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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129879
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A62C35/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039247
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 洋一郎
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】下降して開放する消火栓扉に設けられたダンパの清掃やグリスアップ等の保守作業が、簡単且つ容易に行えることを可能とする。
【解決手段】消火栓装置は、消火栓扉18が下降することで筐体前面の扉開口を開放する。消火栓扉18にはダンパ20が設けられ、消火栓扉18の下降に対し抵抗を与えて下降速度を調整する。ダンパ20には円筒形のダンパカバー36が伸縮方向に摺動自在に遊嵌され、消火栓扉18の閉鎖状態及び開放状態で自重により下降してシリンダ部20aからのロッド取出し部分20cの周囲を覆う状態を維持し、粉塵や水分の付着を防止して錆付きによる動作不良を回避させる。また、ダンパカバー36を上方にずらしてロッド取出し部分20cを露出させることで、清掃やグリスアップが可能となる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体前面の扉開口に設けられ、前記扉開口を開放する消火栓扉と、
シリンダ部に対し伸縮自在なロッドを有し、前記シリンダ部側の一端が前記筐体側のシリンダ固定部に固定されると共に、前記ロッド側の他端が前記消火栓扉側のロッド固定部に固定され、前記消火栓扉の開放動作に対し抵抗を与えて開放動作速度を調整するダンパと、
前記ダンパの伸縮方向に摺動自在に遊嵌され、前記消火栓扉の閉鎖状態及び開放状態で自重により下降して、前記シリンダ部からの前記ロッドの取出し部の周囲を覆う状態を維持するダンパカバーと、
を備えたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記ダンパカバーは、前記ダンパに対し摺動自在に遊嵌される円筒体であり、
前記円筒体は、前記ダンパの上部に移動する操作が行われた場合に、前記ロッドの取出し部が露出可能となる長さを有することを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記消火栓扉の閉鎖状態での前記シリンダ固定部から前記ロッドの取出し部までの長さをL1とし、
前記消火栓扉の開放状態での前記ロッドの取出し部から前記ロッド固定部までの長さをL2とした場合、
前記円筒体の長さLは、
L2≦L≦L1
の範囲の所定の長さとなることを特徴とする消火栓装置。
【請求項4】
請求項2記載の消火栓装置において、
前記円筒体は、透明な合成樹脂で形成されたことを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火栓扉を下降させることにより筐体前面の扉開口が開放する消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消火対象領域となる高速道路や自動車専用道路等のトンネル内には、トンネル非常用設備として消火栓装置が設置されている。消火栓装置は、消火栓扉を備えた筐体内の消火栓収納部に、消火栓機器として先端にノズルを装着した消火用ホース、消火栓弁を含むバルブ類、消火栓弁を開閉操作するための消火栓弁操作機構等が収納・設置されると共に、消火器扉を備えた筐体内の消火器収納部に、例えば、2本の消火器が収納されている。また、消火栓装置は、一般的にトンネル長手方向に、例えば、50メートル間隔でトンネル壁面を箱抜きして埋込み設置されている。
【0003】
また、従来の消火栓装置は、消火栓扉を下降させることにより筐体前面の扉開口を開放する消火栓扉(下降扉)が設けられており、消火栓扉には下降速度を抑えるように調整可能とするためにダンパが設けられている(特許文献1)。
【0004】
ところで、消火栓装置を設置してからの運用期間が長くなると、消火栓扉に設けられているダンパは、粉塵や風雪などの影響を受けてシリンダ部からのロッドの取出し部に錆や腐食が発生し、道路利用者が扉開閉ハンドルの操作によりラッチを解除して消火栓扉を開閉させる場合に、動作不良を起こすという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するためには、ダンパのロッドの取出し部に伸縮自在なダストカバーを装着することが考えられる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-181057号公報
【特許文献2】特開2020-159495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のダストカバーは、ダンパのシリンダ部側に一端が固定され、他端がロッド側に固定される取付け構造であるため、消火栓装置のダンパの場合は、ダストカバーを備えていても粉塵が付着する虞がある。また、消火栓装置の定期点検では、ダンパの清掃やグリスアップ等の保守作業を行う必要があるが、その際には、消火栓扉を分解してダストカバーを取外すことになり、保守作業に要する時間が相当増加するという問題がある。
【0008】
本発明は、下降して開放する消火栓扉に設けられたダンパの清掃やグリスアップ等の保守作業が、簡単且つ容易に行えることを可能とする消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(消火栓装置)
本発明は、消火栓装置であって、
筐体前面の扉開口に設けられ、扉開口を開放する消火栓扉と、
シリンダ部に対し伸縮自在なロッドを有し、シリンダ部側の一端が筐体側のシリンダ固定部に固定されると共に、ロッド側の他端が消火栓扉側のロッド固定部に固定され、消火栓扉の開放動作に対し抵抗を与えて開放動作速度を調整するダンパと、
ダンパの伸縮方向に摺動自在に遊嵌され、消火栓扉の閉鎖状態及び開放状態で自重により下降して、シリンダ部からのロッドの取出し部の周囲を覆う状態を維持するダンパカバーと、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
(円筒体ダンパカバー)
ダンパカバーは、ダンパに対し摺動自在に遊嵌される円筒体であり、
当該円筒体は、ダンパの上部に移動する操作が行われた場合に、ロッドの取出し部が露出可能となる長さを有する。
【0011】
(円筒体ダンパカバーの長さ)
消火栓扉の閉鎖状態でのシリンダ固定部からロッドの取出し部までの長さをL1とし、
消火栓扉の開放状態でのロッドの取出し部からロッド固定部までの長さをL2とした場合、
円筒体の長さLは、
L2≦L≦L1
の範囲の所定の長さとなる。
【0012】
(円筒体ダンパカバーの材質)
円筒体は、透明な合成樹脂で形成される。
【発明の効果】
【0013】
(消火栓装置の効果)
本発明は、消火栓装置であって、筐体前面の扉開口に設けられ、扉開口を開放する消火栓扉と、シリンダ部に対し伸縮自在なロッドを有し、シリンダ部側の一端が筐体側のシリンダ固定部に固定されると共に、ロッド側の他端が消火栓扉側のロッド固定部に固定され、消火栓扉の開放動作に対し抵抗を与えて開放動作速度を調整するダンパと、ダンパの伸縮方向に摺動自在に遊嵌され、消火栓扉の閉鎖状態及び開放状態で自重により下降して、シリンダ部からのロッドの取出し部の周囲を覆う状態を維持するダンパカバーと、を備えたため、ダンパにおけるシリンダ部からのロッドの取出し部の周囲がダンパカバーで覆われていることで、粉塵や水分の付着が抑制され、付着した粉塵に水分が含まれることで発生する錆や腐食が起きにくくなり、ダンパに起因した消火栓扉の動作不良が未然に防止可能となる。
【0014】
また、タンパカバーは、ダンパに固定されることなくダンパの伸縮方向に摺動自在に遊嵌されており、消火栓扉が閉鎖してダンパのロッドが縮んだ状態及び消火栓扉が下降して扉開口を開放したダンパのロッドが伸びた状態のいずれについても、自重により下降した位置にあるため、シリンダ部からのロッドの取出し部の周囲を常に覆う状態を維持し、粉塵や水分の付着が抑制可能となる。
【0015】
(円筒体ダンパカバーの効果)
また、ダンパカバーは、ダンパに対し摺動自在に遊嵌される円筒体であり、当該円筒体は、ダンパの上部に移動する操作が行われた場合に、ロッドの取出し部が露出可能となる長さを有するため、定期点検等の際には、作業者が消火栓扉を開いて扉開口から手を入れ、ダンパカバーを上にスライドさせるだけで簡単且つ容易にロッドの取出し部を露出させることで、清掃やグリスアップ等の保守作業を可能とし、短い時間で効率よく作業を進めることが可能となる。

(円筒体ダンパカバーの長さの効果)
また、消火栓扉の閉鎖状態でのシリンダ固定部からロッドの取出し部までの長さをL1とし、消火栓扉の開放状態でのロッドの取出し部からロッド固定部までの長さをL2とした場合、円筒体の長さLは、L2≦L≦L1の範囲の所定の長さとなることで、作業者がダンパの上部にダストカバーを移動(スライド)させて、ロッドの取出し部を露出させることが可能となる。
【0016】
(円筒体ダンパカバーの材質の効果)
また、ダストカバーとしての円筒体は、透明な合成樹脂で形成されているため、定期点検などの際に、作業者はダストカバーをずらして露出させることなく、ダンパのロッドの取出し部の状態を外部から確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】消火栓扉を備えた消火栓装置を消火栓扉の閉鎖状態と開放状態について示した説 明図である。
図2】消火栓装置の扉ユニットを取出して裏面側から示した説明図である。
図3】ダンパカバーを取出して示した説明図である。
図4】消火栓扉の閉鎖状態と開放状態を扉ユニットの裏面側から示した説明図である。
図5】消火栓扉の閉鎖状態と開放状態でダンパとダンパカバーを扉ユニットの裏面片側について示した説明図である。
図6】消火栓扉の開放状態でダンパカバーを上にスライドしてロッドの取出し部が露出した状態を示した説明図である。
図7】本願発明の消火栓装置の他の実施形態を消火栓扉の開放状態について示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る消火栓装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0019】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、筐体前面の扉開口に、下降することで扉開口を開放する消火栓扉(下降扉)を備え、消火栓扉にダンパを備えた消火栓装置に関するものであり、その消火栓装置の設置場所は任意であるが、例えば、道路を有するトンネルの監視員通路が沿って設けられたトンネル壁面の箱抜き部に設置されるものを含むものである。
【0020】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる、例えば、高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、内部に配置される消火栓機器として、消火用ホース、バルブ類、非常用設備の1種であるポンプ設備を起動するための操作部、例えば、ポンプ起動スイッチやポンプ起動連動スイッチ等を含み、また「配置」とは、収納、設置、取付、装着等を含む概念である。
【0021】
また、「ダンパ」とは、シリンダ部に対し伸縮自在なロッドを有し、シリンダ部側の一端が筐体の扉開口上側に固定すされると共に、ロッド側の他端が消火栓扉の下側に固定され、消火栓扉の自重による下降に対し抵抗を与えて下降速度を調整する緩衝装置として機能するものである。
【0022】
そして、実施形態の消火栓装置は、ダンパの伸縮方向に摺動自在に遊嵌され、消火栓扉の閉鎖状態及び開放状態で自重により下降して、シリンダ部からのロッドの取出し部の周囲を覆う状態を維持するダンパカバーを備える。
【0023】
このため、ダンパのロッドの取出し部の周囲がダンパカバーで覆われていることで、粉塵や水分の付着が抑制され、付着した粉塵に水分が含まれることで発生する錆や腐食が起きにくくなり、ダンパに起因した消火栓扉の動作不良が未然に防止可能となる。
【0024】
また、タンパカバーは、ダンパに固定されることなくダンパの伸縮方向に摺動自在に遊嵌されており、消火栓扉が閉鎖してダンパのロッドが縮んだ状態及び消火栓扉が下降して扉開口を開放したダンパのロッドが伸びた状態のいずれについても、自重により下降した位置にあるため、シリンダ部からのロッドの取出し部の周囲を常に覆う状態を維持し、粉塵や水分の付着が抑制可能となる。
【0025】
実施形態のダンパカバーは、ダンパに対し摺動自在に遊嵌される円筒体で構成されるものである。ダンパカバーとしての円筒体は、ダンパの上部に移動する操作(上にスライドする操作)が行われた場合に、シリンダ部からのロッドの取出し部が露出可能となる長さを有するようになっている。
【0026】
ダンパカバーとしての円筒体の長さLは、消火栓扉の閉鎖状態でのシリンダ固定部(ダンパのシリンダ側の筐体側との固定部)からロッドの取出し部までの長さをL1とし、消火栓扉の開放状態でのロッドの取出し部からロッド固定部(ロッド側の消火栓扉との固定部)までの長さをL2とした場合、
L2≦L≦L1
の範囲の所定の長さとなる。
【0027】
このため、定期点検等の際には、作業者が消火栓扉を開いて扉開口から手を入れてダンパカバーを上にスライドさせるだけで簡単且つ容易にロッドの取出し部を露出させることで、清掃やグリスアップ等の保守作業を可能とし、短い時間で効率よく作業を進めることが可能となる。
【0028】
また、ダンパカバーとしての円筒体は、透明な合成樹脂、例えば、耐環境性に優れた塩化ビニル樹脂(PVC)などで形成されている。このため、定期点検などの際に、作業者はダストカバーをずらして露出させることなく、ロッドの取出し部の状態を外部から確認することが可能なる。
【0029】
以下、具体的な実施形態を説明する。実施形態では、消火栓装置が道路を有するトンネルの監視員通路に沿って設けられたトンネル壁面の箱抜き部に設置された場合であり、消火栓装置の消火栓収納部側の筐体の前部に配置される扉ユニットに下降自在に設けられた消火栓扉の両側に配置された2本のダンパのそれぞれに「ダンパカバー」が伸縮方向に摺動自在に遊嵌される場合について説明する。
【0030】
[実施形態の具体的内容]
実施形態の消火栓装置について、次のように分けて詳細に説明する。
a.消火栓装置
a1.消火栓装置の構造
a2.扉ユニット
b.ダンパカバー
c.消火栓扉の閉鎖と開放に伴うダンパとダンパカバーの機能
d.ダンパの点検作業
e.消火栓装置の他の実施形態
f.本発明の変形例
【0031】
[a.消火栓装置]
実施形態の消火栓装置について説明する。当該説明にあっては、消火栓扉を備えた消火栓装置を消火栓扉の閉鎖状態と開放状態で示した図1を参照する。尚、図1(A)は消火栓扉の閉鎖状態を示し、図1(B)は消火栓扉の開放状態を示す。
【0032】
ここで、図1の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、各種扉が設けられた消火栓装置の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とする。この点は本発明の実施形態となる図2図6においても同様となる。
【0033】
(a1.消火栓装置の構造)
まず、消火栓装置の構造について説明する。図1(A)に示すように、消火栓装置10は、筐体構造として、右側に消火栓収納部12が配置され、左側に消火器収納部14が配置されている。
【0034】
消火栓収納部12の前面には扉ユニット11が配置され、扉ユニット11には消火栓扉18が上下方向に移動自在に設けられている。消火栓扉18は、扉開閉ハンドル18aのラッチ機構により扉開口を閉鎖した状態に保持され、扉開閉ハンドル18aの操作によりラッチが解除されると、自重により下降して図1(B)に示すように扉開口24を開放する。
【0035】
消火栓扉18の内部両側にはダンパ20が配置されており、消火栓扉18の下降に対し抵抗を与えて下降速度を抑えるように調整し、消火栓扉18が滑らかに下降して衝撃を発生することなく停止できるようになっている。
【0036】
消火栓収納部12の筐体内には、放水用ノズルを装着したホース、消火栓弁開閉レバーを備えた消火栓弁、自動調圧弁、給水栓等の消火に必要な消火栓機器が収納されている。
【0037】
消火器収納部14の筐体の左側には消火器扉15が設けられ、筐体内に2本の消火器が収納されている。消火器扉16には覗き窓17が設けられ、外部から消火器の有無が確認可能となっている。消火器扉15の右側には電装扉16が電装扉が設けられている。電装扉16には赤色表示灯40、発信機42、応答ランプ44及びスピーカ48が配置され、扉裏側には電話ジャック46が配置されている。
【0038】
赤色表示灯40は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から確認できるようになっている。また、発信機42は、例えば、火災等の発生時に押されてスイッチがオンすると発信信号を送信し、これを受信した電気室等に設置された防災受信盤から火災警報が出力され、防災受信盤からの応答信号を受信した消火栓装置10は、赤色表示灯40を点滅させると共に、応答ランプ44を点灯させ、更に、スピーカ48から応答音を出力させる。
【0039】
道路利用者が消火栓装置10を使用する場合には、扉開閉ハンドル18aを操作してラッチを解除すると、消火栓扉18は自重により下降して図1(B)に示すように扉開口24を開放する。
【0040】
扉開口24が開放すると、消火栓収納部12の筐体内に内巻きで収納されている消火用ホース50の先端に装着された放出用ノズル56がノズルホルダー54に保持された状態で露出する。また、開放した扉開口24内には、消火栓弁開閉レバー58、給水栓60及びポンプ起動スイッチ62が配置されている。
【0041】
このため、道路利用者はノズルホルダー54から放水用ノズル56を取出し、ホース取出口55を介して消火用ホース50を引出し、この状態で消火栓弁開閉レバー58を図示の閉鎖位置から下側の開放位置に操作することで消火栓弁を開放し、放水用ノズル56から放水しながら火災現場に向かうこととなる。消火栓弁開閉レバー58が開放位置に操作されると操作ボックス内に配置されているポンプ起動連動スイッチ64がオンし、防災受信盤側へポンプ起動信号を送信して消火ポンプ設備を起動させる。
【0042】
また、消防隊員が消火栓装置10を利用して放水する場合には、給水栓60に消防用ホースを接続して給水弁を開き、ポンプ起動スイッチ62をオン操作し、防災受信盤側へポンプ起動信号を送信して消火ポンプ設備を起動させ、放水による消火活動を行うこととなる。
【0043】
(a2.扉ユニット)
消火栓装置の扉ユニットについて説明する。当該説明にあっては、消火栓装置の扉ユニットを取出して裏面側から示した図2を参照する。
【0044】
図2に示すように、扉ユニット11は前面パネル22の上側に扉開口24が形成されており、扉開口24の裏面側には消火栓扉18が配置されている。消火栓扉18は、前面パネル22の裏面両側の上下方向に配置されたガイド部26に沿って、消火栓扉18の両側の側面の上下となる4箇所に設けられたローラニット32により、上下方向に案内移動するように配置されている。ローラユニット32には前面パネル22の裏面に沿って転動するローラと、ガイド部26に沿って転動するローラとが設けられている。
【0045】
また、消火栓扉18の下端中央には扉開閉ハンドル18aが設けられ、公知のラッチ機構により扉開口24を閉鎖する位置に消火栓扉18を保持し、図1に示したように、前面側から扉開閉ハンドル18aを、例えば、手前に引く操作を行うと、消火栓扉18のラッチが解除され、自重により消火栓扉18は前面パネル22の裏面下側となる扉収納部35に下降し、図1(B)に示したように扉開口24を開放する。扉収納部35の下部両側の裏面にはストッパ34が配置されており、この位置が消火栓扉18が下降した場合の停止位置となる。
【0046】
前面パネル22の裏面となる消火栓扉18の両側にはダンパ20が配置されている。ダンパ20は公知であり、シリンダ部とシリンダ部に対し伸縮自在に設けられたロッドで構成されている。ダンパ20はシリンダ部を上側として配置され、扉開口24の上部となる前面パネル22の裏面側にシリンダ部の上端がシリンダ固定部28により固定され、消火栓扉18の下端両側にロッドの先端がロッド固定部30により固定されている。
【0047】
ダンパ20はシリンダ部内にピストンが摺動自在に配置され、ピストンからロッドが外部に取り出されている。ピストンにはオリフィス流路が設けられ、シリンダ内には不活性ガスとオイルが充填されている。消火栓扉18を下降させると、ピストンの移動側となる下側シリンダ室に充填されているガスがオリフィスを通って上側のシリンダ室に移動し、このときガスによる流動抵抗は発生しないことから消火栓扉18は自重により素早く下降する。オリフィスを通るガスがオイルに移行すると流動抵抗が発生し、消火栓扉18は流動抵抗で決まる移動速度で緩やかに下降することになる。
【0048】
尚、ピストンのオリフィスと並列に逆止弁が設けられたダンパを使用すれば、開放した消火栓扉18が閉鎖位置に引き上げられる場合に、逆止弁が開いて流動抵抗を受けることなく消火栓扉18が移動することが可能となる。
【0049】
消火栓扉18の両側に配置されたダンパ20の外側には、ダンパカバー36が伸縮方向に移動自在に遊嵌されている。ダンパカバー36は消火栓扉18の閉鎖状態で、自重により下端がロッド固定部30に当接する位置にあり、シリンダ部からのロッドの取出し位置を含むダンパ20の略全体を覆っている。
【0050】
[b.ダンパカバー]
続いて、ダンパに設けられるダンパカバーについて説明する。当該説明にあっては、ダンパカバーを取出して示した図3を参照する。尚、図3(A)はダンパカバーの正面を示し、図3(B)はダンパカバー底面を示す。
【0051】
図3に示すように、ダンパカバー36は所定長さLと穴径Dを有する円筒体であり、透明な合成樹脂、例えば、耐環境性に優れた塩化ビニル樹脂(PVC)などで作られおり、内部に位置するダンパの状態を外部から確認することが可能となっている。ダンパカバー36の穴径Dは、装着されるダンパ20のシリンダ部の外径を若干上回る程度の穴径となっている。また、ダンパカバー36の長さLは、図2に示す消火栓扉18の閉鎖状態で上にスライドすることで、シリンダ部からのロッドの取出し部が露出可能となる長さとしており、その詳細は後の説明で明らかにする。
【0052】
[c.消火栓扉の閉鎖と開放に伴うダンパとダンパカバーの機能]
続いて、消火栓扉の閉鎖と開放に伴うダンパとダンパカバーの機能について説明する。当該説明にあっては、消火栓扉の閉鎖状態と開放状態を扉ユニットの裏面側から示した図4、及び消火栓扉の閉鎖状態と開放状態でのダンパとダンパカバーを扉ユニットの裏面片側について示した図5を参照する。尚、図4(A)及び図5(A)は消火栓扉の閉鎖状態を示し、図4(B)及び図5(B)は消火栓扉の開放状態を示す。
【0053】
図4(A)は消火栓扉18の閉鎖状態であり、図5(A)に右側を取出して示すように、ダンパ20はシリンダ部20aの上端がシリンダ固定部28により扉開口24の上側となる扉パネル22の裏面に固定され、シリンダ部20aの下端のロッド取出し部20cから取り出されたロッド20bの下端がロッド固定部30により消火栓扉18の裏面下端に固定されている。このため、扉パネル22と消火栓扉18に対するダンパ20の取付け作業は、ダンパ20にダンパカバー36を嵌め入れた状態でシリンダ固定部28及びロッド固定部30により取付け固定することになる。
【0054】
消火栓扉18の閉鎖状態では、ダンパカバー36は下端がロッド固定部30に当接した位置にあり、ダンパ20の上側の一部を除き、シリンダ部20aの下端のロッド取出し部20cを含むダンパ20の略全体の周囲を覆った状態となっている。
【0055】
また、図4(B)は消火栓扉18の開放状態であり、消火栓扉18は扉収納部35に配置されたストッパ34に下端が当接した位置に下降して収納されている。この消火栓扉18の開放状態にあっては、図5(B)に右側を取出して示すように、ダンパカバー36は下降した消火栓扉18のロッド固定部30に下端が当接する位置に自重により落下し、シリンダ部20aからのロッド取出し部20cを含むロッド20b全体の周囲を覆った状態となっている。
【0056】
ここで、ダンパカバー36となる円筒体の長さLについて説明する。まず、図5(A)に示す消火栓扉18の閉鎖状態でのダンパ20のシリンダ固定部28からロッド取出し部20cまでの長さをL1とする。また、図5(B)に示す消火栓扉18の開放状態でのロッド取出し部20cからロッド固定部30までの長さをL2とする。なお、長さL1とL2の間には、L1>L2の関係がある。
【0057】
この場合、ダンパカバー36となる円筒体の長さLは、
L2≦L≦L1
の範囲の所定の長さとなる。
【0058】
各部の長さL1、L2は任意であるが、例えば、L1=900mm、L2=800mmとすると、ダンパカバー36となる円筒体の長さLは
800mm≦L≦900mm
の範囲の長さとなり、例えば、L=850mmとなる。
【0059】
このようにダンパカバー36の長さLが設定されることで、消火栓扉18の閉鎖状態及び開放状態のいずれにあっても、ダンパカバー36はダンパ20のロッド取出し部20cの周囲を覆い、また、次に説明するように、ダンパカバー36が上にスライドすることでロッド取出し部20cを露出状態とすることが可能となる。
【0060】
[d.ダンパの点検作業]
続いて、ダンパの点検作業について説明する。当該説明にあっては、消火栓扉の開放状態でダンパカバーを上にスライドしてロッドの取出し部が露出した状態を示した図6を参照する。
【0061】
図6に示すように、定期点検などで作業者がダンパ20の状態を確認する場合には、消火栓扉18を下降して扉開口24を開放した状態とし、消火栓扉18の下降に伴い伸長したロッド20b側に落下している想像線で示すダンパカバー36を、扉開口24から手を入れて上端がシリンダ固定部28に当接する位置までスライドさせて、ロッド取出し部20cを露出させる。このようにロッド取出し部20cを露出させた状態で、ロッド取出し部20cを清掃し、また必要に応じてグリスアップする作業を行う。
【0062】
また、ダンパカバー36は透明であることから、ダンパカバー36を上にスライドさせる前に、懐中電灯などでロッド取出し部20cを照らして状態を確認することもできる。
【0063】
[e.消火栓装置の他の実施形態]
また、上記の実施形態は、消火栓扉が直線的に下降することで消火栓扉を開放するものであるが、これに限定されず、例えば、消火栓扉が扉の下辺側を軸として回転して開放するものなど、適宜の形態の消火栓扉に適用可能である。
【0064】
例えば、図7に示すように、消火栓扉115が扉の下側を軸117として回転して開放するものである場合、消火栓扉115に備わるダンパ120は、シリンダ部120a側の一端が筐体側のシリンダ固定部128に回転自在に固定されると共に、ロッド120b側の他端が消火栓扉115側の扉の下辺より上部に位置するロッド固定部130に固定される、シリンダ部120a側がロッド120b側よりも上部に位置する構成となり、消火栓扉115の開放動作に対し抵抗を与えて開放動作速度を調整する。
【0065】
このようなダンパ120に対し、ダンパ120の伸縮方向に摺動自在にダンパカバー136を遊嵌することで、消火栓扉115の閉鎖状態及び開放状態でダンパカバー136を自重により下降させることが可能となり、シリンダ部120aの長さ、ロッド120bの長さ、ダンパカバー136の長さを、図1に示すような消火栓扉15が直線的に下降する実施形態と同様にすることで、消火栓扉15が直線的に下降する実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0066】
[f.本発明の変形例]
本発明による消火栓装置の変形例について説明する。本発明の消火栓装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0067】
(消火栓装置)
上記の実施形態は、消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、消火泡を放出する泡消火栓装置等のトンネル内に設置された装置や設備に、下降して開放する消火栓扉にダンパが設けられている場合にも、同様に適用可能とするものである。
【0068】
(ダンパカバーの長さ)
また、上記の実施形態は、消火栓扉18の閉鎖状態のみならず、消火栓扉18の開放状態でもロッド取出し部20cの周囲を囲むことができるようにダンパカバー36の長さLが設定されているが、消火栓が使用される際に消火栓扉が下降して扉開口を開放した状態での粉塵や水分の付着は、一時的で錆や腐食の原因とはなりにくいことから、消火栓扉18の閉鎖状態のみでロッド取出し部20cの周囲を覆うようにダンパカバー36が配置される構成であってもよい。この場合のダンパカバー36の長さLは、上記の実施形態で示した長さLより十分に短くてよく、例えば、L=100mm~150mmの範囲の長さで足り、ダンパカバー36を大幅に短くすることができ、取り扱いが容易でコストも低減可能となる。
【0069】
(ダストカバーの分割構造)
また、本実施形態のダストカバーは、消火栓装置の製作段階での装着に加え、既設の消火栓装置のダンパに装着されること想定している。既設の消火栓装置のダンパにダンパカバーを装着するためには、例えば、ダンパ20のシリンダ固定部28又はロッド固定部30の何れか一方を取外してダンパカバー36を装着し、取外したシリンダ固定部28又はロッド固定部30を戻すために取付け固定する作業が必要となる。このような既設の消火栓装置に設けられているダンパ20に簡単にダンパカバー36を装着することを可能とするため、例えば、図3に示したダンパカバー36としての円筒体を軸方向にスリット(切れ目)を1本入れて半開き可能とし、既設のダンパにダンパカバーを半開きして装着した後に元の円筒体に閉じる構成であってもよい。また、円筒体のスリットが閉じた場合に、スリットの両側が重なる構成であれば、粉塵や水分の付着の抑制効果を更に向上させることができる。
【0070】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0071】
10,110:消火栓装置
11:扉ユニット
12,112:消火栓収納部
14:消火器収納部
15,115:消火器扉
16:電装扉
18:消火栓扉(下降扉)
18a:扉開閉ハンドル
20,120:ダンパ
20a,120a:シリンダ部
20b,120b:ロッド
20c:ロッド取出し部
22:前面パネル
24,124:扉開口
26:ガイド部
28,128:シリンダ固定部
30,130:ロッド固定部
32:ローラユニット
34:ストッパ
35:扉収納部
36,136:ダンパカバー
40:赤色表示灯
42:発信機
44:応答ランプ
46:電話ジャック
48:スピーカ
50:消火用ホース
52,152:フレーム
54:ノズルホルダー
56:放水用ノズル
58:消火栓弁開閉レバー
60:給水栓
62:ポンプ起動スイッチ
64:ポンプ起動連動スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7