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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129778
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物及び硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20240919BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240919BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K3/01
C08L33/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181751
(22)【出願日】2023-10-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2023038377
(32)【優先日】2023-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】森脇 佑也
(72)【発明者】
【氏名】松田 知也
(72)【発明者】
【氏名】浅田 耕資
(72)【発明者】
【氏名】呑海 克
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩気
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成寿
(72)【発明者】
【氏名】竹中 直巳
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BG01W
4J002BG05W
4J002BG07W
4J002BG07X
4J002CD01Y
4J002CD02Y
4J002DD016
4J002DE056
4J002DG036
4J002DH026
4J002EC076
4J002EF006
4J002EG046
4J002EN136
4J002EU046
4J002EU096
4J002EV236
4J002EW176
4J002EZ036
4J002EZ046
4J002FD206
4J002GH01
4J002GJ01
4J002HA03
(57)【要約】
【課題】より低温での硬化性能を有し、かつ、水性化にも対応することができるエステル交換を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物を得る。
【解決手段】エステル基(a)、エポキシ基(b)及び水酸基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、エステル交換触媒(B)を含有し、エステル基は、(a-1)~(a―5)のいずれかである熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル基(a)、エポキシ基(b)及び水酸基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、エステル交換触媒(B)を含有し、エステル基は、以下の(a-1)~(a―5)のいずれかであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(a-1) 下記一般式(1)で表される化合物
【化1】
n1:1~10
(式中、R、R,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造。
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数50以下のアルキル基。
上記一般式(1)で表される化合物は、R-[COOR]n基が下記一般式(1-1)のラクトン構造であってもよい。)
【化2】
(a-2)上記(a-1)を構成単位とする重合体
(a-3)下記一般式(2)で表される構造を有する化合物。
【化3】
n=0~20
は、炭素数50以下のアルキル基。
は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
(a-4)下記一般式(3)又は(4)で表される構造を有する化合物
【化4】
【化5】
(上記一般式(3)、一般式(4)のいずれにおいても、Rは炭素数50以下のアルキル基。
は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
(a-5)下記一般式(5)及び/又は一般式(6)
【化6】
(Rは、1級又は2級アルキル基を表す。
Xは、炭素数5以下の炭化水素基又は-OR基を表す。
【請求項2】
樹脂成分(A)は、更に、不飽和官能基を含むものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂成分(A)は、更にカルボキシル基を有するものである請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂成分(A)は、水性組成物である請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂成分(A)は、カルボキシル基を中和することで水性化したものである請求項4記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させることによって得られたものであることを特徴とする硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及び硬化膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物についての検討を行っている(特許文献1~3)。最近の検討によって、エステル交換反応を硬化反応とすることで、一般的に知られているメラミン樹脂やポリイソシアネート化合物を使用した硬化と同等の硬化性能を確保することができることが明らかになりつつある。
【0003】
一方、近年、省エネルギーの要請から、従来以上に低温での硬化を図ることが望まれている。特許文献1~3に記載したような各種方法においても、十分な低温化を図ることができているが、従来にないさらに低温での硬化を図ることができれば好ましいものである。更にVOCの観点からハイソリッドタイプ、水性化などの検討も広く行われている。
【0004】
特許文献4には、特定の構造で表されるエステル基を含有する化合物を使用し、エステル交換によって硬化反応を生じさせる硬化性樹脂組成物が開示されている。しかし、十分な低温硬化性を得るための詳細な検討は行われていない。
【0005】
特許文献5には、エステル交換反応を硬化反応とする樹脂組成物においてエポキシ化合物を配合することが記載されている。
特許文献6には、このようなエステル交換反応を熱硬化性樹脂組成物において、不飽和基を導入することで、エネルギー線硬化機能も有するデュアルキュアタイプの硬化性組成物とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6398026号公報
【特許文献2】国際公開2019/069783
【特許文献3】国際公開2019/139069
【特許文献4】特開2003-119401号公報
【特許文献5】特開平2-147675号公報
【特許文献5】国際公開2021/006290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑み、より低温での硬化性能を有し、かつ、水性化にも対応することができるエステル交換を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物及びこれを使用して得られた硬化膜を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エステル基(a)、エポキシ基(b)及び水酸基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、エステル交換触媒(B)を含有し、エステル基は、以下の(a-1)~(a―5)のいずれかであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
(a-1) 下記一般式(1)で表される化合物
【0009】
【化1】
【0010】
n1:1~10
(式中、R、R,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造。
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数50以下のアルキル基。
上記一般式(1)で表される化合物は、R-[COOR]n基が下記一般式(1-1)のラクトン構造であってもよい。)
【0011】
【化2】
【0012】
(a-2)上記(a-1)を構成単位とする重合体
(a-3)下記一般式(2)で表される構造を有する化合物。
【0013】
【化3】
n=0~20
は、炭素数50以下のアルキル基。
は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
(a-4)下記一般式(3)又は(4)で表される構造を有する化合物
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
(上記一般式(3)、一般式(4)のいずれにおいても、Rは炭素数50以下のアルキル基。
は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
(a-5)下記一般式(5)及び/又は一般式(6)
【0017】
【化6】
(Rは、1級又は2級アルキル基を表す。R2は、水素又はメチル基を表す。
Xは、炭素数5以下の炭化水素基又は-OR基を表す。
【0018】
樹脂成分(A)は、更に、不飽和官能基を含むものであってもよい。
樹脂成分(A)は、更にカルボキシル基を有するものであってもよい。
樹脂成分(A)は、水性組成物であってもよい。
樹脂成分(A)は、カルボキシル基を中和することで水性化したものであってもよい。
本発明は上記熱硬化性樹脂組成物を硬化させることによって得られたものであることを特徴とする硬化膜でもある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、より低温での優れた硬化性能を有し、かつ、水性化にも対応することができる。またカルボンキシル基を有する化合物が、密着性や顔料分散の向上のために使用された場合も、充分な硬化性能を得ることができるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、エステル交換反応を架橋反応とする熱硬化性樹脂組成物についての検討を行ってきた。これによって、多くの知見を得てきた。
これらの知見の一つとして、上述した(a-1)~(a-5)のようなエステル基を有する熱硬化性樹脂組成物は、特に低温での硬化性能に優れるということが挙げられる。
【0021】
エステル交換反応による架橋は、酸、塩基、金属触媒等の一般的な交換触媒の使用が可能である。これまでの検討においては、より低温での架橋を目指す場合、金属触媒を使用するのが有効であった。
熱硬化性樹脂組成物を水系化する場合、樹脂中にカルボンキシル基を含有させて中和により水性化させるのが一般的であるが、このような組成とした場合、このカルボンキシル基が阻害要因となるため、低温での硬化を充分に行うことができなかった。
【0022】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ基を有するものであることから、熱硬化性能がより高いものであることから、このような問題が改善されると推測される。さらに具体的には、水性化に必要なカルボン酸を焼付時にエポキシ基で反応させることで、水性化樹脂でも低温でのエステル交換反応が生じていると推測される。
【0023】
本発明は、上記(a-1)~(a-5)で表されるようなエステル基(a)、エポキシ基(b)及び水酸基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、エステル交換触媒(B)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0024】
上記(a-1)~(a-5)で表されるようなエステル基(a)は、理由は不明であるが、エステル交換反応の反応性が高い。このため、当該官能基を有するエステル化合物を樹脂成分(A)の一部又は全部として使用することで、従来以上に優れた硬化性能を有する熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0025】
また、このような反応性の向上の効果は、どのような触媒を使用したかにかかわらず、得ることができる。すなわちエステル交換触媒としては、酸触媒、塩基性触媒、金属化合物触媒が知られているが、これらのいずれを使用した場合においても優れた硬化性能が得られる。なかでも、塩基性触媒、金属化合物触媒を使用することが好ましい。
【0026】
本開示の熱硬化性樹脂組成物は、塗料分野、接着剤分野、電子材料分野等、極めて多くの分野において使用できるものである。よって、分野ごとに特有の想定される課題があり、これによって、使用できる触媒が制限される場合もある。このような場合であっても、各目的に適した触媒を使用することができるという点でも好ましいものである。
【0027】
更に、熱硬化性樹脂組成物を塗料として使用し、ウェットオンウェットでの塗装を行う場合にも、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、従来にない良好な効果を有するものであり、好適に使用することができる。
【0028】
自動車塗料等の塗装分野においては、複層の塗膜を積層した複層塗膜を形成することがしばしば行われている。
このような複層塗膜の形成においては、水性ベース塗料の塗装後乾燥のみを行って熱硬化を行っていない未硬化塗膜上に溶剤系クリヤー塗料を塗装し、多層系の塗膜を同時に硬化させるという塗膜形成方法が一般的に行われている。
【0029】
このような塗装においては、水性ベース塗膜の成分がクリヤー塗膜に移行することとなる。これによって、溶剤系クリヤー塗料の触媒活性が失活し、クリヤー塗料の硬化性が十分に得られなくなる場合もあった。このため、十分に低温で硬化させることができず、低温硬化という効果が十分に得られないことがあった。
【0030】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上述したように反応性が高いものであることから、上述したウェットオンウェットでの複層塗膜の形成において、他の層の塗膜との混層を生じた場合でも、比較的低温で硬化させることができる。これによって、効率よく低温での硬化によって複層塗膜を形成することができるものである。
【0031】
よって、上述したウェットオンウェットでの複層塗膜の形成において、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、下層の水性ベース塗料組成物として使用することもできるし、上層の溶剤系クリヤー塗料組成物として使用することもできる。また、これらの両方を本発明の熱硬化性樹脂組成物とすることもできる。
上記(a-1)~(a-5)で表されるようなエステル基(a)の構造を有するエステル基を有する化合物は、いずれも公知の化合物であるが、これらについて以下簡単に説明する。
【0032】
(a-1) 下記一般式(1)で表される化合物
【0033】
【化7】
【0034】
n1:1~10
(式中、R、R,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造。
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数50以下のアルキル基。
上記一般式(1)で表される化合物は、R-[COOR]n基が下記一般式(1-1)のラクトン構造であってもよい。)
【0035】
【化8】
【0036】
このような化合物中のエステル基はエステル交換反応を生じやすいものである。さらに、このような化合物は不飽和基を有するものであることから、この不飽和基によってエネルギー線硬化も生じさせることができる。このため、熱硬化及びエネルギー線硬化の両方で硬化させることができる、デュアルキュアタイプの熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0037】
上記一般式(1)で表される構造としてより具体的には、例えば、
【0038】
【化9】
:1~10
(式中、Rは、H又はメチル基。
10は、主鎖の原子数が48以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。
11は、炭素数50以下のアルキル基。)
で表されるものが例示できる。このような化合物は(メタ)アクリル酸の誘導体であり、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を原料として使用する公知の合成方法によって得ることができる。
【0039】
上記R10の主鎖の原子数は、40以下であることがより好ましく、30以下であることが更に好ましく、20以下であることが更に好ましい。R10の主鎖に含まれてもよい原子としては特に限定されず、炭素原子のほかに酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等を有するものであってもよい。更に具体的には、R10の主鎖中には、アルキル基のほかにエーテル基、エステル基、アミノ基、アミド基、チオエーテル基、スルホン酸エステル基、チオエステル基、シロキサン基等を有するものであってもよい。
【0040】
上記一般式(5)で表される構造として更に具体的には、例えば、下記一般式(12)で表される化合物等を挙げることができる。
【0041】
【化10】
(式中、R20は、炭素数1~50のアルキル基。
21は、主鎖の原子数が44以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。
22は、H又はメチル基。
23は、炭素数50以下のアルキル基。
24は、H又はメチル基。
は、0又は1。
は、1又は2。)
【0042】
上記一般式(5)で表される化合物は、下記一般式(31)で表される官能基及び不飽和基を有する化合物であってもよい。
【0043】
【化11】
【0044】
n=0~20
は、炭素数50以下のアルキル基。
は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0045】
すなわち、一般式(1)で表される化合物において、COOR基が上記一般式(31)で表されるような構造を有するものであってもよい。
【0046】
上記一般式(31)で表されるエステル基は、理由は不明であるが、エステル交換反応の反応性が高い。このため、当該官能基を有するエステル化合物を樹脂成分の一部又は全部として使用することで、従来以上に優れた硬化性能を有する熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
このため、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上を満たす熱硬化性樹脂組成物を得るための樹脂として好適に使用することができる。
【0047】
(一般式(31)の構造について)
上記一般式(31)の構造は、α置換カルボン酸エステル骨格を基本とするものである。一般式(31)において、nは0~20である。
nの下限は、0であることがより好ましい。nの上限は5であることがより好ましい。更に、上記一般式(31)においてnの値が異なる複数の成分の混合物であってもよい。この場合nの平均値navは、0~5であることが好ましい。navの上限は3であることがより好ましい。navの測定は、NMR分析によって行うことができる。さらに、nの値についてもNMR分析によって測定することができる。nは0であることが最も好ましい。
【0048】
上記一般式(31)において、Rとしては炭素数50以下の任意のアルキル基を使用することができ、1級、2級、3級のいずれであってもよい。
【0049】
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、上記一般式におけるR)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。
最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0050】
上記アルキルエステル基として具体的には、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基、t-ブチルアルキル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。
【0051】
上記一般式(31)で表される構造と、不飽和結合を有する化合物として、具体的には、例えば、下記一般式(36)で表される化合物が得られる。
【化12】
(式中、Rは、炭素数50以下のアルキル基。
は、水素又はメチル基。
は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
nは、0~20)
【0052】
上記一般式(36)で表される化合物におけるRは、炭素数50以下であれば、1級、2級、3級のいずれであってもよい。但し、1級又は2級であることがより好ましく、1級であることが最も好ましい。
【0053】
上記一般式(5)で表される化合物は、下記一般式(41)で表される官能基及び/又は下記一般式(42)で表される官能基、並びに、不飽和基を有する化合物であってもよい。
【0054】
【化13】
【0055】
【化14】
(上記一般式(41)、一般式(42)のいずれにおいても、Rは炭素数50以下のアルキル基。
は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
【0056】
このような化合物としてより具体的には、以下の一般式で表される化合物を挙げることができる。
【0057】
【化15】
【0058】
以上に例示した方法で合成することができる一般式(1)で表される化合物の具体的な化学構造の例を以下に示す。なお、本発明は以下で例示する化合物に限定されるものではない。
【0059】
【化16】
(上記一般式中、Rは、炭素数50以下のアルキル基を表す)
【0060】
(a-2)上記(a-1)を構成単位とする重合体
上述した(a-1)の化合物は、不飽和基を有するものであることから、この不飽和基を重合させることで、重合体とすることができる。このような重合体も本発明において好適に使用することができる。
本発明において使用される重合体は、上記一般式(1)で表される単量体のみからなるホモポリマー、共重合体とすることもできるし、その他の単量体を使用した共重合体とすることもできる。
上記重合体において使用可能なその他のモノマーとしては特に限定されず、重合可能な不飽和基を有する単量体であれば任意のものを使用することができる。使用できる単量体を以下に例示する。
【0061】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートのような、各種(メタ)アクリル酸エステル;
エチレン、プロピレンもしくはブテン-1のような、種々のα-オレフィン類;
塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンのような、フルオロオレフィンを除く、種々のハロゲン化オレフィン類;
スチレン、α-メチルスチレンもしくはビニルトルエンのような、種々の芳香族ビニル化合物;N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、もしくはN-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのような、種々のアミノ基含有アミド系不飽和単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのような、種々のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレートもしくはピペリジニルエチル(メタ)アクリレートのような、種々のアミノ基含有単量体;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸のような、種々のカルボキシル基含有単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アリルグリシジルエーテルのような、種々のエポキシ基含有単量体;マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸のような、各種のα、β-不飽和ジカルボン酸と、炭素数が1~18である一価アルコールとのモノ-ないしはジエステル類;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、メチルジエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくはγ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランのような、種々の加水分解性シリル基を含有する単量体;
ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンもしくは、ヘキサフルオロプロピレンのような、種々のふっ素含有α-オレフィン類;またはトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテルもしくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテルのような、各種のパーフルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテルないしは(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(ただし、アルキル基の炭素数は1~18の範囲内であるものとする。)などのような種々のフッ素原子含有単量体;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、n-ペンチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルもしくはフェニルエチルビニルエーテルのような、種々のアルキルビニルエーテルないしは置換アルキルビニルエーテル類;
シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくはメチルシクロヘキシルビニルエーテルのような、種々のシクロアルキルビニルエーテル類;ビニル-2,2-ジメチルプロパノエート、ビニル-2,2-ジメチルブタノエート、ビニル-2,2-ジメチルペンタノエート、ビニル-2,2-ジメチルヘキサノエート、ビニル-2-エチル-2-メチルブタノエート、ビニル-2-エチル-2-メチルペンタノエート、ビニル-3-クロロ-2,2-ジメチルプロパノエートなどをはじめ、さらには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニルもしくはラウリン酸ビニル、C9 である分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C10である分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C11である分岐脂肪族カルボン酸ビニルまたはステアリン酸ビニルのような、種々の脂肪族カルボン酸ビニル;あるいはシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルもしくはp-tert-ブチル安息香酸ビニルのような、環状構造を有するカルボン酸のビニルエステル類などを挙げることができる。
【0062】
水酸基含有単量体としては、特に限定されず、以下のものを挙げることができる。2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルアクリルアミドもしくは6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルのような、種々の水酸基含有ビニルエーテル類;またはこれら上掲の各種のビニルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテルのような、種々の水酸基含有アリルエーテル;またはこれら上掲の各種のアリルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
あるいは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような、種々の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれら上掲の各種の(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの付加反応主成分などである。
【0063】
また、単量体としての水酸基含有単量体は、直接水酸基を有するものではなく、分子数5以上の連結鎖を介して水酸基を有するものとした場合には、水酸基が樹脂中で動きやすくなるため、反応を生じやすいという点で好ましい。
【0064】
更に、以下で詳述するグリシジル(メタ)アクリレート等のように、不飽和基とエポキシ基の両方を有する化合物も単量体として使用することができる。
【0065】
本発明においては、上述した各種単量体を必要に応じて組み合わせ、重合させることによって、上記一般式(1)で表される構造と水酸基の両方を有する化合物、上記一般式(1)で表される構造(a)に由来する構成単位、水酸基及びエポキシ基からなる群より選択される1又は2以上の官能基を有する重合体とすることができる。更に、水溶化するために必要とされる上述した官能基も、目的に応じて必要な割合で組み合わせて樹脂中に導入することができる。
【0066】
上記重合体は、その製造方法を特に限定されるものではなく、公知の方法により重合することによって製造することができる。より具体的には、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法、水溶液重合法、懸濁重合法、UV硬化法、等の重合方法を挙げることができる。
【0067】
また有機溶媒中での溶液重合を行った場合、その後、公知の操作を行って水性化することによって、水性熱硬化性樹脂組成物に使用できる形態としたものであってもよい。
【0068】
また、上述した単量体を含む組成物を重合させることによって得られた重合体の側鎖官能基を反応させることによって、側鎖に水酸基及び/又は上記一般式(1)で表される構造(a)を導入したものであってもよい。側鎖への反応としては特に限定されず、エステル交換、イシアネートとの反応、エポキシとの反応、シランとの反応、メラミン樹脂との反応、付加反応、加水分解、脱水縮合、置換反応等を挙げることができる。
【0069】
更に、上述した反応によって、側鎖に不飽和基を導入するものであってもよい。具体的には、(メタ)アクリル酸を共重合した後、グリシジルメタクリレートを加え、カルボキシ基とエポキシの反応により樹脂の側鎖に不飽和基を導入する方法や、ヒドロキシメタクリレートを共重合した後、(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチルを加え、水酸基とイソシアネート基を反応させることで不飽和基を導入する方法等の反応によって側鎖に不飽和基を導入することができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物が重合性不飽和基を有するものであると、熱硬化及びエネルギー線硬化の両方を行うことができるデュアルキュアタイプの硬化性樹脂組成物とすることができる点で好ましい。
【0070】
上記重合体の分子量は特に限定されるものではなく、例えば、重量平均分子量が3,000~1,000,000とすることができる。上記重量平均分子量の上限は、300,000であることがより好ましく、100,000であることが更に好ましく、50,000であることが更に好ましい。上記重量平均分子量の下限は、3,000であることがより好ましく、4,000であることが更に好ましい。
重量平均分子量が通常5,000~100,000好ましくは5,000~50,000の範囲内の水溶性アクリル樹脂、或いは重量平均分子量が50,000以上、好ましくは100,000以上のアクリル樹脂エマルションの分散質であるアクリル樹脂粒子を挙げることができる。
水性アクリル樹脂は、水酸基を含有することが望ましく、水分散性又は他成分との相溶性、形成される塗膜の硬化性等の観点から、一般に20~200mgKOH/g、特に20~150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。また、水性アクリル樹脂は、一般に1~100mgKOH/g、特に10~70mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0071】
(a-3)下記一般式(2)で表される構造を有する化合物。
【化17】
n=0~20
は、炭素数50以下のアルキル基。
は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
上述したように、カルボン酸基を有する化合物のカルボン酸基を上記一般式(1)で表される構造に変換した化合物も使用することができる。このような化合物は、カルボン酸又はその誘導体を上記一般式(2)で表される化合物と反応させることで得ることができる。なお、上記(A-1)の重合に使用される、一般式(1)で表される構造及び不飽和基の両方を有する化合物も、不飽和基含有化合物の状態で(A-2)の成分として使用することができる。
【0072】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において使用するには、2以上の官能基を有する化合物であることが好ましく、2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、カルボキシル基及び水酸基を有するヒドロキシカルボン酸等を使用することができる。
【0073】
各種のポリカルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このようなポリカルボン酸を公知の方法によってアルキルエステル化した化合物も本発明において使用することができる。
【0074】
このような化合物をアルキルエステル基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができるという点で好ましい。
【0075】
ここで使用するポリカルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;
ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
等を挙げることができる。
【0076】
上記ポリカルボン酸のカルボン酸基を上記一般式(1)で表される構造に置換した化合物は、分子量が10,000以下であることが好ましい。このようなものとすることで、分子が動きやすく硬化が進行する点で好ましいものである。分子量は6,000以下、4000以下、2000以下、1000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。上記分子量は、NMR等の化学分析手段によって、化合物の化学構造を明らかとして、これによって明らかにすることができる。また、nの値が異なる複数種の化合物の混合物である場合は、当該混合物中に分子量が3000以下の成分を一部に含んでいるものであればよい。
【0077】
本発明においては、一般式(1)で表される構造を有する化合物の好適な例として、下記一般式(11)で表される化合物を挙げることができる。
【0078】
【化18】
(Rは、炭素数50以下のアルキル基。
は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
xは、1~8
n=0~20)
【0079】
更に、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、ベンゼン環を有するものであることも好ましい。すなわち、ベンゼン環に2又は3のカルボキシル基を有するような化合物のカルボキシル基を上記一般式(1)の構造に置換した化合物がこれにあたる。
【0080】
このような化合物を硬化剤として使用すると、ベンゼン環を有することによって、耐熱性や強度に優れた硬化物とすることができる点で好ましい。このようなカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等を挙げることができる。これらのなかでも、トリメリット酸を使用することが特に好ましい。トリメリット酸のカルボキシル基を一般式(1)の構造に変換した化合物の化学式を下記一般式(12)として表す。
【0081】
【化19】
は、炭素数50以下のアルキル基。
は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
n=0~20
【0082】
更には、クエン酸又はその誘導体におけるカルボン酸基を、上述した一般式(2)で表される構造とした場合、
【化20】
で表される構造となる。
なお、Rは特に限定されないが、Hまたは炭素数が20以下のアルキル基であっても良いし、構造中にエステル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、ウレタン、芳香族、不飽和基を有しても良い。
【0083】
(a-4)下記一般式(3)又は(4)で表される構造を有する化合物
【化21】
【化22】
(上記一般式(3)、一般式(4)のいずれにおいても、Rは炭素数50以下のアルキル基。
は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
【0084】
このような化合物としては特に限定されず、各種カルボン酸をアルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物と反応させることで、上述した官能基に変換することで得られる化合物を使用することができる。カルボン酸としては特に限定されず、上記(a-3)において例示した各種カルボン酸を挙げることができる。
【0085】
(a-5)下記一般式(5)及び/又は一般式(6)
【化23】
(Rは、1級又は2級アルキル基を表す。R2は、水素又はメチル基を表す。
Xは、炭素数5以下の炭化水素基又は-OR基を表す。
【0086】
(エポキシ基)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ基を有するものである。
上記エポキシ基は、組成物中にどのような形態で存在するかは問わず、脂肪族、脂環族、芳香族等の任意のエポキシ化合物を使用することができる。また、上述した一般式(1)で表される官能基及び/又は水酸基とエポキシ基の両方を有する化合物を使用するものであっても差し支えない。さらに重合体として、一般式(1)で表される官能基及び/又は水酸基とエポキシ基を有する重合体としてエポキシ基が存在するものであってもよい。
【0087】
このようなエポキシ基の代表的なものとしては、グリシジル基、下記一般式(21)
【化24】
で表される官能基を有する脂環族エポキシ化合物、更に、その他の公知の各種エポキシ化合物を挙げることができる。
【0088】
(グリシジル基を有する化合物)
グリシジル基を有する化合物としては、グリシジル基と重合性不飽和基の両方を有する化合物を使用して重合体としたもの、グリシジル基と重合性不飽和基の両方を有する化合物、いわゆるエポキシ樹脂として汎用されているビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、等の任意の公知の化合物を使用することができる。
【0089】
グリシジル基と重合性不飽和基の両方を有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマーが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これを原料として使用した重合体の重合方法は特に限定されず、公知の方法によって得ることができる。
【0090】
本発明においては、その他の公知のエポキシ化合物を使用することができる。例えば、
【化25】
で表されるようなグリシジルエーテル化合物等を挙げることができる。このようなエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0091】
例えば、エピクロルヒドリンを使用すれば、これをフェノール化合物、カルボン酸化合物、水酸基含有化合物等と反応させることで、種々の骨格を有する化合物に対してエポキシ基を導入することができる。このような任意のエポキシ化合物に対して、上述した反応を行うことで、上述した一般式(41)で表される官能基を有する化合物を得ることができる。このような反応の一般式を以下に示す。
【0092】
【化26】
【0093】
上記一般式(21)で表される脂環族エポキシ化合物を使用することもできる。このような脂環式エポキシ化合物としては、ビニルシクロヘキセンモノオキシド(「セロキサイド2000(ダイセル化学工業(株)製)」)、ビニルシクロヘキセンジオキシド(「ERL-4206(ユニオン・カーバイド社製」)、リモネンジオキシド(「セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製)」)、シクロヘキセンオキシド、長鎖エポキシ化合物(「UVR-6126(ユニオン・カーバイド社製」等)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「サイラキュアUVR-6110(ユニオン・カーバイド社製)」)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート(「サイラキュアUVR-6128(ユニオン・カーバイド社製)」等)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン、エポキシ化テトラヒドロベンジルアルコール(「ETHB(ダイセル化学工業(株)製)」)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートおよびそのカプロラクトン変性物(「サイクロマーM100(ダイセル化学工業(株)製)」、「サイクロマーM101(同)」、「サイクロマーA200(同)」等)、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)-4,5-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびそのカプロラクトン変性物(「エポリードGT301(ダイセル化学工業(株)製)」、「エポリードGT302(同)」等)、1,2,3,4-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)テトラカルボキシレートおよびそのカプロラクトン変性物(「エポリードGT401(同)」、「エポリードGT403(同)」等)等が挙げられる。
【0094】
その他、以下に例示した化合物も使用することができる。
モノエポキシ化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート等が挙げられる。
多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。更にはこれらのエポキシ化合物をエマルション化したものや、マイクロカプセル化したものを使用することも出来る。
【0095】
(水酸基を含有する化合物)
本発明の樹脂成分(A)は、水酸基が必須となる。ここで、水酸基は、上述した一般式(1)で表される構造を有する化合物又はエポキシ基を有する化合物中に存在するものであってもよいし、別途水酸基含有化合物を使用するものであってもよい。
以下、上述した一般式(1)で表される構造を有する化合物と別に水酸基を含有する化合物を配合するときに使用することができる化合物を例示する。
【0096】
(アクリルポリオール)
上述した、水酸基含有単量体を一部又は全部として使用したアクリル重合体は、本発明において好適に使用することができる。このようなアクリルポリオールとしては任意の公知のものを使用することができる。
【0097】
(低分子量ポリオール)
また、分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物として低分子量ポリオール(具体的には分子量2,000以下)を使用してもよい。
低分子量ポリオール(B-3)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール等を挙げることができる。
【0098】
このような低分子量ポリオールは、汎用品として知られているものであり、安価で入手することができる。更に低分子ポリオールは水溶性が高く、水系での硬化を目的とする場合は架橋剤として好適に使用できる。
【0099】
(重合性不飽和官能基)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更に、重合性不飽和官能基を有するものであってもよい。重合性不飽和官能基を有するものとすると、いわゆるデュアルキュアという、熱による硬化とエネルギー線硬化の両方を行うことができる樹脂組成物とすることができる。このようなデュアルキュア自体は公知のものであり、例えば、上述した特許文献6等においても記載されたものである。一方、本発明のように、一般式(1)で表される官能基、エポキシ基、水酸基を有するような硬化系に関してデュアルキュアとすることについては、新規な発明となる。
【0100】
上述したように、本発明の一般式(1)で表される官能基、エポキシ基、水酸基を有するような硬化系は、低温硬化を図ることができるものである。そして、不飽和結合の重合によるエネルギー線硬化を阻害するような成分を有するものではないため、デュアルキュアにも対応できるものである。
【0101】
このような重合性不飽和基を有する化合物は、本発明の一般式(1)で表される官能基、エポキシ基、水酸基のうち少なくとも1の官能基に加えて重合性不飽和基を有する化合物であってもよいし、これらの官能基を有さない重合性不飽和基を有する化合物であってもよい。上記において単量体として詳述した、一般式(1)で表される官能基、エポキシ基、水酸基のうち少なくとも1の官能基に加えて重合性不飽和基を有する化合物を単量体の状態のままで組成物中に配合したものであってもよい。
更に、重合体中に不飽和基を導入したものであってもよい。このような重合性不飽和基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が特に好ましい。このような化合物について、以下詳述する。
【0102】
(メタ)アクリロイル基(a)を有する化合物
(メタ)アクリロイル基(a)を有する化合物としては、エネルギー線硬化性の化合物として公知の多くの化合物を使用することができる。
【0103】
官能基数1の(メタ)アクリレートの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0104】
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;ライトアクリレートBP-4EA、BP-10EA)ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA、BP-10PA等)を含む。なかでも、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA)、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)等を好ましく用いることができる。
【0105】
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0106】
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0107】
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0108】
更に、下記一般式で表される化合物も、不飽和基を有する化合物として使用することができる。
【0109】
【化27】
【0110】
:1~10
(式中、R、R,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は上記R-[COORn1で表される構造。
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数50以下のアルキル基。
上記一般式(1)で表される化合物は、R-[COORn1基が下記一般式(1-1)のラクトン構造であってもよい。)
【0111】
【化28】
【0112】
(Rxは、分岐鎖を有していてもよい炭素数2~10の炭化水素基)
【0113】
上記化合物は、不飽和基及びアルキルエステル基の両方を有する化合物であり、例えば、特許文献6等において詳述された公知の化合物であり、これらを使用することができる。
【0114】
更に、水酸基を有するビニル系重合体等の各種ポリオール化合物に対して、イソシアネート基と不飽和結合を有する化合物を反応させることで不飽和結合を導入した化合物を使用することができる。
具体的には、
【0115】
【化29】
【0116】
の反応によって得られる不飽和基含有化合物も使用することができる。
【0117】
上記反応において使用することができるイソシアネート基と重合性不飽和基を有する化合物としては、特に限定されず、例えば、下記一般式(4)で表される化合物等を挙げることができる。
【0118】
【化30】
(式中、R32は、炭素数1~20の炭化水素基。
31は、H又はメチル基)
【0119】
より具体的には、昭和電工株式会社カレンズAOI(登録商標)との商品名で販売されている2-イソシアナトエチルアクリラート等を挙げることができる。
【0120】
上記ポリオール化合物としては特に限定されず、公知のアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリビニルアルコール単位を有する重合体等、各種の水酸基含有の化合物を使用することができる。
【0121】
更に、エポキシ基含有重合体に対して、(メタ)アクリル酸を反応させることによって、不飽和基を導入した化合物も使用することができる。具体的には、
【0122】
【化31】
【0123】
の反応によって得られる不飽和基含有化合物も使用することができる。
上記反応に使用することができるエポキシ含有化合物としては特に限定されず、ビスフェノール系エポキシエポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂に加えて、グリシジル(メタ)アクリレートを単量体の一部として含有するアクリル重合体等を挙げることができる。
【0124】
上記一般式(4)(5)で表される重合体は、更に、水酸基及び/又はアルキルエステル基を有するものであってもよい。
【0125】
(樹脂組成物)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、組成物全体として上述した一般式(1)で表される構造(a)、エポキシ基(b)及び水酸基(c)を有するものである。すなわち、(a)~(c)のすべてを単一の重合体中に有する化合物であってもよいし、(a)~(c)の官能基のうち、1又は2以上を有する化合物を混合して使用するものであってもよい。
【0126】
(エステル交換触媒(B))
本発明の熱硬化型樹脂組成物は、エステル交換触媒(B)を含有するものである。すなわち、エステル基と水酸基との間のエステル交換反応を効率よく生じさせ、充分な熱硬化性を得るために、エステル交換触媒(B)を配合する。
【0127】
上記エステル交換触媒(B)としては、エステル交換反応を活性化させることができるものとして公知の任意の化合物を使用することができる。具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、燐酸又はスルホン酸、ヘテロポリ酸などのような種々の酸性化合物;LiOH、KOH又はNaOH、アミン類、ホスフィン類などのような種々の塩基性化合物;PbO、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マンガン、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸パラジウム、アルミニウムイソプロピレート、ジルコニウムアセチルアセトナート、塩化鉄、塩化コバルト、塩化パラジウム、ジチオカルバミン酸亜鉛、三酸化アンチモン、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、モノブチル錫酸、トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウムまたはトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウムなどのような種々の金属化合物;テトラメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムメチルカルボナートなどの4級アンモニウム塩等、テトラブチルホスホニウムブロミド、水酸化テトラブチルホスホニウムなどのホスホニウム塩等、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの強塩基等を挙げることができる。また、光や熱によって酸を発生させる光応答性触媒、熱潜在性触媒も使用することができる。更に、亜鉛クラスター触媒(例えば、東京化成工業株式会社製のZnTAC24(商品名)等を使用することもできる。更に、上述した化合物のうち、2種以上を併用して使用するものであってもよい。
【0128】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、アルカリ金属以外の金属を含有する金属化合物及び塩基性触媒からなる群より選択される少なくとも1の化合物を触媒として使用することがより好ましい。更には触媒の一部又は全部として、アルカリ金属以外の金属を含有する金属化合物(B-1)を使用することが最も好ましい。本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、金属化合物が触媒活性という観点において特に優れるものとなる。また水不溶性の触媒については、分散体にしても良いし、水溶性溶剤に溶かし添加しても良い。特に、1級、2級のアルキルエステル基を有する熱硬化性樹脂組成物において、この傾向が顕著である。上記金属化合物(B-1)に加えて、更に、有機リン化合物、尿素、アルキル化尿素、チオ尿素、アルキル化チオ尿素、スルホキシド化合物、第4級アンモニウム化合物、第4級ホスホニウム化合物、及び、アミン化合物、ピリジン,キノリン,イソキノリン,フェナントロリン、イミダゾール化合物及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1の化合物(B-2)を含有することが好ましい。以下、これらの化合物について詳述する。
【0129】
上記有機リン化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機ホスフィン化合物並びにこれらの種々のエステル、アミド及び塩を挙げることができる。エステルは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのエステルであってよい。アミドは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのアミドであってよい。
【0130】
これらのなかでも、ホスホン酸エステル、リン酸アミド及び有機ホスフィンオキシド化合物からなる群より選択される少なくとも1の化合物であることが特に好ましい。これらの有機リン化合物を使用すると、エステル交換触媒機能が最も良好なものとなる。さらに具体的には、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシドなどの、有機ホスフィンオキシド化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリス(N,N-テトラメチレン)リン酸トリアミド等のリン酸アミド化合物、トリフェニルホスフィンスルフィド、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド等の有機ホスフィンスルフィド化合物、等を好適に使用することができる。
【0131】
上記アルキル化尿素としては、特に限定されず、尿素、ジメチル尿素、ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができる。なお、ジメチルプロピレン尿素等のように、環状構造を有するものであってもよい。
【0132】
上記アルキル化チオ尿素としては、特に限定されず、ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素等を挙げることができる。上記スルホキシド化合物としては、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等を挙げることができる。
【0133】
上記第4級アンモニウム化合物としては、下記一般式(i)で表される化合物が好適に用いられる。
【化32】
(ただし、式(i)中、R41~R44は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基、または反応に不活性な官能基が結合した1価の炭化水素基を表し、Y1-は、1価の陰イオンを表す。)
【0134】
41~R44が炭化水素基である場合、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基などが挙げられ、アルキル基、アリール基が好ましい。R41~R44の各炭素原子数は、1~100が好ましく、4~30がより好ましい。R41~R44は、それぞれ同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0135】
41~R44が、反応に不活性な官能基が結合した1価の炭化水素基である場合の官能基は、反応条件に応じて適宜選択されるが、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ニトリル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシル基などが挙げられる。
【0136】
上記式(i)における第4級アンモニウム(R41424344)としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ-n-プロピルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、メチルトリ-n-オクチルアンモニウム、n-ドデシルトリメチルアンモニウム、n-ドデシルトリ-n-ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、セチルベンジルジメチルアンモニウム、トリメチル-2-ヒドロキシエタンアミニウム、セチルピリジニウム、n-ドデシルピリジニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、フェニルトリエチルアンモニウム、N-ベンジルピコリニウム、ペンタメトニウム、ヘキサメトニウムなどが挙げられる。
【0137】
上記一般式(i)におけるY1-としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸水素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンなどが挙げられ、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオンが好ましく、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、水酸化物イオンがより好ましく、塩素イオンまたは臭素イオンがさらに好ましい。
【0138】
上記一般式(i)で表される化合物としては、汎用性および反応性の観点から、下記第4級アンモニウム(R41424344)と、下記Y1-との組合せが好ましい。
第4級アンモニウム(R41424344):テトラメチルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、n-ドデシルトリメチルアンモニウム、n-ドデシルトリ-n-ブチルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリメチル-2-ヒドロキシエタンアミニウム。
1-:フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン。
【0139】
第4級アンモニウム化合物としては、反応性、工業的入手容易さや価格、扱いやすさ等の点から、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、n-ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n-ドデシルトリ-n-ブチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチル-2-ヒドロキシエタンアミニウムクロリド(コリンクロリド)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0140】
第4級ホスホニウム化合物としては、下記一般式(ii)で表される化合物が挙げられる。
【化33】
(ただし、式(ii)中、R51~R54は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基を表し、Y2-は、1価の陰イオンを表す。R51~R54は、それぞれ同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【0141】
51~R54における炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基などが挙げられ、アルキル基、アリール基が好ましい。
【0142】
上記一般式(ii)における第4級ホスホニウム(R51525354)としては、テトラエチルホスホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウム、エチルトリ-n-オクチルホスホニウム、セチルトリエチルホスホニウム、セチルトリ-n-ブチルホスホニウム、n-ブチルトリフェニルホスホニウム、n-アミルトリフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムなどが挙げられる。
【0143】
上記第4級ホスホニウム化合物としては、反応性、工業的入手容易さの点から、テトラ-n-ブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムクロリドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0144】
2-としては、塩素イオン、フッ素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸水素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンなどが挙げられ、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、水酸化物イオンが好ましい。
【0145】
上記イミダゾール化合物としては、下記一般式で表される化合物が好適である。
【化34】
(式中、Rは枝分かれ構造もしくは環構造を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基、アルケニル基または芳香族置換基である。)
上記一般式で表される化合物として、具体的には、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール等が挙げられる。中でも、1-メチルイミダゾールが、製造コストの点で好ましい。
【0146】
上記ピリジン誘導体としては、ジメチルアミノピリジン、キノリン、イソキノリン、ニコチン酸エステル等を挙げることができる。
【0147】
上記キノリン誘導体としては、8-ヒドロキシキノリン、2-メチル-8-キノリノール等を挙げることができる。
【0148】
上記アミン化合物としては、1級,2級,3級のいずれでも良く、1,4-ピぺリジン、ジメチルエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、アミノピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチレンジアミン、ジメチルオクチルアミン、N,N,N-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、1‐アザビシクロ[2,2,2]オクタン、1‐アザビシクロ[2,2,2]オクタン-3-オール、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イルメタノール等を挙げることができる。
【0149】
エステル交換触媒は、化合物(B-1)と化合物(B-2)とを(B-1):(B-2)=100:1~1:100(重量比)の割合で含有することが好ましい。このような割合で配合することで、特に好適な結果を得ることができる。上記下限は、50:1であることがより好ましく、10:1であることがさらに好ましい。上記上限は、1:50であることがより好ましく、1:10であることがさらに好ましい。
【0150】
上記化合物(B-1)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。上記化合物(B-2)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。
【0151】
本発明の樹脂組成物においては、エステル交換触媒(B)として、(1)ジルコニウム化合物を使用する、(2)上記化合物(B-1)及び化合物(B-2)を使用する、という方法によって、上述した物性を特に好適に得ることができる点で好ましいものである。上記(1)、(2)のエステル交換触媒を使用し、樹脂組成として特にエステル交換反応性が高いものを選択して使用すると、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃以下30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上であるという性質を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0152】
本発明の樹脂組成物においては、エステル交換触媒(B)として、塩基性化合物(B-3)を使用することも好ましい。塩基性化合物(B-3)としては特に限定されるものではなく、アミン化合物等を好適に使用することができる。
【0153】
塩基性化合物(B-3)として使用することができるアミン化合物は、1級,2級,3級のいずれでも良く、1,4-ピぺリジン、ジメチルエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、アミノピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチレンジアミン、ジメチルオクチルアミン、N,N,N-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N´N´ペンタメチルジエチレントリアミン, 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イルメタノール, N,N,N´N´-トリメチルヘキサン-1,6-ジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(3-ジメチルアミノプロピルエーテル、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン、1‐アザビシクロ[2,2,2]オクタン-3-オール、N,N,N´N´N”N”-ヘキサメチルトリプロピレンテトラミン等を挙げることができる。
これらのなかでも、3級アミン、4級アンモニウム塩が特に好ましい。
【0154】
本発明においては、エポキシ化合物を含有することによって、塩基性触媒を使用するエステル交換反応において、反応性が顕著に向上することが明らかとなった。したがって、上述した金属触媒を使用せず、塩基性化合物(B-3)のみを触媒とした場合であっても、優れた低温硬化性能を示す点で好ましいものである。
【0155】
-COOR(Rは、炭素数50以下のアルキル基)及び水酸基を有する樹脂成分(A)(B)、及び、エステル交換触媒(B)としての上記(2)のエステル交換触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物も本発明の一つである。
【0156】
更に、亜鉛アセチルアセトネートをエステル交換触媒として使用し、樹脂組成として特にエステル交換反応性が高いものを選択して使用すると、硬化開始温度が100℃以下であり、100℃以下30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上であるという性質を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0157】
上記エステル交換触媒(B)の使用量は、樹脂成分(A)(B)の重量の合計に対して、0.01~50重量%であることが好ましい。このような範囲内のものとすることで、良好な硬化反応を低温で行うことができる点で好ましい。
【0158】
また、上記熱硬化性樹脂組成物を、水性の組成物とする場合、このような触媒は、水溶性の化合物あるいは、水溶性の分散体あるいは乳化物であることが好ましい。以上の観点から、本発明において好適に使用することができる、水溶性の触媒としては特に限定されず、テトラメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムメチルカルボナート、酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、ジブチル錫ジラウレート等を挙げることができる。
【0159】
(光重合開始剤(B-4))
本発明の硬化性樹脂組成物が不飽和結合を有するものである場合は、光重合開始剤を含有するものであることが好ましい。これによって、熱硬化性能とエネルギー線硬化性能の両方を有する組成物とすることができる。
【0160】
光重合開始剤としては特に限定されず、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾイン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾイン系開始剤;ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤等が挙げられる。促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルのような3級アミン等が挙げられる。上記光重合開始剤(B-2)の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂成分(A)の固形分重量に対して、0.01~50重量%の割合で配合することが好ましい。塗膜の着色や物性、貯蔵安定性等を考慮すると、0.5~10重量%がより好ましい。
【0161】
本発明の熱硬化性組成物は、上記(A)(B)の成分に加えて、更に、塗料や接着剤の分野において一般的に使用されるその他の架橋剤を併用して使用するものであってもよい。使用できる架橋剤としては特に限定されず、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シラン化合物等を挙げることができる。また、ビニルエーテル、アニオン重合性単量体、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体等を併用するものであってもよい。これらの併用した架橋剤の反応を促進させるための硬化剤を併用するものであってもよい。
【0162】
なお、上述したその他架橋剤は必須ではなく、本発明の熱硬化性樹脂組成物はこれを含有しないものであっても、良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。
【0163】
上記架橋剤がポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂である場合、樹脂成分(A)と架橋剤との合計量に対する配合量(すなわち、(架橋剤量)/(架橋剤量+樹脂成分量)が0.01~50重量%であることが好ましい。このような配合量の範囲であることで、エステル交換反応による硬化反応と他の硬化剤による硬化反応とを同時に生じさせるという点で好ましい。
上記下限は、0.01重量%であることがより好ましく、1重量%であることが更に好ましい。上記上限は、30重量%であることがより好ましく、20重量%であることが更に好ましい。
【0164】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、水性熱硬化性樹脂組成物であっても、溶剤系熱硬化性樹脂組成物であってもよい。さらに、粉体塗料等の固体の性状を有する熱硬化性樹脂組成物であってもよい。
【0165】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を水性熱硬化性樹脂組成物とした場合、低温硬化性能を十分に得ることができる点で特に好ましい。すなわち、エステル交換反応を硬化反応とする公知の水性熱硬化性樹脂組成物は、-COOH基が存在すると、反応性が低下する傾向がある。このため、樹脂中に-COOH基を導入することで水性化した場合は、硬化反応を高める等の方法で硬化性を高くしなければ、十分な硬化反応を生じさせることができなかった。
【0166】
しかしながら、上記一般式(1)で表されるアルキルエステル基を有する化合物は、-COOH基存在下でも比較的低温での硬化反応を行うことができる。このため、水性熱硬化性樹脂組成物としても好適に使用することができる。
【0167】
このような水性熱硬化性樹脂組成物としては、
(a)水溶性又は水分散性の成分を使用することで水性化する方法。
(b)水不溶性の成分を乳化剤によって水中に乳化させることで水性化する方法。
の方法が一般に知られている。よって、これらの方法についてそれぞれ詳述する。なお、水性熱硬化性樹脂組成物に含まれる成分のうち、一部の成分については、(a)の方法で水性化し、その他の成分については(b)の方法によって水性化するものであってもよい。
【0168】
(a)水溶性又は水分散性の成分を使用することで水性化する方法。
このような方法は、塗膜を形成する有機成分自体を水溶性又は水分散性のものとすることで水性化するものである。このような方法を使用すると界面活性剤を使用しない塗料組成物とすることができる点で好ましい。
【0169】
上記(a)の態様において使用される樹脂としては特に限定されるものではないが、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基からなる群より選択される少なくとも1の官能基のような酸基を有し、これをアンモニア及び/又はアミン化合物で中和して親水性基に変換することで水溶化した樹脂を使用することができる。また、以下で詳述する化合物であって水溶性の化合物を使用するものであってもよい。これらのなかでも、カルボン酸基が安価であること等の観点から好ましい。
【0170】
上記酸基を有する樹脂は、有機溶媒中で少なくとも一部にこれらの官能基を有する単量体を使用した公知の重合反応を行うことによって得ることができる。その後、水及びアミン及び/又はアンモニアを添加することで中和し、これを水性化することができる。
【0171】
このように、酸基を中和することで水性化する場合、各種樹脂のうち、一般的にはアクリル系重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、を最も好適に使用することができる。アクリル樹脂に上記酸性基を有する官能基を導入するには、酸基を有する重合性単量体を原料の一部として使用した重合反応を行うことが好ましい。
【0172】
このような方法において、酸基を有する単量体として使用することができるものは特に限定されず、樹脂種に応じて、使用することができるモノマーを選択することができる。例えば、(メタ)アクリル酸、2-メタクロイロキシエチルコハク酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等の不飽和基含有カルボン酸化合物、トルエンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート等を挙げることができる。
【0173】
上記重合体においてこのような酸基は、樹脂酸価が0.1~100の範囲となるように導入することが好ましい。上記酸価の下限は0.5であることが好ましく、1であることが更に好ましい。上記酸価の上限は50であることが好ましく、30であることが更に好ましい。
【0174】
上記アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリン等の2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、等の1級アミン;アンモニアなどの4級アンモニウム等を挙げることができる。エポキシと併用させる場合、1、2級アミンは反応するので3級アミン或いは4級アミンが好ましい。
【0175】
上記アミン化合物を使用する場合の使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)中のカルボキシル基に対して通常0.1~1.5モル当量の範囲内であることが好ましい。
【0176】
上述した方法で水性化する場合、通常の溶液重合等の方法で樹脂を得た後、水及びアミン化合物を添加して撹拌することによって、行うことができる。
【0177】
(b)成分を乳化剤によって水中に乳化させることで水性化する方法。
上述したものとは異なり、樹脂を乳化剤によってエマルション化することで水溶化したものであってもよい。
この場合、樹脂は、乳化重合によって得られたものであってもよいし、溶液重合等によって得られた樹脂を乳化剤によって乳化させたものであってもよい。更に、当該乳化剤は、反応性乳化剤を使用するものであってもよい。
【0178】
上記アニオン性の反応性乳化剤としては、例えば、(メタ)アリル基、(メタ)アクリル基、プロペニル基、ブテニル基などの重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩やアミン塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。得られる塗膜が耐水性に優れていることから、中でも、重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、ラテムルS-180A(花王社製、商品名)アクアロンKH10(第一工業製薬、商品名)等を挙げることができる。
また、ノニオン性の反応性乳化剤としては、例えば、(メタ)アリル基、(メタ)アクリル基、プロペニル基、ブテニル基などの重合性不飽和基を有し、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加したもの等がある。
【0179】
また、上記重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有する硫酸エステル化合物のアンモニウム塩がさらに好ましい。上記重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有する硫酸エステル化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、アクアロンKH-10(第一工業製薬社製、商品名)、SR-1025A(旭電化工業社製、商品名)等を挙げることができる。
【0180】
上記乳化剤の濃度は、使用するするラジカル重合性不飽和単量体の総量を基準にして、通常0.1~10質量%、特に1~5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0181】
反応性乳化剤を使用した乳化重合によって得られた乳化樹脂は、乳化剤が樹脂中に取り込まれているため、乳化剤が存在することによって生じる不都合が生じないという利点を有する。このため、乳化剤の存在が問題となるような用途においては、このような方法で得られた乳化樹脂を使用することが好ましい。
【0182】
上記反応性乳化剤以外の乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のノニオン系乳化剤;アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩、アンモニウム塩等のアニオン系乳化剤等を挙げることができ、さらに、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤、1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基を有する反応性アニオン性乳化剤等も使用することができる。また高分子乳化剤、4級アンモニウムなども使用することができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0183】
上記乳化剤の使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)の固形分質量100質量部に対して、通常30質量部以下であり、特に0.5~25質量部の範囲内であることが好ましい。
【0184】
また、乳化重合によって得られた樹脂を使用する場合、乳化重合方法は特に限定されず、公知の一般的な方法によって行うことができる。また、乳化剤は、上述した反応性乳化剤であってもよいし、一般的な乳化剤であってもよい。
【0185】
一般の有機溶媒の溶液重合等の方法によって得られた樹脂を乳化剤によって乳化する方法を行う場合も、その具体的な手法は特に限定されず、公知の一般的な方法によって行うことができる。この場合に使用することができる乳化剤としては、乳化重合に使用できるものとして上述したものを挙げることができる。
【0186】
また、以下で詳述するような各種エステル化合物や多価アルコールで水に不溶性のものを使用する場合は、これを乳化剤によって乳化させる方法、水に加えてアルコール等の水との混和性が高い有機溶媒を使用することで可溶化する方法などの公知の方法を適用することによって水溶化することができる。このような方法において使用することができる水との混和性が高い有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ブチルセルロース、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤等を挙げることができる。
【0187】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性塗料、熱硬化性接着剤等の分野において好適に使用することができる。
【0188】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、水に加えて、エタノール、メタノール、アルコール系、グリコール系、エーテル系、ケトン系等の水と任意の割合で混合することができる水性溶媒を含有するものであってもよい。
【0189】
熱硬化性塗料として使用する場合は、上述した各成分以外に、塗料分野において一般的に使用される添加剤を併用するものであってもよい。例えば、レベリング剤、消泡剤、反応性希釈剤、非水分散型塗料(NAD)、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等、顔料分散剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、UV吸収剤、並びにそれらの任意の組み合わせを併用してもよい。
【0190】
顔料を使用する場合、樹脂成分の合計固形分100重量%を基準として、好ましくは合計で1~500重量%の範囲で含むことが好ましい。上記下限はより好ましくは3重量%であり、更に好ましくは5重量部である。上記上限はより好ましくは400重量%であり、更に好ましくは300重量%である。
【0191】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0192】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましく、そして硫酸バリウムがより好ましい。
【0193】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム及びリーフィング型アルミニウムが含まれる。
【0194】
上記着色顔料は、顔料分散樹脂により分散された状態で、熱硬化性樹脂組成物に配合されることが好ましい。着色顔料の量は、顔料の種類等によって変化しうるが、一般には、顔料分散樹脂中に含まれる樹脂成分の固形分100質量部に対して、好ましくは約0.1~約300質量部、そしてより好ましくは約1~約150質量部の範囲内である。
【0195】
上記熱硬化性塗料は、所望により、有機溶剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤、分散剤、色分かれ防止剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、基材湿潤剤、スリップ剤等の塗料用添加剤をさらに含有するものであってもよい。
【0196】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、上記疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着する、上記疎水性部分同士が会合する等により増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニック(登録商標)ポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0197】
上記ポリアクリル酸系増粘剤は市販されており、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLASE-60」、「ACRYSOLTT-615」、「ACRYSOLRM-5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0198】
また、上記会合型増粘剤は市販されており、例えば、ADEKA社製の「UH-420」、「UH-450」、「UH-462」、「UH-472」、「UH-540」、「UH-752」、「UH-756VF」、「UH-814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLRM-8W」、「ACRYSOLRM-825」、「ACRYSOLRM-2020NPR」、「ACRYSOLRM-12W」、「ACRYSOLSCT-275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0199】
上記顔料分散樹脂としては、アクリル系顔料分散樹脂を使用することが好ましい。より具体的には、例えば、重合性不飽和モノマーを、親水性有機溶剤の存在下で、重合開始剤により重合することにより得られたアクリル樹脂を挙げることができる。
【0200】
記重合性不飽和モノマーとしては、上述した樹脂の合成において例示した化合物を挙げることができ、適宜組み合わせて用いられうる。
上記顔料分散樹脂は、水に溶解するか、又は分散できる樹脂であることが好ましく、具体的には、好ましくは10~100mgKOH/g、そしてより好ましくは20~70mgKOH/gの水酸基価と、好ましくは10~80mgKOH/g、そしてより好ましくは20~60mgKOH/gの酸価とを有する。
【0201】
上記重合に用いられる上記親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系有機溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert-ブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル系有機溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系有機溶剤等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0202】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記樹脂及び顔料分散樹脂の固形分質量の合計を基準として、顔料分散樹脂を、固形分で、好ましくは5~70質量%、そしてより好ましくは7~61質量%含むことが好ましい。上記範囲は、熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性と、本発明の着色塗料組成物を用いて形成される着色塗膜の仕上がり性、耐水性、中研ぎ性等との観点から好ましい。
【0203】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を適用することができる被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器、等の家庭電気製品、建築材料、家具、接着剤、フィルムやガラスのコーティング剤等、様々な例を挙げることができる。また、高温短時間硬化によって塗膜を形成するプレコートメタル、金属缶への塗装を挙げることもできる。更に、電着塗料、接着剤、パーティクルボード等への使用も挙げることができる。
【0204】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、複層塗膜の形成に使用することもできる。複層塗膜の中でも、ウェットオンウェットによる多層塗膜の形成においても好適に使用することができる。
ウェットオンウェット方式は、第1の塗膜層を形成した後、乾燥のみで硬化を生じさせないまま第2の塗膜層を塗装し、複数の塗膜層を同時に加熱硬化するものを意味する。3層以上の塗膜層をこのような方法で形成することもできる。
【0205】
このようなウェットオンウェットによる複層塗膜の形成においては層間で塗膜成分の移行が生じる。このため、層中に含まれる成分が他の層に溶出して硬化性に悪影響を与える場合がある。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、反応性が良好であり、他の成分による悪影響を受けにくいことから、ウェットオンウェットによる複層塗膜の形成に好適に使用することができる。
【0206】
ウェットオンウェット塗装の汎用されている方法として、水性ベース塗料を第1層とし、溶剤系クリヤー塗料を第2層とする方法が挙げられる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、第1層、第2層の両方において使用するものであってもよいし、これらのうち、一方の層においてのみ使用するものであってもよい。
上述したように、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、水性塗料としたときに好適な性能を得ることができるものである。さらに、上述したように、他の塗膜層の成分が混入した場合であっても良好な硬化性能を得ることができる。
【0207】
したがって、第2層の溶剤系クリヤー塗料において本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用した場合も、第1層の水性ベース塗料に由来する成分によって硬化性能が低下するという問題を生じにくい点で好ましい。
【0208】
上記水性熱硬化性樹脂組成物は、電着塗料組成物として使用することもできる。電着塗料としては、カチオン電着塗料とアニオン電着塗料とを挙げることができるが、これらのいずれとすることもできる。
【0209】
上記被塗物は、上記金属材料及びそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、また、塗膜を有する被塗物であってもよい。
上記塗膜を有する被塗物としては、基材に所望により表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。特に、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
【0210】
上記被塗物は、上記プラスチック材料、それから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望により、表面処理、プライマー塗装等がなされたものであってもよい。また、上記プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0211】
上記熱硬化性樹脂組成物の塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等が好ましい。塗装に際して、所望により、静電印加してもよい。上記塗装方法により、上記水性塗料組成物からウェット塗膜を形成することができる。
【0212】
上記ウェット塗膜は、加熱することにより硬化させることができる。当該硬化は、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉により実施することができる。上記ウェット塗膜は、好ましくは約80~約180℃、より好ましくは約100~約170℃、そしてさらに好ましくは約120~約160℃の範囲の温度で、好ましくは約10~約60分間、そしてより好ましくは約15~約40分間加熱することにより硬化させることができる。また、80~140℃での低温硬化にも対応することができる点で好ましいものである。
【0213】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ウェットオンウェットでの複層塗膜形成方法に使用することもできる。この場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる塗料を塗装した後、硬化を行わない状態でその上に別の塗料組成物を塗装し、これらの2層の塗膜を同時に焼き付けることによって複層塗膜を形成する方法等を挙げることができる。また、このような塗装方法においては、2層又は3層以上の複層塗膜として、そのうち少なくとも1の層を本発明の熱硬化性樹脂組成物によって形成するものであってもよい。
【0214】
このような複層塗膜の形成に本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、組み合わせて使用する塗料は、水系であってもよいし、溶媒系であってもよい。更に、その硬化系は、上述したようなエステル交換反応による硬化系であってもよいし、メラミン硬化、イソシアネート硬化等のその他の硬化系であってもよい。
【0215】
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塗料分野において使用する場合は平滑性や耐水性・耐酸性等の性能を有する充分な硬化性能が必要とされる。
一方、接着剤や粘着剤等の分野において使用する場合は、塗料において要求されるほどの高い硬化性能は必要とされない。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塗料として使用できるレベルのものとすることが可能であるが、このような水準に到達しない組成物であっても、接着剤や粘着剤等の分野においては使用できる場合がある。
【0216】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、常乾型の熱硬化性樹脂組成物とすることもできる。すなわち、塗装を行った後、加熱による硬化を行わず、常温のままで放置することで硬化させるような熱硬化性樹脂組成物として使用することもできる。これは単に乾燥による硬化ではなく、常温での三次元架橋を意味する。本発明の熱硬化性組成物は低温での硬化性能に特に優れるものであるから、このような用途にも適している。
【0217】
本発明は、上述した熱硬化性樹脂組成物を三次元架橋することによって形成されたことを特徴とする硬化膜でもある。
このような硬化膜は、塗料・接着剤として使用することができるような充分な性能を有したものである。
上記硬化膜は、上述した複層塗膜の形成方法によって形成された硬化膜も包含するものである。
【実施例0218】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお文中、部は重量部を表す。
【0219】
合成例1
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)35部、メトキシカルボニルメチルメタクリレート(共栄社化学品 LIGHT BO M-102)30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート25部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN5部を芳香族炭化水素(T-SOL100)20部に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL 100)80部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量9400のポリマー溶液Aを得た。
【0220】
合成例2
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)60部、4-ヒドロキシブチルアクリレート30部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN5部を芳香族炭化水素(T-SOL100)20部に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL 100)80部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量11200のポリマー溶液Bを得た。
【0221】
合成例3
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)30部、メトキシカルボニルメチルメタクリレート(共栄社化学品 LIGHT BO M-102)30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート25部、スチレン10部、メタクリル酸5部、をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN3部をプロピレンググリコールモノメチルエーテル(PGME)20部に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにPGME80部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量18400のポリマー溶液Cを得た。このポリマー溶液は中和することにより任意に水性化が可能である。
【0222】
合成例4
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)60部、4-ヒドロキシブチルアクリレート25部、スチレン10部、メタクリル酸5部、をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN3部をプロピレンググリコールモノメチルエーテル(PGME)20部に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにPGME80部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量19300のポリマー溶液Dを得た。このポリマー溶液は中和することにより任意に水性化が可能である。
【0223】
合成例5
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)10部、4-ヒドロキシブチルアクリレート 25部、スチレン5部、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド 20部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG)40部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)5部をPGMEに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにブチルグリコールを100部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量12,300のポリマー溶液Eを得た。
【0224】
合成例6
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)15部、メトキシカルボニルメチルメタクリレート(共栄社化学品 LIGHT BO M-102) 35部、4-ヒドロキシブチルアクリレート15部、スチレン15部、グリシジルメタクリレート(共社化学品:ライトエステルG)20部をモノマー混合液とし、アデカリアソープSR-3025、12部(ADEKA(株))、イオン交換水70部を加え、ホモミキサーを用いて室温で1時間乳化後、モノマー乳化液を調整した。攪拌可能なフラスコにイオン交換水を115部投入し、窒素封入しながら、モノマー乳化液及び開始剤を滴下しながら重合を行った。開始剤として過硫酸アンモニウム0.3部を加えた。この時の重合温度は75℃とした。滴下は3時間で行い、更に75℃で熟成を5時間行い、ポリマーFを得た。
【0225】
以下の実施例及び比較例は、合成例で得られた組成物を以下の表のように配合して熱硬化性樹脂組成物を調製し、PETフィルム上にアプリケーターを用いて塗工し、各焼き付け温度で30分間焼き付けを行った。膜厚は30~50μm(dry)であった。得られた塗膜を使い、物性評価を行った。
【0226】
【表1】
【0227】
【表2】
【0228】
合成例7
還流可能な4つ口フラスコにトリメリット酸無水物140部、トルエン310部、イオン交換水14部を入れ、80℃で1時間撹拌してトリメリット酸を合成した。その後水酸化カリウム115部を入れ、トリメリット酸三カリウムを合成した。次にトリエチルアミン232部、クロロ酢酸メチル244部を入れ、90℃で10時間以上反応させた。反応終了後に水210部を入れ、析出した塩化カリウムを除去した。有機層を水200部で3度水洗した後に、減圧下で濃縮することでエステル化合物Aを得た。
【0229】
合成例8
還流可能な4つ口フラスコにクロロ酢酸メチル60部、クエン酸三ナトリウム40部、トリエチルアミン1.5部を混合し、100℃で5時間撹拌した。反応終了後トルエン250部、水150部を加え水洗した。有機層を水150部で3度水洗した後、減圧下で濃縮することでエステル化合物Bを得た。
【0230】
(実施例9~11および比較例4~7)
以下の実施例は、合成例で得られた組成物を以下の表のように配合して熱硬化性樹脂組成物を調製し、PETフィルム上にアプリケーターを用いて塗工し、各焼き付け温度で30分間焼き付けを行った。膜厚は30~50μm(dry)であった。得られた塗膜を使い、物性評価を行った。
【0231】
【表3】
【0232】
なお、本実施例中、重量平均分子量、分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した面積比並びにポリスチレン換算分子量の値である。カラムはGPC KF-804L、溶剤はテトラヒドロフランを使用した。ゲル分率、キシレンラビングは、以下の基準に基づいて測定した。
【0233】
(ゲル分率)
ゲル分率は、実施例で得られた皮膜を、ソックスレーを用いてアセトン還流中で30分間溶解を行い、皮膜の残存重量%として測定した。
ゲル分率は0~40%を実用に耐えられないものとして×とした。
ゲル分率は40~60%を一定の硬化が認められるものとして△とした。
ゲル分率は60~80%を実用に耐えるものとして○とした。
ゲル分率は80~100%を性能が優れているものとして◎とした。
【0234】
(キシレンラビング)
比較例及び実施例で得られた塗膜に、キシレンを染み込ませた薬方ガーゼで10回擦った。キシレンを乾燥後、表面状態を目視で観察した。
◎:全く変化が無かったもの
〇:僅かにキズが付いたもの
△:僅かに溶解したもの
×:表面が白化、溶解したもの
【0235】
上述した表の結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物が低温硬化性能に優れるものであることは明らかである。
【0236】
合成例9
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)35部、メトキシカルボニルメチルメタクリレート(共栄社化学品 LIGHT BO M-102)15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)25部、スチレン5部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG)20部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)5部をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)20部に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにPGMEを80部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量13000のポリマー溶液Gを得た。
【0237】
合成例10
無水コハク酸180部、メタノール173部を4つ口フラスコに入れ60~70℃で無水コハク酸を溶解させる。NMRで無水コハク酸のピークが消えたことを確認し、メタノールを減圧除去し、コハク酸モノメチルを得た。
コハク酸モノメチル190部、グリシジルメタクリレート205部、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、重合禁止剤を加え90℃で10時間以上反応させモノマー1を得た。
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)35部、モノマー1 15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-250)25部、スチレン5部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG)20部のモノマー溶液を調製した。次に、開始剤としてパーオクタO 5部をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)20部に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにPGMEを80部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量22000のポリマー溶液Hを得た。
【0238】
(実施例12~16)
合成例で得られた組成物を以下の表4のように配合して熱硬化性樹脂組成物を調製し、PETフィルム上にアプリケーターを用いて塗工し、各焼き付け温度で30分間焼き付けを行った。膜厚は30~50μm(dry)であった。得られた塗膜を使い、物性評価を行った。
【0239】
【表4】
エポライト100MF:共栄社化学品 トリメチロールフ゜ロハ゜ントリク゛リシシ゛ルエーテル
DBU:ジアザビシクロウンデセン
DMAP:ジメチルアミノピリジン
【0240】
上記表4の結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塩基性触媒によっても良好な低温硬化性能を有することが明らかである。
【0241】
合成例11
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)10部、メトキシカルボニルメチルメタクリレート(共栄社化学品 LIGHT BO M-102)25部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート 25部、スチレン5部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG)35部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)5部をPGMEに溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにプPGMEを100部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量18000のポリマー溶液Iを得た。
【0242】
(実施例17)
ポリマー溶液I 200部に1‐メチルイミダゾール 9部を添加して熱硬化性樹脂組成物を調製した。PETフィルム上にこの組成物をアプリケーターを用いて塗工し、23℃で1週間という条件で硬化を行った。膜厚は30~50μm(dry)であった。得られた塗膜を使い、物性評価を行った。得られた塗膜は、ゲル分率◎、Xyラビング◎ すなわち23℃で硬化させることができるものであり、常乾型の熱硬化性樹脂組成物として使用できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0243】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塗料組成物、接着組成物その他の公知の任意の熱硬化性樹脂組成物の用途において使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル基(a)、エポキシ基(b)及び水酸基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、
エステル交換触媒(B)を含有し、エステル基は、以下の(a-)~(a―5)のいずれかであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物
a-3)下記一般式(2)で表される構造を有する化合物。
【化3】

n=0~20
は、炭素数50以下のアルキル基。
は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
(a-4)下記一般式(3)又は(4)で表される構造を有する化合物
【化4】

【化5】

(上記一般式(3)、一般式(4)のいずれにおいても、Rは炭素数50以下のアルキル基。
は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
(a-5)下記一般式(5)及び/又は一般式(6)で表される構造を有する化合物
【化6】

(Rは、1級又は2級アルキル基を表す。
Xは、炭素数5以下の炭化水素基又は-OR基を表す。 は、水素又はメチル基を表す)
【請求項2】
樹脂成分(A)は、更に、不飽和官能基を含むものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂成分(A)は、更にカルボキシル基を有するものである請求項1又は2記載の熱硬化
性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂成分(A)は、水性組成物である請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂成分(A)は、カルボキシル基を中和することで水性化したものである請求項4記載
の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させることによって得られたものであることを特徴とする硬化膜。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、エステル基(a)、エポキシ基(b)及び水酸基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、エステル交換触媒(B)を含有し、エステル基は、以下の(a-)~(a―5)のいずれかであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
a-3)下記一般式(2)で表される構造を有する化合物。