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  • 特開-船舶設備及びガス燃料生成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129877
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】船舶設備及びガス燃料生成方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20240920BHJP
   F02M 21/06 20060101ALI20240920BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20240920BHJP
   B63H 21/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B63B25/16 M
F02M21/06 Z
B63J99/00 A
B63H21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039245
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】野上 哲男
(72)【発明者】
【氏名】藤原 重治
(72)【発明者】
【氏名】曽我 泰経
(57)【要約】
【課題】
ガスエンジンの運転状況にかかわらず、液化ガスの気化に利用可能な排熱を取得できる船舶設備を提供する。
【解決手段】
本開示の一態様に係る船舶設備は、ガスエンジンと、排熱を放出する電力装置と、前記電力装置の排熱を利用して液化ガスを気化させ、前記ガスエンジン用のガス燃料を生成する蒸発器と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスエンジンと、
排熱を放出する電力装置と、
前記電力装置の排熱を利用して液化ガスを気化させ、前記ガスエンジン用のガス燃料を生成する蒸発器と、を備えている、船舶設備。
【請求項2】
前記電力装置は少なくとも1つの電力変換器を含んでいる、請求項1に記載の船舶設備。
【請求項3】
前記ガスエンジンは推進プロペラを駆動するガスエンジンを含み、
当該船舶設備は、前記推進プロペラの駆動及び発電が可能な電動発電機をさらに備え、
前記電力装置は、前記電動発電機と電気的に接続する電力変換器を含んでいる、請求項2に記載の船舶設備。
【請求項4】
前記電動発電機の発電により得た電力を貯蔵できる電力貯蔵装置をさらに備え、
前記電力装置は、前記電力貯蔵装置と電気的に接続する電力変換器を含んでいる、請求項3に記載の船舶設備。
【請求項5】
船内電気機器に電力を供給する船内電力配線をさらに備え、
前記電力装置は、前記船内電力配線と電気的に接続する電力変換器を含んでいる、請求項2乃至4のうちいずれか一の項に記載の船舶設備。
【請求項6】
電力装置の排熱を利用して液化ガスを気化させ、ガスエンジン用のガス燃料を生成する、ガス燃料生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶設備及びガス燃料生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、船舶用エンジンの排熱を液体媒体により回収し、液化天然ガスを上記液体媒体で加熱して気化させる液化天然ガス用気化器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/183510号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスエンジンの排熱を利用して液化ガスを気化させ、ガスエンジン用のガス燃料を生成する設備では、ガスエンジンの始動前など、ガスエンジンの運転状況によっては排熱を取得できない場合がある。
【0005】
本開示は、ガスエンジンの運転状況にかかわらず、液化ガスの気化に利用可能な排熱を取得できる船舶設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る船舶設備は、ガスエンジンと、排熱を放出する電力装置と、前記電力装置の排熱を利用して液化ガスを気化させ、前記ガスエンジン用のガス燃料を生成する蒸発器と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る船舶設備によれば、ガスエンジンの運転状況にかかわらず、液化ガスの気化に利用可能な排熱を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、船舶設備のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る船舶設備100のブロック図である。船舶設備100は、船内に位置している。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る船舶設備100は、ガスエンジン11と、電動発電機12と、電力貯蔵装置13と、船内電力配線14と、電力装置15と、蒸発器16と、を備えている。以下、これらの構成要素について順に説明する。
【0011】
<ガスエンジン>
ガスエンジン11は、ガス燃料を燃焼させて動力を得るエンジンである。ガス燃料は、例えば、天然ガス、水素ガス、アンモニアガスなどである。本実施形態のガスエンジン11は減速機21と機械的に接続しており、減速機21は推進プロペラ22と機械的に接続している。ガスエンジン11で発生した動力は、減速機21を介して推進プロペラ22に伝えられ、推進プロペラ22を駆動することができる。
【0012】
<電動発電機>
電動発電機12は、電動機の機能と発電機の機能を併せ持つ装置である。電動発電機12は電力装置15から供給された電力によって動力を発生する。本実施形態の電動発電機12は減速機21と機械的に接続している。電動発電機12で発生した動力は、減速機21を介して推進プロペラ22に伝えられ、推進プロペラ22を駆動することができる。なお、本実施形態では、ガスエンジン11で発生した動力、及び、電動発電機12で発生した動力のうち、一方のみで推進プロペラ22を駆動することもでき、両方で推進プロペラ22を駆動することもできる。
【0013】
また、電動発電機12は、減速機21を介して伝えられたガスエンジン11の動力によって発電でき、推進プロペラ22の減速時にも発電することができる。電動発電機12は、発電により得た電力を交流電力として電力装置15に供給する。なお、本実施形態では、ガスエンジン11と電動発電機12は並列に配置されており、それぞれが発生した動力は別々に減速機21に入力される。ただし、ガスエンジン11と電動発電機12を直列に配置し、例えば、ガスエンジン11で発生した動力を、電動発電機12を介して減速機21に伝えてもよい。
【0014】
<電力貯蔵装置>
電力貯蔵装置13は、電力を貯蔵する装置である。本実施形態の電力貯蔵装置13は、電力装置15と電気的に接続されており、電力装置15との間で電力をやり取りすることができる。したがって、電力貯蔵装置13は、電動発電機12の発電により得た電力を、電力装置15を介して取得し、貯蔵することができる。また、電力貯蔵装置13は、貯蔵した電力を、電力装置15を介して電動発電機12に供給することができる。なお、電力貯蔵装置13が電力装置15に供給する電力、及び、電力貯蔵装置13から供給される電力は、直流電力である。
【0015】
<船内電力配線>
船内電力配線14は、船内電気機器23に電力を供給する配線である。船内電気機器23には、船舶の操作盤、照明、空調機、生活機器などの機器が含まれる。一方、上述した電動発電機12及び電力貯蔵装置13などの主に船舶の推進に用いられる装置は、船内電気機器23に含まれない。本実施形態の船内電力配線14は、複数の船内電気機器23に加え、船内発電機24とも電気的に接続している。船内発電機24の発電により得た電力は、船内電力配線14を介して各船内電気機器23に供給される。また、船内電力配線14は、電力装置15と電気的に接続されており、電力装置15との間で電力をやり取りすることができる。したがって、船内発電機24の発電によって得た電力は電力装置15に供給でき、各船内電気機器23に供給する電力は電力装置15から得ることができる。なお、船内電力配線14を流れる電流は交流である。
【0016】
<電力装置>
電力装置15は、電流が内部を流れることにより排熱を放出する装置である。なお、電力装置15は発熱を目的とした装置ではなく、発熱以外を目的とする動作により副次的に発生した排熱を放出する装置である。本実施形態の電力装置15は、電力変換装置であって、複数の電力変換器を含んでいる。電力変換器には、ある直流電力を異なる電圧の直流電力に変換するDC/DC電力変換器、交流電力を直流電力に変換するAC/DC電力変換器、直流電力を交流電力に変換するDC/AC電力変換器、ある交流電力を異なる電圧及び/又は異なる周波数の交流電力に変換するAC/AC電力変換器、及び、これらを組み合わせた電力変換器が含まれる。
【0017】
本実施形態の電力装置15は、直流配線30と、第1電力変換器31と、第2電力変換器32と、第3電力変換器33と、を含んでいる。
【0018】
直流配線30は、直流電流が流れる配線である。本実施形態の直流配線30は、第1電力変換器31、第2電力変換器32、及び、第3電力変換器33と電気的に接続している。なお、本実施形態では、直流配線30、第1電力変換器31、第2電力変換器32、及び、第3電力変換器33は、収容ケース34に収容されている。
【0019】
第1電力変換器31は、電動発電機12と電気的に接続する電力変換器である。第1電力変換器31は、電動発電機12と直流配線30の間に位置しており、電動発電機12から供給された交流電力を直流電力に変換して直流配線30に供給でき、直流配線30から供給された直流電力を交流電力に変換して電動発電機12に供給できる。
【0020】
第2電力変換器32は、電力貯蔵装置13と電気的に接続する電力変換器である。第2電力変換器32は、電力貯蔵装置13と直流配線30の間に位置しており、電力貯蔵装置13から供給された直流電流を電圧の異なる直流電力に変換して直流配線30に供給でき、直流配線30から供給された直流電力を電圧の異なる直流電力に変換して電動発電機12に供給できる。
【0021】
第3電力変換器33は、船内電力配線14と電気的に接続する電力変換器である。第3電力変換器33は、船内電力配線14と直流配線30の間に位置しており、船内電力配線14から供給された交流電力を直流電力に変換して直流配線30に供給でき、直流配線30から供給された直流電力を交流電力に変換して船内電力配線14に供給できる。
【0022】
なお、電力装置15は、第1電力変換器31、第2電力変換器32、及び、第3電力変換器33を含んでいるが、これら以外の電力変換器を含んでいてもよい。例えば、船舶に太陽光発電システムが設置されている場合、電力装置15は太陽光発電システムに接続される電力変換器を含んでいてもよい。ただし、電力装置15に含まれる電力変換器の数は限定されない。一般的に電力変換器は排熱量が大きいため、電力変換器を含む電力装置15の排熱量は大きくなる。なお、電力装置15は、電力変換装置以外の装置であってもよい。
【0023】
<蒸発器>
蒸発器16は、液化ガスを気化させる機器である。前述のとおり、ガスエンジン11の燃料はガス燃料である。ガスエンジン11で使用するガス燃料は、冷却して液化され、液化ガスの状態で液化ガスタンク40に貯蔵されている。蒸発器16は、液化ガス配管41を介して液化ガスタンク40から液化ガスを取得するとともに、電力装置15の排熱によって加熱された熱媒体を電力装置15から往き配管43を介して取得する。そして、蒸発器16では、液化ガスと熱媒体の間で熱交換が行われ、液化ガスが加熱されて気化する。これによりガス燃料が生成される。生成されたガス燃料は、ガス燃料配管42を介してガスエンジン11に供給される。なお、熱交換を行った後の熱媒体は、戻り配管44を介して蒸発器16から電力装置15に戻される。
【0024】
液化ガスの加熱に用いる熱媒体は気体であってもよく、液体であってもよい。例えば、電力装置15の収容ケース34内又は収容ケース34の壁面に沿って流れる冷却空気や冷却水を熱媒体として用いてもよい。つまり、電力装置15を冷却する冷媒体を、液化ガスを気化するための熱媒体として利用してもよい。なお、蒸発器16は、電力装置15の排熱を利用して液化ガスを気化できればよく、具体的な構成は限定されない。また、蒸発器16は、電力装置15の排熱に加え、電力装置15の排熱以外の熱源を利用して、液化ガスを気化させてもよい。
【0025】
以上のとおり、本実施形態の蒸発器16は、電力装置15の排熱を利用して液化ガスを気化させている。そのため、ガスエンジン11の運転状況にかかわらず、液化ガスの気化に利用可能な排熱を取得することができる。また、同時に、電力装置15を冷却できるため、電力装置15の過熱を防ぐことができる。
【0026】
以上、実施形態に係る船舶設備100について説明したが、本明細書で開示する船舶設備100は実施形態の構成に限定されない。例えば、実施形態のガスエンジン11は推進プロペラを駆動するガスエンジンであったが、ガスエンジン11は船内発電機を駆動するガスエンジンであってもよい。また、ガスエンジン11は、推進プロペラを駆動するガスエンジンと船内発電機を駆動するガスエンジンの両方を含んでいてもよい。この場合、蒸発器16で生成したガス燃料は、推進プロペラを駆動するガスエンジンと船内発電機を駆動するガスエンジンの両方で使用される。
【0027】
<まとめ>
本明細書で開示する第1の項目は、ガスエンジンと、排熱を放出する電力装置と、前記電力装置の排熱を利用して液化ガスを気化させ、前記ガスエンジン用のガス燃料を生成する蒸発器と、を備えている、船舶設備である。
【0028】
この構成によれば、ガスエンジンの運転状況にかかわらず、液化ガスの気化に利用可能な排熱を取得することができる。
【0029】
本明細書で開示する第2の項目は、前記電力装置は少なくとも1つの電力変換器を含んでいる、第1の項目に記載の船舶設備である。
【0030】
この構成によれば、電力装置が排熱量の大きい電力変換器を含むため、液化ガスの気化に利用可能な排熱をより安定的に取得することができる。
【0031】
本明細書で開示する第3の項目は、前記ガスエンジンは推進プロペラを駆動するガスエンジンを含み、当該船舶設備は、前記推進プロペラの駆動及び発電が可能な電動発電機をさらに備え、前記電力装置は、前記電動発電機と電気的に接続する電力変換器を含んでいる、第2の項目に記載の船舶設備である。
【0032】
この構成によれば、電動発電機と電気的に接続する電力変換器の排熱を有効に利用することができる。
【0033】
本明細書で開示する第4の項目は、前記電動発電機の発電により得た電力を貯蔵できる電力貯蔵装置をさらに備え、前記電力装置は、前記電力貯蔵装置と電気的に接続する電力変換器を含んでいる、第3の項目に記載の船舶設備である。
【0034】
この構成によれば、電力貯蔵装置と電気的に接続する電力変換器の排熱を有効に利用することができる。
【0035】
本明細書で開示する第5の項目は、船内電気機器に電力を供給する船内電力配線をさらに備え、前記電力装置は、前記船内電力配線と電気的に接続する電力変換器を含んでいる、第2乃至第4の項目のうちいずれか一の項目に記載の船舶設備である。
【0036】
この構成によれば、船内電力配線と電気的に接続する電力変換器の排熱を有効に利用することができる。
【0037】
本明細書で開示する第6の項目は、電力装置の排熱を利用して液化ガスを気化させ、ガスエンジン用のガス燃料を生成する、ガス燃料生成方法である。
【0038】
この方法によれば、ガスエンジンの運転状況にかかわらず、液化ガスの気化に利用可能な排熱を取得することができる。
【符号の説明】
【0039】
11 ガスエンジン
12 電動発電機
13 電力貯蔵装置
14 船内電力配線
15 電力装置
16 蒸発器
22 推進プロペラ
23 船内電気機器
31 第1電力変換器
32 第2電力変換器
33 第3電力変換器
100 船舶設備
図1