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特開2024-129862上衣及びこれを備えた送風装置付き上衣
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129862
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】上衣及びこれを備えた送風装置付き上衣
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20240920BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20240920BHJP
   A41D 27/06 20060101ALI20240920BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20240920BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D27/00 Z
A41D27/06 Z
A41D27/28 B
A41D1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039224
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000128038
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 欣也
【テーマコード(参考)】
3B011
3B030
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC03
3B011AC18
3B011AC21
3B030AA02
3B030AA04
3B030AA05
3B030AB08
3B035AA02
3B035AA24
3B035AB03
3B035AB09
3B035AB11
3B035AC19
3B035AC20
3B035AC22
3B035AC24
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC02
3B211AC03
3B211AC18
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】裾側から空気を漏れ難くすることを可能としながらも、着心地を向上し得る上衣及びこれを備えた送風装置付き上衣を提供する。
【解決手段】外気を取り込む送風装置3が取り付けられる上衣2であって、裾部17に沿うように下端側となる幅方向第1端部18aが裏面側に固定され、前記送風装置が駆動されれば、幅方向第2端部18b側の自由端側が前記裏面側から離間するように着用者側に変位して当接対象Pに当接する帯状シート部材18を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を取り込む送風装置が取り付けられる上衣であって、
裾部に沿うように下端側となる幅方向第1端部が裏面側に固定され、前記送風装置が駆動されれば、幅方向第2端部側の自由端側が前記裏面側から離間するように着用者側に変位して当接対象に当接する帯状シート部材を備えていることを特徴とする上衣。
【請求項2】
請求項1において、
当該上衣の前身頃は、左前身頃と右前身頃とに分離されており、
前記帯状シート部材の長手方向の各端部は、前記左前身頃の前開き側端部の裏面側及び前記右前身頃の前開き側端部の裏面側にそれぞれ固定されていることを特徴とする上衣。
【請求項3】
請求項1において、
当該上衣の前身頃は、左前身頃と右前身頃とに分離され、前記左前身頃及び前記右前身頃の裏面側においてそれぞれの前開き側端部に沿うように幅方向第1端部が固定され、前記送風装置が駆動されれば、幅方向第2端部側の自由端側が前記裏面側から着用者側に変位して当接対象に当接する前側帯状シート部材を更に備えており、
前記裾部の帯状シート部材の長手方向の各端部は、前記左前身頃及び前記右前身頃の前記前側帯状シート部材の裾側端部に連結されるように固定されていることを特徴とする上衣。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の上衣と、該上衣の取付穴に取り付けられる送風装置と、を備えていることを特徴とする送風装置付き上衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、上衣及びこれを備えた送風装置付き上衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外気を取り込む送風装置が取り付けられる上衣が知られている。このような上衣においては、裾部から多くの空気が排出されれば、襟元側等に空気が流れ難くなるため、裾部から空気を漏れ難くすることが望まれる。
例えば、下記特許文献1には、服本体の内側に、上端部が服本体の腰部に縫製され、下端部にゴム部材が設けられた帯状部材を設けた冷却衣服が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-19509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された冷却衣服では、帯状部材の下端部に設けられたゴム部材によって身体が締め付けられて空気の排出路を閉じる構成であるため、締付により着心地が悪化する傾向がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、裾側から空気を漏れ難くすることを可能としながらも、着心地を向上し得る上衣及びこれを備えた送風装置付き上衣を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示に係る上衣は、外気を取り込む送風装置が取り付けられる上衣であって、裾部に沿うように下端側となる幅方向第1端部が裏面側に固定され、前記送風装置が駆動されれば、幅方向第2端部側の自由端側が前記裏面側から離間するように着用者側に変位して当接対象に当接する帯状シート部材を備えていることを特徴とする。
【0007】
前記目的を達成するために、本開示に係る送風装置付き上衣は、本開示に係る上衣と、該上衣の取付穴に取り付けられる送風装置と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る上衣及びこれを備えた送風装置付き上衣は、上述のような構成としたことで、裾側から空気を漏れ難くすることを可能としながらも、着心地を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)、(b)は、本開示の一実施形態に係る上衣の一例及びこれを備えた送風装置付き上衣の一例を模式的に示す概略正面図である。
図2】(a)は、同上衣の概略縦断面図、(b)は、同上衣の概略横断面図である。
図3】(a)、(b)は、本開示の他の実施形態に係る上衣の一例及びこれを備えた送風装置付き上衣の一例を模式的に示し、(a)は、概略正面図、(b)は、概略横断面図である。
図4】(a)、(b)は、本開示の更に他の実施形態に係る上衣の一例及びこれを備えた送風装置付き上衣の一例を模式的に示し、(a)は、概略正面図、(b)は、概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
以下の各実施形態では、各実施形態に係る上衣(送風装置付き上衣)を着用した着用者を基準として上下方向等の方向を説明する。
【0011】
図1及び図2は、第1実施形態に係る上衣の一例及びこれを備えた送風装置付き上衣の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る上衣2は、図1(b)及び図2(a)に示すように、外気を取り込む送風装置3が取り付けられる上衣である。本実施形態に係る送風装置付き上衣1は、上衣2と、送風装置3と、を備えている。このような送風装置付き上衣1(または送風装置3が取り付けられた上衣2)においては、送風装置3を駆動することで送風装置付き上衣1内に外気を取り込むことができ、着用者の身体を冷却することができる。
【0012】
上衣2は、裾部17に沿うように下端側となる幅方向第1端部18aが裏面側に固定された帯状シート部材(裾側帯状シート部材)18を備えている。裾側帯状シート部材18は、送風装置3が駆動されれば、幅方向第2端部18b側の自由端側が裏面側から離間するように着用者側に変位して当接対象Pに当接する構成とされている。このような構成とすれば、送風装置3が駆動されれば、裾側帯状シート部材18の自由端側となる第2端部18bが当接対象Pに当接し、この裾側帯状シート部材18によって気流をせき止めることができ、これにより、裾側から空気を漏れ難くすることができる。このように裾側帯状シート部材18が裾側の空気漏れ抑制手段として機能するので、裾部にゴム部材や紐部材等の絞り部材を空気漏れ抑制手段として設ける必要がなく、着心地を向上させることができる。つまり、裾部における絞り部材による締め付けがなく、着心地を向上させることができる。また、裾部17の外観を絞られていないストレート形状にすることも可能となる。
【0013】
本実施形態では、上衣2の前身頃10は、図1(a)、(b)に示すように、左前身頃10Aと右前身頃10Bとに分離されている。つまり、上衣2は、前開き型である。この上衣2は、図1(b)及び図2(a)、(b)に示すように、左前身頃10A及び右前身頃10Bの裏面側においてそれぞれの前開き側端部11A,11Bに沿うように幅方向第1端部14a,14aが固定された帯状シート部材(前側帯状シート部材)14,14を備えている。前側帯状シート部材14は、送風装置3が駆動されれば、幅方向第2端部14b側の自由端側が裏面側から着用者側に変位して当接対象Pに当接する構成とされている。このような構成とすれば、送風装置3が駆動されれば、左前身頃10A及び右前身頃10Bのそれぞれの前側帯状シート部材14,14の自由端側となる第2端部14b,14bが当接対象Pに当接し、これらによって気流をせき止めることができ、これにより、前開き側から空気を漏れ難くすることができる。
【0014】
また、これら前側帯状シート部材14,14が前開き側の空気漏れ抑制手段として機能するので、空気漏れ抑制手段として前部を開閉するファスナーを設ける必要がなく、前面側のデザインの自由度を向上させることができる。これにより、後述するように、例えば、前面側の開閉部を、ファスナーに代えて、ボタン等の留め具10bとしたり、左前身頃10A及び右前身頃10Bの前開き側端部11A,11B間に隙間を設けた状態で閉めるサイズ調整可能なベルト部21,22に設けられた連結具24としたりすることもできる。更には、このような前面側の開閉部を設けていない構成とすることも可能となる。また、両側の前側帯状シート部材14,14間を、例えば、安全帯のランヤードの引き出し部とすることもでき、上衣2に引出穴を設ける必要性がなく、ランヤードの上衣2に対する可動域を効果的に大きくすることもできる。前側帯状シート部材14及び裾側帯状シート部材18の具体的構成の一例については後述する。
【0015】
本実施形態では、長袖の上衣(上半身用衣服)2を例示している。
この上衣2は、柔軟で通気性の低い(または通気性の無い)綿やポリエステル等の適宜の素材から形成されていてもよい。
この上衣2は、図1(a)、(b)に示すように、前身頃10を構成する左前身頃10A及び右前身頃10Bと、後身頃12と、襟部19と、左右の袖部20,20と、を備えている。前身頃10と後身頃12とは縫合等によって接合され、襟部19及び左右の袖部20,20は、前身頃10及び後身頃12に縫合等によって接合されていてもよい。
【0016】
この上衣2には、送風装置3が取り付けられる取付穴13が設けられている。
本実施形態では、取付穴13は、後身頃12に設けられている。より具体的には、後身頃12に2つの取付穴13,13が設けられている。これら取付穴13,13は、後身頃12を貫通するように設けられている。図例では、これら取付穴13,13は、後身頃12を厚さ方向に見て(貫通方向に見て)略真円形状とされている。これら取付穴13,13は、互いに同径状とされている。
これら取付穴13,13は、上下方向で同高さとなるように、かつ互いに左右方向に離間した位置となるように設けられている。より具体的には、これら取付穴13,13は、後身頃12の左右方向における中心を通る中心線を対称軸として左右対称となる位置に設けられている。
【0017】
これら取付穴13,13を設ける高さ位置(上下方向の位置)、つまり、後記する送風装置3,3を取り付ける高さ位置は、当該上衣2(送風装置付き上衣1)を着用する着用者の好みや作業内容、作業姿勢等に応じて適宜の高さ位置としてもよい。図例では、これら取付穴13,13は、上下方向で後身頃12の下側部位となる腰部に近い高さ位置に設けられた例を示している。このような位置に代えて、これら取付穴13,13は、後身頃12の上下方向中央部位や上側部位に位置するように設けられていてもよい。
上衣2(後身頃12)の取付穴13,13の周囲には、取付穴13,13の孔周縁部を補強する適宜の補強シートが設けられていてもよい。このような補強シートは、取付穴13,13を囲む円環板状とされていてもよく、取付穴13,13に応じた孔が形成された方形板状とされていてもよい。これら補強シートは、上衣2(後身頃12)を構成する生地よりも高剛性で変形し難い硬質合成樹脂シート等でもよい。これら補強シートは、後身頃12の裏面(着用者側に向く面、内面)に沿うように固定されていてもよく、後身頃12を構成する表地と裏地との間等に内包されていてもよい。
【0018】
これら取付穴13,13のそれぞれに取り付けられる送風装置3,3は、互いに同様の構成であるので、以下では、一方の送風装置3を例にとって説明する。
送風装置3は、ファンケースを構成する筒状部4内に羽根やモータ等の駆動部を収容した構成とされている。この送風装置3は、軸流ファンでもよい。筒状部4は、薄型の略円筒形状とされている。この筒状部4の軸方向一方側となる外側(着用者とは異なる側となる上衣2の表面側)には、外気を吸い込む吸込口が設けられ、筒状部4の軸方向他方側となる内側(上衣2の裏面側)には、上衣2内に外気を吹き出す吹出口が設けられている。この筒状部4の吸込口及び吹出口には、適宜の線状や格子状のガード部が設けられている。
【0019】
この送風装置3の筒状部4の表面側となる吸込口側周縁部には、径方向外側に向けて全周に亘って突出する鍔状部5が設けられている。この鍔状部5の外径は、取付穴13の内径よりも大とされている。
送風装置3の筒状部4には、図示省略しているが、リング状部材が外嵌状に取り付けられる。このリング状部材は、内径が筒状部4の外径に応じた径とされたリング状とされている。このリング状部材と鍔状部5とによって取付穴13の周縁部を挟むように保持する構成とされている。筒状部4及びリング状部材には、互いに着脱可能に係止する適宜の係止部が設けられている。このような係止部としては、係止凹部とこれに係脱自在に係止する係止爪とから構成されていてもよく、雌ねじ部とこれにねじ合わされる雄ねじ部とから構成されていてもよく、その他、種々の構成とされていてもよい。
【0020】
送風装置3には、当該送風装置3に駆動電源を供給する電源コードの一端が接続される適宜の接続部が設けられている。電源コードの他端は、電源部を構成する電源装置に接続されている。このような電源装置としては、乾電池等を交換可能に収容する構成とされていてもよく、好ましくは、充電可能な二次電池(蓄電池)を内蔵した構成とされていてもよい。この場合は、電源装置に、二次電池を充電する際に商用電源(外部電源)等に接続される適宜の接続部が設けられていてもよい。この電源装置には、送風装置3をON(起動)/OFF(停止)する際に操作される操作部や、送風装置3の風量を調整(変更)する際に操作される風量調整操作部が設けられていてもよい。また、電源装置には、送風装置3の風量の強弱段階や稼働状況、二次電池の残量の目安等を表示する表示部が設けられていてもよい。
上衣2の適所に、この電源装置を収容する収容部や電源コードの途中部位を保持する保持部等が設けられていてもよい。
【0021】
左前身頃10A及び右前身頃10Bの前開き側端部(前合わせ部分)11A,11Bのうちの一方には、前開き側端部11Bに沿って間隔を空けて複数の留め具10bが設けられ、他方には、これら複数の留め具10bがそれぞれに留められる複数の被留部10aが設けられている。このような構成とすれば、前開き側を、ファスナーではなくボタン等の留め具10bによって閉じることができる。また、このようなファスナーと比べて空気が漏れ易くなる留め具10bとした場合にも、両側の前側帯状シート部材14,14によって前開き側から空気を漏れ難くすることができる。また、留め具10bを設けていない構成と比べて、前開き側が過度に開くようなことを抑制することができる。
図例では、左前身頃10A及び右前身頃10Bの前開き側端部11A,11Bのうちの一方としての右前身頃10Bの前開き側端部11Bに留め具10bを設け、他方としての左前身頃10Aの前開き側端部11Aに被留部10aを設けた例を示している。
【0022】
右前身頃10Bの前開き側端部11Bには、留め具10bを構成する複数(図例では5つ)のボタンが間隔を空けて設けられている。左前身頃10Aの前開き側端部11Aには、被留部10aを構成する複数(図例では5つ)のボタン穴が間隔を空けて設けられている。これら留め具10b及び被留部10aを設ける個数や配置等は、図例のような個数や配置に限られない。
留め具10b及び被留部10aとしては、図例のようなボタン及びボタン穴に限られず、例えば、スナップボタン(ドットボタン)の上型及び下型でもよく、フック及びフック掛け等でもよい。
【0023】
左右の前側帯状シート部材14,14は、左前身頃10A及び右前身頃10Bの前開き側端部11A,11Bに沿って長尺状とされている。これら前側帯状シート部材14,14は、左右の前開き側端部11A,11Bの長手方向(着用者の身長方向)の略全体に亘って設けられている。これら前側帯状シート部材14,14は、左前身頃10A及び右前身頃10Bと同様の柔軟で通気性の低い(または通気性の無い)適宜の布材等から形成されていてもよく、適宜の合成樹脂製シート等でもよい。また、これら前側帯状シート部材14,14の第2端部14b,14bの当接対象Pに当接する部位に、摩擦抵抗を大とする高摩擦材を設けた構成としてもよく、摩擦抵抗が大となるように適宜の表面処理が施されていてもよい。
【0024】
これら前側帯状シート部材14,14は、左右の前開き側端部11A,11Bの裏面側に固定された第1端部14a,14aを支点とし、フラップ状に変位可能とされている。これら前側帯状シート部材14,14の第1端部14a,14aは、左右の前開き側端部11A,11Bの裏面側やいわゆる見返し部分等に、縫合や接着剤、テープ等によって接合されていてもよい。これら前側帯状シート部材14,14は、左右の前開き側端部11A,11Bの裏面側に設けられた見返し部分に一連状に形成、つまり、見返し部分を幅広として構成されていてもよい。
【0025】
これら前側帯状シート部材14,14は、着用者の胴部の周方向が幅方向となる帯状とされている。これら前側帯状シート部材14,14の幅寸法(変位可能とされた部位の幅寸法)は、例えば、50mm~250mm程度でもよく、100mm~200mm程度でもよい。図例では、前側帯状シート部材14,14は、その全長に亘って幅寸法が略均一とされた例を示しているが、このような態様に限られない。前側帯状シート部材14,14は、例えば、上端側から下端側に向かうに従い幅寸法が大とされていてもよく、または、下端側から上端側に向かうに従い幅寸法が大とされていてもよい。更には、前側帯状シート部材14,14は、例えば、長手方向途中部位に幅寸法が小とされた部位や幅寸法が大とされた部位が設けられていてもよい。
【0026】
本実施形態では、これら前側帯状シート部材14,14は、襟部近傍部位16,16と襟部近傍部位16,16よりも下方側の本体部位15,15とに少なくとも自由端側となる第2端部14b,14b側が分離されている。これらの襟部近傍部位16,16は、それぞれの第2端部14b,14b側の変位を可能とする状態と第2端部14b,14b側の変位を抑制する状態とに切り替え可能とされている。このような構成とすれば、襟部近傍部位16,16の第2端部14b,14b側の変位を抑制した状態で送風装置3を駆動すれば、首前側から空気が漏れ易くなり、顔に空気を効果的に当てることができる。一方、顔側に空気を向かわせたくない場合には、襟部近傍部位16,16の第2端部14b,14b側の変位を可能とする状態とすれば、本体部位15,15同様、襟部近傍部位16,16によって気流をせき止めることができ、首前側から空気を漏れ難くすることもできる。
【0027】
襟部近傍部位16,16は、前側帯状シート部材14,14の上端から長手方向途中部位までとされている。これら襟部近傍部位16,16の前側帯状シート部材14,14の長手方向に沿う寸法は、上記のように首前側からの空気を漏れ易くする観点等から適宜の寸法としてもよく、例えば、50mm~150mm程度としてもよい。
襟部近傍部位16,16と本体部位15,15とは、完全に分離していてもよく、図例のように第1端部14a,14a側部位を除く第2端部14b,14b側が分離していてもよい。これら襟部近傍部位16,16と本体部位15,15とは、幅方向で1/2以上の部位が分離していてもよい。前側帯状シート部材14,14の上端となる襟部近傍部位16,16の上端は、各前開き側端部11A,11Bの裏面側に縫合等によって固定されていてもよく、または、各前開き側端部11A,11Bの裏面側に対して着脱自在とされていてもよく、更には、各前開き側端部11A,11Bの裏面側から分離していてもよい。
【0028】
本実施形態では、襟部近傍部位16,16の第2端部14b,14b側の変位を可能とする状態と変位を抑制する状態とに切り替え可能とする手段として、襟部近傍部位16,16の第2端部14b,14b側を前開き側端部11A,11Bの裏面側に対して着脱可能に固定する固定部16a,16aが設けられている。図例では、襟部近傍部位16,16のそれぞれに上下に間隔を空けて複数(図例では、2つ)の固定部16a,16aを設けた例を示している。これら固定部16a,16aとしては、上記のような留め具及び被留部でもよく、面ファスナー等でもよい。上記のように切り替え可能とする手段としては、例えば、巻くように折り返された襟部近傍部位16,16の第2端部14b,14b側を固定する固定紐等でもよく、その他、種々の構成とされていてもよい。襟部近傍部位16,16と本体部位15,15との分離部を接離自在に保持する適宜の保持部が設けられていてもよい。なお、前側帯状シート部材14,14は、少なくとも第2端部14b,14b側が襟部近傍部位16,16と本体部位15,15とに分離されていない構成としてもよい。
【0029】
裾側帯状シート部材18は、左前身頃10A及び右前身頃10B並びに後身頃12の下端部の裾部17に沿って長尺状とされている。裾部17は、ゴム等の伸縮性素材を内包しておらず、左前身頃10A及び右前身頃10B並びに後身頃12に一連状に、かつストレート状に設けられている。
裾側帯状シート部材18は、着用者の胴部の周方向の略全体に亘って設けられている。この裾側帯状シート部材18は、上記した前側帯状シート部材14,14と同様、柔軟で通気性の低い(または通気性の無い)適宜の布材等から形成されていてもよく、適宜の合成樹脂製シート等でもよい。また、裾側帯状シート部材18の第2端部18bの当接対象Pに当接する部位に、摩擦抵抗を大とする高摩擦材を設けた構成としてもよく、摩擦抵抗が大となるように適宜の表面処理が施されていてもよい。
この裾側帯状シート部材18は、裾部17の裏面側に固定された第1端部18aを支点とし、フラップ状に変位可能とされている。この裾側帯状シート部材18の第1端部18aは、裾部17の裏面側等に、縫合や接着剤、テープ等によって接合されていてもよい。
【0030】
この裾側帯状シート部材18は、着用者の身長方向が幅方向となる帯状とされている。この裾側帯状シート部材18の幅寸法(変位可能とされた部位の幅寸法)は、例えば、50mm~250mm程度でもよく、100mm~200mm程度でもよい。図例では、裾側帯状シート部材18の幅寸法を、上記した前側帯状シート部材14,14の幅寸法と略同寸法とした例を示しているが、前側帯状シート部材14,14の幅寸法よりも大としたり、小としたりしてもよい。また、図例では、裾側帯状シート部材18は、その全長に亘って幅寸法が略均一とされた例を示しているが、このような態様に限られない。裾側帯状シート部材18は、例えば、後身頃12の左右方向中央側となる長手方向中央側から長手方向の各端部となる前端部18c,18cに向かうに従い幅寸法が大または小とされていてもよい。更には、裾側帯状シート部材18は、例えば、長手方向途中部位に幅寸法が小とされた部位や幅寸法が大とされた部位が設けられていてもよい。
【0031】
本実施形態では、この裾側帯状シート部材18の長手方向の各端部となる前端部18c,18cは、左右の前側帯状シート部材14,14の裾側端部14c,14cに連結されるように固定されている。このような構成とすれば、裾側帯状シート部材18の前端部18c,18cが固定されていない構成と比べて、裾側帯状シート部材18が外側に垂れるように露出することを抑制することができる。また、両側の前側帯状シート部材14,14と裾側帯状シート部材18とによって前開き側と裾側とに互いに連通する堰状部が形成され、上衣2の内部空間の空気の流動性を向上させることができる。
【0032】
裾側帯状シート部材18の各前端部18c,18cと左右の前側帯状シート部材14,14の裾側端部14c,14cとは、図例のように一連状に形成されていてもよく、縫合や適宜の連結部材等によって接合されていてもよい。また、図例では、裾側帯状シート部材18の各前端部18c,18cと左右の前側帯状シート部材14,14の裾側端部14c,14cとの入隅部を、略直角状とした例を示しているが、当該連結部の幅を広げるように斜め状としたり、R状としたりしてもよい。
裾側帯状シート部材18の各前端部18c,18cと左右の前側帯状シート部材14,14の裾側端部14c,14cとを連結した構成に代えて、互いに分離させた構成としてもよい。この場合は、裾側帯状シート部材18の各前端部18c,18c及び左右の前側帯状シート部材14,14の裾側端部14c,14cの全てまたはいずれかを、前開き側端部11A,11Bの裏面側に接合等によって固定したり、着脱自在に固定したりした構成等としてもよい。
【0033】
送風装置3が取り付けられた上衣2(送風装置付き上衣1)を使用する際には、上衣2を着用し、必要に応じて一方の前開き側端部11Aの被留部10aに他方の前開き側端部11Bの留め具10bを掛け留め、送風装置3を駆動する。これにより、送風装置3の吸込口を介して外気が上衣2内に取り込まれ、左右の前側帯状シート部材14,14が前開き側端部11A,11Bの裏面側から起立するように変位し、第2端部14b,14b側が略全長に亘って当接対象Pに当接する。これにより、左右の前側帯状シート部材14,14によって気流をせき止めるようにして前開き側からの空気の漏れが抑制される。第2端部14b,14b側の当接対象Pは、着用者の身体や下着等でもよく、他方の前側帯状シート部材14でもよい。つまり、前側帯状シート部材14,14の第2端部14b,14b側部位同士が当接して前開き側からの空気を漏れ難くする構成でもよい。また、裾側帯状シート部材18が裾部17の裏面側から起立するように変位し、第2端部18b側が略全長に亘って当接対象Pに当接する。これにより、裾側帯状シート部材18によって気流をせき止めるようにして裾部17側からの空気の漏れが抑制される。
【0034】
また、上記のように前開き側及び裾部17側からの空気の漏れが抑制されることで、着用者と上衣2の内面との間に空気の流通空間が形成され、着用者を冷却することができる。上衣2内に取り込まれた空気は、襟部19と首との間や袖部20,20の袖口等の排出部から排出される。
左右の前側帯状シート部材14,14の長手方向の適所に、起立した状態から更なる変位(第2端部14b,14b側の過剰な変位)を抑制するように、第2端部14b,14b側と裏面側とを連結する紐状部材等を設けた構成としてもよい。
裾側帯状シート部材18も同様、長手方向の適所に、起立した状態から更なる変位(第2端部18b側の過剰な変位)を抑制するように、第2端部18b側と裏面側とを連結する紐状部材等を設けた構成としてもよい。または、裾側帯状シート部材18は、背中側の部位を臀部側となる外側に垂らすようにして使用されてもよい。このような構成とすれば、臀部側を冷却することもできる。上衣2の内面に、空気の流通空間を確保する適宜のスペーサ等が設けられていてもよい。
【0035】
次に、他の実施形態について図面を参照して説明する。
以下の各実施形態では、先に説明した例との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。以下の各実施形態では、先に説明した例と同様に奏する作用効果についても説明を省略または簡略に説明する。
【0036】
図3(a)、(b)は、第2実施形態に係る上衣2Aの一例及びこれを備えた送風装置付き上衣1Aの一例を模式的に示す図である。
本実施形態では、上衣2Aは、図3(a)に示すように、上記のような袖部20,20が設けられていないいわゆるベスト型とされている。この上衣2Aには、襟部19も設けられておらず、首元が上記した例よりも開いた形状とされている。この上衣2Aの後身頃12にも上記同様、送風装置3,3が取り付けられる取付穴13,13が設けられている。
この上衣2Aの左前身頃10A及び右前身頃10Bの前開き側端部(突き合わせ側端部)11A,11Bの裏面側には、図3(b)に示すように、上記同様、前側帯状シート部材14,14が設けられている。また、上衣2Aの裾部17の裏面側にも上記同様、裾側帯状シート部材18が設けられている。
【0037】
この上衣2Aは、左前身頃10A側及び右前身頃10B側のそれぞれに設けられ、少なくとも一方側に長さ調整部23が設けられた左ベルト部21及び右ベルト部22と、これら左ベルト部21及び右ベルト部22の先端部を分離可能に連結する連結具24と、を備えている。このような構成とすれば、上記同様、前開き側の留め具を、ファスナーではなく左右のベルト部21,22及び連結具24によって構成することができる。これにより、左前身頃10A及び右前身頃10Bの前開き側に隙間を設けることもでき、当該上衣2Aの身体側に着用している制服等の衣服を隙間から露見させることも可能となる。また、上記同様、左右の前側帯状シート部材14,14によって前開き側から空気を漏れ難くすることができ、また、前開き側が過度に開くようなことを抑制することができる。
【0038】
図例では、上衣2Aに、身長方向に間隔を空けて複数(図例では、3つ)の左ベルト部21及び右ベルト部22を設けた例を示している。これら複数の左ベルト部21及び右ベルト部22は、互いに同様の構成であるので、以下では、一つを例にとって説明する。
左ベルト部21及び右ベルト部22は、それぞれの連結具24とは異なる側の端部が左前身頃10A及び右前身頃10Bのそれぞれに縫合等によって接合されている。このような態様に代えて、左ベルト部21と右ベルト部22とは、上衣2Aの胴部を周回するように一体的に設けられていてもよい。
長さ調整部23は、図例では、右ベルト部22側に設けられている。この長さ調整部23としては、いわゆるリュックカンやDカン、調整バックル等でもよく、その他、種々の構成とされていてもよい。
連結具24は、図例では、一方に、他方に設けられた2つの係止爪を着脱(係脱)可能に保持する係止凹部を設けたいわゆるワンタッチバックルとされている。連結具24としては、このようなワンタッチバックルに限られず、その他、種々の構成とされていてもよい。
【0039】
本実施形態においても、送風装置3が取り付けられた上衣2A(送風装置付き上衣1A)を使用する際には、上記と概ね同様、上衣2Aを着用し、必要に応じて左ベルト部21の先端部と右ベルト部22の先端部とを連結具24によって連結し、送風装置3を駆動する。これにより、上記同様、左右の前側帯状シート部材14,14によって前開き側からの空気の漏れが抑制され、裾側帯状シート部材18によって裾部17側からの空気の漏れが抑制されて着用者と上衣2Aの内面との間に空気の流通空間が形成され、着用者を冷却することができる。上衣2A内に取り込まれた空気は、首回りや袖ぐり(アームホール)回り等の排出部から排出される。
【0040】
図4(a)、(b)は、第3実施形態に係る上衣2Bの一例及びこれを備えた送風装置付き上衣1Bの一例を模式的に示す図である。
本実施形態では、図4(a)に示すように、前開き側端部11A,11Bの空気漏れ抑制手段の構成が上記した各例とは異なる。
本実施形態では、前開き側端部11A,11Bに、前側帯状シート部材14,14を設けた構成に代えて、ファスナー25,25を設けた構成としている。このようなファスナー25,25としては、線ファスナー(スライドファスナー)や面ファスナー等でもよい。
裾側帯状シート部材18の各前端部18c,18cは、前開き側端部11A,11Bの裏面側にそれぞれ固定されている。このような構成とすれば、上記同様、裾側帯状シート部材18の各前端部18c,18cが固定されていない構成と比べて、裾側帯状シート部材18が外側に垂れるように露出することを抑制することができる。
【0041】
上記した各実施形態において説明した互いに異なる構成を、適宜、必要に応じて変形し、組み替えて適用したり、組み合わせて適用したりするようにしてもよい。例えば、第1実施形態及び第3実施形態において説明した上衣2,2Bに、留め具10b及び被留部10bに代えて、第2実施形態において説明したような長さ調整可能でかつ分離可能とされた左ベルト部21及び右ベルト部22を設けた構成等としてもよい。また、第2実施形態において説明した上衣2Aに、左ベルト部21及び右ベルト部22に代えて、留め具10b及び被留部10bを設けた構成等としてもよい。その他、種々の変形や組み替え、組み合わせが可能である。
【0042】
上記した各実施形態では、長袖またはベスト型の上衣2,2A,2Bを例示したが、半袖の上衣等でもよい。
上記した各実施形態では、前開き型の上衣2,2A,2Bを例示したが、前開きのないいわゆるかぶり型等でもよい。
上記した各実施形態では、吸込口側に鍔状部5を有した送風装置3を例示しているが、このような鍔状部5を有していない送風装置3でもよい。また、送風装置3としては、略円筒状とされた構成に限られず、略方形筒状とされた構成でもよい。
上記した各実施形態に係る上衣2,2A,2B及びこれを備えた送風装置付き上衣1,1A,1Bが備える各部材及び各部の具体的構成は、一例に過ぎず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1,1A,1B 送風装置付き上衣
2,2A,2B 上衣
3 送風装置
10 前身頃
10A 左前身頃
10B 右前身頃
11A,11B 前開き側端部
13 取付穴
14 前側帯状シート部材
14a 第1端部
14b 第2端部
14c 裾側端部
17 裾部
18 裾側帯状シート部材(帯状シート部材)
18a 第1端部
18b 第2端部
18c 前端部(長手方向の端部)
P 当接対象
図1
図2
図3
図4