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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129817
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】プロピレン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/06 20060101AFI20240919BHJP
   C08F 2/34 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C08F10/06
C08F2/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037845
(22)【出願日】2024-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2023038482
(32)【優先日】2023-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
(72)【発明者】
【氏名】宮田 翔司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】土谷 学
(72)【発明者】
【氏名】井田 祥一
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011MA02
4J011MA15
4J011MB04
4J100AA03P
(57)【要約】      (修正有)
【課題】円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法において、塊状ポリマーの発生を抑制し、長期運転性に優れたプロピレン系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】触媒の存在下でプロピレン系重合体を重合させ、前記触媒は横型重合反応器の一方端部の上部から供給され、前記プロピレン系重合体は前記横型重合反応器の他方端部の下部から抜き出される、プロピレン系重合体の製造方法であって、前記円筒型の横型重合反応器の周方向の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する、温度測定ステップ、前記温度測定ステップにより求められる温度分布から特定の温度分布パラメータ(A)を演算する、演算ステップ、及び前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように監視する、監視ステップ、を含む、プロピレン系重合体の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸回りに回転する撹拌機構を内部に備えた円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法により、触媒の存在下でプロピレン又はプロピレンとプロピレンを除くα-オレフィンからプロピレン系重合体を重合させ、前記触媒は前記横型重合反応器の一方端部の上部から供給され、前記プロピレン系重合体は前記横型重合反応器の他方端部の下部から抜き出される、プロピレン系重合体の製造方法であって、
前記円筒型の横型重合反応器の周方向の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する、温度測定ステップ、
前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式1に定める温度分布パラメータ(A)を演算する、演算ステップ、及び、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように監視する、監視ステップ、を含み、
更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1)、及び、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(A)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい、プロピレン系重合体の製造方法。
A=Th×θw (式1)
ただし、Th=Tp-Taveであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
TaveはTiの平均温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTaveとの差(Ti-Tave)が0.5℃以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
【請求項2】
水平軸回りに回転する撹拌機構を内部に備えた円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法により、触媒の存在下でプロピレン又はプロピレンとプロピレンを除くα-オレフィンからプロピレン系重合体を重合させ、前記触媒は前記横型重合反応器の一方端部の上部から供給され、前記プロピレン系重合体は前記横型重合反応器の他方端部の下部から抜き出される、プロピレン系重合体の製造方法であって、
前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する、温度測定ステップ、
前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式2に定める温度分布パラメータ(As)を演算する、演算ステップ、及び、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えないように監視する、監視ステップ、を含み、
更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1’)及び、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(As)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2’)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい、プロピレン系重合体の製造方法。
As=Th×θw (式2)
ただし、Th=Tp-Trefであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
Trefは所定の参照温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTrefとの差(Ti-Tref)が所定の温度以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
【請求項3】
前記温度測定ステップは、少なくとも、前記横型重合反応器の触媒供給部の周方向において温度分布を測定する、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記温度測定ステップは、横型重合反応器の外表面において温度分布を測定する、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記温度測定ステップは、隣接する測定点の間隔が10mm~1000mmとなるようにして測定する、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記温度測定ステップでは、円座標において動径座標rを温度、角度座標θを周方向の各測定点の位置として、周方向の各測定点において測定した温度をプロットした温度プロファイルを作成する、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記所定値は、0π~30πの間で設定される、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記撹拌機構の回転数は、5rpm~50rpmである、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記横型重合反応器の触媒供給部が含まれる領域の温度(Tx)と反応器内の混合ガスの露点(Tz)との温度差ΔT1(℃)(=Tx-Tz)が0℃~3.0℃である、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記触媒が、チーグラー系重合触媒またはメタロセン系重合触媒である、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項11】
製造されるプロピレン系重合体の温度230℃、2.16kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が0.3g/10min~150g/10minである、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系重合体の製造方法に関するものである。詳しくは、円筒型の横型重合反応器を用いたプロピレンの重合において、反応器の周方向の温度分布を測定して算出される特定の温度分布パラメータを監視することにより、塊状ポリマーの生成が抑制され、長期に安定してプロピレン系重合体の製造を可能とする重合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系重合体は、剛性や耐熱性などの機械的物性に優れ、成形性も良好であり、比較的安価に製造することが可能であり、環境問題適応性も高いことから、産業上の広い用途に適用されている。
そのため、ポリプロピレンの製造プロセスは、工程の簡略化と生産コストの低減及び生産性の向上、更には触媒性能の改良などの観点で技術検討が続けられてきた。
【0003】
ポリプロピレンの製造プロセスにおいては、触媒性能が格段に進歩するにつれて、触媒残渣やアタクチックポリマーなどの除去の必然性が低減され、現在では気相法プロセスが主流となっている。
気相法プロセスにおいては、近年では担持型触媒を代表とした高活性化タイプの触媒が一般に用いられている。近年の触媒技術の進歩により開発された高活性化触媒やメタロセン系触媒などの新規触媒のプロセスへの適応、及びそれに付随した塊状ポリマーの発生の抑制や微粉の生成量の低減は、プロセスの安定した運転を行う点からも解決すべき問題である。
【0004】
気相重合において塊状の不定形ポリマーの発生を防止するには、流動床反応器では触媒供給部において重合熱の除去が比較的困難であるため、局部的な重合熱の蓄積により、流動床内の温度が不安定化し易い。そのために、流動床反応器を用いた気化熱を利用して、気相重合器内に戻る液化した循環ガスの液流量と系外排出ガス流量及び供給モノマーガス流量により、器内の温度及び圧力を制御するポリプロピレンの製造法(例えば、特許文献1を参照)が提案されている。しかしながら当該製造法は、生産量の増加や急激なグレード変更での流動床反応器における重合熱の除去の点で改善の余地があることが避けられない。
また、塊状ポリマーの生成の抑制と流動状態の保持を目的とし、流動床反応器では重合時に反応器内壁温度を流動ガスの露点以下に冷却することを特徴とする気相重合方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、局部的な相変化により運転制御に困難が伴うことを本発明者らは認知している。
【0005】
また、特許文献3においては、長期間に亘り安定してオレフィンの気相重合を行うことができることを目的として、流動層型重合装置において、前記流動層型重合器の外殻表面の温度分布を所定の測定距離から測定する赤外線温度測定装置と、前記流動層型重合器外殻表面の温度分布の目標値をあらかじめ格納し、前記赤外線温度測定装置が測定した温度分布を表示するとともに、前記温度分布の目標値と測定した外殻表面の温度分布とを比較演算し、目標に合致させるように重合に関わる条件を変更して制御する制御装置とを備えることが記載されている。しかしながら、赤外線温度測定装置により外殻表面の温度分布を所定の測定距離から測定する場合、放熱や外気温の影響を受けやすく、温度管理の精度が劣りやすく、また、反応器が保温材で覆われている場合には更に温度管理の精度が劣ってしまうと本発明者らは認知している。
【0006】
一方、気相法プロセスには、液化プロピレンの気化熱を利用して重合熱を除去する形式のオレフィンの気相反応器として、水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型重合反応器を用いた重合プロセスが知られている。液化プロピレンの気化熱を利用して重合熱を除去する方法は、小さな設備でも大きな除熱能力を持つことができる点で優位性のあるものである。
【0007】
液化プロピレンの気化熱を利用する場合、反応器からガスを抜き出し、熱交換器で冷却することにより液化させ、再び反応器へ戻すのが一般的な方法である。ガスが液化する温度(露点)は圧力及びガスの組成に依存するため、プロピレン単独の露点に対して、プロピレンに水素やエチレンなどの露点の低いガス成分を混合していくと、混合量の増加に従って露点が低下する。熱交換器の冷却能力は設備によって決まるものであり、同一設備を使用する場合にはガス成分の露点が低くなるほどガスを液化させる能力が低下、即ち、除熱能力が低下する。
かくして、高活性化触媒やメタロセン触媒などの新規触媒による、メルトフローレートの高いプロピレン系重合体、或はランダム重合体といった、水素やエチレンが反応器に多く存在する製造プロセスでは触媒活性が高くなる反面、除熱能力の低下による塊状ポリマーの発生が不可避である。
【0008】
かかる課題に対応するために、横型重合反応器において、チタン担持触媒成分と助触媒成分の供給口を変えることでポリマー凝集体を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献4を参照)。また、α-オレフィンによる予備重合処理とドナー添加による塊状の不定形ポリマーの抑制方法(例えば特許文献5を参照)も提案されている。
【0009】
また、本出願人は、反応熱を主として液化プロピレンの気化熱により除去する気相法重合プロセスによるプロピレン系重合体、特に低結晶性プロピレン系重合体を連続的に製造する方法において、反応器へ供給する気化プロピレンのリサイクルガスの温度を、特定の温度に制限することにより、重合体の流動性を良い状態にし、安定運転を阻害する塊状ポリマーを低減する方法を提案している(特許文献6)。
更に、本出願人は、横型重合反応器によりプロピレン系重合体を連続的に製造する方法において、重合反応器内における温度条件について、触媒供給部が含まれる区分の温度(Tx)と反応器内の混合ガスの露点(Tz)との温度差ΔT1(℃)(=Tx-Tz)を0~5℃とすることにより、塊状ポリマーの発生を抑制し、生産効率を高めると共に、更に透明性や低温ヒートシール性に優れたプロピレン系重合体を工業的に安定に製造する方法を提案している(特許文献7)。
【0010】
一方で、特許文献8には、光学的高温計を用いる、ガス化装置の反応器内部の温度を測定する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-209415号公報
【特許文献2】特許第3,180,305号公報
【特許文献3】特開平11-189603号公報
【特許文献4】特公平7-94485号公報
【特許文献5】国際公開第00/42081号
【特許文献6】特開2009-73890号公報
【特許文献7】特開2011-148980号公報
【特許文献8】特表2001-521144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法において、特許文献7の条件によっても塊状ポリマーの発生抑制が不十分な場合があった。そのため、更に、塊状ポリマーの発生を抑制し、且つ生産効率を高める改良技術が求められている。
以上の様に、従来技術においては、円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法において、塊状ポリマーの発生を抑制して、長期に安定してプロピレン系重合体を製造するといった課題を充分に満たす技術は未だ実現されてなく、このような観点から更なる技術改良が望まれている。
【0013】
本発明における課題は、前記の状況を鑑みて、円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法において、塊状ポリマーの発生を抑制し、長期運転性に優れたプロピレン系重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法において、特許文献7のように、反応器内の混合ガスの露点と、触媒供給部の重合温度との差を小さくし、同様に運転していても、塊状ポリマーが発生する場合があることに対して、塊状ポリマーが発生する場合に反応器内で何が起きているかを調査した。
本発明者らは、当該調査に基づいて、連続重合運転時にリアルタイムで、前記円筒型の横型重合反応器の周方向の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定し、当該温度分布を特定の温度パラメータとして演算し、当該特定の温度パラメータを監視することにより、塊状ポリマーの発生を抑制し、長期運転性に優れたプロピレン系重合体の製造方法となることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
【0015】
[1] 水平軸回りに回転する撹拌機構を内部に備えた円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法により、触媒の存在下でプロピレン又はプロピレンとプロピレンを除くα-オレフィンからプロピレン系重合体を重合させ、前記触媒は前記横型重合反応器の一方端部の上部から供給され、前記プロピレン系重合体は前記横型重合反応器の他方端部の下部から抜き出される、プロピレン系重合体の製造方法であって、
前記円筒型の横型重合反応器の周方向の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する、温度測定ステップ、
前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式1に定める温度分布パラメータ(A)を演算する、演算ステップ、及び、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように監視する、監視ステップ、を含み、
更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1)、及び、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(A)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい、プロピレン系重合体の製造方法。
A=Th×θw (式1)
ただし、Th=Tp-Taveであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
TaveはTiの平均温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTaveとの差(Ti-Tave)が0.5℃以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
[2] 水平軸回りに回転する撹拌機構を内部に備えた円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法により、触媒の存在下でプロピレン又はプロピレンとプロピレンを除くα-オレフィンからプロピレン系重合体を重合させ、前記触媒は前記横型重合反応器の一方端部の上部から供給され、前記プロピレン系重合体は前記横型重合反応器の他方端部の下部から抜き出される、プロピレン系重合体の製造方法であって、
前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する、温度測定ステップ、
前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式2に定める温度分布パラメータ(As)を演算する、演算ステップ、及び、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えないように監視する、監視ステップ、を含み、
更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1’)、及び、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(As)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2’)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい、プロピレン系重合体の製造方法。
As=Th×θw (式2)
ただし、Th=Tp-Trefであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
Trefは所定の参照温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTrefとの差(Ti-Tref)が所定の温度以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
[3] 前記温度測定ステップは、少なくとも、前記横型重合反応器の触媒供給部の周方向において温度分布を測定する、前記[1]又は[2]に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
[4] 前記温度測定ステップは、横型重合反応器の外表面において温度分布を測定する、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
[5] 前記温度測定ステップは、隣接する測定点の間隔が10mm~1000mmとなるようにして測定する、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
[6] 前記温度測定ステップでは、円座標において動径座標rを温度、角度座標θを周方向の各測定点の位置として、周方向の各測定点において測定した温度をプロットした温度プロファイルを作成する、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
[7] 前記所定値は、0π~30πの間で設定される、前記[1]~[6]のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
[8] 前記撹拌機構の回転数は、5rpm~50rpmである、前記[1]~[7]のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
[9] 前記横型重合反応器の触媒供給部が含まれる領域の温度(Tx)と反応器内の混合ガスの露点(Tz)との温度差ΔT1(℃)(=Tx-Tz)が0℃~3.0℃である、前記[1]~[8]のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
[10] 前記触媒が、チーグラー系重合触媒またはメタロセン系重合触媒である、前記[1]~[9]のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
[11] 製造されるプロピレン系重合体の温度230℃、2.16kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が0.3g/10min~150g/10minである、前記[1]~[10]のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプロピレン系重合体の製造方法によれば、円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法において、塊状ポリマーの発生を抑制し、長期運転性に優れ、生産効率を高めると共に、安定してプロピレン系重合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の横型重合反応器を用いた製造方法に用いる装置の配置の一例を示す概略説明図である。
図2図2は、本発明の横型重合反応器を用いた製造方法に用いる装置の配置の一例を示す概略説明図である。
図3図3は、横型重合反応器の周方向の温度の測定点を示す模式図である。
図4図4は、円座標において動径座標rを温度、角度座標θを周方向の各測定点の位置として、周方向の各測定点において測定した温度をプロットした温度プロファイル(T)を示す図である。
図5図5は、円座標において動径座標rを温度、角度座標θを周方向の各測定点の位置として、周方向の各測定点において測定した温度をプロットした温度プロファイル(T)において、θwの求め方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書において数値範囲を示す上限値と下限値は任意の組合せを採用できる。さらに、本明細書において、各特性の好ましい範囲同士も任意の組み合わせを採用できる。
【0019】
本発明のプロピレン系重合体の製造方法の第1の実施形態は、水平軸回りに回転する撹拌機構を内部に備えた円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法により、触媒の存在下でプロピレン又はプロピレンとプロピレンを除くα-オレフィンからプロピレン系重合体を重合させ、前記触媒は前記横型重合反応器の一方端部の上部から供給され、前記プロピレン系重合体は前記横型重合反応器の他方端部の下部から抜き出される、プロピレン系重合体の製造方法であって、
前記円筒型の横型重合反応器の周方向の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する、温度測定ステップ、
前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式1に定める温度分布パラメータ(A)を演算する、演算ステップ、及び、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように監視する、監視ステップ、を含み、
更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1)、及び、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(A)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい、プロピレン系重合体の製造方法である。
A=Th×θw (式1)
ただし、Th=Tp-Taveであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
TaveはTiの平均温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTaveとの差(Ti-Tave)が0.5℃以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
【0020】
本発明のプロピレン系重合体の製造方法の第2の実施形態は、水平軸回りに回転する撹拌機構を内部に備えた円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法により、触媒の存在下でプロピレン又はプロピレンとプロピレンを除くα-オレフィンからプロピレン系重合体を重合させ、前記触媒は前記横型重合反応器の一方端部の上部から供給され、前記プロピレン系重合体は前記横型重合反応器の他方端部の下部から抜き出される、プロピレン系重合体の製造方法であって、
前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する、温度測定ステップ、
前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式2に定める温度分布パラメータ(As)を演算する、演算ステップ、及び、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えないように監視する、監視ステップ、を含み、
更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1’)、及び、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(As)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2’)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい、プロピレン系重合体の製造方法。
As=Th×θw (式2)
ただし、Th=Tp-Trefであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
Trefは所定の参照温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTrefとの差(Ti-Tref)が所定の温度以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
【0021】
以下、本発明の内容について詳細に説明するが、まず、第1及び第2の実施形態に共通の、水平軸回りに回転する撹拌機構を内部に備えた円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法によるプロピレン系重合体の製造方法を説明する。次に、本発明の特徴である特定の温度分布パラメータに基づいた監視工程を含む製造管理方法を説明する。
【0022】
1.本発明のプロピレン系重合体の製造に用いられるモノマー
本発明でプロピレンと重合させる「α-オレフィン」としては、特に限定はされないが、プロピレンを除く炭素数2~12のオレフィン、特に炭素数2~12のα-オレフィンが好ましく用いられる。
プロピレンを除くα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテンなどが挙げられ、なかでも、エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンを用いることがより好ましく、これらのα-オレフィンは1種のみならず2種以上を用いることも可能である。なお、本発明で重合させる、プロピレンを除くα-オレフィンを、本明細書において「他のα-オレフィン」とも記載する。
【0023】
2.触媒
本発明で用いるオレフィン重合用触媒としては、(I)(1)チタン、マグネシウム、ハロゲン及び内部ドナーとしての電子供与性化合物を必須成分として含有してなる固体触媒成分、(2)有機アルミニウム化合物、及び必要に応じて(3)外部ドナーとしての電子供与性化合物から構成される重合用触媒、即ち、チーグラー系重合触媒が挙げられる。
また、(II)(1)遷移金属化合物からなるメタロセン錯体、(2)それを活性化させる助触媒を必須成分として含有してなる触媒成分、並びに必要に応じて(3)有機アルミニウム化合物から構成される重合用触媒、即ち、メタロセン系重合触媒の使用も可能である。ここで「必須成分として含有し」ということは、成分以外に他元素を含んでいてもよいこと、これらの元素はそれぞれが任意の化合物として存在してもよいこと、並びにこれら元素は相互に結合したものとして存在してもよいことを示すものである。
本発明で用いるオレフィン重合用触媒としては、従来公知のオレフィン重合用触媒を用いることができ、例えば、特開2011-148980号公報、特開2012-92275号公報、特開2011-153287号公報、特開2017-95606号公報等に記載されているオレフィン重合用触媒を適宜選択して用いることができる。
本発明で用いることができるオレフィン重合用触媒は、前述のチーグラー系重合触媒又はメタロセン系重合触媒が好ましいが、これらに限られるものではない。
【0024】
3.重合様式と重合反応器
本発明においては、プロピレン又はプロピレンと他のα-オレフィンとを重合させてなるプロピレン系重合体の製造は、水平軸回りに回転する撹拌機構を内部に備えた円筒型の横型重合反応器を用い、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去する連続気相重合法によって実施する。
本発明において、気相重合法とは液が全く存在しないことを意味しない。重合を行う相が実質的に気相であればよく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で液が存在してもよい。この液としては、除熱のための液化プロピレンでだけではなく、ヘキサンなどの不活性炭化水素成分を例示することができる。
【0025】
本発明に用いられる重合反応器(以下、単に「反応器」という場合がある)は、使用する原料、反応条件、反応形態、生成物などにより、その反応に適する限りにおいて、大きさ、材質などに限定されず、既存のものから任意に選択し使用することが可能である。形状は円筒状の部分を有する円筒型の横型重合反応器である。液化プロピレンの気化熱(蒸発潜熱)を用いて除熱を行うため、反応器には、反応器からプロピレンを含むガスを抜き出し、そのガスを冷却して少なくとも一部を液化させ、液化した成分の少なくとも一部を反応器に供給するリサイクル装置を備えたものであることが好ましい。また、反応器は、放熱や外気温の影響を少なくするために、保温されていることが好ましい。保温の手段としては、スチームトレース、反応器を保温材で覆うなどが挙げられる。反応器の保温材としては公知の保温材を適宜選択して用いることができ、例えば、グラスウール等が挙げられる。
【0026】
反応器の大きさはそれぞれの反応形態等に応じて任意である。容積は通常、0.1m以上150m以下であり、工業的な生産性、経済性の点から、20m以上であることが好ましい。長さ対直径比は、工業的な生産性と経済性の点から2.0以上であることが好ましく、5.0以下であってよい。
【0027】
また、本発明の重合方法において、触媒は前記横型重合反応器の一方端部の上部から供給され、プロピレン系重合体は前記横型重合反応器の他方端部の下部から抜き出される。
横型重合反応器で重合したポリマー粒子は、撹拌反応器中で形成され、重合を進行しながら、撹拌により移動しつつ反応器に沿って進む。そのため、本発明に用いられる重合反応器は、他の重合反応器にない特徴である、完全混合槽を数台直列に並べたフローパターンである、プラグフロー型を示す。横型重合反応器は、長さの直径に対する比率において、2個や3個又はそれ以上の反応器と同等な、固体混合度を容易に達成することができる点で経済的に有利である。さらに、重合反応器が横型であるため縦型反応器に比べて除熱時に重合熱も効率よく除去される上で有利である。
一方で、水平軸回りに回転する撹拌機を内部に有する横型重合反応器を用いた気相法プロセスで重合を行う場合は、反応器内の局部発熱などの影響による異常反応により、塊状ポリマー量が増大し、塊状ポリマーと撹拌機との物理接触により、微粉量が増大する傾向にある。
本発明のプロピレン系重合体の製造方法においては、後述するように、適正に温度パラメータを監視して製造条件を制御することにより、塊状ポリマーの発生、ひいては微粉の発生を抑制することができ、運転の安定性及び生産性などを向上できるという特徴を有している。
【0028】
反応器の並び方については、本発明の要旨を阻害しない限り任意の方法を用いることができる。反応器は一つでも複数でもよく、複数の場合は、直列に繋いでもよいし、並列に繋いでもよい。
好ましい例としては、2槽~4槽の反応器を直列に繋いだ反応装置を例示することができる。特にプロピレンとその他のα-オレフィンとのブロック共重合体を製造する場合には、少なくとも直列に繋がった2槽の反応器を含む並び方にする方が好ましい。2槽以上の反応器の配置方法としては、特に制限はないが、水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型重合反応器が複数槽の場合には、上流の反応器の攪拌機の回転軸は、下流の反応器の攪拌機の回転軸と同じ又はより高い高さに配置するのが好ましく、下流の反応器の攪拌機の回転軸より高い、ある一定の高さで配置するのがより好ましい。
また、前記撹拌機構の回転数は、触媒の分散性や、パウダーと液化モノマー含有液との接触効率の点から、5rpm~50rpmであることが好ましく、10rpm~30rpmであることがより好ましい。
【0029】
槽数を増やすことなく滞留時間分布を狭くする方法としては、反応器の内部にパウダーの移動を制限する堰を設けることにより可能である。堰の形態としては、反応器に固定された固定堰を用いてもよいし、回転軸に固定された回転堰を用いてもよい。滞留時間は生産量に応じて任意に変えることもできる。
【0030】
液化モノマー含有液の気化熱を用いて除熱を行う方法としては、任意の方法を用いることができる。
液化モノマー含有液の気化熱を用いて除熱を行うためには、液化プロピレンをはじめとした液化モノマー及びその他成分を含み、実質的に液の状態にある液化モノマー含有液を反応器に供給すればよい。フレッシュな液化モノマーを反応器に供給することもできるが、一般的にはリサイクルモノマーを用いることが望ましい。リサイクルモノマーを用いる一般的な手順は以下に例示される。
反応器からプロピレンを含む未反応ガスを抜き出し、その未反応ガスを冷却して少なくとも一部を液化させ、液化した成分の少なくとも一部を反応器に供給する。この際、液化する成分はプロピレンを含む必要があるが、エチレンに代表されるコモノマー成分やイソブタン、ヘキサン等の不活性炭化水素成分を含んでいてもよい。
【0031】
なお、本発明において、反応熱を液化モノマー含有液の気化熱により除去するということは、液化モノマー含有液の気化熱だけを用いて除熱を行うことを意味しない。本発明の要旨を逸脱しない限り、他の除熱方法を併用することができる。具体的には、反応器に備え付けたジャケットを用いて除熱する方法、反応器からのガスの一部を抜き出して熱交換器により冷却し再びガスを反応器に戻す方法、などを例示することができる。ただし、本発明においては、液化モノマー含有液の気化熱を用いた除熱が主体である必要がある。具体的には、少なくとも一つの反応器において、除熱量の少なくとも半分を液化モノマー含有液の気化熱を用いて除熱するものであってよい。
【0032】
図1は、本発明の横型重合反応器を用いた製造方法に用いる装置の配置の一例を示す概略説明図である。横型重合反応器10は細長く、隔壁10a及び10bを備え、図1に示すように、一般的には水平位置で設置されている。重合反応は横型重合反応器10内の、隔壁10aと10bとに挟まれた空間において行われる。図1においては、上流側の隔壁10aが反応器上流側末端12であり、下流側の隔壁10bが反応器下流側末端14である。なお、図示しないが、隔壁が曲面形状の場合は、各曲面の頂点が反応器上流側末端及び下流側末端となる。
攪拌機20の水平軸20aは横型重合反応器10の反応器下流側末端14の中へ延び、撹拌の為の複数の攪拌翼20bが横型重合反応器10内で取り付けられている。撹拌翼20bはポリマー粒子を横型重合反応器10内でその中へ導入される他物質と混合する。
【0033】
横型重合反応器10の触媒成分供給配管1,2より導入された触媒成分は、撹拌翼20bにてポリマー粒子と混合されながら、重合を開始する。触媒成分供給配管1,2は、横型重合反応器の一方端部の上部から供給されるようにすれば、温度計、クエンチノズルとの位置関係において、触媒供給部が含まれる領域区分の温度が測れ、反応器に供給した触媒と液化モノマー含有液が混合され得る限り、任意の位置に設置することができる。触媒成分が反応器の上流部に添加されると、それが重合によりポリマー粒子として成長しながら、反応器の下流側へ移動することができるからである。
本発明の重合用触媒やその他の任意成分は、公知の方法を用いて横型重合反応器に供給することができる。重合触媒についてはそのまま粉末状で反応器に供給してもよいが、液状飽和炭化水素やミネラルオイルなどの不活性溶剤を用いて希釈した上で供給してもよい。
また、有機アルミニウム化合物のようなその他重合触媒を構成する成分は、チーグラー系固体触媒成分やメタロセン錯体成分と接触させた後に触媒中の成分として供給しても、これらの成分とは別に供給してもよい。
【0034】
触媒成分供給配管1は、触媒の主成分、例えばチーグラー系固体触媒成分やメタロセン錯体を含む固体触媒成分、及びその他の重合触媒成分を供給する配管であってよい。触媒成分供給配管1は、好ましくは、隔壁10aから隔壁10b間の距離Lに対して、隔壁10aから隔壁10bの方向へ、隔壁10aの位置を0(L)、隔壁10bの位置を1Lと表現したときに、隔壁10aから1/9L以上2/9L以下の間に設置することが望ましい。隔壁10aから1/9L以上の位置にあると、触媒が反応器の内壁に付着しににくく、凝集体や塊状ポリマーの発生が抑制でき、運転安定性を高めることができる。隔壁10aから2/9L以下の位置にあると、触媒の反応器内での滞留時間が短すぎることがなく、活性の低下を抑えることができ、経済的に有利である。
従って、本発明において、横型重合反応器の一方端部の上部から供給される触媒供給部は、隔壁10aから隔壁10b間の距離Lに対して、隔壁10aから隔壁10bの方向へ、隔壁10aの位置を0(L)、隔壁10bの位置を1Lと表現したときに、隔壁10aから1/9L以上2/9L以下の間であってよい。
触媒成分供給配管2は、助触媒、有機アルミニウム化合物、及びその他の重合触媒成分を供給する配管であってよく、好ましくは、隔壁10aから隔壁10b間の距離Lに対して、隔壁10aから0(L)以上2/9L以下の間に設置するのがよい。好ましくは触媒成分供給配管1と、隔壁10aから同距離若しくは上流側に位置することが好ましい。
また触媒成分供給配管1,2は、それぞれ必要に応じて1本の使用でも可能であり、各々上記範囲において複数用いてもよい。触媒成分供給配管1が触媒成分供給配管2を兼ねていてもよい。
【0035】
重合の際に発生する重合熱は、液化モノマー含有液供給配管19から供給される原料液化プロピレンを含む液化モノマー含有液の気化熱により除去される。
液化モノマー含有液供給配管19から横型重合反応器10へ導入された液化モノマー含有液は、触媒成分と撹拌翼20bにてポリマー粒子と混合されながら重合される。
【0036】
除熱に用いられる液化モノマー含有液の供給方法は、実質的に液の状態にある液化モノマー含有液を反応器に供給するものである限り任意の方法を用いることができるが、触媒供給部が反応器上部に存在するため、液化モノマー含有液は、反応器上部から、反応器内部の気相部に供給することが好ましい。触媒供給部と液化モノマー供給配管が共に反応器上部に存在すると、液化モノマーがよりよく分散する。また、パウダーと配管が直接接触しないため、触媒供給部と液化モノマー供給配管へのポリマー付着を抑制できる。
【0037】
特に触媒供給部が含まれる領域区分においては、塊状ポリマーの発生を抑制する点から、液化モノマー含有液を少なくとも1か所で供給することが好ましく、その位置は、隔壁10aから隔壁10b間の距離Lに対して、隔壁10aから0(L)以上2/9L以下の間に設置するのが好ましい。
更に触媒供給部が含まれる領域区分においては、液化モノマー含有液の供給箇所は、特に触媒成分供給配管1と、隔壁10aから同距離若しくは上流側に設置するのが好ましい。
また触媒供給部が含まれる領域区分においては、液化モノマー含有液を複数の箇所で供給してもよい。
【0038】
未反応のガスは未反応ガス抜出し配管13にて反応系外へ排出され、凝縮機15にてその一部分が凝縮され、リサイクルドラム11で液相と気相へ分離される。液相部は重合熱除去のため液化モノマー含有液供給配管19へ再導入される。気相部は、配管4から分子量調節のための水素や他のα-オレフィン等と混合され、圧縮機16によって昇圧され、横型重合反応器10底部に設置された原料混合ガス供給配管18を経由して再供給される。
この時、上部に特定の間隔を持って配置された液化モノマー含有液供給配管19-1、19-2、19-3、19-4、19-5からの液化モノマー含有液の流量、並びに、下部に特定の間隔を持って配置された原料混合ガス供給配管18-1、18-2、18-3、18-4、18-5から温度制御された混合ガス流量は、個別に制御されうる。各流量は液化モノマー含有液供給配管、原料混合ガス供給配管の各々に設置した操作弁にて制御される。
ポリマー粒子は反応と混合をしながら重合槽内を上流部から下流部へ移動し、重合体抜出し配管21にて反応系外へ排出される。排出されたパウダーは、ガス回収機22でガス類を分離し、ポリマー粒子はパウダー回収機23で回収される。
【0039】
本発明における横型重合反応器は、内部に水平軸方向に温度の異なる複数の領域区分を設定することが可能であり、触媒供給部が含まれる領域区分とは、反応器内部の水平軸方向に温度の異なる複数の領域区分が設定された場合には、複数の領域区分のうち、触媒成分供給配管が含まれる領域区分をいい、触媒成分供給配管が複数ある場合には、触媒の主成分が供給される触媒成分供給配管、すなわち、図1に示されるような触媒成分供給配管1が含まれる領域区分をいう。各領域区分の重合温度は、攪拌機により撹拌されているポリマー粒子の温度を、各領域区分の反応器内に設置した温度計により測定するものであり、すなわち、各領域区分のポリマー粒子の温度をいう。水平軸回りに回転する攪拌機により撹拌されているポリマー粒子の温度は、水平軸周りの領域区分における平均値を示すと考えられる。
【0040】
次に、横型重合反応器における触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)の測定方法について図2を用いて詳細に述べる。触媒供給部が含まれる領域区分(Z1)のポリマー粒子の温度(Tx)は、図2に示すように触媒供給部が含まれる領域区分(Z1)に設置された温度計34-1、34-2によって検知される。ここでの温度計は、後述する温度分布を測定するための温度計と兼用であってもよいが、温度分布を測定するための温度計とは別に設置された温度計であってよい。触媒供給部が含まれる領域区分(Z1)に設置される温度計34-1、34-2は、触媒の主成分が供給される触媒成分供給配管31付近のポリマー粒子の温度を測定できるように触媒成分供給配管31付近に適宜設置されればよい。中でも、触媒成分供給配管31から水平軸35への垂線と水平軸35との交点をxとし、温度計34-1から水平軸35への垂線と水平軸35との交点をxとし、温度計34-2から水平軸35への垂線と水平軸35との交点をxとし、上流側の隔壁32から下流側の隔壁33の距離をLとした時に、交点xと交点x、交点xと交点xの距離はそれぞれ、0~1/9Lの範囲内であることが好ましく、0~1/12Lの範囲内であることがより更に好ましく、0~1/15Lの範囲内であることがより更に好ましい。上記範囲内に温度計が設定されれば、撹拌された重合体によって、触媒供給部の重合温度が表現されるため、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)を測定するための温度計は、1つであってもよい。触媒供給部が含まれる領域区分に設置された温度計は、図2の温度計34-1、34-2のように、触媒成分供給配管31の上流側と下流側にそれぞれ少なくとも1つずつ設置されることが好ましい。触媒成分供給配管31の上流側と下流側にそれぞれ設置された温度計34-1、34-2の温度が等しければ、少なくとも34-1と34-2に挟まれた領域区分は触媒供給部が含まれる領域区分となり、温度計34-1、34-2の温度は、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)を示していることになる。
また、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)を測定するための温度計として2つ以上用いる場合、そのうち少なくとも1つの温度計34-1は、隔壁32から隔壁33の距離をLとし、隔壁32から隔壁33方向へ、水平軸35において隔壁32の位置を0(L)、隔壁33の位置を1Lと表現した時に、0(L)からxの位置の間に設置されることが好ましく、1/9Lからxの位置の間に設置されることがより好ましい。また、少なくとも1つの温度計34-2は、xの位置から1/3Lの位置の間に設置されることが好ましく、xの位置から2/9Lの位置の間に設置されることがより好ましい。
上記のような範囲内で温度計34-1、34-2が設置されれば、撹拌された重合体によって、触媒供給部の重合温度がより忠実に表現される。
なお、反応器内部の水平軸方向に温度の異なる複数の領域区分を設定せず反応器内の温度が一定である場合には、温度計34-1、34-2は、いずれの場所に設置されてもよい。
【0041】
定常運転状態では、横型重合反応器内は全体にポリマー床を形成し、重合反応は全ての領域において行われる。
圧力、滞留時間、温度の様な重合条件は、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に設定する事ができる。
具体的には、重合圧力は好ましくは1200kPaG以上、更に好ましくは1400kPaG以上、特に好ましくは1600kPaG以上であり、好ましくは4200kPaG以下、更に好ましくは3500kPaG以下、特に好ましくは3000kPaG以下である。一般に横型重合反応器は、ガス相は循環しているため、同一反応器内における重合圧力は一定に保持される。また、反応器に設置した堰形状により物理的に分割することも可能である。
【0042】
滞留時間は反応器の構成や目的とする重合体に合わせて任意に調整することができる。一般的には、30分から5時間の範囲内で設定される。
重合温度は、好ましくは0℃以上、更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。
本発明においては、塊状ポリマーの発生を抑制して、生産効率を高めると共に、安定してプロピレン系重合体を製造する点から、中でも、前記触媒供給部が含まれる領域区分の温度(Tx)が50℃以上65℃以下であるように設定することが好ましく、更に55℃以上65℃以下であるように設定することが好ましい。
【0043】
本発明で使用する横型重合反応器は、内部に水平軸方向に温度の異なる複数の領域区分を設定することが可能である。なお、本発明において領域区分は堰を用いた物理的な領域区分を示すのではなく、温度制御実施領域区分を示すものである。
【0044】
ここで横型重合反応器における温度制御の一例について図2を用いて詳細に述べる。横型重合反応器30は、隔壁32及び33を備え、領域を、Z1・・・・Ziのi個の区分で分割された例である。上流側の隔壁32が反応器上流側末端であり、下流側の隔壁33が反応器下流側末端である。図2において、区分Z1が上流側末端を含む領域区分、区分Ziが下流側末端を含む領域区分である。図2において、触媒成分は反応器の触媒成分供給配管31より供給され、触媒供給部が含まれる領域区分は区分Z1である。なお、図2において攪拌機は省略している。
重合の際に、発生する反応熱は、液化モノマー含有液供給配管から供給される液化モノマー含有液の気化熱により除去される。各領域区分における重合温度は、各領域区分に設置された温度計34-1、34-2、34-3、34-4、・・・34-i等によって検知される。
本発明においては、反応器内の重合温度は反応器内に設置した温度計により複数の領域区分(Zi)の反応器温度Tiを個別に異なる温度で制御することが可能である。
各領域区分における重合温度は、上部に特定の間隔を持って配置された液化モノマー含有液供給配管からの液化モノマー含有液の流量、下部に特定の間隔を持って配置された原料混合ガス供給配管から温度制御された混合ガス流量の組み合わせによって個別に制御されうる。
【0045】
単一重合器内では同一反応条件とすることが一般的だが、本発明では反応器を上流から下流方向にi個(iは2以上の任意の整数)の領域区分に分けたときに、本発明による横型重合反応器の上流側末端から下流側末端のn番目(nは1以上(i-1)以下の整数)の領域区分(n)とその隣接する下流部の領域区分(n+1)の各反応温度TnとTn+1がTn≦Tn+1であるように設定することによって、触媒の重合特性に応じた重合温度制御を行うことが可能となり、局部発熱などによる除熱不良による塊状ポリマーの抑制などに有効である点から好ましい。
【0046】
この場合、設置する温度計は反応器容積や反応形態などに応じて任意であるが、少なくとも反応器内の上流部、中流部、下流部を制御することが好ましく(i=3に相当する)、隔壁32から隔壁33の距離をLとし、隔壁32から隔壁33方向へ、水平軸35において隔壁32の位置を0(L)、隔壁33の位置を1Lと表現した時に、0(L)~1/3L、1/3L~2/3L、2/3L~3/3Lまでの間の位置に温度計は少なくとも1本ずつ、3本以上を設置することが好ましい。即ち、領域区分の数iは3以上であることが好ましい。なお、各領域区分におけるポリマー粒子の温度を測定するための温度計は、後述する反応器の周方向の温度分布を測定するための温度計と兼用であってもよいが、温度分布を測定するための温度計とは別に設置された温度計であってよい。
【0047】
本発明において、反応器の上流側末端を含む領域区分の温度(Tα)と下流側末端を含む領域区分の温度(Tω)との温度差ΔT2(℃)(=Tω-Tα)は、0.1℃以上20℃以下であることが、反応器下流部での温度上昇に伴う生産性向上の効果を得る点から好ましい。ΔT2が20℃を超えると単一反応器内における温度変化が大きくなってしまい、重合体の組成変化を引き起こす恐れがある。
なお、本発明における反応器の上流側末端を含む領域区分の温度(Tα)と下流側末端を含む領域区分の温度(Tω)とはそれぞれ反応器の最上流の領域区分の温度、および最下流の領域区分の温度であり、各領域区分のポリマー粒子の温度である。
各温度計は、水平軸35の各領域区分の上流末端から、1/9L~2/9Lの距離となる位置に設置するようにすることが好ましい。
【0048】
また、本発明において、触媒供給部が含まれる領域の温度(Tx)と反応器内の混合ガスの露点(Tz)との温度差ΔT1(℃)(=Tx-Tz)が0℃~5.0℃であることが好ましく、0℃~3.0℃であることがより好ましい。
ΔT1は、下限値に関しては、より好ましくは0.5℃以上、さらに好ましくは1.0℃以上、よりさらに好ましくは1.5℃以上である。上限値に関しては、より好ましくは4.0℃以下、さらに好ましくは3.0℃以下である。温度差ΔT1がこの下限値を下回ると、重合温度と反応器内の混合ガスの露点とが近づきすぎて、重合ガスが反応器内で凝縮してしまい目的とする反応圧力を保持できない恐れがある。また、温度差ΔT1がこの上限値より上回ると、液化モノマー含有液が気化した後に顕熱により除熱が大きくなり、液化モノマー含有単位体積当たりの除熱量が大きくなるため、液化モノマー含有液の量が少なくなってしまい、除熱不足から局部発熱によって、生成するポリマーの融解などによる塊状ポリマーが発生してしまう恐れがある。また特に、重合温度を高くしすぎることにより温度差ΔTがこの上限値より上回ると、上記の理由に加え、急激な反応によりパウダーモルフォロジーが悪化し、撹拌及びガスの流動化による粉砕が生じやすくなること、特に撹拌時にパウダーの粉砕による微粉の発生が多くなることでエントレインメント量も多くなってしまう恐れがある。
なお、反応器内の混合ガスの露点(Tz)は、混合ガスのガスクロマトグラフィー分析値を用い、化学工学便覧改訂五版(丸善株式会社刊;第485頁)に記載の方法に従って、算出することができる。
【0049】
また、本発明におけるエントレインメント量とは、プロピレン系重合体の生産量に対する、反応器の上部槽壁など(側部や底部でもよい)に設置した未反応ガス抜出配管を通過し、ガスと共に反応器外へ搬出される粒子量を意味する。エントレインメント量を具体的に測定する方法としては、凝縮機手前に設置されたサイクロン若しくはバグフィルターなどの微粒子除去設備によって除去される微粉の量[g/kg]を秤量し、生産量で除する方法を例示することができる。
プロピレン系重合体を製造するに際して、エントレインメント量は、0.10g/kg以下であることが好ましい。
この値が高いと、エントレインメントの増加によりガス排出管系統への負荷や付着などが増大したり、凝縮機中に微粉が流入することによりガス凝縮能力が低下したりする恐れがある。
【0050】
4.温度分布パラメータの監視方法
4-1.第1の実施形態
本発明のプロピレン系重合体の製造方法の第1の実施形態においては、
前記円筒型の横型重合反応器の周方向の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する、温度測定ステップ、
前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式1に定める温度分布パラメータ(A)を演算する、演算ステップ、及び、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように監視する、監視ステップ、を含み、
更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1)、及び、
前記温度分布パラメータ(A)が所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(A)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
A=Th×θw (式1)
ただし、Th=Tp-Taveであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
TaveはTiの平均温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTaveとの差(Ti-Tave)が0.5℃以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
【0051】
4-1-1.温度測定ステップ
温度測定ステップにおいては、前記円筒型の横型重合反応器の周方向の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する。
横型重合反応器の周方向の温度分布は、前述のように反応器内のポリマー粒子の温度(Tx)を測定するための温度計を周方向に複数設置して測定することも可能だが、既存反応器の内部に新たに温度計を取りつける場合に比べて、設置コストを抑えられる点から、横型重合反応器の外表面において温度分布を測定することが好ましい。
【0052】
温度分布を測定する手段としては、例えば、熱電対温度計や光ファイバ温度計等の接触式温度センサ、サーモカメラ等の非接触式温度センサなどの温度測定手段を使用することができる。中でも、高精度で温度分布をモニターできる点から接触式温度センサであることが好ましく、その中でも広範囲の温度分布を高精度でモニターできる点から、光ファイバ温度計を用いて反応器の外表面を接触して測定することが好ましい。
光ファイバ温度計の構成としては、例えば、発光器を含み温度に変換する機構を有するものが挙げられる。光ファイバ温度計の温度検出部は反応器外表面に接触するように敷設することが好ましい。
また、温度分布を測定する手段は、温度測定箇所の反応器の円周上に温度検出部が所定の間隔で並ぶように配置する必要がある。温度分布を測定する手段として光ファイバ温度計を用いる場合には、温度測定箇所の反応器の円周上に温度検出部が所定の間隔で並ぶように光ファイバ温度計を配置する必要がある。例えば光ファイバ温度計の温度検出部の間隔が反応器の周方向の温度分布の測定間隔よりも大きい場合には、反応器の円周上に温度検出部が所定の測定間隔で並ぶように、例えば光ファイバ温度計を蛇行させて配置することができる。
【0053】
図3は、横型重合反応器の周方向の温度の測定点を示す模式図である。図3は、図1の横型重合反応器10で周方向の温度分布を測定したい位置において攪拌機20の水平軸20aに垂直に切断した断面に相当する。
横型重合反応器の周方向の温度分布の測定間隔としては、図3に示されるように測定点(例えばPとP)の弧の長さに対応する中心角θで表すことができ、後述する特定の温度パラメータと塊状ポリマー発生の相関を良好に検出する点から、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する。隣接する測定点の間隔は中心角でπ/18(rad)以下であってよく、さらに中心角でπ/24(rad)以下であってもよく、よりさらに中心角でπ/32(rad)以下であってもよい。隣接する測定点の間隔の下限値は限定されるものではないが、中心角でπ/150(rad)以上であってよい。
また、横型重合反応器の周方向の温度分布の測定間隔として、後述する特定の温度パラメータと塊状ポリマー発生の相関を良好に検出する点から、温度検出部の距離は10mm~1000mmであってよく、10mm~500mmであってよく、好ましくは10mm~150mmである。
【0054】
温度測定ステップは、触媒供給部や、触媒供給部下流の任意の部分で行われることができる。
温度測定ステップは、少なくとも、前記横型重合反応器の触媒供給部の周方向において温度分布を測定することが、塊状ポリマー発生抑制効果を向上し、長期運転性を向上する効果が高い点から好ましい。
ここで、温度分布を測定する触媒供給部とは、前述のように図1の隔壁10aから隔壁10b間の距離Lに対して、隔壁10aから隔壁10bの方向へ、隔壁10aの位置を0(L)、隔壁10bの位置を1Lと表現したときに、隔壁10aから1/9L以上2/9L以下の部分をいう。
中でも、温度分布を測定する触媒供給部の好ましい位置としては、触媒供給部のうち、触媒成分供給配管1が設置されている位置の下流側であり、触媒成分供給配管1が設置されている位置から前記2/9L以下の部分である。
【0055】
温度測定ステップでは、後述する特定の温度分布パラメータを演算して監視するために、図4のように、円座標において動径座標rを温度、角度座標θを周方向の各測定点の位置として、周方向の各測定点において測定した温度をプロットした温度プロファイル(T)を作成することが好ましい。例えば、図4では、設置された横型重合反応器の周において、反応器頂点を0とし、撹拌機の回転方向(Dr)に0π~2πに至って戻るまで、周方向に一周測定した結果を表している。
温度分布測定の結果として、このような温度プロファイルを作成することにより、リアルタイムでの異常温度の度合いと発生場所を可視化することにより監視が容易になると共に、異常温度の度合いと発生場所に応じて製造時の運転条件を調整する対応が適切になる。温度分布パラメータの監視すべき所定値を設定することにより、その値以下になるように運転条件の変更をすればよく、効果的な運転条件変更が可能になる。
【0056】
4-1-2.演算ステップ
演算ステップにおいては、前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式1に定める温度分布パラメータ(A)を演算する。
A=Th×θw (式1)
ただし、Th=Tp-Taveであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
TaveはTiの平均温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTaveとの差(Ti-Tave)が0.5℃以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
【0057】
前記温度測定ステップにより求められる測定点の温度分布において、図4のように、ピークが1つである場合には、Tpは、Tiの中の最も高い温度に相当する。
Taveとして、Tiの平均温度(℃)を算出し、Thとして、TpとTaveの差を算出する。
図5は、円座標において動径座標rを温度、角度座標θを周方向の各測定点の位置として周方向の各測定点において測定した温度をプロットした温度プロファイル(T)において、θwの求め方を示す図である。TiとTaveとの差(Ti-Tave)が0.5℃以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和θwは、図5のように、Tpの測定点を含み且つTave+0.5℃以上となる範囲の測定点同士の隣接間隔の中心角の和として求めることができる。
得られたThとθwから、A=Th×θwにより、温度分布パラメータ(A)を算出する。
【0058】
前記温度測定ステップにより求められる測定点の温度分布において、例えば2つのピークを有する場合(図示せず)、すなわち、Tiの中の最も高い温度のTpの測定点を含み且つTave+0.5℃以上となる範囲の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(θw)の範囲には含まれない、別の極大値Tpを有する場合もあり得る。この場合、別の極大値Tpに対して、Thとして、TpとTaveの差を算出する。そして、θwはTpの測定点を含み且つTave+0.5℃以上となる範囲の測定点同士の隣接間隔の中心角の和として求める。
そして、Tpのピークについて、得られたThとθwからA=Th×θwにより、温度分布パラメータAを算出し、Tpのピークについて、得られたThとθwから同様に温度分布パラメータAを算出する。
前記温度測定ステップにより求められる測定点の温度分布において、例えば3つ以上のピークを有する場合についても同様に、各ピークについて、温度分布パラメータA、A、A・・・等を算出することができる。
【0059】
演算ステップは、電子計算機処理により行うことができる。
電子計算機処理については、特に限定されず、従来公知の処理方法を適宜選択して用いることができる。
【0060】
本発明においては、特に、前記式1(A=Th×θw)で特定される温度分布パラメータAを指標にして監視することにより、単純に温度分布のみを監視する場合と比べて、塊状ポリマーの発生との相関が得られやすく、製造時の運転員の感覚や経験によらず、安全方向(塊状ポリマーの発生抑制方向)への運転条件変更が可能になり、効果的に塊ポリマーの発生を抑制できる。
【0061】
4-1-3.監視ステップ
監視ステップにおいては、前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように監視する。
ここで、所定値は、塊状ポリマーの発生抑制に許容しうる上限値などをいい、予め設定してあってもよく、プロピレン系重合体の製造銘柄ごとに設定してもよい。
なお、製造銘柄とは触媒種、MFR等の物性、添加剤処方などによって特定される所定の性状を有するプロピレン系重合体の種別をいう。
多量の塊状ポリマーの発生など製造時に反応器内で生じる不具合は、温度分布パラメータ(A)が所定値を超えないように監視することで、発生を抑制することができる。
【0062】
温度分布パラメータ(A)を監視するための所定値は、各製造銘柄のプロピレン系重合体の製造において、温度分布パラメータ(A)と不具合の発生状況との相関から、製造が継続できるか否かの観点、製品としての価値の観点などから、適宜定めることができる。
温度分布パラメータ(A)の所定値は、例えばMFRが70(g/10min)のときに20π、MFRが0.7(g/10min)のときに10πなど、と設定することができる。
温度分布パラメータ(A)の所定値は、特に限定されるものではないが、製造銘柄によらず、0π~30πの間で設定されることが好ましく、下限値は5π以上であってよく、10π以上であってもよく、上限値は25π以下であってよく、20π以下であってもよい。
【0063】
同じ製造銘柄であっても、直前の製造銘柄の運転状況、季節、天候、連続生産の時間長さ、ロットなどによって、連続運転中に、温度分布パラメータ(A)は経時的にあまり変化せず、所定値を超えないことがある。この場合、温度分布パラメータ(A)が重合反応の連続運転中に所定の値を超えないように監視していれば足りる。
【0064】
監視の方法としては、図4のように周方向の各測定点において測定した温度をプロットした温度プロファイル(T)とともに、温度分布パラメータ(A)の演算値を、設定された所定値を超えないように確認することが挙げられる。
前記温度測定ステップにより求められる測定点の温度分布において、2つ以上のピークを有する場合、例えば3つのピークについての温度分布パラメータA、A、Aに対して、設定される所定値は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
監視のタイミングは、30分ごと、1時間ごと、4時間ごとなど任意のタイミングでよい。
例えば、製造する銘柄を変更した直後は、監視のタイミングの間隔をより小さくした方が好ましく、比較的安定して連続運転可能な時期においては監視のタイミングの間隔を大きくすることができる。
【0066】
監視装置としては、温度プロファイル(T)と、温度分布パラメータ(A)の演算値が表示される計器盤DCS(Distributed Control System)を用いて監視することができる。
計器盤としては、特に限定されず、従来公知の計器盤を適宜選択して用いることができる。
【0067】
監視ステップの結果により、更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1)、及び、
前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(A)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
すなわち、監視ステップの結果に応じて、前記条件調整ステップ(1)、前記条件調整ステップ(2)、又は、前記条件調整ステップ(1)及び(2)を含んでもよい。
本発明においては、監視ステップの結果により、前記温度分布パラメータ(A)が所定値を超えたときには、温度分布パラメータ(A)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2)を必須とする。
【0068】
4-1-4.条件調整ステップ(1)
前記監視ステップにおいて、温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えそうになったときは、温度分布パラメータ(A)を、所定値を超えないように、温度分布パラメータ(A)を小さくするように製造条件を調整してよい。
温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えそうになったときとは、リアルタイムで測定した温度分布プロファイルから計算される温度分布パラメータ(A)の値が、時間経過に伴って所定値に近づいている場合が挙げられる。
【0069】
温度分布パラメータ(A)が所定値に近づいている場合において、例えば、温度分布パラメータ(A)と所定値との差が-5πの値になった時点で、設定した所定値を超えないように又は小さくするように製造条件を調整してよく、温度分布パラメータ(A)と所定値との差が0の値になった時点で設定した所定値を超えないように又は小さくするように製造条件を調整することが好ましい。
【0070】
温度分布パラメータ(A)が所定値を超えないように又は小さくするように製造条件を調整する方法としては、具体的には、例えば、ピーク高さを小さくする(すなわち極大温度を低くする)、またはピーク幅を狭くする(すなわち高温になっている範囲を狭くする)ようにすることが挙げられる。
製造条件の調整に際しては、例えば、反応器の設定温度、すなわち反応器内のポリマー温度を気相のガス露点温度に近づけることを指標としてもよい。より詳細には、触媒供給部が含まれる領域の温度(Tx)と反応器内の混合ガスの露点(Tz)との温度差ΔT1(℃)(=Tx-Tz)を0℃~3.0℃にすることが挙げられる。
また、製造条件の調整に際しては、例えば、撹拌機構の回転数を上げることを指標としてもよい。
【0071】
4-1-5.条件調整ステップ(2)
前記監視ステップにおいて、所定値を超えないことが好ましいが、超えたときに、速やかに温度分布パラメータ(A)が所定値以下になるように製造条件を調整することにより、不具合を解消してよい。
【0072】
所定値を超えても、例えば、温度分布パラメータ(A)が所定値を超える量が大きくない、超えている時間が長くない、前記式1においてThおよびθwが大きくないなどの事情があるときは、速やかに温度分布パラメータ(A)が所定値以下になるように製造条件を調整することにより、不具合を解消することができる。
ここで、温度分布パラメータ(A)が所定値を超える量が大きくないとは、例えば、温度分布パラメータ(A)が所定値×1.25の値以内であることが挙げられる。
また、温度分布パラメータ(A)が所定値を超えている時間が長くないとは、例えば、温度分布パラメータ(A)が所定値を超えている時間が8時間以内であることが挙げられる。
また、式1においてThが大きくないとは、例えばThが20(℃)未満であることが挙げられ、式1においてθwが大きくないとは、θwがπ/3.6(rad)未満であることが挙げられる。
温度分布パラメータ(A)を小さくするための目標値としては、温度分布パラメータ(A)の所定値×0.75の値以下であってよく、所定値×0.5の値以下であってよい。
【0073】
温度分布パラメータ(A)が所定値より小さくなるように製造条件を調整する方法としては、前記条件調整ステップ(1)と同様であってよい。温度分布パラメータ(A)を所定値より小さくするためには、具体的には、例えば、ピーク高さを小さくする(すなわち極大温度を低くする)、またはピーク幅を狭くする(すなわち高温になっている範囲を狭くする)ようにすることが挙げられる。
製造条件の調整に際しては、例えば、反応器の設定温度を気相のガス露点温度に近づけることを指標としてもよい。より詳細には、触媒供給部が含まれる領域の温度(Tx)と反応器内の混合ガスの露点(Tz)との温度差ΔT1(℃)(=Tx-Tz)を0℃~3.0℃にすることが挙げられる。
【0074】
4-2.第2の実施形態
本発明のプロピレン系重合体の製造方法の第2の実施形態においては、
前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する、温度測定ステップ、
前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式2に定める温度分布パラメータ(As)を演算する、演算ステップ、及び、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えないように監視する、監視ステップ、を含み、
更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1’)及び、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(As)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2’)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい、プロピレン系重合体の製造方法。
As=Th×θw (式2)
ただし、Th=Tp-Trefであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
Trefは所定の参照温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTrefとの差(Ti-Tref)が所定の温度以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
【0075】
4-2-1.温度測定ステップ
温度測定ステップにおいては、前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部の温度分布を、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/10(rad)以下となるようにして測定する。
例えば、プロピレン系重合体の製造銘柄ごとに、前記円筒型の横型重合反応器の周方向の温度分布において管理すべき箇所が明らかに限定されている場合には、第2の実施形態のように前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部の温度分布を測定することもできる。
用いられる温度分布を測定する手段は前記第1の実施形態と同様であってよい。
また、周方向の一部の温度分布を測定するに際し、隣接する測定点の間隔も、前記第1の実施形態と同様であってよい。
【0076】
温度測定ステップにより、触媒供給部や、触媒供給部下流の任意の部分で行われることができる。
温度測定ステップは、少なくとも、前記横型重合反応器の触媒供給部の周方向において温度分布を測定することが、塊状ポリマーの発生抑制効果及び長期運転性を向上する効果が高い点から好ましい。
温度分布を測定する位置においても、前記第1の実施形態と同様であってよい。
【0077】
温度測定ステップにおいて測定される、前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部としては、例えば、図4におけるTpが含まれる、3π/2~2π(0)の範囲のみを測定することや、3π/2~11π/6の範囲のみを測定することが挙げられる。
【0078】
周方向の一部のみの温度分布を測定する場合であっても、温度測定ステップでは、後述する特定の温度分布パラメータを演算して監視するために、図4のように、円座標において動径座標rを温度、角度座標θを周方向の各測定点の位置として、周方向の各測定点において測定した温度をプロットした温度プロファイル(T)を作成することが好ましい。
温度分布測定の結果として、このような温度プロファイルを作成することにより、リアルタイムでの異常温度の度合いと発生場所の監視が容易になると共に、異常温度の度合いと発生場所に応じて製造条件を調整する対応が適切になる。
【0079】
4-2-2.演算ステップ
演算ステップにおいては、前記温度測定ステップにより求められる温度分布から下記式2に定める温度分布パラメータ(As)を演算する。
As=Th×θw (式2)
ただし、Th=Tp-Trefであり、
Tiはi番目の測定点の温度(℃)、
(ここで、iは1~nの整数、nは周方向の測定点の数(個))
TpはTiの中の極大値を有する温度(℃)、
Trefは所定の参照温度(℃)であり、
θwは、Tpの測定点を含む、TiとTrefとの差(Ti-Tref)が所定の温度以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和(rad)である。
【0080】
前記温度測定ステップにより求められる測定点の温度分布において、図4のように、ピークが1つである場合には、Tpは、Tiの中の最も高い温度に相当する。
Trefは所定の参照温度(℃)である。Trefは、製造銘柄ごとに第1の実施形態のTaveに相当するような参照温度を予め設定することができる。
或いは、Trefとしては、前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部として例えば図4において3π/2~2π(0)の範囲のみを測定する場合に、3π/2と2π(0)の温度の平均値としたり、11π/6~2π(0)の範囲の温度の平均値とすることもできる。また、Trefとしては、前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部として例えば図4においてπ~2π(0)の範囲のみを測定する場合に、π~3π/2の温度の平均値とすることもできる。
そして、Thとして、TpとTrefの差を算出する。
【0081】
TiとTrefとの差(Ti-Tref)における所定の温度は、製造銘柄ごとに第1の実施形態の0.5℃に相当するような所定の温度を予め設定することができる。TiとTrefとの差(Ti-Tref)における所定の温度は、第1の実施形態と同様に0.5℃であってもよい。
TiとTrefとの差(Ti-Tref)が所定の温度以上の測定点同士の隣接間隔の中心角の和θwは、前記第1の実施形態のθwと同様に求めることができる。
得られたThとθwから、As=Th×θwにより、温度分布パラメータ(As)を算出する。
【0082】
前記温度測定ステップにより求められる測定点の温度分布において、例えば2つ以上のピークを有する場合についても、第1の実施形態と同様に各ピークについて、温度分布パラメータAs、As、As・・・等を算出することができる。
演算ステップは、第1の実施形態と同様に行うことができる。
【0083】
本発明においては、前記円筒型の横型重合反応器の周方向の一部の温度分布を測定し、前記式2(Ax=Th×θw)で特定される温度分布パラメータAsを指標にして監視することにより、前記第1の実施形態と同様のメリットの他に、さらに、全体の温度分布管理をせずに、特にピークが発生しやすい一部について詳細に温度分布管理をするなど、省力化を図りつつ、有効に温度管理可能というメリットがある。
【0084】
4-2-3.監視ステップ
第2の実施形態において、監視ステップは、第1の実施形態と同様であってよい。
【0085】
4-2-4.条件調整ステップ(1’)、及び条件調整ステップ(2’)
前記監視ステップの結果により、更に必要に応じて、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えないように製造条件を調整する、条件調整ステップ(1’)及び、
前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(As)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2’)
からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
すなわち、監視ステップの結果に応じて、前記条件調整ステップ(1’)、前記条件調整ステップ(2’)、又は、前記条件調整ステップ(1’)及び(2’)を含んでもよい。
本発明においては、前記監視ステップの結果により、前記温度分布パラメータ(As)が、所定値を超えたときには、温度分布パラメータ(As)が所定値以下になるように製造条件を調整する、条件調整ステップ(2’)を必須とする。
第2の実施形態において、条件調整ステップ(1’)、及び条件調整ステップ(2’)はそれぞれ、第1の実施形態の条件調整ステップ(1)、及び条件調整ステップ(2)と同様であってよい。
【0086】
上記のように、横型重合反応器で重合を行う場合、重合反応によるプロピレン系重合体の生成と機械的な撹拌の2つの力により、プロピレン系重合体の粒子は徐々に成長しながら反応器の軸方向に沿って進んでいくため、フローパターンはプラグフロー型となる。そのため、プロピレン系重合体は、同一反応器内で触媒供給口からパウダー排出口まで異なる温度履歴を受けることが可能である。
本発明による手法を取り入れることで、チーグラー触媒とメタロセン触媒に関わらず、触媒供給部における局部的な発熱による無秩序な重合反応の抑制、特にプロピレンとエチレンやα-オレフィンとのランダム共重合における、急速な重合速度を生じ易いために生じる塊状ポリマーの生成の抑制に有効な手段となる。
また、本発明による手法を取り入れることで、反応器内での塊状ポリマーの抑制により、生産の連続性と運転の安定性をより高めることも可能となる。また、触媒活性も高く保持され、製造コストも抑えることができて経済的である。
【0087】
5.本発明で製造されるプロピレン系重合体
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、〔i〕プロピレン単独重合体、〔ii〕プロピレンと少なくとも1種の他のα-オレフィンを含むランダム共重合体及び〔iii〕プロピレンと少なくとも1種の他のα-オレフィンを含むブロック共重合体、並びに、〔iv〕オレフィン重合用触媒に少量のオレフィンを接触させる予備重合工程を経て得られる予備重合触媒中に担持されているオレフィン重合体成分と、該予備重合触媒をプロピレン製造用触媒の主成分として用いて重合された前記〔i〕、〔ii〕又は〔iii〕、とを含むプロピレン系重合体をも包含しており、以下においては、「プロピレン系重合体」との記述はかかる意味で用いられる。
【0088】
本発明で、製造されるプロピレン系重合体は、温度230℃、2.16kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が0.3g/10min~150g/10minであってよい。
本発明において、メルトフローレートは、JIS K7210の「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、試験条件:温度230℃、荷重2.16kgfで測定する値である。
【0089】
本発明で、製造されるプロピレン系重合体は、融解ピーク温度(Tm)(以下融点ともいう)が、105℃以上167℃以下のプロピレン系重合体であってよい。上記範囲より融点が著しく低いと工業的に可能な重合温度では重合体自身が一部融解してしまう恐れがあり、安定運転の維持が困難となる。
【0090】
ただし、本発明の製造方法においては、かかる融点以外の融点を有するプロピレン系重合体を製造することを排除することを意味するものではない。
このような低融点のプロピレン系重合体は、メタロセン系化合物を担体に担持した触媒を用いることによって、製造されることが好ましい。
メタロセン系触媒の、結晶性及び分子量分布が狭く、低結晶・低分子量成分が少ないという特徴を活かすことができ、従来のチーグラー・ナッタ系触媒では製造が困難であった低温ヒートシール性に優れたポリマーの製造が可能となる。
【0091】
製造される重合体がプロピレン-エチレンランダム共重合体である場合、該共重合体中のエチレン含量は、該共重合体の融点が好ましくは105℃以上140℃以下の範囲に入るようにコントロールされてよい。該共重合体中のエチレン含量は、使用される触媒にもよるが、メタロセン系触媒の場合、一般的には、1質量%~10質量%の範囲である。
なお、本発明において、融解ピーク温度(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)により計測した値である。融解ピーク温度(Tm)は、具体的には、例えば、パーキン・エルマー社製のDSC7型示差走査熱量分析計を用いて試料を室温から80℃/分の条件で230℃まで昇温し、同温度にて10分間保持後、-10℃/分にて50℃まで降温し、同温度にて3分間保持した後、10℃/分の昇温条件下で融解した時のピーク温度である。
【0092】
その際、反応器中のエチレンとプロピレンのガス濃度モル比(エチレン/プロピレン)の値は、上記の融点が得られるように調整すればよいが、好ましくは、0.01~0.5、より好ましくは、0.01~0.3、更に好ましくは0.02~0.2の範囲である。
プロピレン系重合体は、その目的によっては、多段重合法を用いて、製造してもよい。その場合、第一段階で製造されるプロピレン系重合体については、上記の特徴を持つプロピレン系重合体が好ましく、第二段階以降に製造される重合体の成分については、特に制限はない。
【0093】
プロピレン系重合体中のエチレン含量は、NMRにより求め、多段重合法を用いる場合は、第一段階で重合されたプロピレン系重合体を対象とする。具体的方法を以下に示す。
i)NMRによるエチレン含量測定
得られたプロピレン系重合体のエチレン含量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C-NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX-400又は、同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o-ジクロルベンゼン:重ベンゼン=4:1(体積比)
濃度:100mg/ml
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
ii)スペクトル
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules,17,1950(1984)を参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下記の通りである。Sααなどの記号はCarmanら(Macromolecules,10,536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
【0094】
【表1】
【0095】
iii)エチレン含量の計算
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、及びEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15,1150(1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)~(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) (1)
[PPE]=k×I(Tβδ) (2)
[EPE]=k×I(Tδδ) (3)
[PEP]=k×I(Sββ) (4)
[PEE]=k×I(Sβδ) (5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} (6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 (7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
【0096】
上記(1)~(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含量が求まる。
エチレン含量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
【0097】
正確なエチレン含量を求めるには少量のプロピレン異種結合(2,1-結合及び/又は1,3-結合)に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離又は同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、異種結合を含まない前提の上記(1)~(7)の関係式を用いて求めることとする。
【0098】
エチレン含量のモル%から質量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含量(質量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1-X/100)}×100 ここでXはモル%表示でのエチレン含量である。
【実施例0099】
以下実施例と比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
<物性値の測定方法および装置>
(1)メルトフローレート(MFR)
ポリプロピレン系重合体はJIS-K-7210により温度230℃、2.16kg荷重で測定する測定したメルトインデックス値を示す。
(2)塊状ポリマー量
ポリマー生成物を、篩の目の正方形の空間の一辺が1,200μmの篩にかけ、篩を通過しなかったパウダーの重量%とした。
【0100】
<参考例1>
MFR=70(g/10min)であるプロピレン系重合体の製造において、経時的(8時間ごと)に、温度分布パラメータ(A)とその時点のサンプリングから塊の量を求め、過去の96時間分の運転データから温度分布パラメータ(A)とその時点の塊の量の相関性を取得した。
(1)予備重合触媒の製造
特開2011-116979号公報の実施例1と同様にして、予備重合触媒の製造を行った。
【0101】
(2)重合
添付した図1に示した概略説明図によって説明する。1台の横型重合反応器を用いてプロピレンの気相重合を行った。横型重合反応器10は、長さL/内径D=5.1、内容積:0.1mの撹拌機を備えた連続式横型気相重合反応器であった。
ここで、図1記載の符号12(隔壁10a)の位置を反応器の上流側末端とした。前記撹拌機構の回転数は、28rpmとした。
横型重合反応器10内を窒素ガスで置換後、シーズパウダーを29kg導入し、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン及び水素を導入しながら昇温し、重合条件が整った時点で、上流側末端から255mmの位置に設置した触媒成分供給配管1より上記で得られた予備重合触媒を、固体成分として0.125g/h、また、反応器の上流側末端から160mmの位置に設置した触媒成分供給配管2よりトリエチルアルミニウムの7重量%n-ヘキサン溶液を27mmol/hrで連続的に供給した。また、重合器10内の水素濃度のプロピレン濃度に対する比が0.017、反応器内部を測定する温度計を上流側末端からそれぞれ160mm、330mm、690mm、855mm、1200mmに設置し領域区分を制御し、各温度をそれぞれ上流側から59℃、59℃、62℃、64℃、65℃、横型重合反応器10内の重合圧力が2.2MPaG、を保つようにプロピレンを供給し、また、水素は原料供給配管4より連続的に供給した。なお、図2に示されるように、触媒供給部が含まれる領域区分(Z1)に設置される温度計34-1及び34-2はそれぞれ、反応器の上流側末端から、反応器の長さLに対して1/9.62L、及び1/4.67Lとなる位置に設置した。この時の反応器内の混合ガスの露点(Tz)は57.2℃、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)59℃と、反応器内の混合ガスの露点(Tz)57.2℃との温度差ΔT1は1.8℃であった。なお、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)は、温度計34-1及び34-2から求めた。
一方で、円筒型の横型重合反応器の外表面において、触媒供給部の周方向(1周)の温度分布を、光ファイバ温度計を用いて測定した。前記周方向(1周)の温度分布測定は、隣接する測定点の間隔が中心角でπ/32(rad)となるようにして行った。前記周方向(1周)の温度分布測定は、隣接する測定点の間隔が概ね20mmであった。
【0102】
横型重合反応器10から排出される未反応ガスは、未反応ガス抜出し配管13を通して反応器系外に抜き出し、リサイクルドラム11で冷却及び凝縮させて液化モノマー含有液供給配管19、及び、原料混合ガス供給配管18を通して横型重合反応器10に還流した。
反応熱は、液化モノマー含有液供給配管19から供給する液化モノマー含有液の気化熱により除去した。触媒供給部が含まれる領域区分には、液化モノマー含有液は、1時間に54.4kgの割合で液化モノマー含有液供給配管19から供給した。
【0103】
横型重合反応器10内で生成したプロピレン系重合体の保有量が35kgを保つ様に重合体抜出し配管21を通して横型重合反応器10から連続的に抜き出した。抜き出したパウダーは、ガス回収機22でガス類を分離し、パウダー部はパウダー回収機23に抜き出した。
【0104】
(3)温度分布パラメータ(A)とその時点の塊状ポリマー量の相関性
前記温度分布測定から演算された温度分布パラメータ(A)と、前記温度分布測定時に横型重合反応器10から抜き出されるポリマー中に含まれる塊状ポリマー量を求めた。そして、過去の96時間分の運転データから温度分布パラメータ(A)とその時点の塊状ポリマー量の相関性を取得した。
温度分布パラメータ(A)とその時点の塊状ポリマー量の相関より、当該プロピレン系重合体の製造銘柄の温度分布パラメータ(A)の所定値を20πに設定した。
【0105】
<参考例2>
MFR=0.7(g/10min)であるプロピレン系重合体の製造において、経時的(8時間ごと)に、温度分布パラメータ(A)とその時点のサンプリングから塊の量を求め、過去の96時間分の運転データから温度分布パラメータ(A)とその時点の塊の量の相関性を取得した。
(1)予備重合触媒の製造
特開2011-116979号公報の実施例1と同様にして、予備重合触媒の製造を行った。
【0106】
(2)重合
参考例1において、MFRの条件を70(g/10min)から0.7(g/10min)に変更した以外は、参考例1と同様にして重合を行った。
【0107】
(3)温度分布パラメータ(A)とその時点の塊状ポリマー量の相関性
前記温度分布測定から演算された温度分布パラメータ(A)と、前記温度分布測定時に横型重合反応器10から抜き出されるポリマー中に含まれる塊状ポリマー量を求めた。そして、過去の96時間分の運転データから温度分布パラメータ(A)とその時点の塊状ポリマー量の相関性を取得した。
温度分布パラメータ(A)とその時点の塊状ポリマー量の相関より、当該プロピレン系重合体の製造銘柄の温度分布パラメータ(A)の所定値を10πに設定した。
【0108】
<比較例1>
参考例1と同様に、プロピレン系重合体の製造を行った。
運転開始から8時間後に、当該プロピレン系重合体の製造銘柄の温度分布パラメータ(A)の所定値20πを超えた。しかし、そのまま引き続き24時間製造を継続した。そのときの反応器内の混合ガスの露点(Tz)は60.0℃、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)63℃であった。
最終的(32時間後)に得られたプロピレン系重合体は、塊量が0.54wt%であった。
【0109】
<実施例1>
参考例1と同様に、プロピレン系重合体の製造を行った。温度分布測定及び温度分布パラメータ(A)の算出は、経時的(8時間ごと)に行った。
運転開始から24時間後に、当該プロピレン系重合体の製造銘柄の温度分布パラメータ(A)の所定値20πに近づいた。そのときの反応器内の混合ガスの露点(Tz)は62.0℃、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)63℃であったため、Txを62.3℃となるように調整したところ温度分布パラメータ(A)は3.3πまで下がった。引き続き24時間迄製造を継続した。
最終的に得られたプロピレン系重合体は、塊量が0wt%であった。
【0110】
<実施例2>
参考例1と同様に、プロピレン系重合体の製造を行った。温度分布測定及び温度分布パラメータ(A)の算出は、経時的(8時間ごと)に行った。
運転開始から8時間後に、当該プロピレン系重合体の製造銘柄の温度分布パラメータ(A)の所定値20πを超えた。そのときの反応器内の混合ガスの露点(Tz)は60.1℃、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)63℃であったため、Txを60.5℃となるように調整したところ温度分布パラメータ(A)は5.4πまで下がった。引き続き24時間迄製造を継続した。
最終的に得られたプロピレン系重合体は、塊量が0wt%であった。
【0111】
<比較例2>
参考例2と同様に、プロピレン系重合体の製造を行った。
運転開始から8時間後に、当該プロピレン系重合体の製造銘柄の温度分布パラメータ(A)の所定値10πを超えた。しかし、そのまま引き続き24時間製造を継続した。そのときの反応器内の混合ガスの露点(Tz)は61.3℃、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)63℃であった。
最終的に得られたプロピレン系重合体は、塊量が0.63wt%であった。
【0112】
<実施例3>
参考例2と同様に、プロピレン系重合体の製造を行った。温度分布測定及び温度分布パラメータ(A)は、経時的(8時間ごと)に行った。
運転開始から8時間後に、当該プロピレン系重合体の製造銘柄の温度分布パラメータ(A)の所定値10πを超えた。そのときの反応器内の混合ガスの露点(Tz)は62.0℃、触媒供給部が含まれる領域区分のポリマー粒子の温度(Tx)63℃であったため、Txを62.4℃となるように調整したところ温度分布パラメータ(A)は2.63πまで下がった。引き続き24時間迄製造を継続した。
最終的に得られたプロピレン系重合体は、塊量が0.3wt%であった。
【0113】
<応用例:長期運転の例>
まず、実施例1と同様に、プロピレン系重合体の製造を行った。温度分布測定及び温度分布パラメータ(A)の算出は、経時的(8時間ごと)に行った。
温度分布パラメータ(A)が、実施例1の製造銘柄のプロピレン系重合体の温度分布パラメータ(A)の所定値を超えないように監視し、温度分布パラメータ(A)の所定値に近づいた場合に、前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように製造条件を調整したり、前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(A)を所定値以下になるように製造条件を調整し、1週間(168時間)まで製造を継続した。その後、連続運転を継続したまま、重合条件を変化させてインデックスの異なる別の製造銘柄のプロピレン系重合体の製造に切り替え、温度分布パラメータ(A)が、当該製造銘柄のプロピレン系重合体の温度分布パラメータ(A)の所定値を超えないように監視した。実施例1と同様に、温度分布パラメータ(A)の所定値に近づいた場合に、前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように製造条件を調整したり、前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えたときに、温度分布パラメータ(A)を所定値以下になるように製造条件を調整し、3日間(72時間)まで製造を継続した。その後、連続運転を継続したまま、前記と同様にして別の製造銘柄のプロピレン系重合体の製造に切り替え、温度分布パラメータ(A)が、当該製造銘柄のプロピレン系重合体の温度分布パラメータ(A)の所定値を超えないように監視し、必要に応じて前記温度分布パラメータ(A)が、所定値を超えないように、または所定値以下になるように、製造条件を調整し、製造を継続した。このようにして、連続運転を継続したまま、製造するプロピレン系重合体の製造銘柄を変更しつつ、各製造銘柄に合わせた温度分布パラメータ(A)の所定値を用いた監視を続けることにより、塊状ポリマーを多く発生させることなく、1300時間以上の長期連続運転を達成できた。
【符号の説明】
【0114】
1 触媒成分供給配管
2 触媒成分供給配管
3 原料モノマー供給配管
4 原料供給配管(水素など)
5,6 配管
10 横型重合反応器
10a,10b 隔壁
11 リサイクルドラム
12 反応器上流側末端
13 未反応ガス抜出し配管
14 反応器下流側末端
15 凝縮機
16 圧縮機
18、18-1、18-2、18-3、18-4、18-5 原料混合ガス供給配管
19、19-1、19-2、19-3、19-4、19-5 液化モノマー含有液供給配管
20 撹拌機
20a 水平軸
20b 攪拌翼
21 重合体抜出し配管
22 ガス回収機
23 パウダー回収機
30 横型重合反応器
31 触媒成分供給配管
32 隔壁
33 隔壁
34-1、34-2、34-3、34-3、・・34-i 温度計
35 水平軸
図1
図2
図3
図4
図5