(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129875
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 23/06 20060101AFI20240920BHJP
F02B 23/10 20060101ALI20240920BHJP
F02M 61/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F02B23/06 L
F02B23/10 310A
F02M61/18 320C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039241
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】口田 征人
【テーマコード(参考)】
3G023
3G066
【Fターム(参考)】
3G023AA01
3G066AA07
3G066BA02
3G066CC26
3G066CC27
3G066CC41
3G066CE22
(57)【要約】
【課題】燃料が均質に拡散しやすい内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関は、吸気側と、排気側と、を有する気筒と、前記気筒空間の内部に燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記気筒空間の内部にタンブル流を形成するタンブル流発生手段と、を備え、前記燃料噴射弁は、前記吸気側において前記タンブル流の流れる方向に対して第1方向に燃料を噴射し、前記排気側において前記タンブル流の流れる方向に対して前記第1方向と異なる第2方向に燃料を噴射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気側と、排気側と、を有する気筒空間と、
前記気筒空間の内部に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記気筒空間の内部にタンブル流を形成するタンブル流発生手段と、
を備え、
前記燃料噴射弁は、前記吸気側において前記タンブル流の流れる方向に対して第1方向に燃料を噴射し、前記排気側において前記タンブル流の流れる方向に対して前記第1方向と異なる第2方向に燃料を噴射する、
内燃機関。
【請求項2】
前記第1方向は、前記タンブル流の流れる方向に対して沿った方向であり、前記第2方向は、前記タンブル流の流れる方向に対向する方向である、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記燃料噴射弁は、前記第1方向に形成する噴霧の貫徹力を、前記第2方向に形成する噴霧の貫徹力よりも弱くする、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記燃料噴射弁は、前記第1方向に噴射する噴孔数が、前記第2方向に噴射する噴孔数よりも多い、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気筒の内部に燃料を噴射する内燃機関が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、タンブル流に沿った方向に燃料を噴射し、点火プラグ周囲に混合気を供給するガソリンエンジンを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気筒内で自着火させる内燃機関では、気筒内の混合を均一にする必要がある。このため、燃料が気筒内に均質に拡散することが好ましい。
【0005】
本開示の課題は、燃料が均質に拡散しやすい内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関は、吸気側と、排気側と、を有する気筒空間と、前記気筒空間の内部に燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記気筒空間の内部にタンブル流を形成するタンブル流発生手段と、を備え、前記燃料噴射弁は、前記吸気側において前記タンブル流の流れる方向に対して第1方向に燃料を噴射し、前記排気側において前記タンブル流の流れる方向に対して前記第1方向と異なる第2方向に燃料を噴射する。
【0007】
この内燃機関によれば、タンブル流を利用して燃料が気筒内全体に均質に拡散する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、燃料が均質に拡散しやすい内燃機関を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態による内燃機関の断面図。
【
図2】本開示の第1実施形態による噴霧形態を示す図。
【
図3】本開示の第2実施形態による噴霧形態を示す図。
【
図4】本開示の第3実施形態による噴霧形態を示す図。
【
図5】本開示の第4実施形態による噴霧形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、内燃機関1は、気筒空間2と、タンブル流発生手段4と、燃料噴射弁6と、を備える。本実施形態の内燃機関1は、燃料噴射弁6が気筒空間2の内部に燃料を噴射する直噴型のディーゼルエンジンである。
【0012】
気筒空間2は、シリンダブロック8と、シリンダヘッド10と、ピストン12と、に囲まれる空間である。シリンダヘッド10は、複数の吸気バルブ14と、複数の排気バルブ16と、を有する。
図2(b)に示すように、本実施形態では1つの気筒空間2に2つの吸気バルブ14と、2つの排気バルブ16が配置される。2つの吸気バルブ14が配置される側が、気筒空間2の吸気側(図面においてINと記す)である。2つの排気バルブ16が配置される側が、気筒空間2の排気側(図面においてOUTと記す)である。
【0013】
図1に示すように、シリンダブロック8は、ピストン12が収容される。本実施形態ではピストン12は、キャビティ12aを有する。キャビティ12aは、吸気側から排気側に向けて延び、ピストン12の頂面から凹んだ部分である。しかし、ピストン12は、キャビティ12aを有さないフラットピストンであってもよい。
【0014】
タンブル流発生手段4は、気筒空間2の内部にタンブル流を形成する。
図1の気筒空間2の内部の矢印に示すように、本実施形態ではタンブル流は、吸気バルブ14から排気バルブ16に向けて流れたのちシリンダヘッド10側からピストン12側に向けて流れる縦渦である。本実施形態のタンブル流発生手段4は、このような縦渦を形成するようにシリンダヘッド10に形成された吸気ポートである。しかし、タンブル流発生手段4は、例えば、このような縦渦を形成するバルブ装置であってもよい。いずれにせよ、タンブル流発生手段4は、このような縦渦を発生させられるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0015】
燃料噴射弁6は、複数の噴射孔が気筒空間2に臨んで配置される。
図2に示すように、本実施形態の燃料噴射弁6は、吸気側と、排気側と、に燃料を噴射し、噴霧M1および噴霧M2を形成する。噴霧M1および噴霧M2は、タンブル流によって拡散される。これによって、気筒空間2全体に噴霧M1および噴霧M2が拡散し、燃料と吸気と混ざり合った混合気が形成される。ディーゼルエンジンでは、ピストン12が上昇する圧縮行程において、この混合気が自着火し、燃焼する。したがって、噴霧M1および噴霧M2が気筒空間2に均質に拡散することが好ましい。
【0016】
燃料噴射弁6は、吸気側においてタンブル流の流れる方向に対して沿った方向(第1方向の一例)に燃料を噴射し、噴霧M1を形成する。燃料噴射弁6は、排気側においてタンブル流の流れる方向に対して沿った方向と異なる方向(第2方向の一例)に燃料を噴射し、噴霧M2を形成する。本実施形態では、
図2(a)に示すように、噴霧M1および噴霧M2は、キャビティ12aに向けて形成される。
図2(b)に示すように、キャビティ12aの内部では、タンブル流が排気側から吸気側に向けて流れている。
【0017】
図2に示すように、燃料噴射弁6は、噴霧M1の貫徹力が噴霧M2の貫徹力より弱くなるように燃料を噴射する。貫徹力は、噴霧の指向性の強さを示す値である。貫徹力は、例えば燃料噴射弁6の噴射孔の直径を大きくすることによって強くなり、噴霧が噴射孔からより遠くまで形成される。反対に、貫徹力は、例えば燃料噴射弁6の噴射孔の直径を小さくすることによって弱くなり、噴霧が噴射孔からより近いところで拡散する。このほか、貫徹力は燃料噴射圧力を調整することによっても変更可能である。
【0018】
上記の通り本実施形態では、噴霧M1の貫徹力が噴霧M2の貫徹力よりも低い。すなわち、噴霧M1を形成する燃料噴射弁6の噴射孔の直径が、噴霧M2を形成する燃料噴射弁6の噴射孔の直径よりも小さい。また、燃料噴射弁6は、噴霧M1を形成する噴射孔の数(噴孔数)が、噴霧M2を形成する噴射孔の数より多い。本実施形態では、噴霧M1が吸気側に3つ形成され、噴霧M2が排気側に2つ形成される。これによって、吸気側と排気側の燃料噴射量が等しくなるようにしている。
【0019】
噴霧M1は、タンブル流に乗って拡散する。この結果、噴霧M1は、気筒空間2の吸気とより多く混合する。
【0020】
噴霧M2は、タンブル流とぶつかり、拡散する。これによって、噴霧M2は、微粒化される。噴霧M2は、微粒化することによって、混合と気化が促進される。
【0021】
すなわち、噴霧M1は、噴霧M2に比べ、タンブル流に乗って燃料を遠くまで拡散することができる。一方、噴霧M2は、噴霧M1と比べ、タンブル流とぶつかり、燃料が微粒化して拡散することができる。
【0022】
本実施形態では、このように噴霧M1がより多くの吸気と混合しながら、噴霧M2の微粒化によって混合と気化を促進する。これによって、気筒空間2内部に燃料が均質に拡散するとともに、均質な混合気が形成されやすい。つまり、内燃機関1は、混合のし方が異なる複数の噴霧形態によって、混合を効率よく促進することができる。
【0023】
<第2実施形態>
次に本開示の第2実施形態について、
図3を用いて説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0024】
図3(a)に示すように、本実施形態では、燃料噴射弁6は、吸気側の噴霧M21および排気側の噴霧M22を、キャビティ12aの周囲12bに向けて形成する。
図3(b)に示すように、キャビティ12aの外では、タンブル流が吸気側から排気側に向けて流れている。
【0025】
燃料噴射弁6は、吸気側においてタンブル流の流れる方向に対して対向する方向(第2方向の一例)に燃料を噴射し、噴霧M21を形成する。燃料噴射弁6は、排気側においてタンブル流の流れる方向に対して沿った方向(第1方向の一例)に燃料を噴射し、噴霧M22を形成する。
【0026】
図3に示すように、燃料噴射弁6は、噴霧M22の貫徹力が噴霧M21の貫徹力より弱くなるように燃料を噴射する。すなわち、噴霧M22を形成する燃料噴射弁6の噴射孔の直径が、噴霧M21を形成する燃料噴射弁6の噴射孔の直径よりも小さい。また、燃料噴射弁6は、噴霧M22を形成する噴射孔の数(噴孔数)が、噴霧M21を形成する噴射孔の数より多い。本実施形態では、噴霧M21が吸気側に2つ形成され、噴霧M22が排気側に3つ形成される。これによって、吸気側と排気側の燃料噴射量が等しくなるようにしている。
【0027】
噴霧M22は、タンブル流に乗って拡散する。この結果、噴霧M22は、気筒空間2の吸気とより多く混合する。
【0028】
噴霧M21は、タンブル流とぶつかり、拡散する。これによって、噴霧M21は、微粒化される。噴霧M21は、微粒化することによって、混合と気化が促進される。
【0029】
すなわち、噴霧M22は、噴霧M21に比べ、タンブル流に乗って燃料を遠くまで拡散することができる。一方、噴霧M21は、噴霧M22と比べ、タンブル流とぶつかり、燃料が微粒化して拡散することができる。
【0030】
本実施形態では、このように噴霧M22がより多くの吸気と混合しながら、噴霧M21の微粒化によって混合と気化を促進する。これによって、気筒空間2内部に燃料が均質に拡散するとともに、均質な混合気が形成されやすい。つまり、内燃機関1は、混合のし方が異なる複数の噴霧形態によって、混合を効率よく促進することができる。
【0031】
<第3実施形態>
次に本開示の第3実施形態について、
図4を用いて説明する。なお、第3実施形態においても、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0032】
図4(a)に示すように、本実施形態では、燃料噴射弁6は、吸気側の噴霧M31をキャビティ12aの周囲12bに向けた方向(第1方向の一例)に形成する。一方、排気側の噴霧M32を、キャビティ12aに向けた方向(第2方向の一例)に形成する。
図4(b)の実線矢印に示すように、キャビティ12aの外では、タンブル流が吸気側から排気側に向けて流れている。
図4(b)の破線矢印に示すように、キャビティ12aの内部では、タンブル流が排気側から吸気側に向けて流れている。
【0033】
燃料噴射弁6は、吸気側および排気側の両方においてタンブル流の流れる方向に対して対向する方向に燃料を噴射し、噴霧M31および噴霧M32を形成する。
【0034】
図4に示すように、燃料噴射弁6は、噴霧M31の貫徹力と、噴霧M32の貫徹力とが等しくなるように燃料を噴射する。また、燃料噴射弁6は、噴霧M31を形成する噴射孔の数(噴孔数)と、噴霧M32を形成する噴射孔の数とが、同じである。本実施形態では、噴霧M31が吸気側に2つ形成され、噴霧M32が排気側に2つ形成される。これによって、吸気側と排気側の燃料噴射量が等しくなるようにしている。
【0035】
噴霧M31および噴霧M32は、タンブル流とぶつかり、拡散する。これによって、噴霧M31および噴霧M32は、微粒化される。噴霧M31および噴霧M32は、微粒化することによって、混合と気化が促進される。
【0036】
本実施形態では、このように噴霧M31および噴霧M32の微粒化によって混合と気化を促進する。これによって、気筒空間2内部に燃料が均質に拡散するとともに、均質な混合気が形成されやすい。
【0037】
<第4実施形態>
次に本開示の第4実施形態について、
図5を用いて説明する。なお、第4実施形態においても、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0038】
図5(a)に示すように、本実施形態では、燃料噴射弁6は、吸気側の噴霧M41をキャビティ12aに向けた方向(第2方向の一例)に形成する。一方、排気側の噴霧M42を、キャビティ12aの周囲12bに向けた方向(第1方向の一例)に形成する。
図5(b)の実線矢印に示すように、キャビティ12aの外では、タンブル流が吸気側から排気側に向けて流れている。
図5(b)の破線矢印に示すように、キャビティ12aの内部では、タンブル流が排気側から吸気側に向けて流れている。
【0039】
燃料噴射弁6は、吸気側および排気側の両方においてタンブル流の流れる方向に対して沿った方向に燃料を噴射し、噴霧M41および噴霧M42を形成する。
【0040】
図5に示すように、燃料噴射弁6は、噴霧M41の貫徹力と、噴霧M42の貫徹力とが等しくなるように燃料を噴射する。また、燃料噴射弁6は、噴霧M41を形成する噴射孔の数(噴孔数)と、噴霧M42を形成する噴射孔の数とが、同じである。本実施形態では、噴霧M41が吸気側に3つ形成され、噴霧M42が排気側に3つ形成される。これによって、吸気側と排気側の燃料噴射量が等しくなるようにしている。
【0041】
噴霧M41および噴霧M42は、タンブル流に乗って拡散する。この結果、噴霧M41および噴霧M42は、気筒空間2の吸気とより多く混合する。これによって、気筒空間2内部に燃料が均質に拡散するとともに、均質な混合気が形成されやすい。
【0042】
以上説明した通り、本開示によれば、噴霧が均質に拡散しやすい内燃機関1を提供できる。
【0043】
<他の実施形態>
以上、本実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は、必要に応じて任意に組み合わせ可能である。
【0044】
(a)例えば、上記第1実施形態から第4実施形態では、噴射孔の数を2つ、または3つの例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。タンブル流の流れる方向に対して沿った方向に噴射する噴孔数が、タンブル流の流れる方向に対して対向する方向に噴射する噴孔数よりも多ければ、噴射孔の数は特に限定されない。
【0045】
(b)上記第1実施形態から第4実施形態では、各噴霧をキャビティ12a、およびキャビティ12aの周囲12bに向けて形成する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。排気側と吸気側とで、噴霧を異なる方向に形成できれば、キャビティ12a、およびキャビティ12aの周囲12b以外の方向に、各噴霧を形成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 :内燃機関
2 :気筒空間
4 :タンブル流発生手段
6 :燃料噴射弁
M1、M21、M31、M41:噴霧
M2、M22、M32、M42:噴霧