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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129857
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】センサおよびセンサデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/28 20060101AFI20240920BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N27/28 301Z
G01N27/327 353Z
G01N27/416 338
G01N27/416 336Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039218
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜田 真史
(57)【要約】
【課題】測定中に試料が外部に漏れたり、誤って試料に触れたりすることを防ぐ。
【解決手段】本開示のセンサ10は、上方に開口し、液体試料LSを収容する収容部23を有するセンサ本体22と、収容部23を構成する底面23Aに設けられ、液体試料LS中の測定対象物を測定する複数の電極と、複数の電極にそれぞれ電気的に接続され、センサ本体22における収容部23とは異なる箇所に設けられた複数の電極端子と、複数の電極にそれぞれ対応して配置され、自身の内部空間ISが対応する電極の上に位置する複数の筒41と、収容部23を覆うようにして閉止する蓋40と、を備え、複数の筒41は、収容部23の底面23Aとの間に形成される隙間42をそれぞれ有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口し、液体試料を収容する収容部を有するセンサ本体と、
前記収容部を構成する底面に設けられ、前記液体試料中の測定対象物を測定する複数の電極と、
前記複数の電極にそれぞれ電気的に接続され、前記センサ本体における前記収容部とは異なる箇所に設けられた複数の電極端子と、
前記複数の電極にそれぞれ対応して配置され、自身の内部空間が対応する前記電極の上に位置する複数の筒と、
前記収容部を覆うようにして閉止する蓋と、を備え、
前記複数の筒は、前記収容部の前記底面との間に形成される隙間をそれぞれ有する、センサ。
【請求項2】
前記筒の内径は、前記電極の外径よりも大きい、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
隣り合う一対の前記筒の間において、一方の前記筒に形成された前記隙間と他方の前記筒に形成された前記隙間とは、互いに向かい合うように配されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記蓋は、前記収容部を閉止した状態で前記筒が前記底面に沿って移動することを抑制する抑制部を有する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記筒は、前記蓋が前記収容部を閉止することで前記収容部の底面または前記電極と前記蓋との間に挟まって固定される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
前記筒は、前記蓋に固定されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のセンサと、前記センサが取り付けられたデバイス本体と、を備えたセンサデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサおよびセンサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血液試料中のグルコースを定量することができるバイオセンサとして、特開2000-9679号公報(下記特許文献1)に記載のグルコースセンサが知られている。このグルコースセンサは、絶縁性の基板と、基板上に積層されたスペーサーと、スペーサー上に積層されたカバーと、を備える。スペーサーにはスリットが形成されており、スリットの一端部はスペーサーの内部に位置するとともに、スリットの他端部はスペーサーの外縁にて外部に開口する開口部とされている。カバーにおいてスリットの一端部に対応する位置には空気孔が形成されている。基板においてスリットの他端部に対応する位置には作用極および対極が形成されている。スリットのうち空気孔を除く空間はカバーによって閉じられており、このカバーによって閉じられた空間が試料供給路とされている。試料液供給路口となる開口部に試料液を接触させるだけの簡易操作で、試料液は容易にセンサ内部へ導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-9679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のセンサでは試料液供給路が外部に開放されているため、測定中に試料が外部に漏れたり、誤って試料に触れたりする可能性があった。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、測定中に試料が外部に漏れたり、誤って試料に触れたりすることを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のセンサは、上方に開口し、液体試料を収容する収容部を有するセンサ本体と、前記収容部を構成する底面に設けられ、前記液体試料中の測定対象物を測定する複数の電極と、前記複数の電極にそれぞれ電気的に接続され、前記センサ本体における前記収容部とは異なる箇所に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極にそれぞれ対応して配置され、自身の内部空間が対応する前記電極の上に位置する複数の筒と、前記収容部を覆うようにして閉止する蓋と、を備え、前記複数の筒は、前記収容部の前記底面との間に形成される隙間をそれぞれ有する、センサである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、測定中に試料が外部に漏れたり、誤って試料に触れたりすることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のセンサを示した平面図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、実施形態1のセンサデバイスを示した平面図である。
図4図4は、センサ本体に蓋を被せる前の状態を説明するための断面図である。
図5図5は、蓋が収容部を覆うようにして閉止した状態を説明するための断面図である。
図6図6は、図5の一部を拡大した断面図であって、筒の内外の液体試料が隙間を介して流通する様子を説明するための断面図である。
図7図7は、センサチップが傾いた直後の状態を説明するための断面図である。
図8図8は、実施形態2のセンサを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のセンサは、上方に開口し、液体試料を収容する収容部を有するセンサ本体と、前記収容部を構成する底面に設けられ、前記液体試料中の測定対象物を測定する複数の電極と、前記複数の電極にそれぞれ電気的に接続され、前記センサ本体における前記収容部とは異なる箇所に設けられた複数の電極端子と、前記複数の電極にそれぞれ対応して配置され、自身の内部空間が対応する前記電極の上に位置する複数の筒と、前記収容部を覆うようにして閉止する蓋と、を備え、前記複数の筒は、前記収容部の前記底面との間に形成される隙間をそれぞれ有する、センサである。
【0010】
液体試料中の測定対象物を測定するには、複数の筒の中に液体試料をそれぞれ注入し、蓋で収容部を覆うようにして閉止する。筒の中の液体試料は隙間を通って収容部の底面に流れ出すから、隣り合う一対の筒の内部に収容された液体試料同士は一対の隙間を介して互いに流通可能となる。このようにすれば、例えば隣り合う一対の電極間を流れる電流の電流値や電位差などを計測することで液体試料中の測定対象物の濃度などを測定できる。
【0011】
筒の内部に液体試料が収容されているから、センサ本体を傾けた際に、液体試料が筒の内部から隙間を通って収容部の底面に流出して電極が露出してしまうまでの時間を隙間の大きさによって適宜に設定できる。したがって、隙間の大きさを調整することで、センサ本体を傾けた場合に、すぐに電極が露出してしまい測定対象物を測定できなくなることを防ぐことができる。
【0012】
収容部が蓋によって閉止されているから、測定中に液体試料が外部に漏れたり、誤って液体試料に触れたりすることを防ぐことができる。
【0013】
(2)前記筒の内径は、前記電極の外径よりも大きいことが好ましい。
筒の内径が電極の外径よりも大きいから、電極の上に筒が配置されることで電極の有効面積が低下することを回避できる。したがって、電極全体を測定に使用することができ、電極からの出力が低下することを回避できる。
【0014】
(3)隣り合う一対の前記筒の間において、一方の前記筒に形成された前記隙間と他方の前記筒に形成された前記隙間とは、互いに向かい合うように配されていることが好ましい。
一対の電極が一対の隙間を介して直線的に並んで配置され、一対の電極間の距離が最短になるから、測定対象物の測定精度を高めることができる。
【0015】
(4)前記蓋は、前記収容部を閉止した状態で前記筒が前記底面に沿って移動することを抑制する抑制部を有することが好ましい。
抑制部によって筒が底面に沿って移動することを抑制できる。このような抑制部の例として、蓋の内面に突起を設けて筒が移動しないように突起が筒に係止するようにしたり、蓋の内面をシボ加工するなどして筒と蓋の内面との間で摩擦抵抗が大きくなるようにしたりすることが考えられる。
【0016】
(5)前記筒は、前記蓋が前記収容部を閉止することで前記収容部の底面または前記電極と前記蓋との間に挟まって固定されることが好ましい。
蓋が収容部を閉止するだけで筒が固定されるようになっているから、筒を固定するための構造を別途設けなくてもよい。
【0017】
(6)前記筒は、前記蓋に固定されていることが好ましい。
筒が蓋に固定されているから、筒を固定するための構造を収容部に設けなくてもよい。
【0018】
(7)本開示のセンサデバイスは、(1)から(6)のいずれかに記載のセンサと、前記センサが取り付けられたデバイス本体と、を備えたセンサデバイスとしてもよい。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
<実施形態1>
[センサ]
本開示の実施形態1に係るセンサ10およびセンサデバイス100の具体例を、図1から図7の図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
センサ10は、図1に示すように、横長のセンサチップ20と、センサチップ20が上面に載置される横長のトレイ30と、蓋40と、を備える。センサチップ20は、全体的には、図1および図2の左右方向にのびた板状をなしている。なお、本明細書において、図1および図2の左側を、センサチップ20の先端側と称し、図1および図2の右側をセンサチップ20の後端側と称する。
【0021】
[センサチップ]
センサチップ20は、主として、センサ本体22、作用極24、対極25、参照極26などを備えている。センサ本体22は、上方に開口した収容部23を有している。収容部23は、平面視で方形とされている。
【0022】
センサ本体22は、図2に示すように、3枚のセラミックグリーンシートが積層された状態で焼結したもの(セラミック基板)からなり、全体的には、板状をなしている。説明の便宜上、センサ本体22のうち、最も下側に配置されたセラミックグリーンシートが焼結した部分を、「第1層22A」と称し、その上に積層されたセラミックグリーンシートが焼結した部分を、「第2層22B」と称し、さらにその上に積層されたセラミックグリーンシート(つまり、最も上側に配置されたセラミックグリーンシート)が焼結した部分を、「第3層22C」と称する。
【0023】
センサ本体22に利用されるセラミックグリーンシートとしては、収容部23の表面(特に、底面23A)が親水性を示すものであれば、特に制限されず、公知のセラミックグリーンシートを利用できる。
【0024】
例えば、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化イットリウム(Y)等のセラミックス粉末に焼結助剤、バインダ(有機バインダ等)、可塑剤等を添加したものを溶剤を用いて混合し、得られたスラリー状の混合物を、ドクターブレード法等の公知の手法を用いて薄板状に形成したものを、セラミックグリーンシートとして利用してもよい。
【0025】
セラミックグリーンシートの厚みは、特に限定されず、例えば、0.1mm以上0.7mm以下に設定されてもよい。センサ本体22に使用される各セラミックグリーンシートの厚みは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。図2に示すセンサチップ20のセンサ本体22には、全て同じ厚みのセラミックグリーンシートが利用されている。
【0026】
[収容部]
収容部23は、液体試料LSである血液が入れられる箇所であり、センサチップ20の上面20A側に、凹状に窪むように形成されている。センサチップ20の上面20Aは、第3層22Cの上面からなる。収容部23は、平面視で先後方向にのびた矩形状の上面20Aのうち、先端側(図2の左側)に片寄るように配置されている。なお、後端側(図2の右側)には、後述する端子部が配置されている。
【0027】
収容部23は、底面23Aと、底面23Aの周りを取り囲むように配される壁面23Bと、を有する。底面23Aは、センサ本体22の第2層22Bの上面の一部からなり、平坦な平面状をなしている。センサ本体22の第3層22Cには、厚み方向に貫通する形で設けられた開口部22C1が形成されており、その開口部22C1から露出した第2層22Bの上面が、収容部23の底面23Aを構成している。開口部22C1は、図1に示すように、平面視で正方形状をなしている。
【0028】
壁面23Bは、底面23Aの周りを取り囲みつつ、センサ本体22の厚み方向にのびた形をしている。また、壁面23Bは、第3層22Cに形成された開口部22C1の枠状の端面からなる。
【0029】
収容部23は、底面23Aを平面視した際、図2に示すように、正方形状をなしている。つまり、底面23Aは、平面視で正方形状をなし、その周りを取り囲む壁面23Bも、正方形状をなすように配置されている。
【0030】
収容部23の表面(つまり、底面23Aおよび壁面23B)は、親水性である。本明細書において、「親水性」とは、水に対する接触角が90°未満の場合である。底面23Aおよび壁面23Bの接触角は、好ましくは60°以下であり、より好ましくは55°以下であり、さらに好ましくは50°以下である。底面23Aおよび壁面23Bが親水性であると、収容部23に血液等の液体試料LSを入れた際に、液体試料LSが収容部23内で平面状に広がりやすく、後述する作用極24等の電極に対して接触させやすい。
【0031】
収容部23の底面23Aには、作用極24、対極25、および参照極26が充填される円柱状の電極孔部22B1が形成されている。各電極孔部22B1は、センサ本体22の第2層22Bを厚み方向に貫通する形で設けられている。
【0032】
なお、本実施形態では、底面23Aを平面視した際、正方形状をなす収容部23を例示しているが、正方形状である必要はなく、正方形以外の多角形状をなす収容部や円形状をなす収容部でもよい。
【0033】
[作用極、対極、参照極]
作用極24、対極25、および参照極26は、いわゆる三極式電気化学セルを構成する。作用極24は、作用極24用の電極材料が電極孔部22B1に充填されたものからなる。作用極24は、センサ本体22の厚み方向(上下方向)にのびた円柱状をなしており、電極孔部22B1の上側(底面23A側)から上面24Aが露出している。上面24Aは、円形状であり、底面23Aと同一平面をなすように配置されている。作用極24用の電極材料としては、例えば、酵素等の抗体を表面上に添加したグラファイト等の導電性材料が利用される。
【0034】
対極25は、上下方向にのびた円柱状をなしており、電極孔部22B1の上側(底面23A側)から上面25Aが露出している。上面25Aは、円形状であり、底面23Aと同一平面をなすように配置されている。対極25用の電極材料としては、例えば、白金が利用される。
【0035】
参照極26は、上下方向にのびた円柱状をなしており、電極孔部22B1の上側(底面23A側)から上面26Aが露出している。上面26Aは、円形状であり、底面23Aと同一平面をなすように配置されている。参照極26用の電極材料としては、例えば、銀(Ag)/塩化銀(AgCl)が利用される。
【0036】
作用極24、対極25、および参照極26は、図1に示すように、収容部23の底面23Aにおいて、互いに間隔を保ちつつ、三角形をなすように配されている。つまり、作用極24、対極25、および参照極26は、仮想的に形成される三角形の各頂点に配されている。本実施形態の場合、最もセンサチップ20の先端側に、対極25が配置され、作用極24および参照極26が、対極25よりも後端側に配置されている。
【0037】
[第1導電路、第2導電路、第3導電路]
センサチップ20は、さらに、第1導電路27、第2導電路28、第3導電路29、第1端子部(作用極端子部)27A、第2端子部(対極端子部)28A、および第3端子部(参照極端子部)29Aを備えている。
【0038】
第1導電路27、第2導電路28、および第3導電路29は、互いに独立した状態で、センサチップ20のセンサ本体22の内部に形成されている。第1導電路27、第2導電路28、および第3導電路29は、図1に示すように、概ね先後方向にのびて形成されている。
【0039】
第1導電路27の一方の端部には、作用極24が接続され、他方の端部には、第1端子部27Aが接続される。第2導電路28の一方の端部には、対極25が接続され、他方の端部には、第2端子部28Aが接続される。第3導電路29の一方の端部には、参照極26が接続され、他方の端部には、第3端子部29Aが接続される。
【0040】
第1導電路27、第2導電路28、および第3導電路29は、それぞれ複数のビアと複数の層状(薄膜状)の配線部とが互いに電気的に接続されたものからなり、基本的な構成が共通している。そこで、ここでは第2導電路28を例に挙げて、第2導電路28を構成するビアや配線パターンについて説明する。
【0041】
第2導電路28は、第1配線部28B、第1ビア28C、第2配線部28D、および第2ビア28Eを備えている。
【0042】
第1配線部28Bは、センサ本体22の第1層22Aと第2層22Bとの間で挟まれるように形成され、先後方向にのびた層状の導電部材からなる。第1配線部28Bの一方の端部の上面に、電極孔部22B1の下側から露出した対極25の部分が接続される。また、第1配線部28Bの他方の端部の上面に、第1ビア28Cの下端が接続される。
【0043】
第1ビア28Cは、第2層22Bを厚み方向に貫通する形で設けられた円柱状の導電部材からなる。第1ビア28Cの下端は、上記のように、第1配線部28Bに接続され、第1ビア28Cの上端は、第2配線部28Dに接続される。
【0044】
第2配線部28Dは、センサ本体22の第2層22Bと第3層22Cとの間で挟まれるように形成され、先後方向にのびた層状の導電部材からなる。第2配線部28Dの一方の端部の下面に、第1ビア28Cの上端が接続され、第2配線部28Dの他方の端部の上面に、第2ビア28Eの下端が接続される。
【0045】
第2ビア28Eは、第3層22Cを厚み方向に貫通する形で設けられた円柱状の導電部材からなる。第2ビア28Eの下端は、第2配線部28Dに接続され、第2ビア28Eの上端は、第2端子部28Aに接続される。
【0046】
第2端子部28Aは、図1に示すように、平面視で矩形状をなした層状の導電部材からなり、第3層22Cの上面(つまり、センサチップ20の上面20A)に形成されている。第2端子部28Aは、図1に示すように、上面20Aのうち、後端側の部分に形成されている。なお、第2端子部28Aは、その長手方向がセンサチップ20の先後方向と一致し、かつ先後方向に直交する方向(つまり、図2の紙面直交方向)において、略中央に配されるように、センサチップ20の上面20Aに形成される。
【0047】
第1端子部27Aおよび第3端子部29Aは、それぞれ平面視で矩形状をなした層状の導電部材からなり、センサチップ20の上面20Aにおいて、先後方向に第2端子部28Aと同じ位置で、かつ第2端子部28Aの両側に並んで形成されている。第1端子部27Aおよび第3端子部29Aは、それぞれ長手方向がセンサチップ20の先後方向と一致し、かつ先後方向に直交する方向において、第2端子部28Aとともに並列に配置されるようにして、センサチップ20の上面20Aに形成される。
【0048】
[センサデバイス]
液体試料LS中の測定対象物を測定するには、図3に示すセンサデバイス100が用いられる。センサデバイス100は、センサ10と、デバイス本体50と、センサ10とデバイス本体50を電気的に接続する配線60と、を備えている。なお、図示しないものの、センサ10のセンサチップ20は、デバイス本体50に対してトレイ30を介して取り付けられている。
【0049】
デバイス本体50は、例えば作用極24の電位が参照極26に対して一定となるように電圧を印加し、作用極24と対極25との間を流れる電流の電流値(第1端子部27Aと第2端子部28Aとの間を流れる電流の電流値)を検出する。デバイス本体としては、例えばポテンシオスタットが用いられる。
【0050】
[蓋]
蓋40は、図4に示すように、複数の筒41を備えている。蓋40は、図1に示すように、収容部23よりも一回り大きい平面視方形状の板状部材からなる。複数の筒41は、蓋40の外面のうち、収容部23と対向する対向面40Aに固定され、対向面40Aから下方に突出して形成されている。蓋40がセンサチップ20に装着されると、図5に示すように、収容部23が蓋40に覆われた状態となり、第3層22Cの開口部22C1が蓋40によって閉止される。このように収容部23が蓋40によって閉止されているから、測定中に液体試料LSが外部に漏れたり、誤って液体試料LSに触れたりすることを防ぐことができる。
【0051】
複数の筒41は、作用極24、対極25、および参照極26にそれぞれ対応して配置されている。作用極24に対応する筒41の内部空間ISは作用極24の上に位置し、対極25に対応する筒41の内部空間ISは対極25の上に位置し、参照極26に対応する筒41の内部空間ISは参照極26の上に位置している。
【0052】
図6は、図5の作用極24とこれに対応する筒41を拡大して示す断面図であり、対極25と参照極26についても作用極24と同様であるため、作用極24を代表として説明する。筒41は、収容部23の底面23Aとの間に形成される隙間42を有している。液体試料LSは筒41の内部空間ISに注入してもよいし、筒41の外部空間OSに注入してもよい。内部空間ISに注入された液体試料LSは隙間42を通って外部空間OSに流出し、外部空間OSに注入された液体試料LSは隙間42を通って内部空間ISに流出する。内部空間ISの液体試料LSと外部空間OSの液体試料LSとは、隙間42を介して流通しているから、内部空間ISと外部空間OSとで液体試料LSの液面の高さは最終的に等しくなる。
【0053】
筒41の内径D1は、作用極24の外径D2よりも大きい。筒41と作用極24は、平面視で同軸に配置されている。このため、作用極24は、平面視で筒41の内周面の内側に収容されている。したがって、作用極24の一部が筒41によって隠れてしまうことを回避でき、作用極24の全体を有効に利用できる。
【0054】
蓋40の対向面40Aには、移動抑制突部43が設けられている。移動抑制突部43は、収容部23の壁面23Bに沿って形成されている。移動抑制突部43は、壁面23Bの上端部に側方から当接可能とされている。移動抑制突部43が壁面23Bの上端部に当接することで蓋40が側方に移動することが抑制され、筒41が底面23Aに沿って移動することが抑制される。
【0055】
隣り合う一対の筒41の内部空間ISに収容された液体試料LS同士は一対の隙間42を介して互いに流通可能である。したがって、作用極24と対極25との間を流れる電流の電流値を電流検出部52で計測することで液体試料LS中の測定対象物の濃度を測定できる。
【0056】
[センサの製造方法]
以上のような構成のセンサ10は、例えば、以下の方法で製造される。先ず、3枚のセラミックグリーンシートを用意し、それぞれ、第1層22A、第2層22B、および第3層22Cを形成するための加工が施される。例えば、第1層22A用のセラミックグリーンシートには、第2導電路28の第1配線部28B等を形成するためのメタライズペーストの印刷等が施される。また、第2層22B用のセラミックグリーンシートには、電極孔部22B1等の形成(孔空け)、第2導電路28の第1ビア28C等を形成するための孔空け及びメタライズペーストの充填、第2導電路28の第2配線部28D等を形成するためのメタライズペーストの印刷等が施される。また、第3層22C用のセラミックグリーンシートには、開口部22C1を形成するための孔空け、第2導電路28の第2ビア28E等を形成するための孔空け及びメタライズペーストの充填、第1端子部27A、第2端子部28A等を形成するためのメタライズペーストの印刷等が施される。
【0057】
そしてこれらのセラミックグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックグリーンシートの積層体が得られる。得られた積層体を焼成し、各セラミックグリーンシート等を焼結させることによって、センサチップ20から作用極24、対極25、および参照極26を除いた、セラミックの積層体が得られる。最後に各電極孔部22B1にそれぞれ作用極24用、対極25用、および参照極26用の電極材料を充填し、150℃の温度条件で乾燥させることでセンサチップ20が得られる。センサチップ20をトレイ30の上に固定することでセンサ10が完成する。
【0058】
[センサによる薬物測定方法]
センサ10は、測定対象物である薬物の濃度を測定する際、収容部23内に所定量の血液(液体試料LS)が入れられた後、蓋40によって収容部23が覆われて閉止される。センサ10は、収容部23の底面23Aが略水平となるように配置される。収容部23内に入れられる血液(液体試料LS)の分量は、例えば、底面23Aに配置された作用極24の上面24A、対極25の上面25A、および参照極26の上面26Aの全てが血液(液体試料LS)によって十分に覆われ、かつ収容部23から血液(液体試料LS)が溢れないように設定される。
【0059】
センサ10の収容部23内に所定量の血液(液体試料LS)が入れられた状態において、参照極26と作用極24との間に、例えば作用極24の電位が参照極26に対して一定となるように電圧を印加し(つまり、第3端子部29Aと第1端子部27Aとの間に所定の電圧を印加し)、その電圧を印加した状態における作用極24と対極25との間を流れる電流の電流値(つまり、第1端子部27Aと第2端子部28Aとの間を流れる電流の電流値)を検出することにより、血液(液体試料LS)中の薬物(測定対象物)の濃度を測定することができる。
【0060】
図7は、測定の途中でセンサ10が傾いた直後の状態を示している。この場合、一番右側の筒41では、内部空間ISの液体試料LSの液面が外部空間OSの液体試料LSの液面よりも高くなるため、内部空間ISの液体試料LSは、隙間42を通って外部空間OSに流出することになる。しかしながら、隙間42が小さければその分だけ液体試料LSの流出速度は遅くなるため、内部空間ISの液体試料LSがすぐに流出して、参照極26が露出して測定不能になることを回避できる。この後、センサ10の傾きに気付いたオペレータが水平姿勢に戻すことで、内部空間ISの液体試料LSの流出を停止させることができ、測定が中断することを回避できる。
【0061】
[実施形態1の作用効果]
本開示のセンサ10は、上方に開口し、液体試料LSを収容する収容部23を有するセンサ本体22と、収容部23を構成する底面23Aに設けられ、液体試料LS中の測定対象物を測定する複数の電極(作用極24、対極25、および参照極26)と、複数の電極にそれぞれ電気的に接続され、センサ本体22における収容部23とは異なる箇所に設けられた複数の電極端子(第1端子部27A、第2端子部28A、および第3端子部29A)と、複数の電極にそれぞれ対応して配置され、自身の内部空間ISが対応する電極の上に位置する複数の筒41と、収容部23を覆うようにして閉止する蓋40と、を備え、複数の筒41は、収容部23の底面23Aとの間に形成される隙間42をそれぞれ有する、センサ10である。
【0062】
液体試料LS中の測定対象物を測定するには、複数の筒41の中に液体試料LSをそれぞれ注入し、蓋40で収容部23を覆うようにして閉止する。筒41の中の液体試料LSは隙間42を通って収容部23の底面23Aに流れ出すから、隣り合う一対の筒41の内部に収容された液体試料LS同士は一対の隙間42を介して互いに流通可能となる。このようにすれば、例えば作用極24と対極25との間を流れる電流の電流値や電位差などを計測することで液体試料LS中の測定対象物の濃度などを測定できる。
【0063】
筒41の内部に液体試料LSが収容されているから、センサ本体22を傾けた際に、液体試料LSが筒41の内部から隙間42を通って収容部23の底面23Aに流出して電極が露出してしまうまでの時間を隙間42の大きさによって適宜に設定できる。したがって、隙間42の大きさを調整することで、センサ本体22を傾けた場合に、すぐに電極が露出してしまい測定対象物を測定できなくなることを防ぐことができる。
【0064】
収容部23が蓋40によって閉止されているから、測定中に液体試料LSが外部に漏れたり、誤って液体試料LSに触れたりすることを防ぐことができる。
【0065】
筒41の内径は、電極(作用極24、対極25、および参照極26)の外径よりも大きいことが好ましい。
筒41の内径D1が電極の外径D2よりも大きいから、電極の上に筒41が配置されることで電極の有効面積が低下することを回避できる。したがって、電極全体を測定に使用することができ、電極からの出力が低下することを回避できる。
【0066】
隣り合う一対の筒41の間において、一方の筒41に形成された隙間42と他方の筒41に形成された隙間42とは、互いに向かい合うように配されていることが好ましい。
一対の電極が一対の隙間42を介して直線的に並んで配置され、一対の電極間の距離が最短になるから、測定対象物の測定精度を高めることができる。
【0067】
蓋40は、収容部23を閉止した状態で筒41が底面23Aに沿って移動することを抑制する移動抑制突部43を有することが好ましい。
移動抑制突部43によって筒41が底面23Aに沿って移動することを抑制できる。
【0068】
筒41は、蓋40に固定されていることが好ましい。
筒41が蓋40に固定されているから、筒41を固定するための構造を収容部23に設けなくてもよい。
【0069】
本開示のセンサデバイス100は、センサ10と、センサ10が取り付けられたデバイス本体50と、を備えたセンサデバイス100としてもよい。
【0070】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2に係るセンサ110の具体例を、図8を参照しつつ説明する。実施形態1のセンサ10では筒41が蓋40に固定されていたが、実施形態2のセンサ110では筒70が収容部23の底面23Aと蓋80との間に挟まって固定される点で両者は相違している。実施形態1のセンサ10では隙間42が筒41の全周に亘って形成されていたが、実施形態2のセンサ110では隙間71が筒70の一部に形成されている点で両者は相違している。
【0071】
蓋80における収容部23の底面23Aと対向する対向面80Aには、複数の移動抑制突部81が形成されている。複数の移動抑制突部81は、複数の電極(作用極24、対極25、および参照極26)にそれぞれ対応して配置されている。移動抑制突部81は、筒70の内周面に沿って形成され、全体として円筒状をなしている。
【0072】
隣り合う一対の筒70の間において、一方の筒70に形成された隙間71と他方の筒70に形成された隙間71とは、互いに向かい合うように配されている。よって、隣り合う一対の隙間71が最短距離で配置されることになり、隣り合う一対の筒70の内部空間ISの液体試料LS同士が流通しやすくなる。
【0073】
各筒70を対応する各電極(作用極24、対極25、および参照極26)の位置に載置した状態で蓋80がセンサチップ20に装着されると、各移動抑制突部81が各筒70の上端開口部内に嵌合する。また、筒70は、蓋80が収容部23を閉止することで収容部23の底面23Aと蓋80の対向面80Aとの間に挟まって固定されている。したがって、蓋80が収容部23を閉止するだけで筒70が固定され、筒70を固定するための構造を別途設けなくてもよい。
【0074】
また、本実施形態では筒70は収容部23の底面23Aに予め固定されているか、筒は底面23Aに一体に形成されているものでもよい。その場合、蓋80が側方に移動しようとすると、各移動抑制突部81が各筒70の内周面に当接することで蓋80の移動が抑制されることになる。
【0075】
<他の実施形態>
(1)実施形態1と2では筒の内径が電極(作用極、対極、参照極)の外径よりも大きいものを例示したが、筒の内径が電極の外径と同じか、これよりも小さいものでもよい。
【0076】
(2)実施形態2では隣り合う一対の筒の間において、一方の筒に形成された隙間と他方の筒に形成された隙間とは、互いに向かい合うように配されているが、各隙間は異なる方向を向くように配されていてもよい。
【0077】
(3)実施形態1と2では抑制部として移動抑制突部を例示したが、筒の上下両端部にシボ加工を施すなどしてセンサ本体の上面との間、もしくは蓋の対向面との間に摩擦抵抗を発生させることで抑制部を構成してもよい。
【0078】
(4)センサの形状は、板状に限られず、例えば、円盤状、直方体状等であってもよい。
【0079】
(5)センサによって検出される測定対象物は、液体試料中の成分を検出するものであればよく、薬物以外に、他の化学物質(例えば、生理活性物質)であってもよい。また、液体は、血液以外に、唾液、水であってもよい。センサは、血液や唾液中に含まれる各種の成分や薬物を検出する他、海水、河川などの水中に含まれる成分を検出してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10、110:センサ
20:センサチップ 20A:上面
22:センサ本体 22A:第1層 22B:第2層 22B1:電極孔部 22C:第3層 22C1:開口部
23:収容部 23A:底面 23B:壁面
24:作用極(電極) 24A:上面
25:対極(電極) 25A:上面
26:参照極(電極) 26A:上面
27:第1導電路 27A:第1端子部(電極端子)
28:第2導電路 28A:第2端子部(電極端子) 28B:第1配線部 28C:第1ビア 28D:第2配線部 28E:第2ビア
29:第3導電路 29A:第3端子部(電極端子)
30:トレイ
40:蓋 40A:対向面
41:筒
42:隙間
43:移動抑制突部(抑制部)
50:デバイス本体
51:電圧印加部
52:電流検出部
60:配線
70:筒 71:隙間
80:蓋
81:移動抑制突部(抑制部)
100:センサデバイス
D1:筒の内径 D2:作用極の外径
LS:液体試料
IS:内部空間
OS:外部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8