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特開2024-129884ラッチ機構、切換機構、送り装置及び流体供給装置
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  • 特開-ラッチ機構、切換機構、送り装置及び流体供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129884
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ラッチ機構、切換機構、送り装置及び流体供給装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 1/00 20060101AFI20240920BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16B1/00 Z
A61M5/142 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039254
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】大阿久 正美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(72)【発明者】
【氏名】宇都 正博
(72)【発明者】
【氏名】相田 鎮範
(72)【発明者】
【氏名】今野 嵩久
(72)【発明者】
【氏名】吉川 一真
(72)【発明者】
【氏名】杉山 輝尚
(72)【発明者】
【氏名】須笠 幹重
(72)【発明者】
【氏名】永田 薫
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066FF04
4C066HH22
(57)【要約】
【課題】移動可能な移動対象物に当接する状態と移動対象物から離間した離間状態とに状態変更される規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減可能とする。
【解決手段】ラッチ機構10であって、移動可能な羽根車5e1に対して当接することで羽根車5e1の移動を規制する可動ピン11と、可動ピン11が羽根車5e1に当接した当接状態である場合、及び可動ピン11が羽根車5e1から離間した離間状態である場合に、可動ピン11を永久磁石の磁力によって状態保持する状態保持部14と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な移動対象物に対して当接することで前記移動対象物の移動を規制する規制体と、
前記規制体が前記移動対象物に当接した当接状態である場合、及び前記規制体が前記移動対象物から離間した離間状態である場合に、前記規制体を永久磁石の磁力によって状態保持する状態保持部と、
を備える、ラッチ機構。
【請求項2】
前記規制体を前記当接状態とする第1姿勢と、前記規制体を前記離間状態とすると共に前記第1姿勢に対して傾動した第2姿勢とに姿勢変更可能なレバーを備え、
前記状態保持部は、
前記レバーに対して固定された前記永久磁石であるレバー側永久磁石と、
前記第1姿勢と前記第2姿勢との中間姿勢にて前記レバー側永久磁石に最も近接する位置に配置された前記永久磁石である固定永久磁石と、
を備え、
前記レバー側永久磁石と前記固定永久磁石とは、前記レバーが前記中間姿勢である場合に、同極が対向されるように設けられている、
請求項1記載のラッチ機構。
【請求項3】
前記レバーは、前記規制体に接続された長手部と、傾動中心を間に挟んで前記長手部の反対側に位置すると共に前記長手部よりも短い短手部と、を備え、
前記レバー側永久磁石は、前記短手部に設置されている、
請求項2記載のラッチ機構。
【請求項4】
前記状態保持部は、
前記規制体に対して固定された前記永久磁石である規制体側永久磁石と、
前記当接状態となる前記規制体の位置と前記離間状態となる前記規制体の位置との中間位置にて前記規制体側永久磁石に最も近接する位置に配置された前記永久磁石である固定永久磁石と、
を備え、
前記規制体側永久磁石と前記固定永久磁石とは、前記規制体が前記中間位置である場合に、同極が対向されるように設けられている、
請求項1記載のラッチ機構。
【請求項5】
前記規制体が磁性体で形成され、
前記状態保持部は、
前記当接状態の前記規制体を吸引して状態を保持する前記永久磁石である第1吸引磁石と、
前記離間状態の前記規制体を吸引して状態を保持する前記永久磁石である第2吸引磁石と、
を備える、
請求項1記載のラッチ機構。
【請求項6】
前記規制体は、直線状に延伸する長尺状形状に形成されており、延伸方向に移動されることで前記当接状態と前記離間状態とに状態が変更される、請求項4または5記載のラッチ機構。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のラッチ機構と、
前記規制体を移動させて前記当接状態と前記離間状態とに状態を切り換えるアクチュエータと、
を備える、切換機構。
【請求項8】
前記アクチュエータは、
前記規制体に接続されると共に通電されることで前記離間状態となるように前記規制体を引く第1形状記憶合金部材と、
前記規制体に接続されると共に通電されることで前記当接状態となるように前記規制体を引く第2形状記憶合金部材と、
を備える、請求項7記載の切換機構。
【請求項9】
前記規制体が磁性体で形成され、
前記アクチュエータは、前記規制体に巻かれたコイルを備え、前記コイルに通電して前記規制体を磁化して前記永久磁石との相互作用により前記規制体を移動する、
請求項7記載の切換機構。
【請求項10】
対象物を送り方向に向けて移動させる可動体と、
前記送り方向に向けて前記可動体に推力を付与する推力付与部と、
前記可動体に付与された推力によって前記送り軸線回りに回転する前記送りねじと、
前記送りねじの回転に伴って回転する輪列機構と、
前記輪列機構の回転速度を調整すると共に前記移動対象物を備える調速機構と、
前記移動対象物に当接することで前記輪列機構の回転を停止する請求項7記載の切換機構と、
を備える、送り装置。
【請求項11】
流体収容容器と、
請求項10に記載の送り装置と、を備え、
前記流体収容容器は、
内部に流体が充填される収容筒と、
前記収容筒内に摺動移動可能に配置され、前記送り方向に向けた移動によって前記流体を外部に供給するプランジャと、を備え、
前記可動体は、前記プランジャを前記対象物として前記収容筒内に押し込むように、前記プランジャに連結されている、
流体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ機構、切換機構、送り装置及び流体供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、薬液ポンプが開示されている。特許文献1に開示された薬液ポンプは、バレル及びプランジャを有する薬剤容器と、駆動ラックを有するピストンと、駆動ラックに噛み合う駆動ピニオンと、駆動ピニオンを介して駆動ラックを直線移動させる直線状ぜんまいと、駆動ピニオンの回転速度の調整を行う調整機構と、を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6645829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された薬液ポンプ等の流体供給装置では、薬液等の流体の外部への供給を停止した状態を保持する必要がある。このため、ラッチ機構を用いて、調整機構等の動作を停止させることで、プランジャの移動を停止させることが考えられる。具体的には、ラッチ機構が備えるピン等の規制体を調整機構等が備える動力伝達機構に当接させることで、調整機構等の動作を停止させる。一方で、規制体を動力伝達機構から離間すれば、流体が外部に供給される。しかしながら、規制体を動力伝達機構に当接させた状態と、規制体を動力伝達機構から離間した状態との少なくともいずれかの状態を保持するために一般的に電力が必要となる。したがって、このようなラッチ機構では、消費電力が大きくなる。なお、流体供給装置に設置されるラッチ機構に限らず、何らかの移動可能な移動対象物に規制体を当接することで移動対象物の移動を規制するようなラッチ機構には、同様の課題が生じる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、移動可能な移動対象物に当接する状態と移動対象物から離間した離間状態とに状態変更される規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減可能なラッチ機構、切換機構、送り装置及び流体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、ラッチ機構であって、移動可能な移動対象物に対して当接することで上記移動対象物の移動を規制する規制体と、上記規制体が上記移動対象物に当接した当接状態である場合、及び上記規制体が上記移動対象物から離間した離間状態である場合に、上記規制体を永久磁石の磁力によって状態保持する状態保持部と、を備える、という構成を採用する。
【0008】
このような本発明の第1の態様によれば、永久磁石の磁力を用いて、移動対象物に当接可能な規制体の状態が保持される。つまり、本発明の第1の態様によれば、移動対象物に当接した当接状態にある規制体は、永久磁石の磁力により当接状態に保持される。また、移動対象物から離間した離間状態にある規制体は、永久磁石の磁力により離間状態に保持される。このため、本発明の第1の態様は、電力を消費することなく規制体の状態を保持できる。したがって、本発明の第1の態様は、移動可能な移動対象物に当接する状態と移動対象物から離間した離間状態とに状態変更される規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、上記規制体を上記当接状態とする第1姿勢と、上記規制体を上記離間状態とすると共に上記第1姿勢に対して傾動した第2姿勢とに姿勢変更可能なレバーを備え、上記状態保持部が、上記レバーに対して固定された上記永久磁石であるレバー側永久磁石と、上記第1姿勢と上記第2姿勢との中間姿勢にて上記レバー側永久磁石に最も近接する位置に配置された上記永久磁石である固定永久磁石と、を備え、上記レバー側永久磁石と上記固定永久磁石とが、上記レバーが上記中間姿勢である場合に、同極が対向されるように設けられている、という構成を採用する。
【0010】
このような本発明の第2の態様によれば、レバーを第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢変更することで、規制体を当接状態と離間状態とに状態変更できる。また、本発明の第2の態様においてレバー側永久磁石と固定永久磁石とは、レバーが中間姿勢である場合に同極が対向されるように設けられている。このため、レバーは、レバー側永久磁石と固定永久磁石との相互作用により、固定永久磁石からレバー側永久磁石が離れる方向に反発力を受ける。このような反発力をレバーが受けることで、第1姿勢にあるレバーは第1姿勢を保持する方向に反発力を受け、第2姿勢にあるレバーは第2姿勢を保持する方向に反発力を受ける。このため、外力をレバーに付与しなければ、レバーの姿勢は、第1姿勢あるいは第2姿勢である場合に現在の姿勢に保持される。この結果、規制体の状態も、外力をレバーに付与しなければ、現在の状態に保持される。つまり、当接状態にある規制体は当接状態に保持され、離間状態にある規制体は離間状態に保持される。このような本発明の第2の態様は、簡易な構成で永久磁石の磁力によって規制体の状態を保持することができ、規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様において、上記レバーが、上記規制体に接続された長手部と、傾動中心を間に挟んで上記長手部の反対側に位置すると共に上記長手部よりも短い短手部と、を備え、上記レバー側永久磁石が、上記短手部に設置されている、という構成を採用する。
【0012】
このような本発明の第3の態様によれば、レバーの短手部にレバー側永久磁石が設置されている。傾動中心を中心として傾動するレバーの場合、傾動中心を間に挟む長手部と短手部とのうち短手部が傾動中心を周方向とする移動距離が短い。このため、レバー側永久磁石を短手部に設けることで、レバー側永久磁石の移動量を小さく抑制することができる。このような本発明の第3の態様は、レバー側永久磁石と固定永久磁石とを小さな範囲に集約して配置することができ、状態保持部を小型化することができる。また、レバー側永久磁石が固定永久磁石に近い範囲で移動するため、反発力を常に大きく確保することができる。したがって、規制体の状態をより確実に保持することができる。また、傾動中心からレバー側永久磁石までの距離を短くでき、レバーを傾動させるための動力を小さく抑制できる。
【0013】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様において、 上記状態保持部が、上記規制体に対して固定された上記永久磁石である規制体側永久磁石と、上記当接状態となる上記規制体の位置と上記離間状態となる上記規制体の位置との中間位置にて上記規制体側永久磁石に最も近接する位置に配置された上記永久磁石である固定永久磁石と、を備え、上記規制体側永久磁石と上記固定永久磁石とは、上記規制体が上記中間位置である場合に、同極が対向されるように設けられている、という構成を採用する。
【0014】
このような本発明の第4の態様において規制体側永久磁石と固定永久磁石とは、規制体が中間位置である場合に同極が対向されるように設けられている。このため、規制体は、規制体側永久磁石と固定永久磁石との相互作用により、固定永久磁石から規制体側永久磁石が離れる方向に反発力を受ける。このような反発力を規制体が受けることで、当接状態にある規制体は当接状態を保持する方向に反発力を受け、離間状態にある規制体は離間状態を保持する方向に反発力を受ける。このため、外力を規制体に付与しなければ、規制体の状態は、当接状態あるいは離間状態である場合に現在の状態に保持される。つまり、当接状態にある規制体は当接状態に保持され、離間状態にある規制体は離間状態に保持される。このような本発明の第4の態様は、簡易な構成で永久磁石の磁力によって規制体の状態を保持することができ、規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0015】
本発明の第5の態様は、上記第1の態様において、上記規制体が磁性体で形成され、上記状態保持部が、上記当接状態の上記規制体を吸引して状態を保持する上記永久磁石である第1吸引磁石と、上記離間状態の上記規制体を吸引して状態を保持する上記永久磁石である第2吸引磁石と、を備える、という構成を採用する。
【0016】
このような本発明の第5の態様によれば、第1吸引磁石が当接状態の規制体を吸引するため、当接状態の規制体の状態が保持される。また、第2吸引磁石が離間状態の規制体を吸引するため、離間状態の規制体の状態が保持される。このため、外力を規制体に付与しなければ、規制体の状態は、当接状態あるいは離間状態である場合に現在の状態に保持される。つまり、当接状態にある規制体は当接状態に保持され、離間状態にある規制体は離間状態に保持される。このような本発明の第5の態様は、簡易な構成で永久磁石の磁力によって規制体の状態を保持することができ、規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0017】
本発明の第6の態様は、上記第4または第5の態様において、上記規制体が、直線状に延伸する長尺状形状に形成されており、延伸方向に移動されることで上記当接状態と上記離間状態とに状態が変更される、という構成を採用する。
【0018】
このような本発明の第6の態様によれば、長尺状の規制体を延伸方向に移動させることで、規制体が当接状態と離間状態とに状態が変更される。このため、簡易な構成で規制体の状態を当接状態と離間状態とに変更することができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、切換機構であって、上記第1~第6のいずれかの態様のラッチ機構と、上記規制体を移動させて上記当接状態と上記離間状態とに状態を切り換えるアクチュエータと、を備える、という構成を採用する。
【0020】
このような本発明の第7の態様は、上記第1~第6のいずれかの態様のラッチ機構を備える。このため、本発明の第7の態様は、移動可能な移動対象物に当接する状態と移動対象物から離間した離間状態とに状態変更される規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0021】
本発明の第8の態様は、上記第7の態様において、上記アクチュエータは、上記規制体に接続されると共に通電されることで上記離間状態となるように上記規制体を引く第1形状記憶合金部材と、上記規制体に接続されると共に通電されることで上記当接状態となるように上記規制体を引く第2形状記憶合金部材と、を備える、という構成を採用する。
【0022】
このような本発明の第8の態様によれば、通電先を第1形状記憶合金部材と第2形状記憶合金部材とのいずれかに選択することで、規制体を当接状態と離間状態とに切り換えることができる。このため、簡易な制御にて規制体を当接状態と離間状態とに切り換えることができる。
【0023】
本発明の第9の態様は、上記第7の態様において、上記規制体が磁性体で形成され、上記アクチュエータは、上記規制体に巻かれたコイルを備え、上記コイルに通電して上記規制体を磁化して上記永久磁石との相互作用により上記規制体を移動する、という構成を採用する。
【0024】
このような本発明の第9の態様によれば、永久磁石をアクチュエータの一部として用いることができる。つまり、本発明の第9の態様によれば、規制体の状態を保持する永久磁石をアクチュエータの部品として兼用できる。したがって、本発明の第9の態様は、部品点数を削減することができる。
【0025】
本発明の第10の態様は、送り装置であって、対象物を送り方向に向けて移動させる可動体と、上記送り方向に向けて上記可動体に推力を付与する推力付与部と、上記可動体に付与された推力によって上記送り軸線回りに回転する上記送りねじと、上記送りねじの回転に伴って回転する輪列機構と、上記輪列機構の回転速度を調整すると共に上記移動対象物を備える調速機構と、上記移動対象物に当接することで上記輪列機構の回転を停止する上記第7~9のいずれかの態様の切換機構と、を備える、という構成を採用する。
【0026】
このような本発明の第10の態様は、上記第7~第9のいずれかの態様の切換機構を備える。このため、本発明の第10の態様は、移動可能な移動対象物に当接する状態と移動対象物から離間した離間状態とに状態変更される規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0027】
本発明の第11の態様は、流体供給装置であって、流体収容容器と、上記第10の態様の送り装置と、を備え、上記流体収容容器が、内部に流体が充填される収容筒と、上記収容筒内に摺動移動可能に配置され、上記送り方向に向けた移動によって上記流体を外部に供給するプランジャと、を備え、上記可動体が、上記プランジャを上記対象物として上記収容筒内に押し込むように、上記プランジャに連結されている、という構成を採用する。
【0028】
このような本発明の第11の態様は、上記第10の態様の送り装置を備える。このため、本発明の第11の態様は、移動可能な移動対象物に当接する状態と移動対象物から離間した離間状態とに状態変更される規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、移動可能な移動対象物に当接する状態と移動対象物から離間した離間状態とに状態変更される規制体の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態における液体供給装置の概略構成を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態における調速機構を前方から見た正面図である。
図3】本発明の第1実施形態における切換機構の拡大図であり、可動ピンが当接状態にある様子を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態における切換機構の拡大図であり、可動ピンが離間状態にある様子を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態における切換機構の拡大図であり、可動ピンが当接状態にある様子を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態における切換機構の拡大図であり、可動ピンが離間状態にある様子を示す図である。
図7】本発明の第3実施形態における切換機構の拡大図であり、可動ピンが当接状態にある様子を示す図である。
図8】本発明の第3実施形態における切換機構の拡大図であり、可動ピンが離間状態にある様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明に係るラッチ機構、切換機構、送り装置及び流体供給装置の一実施形態について説明する。
【0032】
[第1実施形態]
(液体供給装置)
図1は、本発明の第1実施形態における液体供給装置1の概略構成を示す平面図である。液体供給装置1(流体供給装置)は、液体W(流体)を外部に供給する。液体Wは、例えばインスリン等の薬液である。液体Wがインスリンである場合には、本実施形態の液体供給装置1は、インスリン投与装置として機能する。また、液体Wは、特に限定されるものではなく、接着剤や化学薬品であってもよい。液体Wが接着剤である場合には、本実施形態の液体供給装置1は、接着剤吐出装置として機能する。また、液体Wが化学薬品である場合には、本実施形態の液体供給装置1は、化学薬品供給装置として機能する。このような本実施形態の液体供給装置1は、図1に示すように、本体ケース2と、注入セット3と、シリンジ4(流体収容容器)と、送り装置5と、を備える。
【0033】
(本体ケース)
本体ケース2は、例えばケース本体及び蓋部材が組み合わされた構成とされ、本実施形態では、図示を簡略化するために、本体ケース2を箱型の直方体状に示しているが、本体ケース2の形状は限定されるものではない。例えば、本体ケース2を平面視円形状、楕円状、多角形状等に形成しても構わない。
【0034】
本体ケース2は、液体Wを供給する場合には、供給先の近くにて載置される。本体ケース2を載置する方法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用して構わない。例えば、粘着テープ等を利用して本体ケース2を載置箇所に貼着できる。また、クリップや装着ベルト等の図示しない装着部材を本体ケース2に組み合わせ、装着部材を介して、本体ケース2を載置箇所に設置しても構わない。
【0035】
なお、本体ケース2の内部には、液体供給装置1を構成する各種の図示しない構成品が収容されている。本実施形態では、本体ケース2の厚さ方向を上下方向といい、本体ケース2の載置箇所から本体ケース2に向かう方向を上方、その反対方向を下方という。さらに上下方向に直交する一方向を前後方向L1といい、上下方向及び前後方向L1に直交する方向を左右方向L2という。さらに前後方向L1のうちの一方側を前方FWといい、その反対方向を後方BKという。さらに左右方向L2のうちの一方側を右側RHといい、その反対方向を左側LHという。
【0036】
(注入セット)
注入セット3は、例えば、本実施形態の液体供給装置1をインスリン投与装置として用いる場合に設けられる。ただし、本実施形態の液体供給装置1を他の用途で用いる場合等では、注入セット3を設けなくてもよい。また、形状や構成の異なる注入セットを用いることも可能である。
【0037】
注入セット3は、注入パッチ3aと、中継チューブ3bと、を備えている。注入パッチ3aは、使用者の体表面に例えば貼着等によって取り付け可能とされている。注入パッチ3aは、プラスチック製のカニューレ型の留置針3cを備える。留置針3cは、図示しない内針と共に体内に穿刺可能とされ、内針の引き抜きによって体表面に留置される。中継チューブ3bは、シリンジ4と注入パッチ3aとの間に接続されており、シリンジ4から吐出された液体Wを注入パッチ3aに案内する。
【0038】
このような注入セット3を備えることで液体供給装置1は、シリンジ4から供給された液体Wを、中継チューブ3b及び留置針3cを通じて使用者の体内に投与することが可能である。なお、留置針3cは、本体ケース2を体表面に装着している間、使用者に穿刺された状態で体表面に留置可能とされている。
【0039】
なお、注入セット3は上述のように必須なものではなく、具備しなくても構わない。例えば、本体ケース2に、押し込み操作可能な図示しない操作部材によって、体内側に向けて飛び出し可能な留置針を直接取り付けても構わない。この場合、例えば可撓性を有するチューブ等を通じて、留置針とシリンジ4とを接続すれば良い。
【0040】
(シリンジ)
図1に示すように、シリンジ4は、シリンジ本体4a(収容筒)と、プランジャ4bと、を備える。シリンジ本体4aは、例えばリザーババレル等と称される薬液容器であって、内部に液体Wが充填される。プランジャ4bは、シリンジ本体4aの内部に摺動移動可能に配置され、送り方向である前方FWに向けた移動によって液体Wを外部に供給する。
【0041】
シリンジ本体4aは、前後方向L1に沿って延びる送り軸線O1を中心とした円筒状に形成されている。なお、送り軸線O1は、送り方向に対して平行に配置されている。具体的には、シリンジ本体4aは、前端部側が閉塞し、且つ後端部側が開口した有頂筒状に形成されている。なお、シリンジ本体4aの形状は、特に限定されるものではなく、例えば楕円状に形成しても構わない。なお、例えば予め液体Wが充填された図示しないバイアル(またはアンプルともいう)から液体Wを移し替えて或いは吸い上げることで、シリンジ本体4a内に液体Wを充填することが可能とされている。
【0042】
シリンジ本体4aの前端部には、図示しない流体供給口が形成されている。そして図1に示す中継チューブ3bが流体供給口に接続される。これにより、シリンジ本体4a内の液体Wを、流体供給口を通じて中継チューブ3b内に供給することが可能とされている。
【0043】
プランジャ4bは、後方BKからシリンジ本体4a内に挿入され、送り軸線O1に沿って摺動移動可能とされている。プランジャ4bは、プランジャ軸部4cと、ガスケット部4dと、を備える。プランジャ軸部4cは、前後方向L1に沿って延びる。プランジャ軸部4cは、前端部がガスケット部4dに連結され、後端部が後述するスライダ5aに一体的に連結されている。
【0044】
ガスケット部4dは、プランジャ軸部4cの前端部に一体に形成され、円柱状に形成されている。ガスケット部4dは、送り軸線O1に沿ってシリンジ本体4a内を前後摺動可能とされている。ガスケット部4dの外周面には、Oリング等の図示しないシール部材が固定されている。これにより、ガスケット部4dとシリンジ本体4aとの間は、密(液密、気密)にシールされている。
【0045】
上述のように構成されたシリンジ4は、保持台によって保持されることで、前後方向L1及び左右方向L2に位置決めされた状態で本体ケース2に取り外し可能に組み合わされている。なお、プランジャ4bを後方BKから前方FWに向けて移動させることで、シリンジ本体4a内にプランジャ4bを押込むことができる。したがって、本実施形態では、前方FWがプランジャ4bの押込み方向となる。
【0046】
(送り装置)
送り装置5は、後述する送りねじ5cの回転を制御しながらプランジャ4bを前方FWに向けて押し込み、シリンジ4内から外部に向けて液体Wを供給する役割を果たしている。図1に示すように、送り装置5は、スライダ5a(可動体)と、定圧ばね5bと、送りねじ5cと、輪列機構5dと、調速機構5eと、切換機構5fと、セルフロック機構5gと、を備える。
【0047】
(スライダ)
スライダ5aは、シリンジ4のプランジャ4b(対象物)を送り方向である前方FWに向けて移動させる。スライダ5aは、スライダ本体5a1と、ナット5a2と、を備える。スライダ本体5a1は、送り軸線O1に沿って前後方向L1に移動可能に配置されると共に、プランジャ4bを押圧して、プランジャ4bを押込み方向である前方FWに向けて移動させる役割を果たしている。
【0048】
スライダ本体5a1は、前後方向L1に所定の厚みを有すると共に、前後方向L1から見て外形が四角形状となるように形成されている。ただし、スライダ本体5a1の形状は特に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。スライダ本体5a1は、プランジャ4bよりも後方BK側に配置されている。なお、スライダ本体5a1には、プランジャ軸部4cの後端部が一体的に組み合わされている。また、スライダ本体5a1は、後述の左側LHに突出し左側突出部を有している。この左側突出部には後述する傾動ブロック5g3が固定されている。
【0049】
スライダ本体5a1の下面には、不図示の案内片が形成されている。案内片は、下方に向けて突出すると共に、本体ケース2の底壁に形成された図示しない案内レールに沿って前後方向L1に案内される。これにより、スライダ本体5a1は、送り軸線O1に沿って直線的に移動可能とされている。スライダ本体5a1の中央部は、ナット5a2を保持する。
【0050】
ナット5a2は、送りねじ5cに螺着された状態で、例えばスライダ本体5a1の中央部に設けられたナット保持部の内側に組み込まれている。ナット5a2の内周面には、送りねじ5cの雄ねじ部に螺合する図示しない雌ねじ部が形成されている。ナット5a2は、回り止めがされた状態でスライダ本体5a1に固定されている。これにより、ナット5a2は、送り軸線O1回りの回転が規制された状態で送りねじ5cに螺着されている。
【0051】
(定圧ばね)
定圧ばね5bは、弾性復元力を利用して、前方FWに向けてスライダ5aに推力を付与する渦巻きばねである。定圧ばね5bは、スライダ5aを前方FWに向けて押圧する役割を果たしている。本実施形態では、2つの定圧ばね5bを有している。
【0052】
例えば、定圧ばね5bは、円筒状のボビンに巻かれた状態で本体ケース2内に配置されている。なお、ボビンの内側には、本体ケース2に取り付けられた円柱状の軸部が差し込まれている。ボビンは、本体ケース2内で位置決めされた状態で、軸部の中心軸線を中心として回転可能とされている。
【0053】
各々の定圧ばね5bは、厚みが薄く、且つ所定の幅を有する長尺な帯状の弾性体を渦巻き状に巻回することで構成されている。なお、弾性体の材質としては、特に限定されるものではないが、例えばステンレス等の金属製としても構わないし、合成樹脂製であっても構わない。また、各々の定圧ばね5bは、巻回部と、引出部と、を備える。巻回部は、弾性体が渦巻き状に巻回され、ボビンに外装されている。引出部は、セルフロック機構5gの後述する傾動ブロック5g3に固定され、傾動ブロック5g3を介してスライダ5aに接続されている。
【0054】
このように構成された定圧ばね5bは、引出部が引き伸ばされた状態から巻回する状態に弾性復元変形するときの弾性復元力を利用して、スライダ5aを前方FWに押圧するように、スライダ5aに推力を付与している。これにより、スライダ5aを前方FWに向けて移動させることができ、定圧ばね5bの弾性復元力に起因する推力によって、プランジャ4bを押込み方向(前方FW)に向けて移動させることができる。そのため、プランジャ4bをシリンジ本体4a内に押し込むことが可能とされている。
【0055】
なお、定圧ばね5bは、いわゆる定荷重ばねとされ、例えばコイルばね等に比べて、伸びた状態から巻回によって元の状態に復元する間の弾性復元力がほぼ一定となる特性を有している。したがって、予め決められた一定の推力でプランジャ4bを押圧可能とされている。
【0056】
(送りねじ)
送りねじ5cは、スライダ5aに付与された推力によって送り軸線O1回りに回転する。送りねじ5cは、前後方向L1に沿って延びる螺軸(リードスクリュー)であって、送り軸線O1と同軸に配置されている。具体的には、送りねじ5cは、中空のプランジャ軸部4cの内側に位置した状態で、シリンジ本体4aよりも後方BKに配置されている。送りねじ5cは、スライダ本体5a1を貫通してスライダ本体5a1よりもさらに後方BKに突出している。送りねじ5cの外周面には、送りねじ5cの全長に亘って雄ねじ部が形成されている。
【0057】
本実施形態の送りねじ5cは、ナット5a2を介してスライダ5aに一体的に組み合わされている。本実施形態の送りねじ5cとナット5a2とは、噛み合い抵抗(摩擦抵抗)が低い状態で互いに噛み合っている。そのため、送りねじ5cとナット5a2との噛み合い部分は、いわゆるすべりねじとして機能している。
【0058】
定圧ばね5bによる推力によってスライダ5aが前方FWに向けて押圧されることに伴って、送りねじ5cを送り軸線O1回りに回転させることが可能とされている。つまり、送りねじ5cは、スライダ5aの直線運動を回転運動に変換することができる。そのため、定圧ばね5bによる推力は、スライダ5aを前方FWに向けて移動させることに加えて、送りねじ5cを送り軸線O1回りに回転させることに寄与する。
【0059】
なお、送りねじ5cにおける雄ねじ部は、この雄ねじ部のねじ山のピッチよりも、リードが大きくなるように形成することが好ましい。この場合のリード角としては、例えば20°以上が挙げられる。この場合には、雄ねじ部のねじ山のピッチよりもリード(送りねじ5cが1回転したときの前後方向L1に進む距離)を大きくすることができる。そのため、定圧ばね5bによる推力を利用して、送りねじ5cを効率良く回転させることができる。
【0060】
なお、このような雄ねじ部としては、例えば、二条ねじ、三条ねじ等の多条ねじにすることが挙げられる。ただし、ねじ山のピッチよりもリードが大きくなるように形成されていれば良く、多条ねじに限定されるものではない。
【0061】
なお、ナット5a2は必須なものではなく、具備しなくても構わない。例えば、スライダ本体5a1に送りねじ5cが挿通される挿通孔を形成し、挿通孔の内周面に送りねじ5cの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を形成しても構わない。この場合であっても、送りねじ5cの雄ねじ部と挿通孔の雌ねじ部との噛み合い部分をすべりねじとして機能させることで、スライダ5aの直線運動を送りねじ5cの回転運動に変換することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、送りねじ5cの雄ねじ部は右ねじとされている。これにより、定圧ばね5bによる推力によってスライダ5aが前方FWに向けて押圧されることに伴って、ナット5a2を送りねじ5cに対して緩み方向に回転させ、且つ送りねじ5cを後方BKから見て反時計方向に回転させることが可能とされている。
【0063】
(輪列機構)
輪列機構5dは、送りねじ5cの回転に伴って回転する。図1に示すように、輪列機構5dは、互いに噛み合い可能に配置された第1中間歯車5d1、第2中間歯車5d2、第3中間歯車5d3、第4中間歯車5d4、第5中間歯車5d5、第6中間歯車5d6、及び、第7中間歯車5d7を備える。ただし、輪列機構5dを構成する歯車の数は、この場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。また、輪列機構5dは、不図示の各々の歯車を軸支する不図示の支持部を有する。
【0064】
第1中間歯車5d1は、送りねじ5cのうちスライダ5aよりも後方BKに位置する部分に連結されている。第1中間歯車5d1は、送りねじ5cの回転に伴って送り軸線O1回りに回転する。なお、本実施形態では、第1中間歯車5d1は、スライダ5aが前方FWに向けて移動することに伴って、送りねじ5cと同様に、後方BKから見て反時計方向に回転する。
【0065】
第2中間歯車5d2は、第1中間歯車5d1に噛み合った状態で、第1中間歯車5d1よりも右側RHに配置されている。第2中間歯車5d2は、第1中間歯車5d1の回転に伴って回転する。なお、第2中間歯車5d2は、左右方向L2に対して平行に延びる軸線を中心として回転する。この第2中間歯車5d2は、第1中間歯車5d1の回転に伴って、右側RHから見て時計方向に回転する。
【0066】
第3中間歯車5d3は、第2中間歯車5d2の右側RHに位置し、第2中間歯車5d2と軸部が連結されている。第3中間歯車5d3は、第2中間歯車5d2の回転に伴って回転する。なお、第3中間歯車5d3は、左右方向L2に対して平行に延びる軸線を中心として回転する。この第3中間歯車5d3は、第2中間歯車5d2の回転に伴って、右側RHから見て時計方向に回転する。
【0067】
第4中間歯車5d4は、第3中間歯車5d3に噛み合った状態で、第3中間歯車5d3よりも前方FWに配置されている。第4中間歯車5d4は、第3中間歯車5d3の回転に伴って回転する。なお、第4中間歯車5d4は、左右方向L2に対して平行に延びる軸線を中心として回転する。この第4中間歯車5d4は、第3中間歯車5d3の回転に伴って、右側RHから見て反時計方向に回転する。
【0068】
第5中間歯車5d5は、第4中間歯車5d4の右側RHに位置し、第4中間歯車5d4と軸部が連結されている。第5中間歯車5d5は、第4中間歯車5d4の回転に伴って回転する。なお、第5中間歯車5d5は、左右方向L2に対して平行に延びる軸線を中心として回転する。この第5中間歯車5d5は、第4中間歯車5d4の回転に伴って、右側RHから見て反時計方向に回転する。
【0069】
また、第5中間歯車5d5の軸部の右側RHの端部には、露出ナット5d8が設けられている。露出ナット5d8は、右側RHから見て本体ケース2に設けられた開口にて露出するように配置されている。この露出ナット5d8を、工具等を用いて回転させることで、第5中間歯車5d5を強制的に回転させることができる。このため、緊急時や異常発生時に、輪列機構5dを強制的に回転させることができる。
【0070】
第6中間歯車5d6は、第5中間歯車5d5に噛み合った状態で、第5中間歯車5d5よりも前方FWに配置されている。第6中間歯車5d6は、第5中間歯車5d5の回転に伴って回転する。なお、第6中間歯車5d6は、左右方向L2に対して平行に延びる軸線を中心として回転する。この第6中間歯車5d6は、第5中間歯車5d5の回転に伴って、右側RHから見て時計方向に回転する。
【0071】
第7中間歯車5d7は、第6中間歯車5d6に噛み合った状態で、第6中間歯車5d6よりも前方FWに配置されている。第7中間歯車5d7は、第6中間歯車5d6の回転に伴って回転する。なお、第7中間歯車5d7は、左右方向L2に対して平行に延びる軸線を中心として回転する。この第7中間歯車5d7は、第6中間歯車5d6の回転に伴って、右側RHから見て反時計方向に回転する。
【0072】
(調速機構)
調速機構5eは、輪列機構5dを調速する。図1に示すように、調速機構5eは、羽根車5e1を備える。羽根車5e1は、輪列機構5dに噛み合うと共に、輪列機構5dの回転速度に応じて抵抗を発生させる。羽根車5e1は、輪列機構5dを構成する第7中間歯車5d7に噛み合うウォーム軸5e2に設けられている。ウォーム軸5e2は、前後方向L1に延びるように形成され、第7中間歯車5d7より上方に位置するように配置されている。ウォーム軸5e2は、本体ケース2内に回転軸線O2回りに回転可能に支持されている。ウォーム軸5e2の外周面には、第7中間歯車5d7が噛み合う螺旋状のウォーム溝が形成されている。このように構成されたウォーム軸5e2は、第1中間歯車5d1、第2中間歯車5d2、第3中間歯車5d3、第4中間歯車5d4、第5中間歯車5d5、第6中間歯車5d6、及び第7中間歯車5d7を介して伝達された送りねじ5cの回転力によって回転する。
【0073】
羽根車5e1は、ウォーム軸5e2の前端部に一体に組み合わされ、ウォーム軸5e2と共に回転する。なお、回転軸線O2方向から見て、回転軸線O2に対して交差する方向を径方向といい、回転軸線O2回りを周回する方向を周方向という。
【0074】
図2は、調速機構5eを前方FWから見た正面図である。図2に示すように、羽根車5e1は、軸体5e3と、羽根部5e4と、弾性支持部5e5と、を備える。軸体5e3は、ウォーム軸5e2に固定され、円柱状に形成されている。羽根部5e4は、複数設けられており、回転速度に応じた回転抵抗(空気抵抗)を発生させると共に、回転に伴う遠心力によって変位する。弾性支持部5e5は、各々の羽根部5e4と軸体5e3との間にそれぞれ配置され、各々の羽根部5e4を弾性変位可能に支持する。
【0075】
羽根車5e1の材質は、特に限定されるものではないが、例えば合成ゴム製とされている。ただし、羽根車5e1の全体が合成ゴムで形成されている必要はなく、少なくとも弾性支持部5e5が合成ゴムで形成されることで弾性変位可能とされていれば構わない。
【0076】
本実施形態では、羽根車5e1は、周方向に等間隔に配置された2つの羽根部5e4を具備している。ただし、羽根部5e4の数は、この場合に限定されるものではなく、例えば1つでも構わないし、3つ以上の複数であっても構わない。2つの羽根部5e4は、ウォーム軸5e2の回転に伴って空気抵抗を受けながら回転する。これにより、羽根車5e1は、ウォーム軸5e2の回転速度に応じた回転抵抗を付与することが可能とされている。
【0077】
さらに2つの羽根部5e4は、回転に伴う遠心力によって径方向の外側に引っ張られながら、応力を受けるように設計されている。これにより、2つの羽根部5e4は、弾性支持部5e5を弾性変位(弾性変形)させながら、変位可能とされている。
【0078】
このように構成された羽根車5e1は、回転速度に応じた抵抗(回転抵抗)を発生させることで、輪列機構5dの全体を調速する。なお、輪列機構5dは、送りねじ5cの回転を増速する噛み合いでウォーム軸5e2に繋がっている。
【0079】
(切換機構)
切換機構5fは、輪列機構5dの回転の停止と開始とを切り換える。図3は、切換機構5fの拡大図であり、後述のする可動ピン11が当接状態にある様子を示す図である。また、図4は、切換機構5fの拡大図であり、後述する可動ピン11が離間状態にある様子を示す。図3及び図4に示すように、切換機構5fは、ラッチ機構10と、アクチュエータ20と、を備える。
【0080】
(ラッチ機構)
ラッチ機構10は、回転可能な羽根車5e1に対して当接することで羽根車5e1の回転を規制するための機構である。つまり、ラッチ機構は、移動可能(回転可能)な移動対象物(羽根車5e1)に対して当接することで、移動対象物の移動を規制する。本実施形態においてラッチ機構10は、可動ピン11(規制体)と、スライド支持部12と、レバー13と、状態保持部14と、を備える。
【0081】
可動ピン11は、ラッチ機構10が羽根車5e1の回転を規制する場合に、羽根車5e1に対して直接当接する部位である。つまり、可動ピン11は、回転可能な羽根車5e1に対して当接することで羽根車5e1の回転を規制する。図3及び図4に示すように、可動ピン11は、前後方向L1に直線状に延伸する長尺状形状に形成された棒状部材であり、前後方向L1に移動可能である。また、可動ピン11は、前後方向L1における中央位置に、レバー13と接続するための接続突起11aを備える。接続突起11aは、下方に向けて突出する円柱状の部位であり、2股に分岐されたレバー13の先端部に周方向に摺動可能に挟持されている。
【0082】
本実施形態において可動ピン11は、図3に示す当接位置と、図4示す離間位置とに移動可能である。当接位置は、可動ピン11の後方BK側の端部が羽根車5e1に当接可能な状態となる位置である。なお、このような可動ピン11が当接位置にある状態は、可動ピン11が羽根車5e1に当接される当接状態である。また、離間位置は、可動ピン11の後方BK側の端部が羽根車5e1に当接しない状態となる位置である。つまり、離間位置は、可動ピン11が羽根車5e1から離間した状態となる位置である。なお、このような可動ピン11が離間位置にある状態は、可動ピン11が羽根車5e1から離間した離間状態である。また、ここで言う、可動ピン11が羽根車5e1から離間した離間状態とは、羽根車5e1が回転している状態にて、羽根車5e1が可動ピン11に接触しない状態を意味する。
【0083】
本実施形態において可動ピン11は、レバー13を介して、アクチュエータ20から動力が伝達されることで、当接位置と離間位置との間で移動される。具体的には、可動ピン11は、当接位置にある状態で、レバー13を介してアクチュエータ20から前方FWに向かう力が伝達されることで、離間位置に移動する。また、可動ピン11は、離間位置にある状態で、レバー13を介してアクチュエータ20から後方BKに向かう力が伝達されることで、当接位置に移動する。
【0084】
スライド支持部12は、可動ピン11を前後方向L1に沿って移動可能に支持する。本実施形態においてスライド支持部12は、図3及び図4に示すように、前後方向L1に配列されて2つ設けられている。なお、スライド支持部12の数は変更可能である。これらのスライド支持部12は、本体ケース2に固定されている。
【0085】
レバー13は、可動ピン11を当接状態にする図3に示す第1姿勢と、可動ピン11を離間状態にする図4に示す第2姿勢とに姿勢変更可能である。なお、第2姿勢は、上方から見て第1姿勢に対して傾動した姿勢である。このレバー13は、本体ケース2に対して回転可能に接続された傾動軸部13aを備えている。傾動軸部13aは下方に向けて突出しており、本体ケース2に回転可能に接続されている。レバー13は、傾動軸部13aの軸線O3(傾動中心)を中心として傾動することで、第1姿勢と第2姿勢とに姿勢変更する。なお、軸線O3は、上下方向と平行である。
【0086】
また、レバー13は、アクチュエータ20と接続される操作突起13bを備える。操作突起13bは、上方に向かって突出した突起であり、傾動軸部13aよりも左側LHに位置する。レバー13は、操作突起13bが後方BKに向けて押圧されることで第1姿勢となる。また、レバー13は、操作突起13bが前方FWに向けて押圧されることで第2姿勢となる。
【0087】
このようなレバー13は、図3及び図4に示すように、長手部13cと、短手部13dと、を備える。長手部13cは傾動軸部13aより左側LHの部位であり、短手部13dは傾動軸部13aより右側RHの部位である。長手部13cは、傾動軸部13aから先端までの寸法が短手部13dよりも長く、可動ピン11の接続突起11aに接続されている。つまり、レバー13は、可動ピン11に接続された長手部13cと、軸線O3を間に挟んで長手部13cの反対側に位置すると共に長手部13cよりも短い短手部13dと、を備える。
【0088】
状態保持部14は、可動ピン11の状態を永久磁石の磁力によって状態保持する。つまり、状態保持部14は、可動ピン11が当接状態にある場合には、可動ピン11を当接状態に保持する。また、状態保持部14は、可動ピン11が離間状態にある場合には、可動ピン11を離間状態に保持する。
【0089】
本実施形態において、状態保持部14は、図3及び図4に示すように、レバー側永久磁石14aと、固定永久磁石14bと、を備えている。レバー側永久磁石14aは、レバー13に対して固定された永久磁石である。また、固定永久磁石14bは、本体ケース2に固定された永久磁石である。
【0090】
レバー側永久磁石14aは、レバー13の短手部13dの先端部(右側RHの先端部)に設置されている。また、固定永久磁石14bは、レバー13が第1姿勢と第2姿勢との中間姿勢である場合に、レバー側永久磁石14aに最も近接する位置に配置されている。本実施形態では、図3及び図4に示すように、これらのレバー側永久磁石14aと固定永久磁石14bとは、最も近接する場合に左右方向L2に配列されるように設けられている。
【0091】
これらのレバー側永久磁石14aと固定永久磁石14bとは、レバー13が中間姿勢である場合に、同極が対向されるように設けられている。つまり、レバー側永久磁石14aが右側RHにN極を向けるように設置されている場合、固定永久磁石14bは左側LHにN極を向けるように設置されている。一方で、レバー側永久磁石14aが右側RHにS極を向けるように設置されている場合、固定永久磁石14bは左側LHにS極を向けるように設置されている。
【0092】
このような状態保持部14によって、レバー13は、固定永久磁石14bからレバー側永久磁石14aが離れる方向に反発力を受ける。このためレバー13の姿勢は、第1姿勢あるいは第2姿勢である場合に現在の姿勢に保持される。この結果、可動ピン11の状態も、現在の状態に保持される。つまり、当接状態にある可動ピン11は当接状態に保持され、離間状態にある可動ピン11は離間状態に保持される。
【0093】
(アクチュエータ)
アクチュエータ20は、可動ピン11を移動させて当接状態と離間状態とに状態を切り換える動力を生成する。本実施形態においてアクチュエータ20は、第1形状記憶合金ライン21(第1形状記憶合金部材)と、第2形状記憶合金ライン22(第2形状記憶合金部材)と、第1押圧ピン23と、第2押圧ピン24と、を備える。
【0094】
第1形状記憶合金ライン21は、形状記憶合金によって形成されており、通電されることで縮むように形状変形する線材である。第1形状記憶合金ライン21は、図3及び図4に示すように、前後方向L1と平行になるように設置されており、前方FW側の端部が本体ケース2に固定され、後方BK側の端部が第1押圧ピン23の後方BK側の端部に接続されている。第1形状記憶合金ライン21の前方FW側の端部は、レバー13よりも前方FWに位置している。また、第1形状記憶合金ライン21の後方BK側の端部は、レバー13よりも後方BKに位置している。
【0095】
なお、第1形状記憶合金ライン21は、不図示の給電装置と設億されており、給電装置から給電されることで縮む。第1形状記憶合金ライン21は、縮むことで第1押圧ピン23を前方FWに向けて移動させ、レバー13を第2姿勢として、可動ピン11を前方FWに向けて引く。つまり、第1形状記憶合金ライン21は、可動ピン11と接続されており、通電されることで離間状態となるように可動ピン11を前方FWに向けて引く。
【0096】
第2形状記憶合金ライン22は、形状記憶合金によって形成されており、通電されることで縮むように形状変形する線材である。第2形状記憶合金ライン22は、図3及び図4に示すように、前後方向L1と平行になるように設置されており、後方BK側の端部が本体ケース2に固定され、前方FW側の端部が第2押圧ピン24の前方FW側の端部に接続されている。第2形状記憶合金ライン22の後方BK側の端部は、レバー13よりも後方BKに位置している。また、第2形状記憶合金ライン22の前方FW側の端部は、レバー13よりも前方FWに位置している。
【0097】
なお、第2形状記憶合金ライン22は、不図示の給電装置と設億されており、給電装置から給電されることで縮む。第2形状記憶合金ライン22は、縮むことで第2押圧ピン24を後方BKに向けて移動させ、レバー13を第1姿勢として、可動ピン11を後方BKに向けて引く。つまり、第2形状記憶合金ライン22は、可動ピン11と接続されており、通電されることで当接状態となるように可動ピン11を後方BKに向けて引く。
【0098】
第1押圧ピン23は、レバー13の操作突起13bよりも後方BKに位置し、前後方向L1に移動可能に本体ケース2に支持されている。第1押圧ピン23は、前後方向L1に延びるピン状部材であり、前方FW側の端部が後方BK側から操作突起13bに当接され、後方BK側の端部に第1形状記憶合金ライン21が接続されている。
【0099】
第2押圧ピン24は、レバー13の操作突起13bよりも前方FWに位置し、前後方向L1に移動可能に本体ケース2に支持されている。第2押圧ピン24は、前後方向L1に延びるピン状部材であり、後方BK側の端部が前方FW側から操作突起13bに当接され、前方FW側の端部に第2形状記憶合金ライン22が接続されている。
【0100】
このようなアクチュエータ20は、例えば不図示の制御装置の制御の下に、第1形状記憶合金ライン21と第2形状記憶合金ライン22とのいずれか一方に対して通電される。アクチュエータ20は、第1形状記憶合金ライン21に通電された場合には、可動ピン11を離間位置に移動させるように動力を生成する。また、アクチュエータ20は、第2形状記憶合金ライン22に通電された場合には、可動ピン11を当接位置に移動させるように動力を生成する。
【0101】
(セルフロック機構)
セルフロック機構5gは、経年劣化等の何らかの原因によって、送りねじ5cとナット5a2との噛み合いに不具合が生じた場合に、スライダ5aが意図せずに前方FWに移動することを抑止し、液体Wが意図せずにシリンジ4から排出されることを抑止するものである。
【0102】
例えば、ナット5a2の雌ねじ部の前後方向L1の長さは、送りねじ5cの雄ねじ部の前後方向L1の長さと比較して短い。また、ナット5a2は、定圧ばね5bから常に推力が付与されている。このため、ナット5a2のねじ山が摩耗や欠損し、送りねじ5cとナット5a2との噛み合いに不具合が生じる場合がある。このような場合には、後方BKから推力が付与されるナット5a2を送りねじ5cのねじ山で受け止めることができず、ナット5a2が意図せずに前方FWに移動してしまうことがある。
【0103】
また、送りねじ5cとナット5a2との噛み合いに不具合が生じると、送りねじ5cがナット5a2を前方FWから見て均等に支えることができない箇所が生じ、ナット5a2が送り軸線O1に対して傾く。セルフロック機構5gは、ナット5a2が送り軸線O1に対して傾くことを利用して、スライダ5aの前方FWへの移動を規制する。
【0104】
図1に示すように、セルフロック機構5gは、ガイドカバー5g1と、ガイドシャフト5g2と、傾動ブロック5g3と、を備える。ガイドカバー5g1は、ガイドシャフト5g2と傾動ブロック5g3と定圧ばね5bと、を収容する。ガイドカバー5g1は、図1に示すように、前後方向に延びる開口5g4を有する。開口5g4には、傾動ブロック5g3に設けられた円筒突出部5g5が挿入される。なお、ガイドカバー5g1には、スライダ本体5a1が通過可能な不図示の隙間が設けられている。この隙間によって、傾動ブロック5a3に接続されたスライダ本体5a1が前後方向L1に移動可能とされている。
【0105】
ガイドシャフト5g2は、スライダ5aが前後方向L1に移動するときに、スライダ5aの移動を案内する。本実施形態では、ガイドシャフト5g2は、前後方向L1に沿って延びる棒状に形成されている。つまり、ガイドシャフト5g2は、前後方向L1と平行な送り軸線O1と平行に配置されている。
【0106】
傾動ブロック5g3は、スライダ本体5a1の左側端部に前方FWから固定された直方体状のブロックである。傾動ブロック5g3の側面には、定圧ばね5bの引出部が固定されている。
【0107】
また、傾動ブロック5g3は、上方に突出する円筒突出部5g5が設けられている。円筒突出部5g5は、ガイドカバー5g1の開口5g4に挿入されている。傾動ブロック5g3は、ガイドシャフト5g2が挿通されるシャフト挿通孔を備える。シャフト挿通孔は、ガイドシャフト5g2の直径よりも大きな内径の貫通孔である。
【0108】
傾動ブロック5g3は、スライダ本体5a1に固定されており、スライダ5aの傾きに伴って傾く。つまり、傾動ブロック5g3は、スライダ5aの送り軸線O1に対する傾きに伴って傾く。送りねじ5cとナット5a2との噛み合いが正常である場合には、傾動ブロック5g3は、送り軸線O1に対して傾いていない基準姿勢となり、ガイドシャフト5g2に沿って移動可能となる。一方で、送りねじ5cとナット5a2との噛み合いに不具合が生じ、スライダ5a及び傾動ブロック5g3が送り軸線O1に対して傾いた傾斜姿勢となると、傾動ブロック5g3の前側端がガイドシャフト5g2の周面に接触する。この結果、傾動ブロック5g3がガイドシャフト5g2に係止されて、スライダ5a及び傾動ブロック5g3の前後方向への移動が規制され、液体Wの外部への供給が停止される。
【0109】
(液体供給装置の作用)
次に、上述のように構成された液体供給装置1を使用して、液体Wを外部に供給する場合について説明する。なお、この場合の初期状態として、液体Wが充填されたシリンジ4が本体ケース2内にセットされているものとする。また、プランジャ4bが押し込み開始位置にセットされているものとする。
【0110】
上述の初期状態のもと、切換機構5fの第1形状記憶合金ライン21に通電されると、レバー13が第2姿勢となり、可動ピン11が離間状態となる。これによって、羽根車5e1及び輪列機構5dが回転可能となる。
【0111】
ここで、液体供給装置1によれば、定圧ばね5bによる弾性復元力を利用してスライダ5aに推力が付与されている。このため、スライダ5aが送り方向である前方FWに向けて押圧される。その結果、スライダ5aを介して、プランジャ4bを押込み方向に向けて、一定の推力で押圧することができる。
【0112】
さらに、スライダ5aのナット5a2には送りねじ5cが組み合わされているので、送りねじ5cを利用してスライダ5aの移動速度を制御することができる。具体的には、定圧ばね5bによる推力によってスライダ5aが前方FWに向けて移動しはじめると、それに伴って送りねじ5cが送り軸線O1回りに回転する。そのため、送りねじ5cの回転に伴って、輪列機構5d(第1中間歯車5d1、第2中間歯車5d2、第3中間歯車5d3、第4中間歯車5d4、第5中間歯車5d5、第6中間歯車5d6、第7中間歯車5d7)を回転させることができると共に、ウォーム軸5e2及び羽根車5e1を回転させることができる。
【0113】
そのため、羽根車5e1を利用して、輪列機構5dの回転速度に応じた空気抵抗等の回転抵抗を発生させることができる。したがって、羽根車5e1によって発生した回転抵抗を利用して、例えばウォーム軸5e2を所定の回転速度(例えば2000~3000rpm等)で回転させることができる。
【0114】
このように、羽根車5e1を有する調速機構5eによって、輪列機構5dを調速できるので、輪列機構5d及び送りねじ5cを所定の回転速度で回転させることができる。例えば、送りねじ5cを1rpm程度のゆっくりとした回転速度で回転させることができる。これにより、定圧ばね5bの弾性復元力の変化等に影響され難く、スライダ5aを一定速度で前方FWに向けて移動(送り移動)させることができる。
【0115】
したがって、定圧ばね5bによる弾性復元力によって一定の推力で押圧されたプランジャ4bを、速度制御しながら押込み方向である前方FWに向けて移動させることができる。その結果、シリンジ本体4a内に充填された液体Wをプランジャ4bで押し出すことができ、例えば注入セット3を通じて外部に液体Wを供給できる。このとき、プランジャ4bを速度制御しながら移動させることができるので、液体Wを精度良く供給することができる。
【0116】
さらに切換機構5fによって輪列機構5dの回転の停止と開始とを切り換えることができるので、輪列機構5d及び送りねじ5cを介してスライダ5aの移動停止と移動開始とを制御することができる。そのため、スライダ5a及びプランジャ4bの移動のタイミングや、移動時間等を任意に調整することもできる。
【0117】
一方で、切換機構5fの第2形状記憶合金ライン22に通電されると、レバー13が第1姿勢となり、可動ピン11が当接状態となる。これによって、羽根車5e1の回転は規制され、輪列機構5dの回転も規制され、送りねじ5cは、回転できなくなる。このため、ナット5a2の前後方向への移動も規制され、スライダ5aの前後方向への移動も規制される。この結果、液体Wの外部への供給が停止される。
【0118】
以上のような本実施形態のラッチ機構10は、可動ピン11と、状態保持部14と、を備える。可動ピン11は、回転可能な羽根車5e1に対して当接することで羽根車5e1の移動を規制する。状態保持部14は、可動ピン11が羽根車5e1に当接した当接状態である場合、及び可動ピン11が羽根車5e1から離間した離間状態である場合に、可動ピン11を永久磁石の磁力によって状態保持する。
【0119】
このような本実施形態のラッチ機構10によれば、永久磁石の磁力を用いて、羽根車5e1に当接可能な可動ピン11の状態が保持される。つまり、本実施形態のラッチ機構10によれば、羽根車5e1に当接した当接状態にある可動ピン11は、永久磁石の磁力により当接状態に保持される。また、羽根車5e1から離間した離間状態にある可動ピン11は、永久磁石の磁力により離間状態に保持される。このため、本実施形態のラッチ機構10は、電力を消費することなく可動ピン11の状態を保持できる。したがって、本実施形態のラッチ機構10は、移動可能な羽根車5e1に当接する状態と羽根車5e1から離間した離間状態とに状態変更される可動ピン11の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0120】
また、本実施形態のラッチ機構10は、レバー13を備える。レバー13は、可動ピン11を当接状態とする第1姿勢と、可動ピン11を離間状態とすると共に第1姿勢に対して傾動した第2姿勢と、に姿勢変更可能である。また、状態保持部14は、レバー側永久磁石14aと、固定永久磁石14bと、を備える。レバー側永久磁石14aは、レバー13に対して固定されている。固定永久磁石14bは、第1姿勢と第2姿勢との中間姿勢にてレバー側永久磁石14aに最も近接する位置に配置されている。さらに、レバー側永久磁石14aと固定永久磁石14bとは、レバー13が中間姿勢である場合に、同極が対向されるように設けられている。
【0121】
このような本実施形態のラッチ機構10によれば、レバー13を第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢変更することで、可動ピン11を当接状態と離間状態とに状態変更できる。また、本実施形態のラッチ機構10においてレバー側永久磁石14aと固定永久磁石14bとは、レバー13が中間姿勢である場合に同極が対向されるように設けられている。このため、レバー13は、レバー側永久磁石14aと固定永久磁石14bとの相互作用により、固定永久磁石14bからレバー側永久磁石14aが離れる方向に反発力を受ける。このような反発力をレバー13が受けることで、第1姿勢にあるレバー13は第1姿勢を保持する方向に反発力を受け、第2姿勢にあるレバー13は第2姿勢を保持する方向に反発力を受ける。このため、外力をレバー13に付与しなければ、レバー13の姿勢は、第1姿勢あるいは第2姿勢である場合に現在の姿勢に保持される。この結果、可動ピン11の状態も、外力をレバー13に付与しなければ、現在の状態に保持される。つまり、当接状態にある可動ピン11は当接状態に保持され、離間状態にある可動ピン11は離間状態に保持される。このような本実施形態のラッチ機構10は、簡易な構成で永久磁石の磁力によって可動ピン11の状態を保持することができ、可動ピン11の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0122】
また、本実施形態のラッチ機構10においてレバー13は、長手部13cと、短手部13dと、を備える。長手部13cは、可動ピン11に接続されている。短手部13dは、軸線O3を間に挟んで長手部13cの反対側に位置すると共に長手部13cよりも短い。また、レバー側永久磁石14aは、短手部13dに設置されている。
【0123】
このような本実施形態のラッチ機構10によれば、レバー13の短手部13dにレバー側永久磁石14aが設置されている。軸線O3を中心として傾動するレバー13の場合、軸線O3を間に挟む長手部13cと短手部13dとのうち短手部13dが軸線O3を周方向とする移動距離が短い。このため、レバー側永久磁石14aを短手部13dに設けることで、レバー側永久磁石14aの移動量を小さく抑制することができる。このような本実施形態のラッチ機構10は、レバー側永久磁石14aと固定永久磁石14bとを小さな範囲に集約して配置することができ、状態保持部14を小型化することができる。また、レバー側永久磁石14aが固定永久磁石14bに近い範囲で移動するため、反発力を常に大きく確保することができる。したがって、可動ピン11の状態をより確実に保持することができる。また、軸線O3からレバー側永久磁石14aまでの距離を短くでき、レバー13を傾動させるための動力を小さく抑制できる。
【0124】
また、本実施形態のラッチ機構10において可動ピン11は、直線状に延伸する長尺状形状に形成されており、延伸方向に移動されることで当接状態と離間状態とに状態が変更される。
【0125】
このような本実施形態のラッチ機構10によれば、長尺状の可動ピン11を延伸方向に移動させることで、可動ピン11が当接状態と離間状態とに状態が変更される。このため、簡易な構成で可動ピン11の状態を当接状態と離間状態とに変更することができる。
【0126】
また、本実施形態の切換機構5fは、ラッチ機構10と、可動ピン11を移動させて当接状態と離間状態とに状態を切り換えるアクチュエータ20と、を備える。このような本実施形態の切換機構5fは、ラッチ機構10を備える。このため、本実施形態の切換機構5fは、移動可能な羽根車5e1に当接する状態と羽根車5e1から離間した離間状態とに状態変更される可動ピン11の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0127】
また、本実施形態の切換機構5fにおいてアクチュエータ20は、第1形状記憶合金ライン21と、第2形状記憶合金ライン22と、を備えている。第1形状記憶合金ライン21は、可動ピン11に接続されると共に通電されることで離間状態となるように可動ピン11を引く。また、第2形状記憶合金ライン22は、可動ピン11に接続されると共に通電されることで当接状態となるように可動ピン11を引く。
【0128】
このような本実施形態の切換機構5fによれば、通電先を第1形状記憶合金ライン21と第2形状記憶合金ライン22とのいずれかに選択することで、可動ピン11を当接状態と離間状態とに切り換えることができる。このため、簡易な制御にて可動ピン11を当接状態と離間状態とに切り換えることができる。なお、第1形状記憶合金ライン21に換えて、帯状の第1形状記憶合金部や他の形状の第1形状記憶合金部を備えてもよい。また、第2形状記憶合金ライン22に換えて、帯状の第2形状記憶合金部や他の形状の第2形状記憶合金部を備えてもよい。
【0129】
また、本実施形態の送り装置5は、スライダ5aと、定圧ばね5bと、送りねじ5cと、輪列機構5dと、調速機構5eと、切換機構5fと、を備える。スライダ5aは、プランジャ4bを送り方向に向けて移動させる。定圧ばね5bは、送り方向に向けてスライダ5aに推力を付与する。送りねじ5cは、スライダ5aに付与された推力によって送り軸線O1回りに回転する。輪列機構5dは、送りねじ5cの回転に伴って回転する。調速機構5eは、輪列機構5dの回転速度を調整する。
【0130】
このような本実施形態の送り装置5は、切換機構5fを備える。このため、本実施形態の送り装置5は、回転可能な羽根車5e1に当接する状態と羽根車5e1から離間した離間状態とに状態変更される可動ピン11の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0131】
本実施形態の液体供給装置1は、シリンジ4と、送り装置5と、を備える。シリンジ4は、シリンジ本体4aと、プランジャ4bと、を備える。シリンジ本体4aは、内部に液体Wが充填される。プランジャ4bは、シリンジ本体4a内に摺動移動可能に配置され、送り方向に向けた移動によって液体Wを外部に供給する。また、スライダ5aは、プランジャ4bをシリンジ本体4a内に押し込むように、プランジャ4bに連結されている。
【0132】
このような本実施形態の液体供給装置1は、送り装置5を備える。このため、本発明の第11の態様は、移動可能な羽根車5e1に当接する状態と羽根車5e1から離間した離間状態とに状態変更される可動ピン11の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0133】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0134】
図5は、第2実施形態の切換機構5fの拡大図であり、可動ピン11が当接状態にある様子を示す図である。図6は、第2実施形態の切換機構5fの拡大図であり、可動ピン11が離間状態にある様子を示す図である。これらの図に示すように、本実施形態の切換機構5fにおいて、ラッチ機構10の状態保持部14は、可動ピン側永久磁石14cと、固定永久磁石14dと、を備える。
【0135】
可動ピン側永久磁石14cは、可動ピン11に固定された永久磁石である。また、固定永久磁石14dは、本体ケース2に固定された永久磁石である。図5及び図6に示すように、可動ピン側永久磁石14cは、可動ピン11の右側RHの周面に設けられている。また、固定永久磁石14dは、可動ピン11の当接位置と離間位置との間の位置である中間位置にて可動ピン側永久磁石14cに最も近接する位置に配置されている。本実施形態では、図5及び図6に示すように、これらの可動ピン側永久磁石14cと固定永久磁石14dとは、最も近接する場合に左右方向L2に配列されるように設けられている。
【0136】
なお、図5及び図6に示すように、可動ピン側永久磁石14cと固定永久磁石14dとは、いずれも可動ピン11やレバー13と干渉しない位置に配置されている。本実施形態では、可動ピン側永久磁石14cと固定永久磁石14dとは、レバー13の前方FW側に配置されている。
【0137】
これらの可動ピン側永久磁石14cと固定永久磁石14dとは、可動ピン11が中間位置姿勢である場合に、同極が対向されるように設けられている。つまり、可動ピン側永久磁石14cが右側RHにN極を向けるように設置されている場合、固定永久磁石14dは左側LHにN極を向けるように設置されている。一方で、可動ピン側永久磁石14cが右側RHにS極を向けるように設置されている場合、固定永久磁石14dは左側LHにS極を向けるように設置されている。
【0138】
このような状態保持部14によって、可動ピン11は、固定永久磁石14dから可動ピン側永久磁石14cが離れる方向に反発力を受ける。このため、可動ピン11の状態は、現在の状態に保持される。つまり、当接状態にある可動ピン11は当接状態に保持され、離間状態にある可動ピン11は離間状態に保持される。
【0139】
このような本実施形態の切換機構5fにおいて状態保持部14は、可動ピン側永久磁石14cと、固定永久磁石14dと、を備える。可動ピン側永久磁石14cは、可動ピン11に対して固定された永久磁石である。固定永久磁石14dは、当接状態となる可動ピン11の位置と離間状態となる可動ピン11の位置との中間位置にて可動ピン側永久磁石14cに最も近接する位置に配置された永久磁石である。また、可動ピン側永久磁石14cと固定永久磁石14dとは、可動ピン11が中間位置である場合に、同極が対向されるように設けられている。
【0140】
このような本実施形態の切換機構5fにおいて可動ピン11側永久磁石と固定永久磁石14bとは、可動ピン11が中間位置である場合に同極が対向されるように設けられている。このため、可動ピン11は、可動ピン側永久磁石14cと固定永久磁石14dとの相互作用により、固定永久磁石14dから可動ピン側永久磁石14cが離れる方向に反発力を受ける。このような反発力を可動ピン11が受けることで、当接状態にある可動ピン11は当接状態を保持する方向に反発力を受け、離間状態にある可動ピン11は離間状態を保持する方向に反発力を受ける。このため、外力を可動ピン11に付与しなければ、可動ピン11の状態は、当接状態あるいは離間状態である場合に現在の状態に保持される。つまり、当接状態にある可動ピン11は当接状態に保持され、離間状態にある可動ピン11は離間状態に保持される。このような本実施形態の切換機構5fは、簡易な構成で永久磁石の磁力によって可動ピン11の状態を保持することができ、可動ピン11の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0141】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0142】
図7は、第3実施形態の切換機構5fの拡大図であり、可動ピン11が当接状態にある様子を示す図である。図8は、第3実施形態の切換機構5fの拡大図であり、可動ピン11が離間状態にある様子を示す図である。これらの図に示すように、本実施形態の切換機構5fにおいて、ラッチ機構10の状態保持部14は、後側永久磁石14e(第1吸引磁石)と、前側永久磁石14f(第2吸引磁石)と、を備える。
【0143】
後側永久磁石14eは、図7に示すように、当接位置にある可動ピン11の後端部に左側LHから対向する位置に配置されている。前側永久磁石14fは、図8に示すように、離間位置にある可動ピン11の前端部に左側LHから対向する位置に配置されている。これらの後側永久磁石14eと前側永久磁石14fとは、本体ケース2に固定されている。
【0144】
本実施形態では、可動ピン11は、鉄等の磁性体によって形成されている。このため、後側永久磁石14e及び前側永久磁石14fは、可動ピン11を磁力により吸引する。特に、後側永久磁石14e及び前側永久磁石14fは、可動ピン11が対向配置された場合に、可動ピン11を強く吸引する。したがって、後側永久磁石14eは、可動ピン11が当接位置にある場合に、可動ピン11を強く吸引する。つまり、後側永久磁石14eは、当接状態にある可動ピン11の状態を保持することができる。また、前側永久磁石14fは、可動ピン11が離間位置にある場合に、可動ピン11を強く吸引する。つまり、前側永久磁石14fは、離間状態にある可動ピン11の状態を保持することができる。
【0145】
また、本実施形態においてアクチュエータ20は、後側コイル25と前側コイル26とを備える。また、アクチュエータ20は、後側永久磁石14eと、前側永久磁石14fとを利用する。つまり、後側永久磁石14eと前側永久磁石14fとは、アクチュエータ20と状態保持部14とに兼用されている。
【0146】
後側コイル25及び前側コイル26は通電されることで、磁性体からなる可動ピン11を磁化する。また、本実施形態において、後側永久磁石14eと前側永久磁石14fとは、可動ピン11側に向けられた極が、互いに反対となるように設置されている。例えば、後側永久磁石14eが可動ピン11側にS極を向けている場合には、前側永久磁石14fは可動ピン11側にN極を向けている。また、後側永久磁石14eが可動ピン11側にN極を向けている場合には、前側永久磁石14fは可動ピン11側にS極を向けている。
【0147】
後側コイル25及び前側コイル26に通電された可動ピン11が磁化されると、可動ピン11の後端部と前端部とが異なる磁極となる。例えば、可動ピン11の後端部がS極である場合には前端部がN極となる。また、可動ピン11の後端部がN極である場合には前端部がS極となる。この結果、可動ピン11は、後側永久磁石14eと前側永久磁石14fとのいずれかに向けて移動される。
【0148】
例えば、後側永久磁石14eが可動ピン11側にS極を向け、前側永久磁石14fが可動ピン11側にN極を向けている場合に、可動ピン11の後端部がN極となり前端部がS極となることで、可動ピン11は、当接位置に移動する。また、後側永久磁石14eが可動ピン11側にS極を向け、前側永久磁石14fが可動ピン11側にN極を向けている場合に、可動ピン11の後端部がS極となり前端部がN極となることで、可動ピン11は、離間位置に移動する。
【0149】
なお、後側コイル25と前側コイル26とに換えて、単一のコイルを可動ピン11に設けるようにしてもよい。また、可動ピン11の前後方向L1における中間部位に非磁性体を設け、後側コイル25と前側コイル26とへの通電を個別に制御することで、可動ピン11の後端部と前端部との磁極を各々設定することも可能である。このような場合には、後側永久磁石14eと前側永久磁石14fの可動ピン11に向けられる磁極は特に限定されない。
【0150】
また、後側永久磁石14eが可動ピン11側にN極を向け、前側永久磁石14fが可動ピン11側にS極を向けている場合に、可動ピン11の後端部がN極となり前端部がS極となることで、可動ピン11は、離間位置に移動する。また、後側永久磁石14eが可動ピン11側にN極を向け、前側永久磁石14fが可動ピン11側にS極を向けている場合に、可動ピン11の後端部がS極となり前端部がN極となることで、可動ピン11は、当接位置に移動する。
【0151】
このような本実施形態の切換機構5fにおいては、可動ピン11が磁性体で形成されている。また、状態保持部14は、当接状態の可動ピン11を吸引して状態を保持する永久磁石である後側永久磁石14eと、離間状態の可動ピン11を吸引して状態を保持する永久磁石である前側永久磁石14fと、を備える。
【0152】
このような本実施形態の切換機構5fによれば、後側永久磁石14eが当接状態の可動ピン11を吸引するため、当接状態の可動ピン11の状態が保持される。また、前側永久磁石14fが離間状態の可動ピン11を吸引するため、離間状態の可動ピン11の状態が保持される。このため、外力を可動ピン11に付与しなければ、可動ピン11の状態は、当接状態あるいは離間状態である場合に現在の状態に保持される。つまり、当接状態にある可動ピン11は当接状態に保持され、離間状態にある可動ピン11は離間状態に保持される。このような本実施形態の切換機構5fは、簡易な構成で永久磁石の磁力によって可動ピン11の状態を保持することができ、可動ピン11の状態保持に必要な消費エネルギを削減できる。
【0153】
また、本実施形態の切換機構5fにおいて可動ピン11が磁性体で形成されている。また、アクチュエータ20は、可動ピン11に巻かれた後側コイル25及び前側コイル26を備える。アクチュエータ20は、後側コイル25及び前側コイル26に通電して可動ピン11を磁化して後側永久磁石14eと前側永久磁石14fとの相互作用により可動ピン11を移動する。
【0154】
このような本実施形態の切換機構5fによれば、後側永久磁石14eと前側永久磁石14fをアクチュエータ20の一部として用いることができる。つまり、本実施形態の切換機構5fによれば、可動ピン11の状態を保持する後側永久磁石14eと前側永久磁石14fをアクチュエータ20の部品として兼用できる。したがって、本実施形態の切換機構5fは、部品点数を削減することができる。
【0155】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0156】
例えば、上記各実施形態では、流体として液体Wを例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば流体としては、ガス等の気体であっても構わない。使用される用途や目的等に応じて、内容物を適宜変更して構わない。例えば、流体としては、塗料、飲料、香料、油脂類(グリス、オイル等)等、様々なものを選択して構わない。
【0157】
さらに上記各実施形態では、定圧ばねを推力付与部として用いる場合を例に挙げて説明しが、この場合に限定されるものではない。推力付与部として、コイルばね、板ばね等の他のばねを用いても構わない。さらに、ばね以外の推力付与部を用いることも可能である。
【0158】
さらに上記各実施形態では、調速機構5eの一例として、羽根車5e1を利用した例を挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、てんぷや電磁石による磁力を利用してアンクルを規則正しく揺動させることで、輪列機構5dの調速を行っても構わない。また、送りねじ5cのリードの長さを変更することで、スライダ5aの調速を行うことも可能である。また、輪列機構5dの歯車の歯数を変更することでスライダ5aの調速を行うことも可能である。
【0159】
なお、本発明は以下の態様を含む。
【0160】
<1>
移動可能な移動対象物に対して当接することで前記移動対象物の移動を規制する規制体と、
前記規制体が前記移動対象物に当接した当接状態である場合、及び前記規制体が前記移動対象物から離間した離間状態である場合に、前記規制体を永久磁石の磁力によって状態保持する状態保持部と、
を備える、ラッチ機構。
【0161】
<2>
前記規制体を前記当接状態とする第1姿勢と、前記規制体を前記離間状態とすると共に前記第1姿勢に対して傾動した第2姿勢とに姿勢変更可能なレバーを備え、
前記状態保持部は、
前記レバーに対して固定された前記永久磁石であるレバー側永久磁石と、
前記第1姿勢と前記第2姿勢との中間姿勢にて前記レバー側永久磁石に最も近接する位置に配置された前記永久磁石である固定永久磁石と、
を備え、
前記レバー側永久磁石と前記固定永久磁石とは、前記レバーが前記中間姿勢である場合に、同極が対向されるように設けられている、
<1>記載のラッチ機構。
【0162】
<3>
前記レバーは、前記規制体に接続された長手部と、傾動中心を間に挟んで前記長手部の反対側に位置すると共に前記長手部よりも短い短手部と、を備え、
前記レバー側永久磁石は、前記短手部に設置されている、
<2>記載のラッチ機構。
【0163】
<4>
前記状態保持部は、
前記規制体に対して固定された前記永久磁石である規制体側永久磁石と、
前記当接状態となる前記規制体の位置と前記離間状態となる前記規制体の位置との中間位置にて前記規制体側永久磁石に最も近接する位置に配置された前記永久磁石である固定永久磁石と、
を備え、
前記規制体側永久磁石と前記固定永久磁石とは、前記規制体が前記中間位置である場合に、同極が対向されるように設けられている、
<1>記載のラッチ機構。
【0164】
<5>
前記規制体が磁性体で形成され、
前記状態保持部は、
前記当接状態の前記規制体を吸引して状態を保持する前記永久磁石である第1吸引磁石と、
前記離間状態の前記規制体を吸引して状態を保持する前記永久磁石である第2吸引磁石と、
を備える、
<1>記載のラッチ機構。
【0165】
<6>
前記規制体は、直線状に延伸する長尺状形状に形成されており、延伸方向に移動されることで前記当接状態と前記離間状態とに状態が変更される、<4>または<5>記載のラッチ機構。
【0166】
<7>
<1>~<6>のいずれか一つに記載のラッチ機構と、
前記規制体を移動させて前記当接状態と前記離間状態とに状態を切り換えるアクチュエータと、
を備える、切換機構。
【0167】
<8>
前記アクチュエータは、
前記規制体に接続されると共に通電されることで前記離間状態となるように前記規制体を引く第1形状記憶合金部材と、
前記規制体に接続されると共に通電されることで前記当接状態となるように前記規制体を引く第2形状記憶合金部材と、
を備える、<7>記載の切換機構。
【0168】
<9>
前記規制体が磁性体で形成され、
前記アクチュエータは、前記規制体に巻かれたコイルを備え、前記コイルに通電して前記規制体を磁化して前記永久磁石との相互作用により前記規制体を移動する、
<7>記載の切換機構。
【0169】
<10>
対象物を送り方向に向けて移動させる可動体と、
前記送り方向に向けて前記可動体に推力を付与する推力付与部と、
前記可動体に付与された推力によって前記送り軸線回りに回転する前記送りねじと、
前記送りねじの回転に伴って回転する輪列機構と、
前記輪列機構の回転速度を調整すると共に前記移動対象物を備える調速機構と、
前記移動対象物に当接することで前記輪列機構の回転を停止する<7>~<9>のいずれか一つに記載の切換機構と、
を備える、送り装置。
【0170】
<11>
流体収容容器と、
<10>に記載の送り装置と、を備え、
前記流体収容容器は、
内部に流体が充填される収容筒と、
前記収容筒内に摺動移動可能に配置され、前記送り方向に向けた移動によって前記流体を外部に供給するプランジャと、を備え、
前記可動体は、前記プランジャを前記対象物として前記収容筒内に押し込むように、前記プランジャに連結されている、
流体供給装置。
【符号の説明】
【0171】
1……液体供給装置(流体供給装置)
4……シリンジ(流体収容容器)
4a……シリンジ本体(収容筒)
4b……プランジャ(対象物)
5……送り装置
5a……スライダ(可動体)
5b……定圧ばね(推力付与部)
5c……送りねじ
5d……輪列機構
5e……調速機構
5e1……羽根車(移動対象物)
10……ラッチ機構
11……可動ピン(規制体)
13……レバー
13c……長手部
13d……短手部
14……状態保持部
14a……レバー側永久磁石(永久磁石)
14b……固定永久磁石(永久磁石)
14c……可動ピン側永久磁石(永久磁石)
14d……固定永久磁石(永久磁石)
14e……後側永久磁石(第1吸引磁石)
14f……前側永久磁石(第2吸引磁石)
20……アクチュエータ
21……第1形状記憶合金ライン(第1形状記憶合金部材)
22……第2形状記憶合金ライン(第2形状記憶合金部材)
23……第1押圧ピン
24……第2押圧ピン
25……後側コイル(コイル)
26……前側コイル(コイル)
O1……軸線
O2……回転軸線
O3……軸線(傾動中心)
W……液体(流体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8