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  • 特開-線材の接合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129759
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】線材の接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
B23K20/00 310L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039168
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 敦史
(72)【発明者】
【氏名】名越 光秀
(72)【発明者】
【氏名】五味 広大
(72)【発明者】
【氏名】大谷 和司
(72)【発明者】
【氏名】木全 晴
(72)【発明者】
【氏名】井戸原 修
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 節雄
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167AB09
4E167BA06
4E167BA12
(57)【要約】
【課題】長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合することができる線材の接合方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る線材の接合方法は、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合する線材の接合方法であって、前記接合する端面の少なくとも一方に炭素質物質を配置する配置工程と、前記炭素質物質を介して前記端面同士を押し当てるのみで又は押し当てて荷重をかけながら重ね合わせる重ね合わせ工程と、前記端面同士を重ね合わせた線材を押し当てるのみで又は押し当てて荷重をかけながら前記炭素質物質の液相が生成する最高到達温度で加熱する加熱工程と、前記加熱した線材を冷却する冷却工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合する線材の接合方法であって、
前記接合する端面の少なくとも一方に炭素質物質を配置する配置工程と、
前記炭素質物質を介して前記端面同士を押し当てるのみで又は押し当てて荷重をかけながら重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記端面同士を重ね合わせた線材を押し当てるのみで又は押し当てて荷重をかけながら前記炭素質物質の液相が生成する最高到達温度で加熱する加熱工程と、
前記加熱した線材を冷却する冷却工程と、を備える、
線材の接合方法。
【請求項2】
前記重ね合わせ工程は、前記押し当てる時の前記接合する端面の傾きを調整する請求項1に記載の線材の接合方法。
【請求項3】
前記炭素質物質は、前記最高到達温度で前記端面に液相が生成するように配置する請求項1に記載の線材の接合方法。
【請求項4】
前記加熱工程は、通電加熱により行う請求項1乃至3いずれかに記載の線材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱間鋼材の接合を実際の工場で簡単にかつ能率的に行うことができ、しかも後続の圧延工程に支障のない程度に高い接合強度を得られる技術の開発を課題として、接合面に炭素質物質を塗布または散布して熱間鋼材を重ね合わせ又は突き合わせて、還元雰囲気下で加熱し圧接する鋼材の熱間接合方法が開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-7970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の鋼材の熱間接合方法は、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合する発明を開示するものではなかった。
本発明は、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合することができる線材の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る線材の接合方法は、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合する線材の接合方法であって、前記接合する端面の少なくとも一方に炭素質物質を配置する配置工程と、前記炭素質物質を介して前記端面同士を押し当てるのみで又は押し当てて荷重をかけながら重ね合わせる重ね合わせ工程と、前記端面同士を重ね合わせた線材を押し当てるのみで又は押し当てて荷重をかけながら前記炭素質物質の液相が生成する最高到達温度で加熱する加熱工程と、前記加熱した線材を冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合することができる線材の接合方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る線材の接合方法を説明するための工程フロー図である。
図2】本発明の具体的な実施形態に係る線材の接合方法を説明するための概念図である。
図3】本発明の効果を説明するための鉄-セメンタイト系の状態図である。
図4】本発明の効果を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る線材の接合方法を説明するための工程フロー図である。
本実施形態に係る線材の接合方法は、図1に示すように、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合する線材の接合方法であって、前記接合する端面の少なくとも一方に炭素質物質を配置する配置工程(S100)と、前記炭素質物質を介して前記端面同士を押し当てるのみで又は押し当てて荷重をかけながら重ね合わせる重ね合わせ工程(S110)と、前記端面同士を重ね合わせた線材を押し当てるのみで又は押し当てて荷重をかけながら前記炭素質物質の液相が生成する最高到達温度で加熱する加熱工程(S120)と、前記加熱した線材を冷却する冷却工程(S130)と、を備える。
【0009】
本発明に係る線材の接合方法は、前記工程フローを備えることで、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合することができる。
以下に、これら各工程について詳細に説明する。
図2は、本発明の具体的な実施形態に係る線材の接合方法を説明するための概念図である。
【0010】
<配置工程S100について>
本実施形態に係る線材の接合方法は、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合する線材の接合方法であって、配置工程S100において、図2(a)に示すように、前記接合する線材10、20の端面10a、20aの少なくとも一方(図中では、線材10の端面10a)に炭素質物質30を配置する。
この炭素質物質30は、後述する加熱工程S120での加熱時の最高到達温度で前記端面10a、20aに液相L(図4参照:後述)が生成するように炭素質物質30の量を調整して配置することが好ましい。このように配置することで線材の端面同士の接合強度を向上させやすくすることができる。
【0011】
ここで、長尺の鋼材である複数の線材10、20の材質は、任意の鋼材であって、互いに、接合することが可能な金属であれば特に限定されない。例えば、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼等を用いることができる。
【0012】
本発明でいう中炭素鋼とは、炭素濃度が0.30mass%以上0.50mass%以下の鋼材を言う。ちなみに、低炭素鋼とは、炭素濃度が0.30mass%未満の鋼材を言い、高炭素鋼とは、炭素濃度が0.50mass%を超える鋼材を言う。
また、低炭素鋼、中炭素鋼及び高炭素鋼を用いる場合、前記炭素以外の合金元素は、特に限定されないが、例えば、JIS G 4051に規定されているような、概ね、Si:1.5mass%以下、Mn:1.0mass%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成とすることができる。
【0013】
線材10、20の端面10a、20aの形状は、この端面同士を重ね合わせることができれば、かつ、端面同士が一体に形成することができれば、特に限定されない。例えば、線材10、20は、端面10a、20aが円形、矩形、三角形など各種の形状の長尺材とすることができる。また、線材10、20は、端面10a、20aの形状が一定でない異形断面の長尺材であってもよい。
【0014】
長尺の鋼材である複数の線材10、20の端面10a、20aの外縁全周を円近似した直径が3mm以上50mm以下、好ましくは5mm以上15mm以下である。
このような端面の直径を有する線材同士であれば、本発明に係る線材の接合方法を用いて、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合することができる。
【0015】
長尺の鋼材(すなわち長尺材)の長さは特に限定されないが、例えば、長尺材をドラムに複数回巻回して長尺材の束を形成することが程度の長さのことを言う。
また、炭素質物質30は、接合する線材10、20の端面同士10a、20aの少なくとも一方の端面(10a及び/又は20a)に配置でき、この端面同士10a、20aが一体化することができれば、材質、形状は、特に限定されない。
例えば、図2に示す炭素質物質30は、粉末状又はシート状の炭素質物質を用いることができる。
【0016】
ここで、粉末状の炭素質物質30を用いる場合は、一方の端面(10a及び/又は20a)に塗布することで配置することができる。シート状の炭素質物質30を用いる場合には、一方の端面(10a及び/又は20a)に直接的に配置することができる。
【0017】
<重ね合わせ工程S110について>
本実施形態に係る線材の接合方法は、重ね合わせ工程S110において、図2(b)に示すように、配置工程S100で配置した炭素質物質30を介して上述した接合する線材10、20の端面同士10a、20aを押し当てるのみで重ね合わせる。
【0018】
この重ね合わせ工程S110では、線材10、20の端面同士10a、20aを押し当てるのみで重ね合わせる際は、具体的には、端面同士を重ね合わせて接触させた後、接触させた状態でそのまま固定する。本実施形態の重ね合わせ工程S110では、このように、線材10、20の端面同士10a、20aを押し当てるのみで重ね合わせて固定することで、後述する荷重や回転を行わない製造装置で本工程を行うことができる。従って、線材の接合方法における製造コストを低減することができる。
【0019】
また、この重ね合わせ工程S110では、線材10、20の端面同士10a、20aを押し当てるのみで重ね合わせる際に、端面同士を固定するために荷重(押し当てて荷重)をかけてもよい。
本実施形態の重ね合わせ工程S110では、このように、線材10、20の端面同士10a、20aを固定するために荷重をかける(端面同士10a、20aを押し当てて荷重をかけながら固定する)ことで、後述する加熱工程S120後の線材同士10、20の接合力を向上させることができる。また、このような押し当てて荷重をかける場合は、線材10、20の端面同士10a、20aの重ね合わせを図2に示すような水平方向に行ってもよく、上下方向(不図示)に行ってもよい。
【0020】
更に、本実施形態の重ね合わせ工程S110では、押し当てる時の接合する線材10、20の端面10a、20aの傾きを調整することが好ましい。このように接合する端面10a、10bの傾きを調整することで線材同士の接合強度をより有効に向上させることができる。
【0021】
<加熱工程S120について>
本実施形態に係る線材の接合方法は、加熱工程S120において、図2(c)に示すように、重ね合わせ工程S110で端面同士10a、20aを重ね合わせた線材10、20を押し当てるのみで端面同士10a、20aを固定しながら加熱する。ここで、線材10、20を加熱する最高到達温度は、端面における接合面において液相Lが生成する範囲でおこなう(図3参照、後述)。
【0022】
また、前記加熱は、端面同士10a、20aを重ね合わせた線材10、20を押し当ててかつ接合面同士を固定するために荷重(押し当てて荷重)をかけながら加熱してもよい。
このように、端面同士10a、20aを重ね合わせた線材10、20を固定するために荷重をかけながら(端面同士10a、20aを押し当てて荷重をかけながら)加熱することで、線材同士10、20の接合力を向上させることができる。また、このような押し当て荷重をかける場合は、線材10、20の端面同士10a、20aの加熱を図2に示すような水平方向に行ってもよく、上下方向(不図示)に行ってもよい。
【0023】
なお、上述したように、配置工程S100において、炭素質物質は、加熱工程S120での加熱時の最高到達温度で接合面に液相Lが生成するように炭素質物質の量が調整されて配置されていることが好ましい。
このような炭素質物質が前記接合面に配置されている場合、接合面の炭素濃度が高くなるため、接合面の引張強度及び曲げ強度が高くなり、接合面、すなわち線材の端面同士の接合強度を向上させることができる。
【0024】
なお、炭素質物質の加熱時の最高到達温度で接合面に液相L(図3参照)が生成するように炭素質物質の量を調整して配置するためには、例えば、製品になる接合された線材と形状及び炭素濃度が同じ素材である線材10、20を用いて接合面に配置する炭素質物質の量を変化させて、それぞれを同じ最高到達温度で加熱接合試験を行い、その後、接合率を各々評価することで、液相Lが生成する適切な炭素質物質の量を決定することができる。
【0025】
前記炭素質物質は、前記最高到達温度で前記接合面全面に液相Lが生成するように配置することが好ましい。すなわち、線材10、20の接合する端面10a、20aの少なくとも一方の端面全面に液相Lが生成するように炭素質物質を配置することが好ましい。
炭素質物質を、前記接合面全面に液相Lが生成するように配置することで、接合面全面で接合することができる。従って、線材の端面同士の接合強度を更に向上させることができる。
【0026】
加熱工程S120における加熱手段は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、従来公知の加熱コイル(不図示)を用いた高周波誘導加熱や、高周波誘導加熱以外の加熱炉、レーザー加熱等を用いた様々な加熱方法を採用することができる。
また、加熱工程S120における加熱中の雰囲気は特に限定されない。前記雰囲気は、例えば、酸化性雰囲気(酸素、大気等)や非酸化雰囲気(窒素、アルゴン等)が含まれる。
【0027】
本発明の加熱工程S120は、通電加熱により行うことが好ましい。
通電加熱は、具体的には、図2(c)に示すように、給電部100に電気的に接続された一方の電極110A及び他方の電極110Bからなる電極対110とを備える通電加熱装置70により行うことができる。
このような通電加熱は、所望の温度まで急速加熱することができるため、生産性が向上するため好ましい。
そして、本発明の加熱工程S120において、線材10、20の接合面で生成された液相Lが消滅した段階で、線材同士10、20が接合することになる。
【0028】
<冷却工程S130について>
本発明の加熱工程S120における当該加熱後の冷却工程S130(図2(d))は、特に限定されず、従来公知の放冷、ガス冷却及びポリマー等の焼入冷却剤等による噴射冷却等で行うことができる。
【0029】
以上に本発明が備える各工程について説明したが、次に、これら各工程を行い線材の端面同士の接合力が高められるメカニズムの具体例を図面を用いて説明する。
図3は、本発明の効果を説明するための鉄-セメンタイト系の状態図である。図4は、本発明の効果を説明するための概念図であり、詳しくは、接合界面で起こる反応を示す概念図である。
【0030】
本実施形態に係る線材の接合方法としては、接合する端面の少なくとも一方に、加熱時の最高到達温度で液相Lが生成するように炭素質物質(図中は炭素粉)を配置(図4(a))し、この炭素質物質を介して接合する端面同士を重ね合わせた線材を所定の雰囲気下(例えば、大気雰囲気下)、所定の最高到達温度で加熱する。
【0031】
図3より、線材の端面と炭素質物質との接合界面において液相Lが生成する温度は1150℃以上1500℃以下である。
具体的には、線材同士の接合面付近の最高到達温度が、例えば1250℃に達すると、線材の端面と炭素質物質との界面において炭素濃度が3.5mass%の液相Lが生成する(図3中□で示す部分を参照)。この液相Lは、炭素質物質が無くなるまで増加する(図4(b)を参照)。
【0032】
1250℃における「オーステナイト相γ」領域と「オーステナイト相γ+液相L」領域との界面(図3中〇で示す部分を参照)の炭素濃度は1.6mass%である。そのため、1250℃では、線材の殆どがオーステナイト相γ単相となる。ちなみに、炭素含有量が1.6mass%を超える場合に関しては、オーステナイト相γと液相Lの二相が共存したものとなる。1250℃での炭素の拡散は極めて速く、この温度に保持すると、炭素は、線材の接合面から内部のオーステナイト相γ内に速い速度で拡散していく。その結果、この液相Lとオーステナイト相γ界面において、オーステナイト相γ側は炭素濃度を1.6mass%に保とうとして液相L側から炭素を奪い取り、また、液相Lは炭素濃度を3.5mass%に保とうとするため液相Lが減少する(図4(c)を参照)。液相Lは、最終的に消滅して線材同士の接合が完了する(図4(d)を参照)。
【0033】
本発明の加熱工程S120における本発明の効果を最高到達温度1250℃で説明したが、上述した本発明の効果は、図3における鉄-セメンタイト系の状態図から「オーステナイト相γ」領域と「オーステナイト相γ+液相L」領域が形成される温度範囲(最高到達温度が1150℃以上1500℃以下)で得られると考えられる。
【0034】
以上のように、前記接合面に液相Lが生成するように炭素質物質の質量を調整して当該炭素質物質を配置し、前記接合面同士を重ね合わせた線材を1150℃以上1500℃以下の最高到達温度で加熱することで上記接合を行うことができる。
従って、前記最高到達温度は、1150℃以上1500℃以下であることが好ましい。
これにより線材同士の接合強度をより有効に向上させることができる。
【0035】
前記最高到達温度は、1150℃以上1300℃以下であることがより好ましい。最高到達温度を1300℃以下とすることで、線材を加熱するための加熱部材(コイル等)の冷却を効率的に行うことができると共に、接合した線材自体の熱による変形等も抑制することができる。なお、加熱工程S120における前記最高到達温度は、接合する線材の接合面50から2mm以内の線材(素材)側の外周面に溶接した白金ロジウム熱電対により測定することができる。
【0036】
本実施形態に係る線材の接合方法は、例えば、特開2022-63762号に記載されているような線材処理方法に応用できる。
すなわち、複数本の線材を接合してなる被処理線材を繰り出し、前記繰り出し部によって繰り出された前記被処理線材に対して、熱処理及び成形の少なくともいずれかを含む線材処理を線材処理部により行い、前記線材処理を行った前記被処理線材を収容部により収容し、前記繰り出し部によって繰り出された前記被処理線材における線材の接合部の通過を検出し、前記線材処理部と前記収容部との間において、前記接合部の通過の検出結果に基づいて前記被処理線材を切断することにより、前記被処理線材における前記接合部を除去する、線材処理方法において、前記複数本の線材を接合してなる被処理線材を製造する際に、本実施形態に係る線材の接合方法を適用することができる。
【0037】
次に、実施例を通じて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【実施例0038】
[実施例1]
実施例1では、S45C鋼材(中炭素鋼)である長尺の鋼材である線材(ドラムに10回以上巻回されて長尺材の束となった線材:線材の端面は、図2に示すように円形であり、中心軸αを中心点としたときの直径が7mm)を2つ用意した。
そして、用意した2つの長尺の線材のうち、一方の長尺の線材の一方の端面に粉末状の炭素質物質を後の加熱時における最高到達温度で前記端面に液相が生成する量を塗布した。
【0039】
その後、炭素質物質を介して前記端面同士を押し当てると共に荷重をかけながら重ね合わせて固定し、そのように固定した状態で、通電加熱により、大気雰囲気中、前記炭素質物質の液相が生成する最高到達温度(1200℃)で高周波誘導加熱を行い、その後、放冷により冷却した。
なお、この最高到達温度は、線材同士の接合面となる位置から2mm以内の線材側の外周面に白金ロジウム熱電対を溶接して測定した。
以上の条件で、2つの長尺の鋼材である線材の端面同士が接合された線材接合体を作製した。
【0040】
[実施例2]
2つ用意した線材の端面の各々の直径が13mmである以外は実施例1と同様な条件で行い、2つの長尺の鋼材である線材の端面同士が接合された線材接合体を作製した。
以上の実施例1及び実施例2で得られた線材接合体を、後工程である複数本の線材を接合してなる被処理線材を繰り出す繰り出し部と、前記繰り出し部によって繰り出された前記被処理線材に対して、熱処理及び成形の少なくともいずれかを含む線材処理を行う線材処理部と、前記線材処理部によって前記線材処理が行われた前記被処理線材を収容する収容部と、前記繰り出し部によって繰り出された前記被処理線材における線材の接合部の通過を検出する接合部検出部と、前記線材処理部と前記収容部との間において、前記接合部検出部による前記接合部の通過の検出結果に基づいて前記被処理線材を切断することにより、前記被処理線材における前記接合部を除去する切断部を含む線材処理装置の当該繰り出し部にセットして連続処理を行った。
その結果、実施例1及び実施例2で得られた線材接合体ともに、当該線材処理装置で連続処理を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る線材の接合方法によれば、長尺の鋼材である複数の線材の端面同士を接合することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 線材
10a 端面
20 線材
20a 端面
30 炭素質物質
70 通電加熱装置
γ オーステナイト相
L 液相
S100 配置工程
S110 重ね合わせ工程
S120 加熱工程
S130 冷却工程
図1
図2
図3
図4