(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129771
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240919BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240919BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20240919BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20240919BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20240919BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/74 B
A47C31/02 H
A47C27/14 B
A47C27/14 C
B68G7/05 C
B60N2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143089
(22)【出願日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】63/489,818
(32)【優先日】2023-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】芳田 元
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳与
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084JA03
3B084JA06
3B084JF02
3B084JF03
3B087DE03
3B087DE09
3B087DE10
3B096AC14
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】振動体の固定をより簡便にすることが可能な乗物用シートを提供する。
【解決手段】乗物用シートSは、振動体60と、振動体60が配置される凹部45が形成されたパッドPと、を備え、振動体60は、少なくとも凹部45を覆い、振動体60を凹部45内に固定する以外の機能を有する被覆部材70により固定される。従来、振動体60を凹部45に固定するために必要であった固定用の接着テープ、布、スラブ等が不要になり、振動体60の固定をより簡便にすることができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体と、
該振動体が配置される凹部が形成されたパッドと、を備え、
前記振動体は、少なくとも前記振動体と重なる位置に配置されると共に、前記振動体を前記凹部に固定する以外の機能を有する被覆部材により固定されることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記被覆部材は、座面を加熱するシート状の発熱体であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記発熱体は、該発熱体の裏面に設けられた固定部により前記パッドに固定され、前記固定部は、前記振動体と重なる位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記発熱体は、前記発熱体の裏面に設けられた固定部により前記パッドに固定され、前記固定部は、前記振動体と重ならない位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記発熱体は、前記振動体と重なる領域の温度が、前記振動体と重ならない領域の温度と異なるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記発熱体は、電熱線を有し、
前記電熱線と重なる前記振動体は、前記振動体の長手方向と前記電熱線の延びる方向とが略直角に交差するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記発熱体は、電熱線を有し、
前記電熱線と重なる前記振動体は、前記振動体の長手方向と前記電熱線の延びる方向とが鋭角又は鈍角で傾斜して交差するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記被覆部材は前記パッドの保護機能を有する表皮であり、
前記表皮は、前記パッドに面ファスナで固定されており、
前記面ファスナは、前記振動体の少なくとも一部と重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記被覆部材は前記パッドの保護機能を有する表皮であり、
前記表皮は、前記パッドに面ファスナで固定されており、
前記面ファスナは、前記振動体と重ならない位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記被覆部材は前記パッドの保護機能を有する表皮であり、
前記表皮は、前記パッドに吊り込み部で固定されており、
前記パッドには、前記吊り込み部が挿入される吊り込み溝が形成されており、
前記振動体は前記吊り込み溝内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記吊り込み部は、前記振動体を避けた位置に配置されることを特徴とする請求項10に記載の乗物用シート。
【請求項12】
前記振動体には、前記振動体の振動を所定の方向に向ける指向性調整部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項13】
前記指向性調整部は、前記振動体の乗員側の面に配置された板状部材であることを特徴とする請求項12に記載の乗物用シート。
【請求項14】
前記指向性調整部は、前記振動体のケースにおいて、他の壁部より厚肉に形成された乗員側の壁部であることを特徴とする請求項12に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に、振動体を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートのシートバック又はシートクッション上に振動体を配置する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。センサ等から取得した信号を基に振動体を振動させることにより、例えば他の車両や障害物等の接近を乗員に通知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、ヒータや表皮といった他部材と振動体との関係において適切な配置や構造について十分に考慮されていなかった。特に振動体を固定するために複雑な構造が用いられてきた。
また、別の課題として、振動体自体についても乗員に対する振動伝達性能等の機能面において改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動体の固定をより簡便にすることが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、振動体と、該振動体が配置される凹部が形成されたパッドと、を備え、前記振動体は、少なくとも前記凹部を覆い、前記振動体を前記凹部内に固定する以外の機能を有する被覆部材により固定されることにより解決される。
【0007】
上記の乗物用シートによれば、振動体が、振動体を凹部内に固定する以外の機能を有する被覆部材により固定されるため、従来、振動体を凹部に固定するために必要であった固定用の接着テープ、布、スラブ等が不要になり、振動体の固定をより簡便にすることができる。また、接着テープ等が不要となることから、部品点数を減らすことができ、製造コストを下げることができる。
【0008】
また、上記の構成において、前記被覆部材は、座面を加熱するシート状の発熱体であるとよい。
シート状の発熱体を用いて、振動体を凹部内に固定することで、従来、振動体を固定していた接着テープ等が不要となり、振動体の固定を簡便にすることがでる。また、接着テープ等が不要となりことから、部品点数を減らすことができ、製造コストを下げることができる。
【0009】
また、上記の構成において、前記発熱体は、前記発熱体の裏面に設けられた固定部により前記パッドに固定され、前記固定部は、前記振動体と重なる位置に配置されるとよい。
発熱体を固定する固定部が振動体と重なる位置に配置されることで、振動体を固定する固定力を向上させることができる。
【0010】
また、上記の構成において、前記発熱体は、前記発熱体の裏面に設けられた固定部により前記パッドに固定され、前記固定部は、前記振動体と重ならない位置に配置されるとよい。
発熱体を固定する固定部が振動体と重ならない位置に配置されることで、振動体がヒータに与える影響を低減させることができる。
【0011】
また、上記の構成において、前記発熱体は、前記振動体と重なる領域の温度が、前記振動体と重ならない領域の温度と異なるように構成されているとよい。
振動体が発熱体の熱を吸収したり、振動体自体が発熱して熱を加えたりする場合がある。振動体と重なる領域の温度を、重ならない領域の温度と異なるように構成することで、振動体による熱の吸収や発熱による差分をなくし、例えば乗員に伝える熱が発熱体の領域全体で均一になるように調整して違和感を与えないようにすることができる。
【0012】
また、上記の構成において、前記発熱体は、電熱線を有し、前記電熱線と重なる前記振動体は、前記振動体の長手方向と前記ヒータ線の延びる方向とが略直角に交差するように配置されているとよい。
振動体を電熱線が延びる方向と直角に交差するように配置することで、乗員は不快を感じ難く、自然な状態で振動を与えることができる。
【0013】
また、上記の構成において、前記発熱体は、電熱線を有し、前記電熱線と重なる前記振動体は、前記振動体の長手方向と前記電熱線の延びる方向とが鋭角又は鈍角で傾斜して交差するように配置されるとよい。
振動体をヒータ線が延びる方向に対して鋭角又は鈍角で傾斜して交差するように配置することで、ヒータ線にかかる振動体との過重負荷のベクトルが横にずれ、それによりヒータ線への影響(例えば振動による切断等)を低減させることができる。
【0014】
また、上記の構成において、前記被覆部材は前記パッドの保護機能を有する表皮であり、前記表皮は、前記パッドに面ファスナで固定されており、前記面ファスナは、前記振動体の少なくとも一部と重なる位置に配置されるとよい。
保護機能を有する表皮を用いて振動体を凹部に固定することで、振動体の固定を簡便にすることができる。また、振動体を固定する接着テープ等が不要となり、部品点数の削減することができる。また、面ファスナが、振動体の一部と重なるように配置されることで、振動体の性能が阻害され難くなる。
【0015】
また、上記の構成において、前記被覆部材は前記パッドの保護機能を有する表皮であり、前記表皮は、前記パッドに面ファスナで固定されており、前記面ファスナは、前記振動体と重ならない位置に配置されるとよい。
保護機能を有する表皮を用いて振動体を凹部に固定することで、振動体の固定を簡便にすることができる。また、振動体を固定する接着テープ等が不要となり、部品点数の削減することができる。また、面ファスナが振動体とが重ならないように配置されることで振動体の性能が阻害され難くなる。
【0016】
また、上記の構成において、前記被覆部材は前記パッドの保護機能を有する表皮であり、前記表皮は、前記パッドに吊り込み部で固定されており、前記パッドには、前記吊り込み部が挿入される吊り込み溝が形成されており、前記振動体は前記吊り込み溝内に配置されるとよい。
保護機能を有する表皮を用いて、振動体を吊り込み溝に固定することで、振動体の固定を簡便にすることができる。また、吊り込み溝と振動体との両立が可能で、表皮の外観への影響を抑制できる。
【0017】
また、上記の構成において、前記吊り込み部材は、前記振動体を避けた位置に配置されるとよい。
吊り込み部材が振動体を避けた位置に配置されることで、吊り込み溝と振動体との両立が可能で、表皮の外観への影響を抑制できる。
【0018】
また、上記の構成において、前記振動体には、前記振動体の振動を所定の方向に向ける指向性調整部が設けられるとよい。
振動体に指向性調整部を設けることで、より効率的に振動を乗員に伝達することができる。
【0019】
また、上記の構成において、前記指向性調整部は、前記振動体の乗員側の面に配置される板状部材であるとよい。
指向性調整部を板状部材とすることで、容易に指向性調整部を振動体に設けることができる。
【0020】
また、上記の構成において、前記指向性調整部は、前記振動体のケースにおいて、他の壁部より厚肉に形成された着座面側の壁部であるとよい。
振動体のケースにおける乗員側の壁部を厚肉に形成して指向性調整部とすることにより、部材点数を増やすことなく、指向性調整部を設けることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の乗物用シートによれば、振動体が、振動体を凹部内に固定する以外の機能を有する被覆部材により固定されるため、従来、振動体を凹部に固定するために必要であった固定用の接着テープ、布、スラブ等が不要になり、振動体の固定をより簡便にすることができる。また、接着テープ等が不要となることから、部品点数を減らすことができ、製造コストを下げることができる。
また、シート状の発熱体を用いて振動体を凹部内に固定することで、従来、振動体を固定していた接着テープ等が不要となり、振動体の固定を簡便にすることがでる。また、接着テープ等が不要となりことから、部品点数を減らすことができ、製造コストを下げることができる。
また、発熱体を固定する固定部が振動体と重なる位置に配置されることで、振動体を固定する固定力を向上させることができる。
また、発熱体を固定する固定部が振動体と重ならない位置に配置されることで、振動体がヒータに与える影響を低減させることができる。
また、振動体と重なる領域の温度を、重ならない領域の温度と異なるように構成することで、振動体による熱の吸収や発熱による差分を無くし、例えば乗員に伝える熱が発熱体の領域全体で均一になるように調整して違和感を与えないようにすることができる。
また、振動体を電熱線が延びる方向と直角に交差するように配置することで、乗員は不快を感じ難く、自然な状態で振動を与えることができる。
また、振動体をヒータ線が延びる方向に対して鋭角又は鈍角で傾斜して交差するように配置することで、ヒータ線にかかる振動体との過重負荷のベクトルが横にずれ、それによりヒータ線への影響(例えば振動による切断等)を低減させることができる。
また、保護機能を有する表皮を用いて振動体を凹部に固定することで、振動体の固定を簡便にすることができる。また、振動体を固定する接着テープ等が不要となり、部品点数の削減することができる。また、面ファスナが、振動体の一部と重なるように配置されることで、振動体の性能が阻害され難くなる。
また、保護機能を有する表皮を用いて振動体を凹部に固定することで、振動体の固定を簡便にすることができる。また、振動体を固定する接着テープ等が不要となり、部品点数の削減することができる。また、面ファスナが振動体とが重ならないように配置されることで振動体の性能が阻害され難くなる。
また、保護機能を有する表皮を用いて、振動体を吊り込み溝に固定することで、振動体の固定を簡便にすることができる。また、吊り込み溝と振動体との両立が可能で、表皮の外観への影響を抑制できる。
また、吊り込み部材が振動体を避けた位置に配置されることで、吊り込み溝と振動体との両立が可能で、表皮の外観への影響を抑制できる。
また、振動体に指向性調整部を設けることで、より効率的に振動を乗員に伝達することができる。
また、指向性調整部を板状部材とすることで、容易に指向性調整部を振動体に設けることができる。
また、振動体のケースにおける乗員側の壁部を厚肉に形成して指向性調整部とすることにより、部材点数を増やすことなく、指向性調整部を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態の第一実施例に係る乗物用シートを示す斜視図である。
【
図2】表皮を外した状態の乗物用シートの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】表皮を外した状態のシートバックを示す正面図である。
【
図4】表皮を外した状態のシートクッションを示す上面図である。
【
図5】従来の振動体の固定構造を示す断面図である。
【
図6】
図3のA-A線又は
図4のB-B線に沿った断面図であり、ヒータと振動体との位置関係を示す図である。
【
図7】ヒータと振動体との位置関係の別例を示す図である。
【
図8A】ヒータ線に対して傾斜するように配置された振動体を示す図である。
【
図8B】ヒータ線の屈曲部と重ねて配置される振動体を示す図である。
【
図9A】第二実施例に係るバックパッドを示す図で、振動体と重なる面ファスナの位置を示す図である。
【
図9B】振動体と重なる面ファスナの別例を示す図である。
【
図9C】振動体と重ならない位置に配置された面ファスナを示す図である。
【
図10】
図9AのC-C線に沿った断面図であり、面ファスナと振動体との位置関係を示す図である。
【
図11】吊り込み溝に配置された振動体を示すバックパッドの正面図である。
【
図13】
図11のE-E線に沿った断面図であり、表皮の吊り込み部を示す図である。
【
図14】吊り込み溝に配置される振動体の別例を示す正面図である。
【
図15】指向性調整部を有する振動体の内部構成を示す斜視図である。
【
図16】指向性調整部を有する振動体の別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0024】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道車両など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
【0025】
また、以下の説明において、「前後方向」とは、乗物用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、乗物用シートの幅方向であり、乗物用シートに着座した乗員(着座者)から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、乗物用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
また、以下に説明する乗物用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、乗物用シートが着座状態、すなわちシートバックが前傾又は後傾していない状態であるケースを想定して説明することとする。
【0026】
<<第一実施例>>
本実施形態の第一実施例に係る乗物用シートSの基本構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、乗物用シートSの斜視図であり、
図1中乗物用シートSの一部については、図示の都合上、表皮6を外してパッドPが露出した構成にて図示している。
【0027】
乗物用シートSは、車両の床上に載置され、車両の乗員(以下、着座者と称する場合もある)が着座するシートである。本実施形態において、乗物用シートSは、車両の前席に相当するフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、乗物用シートSは、後部座席のシートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0028】
乗物用シートSは、
図1に示すように、着座者の背部を支えるシートバック1、着座者の臀部を支えるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。なお、シートバック1、シートクッション2及びヘッドレスト3を纏めてシート本体Shと称する場合がある。
【0029】
シートバック1とシートクッション2とはリクライニング機構5を挟み込むように連結されている。リクライニング機構5により、シートバック1は、シートクッション2に対して回動可能となっており、その傾斜角度が調整可能になっている。
ヘッドレスト3からはヘッドレストピラー31が下方に延びており、シートバック1の上端部と接続している。
【0030】
また、乗物用シートSの下部には、レール装置4が設置されている。レール装置4により、乗物用シートSは、シート本体Shが前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに取り付けられる。レール装置4は、車体フロア上に固定されるロアレール4aと、ロアレール4aに対してスライド移動可能なアッパレール4bとから構成される。
【0031】
<シートフレームF>
乗物用シートSの骨格を形成すシートフレームFの基本的な構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、表皮6を外した状態の乗物用シートSの構成を示す分解斜視図であり、シートフレームF、パッドP及びヒータ70(発熱体)とが示される。
図3は、表皮を外した状態のシートバック1を示す正面図、
図4は、シートクッション2を示す上面図である。
【0032】
乗物用シートSの中には、
図2に示すように、シートフレームFが設けられている。シートフレームFは、シートバック1の骨格を形成するシートバックフレーム10と、シートクッション2の骨格を形成するシートクッションフレーム20と、ヘッドレスト3の骨格を形成するヘッドレストフレーム30とから構成される。
【0033】
シートバックフレーム10は、
図2に示すように、全体として枠状に形成されており、左右に配置される一対のバックサイドフレーム11,11と、アッパフレーム12と、ロアフレーム13とを備える。アッパフレーム12には、ヘッドレスト3のヘッドレストピラー31が挿通される一対のヘッドレストホルダ14が設けられている。
【0034】
シートクッションフレーム20は、
図2に示すように、乗物用シートSの上面視で方形枠状に形成され、左右には、一対のクッションサイドフレーム21,21が設けられている。一対のクッションサイドフレーム21,21は、基本的に左右対称の構成とされた部材であり、シート前後方向に延出して設けられている。
【0035】
また、シートクッションフレーム20は、一対のクッションサイドフレーム21,21を前側で接続する前側接続フレーム(不図示)と、後側で接続する後側接続フレーム22とを有する。また、更に前側接続フレームの前方には板状のパンフレームが設けられている。また、シートクッションフレーム20には前側接続フレームと、後側接続フレーム22の間を橋渡して配置されるクッション用の受圧部材25が設けられている。クッション用の受圧部材25により着座者の臀部を下方から支持することが可能になっている。
【0036】
ヘッドレストフレーム30は、上述したように、ヘッドレスト3の骨格をなす部材である。ヘッドレストフレーム30は、正面視で逆U字状に形成されており、下方に延びるヘッドレストピラー31を、ヘッドレストホルダ14に挿入することで、シートバック1の上端部に取り付けることができる。
【0037】
<パッドP>
図2を用いて、パッドPについて説明する。パッドPは、シートバックフレーム10に取り付けられるバックパッド40と、シートクッションフレーム20に取り付けられるクッションパッド50と、ヘッドレストフレーム30取り付けられるヘッドレストパッド32とからなる。パッドPは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成形により成形されたウレタン基材からなる。
また、バックパッド40、クッションパッド50、ヘッドレストパッド32は、それぞれ表皮6により覆われている。表皮6は、例えばクロス、合成皮革又は本革等から構成されている。
【0038】
<バックパッド40>
バックパッド40は、乗員の背部を支持する本体部41と、背部の側方から支持する土手部42とを有する。また、
図2及び
図3に示すように、上下方向に延びる二本の縦吊り込み溝43と、シート幅方向に延びる横吊り込み溝44とが形成されている。縦吊り込み溝43は、本体部41と土手部42との境界部分に形成されている。また、横吊り込み溝44は、二本の縦吊り込み溝43の上端部分を連結している。
【0039】
また、縦吊り込み溝43の一部には、縦吊り込み溝43に沿って貫通孔47が形成されている。貫通孔47を形成することにより、バックパッド40の変形が容易になっている。また、貫通孔47は、後述する振動体60と上下方向において重なる位置に配置されており、貫通孔47により、振動体60による変形を吸収することができる。
【0040】
<クッションパッド50>
クッションパッド50は、乗員の臀部を支持する本体部51と、臀部を側方から支持する土手部52とを有する。また、
図4に示すように、クッションパッド50には、前後方向に延びる縦吊り込み溝53と、シート幅方向に延びる横吊り込み溝54とが形成されている。縦吊り込み溝53は、本体部41と土手部52との間に配置される。また、横吊り込み溝44は、二本の縦吊り込み溝53,53の間を連結している。
【0041】
<振動体60>
振動体60は、着座した乗員に対して振動を与える装置である。本実施形態では、
図2に示すように、バックパッド40に二つの振動体60が設けられている。また、クッションパッド50にも二つの振動体60が設けられている。バックパッド40に設けられる振動体60とクッションパッド50に配置される振動体60とは同一の機構を有する。
なお、
図2から
図4に示す振動体60の位置や数量は一例であり、バックパッド40やクッションパッド50に設けられる振動体60は一つであってもよく、また、二つ以上の振動体60が、バックパッド40やクッションパッド50に設けられてもよい。
【0042】
振動体60は、ケース61と、ケース61内に収容され振動を発生する偏心モータ62とから構成されている(
図15参照)。なお、振動体60の振動の発生には、リニア振動アクチュエータ又は圧電素子が用いられてもよい。また、振動体60の偏心モータ62からはハーネス63が延びており、車両に搭載されたECU(不図示)に接続されている。ECUにより、振動体60が振動する強さや振動するタイミングを制御することが可能となっている。
【0043】
<収納凹部45>
図2に示すように、バックパッド40の着座面40aには、バック側の振動体60を収納する収納凹部45が形成されている。収納凹部45に振動体60を挿入することで、振動体60を取り付けることができる。
【0044】
また、
図2に示すように、クッションパッド50の着座面50aにも、クッション側の振動体60を収納する収納凹部55が形成されている。収納凹部55に振動体60を挿入することで、振動体60を取り付けることができる。
また、
図6に示すように、収納凹部45,55の底面には、振動体60から延びるハーネス63を通すハーネス孔46,56が形成されており、バックパッド40の背面又はクッションパッド50の底面にハーネス63を引き込むことができる。
【0045】
なお、ハーネス孔46,56は底面に限らず、収納凹部45,55の側壁に形成されてもよい。この場合、例えば、収納凹部45,55の側壁から横吊り込み溝44,54に、ハーネス63を通し、横吊り込み溝44,54の底部から、バックパッド40の背面やクッションパッド50の底面に通じるハーネス孔46,56を形成する。また、横吊り込み溝44、54に形成されている吊り込み用の孔を利用してハーネス63を、バックパッド40の背面やクッションパッド50の底面に引き込んでもよい。
【0046】
<ヒータ70>
図2に示すように、バックパッド40及びクッションパッド50の本体部41,51の着座面40a,50aにはシート状のヒータ70が配置される。
ヒータ70は、ヒータ線71(電熱線)を、シート状の基布72に蛇行させて配設したものであり、柔軟性を備えつつ着座面40a,50aに沿って配置される。基布72は例えば不織布でからなる。
ヒータ線71は、電流が流れることによって発熱する素材(例えば、金属製のワイヤやフィルム等)によって構成されている。ヒータ線71の両端は、ECU(不図示)に接続されており、ECUにより温度調節可能に構成される。
【0047】
<振動体60の固定構造>
以下、バックパッド40及びクッションパッド50に配置される振動体60の固定構造について
図5乃至
図7を参照しながら説明する。
図5は、従来の振動体160の固定構造を模式的に示す断面図であり、
図6及び
図7は、本実施形態の振動体60の固定構造を示す図で、
図3のA-A線又は
図4のB-B線に沿った断面図である。なお、
図5~
図7において、矢印X方向が乗員側、すなわちバックパッド40又はクッションパッドの50の着座面40a、50aがある方向を示しており、矢印Y方向が乗員の反対側、すなわちバックパッド40又はクッションパッド50の裏面がある方向を示している。
【0048】
従来は、
図5に示すように、振動体160を収納凹部145に挿入した後、接着テープ108を、収納凹部145の開口部周辺に貼り付けることにより、振動体160をパッドPに固定していた。そして、振動体160をパッドPに固定した状態で、表皮106を取り付けていた。
【0049】
本実施形態の乗物用シートSは、振動体60を、収納凹部45に挿入した後、接着テープの代わりにシート状のヒータ70を配置し、ヒータ70をバックパッド40又はクッションパッド50に固定することで、収納凹部45内に振動体60を固定している。ヒータ70は接着材73(固定部)、例えば両面テープによってバックパッド40又はクッションパッド50に貼り付けられる。貼り付けられるヒータ70により振動体60が収納凹部45に固定される。すなわち、振動体60は、収納凹部45に振動体60を固定する以外の機能(座面を加熱する機能)を有するシート状のヒータ70により固定されている。
図5に示す従来の固定構造のように、接着テープを収納凹部の周囲に貼り付ける作業が不要となることから、振動体60の固定をより簡便にすることができる。また、従来、振動体の固定に用いられる接着テープが不要となることから、部品点数が削減され製造コストを下げることができる。
【0050】
なお、接着材73の接着領域Rは、
図6に示すように振動体60と重なっていてもよい。すなわち、乗員側から見た場合、ヒータ70をバックパッド40又はクッションパッド50に貼り付けるための接着領域Rは、振動体60と重なっていてもよい。言い換えれば、振動体60とヒータ70との間に接着材73(固定部)が配置されてもよい。接着領域Rが振動体60と重なることで、ヒータ70による振動体60の固定力が向上する。
【0051】
また、接着材73の接着領域Rは、
図7に示すように、振動体60からオフセットしていてもよい。すなわち、乗員側から見た場合、接着領域Rは、振動体60と重ならないように配置されてもよい。ヒータ70に振動体60が接着されないため、振動体60の振動よるヒータ70への影響(例えばヒータ線71の切断等)が低減する。
【0052】
振動体60の素材や種類によっては、振動体60がヒータ70と接触することで、振動体60がヒータ70から熱を奪う、すなわち振動体60がヒータ70からの熱を吸収する場合がある。また、振動体60自体が振動により発熱し、それによりヒータ70を加熱する場合がある。そのため、場所によって乗員に伝わる温度が異なる場合があった。
【0053】
そこで、振動体60の上にヒータ70が配置される構成において、振動体60と重なっている領域Q1(
図6参照)が、重なっていない領域Q2よりも、熱い温度になるように設定されるか、又は、低い温度になるように構成されている。すなわち、ヒータ70からの発熱量を調整することで、ヒータ70の範囲全体で、乗員に伝えられる温度が均一になるように構成されている。
【0054】
振動体60と重なる領域でのみ発熱する温度を高くする手法として以下のものがある。一つは、振動体60と重なる領域Q1のヒータ線71を、重ならない他の領域Q2よりも密に配置する。すなわち、ヒータ線71が折り返す間隔を小さくし、単位面積当たりの発熱量を大きくすることで、重ならない他の領域Q2より発熱する温度が高くなるようにする。
また、重なる領域Q1と、重ならない領域Q2とで、ヒータ線71の系統を別にしてもよい。すなわち、重なる領域Q1に配されるヒータ線71と、重ならない領域Q2に配されるヒータ線71とを別々に制御し、重なる領域Q1のヒータ線71に流れる電力のワット数を高く設定する。
振動体60により熱が奪われることを考慮し、重なる領域Q1でのみ高い温度で発熱するように制御することで、ヒータ70の領域全体として均一な温度にすることができる。
【0055】
また、振動体60と重なる領域Q1で発熱する温度を低くする手法として以下のものがある。
一つは、振動体60と重なる領域Q1のヒータ線71を、重ならない他の領域Q2よりも疎に配置する。すなわち、ヒータ線71が折り返す間隔を大きくし、単位面積当たりの発熱量を小さくすることで、重ならない他の領域Q2より発熱する温度が低くなるように設定する。
【0056】
また、温度を高くする場合と同様に、重なる領域Q1と、重ならない領域Q2とで、ヒータ線の系統を別にしてもよい。すなわち、重なる領域Q1に配されるヒータ線71と、重ならない領域Q2に配されるヒータ線71とを別々に制御することで、重なる領域Q1でのみ低い温度となるように、ヒータ線71に流れる電力のワット数を低く設定する。
振動体60により発生する熱を考慮して、重なる領域Q1でのみ低い温度となるように制御することで、ヒータ70の領域全体として温度が均一に発熱されるようにする。
また、重なる領域Q1でのみ低い温度となるように、振動体60とヒータ70との間に、熱を吸収する熱吸収部材、例えば布材を配置してもよい。
【0057】
次に、ヒータ線71に対する振動体60の位置関係について、
図3、
図4、
図8A及び
図8Bを用いて説明する。
ヒータ線71は、上述したように基布72上において蛇行しており、屈曲する部分以外は、等間隔で平行となるように配置されている。
本実施形態において、振動体60は、
図3及び
図4に示すように、振動体60の長手方向(
図3の上下方向、又は
図4の前後方向)が、ヒータ線71が延びる方向(シート幅方向、
図3及び
図4の左右方向)に対して略直角に交差するよう配置されている。このように配置すること、乗員に対してより自然な状態、すなわち不快を感じにくい状態とすることができる。
【0058】
また、
図8Aに示すように、振動体60は、その長手方向(
図8の矢印I方向)が、ヒータ線71が延びる方向(
図8Aの矢印H方向)に対して、鋭角又は鈍角に傾斜して交差するように配置されてもよい。交差する角度αが鋭角又は鈍角となることで、ヒータ線71にかかる振動体60との過重負荷(境界部分)のベクトルが横にずれ、ヒータ線71への影響、例えば振動による切断等を低減させることができる。
また、
図8Bに示すように、振動体60とヒータ線71の屈曲部71aとが重なるように配置してもよい。
【0059】
<<第二実施例>>
次に、本実施形態の第二実施例に
図9A~
図10を用いて説明する。
図9A~
図9Cは、第二実施例である乗物用シートSAのバックパッド40Aを示す正面図であり、振動体と重なる面ファスナ80の位置を示す図である。
図10は、
図9のC-C線に沿った断面図であり面ファスナ80と、振動体60との位置関係を示す図である。
【0060】
第一実施例の乗物用シートSでは、振動体60の固定にシート状のヒータ70を用いていたが、第二実施例の乗物用シートSAでは、振動体60の固定に、パッドPの保護機能を有する表皮6(被覆部材)を用いていることが主に異なっている。以下、
図1乃至
図2中に図示した構造と同一又は均等の部材については同一符号を用い、その説明を省略する。
【0061】
第二実施例の乗物用シートSAは、振動体60と、振動体60が配置される収納凹部45形成されるバックパッド40とを備える。振動体60は、振動体60と重なる位置に配置される共に、パッドPの保護機能を有する表皮6により固定されている。
図10に示すように、表皮6は、表皮6の裏面に取り付けられた面ファスナ80によって、バックパッド40(パッドP)に固定されている。
【0062】
より詳しく述べると、
図10に示すように、表皮6の裏面には、面ファスナ80のフック部として表皮側ファスナ部材81が取り付けられ、バックパッド40Aの表面には、面ファスナ80のループ部としてパッド側ファスナ部材82が取り付けられている。表皮側ファスナ部材81及びパッド側ファスナ部材82は、接着剤又はクリップ等の周知の固定手段により表皮6及びバックパッド40に固定されている。面ファスナ80により、表皮6はバックパッド40に対して着脱自在に固定することができる。
【0063】
面ファスナ80は、
図9Aに示すように、振動体60の一部と重なる位置に配置されている。言い換えれば、乗員側から見て、面ファスナ80よりも奥に位置するように振動体60が配置している。面ファスナ80が振動体60の一部と重なることで、振動体60の性能に対する阻害を抑制ししつつ固定することができる。
【0064】
このように面ファスナ80を用いて表皮6をバックパッド40に固定することで、従来用いられてきた、振動体60を固定するための接着テープ等を用いることなく、振動体60を収納凹部45に固定することができる。また、面ファスナ80と振動体60との両立が可能である。
【0065】
図9Aに示す面ファスナ80は、振動体60の一部に重なることで、収納凹部45に固定しているが、
図9Bに示すように、面ファスナ80は、振動体60の全体を覆うように配置されてもよい。面ファスナ80が振動体60の全体を覆うことにより、外観への影響、例えば表皮の膨れや皺の発生等を抑制することができる。
【0066】
また、
図9Cに示すように、面ファスナ80が振動体60に直接重ならないようにしてもよい。振動体60を挟むように面ファスナ80を配置することで、振動体60の性能を阻害し難くなる。
【0067】
なお、
図9A~
図9Cには、バックパッド40に表皮6を固定する面ファスナ80が示されているが、クッションパッド50に対して表皮6を固定するために面ファスナ80を用いてもよい。面ファスナ80は、クッションパッド50に設けられる振動体60の一部に重なる位置に配置されてよく、また、面ファスナ80は、クッションパッド50に設けられる振動体60の全体を覆うように配置されてもよい。面ファスナ80は、クッションパッド50に設けられる振動体60を挟むように配置されてもよい。
【0068】
<縦吊り込み溝43内への配置>
振動体60は、
図11に示すように、表皮6を吊り込むための縦吊り込み溝43内に配置されてもよい。
振動体60を縦吊り込み溝43内に配置することで、縦吊り込み溝43を振動体60を収容する収納凹部45の代わりに利用することができる。それにより、例えば表皮6の外観への影響を抑制することができる。
【0069】
なお、振動体60の幅W1は、通常の縦吊り込み溝43の幅W2よりも大きいため、
図12に示すように、振動体60が配置される部分の縦吊り込み溝43の幅W3は、他の部分の幅W2よりも広くなるように形成される。
また、振動体60の高さD1も、通常の縦吊り込み溝43の深さD2より大きいため、振動体60が配置される部分の深さD3は、他の部分の深さD2よりも大きくなるように形成される。
【0070】
また、
図13に示すように、表皮6の裏面には吊り込むための吊り込み部90が設けられており、表皮6は、吊り込み部90がパッド内にインサート成形されたCリング等のワイヤ部材やクリップ部材(係合部)と係合することにより固定される。
なお、振動体60が縦吊り込み溝43内に配置された場合、吊り込み部90が振動体60と干渉する。そのため、
図13に示すように、吊り込み部90に、振動体60と重なる部分に逃げ部91を形成されており、表皮6を吊り込んだ際に、振動体60と吊り込み部90との干渉が避けることが可能に構成されている。
【0071】
図12及び
図13に示すバックパッド40Aでは、縦吊り込み溝43に振動体60が配置されていたが、振動体60は横吊り込み溝44内に配置されてもよい。また、クッションパッド50にも同様の構成が適用されてもよい。すなわち、クッションパッド50の縦吊り込み溝53又は横吊り込み溝54内に振動体60が配置されてもよい。
【0072】
また、
図14に示すバックパッド40Aのように、振動体60(
図14では点線で示す)を縦吊り込み溝43に配置する場合、縦吊り込み溝43を、振動体60を避けるように屈曲して形成してもよい。
すなわち、振動体60を配置するための島部49を土手部42に隣接して設け、島部49を避けるように縦吊り込み溝43の屈曲部48を形成する。振動体60は、島部49に設けられた収納凹部の中に配置される。これにより、縦吊り込み溝43と振動体60とを両立させることができ、表皮6の外観への影響を抑制することができる。
縦吊り込み溝43は、
図14に示すように、島部49をシート内側方向に避けるように配置されてもよい。また、縦吊り込み溝43は、島部49をシート外側方向に避けるように配置されてもよい。
【0073】
縦吊り込み溝43の島部49を避けた屈曲部48に、表皮6を固定する表皮固定点92を配置してもよい。屈曲部48において表皮6の浮きを抑制することができる。
表皮固定点92は、例えばパッド内にインサート成形されたワイヤ部材やCリング等のクリップ部材である。
また、表皮6の吊り込み部90には、縦吊り込み溝43の屈曲部48の始点48aから終点48bの部分に逃げ部91が形成されているとよい。逃げ部91を形成することで表皮6の吊り込みが容易になる。
【0074】
<指向性調整部65>
従来の振動体に内蔵される偏心モータは、全方向に遠心力を発生させて振動していることから、振動に指向性はなく、伝える必要のない方向にも振動する。しかしながら、本実施形態で使用する振動体60は、シートバック1又はシートクッション2に固定されることから、振動を伝えるべき振動方向は乗員側に限定される。そのため、乗員に向けて振動させることができると効率がよい。
【0075】
本実施形態で用いられる振動体60は、ケース61内に偏心モータ62が設けられた振動体であり、ケース61において乗員側に配置される面(
図11のX方向にある面)に指向性調整部65が設けられている。指向性調整部65は、ケース61とは別体として形成された樹脂製の板部材である。
乗員側の面に、指向性調整部65を設けることで、偏心モータ62が回転すると指向性調整部65が乗員に向かって所定方向(
図15の矢印G方向)に振動するようになるため、振動方向を乗員側に向けることができる。
【0076】
指向性調整部65は、別体として形成された樹脂製の板部材が好適であるが、指向性調整部65は金属製の板部材であってもよい。
また、指向性調整部65は、ケース61の乗員側の面61aと同等の大きさであることが望ましいが、指向性調整部65は、ケース61の乗員側の面61aより小さくても大きくてもよい。指向性調整部65を、ケース61の乗員側の面61aと同等の大きさとすることにより、振動の強さと配置性のバランスがとれるようになる。
【0077】
指向性調整部65は、ケース61の乗員側の面61cにおいて、両面テープ等の接着手段によりケース61に固定されている。指向性調整部65は、ネジ等の係合部材により、ケース61に係合固定されてもよい。
【0078】
指向性調整部65を有する振動体60の別例(振動体60A)を
図16に示す。振動体60Aの指向性調整部65Aは、ケース61Aの乗員側の面に配置される壁部61Aaを他の壁部61Abよりも厚く形成し、肉厚部とすることにより実現されている。すなわち、指向性調整部65はケース61Aと一体になるように形成されている。
ケース61の一部を肉厚に形成して、指向性調整部65Aと一体的に形成することで、指向性調整部65を別体として形成する場合よりも部品点数を削減することができる。
【0079】
以上、本実施形態に係る乗物用シートについて図を用いて説明した。なお、本実施形態では、車両に搭載された乗物用シートに適用しているが、振動体が設けられるシートは乗物用シートに限定されない。振動体が設けられるシートは、通常の椅子やソファーであってもよく、着座面を備えるものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
S、SA 乗物用シート
Sh シート本体
F シートフレーム
P パッド
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 レール装置
4a ロアレール
4b アッパレール
5 リクライニング機構
6 表皮
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
12 アッパフレーム
13 ロアフレーム
14 ヘッドレストホルダ
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 後側接続フレーム
30 ヘッドレストフレーム
31 ヘッドレストピラー
32 ヘッドレストパッド
40 バックパッド
40a 着座面
41 本体部
42 土手部
43 縦吊り込み溝
44 横吊り込み溝
45 収納凹部(凹部)
46 ハーネス孔
47 貫通孔
48 屈曲部
48a 屈曲部の始点
48b 屈曲部の終点
49 島部
50 クッションパッド
51 本体部
52 土手部
53 縦吊り込み溝
54 横吊り込み溝
55 収納凹部
56 ハーネス孔
60、60A、60B、60C、60D 振動体
61 ケース
61a 乗員側の面
62 偏心モータ
63 ハーネス
65 指向性調整部
67 板状部材
68 蓋部
69 ケース本体
70 ヒータ
71 ヒータ線
71a 屈曲部
72 基布
73 接着材(固定部材)
80 面ファスナ
81 表皮側ファスナ部材
82 パッド側ファスナ部材
90 吊り込み部
91 逃げ部
92 表皮固定点