(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012977
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
F16K31/06 305K
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114853
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真介
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA12
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB32
3H106DC02
3H106DD09
3H106EE35
(57)【要約】
【課題】製造コストを低減できる電磁弁を提供する。
【解決手段】電磁弁1は、弁本体10に取り付けられるホルダ30と、ホルダ30に取り付けられるケース52と、を有する。ホルダ30が、円板形状を有し、弁本体10の上面10cに形成された取付穴13に配置される。弁本体10が、取付穴13の内側に形成された、主弁体60が配置される円形穴14と、円形穴14を囲む円環壁部15と、を有する。弁本体10における円形穴14を画定する円周面14aが、円環壁部15の内周面を含む。ホルダ30の下面31bが、円形穴14と向かい合う。ホルダ30と円環壁部15の先端との間に隙間Cが設けられる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁口を有する弁本体と、前記主弁口を開閉する主弁体と、前記弁本体に取り付けられるホルダと、前記ホルダに取り付けられる筒形状のケースと、前記ケースの内側に配置されるプランジャと、を有する電磁弁であって、
前記弁本体の外面には、取付穴が配置され、
前記ホルダが、円板形状を有し、前記取付穴に配置され、
前記弁本体が、前記取付穴の内側に配置された、前記主弁体が配置される円形穴と、前記円形穴を囲む円環壁部と、を有し、
前記弁本体における前記円形穴を画定する円周面が、前記円環壁部の内周面を含み、
前記ホルダの一面が、前記円形穴と向かい合い、
前記ホルダと前記円環壁部の先端との間に隙間が設けられることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記ホルダの外周面に雄ねじが形成され、
前記取付穴を画定する内向きの周面に前記雄ねじが螺合される雌ねじが形成され、
前記取付穴において前記ホルダが前記弁本体に締結される、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記ホルダが、円板部と、前記円板部の一面から突出する円環突部と、を有し、
前記円板部の一面が、前記円形穴と向かい合い、
前記円環突部の端面が、前記取付穴の底面と接し、
前記円環壁部が、前記円環突部の内側に配置され、
前記雄ねじが、前記円板部の外周面から前記円環突部の外周面まで形成される、請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記ケースの一端が、前記ホルダに接合され、
前記ケースの一端の内側に、固定鉄心が配置され、
前記固定鉄心が、前記ホルダに取り付けられる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記ケースの外側に配置される電磁コイルをさらに有する、請求項1に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電磁弁の一例であるパイロット式の電磁弁を開示している。この電磁弁は、例えば、エアコンの冷凍サイクルに組み込まれ、冷媒の流路切換に用いられる。電磁弁は、主弁口を有する弁本体を有している。弁本体には、吸引子が取り付けられている。吸引子は、固定鉄心であり、大径円筒部と小径円筒部とを有している。大径円筒部と小径円筒部とは、一体的に接続されている。大径円筒部は、弁本体に結合されている。大径円筒部の内側には、主弁体が配置されている。主弁体は、主弁室とパイロット弁室とを区画している。主弁体は、主弁室に接続された主弁口を開閉する。小径円筒部は、弁本体から突出している。小径円筒部は、円筒形状のケースと嵌合されている。ケースの一端は、小径円筒部と溶接されている。ケースの外側には、電磁コイルが配置されている。ケースの内側には、プランジャが配置されている。プランジャは、プランジャばねによって吸引子から離れる方向に押されている。プランジャには、小径円筒部の内側を通る弁軸を介してパイロット弁体が接続されている。パイロット弁体は、主弁体にあるパイロット通路を開閉する。
【0003】
電磁コイルが通電状態になると、吸引子とプランジャとが磁化され、プランジャが吸引子に近づく。パイロット弁体が、プランジャとともに移動し、パイロット通路を閉じかつ主弁体を主弁口に向けて押す。そして、主弁体が主弁口を閉じて、電磁弁は閉弁状態になる。
【0004】
電磁コイルが非通電状態になると、プランジャと吸引子との磁化が解消され、プランジャばねに押されてプランジャが吸引子から離れる。パイロット弁体が、プランジャとともに移動し、パイロット通路を開く。パイロット弁室からパイロット通路を介して主弁口に冷媒が流れ、パイロット弁室の冷媒圧力が主弁室の冷媒圧力より低くなり、主弁体に対して開弁方向に移動させる力が働く。そして、主弁体が主弁口から離れ、主弁口が開いて、電磁弁は開弁状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸引子(固定鉄心)は、金属のワークピースを切削加工することにより、主弁体が配置される大径円筒部とケースが溶接される小径円筒部とが一体的に形成される。そのため、ワークピースの多くの部分を切削する必要があり、このような吸引子を電磁弁に用いることは、電磁弁の材料費および加工費などの製造コストを押し上げる。
【0007】
そこで、本発明は、製造コストを低減できる電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る電磁弁は、主弁口を有する弁本体と、前記主弁口を開閉する主弁体と、前記弁本体に取り付けられるホルダと、前記ホルダに取り付けられる筒形状のケースと、前記ケースの内側に配置されるプランジャと、を有する電磁弁であって、前記弁本体の外面には、取付穴が配置され、前記ホルダが、円板形状を有し、前記取付穴に配置され、前記弁本体が、前記取付穴の内側に配置された、前記主弁体が配置される円形穴と、前記円形穴を囲む円環壁部と、を有し、前記弁本体における前記円形穴を画定する円周面が、前記円環壁部の内周面を含み、前記ホルダの一面が、前記円形穴と向かい合い、前記ホルダと前記円環壁部の先端との間に隙間が設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記ホルダの外周面に雄ねじが形成され、前記取付穴を画定する内向きの周面に前記雄ねじが螺合される雌ねじが形成され、前記取付穴において前記ホルダが前記弁本体に締結される、ことが好ましい。
【0010】
本発明において、前記ホルダが、円板部と、前記円板部の一面から突出する円環突部と、を有し、前記円板部の一面が、前記円形穴と向かい合い、前記円環突部の端面が、前記取付穴の底面と接し、前記円環壁部が、前記円環突部の内側に配置され、前記雄ねじが、前記円板部の外周面から前記円環突部の外周面まで形成される、ことが好ましい。
【0011】
本発明において、前記ケースの一端が、前記ホルダに接合され、前記ケースの一端の内側に、固定鉄心が配置され、前記固定鉄心が、前記ホルダに取り付けられる、ことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記電磁弁が、前記ケースの外側に配置される電磁コイルをさらに有する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弁本体における円形穴を画定する円周面と、円板形状のホルダの一面と、が主弁体を配置する空間を形成する。そのため、ホルダが簡易な形状であり、ホルダの材料費および加工費を抑制して、電磁弁の製造コストを低減できる。また、取付穴に配置されたホルダと円環壁部の先端との間に隙間が設けられる。そのため、ホルダが弁本体に取り付けられたときにホルダが円環壁部に接することがなく、当該円環壁部の変形を防ぐことができる。これにより、円形穴に配置された主弁体の移動が妨げられてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例に係る電磁弁の断面図である(開弁状態)。
【
図3】
図1の電磁弁が有する弁本体の平面図である。
【
図4】
図1の電磁弁が有するホルダを示す図である。
【
図5】
図1の電磁弁が有する弁本体、封止部材、ホルダおよび固定鉄心の分解断面図である。
【
図7】
図1の電磁弁の変形例の構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例に係るパイロット式の電磁弁について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0016】
図1、
図2は、本発明の一実施例に係る電磁弁の断面図である。
図1は開弁状態の電磁弁を示し、
図2は閉弁状態の電磁弁を示す。
図3は、
図1の電磁弁が有する弁本体の平面図である。
図4は、
図1の電磁弁が有するホルダを示す図である。
図4Aはホルダの平面図であり、
図4Bはホルダの底面図である。
図5は、
図1の電磁弁が有する弁本体、封止部材、ホルダおよび固定鉄心の分解断面図である。
図6は、
図1の電磁弁の拡大断面図である。
図6は、ホルダの一部およびその近傍を示す。以下の説明において、「上下左右」との用語は、各図に記載の構成要素の相対的な位置関係を示している。
【0017】
本実施例に係る電磁弁1は、弁本体10と、ホルダ30と、固定鉄心40と、ケース52と、プランジャ53と、電磁コイル54と、弁軸55と、パイロット弁体56と、主弁体60と、を有している。「固定鉄心」は「吸引子」ともいう。
【0018】
弁本体10は、例えば、直方体形状を有している。弁本体10は、流入口11と、流出口12と、取付穴13と、円形穴14と、円環壁部15と、円環溝17と、雌ねじ18と、主弁口21と、主弁座22と、を有している。弁本体10は、例えば、アルミニウム合金製である。
【0019】
流入口11は、弁本体10の左側面10aに配置されている。流出口12は、弁本体10の右側面10bに配置されている。
【0020】
取付穴13は、平面視円形状を有しており、弁本体10の上面10cに配置されている。上面10cは、弁本体10の外面である。取付穴13は、弁本体10における内向きの周面13aによって画定される。
【0021】
円形穴14は、平面視円形状を有しており、取付穴13の内側に配置されている。円形穴14は、取付穴13と同軸に配置されている。円形穴14の径は、取付穴13の径より小さい。円形穴14は、弁本体10における内向きの円周面14aによって画定される。円形穴14は、上端から下端まで一定の径を有する円柱形状の空間である。円形穴14の内側に、主弁口21と、主弁座22と、が配置されている。主弁口21は、平面視円形状を有しており、円形穴14と同軸に配置されている。主弁口21の径は、円形穴14の径より小さい。主弁座22は、平面視円環形状を有する壁部である。主弁座22は、主弁口21と同軸に配置され、主弁口21を囲んでいる。流入口11は、円形穴14の下部に接続されている。流出口12は、主弁口21を介して円形穴14に接続されている。
【0022】
円環壁部15は、平面視円環形状を有しており、取付穴13の内側に配置されている。円環壁部15は、円形穴14と同軸に配置され、円形穴14を囲んでいる。円環壁部15の内周面は、円周面14aに含まれる。円環壁部15の先端は、取付穴13の底面13cより上方に配置されている。
【0023】
円環溝17は、平面視円環形状を有しており、取付穴13の底面13cに配置されている。円環溝17は、円環壁部15と同軸に配置され、円環壁部15を囲んでいる。円環溝17の外径は、取付穴13の外径より小さい。円環溝17の内径は、円環壁部15の外径と同一である。円環溝17の外向きの周面は、円環壁部15の外周面15bに含まれる。円環溝17には、円環形状の封止部材23が配置されている。封止部材23は、例えば、ゴム製のOリングである。
【0024】
雌ねじ18は、取付穴13の周面13aに形成されている。雌ねじ18は、周面13aの上端から下端まで配置されている。
【0025】
ホルダ30は、全体的に円板形状を有している。ホルダ30は、円板部31と、円環突部32と、円筒部33と、雄ねじ38と、を有している。円板部31は、円板形状を有している。円環突部32は、平面視円環形状を有している。円環突部32は、円板部31の下面31b(一面)から下方に突出している。円筒部33は、円板部31の上面31cから上方に突出している。円筒部33は、円板部31の中央に形成された貫通孔を囲んでいる。当該貫通孔の径は円筒部33の内径と同一であり、当該貫通孔および円筒部33の内側空間は結合孔34を構成している。結合孔34は、平面視円形状を有している。
【0026】
雄ねじ38は、円板部31の外周面31aから円環突部32の外周面32aまで形成されている。雄ねじ38は、外周面31aと外周面32aとをまたいで配置されている。円環突部32の外径は、円板部31の外径(雄ねじ38の谷径)と同一であるか若干小さい。円環突部32の内径は、円環壁部15の外径より大きい。
【0027】
雌ねじ18は、雄ねじ38と螺合される。雌ねじ18と雄ねじ38との螺合を進めると、円環突部32の下端面32bが取付穴13の底面13cと接し、取付穴13においてホルダ30が弁本体10と締結される。底面13cは、位置決め面である。ホルダ30が弁本体10と締結された状態において、円環壁部15が円環突部32の内側に同軸に配置され、円板部31の下面31b(ホルダ30の一面)が円形穴14と上下方向に向かい合い、下面31bと円環壁部15の先端との間に隙間Cが設けられる。これにより、ホルダ30が弁本体10に締結されたときにホルダ30が円環壁部15に接して円環壁部15が変形してしまうことを防ぐことができる。また、円環溝17内の封止部材23がホルダ30(円環突部32)と弁本体10とによって上下方向に圧縮される。封止部材23の圧縮量は、円環溝17の底面から取付穴13の底面13cまでの高さによって管理される。ホルダ30に接する位置決め面は、円環溝17より径方向外方に配置されている。円環溝17は、隙間Cおよび円環壁部15と円環突部32との隙間を介して円形穴14の上部と接続されている。
【0028】
ホルダ30は、磁界に置いても磁化されない金属製(例えば、ステンレス鋼(SUS304)製)である。ホルダ30は、軟磁性を有する金属製(例えば、磁性ステンレス鋼(SUS430)製)でもよい。軟磁性は、磁界に置くと磁化され、磁界を取り去ると磁化が解消される性質である。本実施例において、ホルダ30の材料は、SUS304やSUS430などの比較的耐食性が高く、ケース52との溶接性が良好な材料であることが好ましい。ホルダ30は、金属製のワークピースを切削加工することにより作製されており、円板部31と、円環突部32と、円筒部33と、雄ねじ38と、を一体的に有する。
【0029】
固定鉄心40は、円筒形状を有している。固定鉄心40は、第1部分41と、第2部分42と、を有している。第1部分41の外径は、第2部分42の外径より小さい。第1部分41の上端に第2部分42が一体的に接続されている。固定鉄心40は、ホルダ30に取り付けられている。具体的には、第1部分41が、ホルダ30の結合孔34に圧入されている。なお、第1部分41の外周面に雄ねじを形成し、ホルダ30における結合孔34を画定する内向きの周面に雌ねじを形成し、固定鉄心40がホルダ30にねじ構造で締結されていてもよい。または、第1部分41が結合孔34に挿入され、固定鉄心40がホルダ30に接着剤で接合されていてもよい。固定鉄心40の外周面における第1部分41と第2部分42との間の箇所には、下方を向く円環平面40bが形成されている。円環平面40bは、円筒部33の上端面33cの内周縁に接している。なお、本実施形態の円環平面40bは、円環形状(O形状)であるが、円環平面40bに代えて、円弧形状(C形状)の平面を有していてもよい。例えば、固定鉄心40の第2部分42の一部の外径が第1部分41の外径と同じ場合、当該平面はC形状を有する。
【0030】
固定鉄心40は、軟磁性を有する金属製である。本実施例において、固定鉄心40は、軟磁性を有する快削鋼製(例えば、SUM22)である。固定鉄心40は、磁性ステンレス鋼製でもよいが、電磁石としての性能がより高い材料からなることが好ましい。電磁石としての性能が高いとは、磁力が強くかつ磁化が速やかに解消される(透磁率が高くかつ保磁力が低い)ことをいう。固定鉄心40は、ケース52の下端52aの内側に配置され、ケース52の外側の雰囲気に露出しない。そのため、固定鉄心40の材料は、ホルダ30の材料より耐食性が低い材料でもよい。
【0031】
ケース52は、ステンレス鋼(例えば、SUS305)製である。ケース52は、下端52a(一端)が開口しかつ上端が塞がれた円筒形状を有している。ケース52の外径は、ホルダ30の円筒部33の外径と同一である。ケース52の内径は、固定鉄心40の第2部分42の外径と同一である。ケース52の下端52aの内側には、第2部分42が配置される。ケース52の下端52aは、円筒部33の上端面33cの外周縁に溶接されている。
【0032】
プランジャ53は、円筒形状を有している。プランジャ53の外径は、ケース52の内径よりわずかに小さい。プランジャ53は、ケース52の内側に上下方向に移動可能に配置されている。プランジャ53と固定鉄心40との間には、プランジャばね58が配置されている。プランジャばね58は、圧縮コイルばねである。プランジャばね58は、プランジャ53を上方に押している。固定鉄心40、ケース52およびプランジャ53は、円筒形状以外の筒形状でもよい。
【0033】
電磁コイル54は、円筒形状を有している。電磁コイル54の内側には、ケース52が挿入される。電磁コイル54は、ケース52の外側に配置されている。電磁コイル54は、固定鉄心40およびプランジャ53を磁化する。電磁コイル54を囲むヨーク59が弁本体10の上面10cにねじ59aで固定されている。ヨーク59は、ホルダ30を弁本体10に押し付けている。なお、電磁弁1が電磁コイル54を有しておらず、電磁弁1が組み込まれるシステムが電磁弁1の固定鉄心40およびプランジャ53を磁化する電磁コイルを有していてもよい。
【0034】
弁軸55は、円柱形状を有している。弁軸55の上端は、プランジャ53の下端に固定されている。弁軸55は、固定鉄心40の内側に配置されている。弁軸55は、固定鉄心40によって上下方向に移動可能に支持されている。
【0035】
パイロット弁体56は、円柱形状を有している。パイロット弁体56は、弁軸55の下端に一体的に接続されている。パイロット弁体56は、弁軸55を介してプランジャ53に接続されている。パイロット弁体56の下面には、円板形状のパッキン56aが取り付けられている。パッキン56aは、例えば合成樹脂製である。
【0036】
主弁体60は、胴部61と、上フランジ部62と、下フランジ部63と、を有している。胴部61は、円柱形状を有している。上フランジ部62は、円環形状を有している。上フランジ部62の内周縁は、胴部61の上部に接続されている。下フランジ部63は、円環形状を有している。下フランジ部63の内周縁は、胴部61の下部に接続されている。下フランジ部63の外径は、上フランジ部62の外径より小さい。胴部61と、上フランジ部62と、下フランジ部63と、は一体的に接続されている。主弁体60は、例えば、アルミニウム合金製である。
【0037】
主弁体60は、弁本体10の円形穴14に上下方向に移動可能に配置されている。上フランジ部62の外周面は、円周面14aと上下方向にスライド可能に接している。上フランジ部62は、弁本体10の円形穴14(円柱形状の空間)を上部と下部とに区画している。円形穴14の下部が主弁室24であり、円形穴14の上部がパイロット弁室25である。胴部61は、上下方向に貫通するパイロット通路65を有している。パイロット通路65は、主弁口21とパイロット弁室25とを接続する。胴部61の上端には、パイロット通路65の上端が開口している。胴部61の上端には、パイロット通路65を囲むパイロット弁座66が配置されている。上フランジ部62は、主弁室24とパイロット弁室25とを接続する均圧通路62aを有している。下フランジ部63の下面には、円環板形状のパッキン63aが取り付けられている。パッキン63aは、例えば合成樹脂製である。下フランジ部63と弁本体10との間には、開弁ばね69が配置されている。開弁ばね69は、圧縮コイルばねである。開弁ばね69は、下フランジ部63(主弁体60)を上方に押している。
【0038】
電磁弁1において、主弁室24、パイロット弁室25およびケース52の内側空間は、冷媒が導入される空間であり、ケース52の外側の雰囲気に対して密閉されている。
【0039】
電磁弁1において、取付穴13、円形穴14、円環壁部15、円環溝17、主弁口21、主弁座22、ホルダ30(円板部31、円環突部32、円筒部33)、固定鉄心40(第1部分41、第2部分42)、ケース52、プランジャ53、電磁コイル54、弁軸55、パイロット弁体56、主弁体60(胴部61、上フランジ部62、下フランジ部63、パイロット通路65、パイロット弁座66)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。軸線Lは、上下方向と平行である。
【0040】
次に、電磁弁1の動作の一例について説明する。
【0041】
図1に示す電磁弁1において、電磁コイル54は非通電状態である。この状態において、パイロット弁体56がパイロット弁座66から離れており、パイロット通路65が開いている。パイロット弁室25の冷媒圧力が上昇しないため主弁体60が主弁座22から離れ、主弁口21が開いている。電磁弁1は、開弁状態である。
【0042】
そして、電磁コイル54が通電状態になると、固定鉄心40とプランジャ53とが磁化され、プランジャ53が固定鉄心40に近づく。パイロット弁体56が、プランジャ53とともに移動し、パイロット通路65を閉じかつ主弁体60を主弁口21に向けて押す。そして、主弁体60が主弁口21を閉じて、
図2に示すように、電磁弁1は閉弁状態になる。閉弁状態において、主弁体60は冷媒によって主弁口21に向けて押されている。
【0043】
そして、電磁コイル54が非通電状態になると、固定鉄心40とプランジャ53との磁化が解消され、プランジャばね58に押されてプランジャ53が固定鉄心40から離れる。パイロット弁体56が、プランジャ53とともに移動し、パイロット通路65が開く。パイロット弁室25からパイロット通路65を介して主弁口21に冷媒が流れ、パイロット弁室25の冷媒圧力が主弁室24の冷媒圧力より低くなり、主弁体60に対して上方(開弁方向)に移動させる力が働く。そして、主弁体60が主弁口21から離れ、主弁口21が開いて、電磁弁1は開弁状態となる。
【0044】
本実施例に係る電磁弁1は、主弁口21を有する弁本体10と、主弁口21を開閉する主弁体60と、弁本体10に取り付けられるホルダ30と、ホルダ30に取り付けられる円筒形状のケース52と、ケース52の内側に配置されるプランジャ53と、ケース52の外側に配置される電磁コイル54と、を有する。弁本体10の上面10cには、取付穴13が配置される。ホルダ30が、円板形状を有しており、取付穴13に配置される。弁本体10が、取付穴13の内側に配置された、主弁体60が配置される円形穴14と、円形穴14を囲む円環壁部15と、を有する。弁本体10における円形穴14を画定する円周面14aが、円環壁部15の内周面を含む。ホルダ30の円板部31の下面31bが、円形穴14と向かい合う。ホルダ30と円環壁部15の先端との間に隙間Cが設けられる。
【0045】
電磁弁1において、弁本体10における円形穴14を画定する円周面14aと、円板形状のホルダ30の下面31bと、が主弁体60を配置する空間を形成する。そのため、ホルダ30が比較的簡易な形状であり、ホルダ30の材料費および加工費を抑制して、電磁弁1の製造コストを低減できる。また、取付穴13に配置されたホルダ30と円環壁部15の先端との間に隙間Cが設けられる。そのため、ホルダ30が弁本体10に取り付けられたときにホルダ30が円環壁部15に接することがなく、当該円環壁部15の変形を防ぐことができる。これにより、円形穴14に配置された主弁体60の移動が妨げられてしまうことを抑制できる。
【0046】
ホルダ30の円板部31の外周面31aに雄ねじ38が形成される。取付穴13を画定する内向きの周面13aに雄ねじ38が螺合される雌ねじ18が形成される。取付穴13においてホルダ30が弁本体10に締結される。このようにすることで、ホルダ30がねじ構造によって弁本体10に取り付けられ、比較的簡易な取付構造によってホルダ30を弁本体10に取り付けることができる。なお、ホルダ30は、ねじ構造以外の取付構造(例えば、圧入や接着剤による接合)によって弁本体10に取り付けられていてもよい。
【0047】
ホルダ30が、円板部31と、円板部31の下面31bから突出する円環突部32と、を有する。円板部31の下面31bが、円形穴14と向かい合う。円環突部32の下端面32bが、取付穴13の底面13cと接する。円環壁部15が、円環突部32の内側に配置される。雄ねじ38が、円板部31の外周面31aから円環突部32の外周面32aまで形成される。このようにすることで、円板部31の外周面31aおよび円環突部32の外周面32aに雄ねじ38を形成することができるとともに、取付穴13の周面13aの上端から下端までの距離(上面10cから底面13cまでの距離)を大きくすることができる。そのため、雄ねじ38および雌ねじ18の山数をより増やすことができ、ホルダ30を弁本体10により強固に締結できる。
【0048】
ケース52の下端52aが、ホルダ30に接合される。ケース52の下端52aの内側に、固定鉄心40が配置される。固定鉄心40が、ホルダ30に取り付けられる。このようにすることで、ホルダ30と固定鉄心40とが別部品であり、固定鉄心40がケース52の内側に配置され、ケース52の外側の雰囲気に露出することを回避できる。これにより、固定鉄心40における耐食性の条件を緩和することができ、電磁石としての性能がより高い材料を固定鉄心40に採用することができる。また、ホルダ30と固定鉄心40とを別々に切削加工で作製することができる。
【0049】
固定鉄心40が、ホルダ30の結合孔34に圧入されている。または、固定鉄心40が、結合孔34にねじ構造で締結されていてもよく、結合孔34に接着剤で接合されていてもよい。このようにすることで、固定鉄心40における溶接性の条件を緩和することができ、電磁石としての性能がより高い材料を固定鉄心40に採用することができる。そのため、電磁弁1の作動性能を高めることができる。
【0050】
また、固定鉄心40が、軟磁性を有する快削鋼製である。このようにすることで、固定鉄心40が磁性ステンレス鋼である場合に比べて、固定鉄心40における電磁石としての性能を高めることができる。そのため、電磁弁1の作動性能を高めることができる。
【0051】
また、ホルダ30が、ステンレス鋼製である。このようにすることで、ホルダ30における耐食性を確保することができる。なお、ホルダ30が、軟磁性を有していてもよい。このようにすることで、ホルダ30によって、電磁コイル54、プランジャ53および固定鉄心40によって形成される磁路を増強することができる。
【0052】
図7に、電磁弁1の変形例の構成を示す。変形例である電磁弁1Aは、弁本体10Aと、ホルダ30Aと、を有する。電磁弁1Aは、弁本体10Aおよびホルダ30A以外は、電磁弁1と同一の構成を有する。弁本体10Aは、取付穴13に代えて、取付穴13Aを有すること以外は弁本体10と同一である。ホルダ30Aは、円環突部32を省略したこと以外はホルダ30と同一である。電磁弁1Aにおいて、電磁弁1と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0053】
弁本体10Aは、取付穴13Aを有している。取付穴13Aは、平面視円環形状を有しており、弁本体10Aの上面10cに配置されている。取付穴13Aの周面13aの上端から下端までの距離(上面10cから取付穴13Aの底面13cまでの距離)は、弁本体10の取付穴13のそれより小さい。弁本体10Aにおいて、円環壁部15の先端は、取付穴13Aの底面13cより下方に配置されている。雌ねじ18は、取付穴13Aの周面13aに形成されている。
【0054】
ホルダ30Aは、全体的に円板形状を有している。ホルダ30Aは、円板部31と、円筒部33と、雄ねじ38と、を有している。雄ねじ38は、円板部31の外周面31aに形成されている。
【0055】
雌ねじ18は、雄ねじ38と螺合される。雌ねじ18と雄ねじ38との螺合を進めると、円板部31が取付穴13Aの底面13c(位置決め面)と接し、取付穴13Aにおいてホルダ30Aが弁本体10Aと締結される。ホルダ30Aが弁本体10Aと締結された状態において、円板部31の下面31b(ホルダ30Aの一面)が円形穴14と上下方向に向かい合い、下面31bと円環壁部15の先端との間に隙間Cが設けられる。円環溝17内の封止部材23がホルダ30A(円板部31)と弁本体10Aとによって上下方向に圧縮される。封止部材23の圧縮量は、円環溝17の底面から取付穴13Aの底面13cまでの高さによって管理される。ホルダ30Aに接する位置決め面は、円環溝17より径方向外方に配置されている。円環溝17は、隙間Cを介して円形穴14の上部と接続されている。電磁弁1Aも、電磁弁1と同一の作用効果を奏する。
【0056】
上述した電磁弁1は、パイロット式の電磁弁であったが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、電磁弁1において、パイロット弁体56を省略して、弁軸55の下端に主弁体60が直接的に接続された構成を採用してもよい。この構成において、プランジャ53の移動に伴って主弁体60が主弁口21を開閉するように、主弁体60の形状や主弁口21の径などを適宜設定する。
【0057】
本明細書において、「円筒」や「円板」等の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材や部材の部分にも用いられている。例えば、「円板形状の部材」は、円板形状の部材と実質的に円板形状の部材とを含む。また、「同一」とは、「同一」と「実質的に同一」とを含む。
【0058】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1、1A…電磁弁、10、10A…弁本体、10a…左側面、10b…右側面、10c…上面、11…流入口、12…流出口、13、13A…取付穴、13a…周面、13c…底面、14…円形穴、14a…円周面、15…円環壁部、15b…外周面、17…円環溝、18…雌ねじ、21…主弁口、22…主弁座、23…封止部材、24…主弁室、25…パイロット弁室、30、30A…ホルダ、31…円板部、31a…外周面、31b…下面、31c…上面、32…円環突部、32a…外周面、32b…下端面、33…円筒部、33c…上端面、34…結合孔、38…雄ねじ、40…固定鉄心、40b…円環平面、41…第1部分、42…第2部分、52…ケース、52a…下端、53…プランジャ、54…電磁コイル、55…弁軸、56…パイロット弁体、56a…パッキン、58…プランジャばね、59…ヨーク、59a…ねじ、60…主弁体、61…胴部、62…上フランジ部、62a…均圧通路、63…下フランジ部、63a…パッキン、65…パイロット通路、66…パイロット弁座、69…開弁ばね、C…隙間、L…軸線