(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129845
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】室内機の制御装置、当該制御装置を備える室内機、空気調和システム、及び、室内機の制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/49 20180101AFI20240920BHJP
F24F 11/59 20180101ALI20240920BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
F24F11/49
F24F11/59
F24F11/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039195
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中山 隆大
(72)【発明者】
【氏名】曽根 良太
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】津梅 眞嗣
(72)【発明者】
【氏名】原 涼
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA64
3L260CB85
3L260CB90
3L260DA20
3L260FA20
3L260FC33
3L260GA02
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】複数の室内機が通信線により相互に接続され、通信異常が発生すると全ての室内機の運転を停止する制御が行われる場合に、その中の室内機がソフトウェアの更新処理を開始しても、当該更新処理の対象外である他の室内機の空調運転を停止させずに継続させる。
【解決手段】他の室内機AIとの間で通信を行う通信部1と、他の室内機AIとの間における通信異常の発生を判定する際に用いる第1の判定時間T1を格納する記憶部4と、通信異常の発生の有無を判定する判定部5と、を備え、記憶部4には、少なくとも他の室内機AIにおけるソフトウェアの更新に必要な時間として予め定められている第2の判定時間T2が記憶され、通信部1が他の室内機AIのうちいずれかの当該更新処理を実行する更新機からの更新開始の報知を受信した場合に、判定部5は、第1の判定時間T1より長い第2の判定時間T2を用いて更新機の更新処理の異常の有無を判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信線で接続された複数の室内機が備える室内機の制御装置であって、
前記通信線を介して他の室内機との間で通信を行う通信部と、
前記他の室内機との間における通信異常の発生を判定する際に用いられる第1の判定時間を格納する記憶部と、
前記第1の判定時間を用いて前記他の室内機との間における通信異常の発生の有無を判定する判定部と、を備え、
前記記憶部には、前記少なくとも他の室内機におけるソフトウェアの更新に必要な時間として予め定められている第2の判定時間が記憶され、
前記通信部が、前記他の室内機のうちいずれかの前記ソフトウェアの更新処理を実行する更新機からの更新開始の報知を受信した場合に、前記判定部は、前記第1の判定時間より長い前記第2の判定時間を用いて前記更新機の前記更新処理の異常の有無を判定することを特徴とする室内機の制御装置。
【請求項2】
前記第2の判定時間は、前記複数の室内機ごとに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の室内機の制御装置。
【請求項3】
前記第2の判定時間は、少なくとも一度の前記ソフトウェアの更新に必要な時間、前記更新処理が正常に実行されなかった場合に再び前記更新処理を実行する場合を含む、総更新回数を基に設定されることを特徴とする請求項1に記載の室内機の制御装置。
【請求項4】
前記判定部が、前記通信異常、或いは、前記更新処理の異常が生じたと判定した場合に、使用者に異常を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項1に記載の室内機の制御装置。
【請求項5】
前記判定部が、前記通信異常、或いは、前記更新処理の異常が生じたと判定した場合に、室内機の運転を停止させる異常対応制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載の室内機の制御装置。
【請求項6】
前記室内機の制御装置は、さらに前記ソフトウェアの更新処理を実行する更新部を備え、前記更新部は、前記第2の判定時間内に前記更新処理が完了しなかった場合であっても、継続して前記更新処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の室内機の制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の室内機の制御装置と、
内部にファンを格納する筐体と、
前記ファンの回転により空気を外部に吹き出す吹出口と、
を備えることを特徴とする室内機。
【請求項8】
請求項7に記載の室内機と、
複数の前記室内機に対して通信線で接続され、前記通信線を介して伝送される制御信号を送信して複数の前記室内機を制御するリモコンと、
室外に設置され、前記室内機との間で冷凍回路を構成する室外機と、
を備える空気調和システム。
【請求項9】
通信線で接続された複数の室内機を制御する室内機の制御方法であって、
前記通信線を介して他の室内機のうちいずれかのソフトウェアの更新処理を実行する更新機からの前記ソフトウェアの更新開始の報知を受信するステップと、
前記ソフトウェアの更新処理を実行する前記更新機に関して予め設定されている通信異常の発生の有無を判定する際に用いる第1の判定時間を、前記更新機における前記ソフトウェアの更新に必要な時間として各々予め定められている、前記第1の判定時間よりも長い時間となるように設定されている第2の判定時間に変更するステップと、
前記第2の判定時間を用いて前記更新機の前記更新処理の異常の有無を判定するステップと、
を備えることを特徴とする室内機の制御方法。
【請求項10】
前記通信異常、或いは、前記更新処理の異常が生じたと判定された後に、使用者に異常を報知するステップを備えることを特徴とする請求項9に記載の室内機の制御方法。
【請求項11】
前記通信異常、或いは、前記更新処理の異常が生じたと判定された後に、前記複数の室内機の運転を停止させるステップを備えることを特徴とする請求項9に記載の室内機の制御方法。
【請求項12】
前記第2の判定時間内に前記更新処理が完了しなかった場合であっても、継続して更新処理を実行するステップをさらに備えていることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の室内機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、室内機の制御装置、当該制御装置を備える室内機、空気調和システム、及び、室内機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の室内機が設置される空気調和システムにおいては、例えば、これらの室内機が通信線により相互に接続され、これら複数の室内機が一つの共通のリモコンから上記通信線を介して一括して制御されるものがある。また、それぞれの室内機は、通信線で接続される他の室内機との間で適宜通信を行っている。このようなシステムにおいては、何らかの理由によりに通信異常が発生すると、安全のために通信線に接続される全ての室内機の運転を停止させる処理がなされる。
【0003】
一方、室内機にはマイクロコンピュータが搭載されている場合もある。この場合メモリには、マイクロコンピュータが通信や空調制御を実行するためのプログラムであるファームウェアが記憶されている。そして室内機の機能の追加や変更等に応じて、適宜当該ファームウェアが更新される。
【0004】
このファームウェアの更新処理には、再起動の処理等が伴うことから、例えば、以下の特許文献1には、サーモオフ状態の室内機にファームウェアの更新処理を実行させることで、複数の室内機のそれぞれが実行中の空調制御処理への影響を抑えつつ、各室内機に対してなるべく近いタイミングで上記更新処理を行う発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファームウェアを含むソフトウェアの更新処理は、上述した複数の室内機が通信線により相互に接続され、それぞれの室内機が適宜通信を行い、通信異常が発生すると全ての室内機の運転を停止する空気調和システムの室内機においても実行される可能性がある。当該更新処理の方法は様々あるが、更新処理が完了するまで別の室内機との間で通信を行うことができない場合もある。
【0007】
すなわち、複数の室内機におけるいずれかの室内機において、ソフトウェアの更新処理が開始されると、それが完了するまでその他の室内機との通信が途絶えることになる。そのためこのような場合、通信異常が発生したものと判定されて、ソフトウェアの更新処理の対象外である他の室内機も運転を停止してしまうことになり、空調運転を継続させることができない。
【0008】
本発明は、複数の室内機が通信線により相互に接続され、それぞれの室内機が適宜通信を行い、通信異常が発生すると全ての室内機の運転を停止する制御が行われる場合において、その中の室内機がソフトウェアの更新処理を開始したとしても、ソフトウェアの更新処理の対象外である他の室内機の空調運転を停止させずに継続させることができる室内機の制御装置、当該制御装置を備える室内機、空気調和システム、及び、室内機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る室内機の制御装置は、通信線で接続された複数の室内機が備える室内機の制御装置であって、通信線を介して他の室内機との間で通信を行う通信部と、他の室内機との間における通信異常の発生を判定する際に用いられる第1の判定時間を格納する記憶部と、第1の判定時間を用いて他の室内機との間における通信異常の発生の有無を判定する判定部と、を備え、記憶部には、複数の室内機におけるソフトウェアの更新に必要な時間として予め定められている第2の判定時間が記憶され、通信部が、他の室内機のうちいずれかのソフトウェアの更新処理を実行する更新機からの更新開始の報知を受信した場合に、判定部は、第1の判定時間より長い第2の判定時間を用いて更新機の更新処理の異常の有無を判定する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る室内機は、通信線で接続された複数の室内機が備える室内機の制御装置であって、通信線を介して他の室内機との間で通信を行う通信部と、他の室内機との間における通信異常の発生を判定する際に用いられる第1の判定時間を格納する記憶部と、第1の判定時間を用いて他の室内機との間における通信異常の発生の有無を判定する判定部と、を備え、記憶部には、少なくとも他の室内機におけるソフトウェアの更新に必要な時間として予め定められている第2の判定時間が記憶され、通信部が、他の室内機のうちいずれかのソフトウェアの更新処理を実行する更新機からの更新開始の報知を受信した場合に、判定部は、第1の判定時間より長い第2の判定時間を用いて更新機の更新処理の異常の有無を判定する室内機の制御装置と、内部にファンを格納する筐体と、ファンの回転により空気を吹き出す吹出口と、を備える。
【0011】
また、本発明の一態様に係る空気調和システムは、通信線で接続された複数の室内機が備える室内機の制御装置であって、通信線を介して他の室内機との間で通信を行う通信部と、他の室内機との間における通信異常の発生を判定する際に用いられる第1の判定時間を格納する記憶部と、第1の判定時間を用いて他の室内機との間における通信異常の発生の有無を判定する判定部と、を備え、記憶部には、複数の室内機におけるソフトウェアの更新に必要な時間として予め定められている第2の判定時間が記憶され、通信部が、他の室内機のうちいずれかのソフトウェアの更新処理を実行する更新機からの更新開始の報知を受信した場合に、判定部は、第1の判定時間より長い第2の判定時間を用いて更新機の更新処理の異常の有無を判定する室内機の制御装置と、内部にファンを格納する筐体と、ファンの回転により空気を吹き出す吹出口と、を備える室内機と、複数の室内機に対してワイヤード制御信号を送信して複数の室内機を制御するリモコンと、室外に設置され、室内機との間で冷凍回路を構成する室外機と、を備える。
【0012】
また、本発明の一態様に係る室内機の制御方法は、通信線で接続された複数の室内機を制御する室内機の制御方法であって、通信線を介して他の室内機のうちいずれかのソフトウェアの更新処理を実行する更新機からのソフトウェアの更新開始の報知を受信するステップと、ソフトウェアの更新処理を実行する更新機に関して予め設定されている通信異常の発生の有無を判定する際に用いる第1の判定時間を、更新機におけるソフトウェアの更新に必要な時間として各々予め定められている、第1の判定時間よりも長い時間となるように設定されている第2の判定時間に変更するステップと、第2の判定時間を用いて更新機の更新処理の異常の有無を判定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の室内機が通信線により相互に接続され、それぞれの室内機が適宜通信を行い、通信異常が発生すると全ての室内機の運転を停止する制御が行われる場合において、その中の室内機がソフトウェアの更新処理を開始したとしても、ソフトウェアの更新処理の対象外である他の室内機の空調運転を停止させずに継続させることができる室内機の制御装置、当該制御装置を備える室内機、空気調和システム、及び、室内機の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る空気調和システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る室内機の制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態において設定される第2の判定時間の概念を示す表である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るリモコンの内部構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る空気調和システムにおいて通信異常が生じた場合の各機器の制御の流れを示すシーケンス図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る空気調和システムにおいてソフトウェアの更新処理が実行されて成功した場合における各機器の制御の流れを示すシーケンス図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る空気調和システムにおいてソフトウェアの更新処理が実行されて失敗した場合における各機器の制御の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態における空気調和システムSの構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る空気調和システムSの全体構成を示すブロック図である。
【0016】
空気調和システムSは、複数の空気調和機Aと、複数の空気調和機Aにおけるそれぞれの室内機に対して通信線Lで接続されるリモコンRと、を備えている。本発明の実施の形態における複数の空気調和機Aのそれぞれは、1台の室内機AIと1台の室外機AEとを備え、冷媒が流れる冷凍回路で接続されている。
【0017】
室外機AEは、室外に設置され、室内機AIとの間で冷凍回路を構成する。
図1では室外機AEの内部構成については図示を省略しているが、一般的な空気調和機の室外機が備えている機器を備えている。
【0018】
また室内機AIは、居室内に設置され、空調制御を行う室内機制御装置AI1と、リモコンRや他の室内機AIとの間で通信を行う通信インターフェイス(
図1では、「通信IF」と表している)AI2とを備えている。また室外機AEの場合と同様、その内部構成については
図1において図示していないが、室内機AIは、さらに、その内部にファンを格納する筐体と、ファンの回転により空気を外部(居室内)に吹き出す吹出口と、を備えている。
【0019】
なお、
図1で示す空気調和システムSにおける空気調和機Aは、空気調和機A1ないし空気調和機A3の3つの空気調和機Aが、リモコンRと通信線Lを介して互いに接続され、リモコンRによって一括した制御が行われる例を示している。このように、
図1で示す空気調和システムSでは、空気調和機Aは3つ示されているが、リモコンRと通信線Lを介して接続される空気調和機Aの数は、単数でも複数でも良い。
【0020】
また、空気調和機Aは、1台の室外機AEと1台の室内機AIとで1つの冷媒回路を構成している。但しこのような構成ではなく、例えばマルチエアコンと言われるような、1台の室外機AEに複数の室内機AIが接続される構成を採用していても良い。
【0021】
従って、空気調和システムSを構成する空気調和機Aがマルチエアコンの場合は複数の室内機AIが備えられていれば良く、室外機AEの数は単数であっても複数でも良い。また、室内機AIの数も複数であればいくつであっても良い。
【0022】
なお、
図1には第1の室外機AE1及び第1の室内機AI1から構成される第1の空気調和機A1、第2の室外機AE2及び第2の室内機AI2から構成される第2の空気調和機A2、第3の室外機AE3及び第3の室内機AI3から構成される第3の空気調和機A3、という3台の空気調和機Aが描画されている。以下においてこれらをまとめて説明する場合には、これまで通り「空気調和機A」、「室外機AE」、「室内機AI」と表す。
【0023】
また
図1に示すように、それぞれの室内機AIには、室内機制御装置AI11ないし室内機制御装置AI31、及び、通信インターフェイスAI12ないし通信インターフェイスAI32が、それぞれ備えられている。但し、以下においてこれらをまとめて説明する場合には、「室内機制御装置AI1」、或いは、「通信インターフェイスAI2」と表す。
【0024】
リモコンRは、上述したように、複数の室内機AIと通信線Lで接続されており、この通信線Lを介して伝送される制御信号を送信して複数の室内機AIを制御する。すなわち、本発明の実施の形態における空気調和システムSは、複数の室内機AIが通信線Lにより相互に接続され、これら複数の室内機AIは1つの共通のリモコンRにより一括して制御されるものである。なお、リモコンRと複数の室内機AIとをつなぐ通信線Lは、有線である。
【0025】
リモコンRは、その内部にリモコン制御装置(
図1では、「RC制御装置」と示している。)R1と通信インターフェイスR2とを備えている。なお、当該リモコンRについても一般的なリモコンと同様、様々な機能、構成を備えているが、ここでは本発明の実施の形態における制御に必要な構成のみを示している。
【0026】
次に、室内機AI及びリモコンRのそれぞれの内部構成について、より詳しく説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る室内機AIの制御装置AI1の内部構成を示すブロック図である。
【0027】
室内機AIの室内機制御蔵置AI1は、通信部1と、空調制御部2と、ワイヤレス通信部3と、記憶部4と、判定部5と、更新部6と、報知部7と、異常対応制御部8と、を備えている。
【0028】
通信部1は、通信インターフェイスAI2と接続されて、通信線Lを介して他の室内機AI、或いは、リモコンRとの間で通信を行う。また、リモコンRからの制御信号を受信する。空調制御部2は、リモコンRから送信された制御信号に基づいて、空気調和機Aの、例えば、上述したファン等の制御を行う。
【0029】
ワイヤレス通信部3は、室内機AIがリモコンRとは異なる、室内機AIごとのワイヤレスリモコンによっても制御される場合に、当該ワイヤレスリモコンとの間で通信を行う。但し上述したように、本発明の実施の形態における複数の室内機AIは通信線Lを介して一括して制御されることを前提としているため、個々の室内機AIの制御を行うためのワイヤレスリモコンについては、必ずしも備えていなくても良い。
【0030】
また、例えば室内機制御装置AI1において使用される、例えば、ファームウェアや制御プログラムといった、各種ソフトウェアに対する更新処理が実行される場合、無線で当該更新処理が実行される場合もある。このような場合に、ソフトウェアの更新処理に必要な指示や更新プログラム等の各種データについては、当該ワイヤレス通信部3を介して室内機制御装置AI1に受信される。
【0031】
記憶部4は、空気調和機Aを空調制御するために必要なソフトウェアやプログラム、その他様々な情報が格納されている。また、本発明の実施の形態における室内機AIでは、これらの情報の他、後述する第1の判定時間T1、及び、第2の判定時間T2に関する情報も格納されている。さらに、複数の室内機AIが相互に通信を行った際の、それぞれの通信履歴についても記憶部4に記憶している。
【0032】
本発明の実施の形態における空気調和システムSでは、それぞれの複数の室内機AIが相互に常時通信を行っており、通信線Lに接続する他の機器との間において通信異常が発生すると全ての室内機および室外機の運転を停止する制御が行われる。第1の判定時間T1は、通信が途絶した場合に、通信異常が生じたか否かを判定する際の基準となる時間である。
【0033】
当該第1の判定時間T1については任意に設定することができるが、例えば、通信異常が生じると、通信途絶となった空気調和機Aの圧縮機等に対する制御が及ばず、運転を停止する手段が失われてしまうことになりかねない。そこで、安全性の観点から第1の判定時間T1が設定される。具体的には、例えば、1分程度に予め設定されて記憶部4に格納されている。つまり、室内機AI同士で通信が第1の判定時間T1(例えば1分間)途絶すると、通信異常が発生したと判定し、結果として全ての空気調和機Aの運転を停止させる。
【0034】
なお、ここでは複数の室内機AIのいずれも同じ時間が第1の判定時間T1として設定されていることを前提としているが、室内機AIごとに第1の判定時間T1の長さを変えても良い。
【0035】
記憶部4には、さらに第2の判定時間T2に関する情報も格納されている。当該第2の判定時間T2は、室内機AIにおいてソフトウェアの更新処理が実行される場合に、室内機AIにおけるソフトウェアの更新処理が完了したか否かを判定するために用いられる時間である。従って、ソフトウェアの更新処理開始から完了までに掛かる時間を含むよう、ソフトウェアの更新処理に必要十分な時間として設定される。
【0036】
ソフトウェアの更新処理に掛かる時間は、一般的に上述したような通信異常が生じたか否かの判定に用いられる第1の判定時間T1よりも長い時間であることが多い。また、ソフトウェアの更新処理が実行されている間は、当該更新処理を実行している室内機AIと他の室内機AIやリモコンRとの間では通信を行うことができない場合もある。
【0037】
従って、ソフトウェアの更新処理が完了したか否かの判定に第1の判定時間T1を用いてしまうと、更新処理を実行中であるにも拘わらず、更新処理を実行している室内機AIと他の室内機AI等との間で通信異常が生じたと判定されかねない。上述したように通信異常が生じたと判定されると、他の室内機AIの運転が停止されることになるため、ソフトウェアの更新処理が問題なく行われていても空気調和システムS全体が停止することになってしまい不都合である。
【0038】
そこで、通信異常が生じたか否かの判定のために用いられる第1の判定時間T1とは別に、ソフトウェアの更新処理が完了したか否かの判定のために用いられる第2の判定時間T2を設ける。そして、第2の判定時間T2は、第1の判定時間T1よりも長くなるように設定される。
【0039】
また、ソフトウェアの更新処理については、空気調和システムSを構成する複数の室内機AIのいずれにおいても実行されるものである。従って、第2の判定時間T2については、共通の時間に設定されてもよいし、それぞれの室内機AIごとに設定されてもよい。
【0040】
ここで
図2に示す室内機制御装置AI1における記憶部4には、他機の第2の判定時間T21と自機の第2の判定時間T22とが格納されている状態が示されている。ここで「自機」とは、例えば、第1の空気調和機A1(第1の室内機AI1)を基準として考えた場合における、当該第1の空気調和機A1(第1の室内機AI1)のことである。
【0041】
一方「他機」とは、同様に第1の空気調和機A1(第1の室内機AI1)を基準とした場合における、通信線Lに接続される他の空気調和機A(室内機AI)を示している。従って同様に、第1の空気調和機A1(第1の室内機AI1)を基準とした場合に、第2の空気調和機A2(第2の室内機AI2)、及び、第3の空気調和機A3(第3の室内機AI3)が他機に該当する。
【0042】
このように記憶部4の中に他機の第2の判定時間T21を格納しているのは、第2の判定時間T2については、複数の室内機AIごとに異なる時間が設定されていることを想定しているからである。すなわち、空気調和システムSを構成する室内機AIについては、必ずしも同じ種類の室内機AIが接続されているとは限らない。そして室内機AIの種類によって搭載されるマイクロコンピュータ(以下、適宜「マイコン」と表す)は異なる場合があり、マイコンが異なれば、ソフトウェアの更新処理に掛かる時間も異なる可能性がある。そのため、第2の判定時間T2については、室内機AIごとに設定される。
【0043】
上述したように、室内機AIにおいてソフトウェアの更新処理が実行される際、第2の判定時間T2が経過するまでに更新処理が完了しない場合には、空気調和システムSを構成する全ての空気調和機Aの運転が停止される。そのため、各室内機AIは、自身以外の他の室内機AI(他機)の第2の判定時間T21に関する情報を保持し、リモコンRには、通信線Lに接続される全ての室内機AIにおける第2の判定時間T2が保持されている。
【0044】
上述したように第2の判定時間T2は、ソフトウェアの更新処理が実行された際に更新処理が正常に行われたか否かを判定する際の基準として用いられるものである。一方、ソフトウェアの更新処理が実行されている最中は、更新処理以外の機能については停止しているため更新処理が正常に実行されたか否かの判定を、自機の第2の判定時間T22を用いて自ら行うことはできない。
【0045】
従って、第2の判定時間T2は、ソフトウェアの更新処理が正常に実行されたか否かを、他の室内機AIやリモコンRが判定するために用いられるものであると言える。すなわち、例えば、第1の空気調和機A1(第1の室内機AI1)がソフトウェアの更新処理を実行する場合、第1の空気調和機A1(第1の室内機AI1)における更新処理が正常に行われたか否かの判定を、他の空気調和機A、すなわち、第2の空気調和機A2(第2の室内機AI2)、第3の空気調和機A3(第3の室内機AI3)やリモコンRが行うということになる。
【0046】
そのため、自身の第2の判定時間T2(自機の第2の判定時間T22)については、記憶部4には格納されている必要はない。すなわち、例えば、第1の室内機AI1について設定された自機の第2の判定時間T22は、第1の室内機AI1の記憶部4には格納されている必要はない。
【0047】
なお、自機の第2の判定時間T22は、自身のソフトウェアの更新処理が完了したか否かの基準となる時間であることから、その設定は室内機AIごとに行われる。
図2においては、説明の便宜上、自機の第2の判定時間T22が記憶部4に格納された状態を示しているが、上述したように、他の室内機AIの記憶部4に格納されている状態ならば、自機の記憶部4に格納されていなくても良い。
【0048】
室内機AIごとに設定された自機の第2の判定時間T22については、例えば、リモコンRと複数の室内機AIとが通信線Lと接続されて通信が開通した時に、リモコンRや他の室内機AIに対して送信されて、送信先の記憶部4に格納される。そのため、当該送信が終了すると、室内機AIの記憶部4には、自機の第2の判定時間T22については格納されていない状態となる。
【0049】
このように自らの記憶部4には他の室内機AIに関する第2の判定時間T21のみが格納されており、第2の判定時間T2は、室内機AIごとに任意に設定することが可能である。そこで次に、当該第2の判定時間T2の設定について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施の形態において設定される第2の判定時間T2の概念を示す表である。
【0050】
図3に示す表においては、
図1で示す、本発明の実施の形態における空気調和システムSを構成する3台の室内機AI(第1の室内機AI1、第2の室内機AI2、第3の室内機AI3)が示されている。一方、最左欄には、各室内機AIが搭載するマイコンの種類と、第2の判定時間T2として考慮される条件が示されている。
【0051】
すなわち、1つ目が「更新必要時間」である。この「更新必要時間」は、ソフトウェアの更新処理に掛かる時間として設定されている時間であり、マイコンの種類や性能によって異なる。例えば、第1の室内機AI1が搭載するマイコンAの場合は、更新必要時間は4分である。一方、第2の室内機AI2が搭載するマイコンBの場合は、更新必要時間は3分である。
【0052】
2つ目の条件が、「実行回数」である。当該実行回数は、ソフトウェアの更新処理において各室内機AIが当該更新処理を実行する回数として設定されるものである。ソフトウェアの更新が必要となった場合、当然のことながら1回は更新処理が実行される。但し、この1回の更新処理が正常に実行されない場合も考えられる。そこで、更新処理が正常に実行されなかった場合に、改めて更新処理を実行(リトライ)する必要がある。「実行回数」はこのリトライを含む、室内機AIが実行するソフトウェアの更新処理の総回数を設定するものである。
【0053】
図3の表を見ると、「実行回数」はいずれの室内機AIも「2回」である。すなわち、ソフトウェアの更新処理が必要になって最初の更新処理の実行を1回目と数え、更新処理が正常に実行されなかった場合に、リトライを行う回数としてもう1回を設定し、合計2回である。
【0054】
上述したように、ソフトウェアの更新処理が第2の判定時間T2が経過する前に終了しなかった場合には、ソフトウェアの更新処理が正常に実行されなかった旨、後述する報知部7を介して使用者に報知される。そしてその後、空気調和システムSを構成する全ての空気調和機Aの運転が停止される。
【0055】
ソフトウェアの更新処理が正常に実行されなかった旨、報知を受けた使用者は、例えば、サービスセンターに連絡してこの状態を解消することになる。そのため、「実行回数」を何回とするかについては、任意に設定することができるものの、設定されるソフトウェアの更新処理の実行回数が少なすぎると、頻繁にサービスセンターに連絡することにもなりかねない。そこで、このような点も考慮して実行回数が設定される。
【0056】
3つ目の条件は「余剰時間」である。上述したように、少なくとも「更新必要時間」が設定されていればソフトウェアの更新処理の開始から完了までに必要な時間が確保されることになる。但し、更新の途中で通信状態が不安定になる等、設定された更新必要時間だけでは更新処理が完了しない可能性も考えられる。
【0057】
このような場合に、第2の判定時間T2として「更新必要時間」のみ設定されているとすると、ソフトウェアの更新処理が正常に実行されなかった、と判定される確率が高くなってしまう。これでは空気調和システムSがソフトウェアの更新処理の都度停止することにもなりかねず実際的ではない。
【0058】
そこで、「更新必要時間」の他に「余剰時間」としてソフトウェアの更新処理が正常に実行されたか否かの判断を行うまでの余裕を持たせる時間を設定している。
図3の表においては、いずれの室内機AIにおいても「2分」と設定されている。
【0059】
そして最後の「合計時間」が、これまで説明してきた第2の判定時間T2に該当する。第1の室内機AI1の場合、更新必要時間は「4分」、実行回数は「2回」、余剰時間は「2分」と設定されている。実行回数が2回なので、更新に掛かる時間として設定されるのは、4分の2回分で最大8分である。この8分に余剰時間の2分を足して、合計が「10分」となる。この10分が第1の室内機AI1に対するソフトウェアの更新処理が正常に行われたか否かを判定する際の第2の判定時間T2となる。
【0060】
同様に、第2の室内機AI2についての第2の判定時間T2は8分であり、第3の室内機AI3についての第2の判定時間T2は12分である。上述したように、搭載されているマイコンの種類等によってソフトウェアの更新処理に掛かる時間は異なることから、このように室内機AIごとに第2の判定時間T2は異なる。
【0061】
なお、
図3に示す表においては、いずれの室内機AIについても「実行回数」と「余剰時間」については、同じ値が設定されている。但しこのような設定の仕方に限定されるものではなく、もちろん室内機AIごとに任意に設定することができる。
【0062】
判定部5は、第1の判定時間T1を用いて他の室内機AIとの間における通信異常の発生の有無を判定する。各室内機AIは他の室内機と通信部1を介して適宜通信状態の確認を行うが、通信が途絶した場合、室内機AIの判定部5、或いは、リモコンRの判定部は、当該通信が途絶した室内機AIに対して設定されている第1の判定時間T1を基に、通信が途絶している時間が当該第1の判定時間T1を超えるか否かを判定する。
【0063】
そして、通信が途絶してから第1の判定時間T1が経過する前に通信が回復した場合には通信異常ではないと判定する。一方、第1の判定時間T1が経過しても通信が回復しない場合には、判定部5は通信異常が生じたと判定する。この判定結果を基に、通信が途絶した当該室内機AIを含むすべての室内機AIは自機の運転を停止させる。その結果、空気調和システムS全体の運転が停止される。
【0064】
また判定部5は、第2の判定時間T2を用いてソフトウェアの更新処理を実行する室内機AI(以下、このようにソフトウェアの更新処理が実行される室内機を適宜「更新機」と表す。)の更新処理の異常の有無を判定する。
【0065】
すなわち、第2の判定時間T2は上述したようにソフトウェアの更新処理に必要十分な時間として設定されることから、ソフトウェアの更新処理が正常に実行されれば、第2の判定時間T2の経過前に当該更新処理は完了する。従って、第2の判定時間T2の経過前に更新機から更新処理が完了した旨の報知を受信した場合には、更新機におけるソフトウェアの更新処理は正常に実行されたと判定する。
【0066】
一方、更新機においてソフトウェアの更新処理が正常に実行されず第2の判定時間T2が経過しても更新処理が完了しない場合には、判定部5は、ソフトウェアの更新処理に異常が発生したものと判定する。そして当該判定に基づき、空気調和システムS全体の運転が停止される。
【0067】
このように判定部5では、第2の判定時間T2の経過前に更新機からソフトウェアの更新処理完了の報知を受信しない場合には、上述したように空気調和システムS全体の運転が停止されるが、更新機においては、第2の判定時間T2を経過したか否かに拘わらず、正常に更新処理が実行され完了するまで継続して実行される。
【0068】
また、更新部6は、ソフトウェアの更新処理を実行する。ソフトウェアの更新処理は、例えば、無線通信を経由して実行される。上述したように、例えば、
図2に示す室内機制御装置AI1では、ワイヤレス通信部3を経由してソフトウェアの更新処理の実行指示が届き、当該実行指示に基づいて更新部6がソフトウェアの更新処理を実行する。
【0069】
上述した判定部5が、更新機によるソフトウェアの更新処理が正常に実行されたか否かの判定を開始するのは、通信部1が他の室内機AIのうちいずれかのソフトウェアの更新処理を実行する更新機からの更新開始の報知を受信した場合である。
【0070】
すなわち、更新部6がソフトウェアの更新処理を開始する際、更新機から他の室内機AIに対して更新処理の開始を報知する。当該報知を受けた他の室内機AIでは、判定部5が第1の判定時間T1を、当該報知を送信した更新機の第2の判定時間T2に切り替える。そして、第2の判定時間T2内にソフトウェアの更新処理が完了するか否か、すなわち更新処理について異常の有無を判定する。
【0071】
報知部7は、自身がソフトウェアの更新処理を開始する報知、或いは、当該更新処理が完了した旨の報知を行う。また、判定部5が、他の室内機AIにおける通信異常、或いは、更新処理の異常が生じたと判定した場合に、使用者に異常を報知する。報知部7からの報知を受けた使用者は、上述したように、例えばサービスセンターに連絡を取る等の手続き行う。
【0072】
異常対応制御部8は、判定部5が、他の室内機AIにおける通信異常が生じたと判定した場合に、空気調和システムSを構成する全ての室内機AIの運転を停止させる。すなわち、リモコンRによって複数の室内機AIが一括して制御されている空気調和システムSにおいて、通信異常が生じた場合には、通信異常が生じた室内機AIの制御が実行できないことになる。そこで、安全性の観点から全ての室内機AIの運転を停止させる。
【0073】
一方、判定部5によって更新機から第2の判定時間T2内に更新処理が完了した旨の報知が届かないと判定された場合も、同様に全ての室内機AIの運転を停止させる。すなわち、ソフトウェアの更新処理が実行されるとして第1の判定時間T1から第2の判定時間T2へと切り替えた後、更新機において通信異常が発生したとしても、第2の判定時間T2は第1の判定時間T1よりも長く設定されていることから、更新機から当該報知が届かないのは、更新処理が完了しなかったことが原因であるのか、或いは、通信異常が発生していることが原因であるのか、の判断が付かないからである。
【0074】
そこで、本発明の実施の形態における空気調和システムSにおいては、上述したように判定部5によって第2の判定時間T2内に更新処理が完了した旨の報知が更新機から届かない場合も、全ての室内機AIの運転を停止させる。
【0075】
次に
図4は、本発明の実施の形態に係るリモコンRの内部構成を示すブロック図である。リモコンRは、通信部11と、空調制御部12と、記憶部14と、判定部15と、報知部17と、異常対応制御部18と、を備えている。
【0076】
図4に示すように、リモコンRの内部構成は、室内機制御装置AI1における内部構成とその多くが重複し、その機能は上述した通りである。室内機制御装置AI1に備えられていてリモコンRに備えられていないのは、ワイヤレス通信部3及び更新部6である。
【0077】
リモコンRは通信線Lを介して有線で各室内機AIに制御信号を送信する。そのため、リモコンRに対するワイヤレスリモコンは備えられていないことから、ワイヤレス通信部3は備えられていない。また更新部6については、リモコンRについてソフトウェアの更新処理は実行されないからである。
【0078】
なお、上述したように室内機制御装置AI1において対応する各部とのその機能を同じくすることから、
図4におけるリモコンRの内部に設けられる各部に付した符号は、室内機制御装置AI1において対応する各部に準じている。なお、ワイヤレス通信部3及び更新部6に対応する機能は備えていない。
【0079】
[動作]
次に、上述した室内機AIにおいてソフトウェアの更新処理が実行される際の制御の流れについて、図面を用いて説明する。そこで室内機AIにおけるソフトウェアの更新処理が実行される際の制御の流れの理解において、まず、その前提となる通信異常が生じた場合の制御の流れについて説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る空気調和システムSにおいて通信異常が生じた場合の各機器の制御の流れを示すシーケンス図である。
【0080】
図5に示すシーケンス図では、
図1の配置に合わせて、左からリモコンR、第1の室内機AI1、第2の室内機AI2、第3の室内機AI3における制御の流れが示されている。
【0081】
本発明の実施の形態における空気調和システムSでは、リモコンRが複数の室内機AI(空気調和機A)を一括して制御している。従って、リモコンRから送信された制御指示に従ってそれぞれの室内機AIが制御される(ST1)。また、リモコンR、複数の室内機AIは、通信線Lを介して相互に常時通信を行っている。
【0082】
図5では、第1の室内機AI1と第2の室内機AI2との間、第1の室内機AI1と第3の室内機AI3との間、或いは、第2の室内機AI2と第3の室内機AI3との間にそれぞれ両矢印が描画されており、それぞれが相互に通信していることを例示している。
【0083】
なお、複数の室内機AIとリモコンRとの間においても相互に通信を行っているが、図面の描画の都合上、複数の室内機AIとリモコンRとの間における通信が行われている状態を示す両矢印は図示を省略している。
【0084】
このように相互に通信を行っている複数の室内機AIは、それぞれの室内機AIが自機と他機の通信が正常に行われているか否かを確認している(ST2)。これは上述したように、リモコンRが複数の室内機AIを一括して制御している空気調和システムSにおいて、通信途絶が生じてしまうと、リモコンRは通信途絶となった室内機AIに対する制御が行えないことになってしまうからである。そのため、いずれかの室内機AIとの間で通信ができない状態になった場合には、最終的に空気調和システムS全体の運転を停止する(ST8)。
【0085】
図5においては、このことを説明するために、例えば、第2の室内機AI2に通信途絶の異常が生じ(ST3)、当該第2の室内機AI2とその他の室内機AI、及び、リモコンRとの間で通信ができない状態が発生したことを例に挙げる。説明の便宜上第1の室内機AI1を主体として説明をしたが、同様の処理を他の室内機でも行っている。
【0086】
このように第2の室内機AI2において通信途絶が生ずると、第2の室内機AI2と、第1の室内機AI1、第3の室内機AI3、及び、リモコンRとの間での通信が途絶える。このことを、
図5においては、第2の室内機AI2と、第1の室内機AI1、或いは、第3の室内機AI3との間をつなぐ両矢印を破線としこの破線の上にバツ印を描画することで示している。
【0087】
上述したように、リモコンR、及び、複数の室内機AIでは、相互に通信が正常に行われているか否かを確認している。そして通信途絶が生じたか否かの確認の条件として、上述した第1の判定時間T1が用いられる。
図5のシーケンス図では、第1の室内機AI1が、通信途絶が生じたか否かの確認を行った場合を例に挙げている。
【0088】
第2の室内機AI2において通信途絶が生じた場合に、第1の室内機AI1の判定部5では、第2の室内機AI2との通信途絶が生じたことを検出し、当該途絶が継続する時間が第1の判定時間T1を超えるか否かの判定を開始する(ST4)。
【0089】
もし第2の室内機AI2において生じた通信途絶が第1の判定時間T1の経過前に回復した場合には(ST4のNO)、これまで通りリモコンRや他の室内機AIとの間で通信可能な状態となるので、判定部5における判定処理は一旦終了する。そして改めてステップST2に戻り、通信途絶が生じるか否かの確認を行う。
【0090】
一方、第1の判定時間T1を超えても通信途絶が継続し通信が回復しないと判定部5が判定した場合には(ST4のYES)、通信途絶となった室内機AI(ここでは第2の室内機AI2)を確認し(ST5)、通信が途絶した室内機AI以外の室内機(ここでは第3の室内機AI3)、及び、リモコンRに対して通信異常が生じたことを報知する(ST6)。
【0091】
そして通信途絶が生じた旨の報知を受けたリモコンRは、報知部17を介して使用者に対して通信途絶の状態が生じたことを報知する(ST7)。また、リモコンRの異常対応制御部18が空気調和システムSの全体の停止を指示する(ST8)。通信が途絶した第2の室内機AI2は、自ら自機の運転を停止する(ST9)。通信異常が生じた場合の制御の流れは以上の通りであり、通信途絶の状態が生じたか否かは第1の判定時間T1を用いて判定される。
【0092】
次にソフトウェアの更新処理が実行される場合における制御の流れについて、更新処理が成功した場合と更新処理に失敗した場合とに場合を分けて説明する。
図6は、本発明の実施の形態に係る空気調和システムSにおいてソフトウェアの更新処理が実行されて成功した場合における各機器の制御の流れを示すシーケンス図である。
【0093】
図6、及び、後述する
図7の場合も、
図5と同様、左からリモコンR、第1の室内機AI1、第2の室内機AI2、第3の室内機AI3における制御の流れが示されている。また、ここでは第1の室内機AI1においてソフトウェアの更新処理が実行されることを前提とする。すなわち、第1の室内機AI1が更新機に該当する。
【0094】
第1の室内機AI1において、ソフトウェアの更新処理が実行される場合、例えば、ワイヤレス通信部3を介して更新の指示が届き、準備が開始される(ST11)。併せて第1の室内機AI1からは、リモコンR、及び、他の室内機AI(第2の室内機AI2、及び、第3の室内機AI3)に対してソフトウェアの更新処理を実行する旨の報知が出される(ST12)。
【0095】
第1の室内機AI1からソフトウェアの更新処理を実行する旨の報知を受けたリモコンR、及び、他の室内機AIにおいては、それぞれの判定部が第1の室内機AI1に関する第1の判定時間T1を第2の判定時間T2へと切り替える(ST13)。上述したようにソフトウェアの更新処理が実行される場合には他の機器との間で通信を行うことができなくなるが、第1の判定時間T1をもって通信途絶が発生したか否かを判定してしまうと、正常にソフトウェアの更新処理が実行されていても空気調和システムS全体が停止することになりかねない。
【0096】
そこで、第1の判定時間T1を、当該第1の判定時間T1よりも長い時間に設定されている第2の判定時間T2へと切り替えることで、ソフトウェアの更新処理に必要な時間を確保するとともに、適切な判定を行うことができるようにしている。
【0097】
ソフトウェアの更新処理を実行する旨の報知が完了すると、第1の室内機AI1は更新処理を開始する(ST14)。更新処理に当たっては、1度目の更新処理実行で正常に更新できなかった場合でも、上述した実行回数分、続けて更新処理を実行する。そして更新処理が完了した場合には(ST15)、リモコンR、及び、他の室内機AIに対して更新処理の完了を報知する(ST16)。この完了報知は、たとえばそれぞれの記憶部4に一時的に記憶される。
【0098】
一方、リモコンR、及び、他の室内機AIでは、切り替えた第2の判定時間T2の経過時点で更新機(第1の室内機AI1)から更新処理完了の報知が届いたか判定を行う(ST17)。なお、ステップST17では「第2の判定時間経過前?」と示しているが、これはリモコンR、及び、他の室内機AIが第2の判定時間が経過する前までに更新機である第1の室内機AI1からの完了報知が届いたか否かを判定することを示している。また、
図6においては、リモコンR、及び、他の室内機AIのいずれもが当該判定を行うことから、いずれの処理についてもステップST17の符号を付している。
【0099】
もし第2の判定時間T2の経過前に更新機から更新処理完了の報知が届いた場合には(ST17のYES)、リモコンR、及び、他の室内機AIは、更新機(第1の室内機AI1)についての第2の判定時間T2を第1の判定時間T1へと戻す処理を実行する(ST18)。また、たとえば記憶部4等に完了報知が記憶されていた場合、それを削除する。
【0100】
図7は、本発明の実施の形態に係る空気調和システムSにおいてソフトウェアの更新処理が実行されて失敗した場合における各機器の制御の流れを示すシーケンス図である。
【0101】
すなわち、第2の判定時間T2の経過時点で更新機から更新処理完了の報知が届かなかった場合には(ST17のNO)、リモコンR、或いは、他の室内機AIでは、それぞれの判定部が更新機(第1の室内機AI1)におけるソフトウェアの更新処理に異常が発生したと判定する(ST19)。
【0102】
そしてこの判定がなされた場合には、リモコンRは、報知部17を介して使用者に対してソフトウェアの更新処理に異常が生じたことを報知する(ST20)。また、リモコンRの異常対応制御部18が空気調和システムSの全体の停止を指示する(ST21)。
【0103】
以上説明したような処理を実行することによって、複数の室内機が通信線により相互に接続され、それぞれの室内機が適宜通信を行い、通信異常が発生すると全ての室内機の運転を停止する制御が行われる場合において、その中の室内機がソフトウェアの更新処理を開始したとしても、ソフトウェアの更新処理の対象外である他の室内機の空調運転を停止させずに継続させることができる室内機の制御装置、当該制御装置を備える室内機、空気調和システム、及び、室内機の制御方法を提供することができる。
【0104】
すなわち、ソフトウェアの更新処理に異常が生じたか否かの判定を行うに当たって、通信異常が生じたか否かを判定するために用いられる第1の判定時間よりも長く、リトライ回数やマイコンの種類や性能も含めて更新に必要な時間を考慮して設定された第2の判定時間を用いることで、更新機がソフトウェアの更新処理を開始した後であっても、更新機以外の他の室内機は、通信異常が生じたとして運転の停止の指示を受けることなくそのまま運転を継続することができる。
【0105】
なお、これまで説明したように、上記空気調和システムではシステムの停止指示はリモコンが一括で各室内機に送信して行うとしているが、個々の室内機が異常を判断して自らの空気調和機の運転を停止するようにしてもよい。
【0106】
また、ソフトウェアの更新処理に異常が生じた場合の処理について、上述した
図6や
図7に示すシーケンス図では、リモコンが使用者に対して報知するとともに、空気調和システムの停止を行っている。但し、当該報知、及び、制御をリモコンではなく、更新機以外の室内機が行っても良い。
【0107】
また、ソフトウェアの更新処理に異常が生じて使用者へ報知する場合、上述したようにリモコンや各室内機が備える報知部を介して報知されるが、より具体的には、図示しない、例えば出力部によって使用者に異常が生じた旨が報知される。なお、出力部としては、例えば、スピーカやランプ等、使用者の五感に訴える装置であればいずれでも良い。
【0108】
また、室内機においてワイヤレスリモコンが併用されている場合には、報知部、ワイヤレス通信部を介して当該ワイヤレスリモコンに対して報知信号を送信して使用者に対して報知を行うこととしても良い。
【0109】
これまでの説明においては、ソフトウェアの更新処理に異常が生じたことを、リモコンから更新機を除く各室内機に対して報知しており、いわば、個々の室内機から使用者に対して報知していた。但し、報知の方法はこの方法に限られず、例えば、空気調和システムを管理するリモコンを介して、当該システム全体として報知するようにされていても良い。
【0110】
また、ソフトウェアの更新処理に異常が生じた場合の制御について、これまでは空気調和システムを構成する各室内機の運転を停止する制御について説明してきた。但しこのような制御に限定されず、例えば、ソフトウェアの更新処理に異常が生じた場合に、異常が生じたことを報知するにとどまり、更新機を除く他の室内機については運転を継続させる制御とすることもできる。
【0111】
また、第2の判定時間の経過前に更新機からソフトウェアの更新処理の完了の報知が届かなかった場合は、上述したように、ソフトウェアの更新処理に異常が生じたのか、ソフトウェアの更新処理は正常に行われたものの、通信異常が生じているのか、判断が付かない。そこで、使用者に対してソフトウェアの更新処理に異常が生じたとの内容を報知するか、ソフトウェアの更新処理は正常に行われたものの、通信異常が生じているとの内容を報知するかについては、例えば、空気調和システムを停止させる制御を行うか否かの判断とともに任意に設定することができる。
【0112】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、本発明の一例を示したものである。実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、また、上記実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【0113】
例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよく、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0114】
なお、本発明の実施の形態において説明した技術については、以下のような構成を採用することもできる。
(1)通信線で接続された複数の室内機が備える室内機の制御装置であって、
前記通信線を介して他の室内機との間で通信を行う通信部と、
前記他の室内機との間における通信異常の発生を判定する際に用いられる第1の判定時間を格納する記憶部と、
前記第1の判定時間を用いて前記他の室内機との間における通信異常の発生の有無を判定する判定部と、を備え、
前記記憶部には、前記複数の室内機におけるソフトウェアの更新に必要な時間として予め定められている第2の判定時間が記憶され、
前記通信部が、前記他の室内機のうちいずれかの前記ソフトウェアの更新処理を実行する更新機からの更新開始の報知を受信した場合に、前記判定部は、前記第1の判定時間より長い前記第2の判定時間を用いて前記更新機の前記更新処理の異常の有無を判定することを特徴とする室内機の制御装置。
(2)前記第2の判定時間は、前記複数の室内機ごとに設定されていることを特徴とする上記(1)に記載の室内機の制御装置。
(3)前記第2の判定時間は、少なくとも一度の前記ソフトウェアの更新に必要な時間、前記更新処理が正常に実行されなかった場合に再び前記更新処理を実行する場合を含む、総更新回数を基に設定されることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の室内機の制御装置。
(4)前記判定部が、前記通信異常、或いは、前記更新処理の異常が生じたと判定した場合に、使用者に異常を報知する報知部を備えることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の室内機の制御装置。
(5)前記判定部が、前記通信異常、或いは、前記更新処理の異常が生じたと判定した場合に、室内機の運転を停止させる異常対応制御部を備えることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の室内機の制御装置。
(6)前記室内機の制御装置は、さらに前記ソフトウェアの更新処理を実行する更新部を備え、前記更新部は、前記第2の判定時間内に前記更新処理が完了しなかった場合であっても、継続して前記更新処理を実行することを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の室内機の制御装置。
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の室内機の制御装置と、
内部にファンを格納する筐体と、
前記ファンの回転により空気を外部に吹き出す吹出口と、
を備えることを特徴とする室内機。
(8)上記(7)に記載の室内機と、
複数の前記室内機に対して通信線で接続され、前記通信線を介して伝送される制御信号を送信して複数の前記室内機を制御するリモコンと、
室外に設置され、前記室内機との間で冷凍回路を構成する室外機と、
を備える空気調和システム。
(9)通信線で接続された複数の室内機を制御する室内機の制御方法であって、
前記通信線を介して他の室内機のうちいずれかのソフトウェアの更新処理を実行する更新機からの前記ソフトウェアの更新開始の報知を受信するステップと、
前記ソフトウェアの更新処理を実行する前記更新機に関して予め設定されている通信異常の発生の有無を判定する際に用いる第1の判定時間を、前記更新機における前記ソフトウェアの更新に必要な時間として各々予め定められている、前記第1の判定時間よりも長い時間となるように設定されている第2の判定時間に変更するステップと、
前記第2の判定時間を用いて前記更新機の前記更新処理の異常の有無を判定するステップと、
を備えることを特徴とする室内機の制御方法。
(10)前記通信異常、或いは、前記更新処理の異常が生じたと判定された後に、使用者に異常を報知するステップを備えることを特徴とする上記(9)に記載の室内機の制御方法。
(11)前記通信異常、或いは、前記更新処理の異常が生じたと判定された後に、前記複数の室内機の運転を停止させるステップを備えることを特徴とする上記(9)または(10)に記載の室内機の制御方法。
(12)前記第2の判定時間内に前記更新処理が完了しなかった場合であっても、継続して更新処理を実行するステップをさらに備えていることを特徴とする上記(9)ないし(11)のいずれかに記載の室内機の制御方法。
【符号の説明】
【0115】
1・・・通信部、2・・・空調制御部、3・・・ワイヤレス通信部、4・・・記憶部、5・・・判定部、6・・・更新部、7・・・報知部、8・・・異常対応制御部、11・・・通信部、12・・・空調制御部、14・・・記憶部、15・・・判定部、17・・・報知部、18・・・異常対応制御部、A・・・空気調和機、A1・・・第1の空気調和機、A2・・・第2の空気調和機、A3・・・第1の空気調和機、AE1・・・第1の室外機、AE2・・・第2の室外機、AE3・・・第1の室外機、AI1・・・第1の室内機、AI11・・・室内機制御装置、AI12・・・通信インターフェイス、AI2・・・第2の室内機、AI21・・・室内機制御装置、AI22・・・通信インターフェイス、AI3・・・第3の室内機、AI31・・・室内機制御装置、AI32・・・通信インターフェイス、L・・・通信線、R・・・リモコン、R1・・・リモコン制御装置、R2・・・通信インターフェイス、S・・・空気調和システム