(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129802
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ノズル間隔推定モデルの生成方法、ノズル間隔の推定方法、溶融亜鉛めっき付着量の制御方法、溶融亜鉛めっき鋼帯の製造方法、ノズル間隔推定モデル生成装置、ノズル間隔推定装置、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置
(51)【国際特許分類】
C23C 2/20 20060101AFI20240919BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C23C2/20
C23C2/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026402
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023038447
(32)【優先日】2023-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 洋介
【テーマコード(参考)】
4K027
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA22
4K027AC52
(57)【要約】
【課題】実操業時におけるガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼板の表面との間のノズル間隔を計算誤差なく、短時間で算出することができる、ノズル間隔推定モデルの生成方法等を提供する。
【解決手段】ノズル間隔推定モデルの生成方法は、溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、板厚、ライン速度、温度、ガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の実績値を入力データとし、この入力データに対するガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、ガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを推定するノズル間隔推定モデルM1を生成する(ステップS1)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯の鋼種、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の板厚、前記溶融亜鉛めっき鋼帯のライン速度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の温度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯にワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズルのガス圧力、及び前記溶融亜鉛めっき鋼帯のめっき付着量の実績値を入力データとし、この入力データに対する前記ガスワイピングノズルの先端と前記溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、ガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を推定するノズル間隔推定モデルを生成することを特徴とするノズル間隔推定モデルの生成方法。
【請求項2】
前記機械学習には、勾配ブースティング、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、及び重回帰のうちのいずれかを用いることを特徴とする請求項1に記載のノズル間隔推定モデルの生成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノズル間隔推定モデルの生成方法により生成されたノズル間隔推定モデルに、実操業時の溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯の鋼種、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の板厚、前記溶融亜鉛めっき鋼帯のライン速度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の温度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯にワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズルのガス圧力、及び前記溶融亜鉛めっき鋼帯のめっき付着量の目標値を入力して、実操業時におけるガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を推定することを特徴とするノズル間隔の推定方法。
【請求項4】
請求項3に記載のノズル間隔の推定方法で推定された前記ノズル間隔となるようにガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を制御して、溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯に前記ガスワイピングノズルからワイピングガスを吹き付けて溶融亜鉛めっき鋼帯に付着されるめっき付着量を制御することを特徴とする溶融亜鉛めっき付着量の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の溶融亜鉛めっき付着量の制御方法を用いて溶融亜鉛めっき鋼帯のめっき付着量を制御する溶融めっき付着量制御工程を含むことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼帯の製造方法。
【請求項6】
溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯の鋼種、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の板厚、前記溶融亜鉛めっき鋼帯のライン速度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の温度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯にワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズルのガス圧力、及び前記溶融亜鉛めっき鋼帯のめっきの付着量の実績値を入力データとし、この入力データに対する前記ガスワイピングノズルの先端と前記溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、ガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を推定するノズル間隔推定モデルを生成することを特徴とするノズル間隔推定モデル生成装置。
【請求項7】
前記機械学習には、勾配ブースティング、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、及び重回帰のうちのいずれかを用いることを特徴とする請求項6に記載のノズル間隔推定モデル生成装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のノズル間隔推定モデル生成装置により生成されたノズル間隔推定モデルに、実操業時の溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯の鋼種、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の板厚、前記溶融亜鉛めっき鋼帯のライン速度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の温度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯にワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズルのガス圧力、及び前記溶融亜鉛めっき鋼帯のめっき付着量の目標値を入力して、実操業時におけるガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を推定することを特徴とするノズル間隔推定装置。
【請求項9】
請求項8に記載のノズル間隔推定装置で推定された前記ノズル間隔となるようにガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を制御して、溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯に前記ガスワイピングノズルからワイピングガスを吹き付けて前記溶融亜鉛めっき鋼帯に付着されるめっき付着量を制御することを特徴とする溶融亜鉛めっき付着量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル間隔推定モデルの生成方法、ノズル間隔の推定方法、溶融亜鉛めっき付着量の制御方法、溶融亜鉛めっき鋼帯の製造方法、ノズル間隔推定モデル生成装置、ノズル間隔推定装置、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続溶融亜鉛めっきラインでは、一般に、還元雰囲気の連続焼鈍炉で焼鈍された鋼帯が、スナウト内を通過して、めっき槽内の溶融亜鉛浴中に導入される。そして、当該鋼帯は、溶融亜鉛浴中のシンクロール、コレクトロールを介して溶融亜鉛浴の上方に引き上げられる。その後、溶融亜鉛めっき鋼帯の両側に配置されたガスワイピングノズルから溶融亜鉛めっき鋼帯の表面にワイピングガスを吹き付けて、溶融亜鉛めっき鋼帯の表面に付着して引上げられた余剰の溶融亜鉛を掻き取ることにより、めっき付着量が調節される。
【0003】
ここで、溶融亜鉛めっき鋼帯のめっき付着量は、溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯の表面とガスワイピングノズルとの先端とのノズル間隔を調整することによって制御される。
このノズル間隔を調整することによってめっき付着量を制御するものとして、従来、例えば、特許文献1に示すめっき付着量制御方法、特許文献2に示すめっき付着量制御方法、特許文献3に示すめっき付着量制御方法、及び特許文献4に示すめっき付着量制御方法が提案されている。
【0004】
特許文献1に示すめっき付着量制御方法では、めっき付着量制御装置が、めっき付着量予測モデルと、制御部と、鋼板パス移動量推定部を備えている。そして、めっき付着量予測モデルが、板速、ノズル圧力、ノズルと鋼板との距離(ノズル間隔)と、鋼板に付着するめっき付着量の関係を記述したものであり、制御部が、めっき付着量予測モデルを参照して鋼板に付着するめっき付着量が所望の値になるように、ノズル圧力とノズル位置の少なくとも一方を制御している。
【0005】
また、特許文献2に示すめっき付着量制御方法では、操業条件を説明変数とし、それに対応するめっき付着量を目的変数とした統計的手法を用いて、めっき付着量を操業条件によって複数のグループに分類し、その分類情報に基づいて実操業時におけるめっき付着量を推定することにより、鋼帯のめっき付着量を制御するものである。
【0006】
また、特許文献3に示すめっき付着量制御方法では、後行材に付着調整工程を実行する前に、後行材に設定した設定操業情報と、付着量予測モデル生成方法で生成した付着量予測モデルとを用いて、後行材へのめっき付着量の予測値を算出するものである。付着量予測モデルは、被めっき鋼板に関する鋼板情報から選択した1以上のデータ及びワイピングノズルに関するノズル操業情報から選択した1以上のデータを含む入力操業情報データと、その入力操業情報データを用いためっき付着量の実績データとを有する複数組の学習用データを用いた機械学習により生成される。
【0007】
また、特許文献4に示すめっき付着量制御方法は、操業条件を説明変数とし、それに対応するめっき付着量を目的変数としてめっき付着量を予測する決定木モデル、および物理現象に基づく物理モデルを組み合わせて用いることにより、実操業時におけるめっき付着量を予測する付着量予測ステップを含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-105623号公報
【特許文献2】特開2019-210535号公報
【特許文献3】特開2022-535号公報
【特許文献4】特開2020-139175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、これら特許文献1乃至4に示すめっき付着量制御方法などの従来のめっき付着量制御方法においては、機械学習モデルによってめっき付着量を推定している。
そして、アクチュエータとなる実操業時におけるノズル間隔については、従来においては、機械学習モデルによって推定されためっき付着量の推定値とめっき付着量の目標値との偏差からガスワイピングノズルの移動量を計算する。そして、移動量を計算した後のノズル間隔を機械学習モデルに入力してめっき付着量を推定してその推定値とめっき付着量の目標値との偏差を再度算出し、その作業を繰り返して最終的には当該偏差が小さくなるノズル間隔を導出することで実操業時のノズル間隔を導出するようにしている。なお、ガスワイピングノズルを移動する前のガスワイピングノズルの初期位置は、ノズル間隔とめっき付着量との関係を示す物理式を用いて計算するようにしている。
【0010】
しかしながら、このような従来のノズル間隔の導出手法にあっては、ガスワイピングノズルの移動量及びめっき付着量の推定値とめっき付着量の目標値との偏差の反復計算、及び一部物理式を用いた計算をしているため、計算誤差が生じるとともに、計算時間が大量にかかるという課題があった。
【0011】
従って、本発明はこの従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、実操業時におけるガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼板の表面との間のノズル間隔を計算誤差なく、短時間で算出することができる、ノズル間隔推定モデルの生成方法、ノズル間隔の推定方法、溶融亜鉛めっき付着量の制御方法、溶融亜鉛めっき鋼帯の製造方法、ノズル間隔推定モデル生成装置、ノズル間隔推定装置、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るノズル間隔推定モデルの生成方法は、溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯の鋼種、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の板厚、前記溶融亜鉛めっき鋼帯のライン速度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の温度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯にワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズルのガス圧力、及び前記溶融亜鉛めっき鋼帯のめっき付着量の実績値を入力データとし、この入力データに対する前記ガスワイピングノズルの先端と前記溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、ガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を推定するノズル間隔推定モデルを生成することを要旨とする。
【0013】
また、本発明の別の態様に係るノズル間隔の推定方法は、前述のノズル間隔推定モデルの生成方法により生成されたノズル間隔推定モデルに、実操業時の溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯の鋼種、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の板厚、前記溶融亜鉛めっき鋼帯のライン速度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の温度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯にワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズルのガス圧力、及び前記溶融亜鉛めっき鋼帯のめっき付着量の目標値を入力して、実操業時におけるガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を推定することを要旨とする。
【0014】
また、本発明の別の態様に係る溶融亜鉛めっき付着量の制御方法は、前述のノズル間隔の推定方法で推定された前記ノズル間隔となるようにガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を制御して、溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯に前記ガスワイピングノズルからワイピングガスを吹き付けて溶融亜鉛めっき鋼帯に付着されるめっき付着量を制御することを要旨とする。
また、本発明の別の態様に係る溶融亜鉛めっき鋼帯の製造方法は、前述の溶融亜鉛めっき付着量の制御方法を用いて溶融亜鉛めっき鋼帯のめっき付着量を制御する溶融めっき付着量制御工程を含むことを要旨とする。
【0015】
また、本発明の別の態様に係るノズル間隔推定モデル生成装置は、溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯の鋼種、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の板厚、前記溶融亜鉛めっき鋼帯のライン速度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の温度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯にワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズルのガス圧力、及び前記溶融亜鉛めっき鋼帯のめっきの付着量の実績値を入力データとし、この入力データに対する前記ガスワイピングノズルの先端と前記溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、ガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を推定するノズル間隔推定モデルを生成することを要旨とする。
【0016】
また、本発明の別の態様に係るノズル間隔推定装置は、前述のノズル間隔推定モデル生成装置により生成されたノズル間隔推定モデルに、実操業時の溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯の鋼種、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の板厚、前記溶融亜鉛めっき鋼帯のライン速度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯の温度、前記溶融亜鉛めっき鋼帯にワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズルのガス圧力、及び前記溶融亜鉛めっき鋼帯のめっき付着量の目標値を入力して、実操業時におけるガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を推定することを要旨とする。
【0017】
また、本発明の別の態様に係る溶融亜鉛めっき付着量制御装置は、前述のノズル間隔推定装置で推定された前記ノズル間隔となるようにガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を制御して、溶融亜鉛浴から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯に前記ガスワイピングノズルからワイピングガスを吹き付けて前記溶融亜鉛めっき鋼帯に付着されるめっき付着量を制御することを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るノズル間隔推定モデルの生成方法、ノズル間隔の推定方法、溶融亜鉛めっき付着量の制御方法、溶融亜鉛めっき鋼帯の製造方法、ノズル間隔推定モデル生成装置、ノズル間隔推定装置、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置によれば、実操業時におけるガスワイピングノズルの先端と溶融亜鉛めっき鋼帯の表面との間のノズル間隔を計算誤差なく、短時間で算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るノズル間隔推定モデル生成装置、ノズル間隔推定装置、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置を備えた連続溶融亜鉛めっきラインの概略構成図である。
【
図2】
図1に示すノズル間隔推定モデル生成装置、ノズル間隔推定装置、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図1に示すノズル間隔推定モデル生成装置によって生成されるノズル間隔推定モデルを説明するための図である。
【
図4】
図2に示すフローチャートにおけるステップS2(ノズル間隔推定ステップ)の詳細を説明するためのフローチャートである。
【
図5】ステップS2(ノズル間隔推定ステップ)において、ノズル間隔推定モデルに、実操業時の溶融亜鉛めっき鋼板の鋼種、溶融亜鉛めっき鋼板の板厚、溶融亜鉛めっき鋼板のライン速度、溶融亜鉛めっき鋼板の温度、ガスワイピングノズルのガス圧力、及びめっき付着量の目標値を入力して、ノズル間隔を推定するロジックを説明するための図である。
【
図6】参考例に係るノズル間隔導出方法を説明するための図である。
【
図7】めっき付着量の目標値に対して本発明例のノズル間隔の推定方法で推定したノズル間隔推定値とめっき付着量の目標値に対して実際に行ったノズル間隔実績値との相関を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0021】
図1には、本発明の一実施形態に係るノズル間隔推定モデル生成装置、ノズル間隔推定装置、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置を備えた連続溶融亜鉛めっきラインの概略構成が示されている。
図1に示す連続溶融亜鉛めっきライン1では、還元雰囲気の連続焼鈍炉(図示せず)で焼鈍された鋼帯Sが、スナウト3内を通過して、めっき槽2内の溶融亜鉛浴4中に導入される。そして、当該鋼帯Sは、溶融亜鉛浴4中のシンクロール5、コレクトロール6を介して溶融亜鉛浴の上方に引き上げられる。その後、溶融亜鉛めっき鋼帯(亜鉛めっきが施された鋼帯S)SSの両側に配置されたガスワイピングノズル7から溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面にワイピングガスを吹き付けて、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面に付着して引上げられた余剰の溶融亜鉛を掻き取ることにより、めっき付着量が調節される。なお、
図1において、符号8はガイドロールである。
【0022】
ここで、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量は、溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面とガスワイピングノズル7との先端とのノズル間隔Dを調整することによって制御される。
このノズル間隔Dを制御するために、本実施形態にあっては、連続溶融亜鉛めっきライン1に、ノズル間隔推定モデル生成装置10、ノズル間隔推定装置20、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置30が備えられている。
【0023】
ノズル間隔推定モデル生成装置10は、複数の学習用データを機械学習させて、ガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを推定するノズル間隔推定モデルM1(
図3参照)を生成する。ノズル間隔推定モデル生成装置10は、ノズル間隔推定モデルM1の生成機能をコンピュータソフトウェア上でプログラムを実行することで実現するための演算処理機能を有するコンピュータシステムである。そして、このコンピュータシステムは、ROM,RAM,CPU等を備えて構成され、ROM等に予め記憶された各種専用のプログラムを実行することにより、前述した機能をソフトウェア上で実現する。
【0024】
ここで、複数の学習用データは、
図3に示すように、溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSにワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の実績値を入力データ(説明変数)とし、この入力データに対するガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを出力データ(目的変数)としたものである。溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種は、製品となったときの溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種である。また、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚は、製品となったときの溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚である。溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度は、溶融亜鉛めっき鋼帯SSが連続溶融亜鉛めっきライン1を通過するときの移動速度である。また、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度は、鋼帯Sを溶融亜鉛浴4に導入する前の鋼帯Sの温度である。
【0025】
なお、これらの複数の学習用データは、ノズル間隔推定モデル生成装置10に接続された入力装置11からノズル間隔推定モデル生成装置10に作業者により溶融亜鉛めっきの実操業の前に入力される。そして、ノズル間隔推定モデル生成装置10は、この入力された複数の学習用データを機械学習させて、ノズル間隔Dを推定するノズル間隔推定モデルM1を生成する。
ノズル間隔推定モデル生成装置10における機械学習の手法はニューラルネットワークであり、ノズル間隔推定モデルM1は、ニューラルネットワークにより構築された推定モデルである。
【0026】
また、ノズル間隔推定装置20は、
図5に示すように、ノズル間隔推定モデル生成装置10により生成されたノズル間隔推定モデルM1に、実操業時の溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度、ガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値を入力して、実操業におけるガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを推定する。ノズル間隔推定装置20は、ノズル間隔Dの推定機能をコンピュータソフトウェア上でプログラムを実行することで実現するための演算処理機能を有するコンピュータシステムである。そして、このコンピュータシステムは、ROM,RAM,CPU等を備えて構成され、ROM等に予め記憶された各種専用のプログラムを実行することにより、前述した機能をソフトウェア上で実現する。
【0027】
ここで、実操業時の溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度、ガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値の情報は、ノズル間隔推定装置20に接続された上位計算機40からノズル間隔推定装置20に入力される。そして、ノズル間隔推定装置20は、ノズル間隔推定モデル生成装置10から取得したノズル間隔推定モデルM1に、その上位計算機40から入力された情報を入力して実操業時のノズル間隔Dを推定する。
【0028】
また、溶融亜鉛めっき付着量制御装置30は、ノズル間隔推定装置20で推定されたノズル間隔Dとなるようにガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔を制御して、溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSにガスワイピングノズル7からワイピングガスを吹き付けて溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量を制御する。溶融亜鉛めっき付着量制御装置30は、溶融亜鉛めっき鋼帯SSにガスワイピングノズル7からワイピングガスを吹き付ける際に、上位計算機40から入力される実操業時におけるガスワイピングノズル7のガス圧力でワイピングガスを吹き付ける。
これにより、実操業時における溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量は、上位計算機40から入力される溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値に制御される。
【0029】
次に、
図2乃至
図5を参照して、ノズル間隔推定モデル生成装置10、ノズル間隔推定装置20、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置30における処理の流れを説明する。
図2は、ノズル間隔推定モデル生成装置10、ノズル間隔推定装置20、及び溶融亜鉛めっき付着量制御装置30における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
先ず、実操業において鋼帯Sに溶融亜鉛めっきを施す前に、ステップS1において、ノズル間隔推定装置20は、ノズル間隔推定モデルM1(
図3参照)を生成する。このノズル間隔推定モデルM1の生成に際しては、ノズル間隔推定モデル生成装置10は、複数の学習用データを機械学習させてノズル間隔推定モデルM1を生成する(ノズル間隔推定モデル生成ステップ)。
【0030】
ここで、複数の学習用データは、溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSにワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の実績値を入力データ(説明変数)とし、この入力データに対するガスワイピングノズル7の先端と鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを出力データ(目的変数)としたものである。
【0031】
溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種は、前述したように、製品となったときの溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種である。また、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚は、製品となったときの溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚である。溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度は、溶融亜鉛めっき鋼帯SSが連続溶融亜鉛めっきライン1を通過するときの移動速度である。また、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度は、鋼帯Sを溶融亜鉛浴4に導入する前の鋼帯Sの温度である。
【0032】
これらの複数の学習用データは、前述したように、入力装置11からノズル間隔推定モデル生成装置10に作業者により溶融亜鉛めっきの実操業の前に入力される。
次いで、ステップS2において、ノズル間隔推定装置20は、実操業時におけるノズル間隔Dを推定する。ノズル間隔Dの推定に際し、ノズル間隔推定装置20は、
図5に示すように、ステップS1において生成されたノズル間隔推定モデルM1に、実操業時の溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度、ガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値を入力して、実操業時におけるガスワイピングノズル7の先端と鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを推定する(ノズル間隔推定ステップ)。
【0033】
このステップS2(ノズル間隔推定ステップ)の詳細を
図4を参照して説明する。
先ず、ステップS21において、ノズル間隔推定装置20は、ステップS1において生成されたノズル間隔推定モデルM1を読み込む。
次いで、ステップS22において、ノズル間隔推定装置20は、実操業時の溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度、ガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値の情報を、上位計算機40から読み込む。
【0034】
次いで、ステップS23において、ノズル間隔推定装置20は、ステップS21において読込んだノズル間隔推定モデルM1に、ステップS22において読込んだ実操業時の溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度、ガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値を入力して、実操業時におけるノズル間隔Dを推定する。
次いで、ステップS24において、ノズル間隔推定装置20は、ステップS23における結果(推定された実操業時におけるノズル間隔Dの情報)を溶融亜鉛めっき付着量制御装置30に対し出力する。
これにより、ステップS2(ノズル間隔推定ステップ)は終了する。
【0035】
ステップS2が終了したら、ステップS3において、溶融亜鉛めっき付着量制御装置30は、ステップS2で推定されたノズル間隔Dとなるようにガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔を制御して、溶融亜鉛めっき鋼帯SSにガスワイピングノズル7からワイピングガスを吹き付けて溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量を制御する(めっき付着量制御ステップ)。この際に、溶融亜鉛めっき付着量制御装置30は、上位計算機40から入力される実操業時のガスワイピングノズル7のガス圧力でワイピングガスを吹き付ける。
【0036】
これにより、実操業時における溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量は、上位計算機40から入力される溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値に制御される。
そして、実操業において、前述の溶融亜鉛めっき付着量の制御方法(ステップS3、めっき付着量制御ステップ)を用いて溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量を制御する溶融めっき付着量制御工程を経て、その後種々の工程を経て溶融亜鉛めっき鋼帯SSが製造される。
【0037】
このように、本実施形態に係る本発明に係るノズル間隔推定モデル生成装置10及びノズル間隔推定モデルの生成方法(ステップS1、ノズル間隔推定モデル生成ステップ)によれば、複数の学習用データを機械学習させて、ガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを推定するノズル間隔推定モデルM1を生成する。複数の学習用データは、溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSにワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の実績値を入力データとし、この入力データに対するガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔を出力データとしたものである。
【0038】
そして、本実施形態に係るノズル間隔推定装置20及びノズル間隔の推定方法(ステップS2、ノズル間隔推定ステップ)によれば、生成されたノズル間隔推定モデルM1に、実操業時の溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの板厚、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのライン速度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの温度、溶融亜鉛めっき鋼帯SSにワイピングガスを吹き付けるガスワイピングノズル7のガス圧力、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値を入力して、実操業時におけるガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを推定する。
これにより、実操業時におけるガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを計算誤差なく、短時間で算出することができる。
この効果について、
図6に示す従前の参考例に係るノズル間隔導出方法と対比して説明する。
【0039】
図6に示す参考例に係るノズル間隔導出方法においては、先ず、ノズル間隔(ノズル初期位置)とめっき付着量の目標値との関係を示す物理式を用いてノズル間隔(ノズル初期位置)を算出する。
そして、めっき付着量推定モデルM2に、算出されたズル間隔(ノズル初期位置)、実操業時の鋼種、板厚などの情報を入力して、めっき付着量の予測値を推定する。
次いで、めっき付着量推定モデルM2によって推定されためっき付着量の予測値とめっき付着量の目標値との偏差からコントローラー101がガスワイピングノズル7のノズル移動量を計算する。そして、ノズル移動量を計算した後のノズル間隔(ノズル位置)及び実操業時の鋼種、板厚などの情報をめっき付着量推定モデルM2に再度入力してめっき付着量の予測値を推定する。
【0040】
そして、そのめっき付着量の予測値とめっき付着量の目標値との偏差を再度算出し、その作業を繰り返して最終的には当該偏差が小さくなるノズル間隔(ノズル位置)を導出することで実操業時におけるノズル間隔を導出する。
この従前の参考例に係るノズル間隔導出方法においては、ガスワイピングノズル7のノズル移動量及びめっき付着量の予測値とめっき付着量の目標値との偏差の反復計算、及び一部物理式を用いた計算をしているため、ノズル間隔の計算に誤差が生じるとともに、計算時間が大量にかかるという問題がある。
【0041】
これに対して、前述したように、本実施形態に係るノズル間隔推定モデル生成装置10及びノズル間隔推定モデルの生成方法(ステップS1、ノズル間隔推定モデル生成ステップ)においては、先ず、溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の実績値等を入力データとし、この入力データに対するノズル間隔を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、ノズル間隔Dを推定するノズル間隔推定モデルM1を生成する。
【0042】
そして、ノズル間隔推定装置20及びノズル間隔の推定方法(ステップS2、ノズル間隔推定ステップ)においては、生成されたノズル間隔推定モデルM1に、実操業時の溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種等の操業条件及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値を入力して、実操業時におけるノズル間隔Dを推定する。
このため、実操業時におけるノズル間隔Dの導出に際し、ガスワイピングノズル7のノズル移動量及びめっき付着量の予測値とめっき付着量の目標値との偏差の反復計算、及び一部物理式を用いた計算などが不要で、ノズル間隔推定モデルM1に実操業時の操業条件及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値を入力するだけでよい。これにより、実操業時におけるガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを計算誤差なく、短時間で算出することができることになる。
また、ノズル間隔Dは、一般的に下記(1)式から算出される。
【数1】
ここで、η:ノズル効率、B:設定係数、μ
z:溶融亜鉛粘度(Pa・s)、LS:ライン速度(m/s)、P
A:大気圧(Pa)、P:ガスワイピングノズルのガス圧力である。
ノズル間隔Dは、(1)式からわかるように、ガスワイピングノズルのガス圧力Pに大きく影響を受ける。このため、ガスワイピングノズルのガス圧力Pを、ノズル間隔推定モデルM1を生成する際の学習用データの入力データとするとともに、ノズル間隔推定モデルM1への入力パラメータとすることで、ノズル間隔Dを計算する際の計算誤差の削減、計算時間の削減に寄与することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る溶融亜鉛めっき付着量制御装置30及び溶融亜鉛めっき付着量の制御方法(ステップS3、めっき付着量制御ステップ)によれば、推定されたノズル間隔Dとなるようにガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔を制御する。そして、溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSにガスワイピングノズル7からワイピングガスを吹き付けて溶融亜鉛めっき鋼帯SSに付着されるめっき付着量を制御する。
ここで、前述したように、ノズル間隔Dは、(1)式からわかるように、ガスワイピングノズルのガス圧力Pに大きく影響を受ける。このため、ガスワイピングノズルのガス圧力Pを、ノズル間隔推定モデルM1を生成する際の学習用データの入力データとするとともに、ノズル間隔推定モデルM1への入力パラメータとすることで、ノズル間隔Dを計算する際の計算誤差の削減、計算時間の削減に寄与することができる。
【0044】
これにより、実操業時における溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量を溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値に制御することができる。
また、本実施形態に係る溶融亜鉛めっき鋼帯の製造方法によれば、溶融亜鉛めっき付着量の制御方法(ステップS3、めっき付着量制御ステップ)を用いて溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量を制御する溶融めっき付着量制御工程を含む。
これにより、溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量が溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値に制御された溶融亜鉛めっき鋼帯SSを製造することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、ノズル間隔推定モデル生成装置10における機械学習の手法はニューラルネットワークに限らず、勾配ブースティング、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、及び重回帰のうちのいずれかであればよい。
このような機械学習の手法を用いることで、精度の高いノズル間隔推定モデルM1を生成することができる。
【実施例0046】
本発明の効果を検証すべく、本発明例のノズル間隔推定モデルの生成方法によって、溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種等の操業条件及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっきの付着量の実績値を入力データとし、この入力データに対するノズル間隔を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、ガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを推定するノズル間隔推定モデルM1を生成した。
【0047】
そして、本発明例のノズル間隔の推定方法によって、生成されたノズル間隔推定モデルM1に、実操業時の溶融亜鉛浴4から連続的に取り出される溶融亜鉛めっき鋼帯SSの鋼種等の操業条件、及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値を入力して、実操業時におけるガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dを推定した。
【0048】
図7には、めっき付着量の目標値に対して本発明例のノズル間隔の推定方法で推定したノズル間隔推定値とめっき付着量の目標値に対して実際に行ったノズル間隔実績値との相関が示されている。また、表1には、ノズル間隔推定モデルM1による当該ノズル間隔推定値と当該ノズル間隔実績値との相関係数R、絶対誤差平均AVE、及び標準偏差σが示されている。
【0049】
【0050】
表1に示すように、ノズル間隔推定値とノズル間隔実績値との相関係数Rが0.9428、ノズル間隔推定値とノズル間隔実績値との絶対誤差平均AVEが0.3988、標準偏差σが0.7676である。これにより、本発明例によって実操業時におけるガスワイピングノズル7の先端と溶融亜鉛めっき鋼帯SSの表面との間のノズル間隔Dが計算誤差なく精度高く推定されていることが確認された。そして、実操業時におけるノズル間隔Dの導出に際し、ノズル間隔推定モデルM1に実操業時の操業条件及び溶融亜鉛めっき鋼帯SSのめっき付着量の目標値を入力するだけでよく、短時間でノズル間隔Dを算出できた。