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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129888
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 23/06 20060101AFI20240920BHJP
   F02F 3/26 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F02B23/06 R
F02B23/06 S
F02F3/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039258
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】口田 征人
【テーマコード(参考)】
3G023
【Fターム(参考)】
3G023AA01
3G023AD02
(57)【要約】
【課題】噴霧と空気の混合を促進しやすい内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関は、シリンダヘッドと、ピストンの頂面に形成され、前記シリンダヘッドとの間に燃焼室を形成するキャビティと、を備え、前記キャビティは、前記ピストンの頂面中央部に配置される第1面と、前記第1面の周囲に配置され、前記第1面よりも前記シリンダヘッド側に配置される第2面と、前記第2面に設けられ前記第1面側に向けて凹んだ溝部と、前記溝部の前記第1面側に設けられ、前記第1面上に形成される第1空間と、前記溝部に形成される第2空間とを隔てる壁を有し、前記壁は、前記第1空間と前記第2空間とを接続する第1スリットを含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドと、
ピストンの頂面に形成され、前記シリンダヘッドとの間に燃焼室を形成するキャビティと、
を備え、
前記キャビティは、
前記ピストンの頂面中央部に配置される第1面と、
前記第1面の周囲に配置され、前記第1面よりも前記シリンダヘッド側に配置される第2面と、
前記第2面に設けられ前記第1面側に向けて凹んだ溝部と、
前記溝部の前記第1面側に設けられ、前記第1面上に形成される第1空間と、前記溝部に形成される第2空間とを隔てる壁部と、
を有し、
前記壁部は、前記第1空間と前記第2空間とを接続する第1スリットを含む、
内燃機関。
【請求項2】
前記キャビティは、前記溝部の内壁から前記第1スリットに向けて延びる曲部を有する、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記キャビティは、前記溝部の前記シリンダヘッド側を覆い、前記第2空間と、前記溝部の上部に形成される第3空間とを隔てる蓋部を有し、
前記蓋部は、前記第2空間と前記第3空間とを接続する第2スリットを含む、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記第1スリットは、前記第2スリットに接続される、
請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記第1スリットと前記第2スリットとが同じ幅である、
請求項3または4に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピストンの頂面にキャビティを有する内燃機関が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、2段構造のキャビティを有する内燃機関を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019―199825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、上段と下段の間の壁に噴霧を当て、ピストン頂面の中央部分と外周部分に噴霧が拡散するキャビティを開示している。このようなキャビティの場合、頂面の中央部分の噴霧が多すぎる場合もある。
【0005】
本開示の課題は、噴霧と空気の混合を促進しやすい内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関は、シリンダヘッドと、ピストンの頂面に形成され、前記シリンダヘッドとの間に燃焼室を形成するキャビティと、を備え、前記キャビティは、前記ピストンの頂面中央部に配置される第1面と、前記第1面の周囲に配置され、前記第1面よりも前記シリンダヘッド側に配置される第2面と、前記第2面に設けられ前記第1面側に向けて凹んだ溝部と、前記溝部の前記第1面側に設けられ、前記第1面上に形成される第1空間と、前記溝部に形成される第2空間とを隔てる壁を有し、前記壁は、前記第1空間と前記第2空間とを接続する第1スリットを含む。
【0007】
この内燃機関によれば、圧縮行程において第1スリットから空気が入り、溝部内で混合が促進されやすい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、噴霧と空気の混合を促進しやすい内燃機関を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態による内燃機関の断面図。
図2】本開示の実施形態による内燃機関のピストンの上面図。
図3図1のA-A断面図。
図4図1のB-B断面図。
図5図1のC-C断面図。
図6図3のD-D断面図。
図7図4における、混合気の流動を示す概略図。
図8図5および図6における、混合気の流動を示す概略図。
図9】本開示の第2実施形態による蓋部の形状を示す図。
図10】本開示の第2実施形態による溝部および蓋部形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド4と、ピストン6と、複数の吸気バルブ8と、複数の排気バルブ10と、燃料噴射弁12と、を備える。本実施形態の内燃機関1は、燃料噴射弁12がシリンダブロック2のシリンダ21に燃料を直接噴射する直噴型のディーゼルエンジンである。また、本実施形態では1つのシリンダ21に2つの吸気バルブ8と、2つの排気バルブ10が配置される。本実施形態の内燃機関1は、シリンダ21が上下方向(図1の矢印Z)に配置される例を用いて説明する。
【0012】
また、内燃機関1は、スワール流発生手段を備える。本実施形態のスワール流発生手段は、2つの吸気バルブ8である。本実施形態では、2つの吸気バルブ8のリフト高さが異なることによって、ピストン6の摺動方向(本実施形態では上下方向)と直交する面に沿って吸気が旋回するスワール流を発生させる。本実施形態の内燃機関1は、スワール流が時計回りに旋回する例を用いて説明する(図2の矢印Sを参照)。なお、スワール流発生手段は、このほかシリンダヘッド4の吸気ポートなどの形状をスワール流が発生するように形成したものでもよい。また、スワール流を発生させるバルブなどを設けてもよい。
【0013】
ピストン6は、頂面にキャビティ61を有する。キャビティ61は、ピストン6が上死点の位置にあるときに、シリンダヘッド4との間に燃焼室を形成する。したがって、キャビティ61に供給される混合気は、極力均質であることが好ましい。本実施形態の直噴型ディーゼルエンジンの場合、キャビティ61内に噴射する燃料の噴霧を拡散させて、均質な混合気を形成することが好ましい。
【0014】
図2および図3に示すように、キャビティ61は、第1面62と、中央空間(第1空間の一例)62aと、第2面63と、上部空間(第3空間の一例)63aと、第3面64と、複数の溝部65と、複数の内部空間(第2空間の一例)66と、複数の蓋部68と、複数の壁部69と、曲部70と、を有する。
【0015】
第1面62は、ピストン6の頂面中央部に配置される。
【0016】
中央空間62aは、第1面62上に形成される。本実施形態の中央空間62aは、ピストン6が上死点に位置する際に、シリンダヘッド4、ピストン6のキャビティ61および第3面64とで区画される空間である。
【0017】
第2面63は、第1面62の周囲に配置される。第2面63は、第1面62よりもシリンダヘッド4(図1を参照)側に配置される。本実施形態では、第2面63は、第1面62よりも上方に配置される(図3を参照)。
【0018】
上部空間63aは、第2面63上に形成される。また、上部空間63aは、溝部65の上部の空間である。本実施形態の上部空間63aは、ピストン6が上死点に位置する際に、シリンダヘッド4とキャビティ61の第2面63に挟まれた空間である。
【0019】
図3に示すように、第3面64は、第1面62のピストン6の外周側(図2の矢印О方向)の端縁と、第2面63のピストン6の中央側(図2の矢印I方向)の端縁とを接続する。本実施形態の第3面64は、ピストン6の高さ方向(図3の矢印Z方向)に沿って延びる立壁である。
【0020】
図2に示すように、溝部65は、第2面63に複数設けられる。複数の溝部65は、第2面63に放射状に形成される。本実施形態の複数の溝部65は、放射状に8つ形成される。8つの溝部65は、ピストン6の周方向に沿って、所定の間隔を空けて配置される。したがって、8つの溝部65は、45度ごとに配置される。
【0021】
図3に示すように、複数の溝部65は、第2面63から第1面62側に向けて凹んだ部分である。本実施形態の複数の溝部65の深さh1は、第1面62に対する第2面63の高さh2より低い。これに限らず、複数の溝部65の深さh1は、h2と同じであってもよい。
【0022】
図3および図4に示すように、溝部65は、底面65aと、縦面65bと、一対の側面65cと、を含む。
【0023】
図3に示すように、本実施形態の底面65aは、第2面63から深さh1だけ離間して、第1面62および第2面63と概ね平行に拡がる。これに限らず、底面65aは、溝部65の奥行方向(図3の矢印X方向)に傾斜してもよい。すなわち、溝部65の深さh1は、ピストン6の中央部側(図3の矢印I方向)から外周側(図3の矢印O方向)に向かうにつれて変更されてもよい。この場合、溝部65の深さh1は、ピストン6の外周側に向かうにつれて深くなるように形成されてもよい。
【0024】
縦面65bは、底面65aからピストン6の高さ方向(図3の矢印Z方向)に沿って延びる。本実施形態の縦面65bは、第3面64と概ね平行に拡がる。
【0025】
図4に示すように、側面65cは、底面65aからピストン6の高さ方向(図4の矢印Z方向)に沿って延びる。一対の側面65cは、互いに溝部65の幅w1だけ離間して設けられる。
【0026】
図2に示すように、本実施形態の溝部65の幅w1は、ピストン6の外周側に向かうほど広くなる。溝部65は、ピストン6の外周側に向かうにつれて幅広になる概ね台形の形状である。これによって、第1面62に残す噴霧と頂面周囲まで飛ばす噴霧の量を調整しやすい。
【0027】
内部空間66は、溝部65内に形成された空間である。図3および図4に示すように、内部空間66は、溝部65の底面65aと、縦面65bと、一対の側面65cと、蓋部68および壁部69で区画された空間である。本実施形態の内部空間66は、図2に示す溝部65の形状に沿って、ピストン6の外周側に向かうにつれて大きくなる。
【0028】
蓋部68は、溝部65のシリンダヘッド4側(図1を参照)を覆う。本実施形態の蓋部68の上面は、第2面63の一部である。蓋部68は、所定の厚みh3をもって形成される。蓋部68は、溝部65の底面65aと対向して配置される。
【0029】
図4に示すように、蓋部68は、蓋部スリット(第2スリットの一例)68aを含む。蓋部スリット68aは、蓋部68を貫通し、内部空間66と上部空間63aとを接続する。
【0030】
本実施形態の蓋部スリット68aは、ピストン6の中央側から外周側へ向かう方向に沿って延びる直線形状である(図2を参照)。蓋部スリット68aの幅w2は、ピストン6の中央側から外周側に向かう方向に沿って一定である。
【0031】
また、蓋部スリット68aの幅w2は、溝部65の幅w1よりも小さい。本実施形態の蓋部スリット68aの幅w2は、溝部65の幅w1の概ね3分の1から2分の1程度の大きさに形成される。
【0032】
さらに、図3に示すように、蓋部スリット68aの端部は、上面視において、溝部65の縦面65bよりもピストン6の中央側に位置する。すなわち、蓋部スリット68aの長さr1は、溝部65の奥行r2よりも小さい。
【0033】
図5に示すように、壁部69は、溝部65の第1面62側を覆い、中央空間62aと内部空間66とを隔てる壁である。本実施形態の壁部69の中央側の面は、第3面64の一部である。壁部69は、所定の厚みh4をもって形成される。壁部69は、溝部65の縦面65bと対向して配置される。本実施形態の壁部69の厚みh4は、蓋部68の厚みh3と概ね同じである。これに限らず、壁部69の厚みh4は、蓋部68と異なる厚みに形成してもよい。
【0034】
壁部69は、壁部スリット(第1スリットの一例)69aを含む。図5および図6に示すように、壁部スリット69aは、壁部69に設けられる。壁部スリット69aは、壁部69を貫通し、内部空間66と中央空間62aとを接続する。本実施形態の壁部スリット69aは、ピストン6の上下方向(図5の矢印Z方向)に延びる直線形状である。壁部スリット69aの幅w3は、ピストン6の上下方向に沿って一定である。
【0035】
また、壁部スリット69aの幅w3は、溝部65の幅w1よりも小さい。本実施形態の壁部スリット69aの幅w3は、蓋部スリット68aと同様に、溝部65の幅w1の概ね3分の1から2分の1程度の大きさに形成される。
【0036】
なお、蓋部スリット68aの幅w2と壁部スリット69aの幅w3は、同じ大きさに形成されてもよいし、異なる大きさに形成されてもよい。本実施形態では、蓋部スリット68aと壁部スリット69aは、概ね同じ幅で形成される。
【0037】
また、本実施形態の壁部スリット69aは、溝部65の底面65aと概ね同じ高さまで延びる。すなわち、壁部スリット69aの上下方向の長さは、溝部65の深さh1と概ね一致する。
【0038】
図5に示すように、蓋部スリット68aと壁部スリット69aは、連続してもよい。本実施形態の蓋部スリット68aと壁部スリット69aは、第2面63と第3面64が接続する箇所で、接続する。内部空間66は、第2面63および第3面64において、中央空間62a(図6を参照)および上部空間63aと接続してもよい。
【0039】
すなわち、本実施形態では、蓋部スリット68aと壁部スリット69aは、第2面63から第3面64にかけて、その幅が一定の連続した直線形状のスリットとして設けられる。
【0040】
これにより、内燃機関1の圧縮行程では、蓋部スリット68aからスキッシュを利用して、内部空間66に空気が入り込み、噴霧と混合する。さらに、膨張行程では、蓋部スリット68aおよび壁部スリット69aから、着火した火炎を含む混合気が噴出する。
【0041】
さらに、蓋部スリット68aと壁部スリット69aの幅が一定であるため、第2面63と第3面64の接続箇所で、幅方向に段差ができない。これにより、当該箇所に熱応力が集中し、ピストン6が損傷することを防止することができる。
【0042】
図3図4および図6に示すように、曲部70は、第1曲部70aと、第2曲部70bと、を含む。
【0043】
図4に示すように、第1曲部70aは、溝部65の内壁から蓋部スリット68aに向けて延びる。本実施形態の第1曲部70aは、溝部65の側面65cから蓋部68の蓋部スリット68aの縁までを接続する曲面である。また、曲部70は、第3曲部70cを含んでもよい。第3曲部70cは、溝部65の底面65aと側面65cを滑らかに接続する曲面であってもよい。さらに、底面65aが第3曲部70cとして、球面の一部に形成されてもよい。これによって、内部空間66がZ方向にみて滑らかな長円形となる。この結果、混合気が流動しやすい。
【0044】
図6に示すように、第2曲部70bは、溝部65の側面65cから壁部スリット69aに向けて延びる。本実施形態の第2曲部70bは、溝部65の側面65cから壁部スリット69aの縁部までを接続する曲面である。また、曲部70は、第4曲部70dを含んでもよい。第4曲部70dは、溝部65の縦面65bと側面65cを滑らかに接続する曲面であってもよい。さらに、第4曲部70dは、縦面65bを完全に含んでもよい。これによって、内部空間66がY方向にみて滑らかな長円形となる。この結果、混合気が流動しやすい。
【0045】
次に図1および図7を用いて、内部空間66における混合気の流動について説明する。
【0046】
図1に示すように、燃料噴射弁12は、主に第1面62および第3面64に向けて燃料を噴射する。本実施形態の燃料噴射弁12は、8つの方向に燃料を噴射する。本実施形態の燃料噴射弁12は、8つの溝部65(図2を参照)に向けて燃料を噴射する。言い換えると、燃料噴射弁12は、溝部65がある方向に噴霧を形成する。なお、燃料噴射弁12の噴射口に合わせて、第2面63および溝部65を形成してもよい。
【0047】
このように形成された内燃機関1は、燃料噴射弁12から燃料が噴射されると、8つの噴霧が溝部65に入りこむ。
【0048】
図7に示すように、噴霧は、スワール流によって拡散されながら、蓋部スリット68aに到達する。図7の太矢印は、溝部65に到達する混合気の流れを示したものである。
【0049】
図7(a)に示すように、溝部65付近に到達した混合気は、蓋部スリット68aを介して内部空間66に到達する。蓋部スリット68aの幅w2は、溝部65の幅w1よりも小さい(図4を参照)。このため、蓋部スリット68aを通過し、内部空間66に到達する際に、混合気の流速は低下する。これにより、噴霧が拡散し、混合気の均質化が促進される。
【0050】
さらに、図7(b)に示すように、内部空間66に到達した混合気は、溝部65の底面65a、縦面65b(図3を参照)および一対の側面65cに押し当てられる。これにより、吸気との混合が促進される。本実施形態では、蓋部スリット68aから内部空間66に到達した混合気の進路は、底面65a付近の第3曲部70cによって、蓋部スリット68aに向けて逆向きに変更される。これにより、混合気は、内部空間66の内部で、小さく渦を巻きながら混合される。このため、混合気が均質となり、燃焼が良好となる。
【0051】
図7(c)に示すように、内部空間66で均質となった混合気は、蓋部スリット68aを介して、上部空間63aへと至る。このため、蓋部スリット68aを通過し、上部空間63aに到達する際に、混合気の流速は低下する。これにより、噴霧がさらに拡散し、混合気の均質化が促進される。
【0052】
次に図8を用いて、壁部スリット69aを介して内部空間66に到達する混合気の流れを説明する。噴霧は、スワール流によって拡散されながら、壁部スリット69aに到達する。
【0053】
図8(a)に示すように、壁部スリット69aを介して内部空間66に到達した混合気(図8(a)の破線の太矢印を参照)は、蓋部スリット68a(図7(a)を参照)を介して内部空間66に到達した混合気と併せて、渦を形成しながら内部空間66で混合される。一方、壁部スリット69aによって内部空間66への入り口が制限されるため、中央空間62aのスワール流は、その流れを維持しやすい。
【0054】
また、図8(b)に示すように、壁部スリット69aを介して内部空間66に到達した混合気(図8(b)の太矢印を参照)は、溝部65の縦面65bに押し当てられる。さらに混合気の進路は、第2曲部70bおよび第4曲部70dによって壁部スリット69aに向けて逆向きに変更される。これにより、混合気は、内部空間66の内部で、小さく渦を巻きながら混合される。このため、混合気が均質となり、燃焼が良好となる。
【0055】
内部空間66で均質となった混合気は、膨張行程において自着火し、壁部スリット69aを介して、中央空間62aへ火炎を含む混合気となって噴出する。このため、壁部スリット69aを通過した火炎は、中央空間62aにある混合気を燃やす。燃焼の均質化が促進される。
【0056】
<第2実施形態>
次に本開示の第2実施形態について、図9を用いて説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0057】
図9に示すように、第2実施形態における、キャビティ261は、第2面263と、第2空間263aと、溝部265と、内部空間266と、蓋部268と、を有する。第2実施形態では、蓋部268の厚みd1が、第1実施形態と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
図9の破線は、第1実施形態における溝部65の形状を示す。第2実施形態の蓋部268の厚みd1は、第1実施形態における厚みd0に比べて小さい。例えば、蓋部268は、溝部265の第2面263側を覆う板状部材であってもよい。これにより、第2面263から内部空間266までの距離が短くなる。このため、蓋部スリット268aに流入した混合気は、速やかに内部空間266に到達する。この結果、噴霧の混合を促進することができる。
【0059】
図10は、本実施形態における溝部65(265)とおよび蓋部68(268)の形状の変形例を示した図である。図10(a)から(i)における破線は溝部65(265)を、実線は蓋部68(268)を、それぞれ示す。
【0060】
図10(a)から(i)に示す実施形態では、溝部65(265)の幅w1と、蓋部268に設けられる蓋部スリット68a(268a)の幅w2が、ピストン6(図1を参照)の径方向に沿って変化する。これらの実施形態では、溝部65(265)の幅w1および蓋部スリット68aの幅w2は、ピストン6の中央部側と外周側とで異なってもよい。これによって、上部空間63a(263a)から中央空間62a(図2参照)に流れるスキッシュ流および、中央空間62a(図2参照)から上部空間63a(263a)に流れる逆スキッシュ流が乱れやすくなる。この結果、上部空間63a(263a)の混合も促進される。
【0061】
図10(a)では、溝部65(265)の幅w1は、ピストン6の径方向(図10の矢印Y方向)に沿って一定である。また、蓋部スリット68a(268a)の幅w2は、ピストン6の径方向の外周側に向かって狭くなる。
【0062】
図10(b)では、溝部65(265)の幅w1は、図10(a)と同様に一定である。一方、蓋部スリット68a(268a)の幅w2は、ピストン6の径方向の外周側に向かって広くなる。
【0063】
図10(c)では、溝部65(265)の幅w1は、図10(a)および(b)と同様に一定である。一方、蓋部スリット68a(268a)は、上面視において楕円形状に形成される。
【0064】
図10(d)では、溝部65(265)の幅w1は、ピストン6の径方向の外周側に向かって広くなる。蓋部スリット68a(268a)の幅w2は、図10(a)と同様に、ピストン6の径方向の外周側に向かって狭くなる。
【0065】
図10(e)では、溝部65(265)の幅w1は、図10(d)と同様にピストン6の径方向の外周側に向かって広くなる。蓋部スリット68a(268a)の幅w2も、同様に外周側に向かって広くなり、最も外周側で溝部65(265)の幅w1と同じ幅となるように形成される。
【0066】
図10(f)では、溝部65(265)の幅w1は、図10(d)および(e)と同様にピストン6の径方向の外周側に向かって広くなる。蓋部スリット68a(268a)は、図10(c)と同様に上面視において楕円形状に形成される。
【0067】
図10(g)では、溝部65(265)の幅w1は、ピストン6の径方向の外周側に向かって狭くなる。蓋部スリット68a(268a)の幅w2も、同様に外周側に向かって狭くなり、最も外周側で溝部65(265)の幅w1よりも広くなるように形成される。
【0068】
図10(h)では、溝部65(265)の幅w1は、図10(g)と同様にピストン6の径方向の外周側に向かって狭くなる。蓋部スリット68a(268a)の幅w2は、図10(b)と同様に、外周側に向かって広くなる。
【0069】
図10(i)では、溝部65(265)の幅w1は、図10(g)および(h)と同様にピストン6の径方向の外周側に向かって狭くなる。蓋部スリット68a(268a)は、図10(c)および(f)と同様に、上面視において楕円形状に形成される。
【0070】
図10(d)から(f)の溝部65(265)の幅w1は、ピストン6の径方向の外周側に向かって広くなる。これにより、内部空間66(266)(図3および図9を参照)に到達した噴霧は、内部空間66(266)にとどまりやすい。このため、蓋部スリット68a(268a)は、より多くの空気を内部空間66(266)に導入することができる。この結果、混合気が均質となる。
【0071】
図10(g)から(i)の溝部65(265)の幅w1は、ピストン6の径方向の外周側に向かって狭くなる。これにより、混合気は、内部空間66(266)に到達すると速やかに押し戻される。このため、混合気の流動が促進される。この結果、噴霧の拡散が促進され、混合気が均質となる。
【0072】
以上説明した通り、本開示によれば、噴霧が均質に拡散しやすい内燃機関1を提供できる。
【0073】
<他の実施形態>
以上、本実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は、必要に応じて任意に組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 :内燃機関
2 :シリンダブロック
4 :シリンダヘッド
6 :ピストン
8 :吸気バルブ
10 :排気バルブ
12 :燃料噴射弁
21 :シリンダ
61,261:キャビティ
62,262:第1面
62a:中央空間(第1空間の一例)
63,263:第2面
63a、263a:上部空間(第3空間の一例)
64:第3面
65、265:溝部
66、266:内部空間(第2空間の一例)
68:蓋部
68a、268a:蓋部スリット(第2スリットの一例)
69:壁部
69a:壁部スリット(第1スリットの一例)
70:曲部
70a:第1曲部
70b:第2曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10