(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129898
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】消火ノズル
(51)【国際特許分類】
A62C 31/05 20060101AFI20240920BHJP
B05B 1/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A62C31/05
B05B1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039273
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光明
【テーマコード(参考)】
2E189
4F033
【Fターム(参考)】
2E189KA07
4F033AA12
4F033BA03
4F033DA05
4F033EA01
4F033LA12
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】深部火災を迅速に鎮火させることに適した消火ノズルを得る。
【解決手段】本開示に係る消火ノズルは、放水を行う先端部を備えた消火ノズルであって、先端部は、側面に複数の放水口が設けられており、火源である材料に挿入された状態で複数の放水口から放水可能となる形状を有するものであり、先端部が槍型あるいは楔形で形成されている場合には、材料に対して消火ノズルを挿入しやすくすることができ、温度センサおよび報知器をさらに備えている場合には、深部の特定が容易となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水を行う先端部を備えた消火ノズルであって、
前記先端部は、側面に複数の放水口が設けられており、火源である材料に挿入された状態で前記複数の放水口から放水可能となる形状を有する
消火ノズル。
【請求項2】
前記先端部は、槍型あるいは楔形で形成されている
請求項1に記載の消火ノズル。
【請求項3】
前記先端部が前記火源である材料に挿入された状態で前記先端部の周囲温度を測定し、測定結果を出力するための温度センサと、
前記温度センサによる前記測定結果に基づいて火源であることを識別して報知する報知部と
をさらに備える請求項1または2に記載の消火ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災発生時に放水を行う消火ノズルに関し、特に、深部火災に適した消火ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
木材チップ、RDF(refuse-derived fuel:ごみ固形燃料)等のバイオマス燃料は、徐々に化学反応を起こし、発熱する。その反応は、空気による酸化、雨水あるいは空気中の水分との反応、生物発酵等、さまざまである。
【0003】
このような反応による発熱は、微小で、通常は無視できる場合が多く、火災に至らないケースが多い。しかしながら、例えば、木材チップを大量に保管していた場合には、保管期間、条件によっては、なかなか放熱が進まず、直ちに火災には至らないものの、内部で温度が徐々に上昇することがある。
【0004】
温度が徐々に上昇していくと、反応が促進され、さらに温度が上がり、あるいは、空気による酸化反応など別の反応を引き起こすことで、火災に至る場合がある。
【0005】
最近では、リサイクル事業等において、大量に木材チップ等を保管する場合が考えられるが、事業者にこのようなバイオマス燃料に特有の火災危険性に関する知識が十分にないため、結果的に火災を起こした例が散見される。
【0006】
木材チップなどを保管する空間において火災が発生した際にも、火災位置に放水を行うことができるスプリンクラー設備がある(例えば、非特許文献1参照)。このような設備は、自動火災報知設備の火災信号により起動し、火災を探査・確定した後、ノズルを火災火源方向に自動指向して放水を行うことで、消火作業を実現している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】https://www.nohmi.co.jp/product/fef/001.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
木材チップ等を屋内倉庫に保管している場合には、非特許文献1に係るスプリンクラー設備を用いることで、水噴霧による倉庫内の空間冷却を行うことができ、二次災害を防ぐことができる。
【0009】
しかしながら、上述したように、バイオマス燃料により火災が発生した場合には深部火災となるおそれがあり、放水を行っても火源まで水が届きにくいため、内部を迅速に冷却することができず、短時間での消火作業が困難となっていた。
【0010】
従って、深部火災が発生した際に、火源の深部を効率的に冷却できる設備が望まれている。
【0011】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、深部火災を迅速に鎮火させることに適した消火ノズルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る消火ノズルは、放水を行う先端部を備えた消火ノズルであって、先端部は、側面に複数の放水口が設けられており、火源である材料に挿入された状態で複数の放水口から放水可能となる形状を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、深部火災を迅速に鎮火させることに適した消火ノズルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る消火ノズルを備えた消火システムの全体構成を示した説明図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る消火ノズルを備えた消火システムを木材チップの消火に適用する場合の具体例を示した説明図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る消火ノズルをブルドーザーに取り付けた状態で木材チップの消火を実行する場合の具体例を示した説明図である。
【
図4】本開示の実施の形態2に係る消火ノズルの構成を示した説明図である。
【
図5】本開示の実施の形態3に係る消火ノズルを備えた消火システムの全体構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の消火ノズルの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る消火ノズルは、消火対象である材料に挿入した先端部から放水することができる構成を有することを技術的特徴としており、火源の深部に向けて直接放水することができ、深部火災を迅速に鎮火させることができるという顕著な効果を実現できる。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る消火ノズルを備えた消火システムの全体構成を示した説明図である。本実施の形態1に係る消火ノズル10は、本体部11と、本体部11の一端に設けられた先端部12と、本体部11の他端に設けられた接続部13とを備えている。
【0017】
消火ノズル10の接続部13には、ホース20の一端部が接続されている。また、ホース20の他端部は、消火栓30内の消火栓弁31に接続されている。
【0018】
消火ノズル10の先端部12の側面には、複数の放水口12aが設けられている。従って、ホース20の他端部が消火栓弁31に接続されている状態において、消火栓30からホース20を通って消火ノズル10に給水されることにより、先端部12の側面に設けられた複数の放水口12aから放水可能になっている。
【0019】
図2は、本開示の実施の形態1に係る消火ノズル10を備えた消火システムを木材チップ1の消火に適用する場合の具体例を示した説明図である。
図2では、屋内倉庫に保管されている大量の木材チップ1で火災が発生した際に、木材チップ1の山の中に消火ノズル10を挿入して消火作業を行う状態を例示している。なお、木材チップ1は、深部火災を引き起こす材料の一例である。
【0020】
消火ノズル10の先端部12は、槍型あるいは楔形で形成されることで、木材チップ1の山の中に消火ノズル10を挿入しやすくすることができる。さらに、消火ノズル10を挿入した状態で、側面に設けられた複数の放水口から放水を行うことで、直接、深部を水冷することができる。
【0021】
図3は、本開示の実施の形態1に係る消火ノズル10をブルドーザーに取り付けた状態で木材チップ1の消火を実行する場合の具体例を示した説明図である。堆積した木材チップ1の運搬を行う際には、ブルドーザー100が用いられる場合がある。従って、
図3では、木材チップ1の山の中に消火ノズル10を挿入する際に、ブルドーザー100を活用している。
【0022】
ブルドーザー100の前方部分に消火ノズル10を装着した状態でブルドーザー100を運転することで、木材チップ1の山の中における所望の位置に先端部12を挿入することが容易にできるようになる。
【0023】
以上のように、実施の形態1によれば、消火対象である材料に挿入した先端部から放水することができる消火ノズルを実現できる。この結果、火源であるバイオマス燃料等の深部に向けて直接放水することができ、深部火災を迅速に鎮火させることができる。
【0024】
実施の形態2.
本実施の形態2では、消火ノズル10の先端部12に温度センサを設けることで、火災の原因となっている材料の深部位置を特定しやすくする形態について説明する。
【0025】
図4は、本開示の実施の形態2に係る消火ノズルの構成を示した説明図である。本実施の形態2に係る消火ノズル10aは、先の実施の形態1における消火ノズル10に対して温度センサ14および報知部15をさらに備えている。
【0026】
温度センサ14は、先端部12に装着されており、先端部12の周囲温度を測定し、測定結果を出力する機能を備えている。一方、報知部15は、本体部11において接続部13寄りに設置されており、温度センサ14による測定結果に基づいて火源であること、すなわち深部位置に近いか否か、を識別するための報知を行う機能を備えている。
【0027】
報知部15としては、例えば、測定結果である温度を表示する表示器、あらかじめ設定した温度範囲ごとに異なる点灯/点滅パターンでの表示を行う表示灯、あらかじめ設定した温度範囲ごとに異なる警報音を出力する警報器、などを用いることができる。
【0028】
従って、消火ノズル10aを用いて消火を行う作業者は、温度センサ14による測定結果に基づいた温度表示、点灯/点滅パターン、あるいは警報音を頼りにして、深部火災の位置、高温部分などを容易に特定することができる。
【0029】
以上のように、実施の形態2によれば、ノズル先端部の周囲温度の測定結果を報知できる構成を備えている。この結果、消火対象である材料の中に消火ノズルを挿入しながら、深部火災の位置を容易に特定することができ、深部火災を迅速に鎮火させることができる。
【0030】
実施の形態3.
先の実施の形態1では、手動操作で、あるいはブルドーザー100などの搬送機器を用いた操作で、ホース20を介して消火栓弁31に接続されている消火ノズル10を、消火対象に向けて挿入し、消火作業を行う場合について説明した。これに対して、本実施の形態3では、消火ノズルを、火災監視エリアの床面にあらかじめ設置しておく場合について説明する。
【0031】
図5は、本開示の実施の形態3に係る消火ノズルを備えた消火システムの全体構成を示した説明図である。
図5では、屋内倉庫内に木材チップ1が山積みされており、火源2による深部火災が発生した状況を例示している。
【0032】
図5に示した本実施の形態3に係る消火システムは、消火ノズル10b以外の構成として、火災感知器40、火災受信機50、ポンプ60、水源70、および配管80を備えている。
【0033】
火災感知器40は、木材チップ1が保管されている屋内倉庫を火災監視エリアとし、火災を検出した場合には火災受信機50に対して火災信号を出力する。火災受信機50は、火災信号を受信した場合には、ポンプ60を起動し、水源70に蓄えられた水を配管80に供給する。
【0034】
なお、火災感知器40および火災受信機50による監視以外にも、カメラにより火災監視エリアにおける火災発生を監視することも可能である。さらに、火災監視エリアにおいて、手動起動弁により放水を行うことも可能である。
【0035】
配管80の先端部分81には、本実施の形態3に係る消火ノズル10bが取り付けられている。なお、消火ノズル10bの機能は、先の実施の形態1における消火ノズル10と同等である。ただし、長さ、太さ等の形状に関しては、火災監視エリアのサイズ、消火対象となる材料の量などに応じて適切な形状が選定される。
【0036】
なお、消火ノズル10bは、床面から突出した状態で設置しておくことができる。あるいは、消火ノズル10bを床面よりも低い位置に設置しておき、ポンプ60を駆動して消火作業を開始するタイミングで床面上部に突出してくるような構成を採用することも可能である。
【0037】
また、倉庫内では、先の実施の形態2で説明したようなブルドーザー100が木材チップ1等の材料の運搬に使用される場合がある。そこで、床面から突出した状態の消火ノズル10bの周囲を覆うように、防護カバー90を設けることができる。防護カバー90は、メッシュ状とすることで、消火ノズル10bからの放水を外部に噴出することができる。
【0038】
以上のように、実施の形態3によれば、火災感知器による感知結果に連動して放水を行うために、床面に消火ノズルが設置されている。この結果、夜間等の無人の状態であっても、火災感知器に連動して深部に向けた放水を行うことができ、深部火災を迅速に鎮火させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 木材チップ(材料)、2 火源、10、10a、10b 消火ノズル、11 本体部、12 先端部、12a 放水口、13 接続部、14 温度センサ、15 報知部、20 ホース、30 消火栓、31 消火栓弁、40 火災感知器、50 火災受信機、60 ポンプ、70 水源、80 配管、81 先端部分、90 防護カバー、100 ブルドーザー。