶しておけば、ホース本体2の端部からホース本体2の長さ方向に沿った離間度合を識別でき、凡その進入距離も把握することができ、消防用ホースを用いて地上からの階上の高さの把握することもできる。識別表示部5a~5iは、ホース本体2の一方の側面のみが図示されているが、反対側の側面にも同様に設けられる。
【0061】
上記第2~第11実施形の消防用ホース1A~1Jは、上記第1実施形態の消防用ホース1と同等の作用効果を奏し得る。本発明は、上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、識別表示領域および識別表示部は、模様、色、形状、長さ等に関して種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1、1A~1J 消防用ホース
2 ホース本体
3 雄継手
4 雌継手
5a~5d 識別表示領域
5a~5i 識別表示領域
6 ライン