(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129868
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造設備及び焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/20 20060101AFI20240920BHJP
C22B 1/16 20060101ALI20240920BHJP
F27B 21/06 20060101ALI20240920BHJP
F27B 21/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C22B1/20 H
C22B1/16 K
F27B21/06
F27B21/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039230
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】竹田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大屋 憲司
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001BA14
4K001CA01
4K001CA39
4K001CA42
4K001GA10
4K001HA01
4K001KA06
4K001KA13
(57)【要約】
【課題】装入層のパレットの幅方向における通過風量の差を小さくし、これにより、焼結鉱の歩留りの低下を抑制できる焼結鉱の製造設備及び焼結鉱の製造方法を提供する。
【解決手段】鉄含有原料、炭素含有原料及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒機と、無端移動式のパレットと、パレットに前記造粒粒子を装入して焼結原料の装入層を形成する原料供給装置と、装入層の表層に含まれる炭素含有原料を点火する点火炉と、パレットの下方に設けられ、装入層内の空気を吸引するウインドボックスとを有し、装入層を焼結して焼結ケーキとする焼結機と、焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕機と、造粒機、焼結機及び破砕機の動作を制御する制御装置と、を備え、点火炉は、パレット幅方向に並んだ複数のラインバーナを有し、制御装置は、複数のラインバーナのそれぞれの温度を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有原料、炭素含有原料及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒機と、
無端移動式のパレットと、前記パレットに前記造粒粒子を装入して前記焼結原料の装入層を形成する原料供給装置と、前記装入層の表層に含まれる前記炭素含有原料を点火する点火炉と、前記パレットの下方に設けられ、前記装入層内の空気を吸引するウインドボックスとを有し、前記装入層を焼結して焼結ケーキとする焼結機と、
前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕機と、
前記造粒機、焼結機及び破砕機の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記点火炉は、前記パレットの幅方向に並んだ複数のラインバーナを有し、
前記制御装置は、前記複数のラインバーナのそれぞれの温度を制御する、焼結鉱の製造設備。
【請求項2】
前記制御装置は、前記複数のラインバーナのうち、前記パレットの幅方向端部のラインバーナの温度を前記パレットの幅方向中央部のラインバーナの温度よりも高くする、請求項1に記載の焼結鉱の製造設備。
【請求項3】
鉄含有原料、炭素含有原料及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒ステップと、
焼結機の原料供給装置で無端移動式のパレットに前記造粒粒子を装入して前記焼結原料の装入層を形成する装入層形成ステップと、
前記原料供給装置の下流側に設けられる点火炉で前記装入層の表層に含まれる前記炭素含有原料に点火し、前記パレットの下方に設けられたウインドボックスで前記装入層内の空気を吸引することで前記炭素含有原料を燃焼させて前記装入層を焼結ケーキとする焼結ステップと、
前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕ステップと、
を有し、
前記焼結ステップでは、前記点火炉で点火して、前記パレットの幅方向における装入層表層の温度分布を変える、焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
前記焼結ステップでは、前記点火炉で点火して、前記パレットの幅方向端部の装入層表層の温度を前記パレットの幅方向中央部の装入層表層の温度よりも高くする、請求項3に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用原料である焼結鉱を製造する焼結鉱の製造設備及び焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉用原料である焼結鉱は、一般に、鉄鉱石粉、製鉄所内回収粉、焼結鉱篩下粉などの鉄含有原料と、石灰石及びドロマイトなどの含CaO原料と、粉コークスや無煙炭などの炭材(固体燃料)とを焼結原料として、無端移動型焼結機であるドワイトロイド焼結機(以下、「焼結機」と記載する)を用いて製造される。
【0003】
焼結原料は、焼結機の無端移動式のパレットに装入され、焼結原料の装入層が形成される。装入層の厚み(高さ)は400~800mm前後である。その後、装入層の上方に設置された点火炉により、この装入層中の炭材に点火される。パレットの下に設置されている風箱を介して空気を下方に吸引することにより、装入層中の炭材を順次燃焼させる。この燃焼は、パレットの移動に伴って次第に下層に且つ前方に進行する。このときに発生する燃焼熱によって、焼結原料が燃焼、溶融し、焼結ケーキが生成される。得られた焼結ケーキは、その後、排鉱部において破砕されて焼結鉱となる。
【0004】
このような焼結鉱の製造において、焼結ムラを抑制し、焼結鉱の強度及び歩留りを改善することは重要である。特許文献1には、排鉱前の焼結ケーキの上面高を測定し、パレット進行方向に直交する水平幅方向の上面高さ分布を求め、当該上面高さ分布のばらつきが小さくなるように焼結原料を装入する焼結鉱の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上面高さ分布のばらつきを小さくしても焼結機のパレット進行方向の両端部は壁効果により過剰風量となり、1200℃以上の焼結鉱生成温度の保持時間が短くなるので歩留りが低下する。さらに、パレット端部の過剰風量は、パレット進行方向の中央部の風量低下を引き起こし、これにより未焼成部分が生じるので、さらに歩留りが低下する、という課題があった。
【0007】
本発明はこのような課題を鑑みてなされた発明であり、その目的は、装入層のパレットの幅方向における通過風量の差を小さくし、これにより、焼結鉱の歩留りの低下を抑制できる焼結鉱の製造設備及び焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]鉄含有原料、炭素含有原料及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒機と、無端移動式のパレットと、前記パレットに前記造粒粒子を装入して前記焼結原料の装入層を形成する原料供給装置と、前記装入層の表層に含まれる前記炭素含有原料を点火する点火炉と、前記パレットの下方に設けられ、前記装入層内の空気を吸引するウインドボックスとを有し、前記装入層を焼結して焼結ケーキとする焼結機と、前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕機と、前記造粒機、焼結機及び破砕機の動作を制御する制御装置と、を備え、前記点火炉は、前記パレットの幅方向に並んだ複数のラインバーナを有し、前記制御装置は、前記複数のラインバーナのそれぞれの温度を制御する、焼結鉱の製造設備。
[2]前記制御装置は、前記複数のラインバーナのうち、前記パレットの幅方向端部のラインバーナの温度を前記パレットの幅方向中央部のラインバーナの温度よりも高くする、[1]に記載の焼結鉱の製造設備。
[3]鉄含有原料、炭素含有原料及びCaO含有原料を含む焼結原料を造粒機で造粒して造粒粒子とする造粒ステップと、焼結機の原料供給装置で無端移動式のパレットに前記造粒粒子を装入して前記焼結原料の装入層を形成する装入層形成ステップと、前記原料供給装置の下流側に設けられる点火炉で前記装入層の表層に含まれる前記炭素含有原料に点火し、前記パレットの下方に設けられたウインドボックスで前記装入層内の空気を吸引することで前記炭素含有原料を燃焼させて前記装入層を焼結ケーキとする焼結ステップと、前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕ステップと、を有し、前記焼結ステップでは、前記点火炉で点火して、前記パレットの幅方向における装入層表層の温度分布を変える、焼結鉱の製造方法。
[4]前記焼結ステップでは、前記点火炉で点火して、前記パレットの幅方向端部の装入層表層の温度を前記パレットの幅方向中央部の装入層表層の温度よりも高くする、[3]に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、点火炉におけるパレット幅方向に並んだ複数のラインバーナのそれぞれの温度を制御することで、装入層のパレット幅方向の通気性を調整できる。これにより、装入層焼結時におけるパレット幅方向の通過風量の差を小さくすることができ、焼成ムラが抑制され、焼結鉱の歩留り低下が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法が実施できる焼結鉱の製造設備の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、パレット22の進行方向に垂直となる平面で切断した点火炉24の断面模式図である。
【
図3】
図3は、Cガスの流量変更前と変更後とのCガス吹込み量を示すグラフである。
【
図4】
図4は、Cガスの流量変更前と変更後における点火炉24の下流側で測定された装入層表層温度を示すグラフである。
【
図5】
図5は、パレット22の幅方向端部と中央部との酸素濃度差を示すグラフである。
【
図6】
図6は、Cガスのガス流量変更前と変更後における残火層厚を示すグラフである。
【
図7】
図7は、Cガスのガス流量変更前と変更後における粒径4mm未満の割合、返鉱発生量及び返鉱中のCaO含有量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を本発明の実施形態を通じて説明する。
図1は、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法が実施できる焼結鉱の製造設備の一例を示す模式図である。焼結鉱の製造設備10は、造粒機16と、焼結機20と、破砕機30と、制御装置40とを備える。
【0012】
造粒機16は、鉄含有原料、炭素含有原料及びCaO含有原料を含む焼結原料12を造粒して造粒粒子18とする。造粒機16が造粒粒子18を造粒する際、焼結原料12には造粒水14が添加される。この工程が造粒ステップとなる。造粒機16によって造粒された造粒粒子18は、焼結機20に搬送される。なお、鉄含有原料は、例えば、鉄鉱石や製鉄所内で発生するダストである。炭素含有原料は、例えば、粉コークスや無煙炭である。また、CaO含有原料は、例えば、生石灰、石灰石、スラグである。
【0013】
焼結機20は、例えば、ドワイトロイド式の焼結機である。焼結機20は、原料供給装置21と、パレット22と、カットオフプレート23と、点火炉24と、ウインドボックス26とを備える。原料供給装置21は、造粒粒子18をパレット22に装入する。
【0014】
パレット22は、無端移動式のパレットである。原料供給装置21からパレット22内に造粒粒子18が装入されると、パレット22内に焼結原料12の装入層が形成される。カットオフプレート23は、装入層の表層を平らに均すとともに装入層の厚さを予め設定された目標とする層厚に合わせる。この工程が装入層形成ステップとなる。
【0015】
点火炉24は、パレット22の幅方向に並んだ複数のラインバーナを有する。点火炉24は、原料供給装置21の下流側に設けられ、複数のラインバーナのそれぞれにコークス炉ガス(以下、「Cガス」と記載する。)を吹き込み、Cガスを燃焼させることで、装入層の表層に含まれている炭素含有原料に点火する。
【0016】
ウインドボックス26は、パレット22の下方に設けられ、パレット22内に形成されている装入層内の空気を下方に吸引する。ウインドボックス26によって装入層内の空気が下方に吸引されると、装入層内の燃焼、溶融帯は装入層の下方に移動する。パレット22の移動とともに装入層内の燃焼、溶融帯が下方に移動することで、装入層の焼結原料12は焼結される。焼結原料12の焼結により、焼結ケーキが得られる。この工程が焼結ステップとなる。
【0017】
破砕機30は、焼結機20から排鉱される焼結ケーキを破砕して焼結ケーキの破砕物とする。焼結ケーキの破砕物は、冷却及び整粒されて焼結鉱32が製造される。この工程が破砕ステップとなる。
【0018】
制御装置40は、制御部41と、記憶部42とを有する例えば、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータである。制御部41は、例えば、CPU等であって、記憶部42から読み込んだプログラムを実行することにより、造粒機16、焼結機20及び破砕機30の動作を制御する。記憶部42は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、メモリーカード等の情報記録媒体及びその読み書き装置である。記憶部42には、制御部41が各機能を実行するためのプログラムや当該プログラムで使用するデータ等が記憶されている。
【0019】
図2は、パレット22の進行方向に垂直となる平面で切断した点火炉24の断面模式図である。点火炉24は、例えば、パレット22の幅方向に並んだ5つのラインバーナ28a~28eを有する。ラインバーナ28a~28eには、配管50によって搬送されるCガスがそれぞれ吹き込まれる。配管50とラインバーナ28a~28eとの間には、バルブ52a~52eが設けられている。制御部41は、バルブ52a~52eの開度を制御することで、ラインバーナ28a~28eに供給されるCガスの吹込み量を調整し、これにより、ラインバーナ28a~28eのそれぞれの温度を制御する。
【0020】
焼結機20のパレット22の幅方向両端部は壁効果により過剰風量となり、1200℃以上の焼結鉱生成温度の保持時間が短くなって焼結鉱の歩留りが低下する。このため、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法では、ラインバーナ28a~28eの温度を制御して、パレット22の幅方向中央部のラインバーナ28cの温度よりもパレット22の幅方向両端部のラインバーナ28a、28b、28d、28eの温度を高める。これにより、パレット22の幅方向両端部の装入層の表層温度を、パレット22の幅方向中央部の装入層の表層温度よりも高くすることができる。
【0021】
パレット22の幅方向両端部の装入層の表層温度を、パレット22の幅方向中央部の装入層の表層温度よりも高めることで、パレット22の幅方向両端部の装入層表層のみ溶融化が進行し、当該位置の装入層の通気性が低下する。この結果、壁効果による過剰風量が少なくなって、装入層焼結時のパレット22の幅方向における通過風量の差が小さくなり、焼結ムラが抑制されて歩留りの低下が抑制できる。
【0022】
図3は、Cガスの流量変更前と変更後とのCガスの吹込み量を示すグラフである。制御部41は、バルブ52cの開度を他のバルブ52a、52b、52d、52eよりも小さくする。これにより、
図3に示すように、パレット22の両端部のラインバーナ28a、28b、28d、28eに吹き込まれるCガスの吹き込み量が増え、中央部のラインバーナ28cに吹き込まれるCガスの吹き込み量は減少する。
【0023】
図4は、Cガスの流量変更前と変更後における点火炉24の下流側で測定される装入層の表層温度を示すグラフである。点火炉24の下流側における装入層表層温度は、点火炉24の下流端に設けられたサーモグラフィーを用いて測定される装入層の表層温度である。
【0024】
ラインバーナ28a、28b、28d、28eに吹き込まれるCガスの吹き込み量を増やすことで、
図4に示すように、パレット22の幅方向両端部(
図4の北/南)の装入層の表層温度は514℃、510℃から529℃、538℃に上昇した。一方、ラインバーナ28cに吹き込まれるCガスの吹込み量を減らしているので、パレット22の幅方向中央部の装入層の表層温度は490℃から280℃に低下した。このように、パレット22の幅方向両端部の装入層の表層温度を高くし、中央部の装入層の表層温度を低くすることで、パレット22の幅方向中央部よりも幅方向両端部の装入層表層の溶融化が進行し、幅方向両端部の装入層の通気性が低下する。この通気性の低下により、壁効果による過剰風量が少なくなり、装入層焼結時のパレット22の幅方向における通過風量の差が小さくなる。
【0025】
図5は、パレット22の幅方向端部と中央部との酸素濃度差を示すグラフである。
図5に示した酸素濃度は、ウインドボックス26の側面から吸引用パイプを挿入し、当該吸引用パイプを用いて、パレット22の幅方向の各位置からガスをサンプリングし、当該ガスの酸素濃度を測定した値である。
【0026】
図5に示すように、ラインバーナ28a~28eへのガスの吹き込み量を変更して、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすることで、装入層焼結時のパレット22の幅方向における通過風量の差が小さくなり、パレット22の幅方向端部と中央部との酸素濃度差が小さくなることが確認された。具体的には、Cガスの吹き込み量を変更する前においては、パレット22の幅方向端部と中央部との酸素濃度差が4.29体積%あったのに対し、Cガスの吹き込み量を変更した後においては、パレット22の幅方向端部と中央部との酸素濃度差が4.10体積%に減少した。
【0027】
図6は、Cガスのガス流量変更前と変更後における残火層厚を示すグラフである。
図6(a)は、Cガスの流量変更前の残火層厚を示し、
図6(b)は、Cガスの流量変更後の残火層厚を示す。焼結機20の排鉱部において、焼結ケーキがパレット22から落下する直前に、焼結ケーキ表層から下部に向かってパレット幅方向に亀裂が生じ、この亀裂に沿って焼結ケーキが破断して落下し、破断面が露出する。この破断面には、まだ焼結ケーキが赤熱状態にある部分が存在しているのが通常であり、この赤熱部分が残火層であり、この残火層の厚みが残火層厚である。この残火層のパレット22の幅方向の高低差は、焼結ムラに相関があり、当該高低差が大きくなると焼結ムラが大きくなって焼結鉱の歩留りが低下する。この残火層のパレット22の幅方向の高低差を小さくすることで、焼結原料の焼結ムラが改善されて焼結鉱の歩留りの低下が抑制される。
【0028】
図6(a)、(b)に示すように、ラインバーナ28a~28eへのCガスの吹き込み量を変更して、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすることで、残火層の高低差が小さくなった。具体的には、Cガスの吹き込み量変更前においては160mmであった残火層の高低差がCガスの吹き込み量変更後においては残火層の高低差が95mmになった。この結果から、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすることで、装入層焼結時のパレット22の幅方向における通過風量の差が小さくなって焼結ムラが改善し、焼結鉱の歩留りの低下が抑制できることがわかる。
【0029】
次に、焼結鉱の歩留りを確認した結果を説明する。
図7は、Cガスの吹き込み量変更前と変更後における粒径4mm未満の割合、返鉱発生量及び返鉱中のCaO含有量を示すグラフである。
図7(a)は、破砕後の全焼結ケーキ質量に対する粒径が4mm未満となった焼結ケーキの質量割合を示すグラフである。
図7(b)は、返鉱の発生量を示すグラフである。
図7(c)は、返鉱中のCaO含有量を示すグラフである。
【0030】
図7(a)に示すように、ラインバーナ28a~28eへのCガスの吹き込み量を変更して、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすることで、Cガスの吹き込み量変更前よりも破砕後の粒径4mm未満の質量割合が減少した。この結果は、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすることで、焼結ムラが改善されて焼結ケーキの強度が向上したことを示しており、この焼結ケーキの強度向上によって破砕後の粒径4mm未満の質量割合が減少したと考えられる。なお、粒径4mm未満の焼結鉱は、破砕後の焼結ケーキのうち目開き4mmの篩で篩下に篩分けられた焼結鉱である。
【0031】
また、
図7(b)に示すように、ラインバーナ28a~28eへのCガスの吹き込み量を変更して、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすることで返鉱の発生量が減少した。ここで返鉱は、破砕後の焼結ケーキのうち目開き5mmの篩で篩下に篩分けられる粒径5mm未満の焼結鉱であり、焼結鉱の原料として再利用される。このため、返鉱の発生量の減少は焼結鉱の歩留りの向上を意味するので、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすることで、焼結鉱の歩留りを向上できることが確認された。
【0032】
さらに、
図7(c)に示すように、ラインバーナ28a~28eへのCガスの吹き込み量を変更して、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすることで、返鉱中に含まれるCaO含有量が減少した。焼結原料に焼成ムラがあるとコークスの燃焼が進行せず焼結ケーキ内の残留CaOが多くなる。返鉱中のCaO含有量が減少したことは、焼結原料の焼成ムラが改善されてコークス燃焼が進行し、焼結ケーキ内の残留CaOが減少したことを示している。これらの結果から、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすることで、焼結原料の焼成ムラが改善されることが確認された。
【0033】
このように、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法では、点火炉24に設けられるパレット22の幅方向に並んだ複数のラインバーナ28a~28eの温度を制御することで、パレット22の幅方向における装入層表層の温度分布を変える。具体的には、パレット22の幅方向における装入層の通気性が高い領域の装入層表層の温度を高め、装入層の通気性が低い領域の装入層表層の温度を低くする。これにより、通気性が高い装入層の表層の溶融化を通気性が低い領域よりも進行させることができ、当該領域の通気性を下げることができる。この結果、装入層焼結時のパレット22の幅方向における通過風量の差が小さくなり、焼結原料の焼結ムラが改善されて歩留りの低下を抑制できる。
【0034】
なお、
図1に示した例では、焼結鉱の製造設備10が制御装置40を備える例を示したが、これに限らない。焼結鉱の製造設備10は、制御装置40を備えなくてもよく、この場合、
図2に示したバルブ52cの開度を他のバルブ52a、52b、52d、52eよりも予め狭めておけばよい。
【0035】
また、上記実施形態では、パレット22の幅方向両端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くする例を示したが、これに限らず、少なくとも一方の端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすればよい。少なくとも一方の端部の装入層表層の温度を中央部よりも高くすれば、パレット22の幅方向の装入層表層の温度が同じである場合よりもパレット22の幅方向における通過風量の差が小さくなるので、焼結原料の焼結ムラが改善されて歩留りの低下を抑制できる。
【0036】
焼結鉱の製造設備10は、さらに、焼結機20の排鉱部において、残火層を撮像するカメラを有していてもよい。制御装置40の制御部41は、当該カメラによって残火層が撮像された画像データを取得し、当該画像データに基づいて、装入層の通気性が高い領域を特定してもよい。具体的には、制御部41は、取得した画像データを、パレット22の幅方向に、ラインバーナの数と同じ数の領域に分割し、各領域の残火層の上面高さを特定し、残火層の上面高さが低い領域を通気性が高いと特定する。
【0037】
制御部41は、通気性が高いと特定された領域に対応する位置のラインバーナに接続されているバルブの開度を他のバルブよりも大きくし、当該ラインバーナに供給されるCガス量を他の領域よりも多くして、装入層表層の温度を高める。これにより、残火層の上面高さが低く、通気性が高い領域の装入層表層の溶融化を進行させることができるので、当該領域の通気性が低くなり、装入層のパレット22の幅方向における通気風量の差が小さくなる。この結果、残火層の上面高さの差が小さくなるので、焼結原料の焼成ムラが改善され、焼結鉱の歩留り低下を抑制できるようになる。
【符号の説明】
【0038】
10 焼結鉱の製造設備
12 焼結原料
14 造粒水
16 造粒機
18 造粒粒子
20 焼結機
21 原料供給装置
22 パレット
23 カットオフプレート
24 点火炉
26 ウインドボックス
28a~28e ラインバーナ
30 破砕機
32 焼結鉱
40 制御装置
41 制御部
42 記憶部
50 配管
52a~52e バルブ