(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129797
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】缶蓋製造装置、缶蓋製造方法、缶蓋、および内容物入りの缶容器
(51)【国際特許分類】
B21D 51/44 20060101AFI20240919BHJP
B21D 24/04 20060101ALI20240919BHJP
B65D 8/04 20060101ALI20240919BHJP
B21D 37/02 20060101ALI20240919BHJP
B21D 22/26 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B21D51/44 S
B21D24/04 F
B65D8/04 L
B21D37/02 Z
B21D22/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017195
(22)【出願日】2024-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2023038500
(32)【優先日】2023-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】興 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】磯村 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 修治
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 紗代子
【テーマコード(参考)】
3E061
4E050
4E137
【Fターム(参考)】
3E061AA16
3E061AB08
3E061BA05
3E061BB07
3E061DB08
4E050BA03
4E137AA08
4E137AA10
4E137BA05
4E137BB01
4E137CA09
4E137CA24
4E137DA13
4E137EA02
4E137EA05
4E137GA02
4E137GA15
4E137GA16
4E137GB17
4E137GB20
4E137HA06
4E137HA07
4E137HA08
(57)【要約】
【課題】肉厚の不均一や割れといった不具合が生じることを抑制する缶蓋製造装置、缶蓋製造方法、缶蓋、および内容物入りの缶容器を提供すること。
【解決手段】上側ツール20と、下側ツール30とを備え、上側ツール20は、チャックウォール部L2を形成するための絞り加工部23aを有したインナープレッシャスリーブ23の内周側に隣接して配置され、インナープレッシャスリーブ23に対して相対的に上下方向に移動可能な追加プレッシャ部25を備え、追加プレッシャ部25は、チャックウォール部L2を形成するための外周側加工部25aと、パネルウォール部L3を形成するための内周側加工部25bとを有している缶蓋製造装置10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側カール部と、前記外周側カール部の内周側に形成されたチャックウォール部と、前記チャックウォール部の内周側において前記チャックウォール部の内周端縁よりも上方側に位置するセンターパネル部と、前記チャックウォール部および前記センターパネル部を接続するパネルウォール部とを有した缶蓋を製造する缶蓋製造装置であって、
上側ツールと、下側ツールとを備え、
前記上側ツールは、外周側から順に、ブランクドローダイと、アウタープレッシャスリーブと、インナープレッシャスリーブと、ダイセンターパンチとを備え、
前記下側ツールは、外周側から順に、カットエッジと、前記ブランクドローダイに上下方向に対向して配置されるロワープレッシャスリーブと、前記アウタープレッシャスリーブおよび前記インナープレッシャスリーブに上下方向に対向して配置されるダイコアリングと、前記ダイセンターパンチに上下方向に対向して配置されるパネルパンチとを備え、
前記インナープレッシャスリーブは、ブランクに絞り加工を施すことで前記チャックウォール部を形成するための絞り加工部を有し、
前記上側ツールは、前記インナープレッシャスリーブの内周側に隣接して配置され、前記インナープレッシャスリーブに対して相対的に上下方向に移動可能な追加プレッシャ部を更に備え、
前記追加プレッシャ部は、ブランクに絞り加工を施すことで前記チャックウォール部を形成するための外周側加工部と、ブランクに絞り加工を施すことで前記パネルウォール部を形成するための内周側加工部とを有していることを特徴とする缶蓋製造装置。
【請求項2】
前記追加プレッシャ部は、前記ダイセンターパンチに固定状態で設けられ、
前記ダイセンターパンチは、前記追加プレッシャ部の内周側に、上方側に向けて凹んだ加工凹部を有し、
前記パネルパンチは、前記加工凹部に挿入可能な加工挿入部を有し、
前記加工凹部および前記加工挿入部は、協働して、前記センターパネル部および前記パネルウォール部を形成するための部位であることを特徴とする請求項1に記載の缶蓋製造装置。
【請求項3】
前記追加プレッシャ部の上下方向寸法は、前記チャックウォール部の上面の内周端縁と前記センターパネル部の上面の外周端縁との上下方向における間隔と同寸法に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の缶蓋製造装置。
【請求項4】
請求項2に記載の缶蓋製造装置を用いて缶蓋を製造する缶蓋製造方法であって、
前記チャックウォール部を形成するチャックウォール形成工程と、前記センターパネル部および前記パネルウォール部から成る蓋中央凹部を形成する中央凹部形成工程とを含み、
前記チャックウォール形成工程は、前記インナープレッシャスリーブによってブランクに絞り加工を施す第1外周側絞り過程と、前記第1外周側絞り過程の後に実施される過程であって前記追加プレッシャ部の前記外周側加工部によってブランクに絞り加工を施す第2外周側絞り過程とを含み、
前記中央凹部形成工程は、前記追加プレッシャ部の前記内周側加工部によってブランクに絞り加工を施す内周側絞り過程を含み、
前記第2外周側絞り過程は、前記内周側絞り過程の後に実施されることを特徴とする缶蓋製造方法。
【請求項5】
前記内周側絞り過程は、前記パネルパンチの前記加工挿入部上に配置されたブランクと、前記ダイセンターパンチの前記加工凹部の底面との間に隙間がある状態で、前記ダイセンターパンチと前記パネルパンチとでブランクを挟んだ状態が維持される過程を含み、
前記中央凹部形成工程は、前記隙間が無くなるように前記加工凹部内に前記加工挿入部が挿入される挿入加工過程を含むことを特徴とする請求項4に記載の缶蓋製造方法。
【請求項6】
前記挿入加工過程は、前記第1外周側絞り過程において前記インナープレッシャスリーブがブランクを介して前記ダイコアリングに突き当たった後に、前記内周側絞り過程を進行させながら、前記隙間が無くなるように前記加工凹部内に前記加工挿入部が挿入される過程であることを特徴とする請求項5に記載の缶蓋製造方法。
【請求項7】
前記第2外周側絞り過程は、前記挿入加工過程の後において、前記追加プレッシャ部の前記外周側加工部によってブランクに絞り加工を施す過程であることを特徴とする請求項5に記載の缶蓋製造方法。
【請求項8】
請求項4に記載の缶蓋製造方法によって製造されたことを特徴とする缶蓋。
【請求項9】
請求項8に記載の缶蓋と、その内部に内容物が充填され前記缶蓋が巻締めされた缶胴部とから構成されていることを特徴とする内容物入りの缶容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋製造装置、缶蓋製造方法、缶蓋、および内容物入りの缶容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料等の内容物を収容する容器として、金属製の缶容器を用いることが一般に知られており、また、缶容器を構成する缶蓋として、外周側カール部と、外周側カール部の内周側に形成されたチャックウォール部と、チャックウォール部の内周側においてチャックウォール部の内周端縁よりも上方側に位置するセンターパネル部と、チャックウォール部およびセンターパネル部を接続するパネルウォール部とを有するものが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示されるような缶蓋は、特にパネルウォール部やチャックウォール部付近において複雑に屈曲した断面形状を有することから、靭性に劣る金属材料から缶蓋を製造しようとした場合には、製造された缶蓋に肉厚の不均一や割れといった不具合が生じる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、簡素な構成で、肉厚の不均一や割れといった不具合が生じることを抑制する缶蓋製造装置、缶蓋製造方法、缶蓋、および内容物入りの缶容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の缶蓋製造装置は、外周側カール部と、前記外周側カール部の内周側に形成されたチャックウォール部と、前記チャックウォール部の内周側において前記チャックウォール部の内周端縁よりも上方側に位置するセンターパネル部と、前記チャックウォール部および前記センターパネル部を接続するパネルウォール部とを有した缶蓋を製造する缶蓋製造装置であって、上側ツールと、下側ツールとを備え、前記上側ツールは、外周側から順に、ブランクドローダイと、アウタープレッシャスリーブと、インナープレッシャスリーブと、ダイセンターパンチとを備え、前記下側ツールは、外周側から順に、カットエッジと、前記ブランクドローダイに上下方向に対向して配置されるロワープレッシャスリーブと、前記アウタープレッシャスリーブおよび前記インナープレッシャスリーブに上下方向に対向して配置されるダイコアリングと、前記ダイセンターパンチに上下方向に対向して配置されるパネルパンチとを備え、前記インナープレッシャスリーブは、ブランクに絞り加工を施すことで前記チャックウォール部を形成するための絞り加工部を有し、前記上側ツールは、前記インナープレッシャスリーブの内周側に隣接して配置され、前記インナープレッシャスリーブに対して相対的に上下方向に移動可能な追加プレッシャ部を更に備え、前記追加プレッシャ部は、ブランクに絞り加工を施すことで前記チャックウォール部を形成するための外周側加工部と、ブランクに絞り加工を施すことで前記パネルウォール部を形成するための内周側加工部とを有していることにより、前記課題を解決するものである。
上記缶蓋製造装置では、前記追加プレッシャ部は、前記ダイセンターパンチに固定状態で設けられ、前記ダイセンターパンチは、前記追加プレッシャ部の内周側に、上方側に向けて凹んだ加工凹部を有し、前記パネルパンチは、前記加工凹部に挿入可能な加工挿入部を有し、前記加工凹部および前記加工挿入部は、協働して、前記センターパネル部および前記パネルウォール部を形成するための部位であってもよい。
上記いずれかの缶蓋製造装置では、前記追加プレッシャ部の上下方向寸法は、前記チャックウォール部の上面の内周端縁と前記センターパネル部の上面の外周端縁との上下方向における間隔と同寸法に形成されていてもよい。
本発明の缶蓋製造方法は、上記いずれかの缶蓋製造装置を用いて缶蓋を製造する缶蓋製造方法であって、前記チャックウォール部を形成するチャックウォール形成工程と、前記センターパネル部および前記パネルウォール部から成る蓋中央凹部を形成する中央凹部形成工程とを含み、前記チャックウォール形成工程は、前記インナープレッシャスリーブによってブランクに絞り加工を施す第1外周側絞り過程と、前記第1外周側絞り過程の後に実施される過程であって前記追加プレッシャ部の前記外周側加工部によってブランクに絞り加工を施す第2外周側絞り過程とを含み、前記中央凹部形成工程は、前記追加プレッシャ部の前記内周側加工部によってブランクに絞り加工を施す内周側絞り過程を含み、前記第2外周側絞り過程は、前記内周側絞り過程の後に実施されることにより、前記課題を解決するものである。
上記缶蓋製造方法では、前記内周側絞り過程は、前記パネルパンチの前記加工挿入部上に配置されたブランクと、前記ダイセンターパンチの前記加工凹部の底面との間に隙間がある状態で、前記ダイセンターパンチと前記パネルパンチとでブランクを挟んだ状態が維持される過程を含み、前記中央凹部形成工程は、前記隙間が無くなるように前記加工凹部内に前記加工挿入部が挿入される挿入加工過程を含んでもよい。
上記缶蓋製造方法では、前記挿入加工過程は、前記第1外周側絞り過程において前記インナープレッシャスリーブがブランクを介して前記ダイコアリングに突き当たった後に、前記内周側絞り過程を進行させながら、前記隙間が無くなるように前記加工凹部内に前記加工挿入部が挿入される過程であってもよい。
上記いずれかの缶蓋製造方法では、前記第2外周側絞り過程は、前記挿入加工過程の後において、前記追加プレッシャ部の前記外周側加工部によってブランクに絞り加工を施す過程であってもよい。
本発明の缶蓋は、上記いずれかの缶蓋製造方法によって製造されたことにより、前記課題を解決するものである。
本発明の内容物入りの缶容器は、前記缶蓋と、その内部に内容物が充填され前記缶蓋が巻締めされた缶胴部とから構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、製造された缶蓋に肉厚の不均一や割れといった不具合が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る缶蓋製造装置を示す説明図。
【
図11】本発明の一実施形態に係る缶蓋を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態である缶蓋製造装置10および缶蓋製造方法について、図面に基づいて説明する。
[缶蓋]
【0010】
まず、缶蓋製造装置10および缶蓋製造方法によって製造される缶蓋Lは、アルミニウム合金等の金属から成り、内容物入りの缶容器を製造する時に、その内部に内容物が充填された状態の金属製の缶胴部(図示しない)の口部に巻締められるものである。
【0011】
缶蓋Lは、
図11に示すように、外周側カール部L1と、外周側カール部L1の内周側に形成されたチャックウォール部L2と、チャックウォール部L2の内周側においてチャックウォール部L2の内周端縁よりも上方側に位置する(本実施形態では平板状の)センターパネル部L4と、チャックウォール部L2およびセンターパネル部L4を接続するパネルウォール部L3とを有している。
缶蓋Lの各部L1、L2、L3は、環状(円環状)に形成されている。
なお、
図11は、缶蓋Lの中心軸を含む断面図である。
【0012】
外周側カール部L1は、
図11に示すように、缶蓋Lの外周部分を下側に向けて丸めるように湾曲して形成される部位である。
チャックウォール部L2は、
図11に示すように、外周側カール部L1の内周端に連続して形成され、内周側に向かうに従って下方側に寄るように傾斜して形成される部位である。本実施形態のように缶蓋Lを形成した場合、チャックウォール部L2は、
図11に示すように、複数回屈曲した断面形状を有する。
パネルウォール部L3は、
図11に示すように、チャックウォール部L2の内周端に連続して形成され、チャックウォール部L2の内周側に対向して配置される部位である。
チャックウォール部L2およびパネルウォール部L3の連結部付近は、
図11に示すように、下方に凸状に湾曲した断面形状を有している。
センターパネル部L4は、
図11に示すように、パネルウォール部L3の内周端に連続して形成され、本実施形態では、円板状に形成される部位である。
パネルウォール部L3およびセンターパネル部L4は、
図11に示すように、上方側に向けて凸状の(すなわち、下方側から凹んだ)蓋中央凹部L5を構成する。
[缶蓋製造装置]
【0013】
缶蓋製造装置10は、缶蓋Lを製造するものであり、
図1に示すように、缶蓋製造時においてブランクBの上方側に配置される上側ツール20と、ブランクBの下方側に配置される下側ツール30とを備えている。
なお、
図1~
図10は、缶蓋製造装置10を示す断面図であり、具体的には、上側ツール20および下側ツール30の各構成要素を部分的に示す断面図である。
【0014】
上側ツール20は、上下方向に移動可能な上側ベース部(図示しない)を備えている。
上側ツール20は、上側ベース部(図示しない)に取り付けられる部材として、
図1に示すように、外周側から順に、ブランクドローダイ21と、アウタープレッシャスリーブ22と、インナープレッシャスリーブ23と、ダイセンターパンチ24とを備えている。
各部材21、22、23は、環状(円環状)に形成されている。
【0015】
ブランクドローダイ21とダイセンターパンチ24とは、上側ベース部(図示しない)に対して固定状態で取り付けられ、上側ベース部(図示しない)の上下方向への移動に伴って上下方向に移動するようになっている。
【0016】
また、アウタープレッシャスリーブ22とインナープレッシャスリーブ23とは、上側ベース部(図示しない)に対する最下方位置(
図1に示す位置)から上側ベース部(図示しない)に対して上方側に向けて移動可能であるように、上側ベース部(図示しない)に対して取り付けられ、付勢手段(図示しない)によって下方側に向けて所定荷重で付勢されている。
なお、アウタープレッシャスリーブ22とインナープレッシャスリーブ23についても、上側ベース部(図示しない)の上下方向への移動に伴って上下方向に移動する。
【0017】
インナープレッシャスリーブ23は、
図1に示すように、ブランクBに絞り加工を施すことで缶蓋Lのチャックウォール部L2を形成するための、湾曲凸状の断面形状を有した環状(円環状)の絞り加工部23aをその下端部に有している。
【0018】
ダイセンターパンチ24は、
図1に示すように、(本実施形態では平坦状の)その下面の外周縁から下方側に向けて突出して一体に設けられた、湾曲凸状の断面形状を有した環状(円環状)の追加プレッシャ部25を有している。
この追加プレッシャ部25は、
図1に示すように、インナープレッシャスリーブ23の内周側に隣接して配置され、インナープレッシャスリーブ23に対して相対的に上下方向に移動可能な部位として形成されている。
追加プレッシャ部25は、
図1に示すように、ブランクBに絞り加工を施すことで缶蓋Lのチャックウォール部L2を形成するための外周側加工部25aと、外周側加工部25aの内周側に形成される部位であって、ブランクBに絞り加工を施すことで缶蓋Lのパネルウォール部L3を形成するための内周側加工部25bとを有している。
【0019】
また、ダイセンターパンチ24は、
図1に示すように、追加プレッシャ部25の内周側に、上方側に向けて凹んだ加工凹部24aをその下面側に有している。
この加工凹部24aは、
図1に示すように、缶蓋Lの製造時に、パネルパンチ34の後述する加工挿入部34aが挿入される部位であり、(本実施形態では平坦状の上面部分を有した)この加工挿入部34aと協働して、缶蓋Lのセンターパネル部L4およびパネルウォール部L3を形成するための部位として機能する。
【0020】
下側ツール30は、上下方向において固定状態で設けられた下側ベース部(図示しない)を備えている。
下側ツール30は、下側ベース部(図示しない)に取り付けられる部材として、
図1に示すように、外周側から順に、カットエッジ31と、ロワープレッシャスリーブ32と、ダイコアリング33と、パネルパンチ34とを備えている。
各部材31、32、33は、環状(円環状)に形成されている。
【0021】
ロワープレッシャスリーブ32は、
図1に示すように、ブランクドローダイ21に上下方向に対向して配置され、また、ダイコアリング33は、アウタープレッシャスリーブ22およびインナープレッシャスリーブ23に上下方向に対向して配置され、また、パネルパンチ34は、ダイセンターパンチ24に上下方向に対向して配置される。
【0022】
カットエッジ31とダイコアリング33とは、下側ベース部(図示しない)に対して固定状態で取り付けられている。
【0023】
また、ロワープレッシャスリーブ32とパネルパンチ34とは、上側ベース部(図示しない)に対する最上方位置(
図1に示す位置)から下側ベース部(図示しない)に対して下方側に向けて移動可能であるように、下側ベース部(図示しない)に対して取り付けられ、付勢手段(図示しない)によって上方側に向けて所定荷重で付勢されている。
なお、本実施形態における、各部材22、23、32、34を付勢する力の大小関係は、大きい方から順に、パネルパンチ34、インナープレッシャスリーブ23、アウタープレッシャスリーブ22、ロワープレッシャスリーブ32、になっているが、上記の力の大小関係については、上記に限定されず、実施形態に応じて決定すればよい。
[缶蓋製造方法]
【0024】
次に、缶蓋製造装置10を用いた缶蓋製造方法について、
図2~10を用いて、具体的に説明する。
【0025】
まず、上側ツール20と下側ツール30との間に板状の被加工材を配置した状態で、
図2に示すように、下側ツール30の下側ベース部(図示しない)に対して上側ツール20の上側ベース部(図示しない)を下降させることで、ブランクドローダイ21とカットエッジ31とで被加工材を打ち抜き、ブランクBを形成する。
【0026】
次に、
図3に示すように、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)を更に下降させることで、ブランクドローダイ21とロワープレッシャスリーブ32とでブランクBを挟んでブランクBのしわ押さえを行いつつ、ブランクBに対してインナープレッシャスリーブ23の絞り加工部23aが接触して、インナープレッシャスリーブ23によるブランクBの絞り加工が開始され、次いで、ブランクBに対してダイセンターパンチ24の追加プレッシャ部25の内周側加工部25bが接触して、追加プレッシャ部25の内周側加工部25bによるブランクBの絞り加工が開始される。
【0027】
次に、
図4に示すように、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)を更に下降させることで、アウタープレッシャスリーブ22が下降してブランクBを介してダイコアリング33に突き当り、アウタープレッシャスリーブ22およびダイコアリング33によるブランクBのしわ押さえが開始される。
【0028】
次に、
図5に示すように、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)を更に下降させることで、インナープレッシャスリーブ23および追加プレッシャ部25の内周側加工部25bによるブランクBの絞り加工を更に進行させる。
ここで、
図2~
図10から分かるように、このブランクBの絞り加工時には、ブランクBの絞り加工を進行させるに従って、ブランクBの材料が内周側に向けて徐々に引き込まれ、その結果として、部材21、22、23、32、33の間でブランクBが曲げられて、外周側カール部L1が形成される。
【0029】
また、
図4の状態から
図5の状態に移行する途中で、追加プレッシャ部25の内周側加工部25bによってブランクBを介してパネルパンチ34が押され、ダイセンターパンチ24の下降に伴ってパネルパンチ34についても下降を開始する。
また、この際、
図5に示すように、追加プレッシャ部25とパネルパンチ34との間にブランクBが挟まり、追加プレッシャ部25によってパネルパンチ34がブランクBを介して押される状態が維持されるため、ダイセンターパンチ24の加工凹部24aに対してパネルパンチ34の加工挿入部34aが入り切ることは無く、言い換えると、ダイセンターパンチ24の加工凹部24aの底面とパネルパンチ34の加工挿入部34aとの間に、隙間Dがある状態が維持される。
【0030】
また、
図2~
図5の状態では、パネルパンチ34の上面が、ダイコアリング33の上端よりも上方側に位置している。
【0031】
次に、
図6に示すように、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)を更に下降させることで、インナープレッシャスリーブ23の絞り加工部23aおよび追加プレッシャ部25の内周側加工部25bによるブランクBの絞り加工を更に進行させる。
そして、
図6に示すタイミングで、インナープレッシャスリーブ23が、ブランクBを介してダイコアリング33に突き当り、インナープレッシャスリーブ23の下降が止まる。
なお、この
図6に示すタイミングでも、ダイセンターパンチ24の加工凹部24aに対してパネルパンチ34の加工挿入部34aが入り切ることは無い。
【0032】
次に、
図7に示すように、インナープレッシャスリーブ23がブランクBを介してダイコアリング33に突き当たった状態で、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)を更に下降させると、ダイセンターパンチ24が下降し、隙間Dが無くなるように(加工挿入部34aがブランクBを介して加工凹部24aの底面に突き当たるように)、加工凹部24a内に加工挿入部34aが挿入されて、ブランクBに、センターパネル部L4およびパネルウォール部L3から成る蓋中央凹部L5が形成される。
【0033】
このように、本実施形態では、
図7に示すように、加工凹部24a内に加工挿入部34aを挿入させることで、センターパネル部L4およびパネルウォール部L3から成る蓋中央凹部L5の形成を完了させることから、
図1に示す、追加プレッシャ部25の上下方向寸法X1(言い替えると、ダイセンターパンチ24の下面の外周端縁と追加プレッシャ部25の下端との上下方向における間隔X1)は、
図11に示す、成形される缶蓋Lにおける、チャックウォール部L2の上面の内周端縁とセンターパネル部L4の上面の外周端縁との上下方向における間隔と同寸法に形成されている。
【0034】
ここで、隙間Dが無くなるように加工凹部24a内に加工挿入部34aが挿入される動作は、ブランクBがアウタープレッシャスリーブ22およびインナープレッシャスリーブ23とダイコアリング33とで挟まれ、
図7において符号Aで示す部分におけるブランクBの材料の内周側への引き込みが抑制された状態で、ダイセンターパンチ24を下降させることで、ブランクBのうち、追加プレッシャ部25とパネルパンチ34との間で挟まっていた箇所(
図6で符号B1で示す箇所)付近が変形することに起因して生じる。
【0035】
また、この時、
図6の符号B2で示す部分のブランクBの量(体積)と
図7の符号B2で示す部分のブランクBの量とは、同じ量(またはほぼ同じ量)になるようになっており、そのため、
図6の状態から
図7の状態への移行時に、ブランクBの材料が内周側に向けて引き込まれることは無く(または、引き込まれる量は少なく)、これにより、ブランクBの材料が局所的に過度に伸ばされることが抑制される。
【0036】
次に、
図8~10に示すように、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)を更に下降させると、ダイセンターパンチ24およびパネルパンチ34が引き続き下降し、追加プレッシャ部25の外周側加工部25aによってブランクBに絞り加工が施される。
ここで、
図8~10に示すように、ダイコアリング33とパネルパンチ34との間には、径方向における隙間Sが存在し、当該隙間Sを利用して、追加プレッシャ部25の外周側加工部25aによる絞り加工が実施され、すなわち、外周側加工部25aによる絞り加工時には、当該隙間S内に追加プレッシャ部25およびブランクBが入り込む。
【0037】
なお、
図2~
図6の状態では、追加プレッシャ部25の下端は、インナープレッシャスリーブ23の絞り加工部23aの下端よりも上方側に位置するが、
図8~10の状態では、追加プレッシャ部25の下端は、インナープレッシャスリーブ23の絞り加工部23aの下端よりも下方側に位置する。
【0038】
そして、
図10に示すタイミングで、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)の下降が停止され、その後は、上側ツール20と下側ツール30と離間させ、成形された缶蓋Lを取り出す。
【0039】
このように、本実施形態の缶蓋製造方法は、板状の被加工材からブランクBを形成するブランク打ち抜き工程(
図1に示す工程)と、缶蓋Lの外周側カール部L1を形成するカール部形成工程と、缶蓋Lのチャックウォール部L2を形成するチャックウォール形成工程と、センターパネル部L4およびパネルウォール部L3から成る缶蓋Lの蓋中央凹部L5を形成する中央凹部形成工程とを含んでいる。
【0040】
カール部形成工程は、
図2~10に示すように、部材21、22、23、32、33とでブランクBを曲げて外周側カール部L1を形成する工程である。
【0041】
また、チャックウォール形成工程は、インナープレッシャスリーブ23によってブランクBに絞り加工を施す第1外周側絞り過程(
図2~6に示す過程)と、第1外周側絞り過程の後に実施される過程であって追加プレッシャ部25の外周側加工部25aによってブランクBに絞り加工を施す第2外周側絞り過程(
図7~10に示す過程)とを含んでいる。
この第2外周側絞り過程は、追加プレッシャ部25の内周側加工部25bによる後述する内周側絞り過程(
図2~7に示す過程)および後述する挿入加工過程(
図7に示す過程)の後に実施される。
【0042】
このように、チャックウォール形成工程を、インナープレッシャスリーブ23による第1外周側絞り過程(
図2~6に示す過程)と、追加プレッシャ部25の外周側加工部25aによる第2外周側絞り過程(
図7~10に示す過程)とに分けて実施するとともに、第2外周側絞り過程を、追加プレッシャ部25の内周側加工部25bによる内周側絞り過程(
図2~7に示す過程)および挿入加工過程(
図7に示す過程)の後に実施することにより、ブランクBの加工時においてブランクB(特に、成形後にパネルウォール部L3になる部分)に局所的な負荷がかかることを抑制できるため、製造された缶蓋Lに肉厚の不均一(局所的な材料の伸び)や割れといった不具合が生じることを抑制できる。
【0043】
また、中央凹部形成工程は、追加プレッシャ部25の内周側加工部25bによってブランクBに絞り加工を施す内周側絞り過程(
図2~7に示す過程)と、隙間Dが無くなるように加工凹部24a内に加工挿入部34aが挿入される挿入加工過程(
図7に示す過程)とを含んでいる。
【0044】
内周側絞り過程(
図2~7に示す過程)は、パネルパンチ34の加工挿入部34a上に配置されたブランクBと、ダイセンターパンチ24の加工凹部24aの底面との間に隙間Dがある状態で、ダイセンターパンチ24とパネルパンチ34とでブランクBを挟んだ状態が維持される過程、言い換えると、隙間Dがある状態で、パネルパンチ34がダイセンターパンチ24によってブランクBを介した状態で下方に押される過程を含んでいる。
【0045】
また、挿入加工過程(
図7に示す過程)は、上述したように、第1外周側絞り過程(
図2~6に示す過程)においてインナープレッシャスリーブ23がブランクBを介してダイコアリング33に突き当たった後に、内周側絞り過程を進行させながら、隙間Dが無くなるように加工凹部24a内に加工挿入部34aが挿入される過程である。
【0046】
このように、内周側絞り過程(
図2~7に示す過程)においては、上記の隙間Dがある状態とし、インナープレッシャスリーブ23がブランクBを介してダイコアリング33に突き当たった後に、上記の隙間Dが無くなるように加工凹部24a内に加工挿入部34aが挿入されるようにすることにより、パネルウォール部L3における局所的な材料の伸びや割れといった不具合が生じることを抑制できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記または下記の実施形態や変形例の各構成を任意に組み合わせて缶蓋製造装置10や缶蓋製造方法を構成する等、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)が上下方向に移動可能に設けられるとともに、下側ツール30の下側ベース部(図示しない)が上下方向において固定状態で設けられるものとして説明したが、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)および下側ツール30の下側ベース部(図示しない)の具体的態様は、上下方向において相対的に接近・離間可能に設けられるものであれば、上記に限定されない。
また、上述した実施形態では、缶蓋Lはチャックウォール部L2が湾曲しているものとして説明したが、缶蓋Lの具体的態様は、上述した実施形態に限定されず、外周側カール部L1とチャックウォール部L2とパネルウォール部L3とセンターパネル部L4とを有するものであれば、如何なるものでもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、追加プレッシャ部25がダイセンターパンチ24に一体に設けられるものとして説明したが、追加プレッシャ部25をダイセンターパンチ24とを別体に設けてもよい。
また、ダイセンターパンチ24とは別体に設けた追加プレッシャ部25を、ダイセンターパンチ24に固定状態で取り付けてもよく、また、ダイセンターパンチ24とは独立して上下方向に移動可能に設置してもよい。
なお、追加プレッシャ部25をダイセンターパンチ24とは独立して上下方向に移動可能に設置する場合、上側ツール20の上側ベース部(図示しない)に対して追加プレッシャ部25を上下方向に移動可能に取り付ければよい。
【符号の説明】
【0050】
10 ・・・ 缶蓋製造装置
20 ・・・ 上側ツール
21 ・・・ ブランクドローダイ
22 ・・・ アウタープレッシャスリーブ
23 ・・・ インナープレッシャスリーブ
23a ・・・ 絞り加工部
24 ・・・ ダイセンターパンチ
24a ・・・ 加工凹部
25 ・・・ 追加プレッシャ部
25a ・・・ 外周側加工部
25b ・・・ 内周側加工部
30 ・・・ 下側ツール
31 ・・・ カットエッジ
32 ・・・ ロワープレッシャスリーブ
33 ・・・ ダイコアリング
34 ・・・ パネルパンチ
34a ・・・ 加工挿入部
L ・・・ 缶蓋
L1 ・・・ 外周側カール部
L2 ・・・ チャックウォール部
L3 ・・・ パネルウォール部
L4 ・・・ センターパネル部
L5 ・・・ 蓋中央凹部
B ・・・ ブランク