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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129841
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】基礎断熱構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039191
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】池田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】林本 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】下川床 和尊
(72)【発明者】
【氏名】松永 孝二
(72)【発明者】
【氏名】芝田 彩乃
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA01
2D046BA02
(57)【要約】
【課題】 断熱性能を向上させることが可能な基礎断熱構造を提供する。
【解決手段】 建物Bの基礎断熱構造1である。この基礎断熱構造1は、布基礎2と、土間コンクリート3と、基礎断熱材4とを含む。布基礎2は、建物Bの外部地盤面G1よりも下方を水平に延びるベース部5と、ベース部5から上方に延び、かつ、外部地盤面G1から突出する立ち上がり部6とを含む。立ち上がり部6は、建物Bの床下空間7側を向く内向き面6iを有する。土間コンクリート3は、ベース部5よりも上方、かつ、立ち上がり部6の内向き面6iから水平方向に隙間10を隔て床下地盤面G2を覆うように配されている。基礎断熱材4は、立ち上がり部6の内向き面6iに沿って上下に延びる第1部分15と、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間を水平に延びる第2部分16とを含む。第1部分15と第2部分16とは、隙間10を介して連続する断面L字状である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎断熱構造であって、
布基礎と、土間コンクリートと、基礎断熱材とを含み、
前記布基礎は、前記建物の外部地盤面よりも下方を水平に延びるベース部と、前記ベース部から上方に延び、かつ、前記外部地盤面から突出する立ち上がり部とを含み、
前記立ち上がり部は、前記建物の床下空間側を向く内向き面を有し、
前記土間コンクリートは、前記ベース部よりも上方、かつ、前記立ち上がり部の前記内向き面から水平方向に隙間を隔て床下地盤面を覆うように配されており、
前記基礎断熱材は、前記立ち上がり部の前記内向き面に沿って上下に延びる第1部分と、前記土間コンクリートと前記床下地盤面との間を水平に延びる第2部分とを含み、
前記第1部分と前記第2部分とは、前記隙間を介して連続する断面L字状である、
基礎断熱構造。
【請求項2】
前記土間コンクリートは、前記内向き面に向かって実質的に一定の厚さで延びている、請求項1に記載の基礎断熱構造。
【請求項3】
前記第2部分の厚さは、前記第1部分の厚さよりも小さい、請求項1に記載の基礎断熱構造。
【請求項4】
前記第2部分と前記床下地盤面との間に、防蟻性能を有する第1防湿シートが敷設されている、請求項1に記載の基礎断熱構造。
【請求項5】
前記土間コンクリートと前記床下地盤面との間に、防蟻性能を有しない第2防湿シートが敷設されており、
前記第2防湿シートは、前記第1防湿シートと部分的に重ねられている、請求項4に記載の基礎断熱構造。
【請求項6】
前記第1防湿シートと前記第2部分との間に、防蟻薬液を吸収可能な薬液吸収手段が敷設されている、請求項4に記載の基礎断熱構造。
【請求項7】
前記薬液吸収手段の一部は、前記立ち上がり部の前記内向き面と前記第1部分との間に位置する、請求項6に記載の基礎断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、発泡樹脂系断熱材を含む基礎断熱構造が提案されている。この発泡樹脂系断熱材は、立上がり部に沿って延びる縦部と、この縦部から床下空間側に延びる水平部とを含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-194422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、床下空間には、土間コンクリートに設置され、かつ、床パネルや大引等を支持するための束が設けられている。このような束との干渉を避けるように、水平部が配置されると、土間コンクリートが水平部によって覆われていない非断熱部が形成される。したがって、断熱性能の向上について、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、断熱性能を向上させることが可能な基礎断熱構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の基礎断熱構造であって、布基礎と、土間コンクリートと、基礎断熱材とを含み、前記布基礎は、前記建物の外部地盤面よりも下方を水平に延びるベース部と、前記ベース部から上方に延び、かつ、前記外部地盤面から突出する立ち上がり部とを含み、前記立ち上がり部は、前記建物の床下空間側を向く内向き面を有し、前記土間コンクリートは、前記ベース部よりも上方、かつ、前記立ち上がり部の前記内向き面から水平方向に隙間を隔て床下地盤面を覆うように配されており、前記基礎断熱材は、前記立ち上がり部の前記内向き面に沿って上下に延びる第1部分と、前記土間コンクリートと前記床下地盤面との間を水平に延びる第2部分とを含み、前記第1部分と前記第2部分とは、前記隙間を介して連続する断面L字状である、基礎断熱構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基礎断熱構造は、上記の構成を採用することにより、断熱性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の建物の基礎断熱構造を示す部分断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】布基礎を設置する工程を説明する断面図である。
図4】第1防湿シート及び第2防湿シートを敷設する工程を説明する断面図である。
図5】薬液吸収手段を敷設する工程を説明する断面図である。
図6】基礎断熱材を配置する工程を説明する断面図である。
図7】土間コンクリートを打設する工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0010】
[基礎断熱構造]
図1は、本実施形態の建物Bの基礎断熱構造1を示す部分断面図である。本実施形態の建物Bは、住宅である場合が例示されているが、ビル等であってもよい。本実施形態の基礎断熱構造1は、布基礎2と、土間コンクリート3と、基礎断熱材4とを含んで構成されている。
【0011】
[布基礎]
本実施形態の布基礎2は、ベース部5と、立ち上がり部6とを含んで構成されている。本実施形態の布基礎2は、建物Bの外周に沿って配されている。これにより、建物Bには、床下空間7が区画される。布基礎2は、例えば、鉄筋コンクリートで形成されている。
【0012】
[ベース部]
ベース部5は、建物Bの外部地盤面G1よりも下方(本例では、地中8内)において、水平に延びている。外部地盤面G1は、建物Bの外部(布基礎2に対して屋外側)の土地(地盤9)の上面である。本実施形態の外部地盤面G1は、建物Bの垂直高さの基準となるグランドラインとして特定される。
【0013】
[立ち上がり部]
立ち上がり部6は、ベース部5から上方へ延び、かつ、外部地盤面G1から突出している。本実施形態の立ち上がり部6は、ベース部5の幅方向の中央から上方へ延びている。これにより、布基礎2は、断面T字状に形成される。本実施形態の立ち上がり部6は、床下空間7側を向く内向き面6iを有している。
【0014】
[土間コンクリート]
土間コンクリート3は、床下地盤面G2を覆うように配されている。これにより、土間コンクリート3は、床下空間7の底面7sを構成している。床下地盤面G2は、建物Bの床下空間7内(布基礎2に対して屋内側)の土地(地盤9)の上面である。本実施形態の床下地盤面G2は、外部地盤面G1とは異なり、グランドラインとして特定されない。
【0015】
土間コンクリート3(床下地盤面G2)は、ベース部5よりも上方に配置されている。さらに、土間コンクリート3は、立ち上がり部6の内向き面6iから水平方向に隙間10を隔て、床下地盤面G2を覆うように配されている。したがって、土間コンクリート3と立ち上がり部6とが離間して配置されている。また、土間コンクリート3(床下空間7の底面7s)には、例えば、床パネル11や大引12等を支持するための束13が設けられている。
【0016】
本実施形態の土間コンクリート3は、立ち上がり部6の内向き面6iに向かって実質的に一定の厚さW1で延びている。このような土間コンクリート3は、例えば、内向き面6iに向かって、ハンチ状に厚さW1が徐々に大きくなる土間コンクリート(図示省略)に比べると、施工性が向上する。さらに、床下地盤面G2を掘削したときに生じる残土処理が低減されうる。なお、「実質的に一定の厚さW1」とは、施工上の誤差を許容するものである。
【0017】
[基礎断熱材]
基礎断熱材4は、布基礎2を断熱するためのものである。本実施形態の基礎断熱材4は、第1部分15と、第2部分16とを含んで構成されている。これらの第1部分15と第2部分16とは、立ち上がり部6の内向き面6iと土間コンクリート3との隙間10を介して連続している。これにより、基礎断熱材4は、断面L字状に形成される。基礎断熱材4には、従来の断熱材が採用されうる。断熱材の一例としては、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、又は、フェノールフォーム等が挙げられる。
【0018】
第1部分15は、立ち上がり部6の内向き面6iに沿って上下に延びている。このような第1部分15により、建物Bの外部からの熱が、布基礎2を介して、床下空間7及び土間コンクリート3に伝えられるのが抑制される。
【0019】
第2部分16は、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間を水平に延びている。本実施形態では、床下地盤面G2に形成された凹部26に、第2部分16が配されている。このような第2部分16により、建物Bの外部からの熱が、布基礎2や土間コンクリート3の端部3t側を介して、床下空間7に伝えられるのが抑制される。
【0020】
このように、本実施形態の基礎断熱構造1では、第1部分15及び第2部分16を含む断面L字状の基礎断熱材4により、布基礎2及び土間コンクリート3を介して伝えられる建物Bの外部からの熱が、効果的に遮断されうる。さらに、土間コンクリート3と布基礎2の立ち上がり部6とが離間して配置され、かつ、それらの隙間10に、基礎断熱材4の第1部分15が設けられている。これにより、立ち上がり部6に伝えられた建物Bの外部からの熱が、土間コンクリート3や床下空間7に伝えられるのを、より確実に防ぐことが可能となる。
【0021】
また、本実施形態の第2部分16は、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間を水平に延びているため、土間コンクリート3に設けられた束13と干渉することもない。これにより、土間コンクリート3のうち、第2部分16によって断熱される領域において、非断熱部(断熱されない部分)が形成されるのが抑制されうる。したがって、本実施形態の基礎断熱構造1は、断熱性能を向上させることが可能となる。
【0022】
また、基礎断熱材4が断面L字状に形成されることで、第1部分15を布基礎2のベース部5まで延ばさなくても、断熱性能が発揮されうる。これにより、第1部分15を構成する断熱材の使用量が少なくなり、基礎断熱構造1に必要なコストが低減される。とりわけ、土間コンクリート3とベース部5との上下方向の距離が大きくなる布基礎(いわゆる、深基礎)2が構成されている場合には、第1部分15の断熱材の使用量が大幅に少なくなり、コストがより低減される。
【0023】
一般に、土間コンクリート3(床下地盤面G2)には、一年を通じて温度変化の少ない地中8の熱(土間コンクリート3の下方の地熱)が伝えられる。このため、土間コンクリート3は、布基礎2の立ち上がり部6に比べると、建物Bの外部からの熱の影響は小さい。このような観点より、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間に配される第2部分16の厚さW3は、立ち上がり部6に配される第1部分15の厚さW2よりも小さく設定されてもよい。これにより、第2部分16の断熱材の使用量が少なくなり、基礎断熱構造1に必要なコストが低減される。一方、建物Bの外部からの熱の影響が大きい立ち上がり部6に配される第1部分15の厚さW2が相対的に大きく設定されるのが好ましい。これにより、基礎断熱構造1の断熱性能が維持されうる。このような作用を効果的に発揮させるために、第2部分16の厚さW3は、第1部分15の厚さW2の50%~80%に設定されるのが好ましい。
【0024】
第1部分15の厚さW2及び第2部分16の厚さW3は、例えば、基礎断熱構造1に求められる断熱性能に応じて適宜設定されうる。第1部分15の厚さW2は、40~120mm程度に設定される。第2部分16の厚さW3は、20~100mm程度に設定される。
【0025】
基礎断熱材4は、第1部分15と第2部分16とを含んで断面L字状に形成されていれば、適宜形成されうる。本実施形態の基礎断熱材4は、第1断熱材17と第2断熱材18とを含んで構成される。これらの第1断熱材17及び第2断熱材18は、パネル状に形成されている。
【0026】
本実施形態の第1断熱材17は、立ち上がり部6の内向き面6iに沿って上下に延びており、立ち上がり部6の内向き面6iと土間コンクリート3との隙間10を貫通している。このような第1断熱材17により、基礎断熱材4のうち、立ち上がり部6の内向き面6i沿って上下に延びる第1部分15が主として構成される。
【0027】
本実施形態の第2断熱材18は、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間を水平に延びている。このような第2断熱材18により、基礎断熱材4のうち、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間を水平に延びる第2部分16が主として構成される。
【0028】
図2は、図1の部分拡大図である。図2において、図1に示した束13が省略されている。本実施形態の第2断熱材18の上面18uは、第1断熱材17の下端17dと当接している。さらに、第2断熱材18は、立ち上がり部6の内向き面6i側を向く一端18aが、内向き面6iに沿って配されている。これにより、第1断熱材17に対して、第2断熱材18を延ばして納める水平勝ち(横勝ち)とされ、断面L字状の基礎断熱材4が形成される。
【0029】
本実施形態の基礎断熱材4は、水平勝ちで構成されることで、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間で安定して設置された第2断熱材18に、第1断熱材17の下端17dが支持される。これにより、第1断熱材17が床下地盤面G2から下方に沈み込むのが抑制され、基礎断熱材4が断面L字状に安定して維持されうる。
【0030】
本実施形態の基礎断熱材4は、水平勝ちで構成される場合が例示されたが、このような態様に限定されない。基礎断熱材4は、例えば、布基礎2や土間コンクリート3等の構造等に応じて、第2断熱材18に対して、第1断熱材17を延ばして納める縦勝ちとされてもよい。
【0031】
[第1防湿シート]
図1に示されるように、基礎断熱構造1には、第1防湿シート21がさらに含まれてもよい。本実施形態の第1防湿シート21は、基礎断熱材4の第2部分16と床下地盤面G2との間に敷設されている。
【0032】
第1防湿シート21は、防蟻性能を有している。この防蟻性能は、例えば、特許文献(特許第6130664号公報)に記載されるような防蟻機能を有する公知の薬剤が、第1防湿シート21に含有されることで発揮されうる。
【0033】
本実施形態の基礎断熱構造1では、第1防湿シート21により、地中8に含まれる水分が、基礎断熱材4の第2部分16及び土間コンクリート3を介して、床下空間7に浸入するのが抑制される。さらに、第1防湿シート21は、防蟻性能を有しているため、地中8の白蟻が、第2部分16に侵入するのが抑制される。これにより、防蟻性能を有する高価な断熱材で第2部分16が構成されていなくても、第2部分16に白蟻が侵入する(蟻道が形成される)のが抑制される。したがって、基礎断熱構造1に必要なコストが低減されうる。
【0034】
本実施形態の第1防湿シート21は、第2断熱材18の一端18aを覆う第1部分23と、第2断熱材18の下面18dを覆う第2部分24と、第2断熱材18の他端(一端18aとは逆向きの端部)18bを覆う第3部分25とを含んで構成される。このような第1防湿シート21により、土間コンクリート3で覆われる第2断熱材18の上面18uを除いて、第2断熱材18の全域が覆われるため、床下空間7への水分の浸入や、第2断熱材18(第2部分16)への白蟻の侵入が、より確実に防がれる。
【0035】
[第2防湿シート]
基礎断熱構造1には、第2防湿シート22がさらに含まれてもよい。本実施形態の第2防湿シート22は、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間に敷設されている。
【0036】
本実施形態では、基礎断熱材4の第2部分16への白蟻の侵入が第1防湿シート21によって防がれているため、第2防湿シート22に防蟻性能を有する必要がない。このため、第2防湿シート22は、第1防湿シートに比べて安価となり、基礎断熱構造1に必要なコストが低減される。
【0037】
本実施形態の基礎断熱構造1では、第2防湿シート22により、地中8に含まれる水分が、土間コンクリート3を介して、床下空間7に浸入するのが抑制される。このような床下空間7への水分の浸入を確実に防ぐために、第2防湿シート22は、第1防湿シート21と部分的に重ねられているのが好ましい。これにより、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間に、第1防湿シート21と第2防湿シート22とが連続して配置されるため、床下空間7への水分の浸入が、より確実に防がれる。
【0038】
本実施形態では、第1防湿シート21の第3部分25に、第2防湿シート22が重ねられているが、特に限定されるわけではない。第2防湿シート22は、例えば、第1防湿シート21の第3部分25だけでなく、第2部分24にも重ねられてもよい。
【0039】
[薬液吸収手段]
基礎断熱構造1には、防蟻薬液を吸収可能な薬液吸収手段31が含まれていてもよい。本実施形態の薬液吸収手段31は、第1防湿シート21と、基礎断熱材4の第2部分16との間に敷設されている。防蟻薬液は、例えば、特許文献(特許第6130664号公報)に記載の公知の薬剤を含有している液体が採用されうる。
【0040】
本実施形態の基礎断熱構造1では、薬液吸収手段31によって吸収された防蟻薬液により、防蟻性能を有する第1防湿シート21とともに、基礎断熱材4の第2部分16に白蟻が侵入するのが抑制されうる。これにより、防蟻性能を有する高価な断熱材で第2部分16を構成する必要がないため、基礎断熱構造1に必要なコストが低減されうる。さらに、経年によって、第1防湿シート21の防蟻性能が低下したとしても、例えば、薬液吸収手段31に防蟻薬液が追加されることで、防蟻性能が継続して発揮されうる。
【0041】
薬液吸収手段31は、防蟻薬液を吸収可能なものであれば、適宜構成されうる。本実施形態の薬液吸収手段31は、不織布32で構成されている。このような不織布32により、防蟻薬液が迅速に吸収され、かつ、防蟻薬液が安定して保持されうる。
【0042】
薬液吸収手段31の一部は、立ち上がり部6の内向き面6iと、基礎断熱材4の第1部分15との間に位置しているのが好ましい。これにより、第1部分15への白蟻の侵入が抑制される。さらに、第1部分15には、第1部分15の内面(床下空間7側を向く内面)15iから立ち上がり部6の内向き面6iに延び、かつ、薬液吸収手段31に防蟻薬液を注入可能な孔部33が形成されてもよい。このような孔部33に防蟻薬液が注入されることで、防蟻薬液が薬液吸収手段31に容易に追加されるため、基礎断熱構造1の防蟻性能が長期間に亘って維持されうる。
【0043】
本実施形態の薬液吸収手段31には、第1防湿シート21の第1部分23と第2断熱材18の一端18aとの間、及び、立ち上がり部6の内向き面6iと第1断熱材17との間に配された第1部分34が含まれている。本実施形態の第1部分34の上端34uは、土間コンクリート3の上面3u(図1に示した床下空間7の底面7s)よりも上方に配置されている。このような第1部分34の上端34u側に、孔部33が形成されることで、床下空間7から薬液吸収手段31に、防蟻薬液を容易に注入することが可能となる。
【0044】
薬液吸収手段31には、第1防湿シート21の第2部分24と、第2断熱材18(第2部分16)との間に配される第2部分35が含まれてもよい。さらに、薬液吸収手段31には、第1防湿シート21の第3部分25と、第2断熱材18の他端18bとの間に配される第3部分36が含まれてもよい。これらの第2部分24及び第3部分25により、薬液吸収手段31は、第1防湿シート21の全域に、防蟻薬液を供給(補充)することができるため、第2部分16(第2断熱材18)への白蟻の侵入が、より確実に防がれる。
【0045】
本実施形態のように、基礎断熱材4が水平勝ちで構成されることで、第1断熱材17及び第2断熱材18が断面L字状に安定して維持されることから、それらに隣接する薬液吸収手段31の第1部分34及び第2部分35も、断面L字状に安定して維持される。これにより、薬液吸収手段31に注入された防蟻薬液が、第1部分34に沿って下方に案内され、さらに、第2部分35に沿って水平に案内されるため、薬液吸収手段31の全域に、防蟻薬液を円滑に供給することができる。したがって、基礎断熱構造1の防蟻性能が長期間に亘って維持されうる。
【0046】
[基礎断熱構造の施工方法]
[布基礎を設置]
次に、基礎断熱構造1の施工方法が説明される。本実施形態の施工方法では、先ず、布基礎2が設置される(工程S1)。図3は、布基礎2を設置する工程S1を説明する断面図である。
【0047】
工程S1では、従来と同様の手順に基づいて、建物Bの外部地盤面G1よりも下方に、ベース部5と、立ち上がり部6の一部とが埋設される。これにより、工程S1では、外部地盤面G1よりも下方を水平に延びるベース部5と、ベース部5から上方に延び、かつ、外部地盤面G1から突出する立ち上がり部6とを含む布基礎2が設置される。本実施形態の工程S1では、建物Bの外周に沿って、布基礎2が配される。
【0048】
本実施形態の工程S1では、図1に示した第2断熱材18の一部分を埋設するための凹部26を形成するために、床下地盤面G2のうち、例えば、立ち上がり部6の内向き面6i側が掘削される。本実施形態の凹部26の底面26dは、布基礎2のベース部5よりも上方に配されている。
【0049】
本実施形態では、後述の工程S5において、図1に示した実質的に一定の厚さW1で延びる土間コンクリート3が打設される。このため、例えば、内向き面6iに向かって厚さW1(図1に示す)が徐々に大きくなる従来の土間コンクリートを打設するのに必要な凹部(図示省略)を形成する必要がない。これにより、床下地盤面G2を掘削したときに生じる残土処理が低減されうる。
【0050】
[第1防湿シート及び第2防湿シートを敷設]
次に、本実施形態の施工方法では、図1に示した第1防湿シート21及び第2防湿シート22が敷設される(工程S2)。図4は、第1防湿シート21及び第2防湿シート22を敷設する工程S2を説明する断面図である。
【0051】
本実施形態の工程S2では、先ず、凹部26を除く床下地盤面G2に、少なくとも第2防湿シート22が敷設される。本実施形態では、第2防湿シート22の端部22aが、凹部26に配置されている。
【0052】
次に、本実施形態の工程S2では、床下地盤面G2の凹部26に、第1防湿シート21が敷設される。本実施形態では、布基礎2の立ち上がり部6の内向き面6iに沿って、第1防湿シート21の第1部分23が敷設され、床下地盤面G2の凹部26の底面26dに沿って、第1防湿シート21の第2部分24が敷設される。第1防湿シート21の第3部分25は、第2防湿シート22の端部22aに重ねられる。これにより、床下地盤面G2に、第1防湿シート21と第2防湿シート22とが連続して配置されうる。
【0053】
[薬液吸収手段を敷設]
次に、本実施形態の施工方法では、図1に示した薬液吸収手段31が敷設される(工程S3)。図5は、薬液吸収手段31を敷設する工程S3を説明する断面図である。
【0054】
工程S3では、第1防湿シート21の上に、薬液吸収手段31(不織布32)が敷設される。薬液吸収手段31には、防蟻薬液が予め吸収されていてもよい。
【0055】
本実施形態の工程S3では、立ち上がり部6の内向き面6i及び第1防湿シート21の第1部分23に沿って、薬液吸収手段31の第1部分34が敷設される。この第1部分34の上端34uは、床下地盤面G2及び後述の土間コンクリート3の上面3u(図7に示す)よりも上方に配置されている。また、本実施形態の工程S3では、第1防湿シート21の第2部分24の上に、薬液吸収手段31の第2部分35が敷設される。さらに、第1防湿シート21の第3部分25の上に、薬液吸収手段31の第3部分36が敷設される。これにより、工程S3では、第1防湿シート21の全域に、薬液吸収手段31が敷設される。
【0056】
[基礎断熱材を配置]
次に、本実施形態の施工方法では、図1に示した基礎断熱材4が配置される(工程S4)。図6は、基礎断熱材4を配置する工程S4を説明する断面図である。
【0057】
本実施形態の工程S4では、先ず、第2断熱材18が配置される。本実施形態では、床下地盤面G2の凹部26の底面26dや、立ち上がり部6の内向き面6iに沿って敷設された第1防湿シート21及び薬液吸収手段31の上に、第2断熱材18が配置される。
【0058】
次に、本実施形態の工程S4では、立ち上がり部6の内向き面6iに沿って、第1断熱材17が配置される。本実施形態では、第2断熱材18の上面18uに、第1断熱材17の下端17dが当接されている。これにより、第1断熱材17に対して、第2断熱材18を延ばして納める水平勝ち(横勝ち)とされ、断面L字状の基礎断熱材4が形成される。これにより、第1断熱材17の下端17dが、第2断熱材18の上面18uに支持されるため、床下地盤面G2から下方に沈み込むのが抑制される。
【0059】
[土間コンクリートを打設]
次に、本実施形態の施工方法では、土間コンクリート3が打設される(工程S5)。図7は、土間コンクリート3を打設する工程S5を説明する断面図である。
【0060】
本実施形態の工程S5では、床下地盤面G2に配された第2断熱材18、第1防湿シート21、第2防湿シート22及び薬液吸収手段31を覆うように、土間コンクリート3が打設される。さらに、土間コンクリート3の端部3tは、第1断熱材17の内面(第1部分15の内面15i)に当接している。これにより、土間コンクリート3は、布基礎2のベース部5よりも上方、かつ、立ち上がり部6の内向き面6iから水平方向に隙間10を隔てて床下地盤面G2を覆うように配されうる。
【0061】
本実施形態の施工方法では、工程S1~工程S5により、基礎断熱構造1が形成される。土間コンクリート3には、図1に示した床パネル11や大引12等を支持するための束13が設けられる。
【0062】
このように、本実施形態の施工方法では、土間コンクリート3と床下地盤面G2との間を水平に延びる第2部分16が配置されるため、図1に示した土間コンクリート3に設けられた束13との干渉が防がれる。これにより、基礎断熱構造1の施工性が向上する。さらに、土間コンクリート3のうち、第2部分16によって断熱される領域において、非断熱部(断熱されない部分)が形成されるのが抑制されるため、断熱性能を向上させた基礎断熱構造1が製造されうる。
【0063】
また、本実施形態の施工方法では、基礎断熱材4の第1部分15及び第2部分16が、立ち上がり部6の内向き面6iと土間コンクリート3との隙間10を介して連続する断面L字状に形成される。これにより、断熱性能と防蟻性能とを向上させることが可能な基礎断熱構造1が製造されうる。
【0064】
施工方法には、基礎断熱材4の第1部分15(第1断熱材17)に、第1部分15の内面15iから立ち上がり部6の内向き面6iに延び、かつ、薬液吸収手段31に防蟻薬液を注入可能な孔部33(図2に示す)を形成する工程が含まれてもよい。このような孔部33が形成されることで、薬液吸収手段31に防蟻薬液が容易に供給(補充)されうる。したがって、防蟻性能を長期間に亘って維持することが可能な基礎断熱構造1が製造されうる。
【0065】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0066】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0067】
[本発明1]
建物の基礎断熱構造であって、
布基礎と、土間コンクリートと、基礎断熱材とを含み、
前記布基礎は、前記建物の外部地盤面よりも下方を水平に延びるベース部と、前記ベース部から上方に延び、かつ、前記外部地盤面から突出する立ち上がり部とを含み、
前記立ち上がり部は、前記建物の床下空間側を向く内向き面を有し、
前記土間コンクリートは、前記ベース部よりも上方、かつ、前記立ち上がり部の前記内向き面から水平方向に隙間を隔て床下地盤面を覆うように配されており、
前記基礎断熱材は、前記立ち上がり部の前記内向き面に沿って上下に延びる第1部分と、前記土間コンクリートと前記床下地盤面との間を水平に延びる第2部分とを含み、
前記第1部分と前記第2部分とは、前記隙間を介して連続する断面L字状である、
基礎断熱構造。
[本発明2]
前記土間コンクリートは、前記内向き面に向かって実質的に一定の厚さで延びている、本発明1に記載の基礎断熱構造。
[本発明3]
前記第2部分の厚さは、前記第1部分の厚さよりも小さい、本発明1又は2に記載の基礎断熱構造。
[本発明4]
前記第2部分と前記床下地盤面との間に、防蟻性能を有する第1防湿シートが敷設されている、本発明1ないし3のいずれかに記載の基礎断熱構造。
[本発明5]
前記土間コンクリートと前記床下地盤面との間に、防蟻性能を有しない第2防湿シートが敷設されており、
前記第2防湿シートは、前記第1防湿シートと部分的に重ねられている、本発明4に記載の基礎断熱構造。
[本発明6]
前記第1防湿シートと前記第2部分との間に、防蟻薬液を吸収可能な薬液吸収手段が敷設されている、本発明4又は5に記載の基礎断熱構造。
[本発明7]
前記薬液吸収手段の一部は、前記立ち上がり部の前記内向き面と前記第1部分との間に位置する、本発明6に記載の基礎断熱構造。
【符号の説明】
【0068】
1 基礎断熱構造
2 布基礎
3 土間コンクリート
4 基礎断熱材
6 立ち上がり部
7 床下空間
10 隙間
15 第1部分
16 第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7