(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129867
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】距離測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01B7/00 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039229
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 篤
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠章
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BB02
2F063BB05
2F063DA01
2F063DA05
2F063DA11
2F063EB01
2F063HA04
2F063KA01
2F063KA04
2F063LA06
2F063LA11
2F063LA13
2F063LA16
(57)【要約】
【課題】電極と測定対象物との間の距離を精度良く計測する。
【解決手段】第1交流定電流発生部122
1は、定電圧交流信号生成部121が生成した基準交流電圧v
refに基づいて、交流定電流iを発生させ、第1整流部140
1及び第1LPF部150
1が、第1電極と測定対象物との間の静電容量体に、当該交流定電流iを流したときの静電容量体にかかる第1電圧V
nを出力する。また、第2交流定電流発生部122
2は、定電圧交流信号生成部121が生成した基準交流電圧v
refに基づいて、交流定電流iを発生させ、第2整流部140
2及び第2LPF部150
2が、静電容量が固定の容量素子に、当該交流定電流iを流したときの当該静電容量にかかる第2電圧V
dを出力する。除算部160は、第1電圧V
nを第2電圧V
dで除算し、算出部170が、当該除算結果に基づいて、測定ギャップgを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び前記第1電極を取り囲むようにして配置された少なくとも1つの第2電極を含む電極ヘッドを有し前記第1電極と、接地された測定対象物との間の距離を静電容量の変化で測定する距離測定装置であって、
接地された容量素子と、
所定の周波数を有する基準交流電圧を生成する定電圧交流信号生成部と、
前記基準交流電圧に基づき、前記所定の周波数を有する交流定電流を発生させる第1交流定電流発生部及び第2交流定電流発生部と、
前記第1電極と前記測定対象物との間の静電容量体に、前記第1交流定電流発生部が発生した前記交流定電流を流したときの前記静電容量体にかかる第1電圧を出力する第1電圧出力部と、
前記容量素子に、前記第2交流定電流発生部が発生した前記交流定電流を流したときの前記容量素子にかかる第2電圧を出力する第2電圧出力部と、
前記第1電圧及び前記第2電圧に基づいて、前記距離を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、
前記第1電圧を前記第2電圧で除算する除算部と、
前記除算部による除算結果に基づいて、前記距離を算出する算出部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、
前記第1電圧からオフセット電圧を差し引いた差電圧を前記第2電圧で除算する除算部と、
前記除算部による除算結果に基づいて、前記距離を算出する算出部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記容量素子は、静電容量が固定である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の距離測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微小なギャップや変位を測定するための非接触式の距離センサとして、測定プローブとワークとの間の距離に応じた静電容量を測定する静電容量型センサがある。
【0003】
図2(A)には、静電容量型センサの基本的な構成である距離測定装置900Aが示されている。
図2(A)に示されるように、距離測定装置900Aは、交流定電流源910を備えている。交流定電流回路910が発生する定電流Iの角周波数をω、電極ELとワークWK間の静電容量体の静電容量をC
Xとすると、静電容量体にかかる電圧V
mは、交流のオームの法則から、次の(1)式で与えられる。
V
m=I/(ωC
X) …(1)
【0004】
ここで、理想的な平行平板コンデンサの場合、電極ELの面積をA、真空誘導率をε0、測定ギャップgの比誘電率をεSとすると、静電容量CXは、CX=(ε0εSA)/gで与えられるため、測定ギャップgは、次の(2)式で与えられる。
g=ε0εS A/CX
=[(ω×ε0εS A)/I]×Vm …(2)
【0005】
しかしながら、距離測定装置900Aでは、
図2(A)に示されるように、接地されたワークWKに対向した有限の大きさの電極の端部で電気力線が乱れて平行電場では無くなる。このため、距離測定装置900Aでは、電気力線の乱れにより、C
X=(ε
0ε
SA)/gの関係が得られず、正確な測定ギャップgを測定することができない。
【0006】
こうした電気力線の乱れを解消するものとして、
図2(B)に示される距離測定装置900Bがある。距離測定装置900Bは、
図2(B)に示されるように、電極として中心電極EL
cとガード電極EL
gとを備えている。また、距離測定装置900Bは、交流定電流回路910と、インピーダンス変換回路920である電圧バッファ回路とを備えている。
【0007】
距離測定装置900Bの中心電極ELcは、ワークWKとの間の測定ギャップgを計測するためのセンシングを行う。ガード電極ELgは、中心電極ELcが行うセンシングを補助する。ガード電極ELgの電位は、後述するように、中心電極ELcの電位と等しくなるため、中心電極ELcとガード電極ELgとは、あたかも一体の電極のように振る舞う。この結果、接地されたワークWKに対向した有限の大きさの電極の端部での電気力線の乱れはガード電極ELgの外周部のみで生じ、中心電極ELcの直下では平行な電気力線が保たれる。このため、静電容量CXの逆数が測定ギャップgに比例する関係、すなわち、1/CX=g/(ε0εSA)の関係が得られることになる。
【0008】
このため、(1)式と、静電容量CXの逆数が測定ギャップgに比例する関係とから、次の(3)式が得られる。
Vm=I/(ωCX)
=[I/(ωε0εSA)]×g …(3)
このように、電圧Vmは測定ギャップgに比例した値となり、電圧Vmを利用することは、測定ギャップgを測定するのに都合がよい。
【0009】
また、距離測定装置900Bでは、インピーダンス変換回路920の入力は中心電極ELcに接続され、インピーダンス変換回路920の出力はガード電極ELgに接続されている。このため、中心電極ELc及びガード電極ELgは交流的に同電位となるので、中心電極ELcからガード電極ELgへ電流が流れることはない。この結果、中心電極ELcとガード電極ELgとの間の浮遊容量の影響はキャンセルされる。
【0010】
また、距離測定装置900Bでは、中心電極ELcは、シールド編組の同軸ケーブルCVの内部導体に接続され、インピーダンス変換回路920の出力に接続されたガード電極ELgは、内部導体と絶縁されている同軸ケーブルCVの外側導体に接続されている。このため、インピーダンス変換回路920は、ドリブンシールドとして作用し、同軸ケーブルCV内の内部導体と外部導体間の静電容量の影響はキャンセルされる。
【0011】
このように距離測定装置900Bでは、ガード電極ELgを設けて、中心電極ELcでの電気力線の乱れを無くすとともに、中心電極ELcとガード電極ELgとの間に存在する内部導体と外部導体間の静電容量の影響もキャンセルしている。
【0012】
上述した距離測定装置900Bのように、交流定電流回路を用いたものとして特許文献1の技術(以下、「従来例」と呼ぶ)がある。こうした交流定電流回路は、交流定電圧源、増幅器、抵抗等を有し、交流定電圧源から発生される角周波数ωの交流定電圧を増幅器で増幅し、増幅器の出力側の電流路に設けられた抵抗により、交流電流を所定のレベルに設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来例1等の技術で用いられる交流定電圧源は、水晶発振回路、増幅器、振幅安定化回路等を有しいる。そして、水晶発振回路から送られるクロック出力に対して増幅、分周処理を行い、振幅安定化回路で振幅安定化処理を行い、予め規定された一定の振幅で、一定の周波数ωの交流定電圧(正弦波定電圧)を生成している。
【0015】
ここで、水晶発振回路から送られるクロック出力には、時間軸方向の揺らぎによって生じるクロックエッジの理想的な位置からのズレであるジッタが発生している。このジッタが原因で、交流定電圧の角周波数ωが一定に安定しない。測定ギャップgは、上述した(1)式を用いて導出されるため、角周波数ωが一定で安定していないと、測定ギャップgを精度良く測定することはできない。
【0016】
したがって、従来例の距離センサにおいて、改善の余地があった。
【0017】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、電極と測定対象物との間の距離を精度良く計測することができる距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、第1電極及び前記第1電極を取り囲むようにして配置された少なくとも1つの第2電極を含む電極ヘッドを有し前記第1電極と、接地された測定対象物との間の距離を静電容量の変化で測定する距離測定装置であって、接地された容量素子と、所定の周波数を有する基準交流電圧を生成する定電圧交流信号生成部と、前記基準交流電圧に基づき、前記所定の周波数を有する交流定電流を発生させる第1交流定電流発生部及び第2交流定電流発生部と、前記第1電極と前記測定対象物との間の静電容量体に、前記第1交流定電流発生部が発生した前記交流定電流を流したときの前記静電容量体にかかる第1電圧を出力する第1電圧出力部と、前記容量素子に、前記第2交流定電流発生部が発生した前記交流定電流を流したときの前記容量素子にかかる第2電圧を出力する第2電圧出力部と、前記第1電圧及び前記第2電圧に基づいて、前記距離を測定する測定部と、を備えることを特徴とする距離測定装置である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る距離測定装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】従来の静電容量型センサによる距離測定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
[構成]
図1には、一実施形態に係る距離測定装置100の概略的な構成が示されている。
図1に示されるように、距離測定装置100は、取付部110と、電極ヘッド115と、容量素子C1と、容量素子C2とを備えている。また、距離測定装置100は、定電圧交流信号生成部(交流定電圧源)121と、第1交流定電流発生部122
1と、第2交流定電流発生部122
2とを備えている。ここで、定電圧交流信号生成部121及び第1交流定電流発生部122
1により、第1の交流定電流源回路が形成され、定電圧交流信号生成部121及び第2交流定電流発生部122
2により、第2の交流定電流源回路が形成される。
【0022】
さらに、距離測定装置100は、第1整流部1401と、第2整流部1402と、第1ローパスフィルタ部(LPF)部1501と、第2LPF部1502とを備えている。また、距離測定装置100は、除算部160と、算出部170とを備えている。
【0023】
上記の取付部110は、円筒状の筐体である。取付部110には、鉛直下方(-Z方向側)の面に、電極ヘッド115が取り付けられている。
【0024】
上記の電極ヘッド115は、第1電極に対応する中心電極E1と、第2電極に対応するガード電極E2とを備えている。本実施形態では、中心電極E1は円盤形状になっており、ガード電極E2は有底円筒形状になっている。ガード電極E2の円筒形状の内径は、中心電極E1の円盤部分の直径より長くなっている。そして、ガード電極E2の円筒形状の内部に、中心電極E1が配置されている。当該中心電極E1とガード電極E2との間には、絶縁体が介在している。
【0025】
中心電極E1は、中心電極E1とワークWKとの間の静電容量体の静電容量CXを利用した、中心電極E1とワークWKとの間の測定ギャップg(距離)を計測するためのセンシングを行う。ここで、ワークWKは導体であり、測定対象物に対応している。
【0026】
ガード電極E2は、中心電極E1が行うセンシングを補助する。後述するように、ガード電極E2の電位は、中心電極E1の電位と等しくなるため、中心電極E1とガード電極E2とは、あたかも一体の電極のように振る舞う。この結果、電気力線の乱れはガード電極E2の外周部のみで生じ、中心電極E1直下では平行な電気力線が保たれる。このため、平行平板コンデンサにおけるCX=(ε0εSA)/gの関係が得られ、上述した(3)式により、電圧Vmを利用して測定ギャップgを測定することができる。
【0027】
本実施形態では、中心電極E1は、シールド編組の同軸ケーブルCVの内部導体(中心線)に接続され、ガード電極E2は、内部導体と絶縁されている同軸ケーブルCVの外側導体(編組線)に接続されている。
【0028】
上記の容量素子C1,C2は、静電容量Crが固定(一定値)の素子である。
【0029】
上記の定電圧交流信号生成部(交流定電圧源)121は、水晶発振回路を有し、所定の周波数ω及び所定の振幅Aを有する次の(4)式で与えられる基準交流電圧vrefを生成する。定電圧交流信号生成部121は、第1交流定電流発生部1221及び第2交流定電流発生部1222に接続されている。
vref = Asin(ωt) … (4)
【0030】
上記の第1交流定電流発生部1221は、演算増幅器123と、抵抗素子RSと、抵抗素子RA,RB,RC,RDと、容量素子CAと、インピーダンス変換回路125とを備えている。ここで、抵抗素子RSの抵抗値は、抵抗素子RA,RB,RC,RDの抵抗値よりも大きな値となっていて、抵抗素子RS及び抵抗素子RA,RB,RC,RDの抵抗値は、実験、シミュレーション等に基づいて予め定められる。
【0031】
抵抗素子RAは、一端が定電圧交流信号生成部121に接続され、他端が演算増幅器123の反転入力端子(-入力端子)及び抵抗素子RBの一端に接続されている。
【0032】
演算増幅器123の反転入力端子(-入力端子)は、抵抗素子RAの他端及び抵抗素子RBの一端に接続されている。演算増幅器123の非反転入力端子(+入力端子)は、抵抗素子RCの一端及び抵抗素子RDの一端に接続されている。そして、抵抗素子RCの他端は、容量素子CAを介してインピーダンス変換回路125の出力側に接続されている。また、抵抗素子RCの他端は接地されている。
【0033】
演算増幅器123の出力端子は、抵抗素子RBの他端及びセンス抵抗である抵抗素子RSの一端に接続されている。そして、抵抗素子RSの他端が、中心電極E1及びインピーダンス変換回路125の入力側に接続されている。抵抗素子RSの抵抗値Rsとすると、第1交流定電流発生部1221から、次の(5)式で与えられる交流定電流i(以下、「定電流i」とも記す)が発生する。
i = vref/Rs
= Ksin(ωt) … (5)
こうして発生した定電流iは、中心電極E1とワークWKとの間の静電容量体(静電容量CX)に流れる。ここで、Kは定数であり、K=(A/Rs)の関係がある。
【0034】
ここで、演算増幅器123の非反転入力端子(+入力端子)に入力される電圧は、抵抗素子RSにかかる電圧と等しくなっている。演算増幅器123の非反転入力端子(+入力端子)に接続されたラインには電流は流れない。演算増幅器123の出力と抵抗素子RBの他端が接続した点で、センス抵抗である抵抗素子RSにかかる電圧が生成される。
【0035】
上記のインピーダンス変換回路125の入力は、中心電極E1及び抵抗素子RSの他端と接続されている。また、インピーダンス変換回路125の出力は、ガード電極E2及び第1整流部1401と接続されている。このため、中心電極E1及びガード電極E2は交流的に同電位となる。
【0036】
当該インピーダンス変換回路125は、出力インピーダンスを入力インピーダンスに対して低くし、入力電圧vn,inと出力電圧vn,out(以下、「出力電圧vn」とも記す)とが等しくなる増幅率が1の電圧バッファ回路として機能する。この結果、当該インピーダンス変換回路125では、入力信号と同じ位相で低いインピーダンスの出力が得られる。
【0037】
インピーダンス変換回路125の入力に接続された中心電極E1は、シールド編組の同軸ケーブルCVの内部導体に接続され、インピーダンス変換回路125の出力に接続されたガード電極E2は、同軸ケーブルCVの外側の編組に接続されている。このため、インピーダンス変換回路125は、ドリブンシールドとして作用する。したがって、中心電極E1に接続された同軸ケーブルCVの中心線と、ガード電極E2に接続された同軸ケーブルCVの編組線との間の浮遊容量の影響を無視することができる。
【0038】
第1交流定電流発生部1221のインピーダンス変換回路125から出力される出力電圧vnは、次の(6)式で与えられる。
vn =i/(ωCX) … (6)
【0039】
第2交流定電流発生部
上記の第2交流定電流発生部1222は、上述した第1交流定電流発生部1221と同様に、演算増幅器123と、抵抗素子RSと、抵抗素子RA,RB,RC,RDと、容量素子CAと、インピーダンス変換回路125とを備えている。
【0040】
第2交流定電流発生部1222では、抵抗素子RSの他端が、容量素子C1の一端及びインピーダンス変換回路125の入力側に接続されている。そして、第2交流定電流発生部1222が発生させた定電流iは、容量素子C1(静電容量Cr:一定値)に流れる。
【0041】
また、第2交流定電流発生部1222では、インピーダンス変換回路125の入力は、容量素子C1及び抵抗素子RSの他端と接続されている。また、インピーダンス変換回路125の出力は、容量素子C2及び第2整流部1402と接続されている。
【0042】
当該インピーダンス変換回路125は、出力インピーダンスを入力インピーダンスに対して低くし、入力電圧vd,inと出力電圧vd,out(以下、「出力電圧vd」とも記す)とが等しくなる増幅率が1の電圧バッファ回路として機能する。
【0043】
第2交流定電流発生部1222のインピーダンス変換回路125から出力される出力電圧vdは、次の(7)式で与えられる。
vd =i/(ωCr) …(7)
【0044】
上記の第1整流部1401は、出力電圧vnに対して整流処理を行う。整流結果は、第1LPF部1501へ出力される。上記の第1LPF部1501は、第1整流部1401から出力された整流処理結果に対して平滑化処理を行う。第1LPF部1501による平滑処理結果は、次の(8)式で与えられ、除算部160へ送られる。
Vn =i/(πωCX) … (8)
【0045】
上記の第2整流部1402は、出力電圧vdに対して整流処理を行う。整流結果は、第2LPF部1502へ出力される。上記の第2LPF部1502は、第2整流部1402から出力された整流処理結果に対して平滑化処理を行う。第2LPF部1502による平滑処理結果は、次の(9)式で与えられ、除算部160へ送られる。
Vd =i/(πωCr) … (9)
【0046】
上記の除算部160は、第1LPF部1501から送られた処理結果Vn、及び、第2LPF部1502から送られた処理結果Vdを受ける。引き続き、除算部160は、処理結果Vnを処理結果Vdで除算する。測定値Vn,Vdの除算結果(Vn/Vd)は、算出部170へ送られる。
【0047】
上記の算出部170は、除算部160から送られた除算結果(Vn/Vd)を受ける。そして、算出部170は、当該除算結果に基づいて、測定ギャップg(距離)を測定する。除算結果(Vn/Vd)は、次の(10)式で与えれれる。
Vn/Vd = [i/(πωCX)] /[i/(πωCr)]
=Cr/CX … (10)
ここで、静電容量Crは一定値で既知であり、静電容量CXはCX=(ε0εSA)/gで与えられから、(10)式は、(11式)のようにすることができる
Vn/Vd = Cr/[(ε0εSA)/g] …(11)
したがって、測定ギャップgは、次の(12)式で与えられる。
g=(Vn/Vd)×[(ε0εSA)/Cr] …(12)
値[(ε0εSA)/Cr]は、既知であり、gは角周波数ωに依存していない。したがって、本実施形態では(Vn/Vd)を測定することで、測定ギャップgを算出することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、定電圧交流信号生成部121を共通にして、定電圧交流信号生成部121及び第1交流定電流発生部1221により、第1の交流定電流源回路が形成され、定電圧交流信号生成部121及び第2交流定電流発生部1222により、第2の交流定電流源回路が形成される。第1交流定電流発生部1221は、定電圧交流信号生成部121が生成した基準交流電圧vrefに基づいて、交流定電流iを発生させる。そして、第1整流部1401及び第1LPF部1501が、第1電極と測定対象物との間の静電容量体に、当該交流定電流を流したときの当該静電容量体にかかる第1電圧Vnを出力する。また、第2交流定電流発生部1222は、定電圧交流信号生成部121が生成した基準交流電圧vrefに基づいて、交流定電流iを発生させる。そして、第2整流部1402及び第2LPF部1502が、静電容量が固定の容量素子に、当該交流定電流を流したときの当該静電容量にかかる第2電圧Vdを出力する。
【0049】
引き続き、除算部160が、第1電圧Vnを第2電圧Vdで除算する。当該除算演算により、角周波数ωはキャンセルされ、除算結果は角周波数ωに依存しない。次いで、算出部170は、当該除算結果に基づいて、測定ギャップg(距離)を算出する。算出される測定ギャップgは、角周波数ωに依存していない。
【0050】
このため、定電圧交流信号生成部121の水晶発振回路から送られるクロック出力のジッタの影響を受けなくなる。すなわち、上述した除算演算により角周波数ωがキャンセルされるため、定電圧交流信号生成部121が生成する基準交流電圧vref(= Asin(ωt))の角周波数ωや振幅Aが安定したものでなかったとしても、電極と測定対象物との間の距離を精度良く測定するこができる。
)
【0051】
したがって、本実施形態では、電極と測定対象物との間の距離を精度良く測定することができる。
【0052】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0053】
例えば、上記の実施形態では、容量素子は静電容量を固定にしたが、これに限らず値を精確に知ることができれば可変であってもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、、中心電極を1つとし、ガード電極を1つとした。これに対し、中心電極及びガード電極は他の形状であってもよいし、ガード電極の数が2以上であってもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、第1電圧出力部は第1整流部及び第1LPF部を備え、第2電圧出力部は第2整流部及び第2LPF部を備えるようにしたが、第1電圧及び第2電圧を出力することができれば、他の構成であってもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、除算部はADコンバータで構成されていてもよい。
【0057】
<変形例>
上記の実施形態では、除算部が第1電圧Vnを第2電圧Vdで除算し、算出部が除算部による乗算結果に基づいて、測定ギャップを測定した。これに対し、出力電圧(第1電圧)vnにオフセット電圧voが加えられている場合には、次のようにして測定ギャップgを測定することができる。
【0058】
ここで、オフセット電圧voがvo=Ko×i/(ωC)で与えられるとすると、次の(13)式の関係が得られる。
(vn-vo)/vd = [i/(ωCX)-Ko×i/(ωC)] /[i/(ωCr)]
=Cr/(CX-C) … (13)
静電容量CXはCX=(ε0εSA)/gで与えられるから、測定ギャップgは、次の(14)式で与えられる。
g=(ε0εSA)[(vn-vo)/(vd×Cr) +Ko/C …(14)
【0059】
(14)式から、gは角周波数ωに依存していない。ε0,εS,A,Cr,Ko,C,voは既知であるため、vn,vdを測定して得ることで、測定ギャップgを算出することができる。このように出力電圧vnにオフセット電圧voが加えられている場合には、除算部が第1電圧vnからオフセット電圧voを差し引いた差電圧を第2電圧vdで除算し、算出部が除算部による乗算結果に基づいて、測定ギャップを測定すればよい。
【0060】
この場合にも、測定ギャップgの導出に際して、交流定電流i、角周波数ωがキャンセルされるため、定電圧交流信号生成部121が生成する基準交流電圧vref(= Asin(ωt))の角周波数ωや振幅Aが安定したものでなかったとしても、電極と測定対象物との間の距離を精度良く測定するこができる。したがって、電極と測定対象物との間の距離を精度良く測定することができる。
【符号の説明】
【0061】
100 … 距離測定装置
110 … 取付部
115 … 電極ヘッド
121 … 定電圧交流信号生成部
1221 … 第1交流定電流発生部
1222 … 第2交流定電流発生部
1401 … 第1整流部(第1電圧出力部の一部)
1402 … 第2整流部(第2電圧出力部の一部)
1501 … 第1LPF(第1電圧出力部の一部)
1502 … 第2LPF(第2電圧出力部の一部)
160 … 除算部(測定部の一部)
170 … 算出部(測定部の一部)
900A … 距離測定装置
900B … 距離測定装置
910 … 交流定電流源
920 … インピーダンス変換回路
CV … 同軸ケーブル
E1 … 中心電極(第1電極)
E2 … ガード電極(第2電極)
EL … 電極
ELc … 中心電極
ELg … ガード電極
C1,C2 … 容量素子
WK … ワーク(測定対象物)